(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
媒質可変レンズを介して超音波センサから液体中へ超音波ビームを送信し、前記媒質可変レンズを介して前記液体中の物体からの反射波を前記超音波センサで受信し、前記超音波センサで受信した反射波の情報に基づいて画像を生成し、生成した画像を表示する液中可視化方法であって、
前記媒質可変レンズの内部に満たす媒質によって、前記媒質可変レンズの反射機能又は屈折機能からなるレンズ機能を無効化した場合に、超音波ビームの指向角が維持されることにより、詳細視画像を生成して表示し、前記媒質可変レンズの内部に満たす媒質によって前記媒質可変レンズのレンズ機能を有効化した場合に、超音波ビームの指向角が拡大されることにより、粗視画像を生成して表示することを特徴とする液中可視化方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本実施形態における液中可視化装置の構成を表すブロック図である。
図2(a)及び
図2(b)は、本実施形態におけるプローブの移動形態の具体例を表す斜視図である。
図3(a)及び
図3(b)は、本実施形態における超音波センサと媒質可変レンズの構造を表すとともに動作を説明するためのXZ平面図であり、
図3(a)が媒質可変レンズのレンズ機能を無効化した状態、
図3(b)が媒質可変レンズの反射機能を有効化した状態を示す。
図4は、本実施形態における超音波センサの構造を表す斜視図である。
図5(a)及び
図5(b)は、本実施形態における媒質可変レンズの構造を表す斜視図及びXZ断面図である。
【0013】
本実施形態の液中可視化装置は、超音波センサ11及び媒質可変レンズ12を有するプローブ10と、媒質可変レンズ12にチューブ21,22を介し接続された媒質入替装置20と、超音波センサ11に配線接続された送受信装置30と、媒質入替装置20及び送受信装置30に配線接続された計算機40とを備えている。送受信装置30は、パルサ31、レシーバ32、波形合成部33、遅延制御部34、及びメモリ35を備えている。計算機40は、コントローラ41及び表示部42を備えている。
【0014】
プローブ10は、例えば
図2(a)で示すように多間接型のアーム51の先端に取り付けられるか、あるいは、例えば
図2(b)で示すように遠隔操作ビークル52に搭載されて、構造物300の内部に満たされた液体W(本実施形態では水)の中を移動する。そして、例えば液体Wの中にはブロック301A,301Bや配管302A,302Bが存在しており、それらの位置や形状を観測するようになっている。なお、媒質入替装置20、送受信装置30、及び計算機40は、地上に設置されている。
【0015】
超音波センサ11は、アレイ型であって、一方向に配列された複数の圧電素子13を有している。各圧電素子13は、送受信装置30のパルサ31からの駆動信号(パルス電圧)によって発振し、媒質可変レンズ12を介して液体Wの中へ超音波を送信する。また、各圧電素子13は、媒質可変レンズ12を介して液体Wの中の物体からの反射波を受信し、波形信号に変換して送受信装置30のレシーバ32に出力する。そして、各圧電素子13の超音波の送受信タイミングを変化させることにより、圧電素子13の配列方向(Y方向)に超音波ビーム100の電子走査を行うようになっている。
【0016】
なお、本実施形態では、セクタ式電子走査(詳細には、XY面において、超音波ビーム100の始点を固定しつつ、ビームの送受信方向を変更する走査)を行っているが、リニア式電子走査(詳細には、XY面において、超音波ビーム100の送受信方向を固定しつつ、ビームの始点を変更する走査)を行ってもよい。
【0017】
送受信装置30の遅延制御部34は、計算機40のコントローラ41からの指令に応じて、パルサ31及び波形合成部33へ、超音波ビーム100の送受信方向に対応する遅延パターンを順次出力するようになっている。
【0018】
パルサ31は、遅延制御部34からの遅延パターンに基づき、超音波センサ11の各圧電素子13へ駆動信号を出力するとともに、各駆動信号の出力タイミング(すなわち、各圧電素子13の超音波の送信タイミング)を変化させる。これにより、超音波ビーム100の送信方向を制御する。
【0019】
レシーバ32は、超音波センサ11の各圧電素子13からの波形信号を入力する。波形合成部33は、遅延制御部3
4からの遅延パターンに基づき、各波形信号の入力タイミング(すなわち、各圧電素子13の超音波の受信タイミング)を変化させて合成する。これにより、超音波ビームの受信方向を制御する。そして、合成信号に対し所定の処理(詳細には、アナログ信号からデジタル信号への変換処理等)を行って波形データを取得する。波形データは、反射波の強度と伝搬時間の組み合わせからなるデータである。
【0020】
遅延制御部34は、波形合成部33で取得した波形データを、XY面における超音波ビーム100の送受信方向と関連付けて、メモリ35に収録するとともに、計算機40のコントローラ41に出力する。
【0021】
コントローラ41は、XY面における超音波ビーム100の送受信方向と波形データに基づいて画像を生成する。詳細には、例えば、反射波の強度を、画素の色調で示すとともに、超音波ビーム100の送受信方向と反射波の伝搬時間に基づいてマッピングしたセクタ画像を生成する。そして、生成した画像を表示部42に表示させるようになっている。なお、上述したコントローラ41の画像生成機能は、特許請求の範囲に記載の画像生成部を構成する。
【0022】
本実施形態の要部である媒質可変レンズ12は、半円筒形状(言い換えれば、円筒軸Oを含む平面で円筒を切断した部分円筒形状)の容器で構成されている。この容器は、音響インピーダンスが液体Wとほぼ同じである合成樹脂で形成されている。本実施形態では、水の音響インピーダンス(音速1480m/s×密度1000kg/m
3程度)とほぼ同じ音響インピーダンスを有する、例えば架橋ポリスチレン等で形成されている。そして、プローブ10を液体Wの中に投入した場合に容器の外側が液体Wで満たされることから、容器自体にレンズ機能が無く、容器の内部に満たす媒質によってレンズ機能を得るようになっている。
【0023】
なお、媒質可変レンズ12は、圧電素子13の配列方向(言い換えれば、超音波ビーム100の走査方向)と円筒軸Oが平行となるように、かつ、超音波センサ11から媒質可変レンズ12へ送信する超音波ビーム100の軸線Lが円筒軸Oと交わらないように配置されている。
【0024】
媒質入替装置20は、媒質可変レンズ12の内部に満たす媒質を入れ替えるためのものである。詳細には、例えば、チューブ21を介して液体Wの音響インピーダンスとほぼ同じ音響インピーダンスを有する媒質Ma(本実施形態では水)を送出・吸引する媒質送出・吸引機構23(詳細には、例えばポンプ等)と、チューブ22を介して液体Wの音響インピーダンスと著しく異なる(詳細には、桁数が異なる程度の)音響インピーダンスを有する媒質Mb(本実施形態では空気)を送出・吸引する媒質送出
・吸引機構24(詳細には、例えば圧縮機等)とを有している。
【0025】
そして、
図3(a)で示すように、媒質可変レンズ12の内部に媒質Maを満たした場合は、容器と媒質Maの音響インピーダンスがほぼ同じであるから、媒質可変レンズ12のレンズ機能を無効化する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビーム100を透過して直進させるとともに、レンズ透過後の超音波ビーム100Aの指向角φ
a(詳細には、超音波ビームの走査方向に直交するXZ面におけるビームの指向角)を維持する。なお、本実施形態では、超音波センサ11に音響レンズ14を取り付けることにより、超音波ビーム100Aの指向角φ
aを調整している。
【0026】
一方、
図3(b)で示すように、媒質可変レンズ12の内部に媒質Mbを満たした場合は、容器と媒質Mbの音響インピーダンスが著しく異なるから、媒質可変レンズ12の反射機能を有効化する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビーム100を媒質Mbの外周面の曲率(言い換えれば、容器の内周面の曲率)に応じて反射して進行方向を変えるとともに、レンズ反射後の超音波ビーム100Bの指向角φ
bを拡大する(φ
b>φ
a)。
【0027】
次に、本実施形態の動作及び作用効果について説明する。
図6は、本実施形態における動作手順の一例を表すフローチャートである。
【0028】
まず、構造物300の内部に満たされた液体Wの中にプローブ10を投入して観測位置に配置する。それに前後して、ステップS201では、媒質可変レンズ12の内部に媒質Mbを満たして、媒質可変レンズ12の反射機能を有効化する(粗視モード)。
【0029】
そして、ステップS202に進み、例えば
図7で示すように、プローブ10の周辺にどのような物体があるかを大まかに観測する。すなわち、超音波センサ11からの超音波ビームが媒質可変レンズ12で反射して進行方向を変え、レンズ反射後の超音波ビーム100Bが構造物300の底面303に向かって送信される。そして、例えば構造物300の底面303及びブロック301A,301Bからの反射波が媒質可変レンズ12を介して超音波センサ11で受信される。
【0030】
このとき、上述したように超音波ビーム100Bの指向角φ
bが拡大しているため、反射波の伝搬時間にそれぞれ対応して反射波の強度が積算される範囲も拡大している。そして、XY面における、ある超音波ビームの送受信方向γ(後述の
図9参照)において、例えば
図8で示すような波形データを取得する。具体的に説明すると、伝搬時間t1未満では、底面303からの反射波を受信して、その強度が比較的弱い値(b1〜b2の間の値)となる。伝搬時間時間t1〜t2の範囲では、ブロック301Aからの反射波を受信して、その強度が比較的強い値(b2〜b3の間の値)となる。伝搬時間時間t2〜t3の範囲では、反射波を受信しないため、その強度がほぼゼロとなる。伝搬時間t3以上では、底面303からの反射波を受信して、その強度が比較的弱い値(b1〜b2の間の値)となる。
【0031】
その後、計算機40のコントローラ41は、XY面における超音波ビームの送受信方向と波形データに基づいて、例えば
図9で示すような粗視画像を生成し、生成した粗視画像を表示部42に表示させる。
図9の粗視画像には、反射波の強度がb2以上である領域61Aと、反射波の強度がb1未満である領域62Aが表われており、ブロック301Aの位置や形状を大まかに観測することができる。また、反射波の強度がb2以上である領域61Bと、反射波の強度がb1未満である領域62Bが表われており、ブロック301Bの位置や形状を大まかに観測することができる。
【0032】
そして、ステップS203に進み、媒質送出・吸引機構24により、媒質可変レンズ12の内部から媒質Mbを吸引するとともに、媒質送出・吸引機構23により、媒質可変レンズ12の内部へ媒質Maを送り出す。これにより、媒質可変レンズ12の内部に媒質Maを満たして、媒質可変レンズ12のレンズ機能を無効化する(詳細視モード)。
【0033】
そして、ステップS204に進み、例えば
図10で示すように、ブロック301A,301Bを細かに観測する。すなわち、超音波センサ11からの超音波ビームが媒質可変レンズ12を透過して直進し、レンズ透過後の超音波ビーム100Aがブロック301A又は301Bの側面に向かって送信される。そして、ブロック301A又は301Bの側面からの反射波が媒質可変レンズ12を介して超音波センサ11で受信される。このとき、上述したように超音波ビーム100Aの指向角φ
aが小さいため、反射波の伝搬時間にそれぞれ対応して反射波の強度が積算される範囲も小さい。
【0034】
その後、計算機40のコントローラ41は、XY面における超音波ビームの送受信方向と波形データに基づいて、例えば
図11で示すような詳細視画像を生成し、生成した詳細視画像を表示部42に表示させる。
図11の詳細視画像には、反射波の強度がb2以上である反射領域63Aが表われており、ブロック301Aの位置や形状を細かに観測することができる。また、反射波の強度がb2以上である領域63Bが表われており、ブロック301Bの位置や形状を細かにすることができる。
【0035】
そして、全ての計画範囲の観測が完了していなければ、ステップS205の判定が満たされず、上述のステップS201又はステップS204に移行する。ステップ201に移行した場合は、媒質送出・吸引機構23により、媒質可変レンズ12の内部から媒質Maを吸引するとともに、媒質送出・吸引機構24により、媒質可変レンズ12の内部へ媒質Mbを送り出す。
【0036】
ステップ20
4に移行した場合は、例えば
図12で示すように、配管302A,302Bを細かに観測する。すなわち、超音波センサ11からの超音波ビームが媒質可変レンズ12を透過して直進し、レンズ透過後の超音波ビーム100Aが配管302A又は302Bの側面に向かって送信される。そして、配管302A又は302Bの側面からの反射波が媒質可変レンズ12を介して超音波センサ11で受信される。
【0037】
その後、計算機40のコントローラ41は、XY面における超音波ビームの送受信方向と波形データに基づいて、例えば
図13で示すような詳細視画像を生成し、生成した詳細視画像を表示部42に表示させる。
図13の詳細視画像には、反射波の強度がb2以上である反射領域64Aが表われており、配管302Aの位置や形状を細かに観測することができる。また、反射波の強度がb2以上である領域64Bが表われており、配管302Bの位置や形状を細かに観測することができる。
【0038】
以上のように本実施形態においては、媒質可変レンズ12を用いることにより、詳細視機能と粗視機能を兼ね備えることができる。また、例えば詳細視用の超音波センサと粗視用の超音波センサ及び拡散レンズを搭載する場合と比べ、プローブの大型化を抑制することができる。
【0039】
なお、第1の実施形態においては、ブロック301A,301Bの粗視画像→ブロック301A,301Bの詳細視画像→配管302A,302Bの詳細視画像の順序で取得する場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、配管302A,302Bの詳細視画像→ブロック301A,301Bの粗視画像→ブロック301A,301Bの詳細視画像の順序で取得してもよい。
【0040】
また、第1の実施形態において、媒質入替装置20は、地上に設置され、媒質可変レンズ12に比較的長いチューブ21,22を介し接続された媒質送出・吸引機構23,24(詳細には、ポンプや圧縮機等)で構成された場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば
図14で示す変形例のように、媒質入替装置20Aは、媒質可変レンズ12に比較的短いチューブ25A,25Bを介し接続された遮
断弁26A,26Bで構成されてもよい。このような変形例においては、媒質可変レンズ12の内部に液体Wより比重が軽い媒質Mbを予め満たして、粗視モードとする。そして、遮
断弁26A,26Bを開くことにより、媒質可変レンズ12の内部から媒質Mbを流出させるとともに、媒質可変レンズ12の内部に媒質Maとして液体Wを流入させる。これにより、粗視モードから詳細視モードに切替える。したがって、本変形例では、粗視モードから詳細視モードへの1度の切替えしかできないものの、媒質入替装置の構成を簡素化することができる。
【0041】
また、第1の実施形態において、媒質可変レンズ12は、半円筒形状(言い換えれば、円筒軸Oを含む平面で円筒を切断した部分円筒形状)の容器で構成された場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、半円筒形状以外の他の部分円筒形状(言い換えれば、円筒軸Oに平行な平面で円筒を切断した部分円筒形状)の容器で構成されてもよいし、円筒形状の容器で構成されてもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0042】
本発明の第2の実施形態を、
図15により説明する。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0043】
図15(a)、
図15(b)、及び
図15(c)は、本実施形態における超音波センサと媒質可変レンズの構造を表すとともに動作を説明するためのXZ平面図であり、
図15(a)が外側レンズ及び内側レンズのレンズ機能を無効化した状態、
図15(b)が外側レンズのレンズ機能を無効化し内側レンズの反射機能を有効化した状態、
図15(c)が外側レンズの反射機能を有効化した状態を示す。
【0044】
本実施形態の媒質可変レンズ12Aは、同心二重半円筒構造の容器で構成されている。詳細には、半円筒形状の外壁71Aと半円筒形状の内壁72Aを有し、それらの円筒軸O
1,O
2が同軸になっている。これら外壁71A及び内壁72Aは、音響インピーダンスが液体Wとほぼ同じである合成樹脂で形成されている。すなわち、外壁71A及び内壁72A自体にレンズ機能が無く、外壁71Aと内壁72Aの間に満たす媒質によって外側レンズのレンズ機能を、内壁72Aの内側に満たす媒質によって内側レンズのレンズ機能を得るようになっている。
【0045】
なお、媒質可変レンズ12Aは、圧電素子13の配列方向(言い換えれば、超音波ビームの走査方向)と円筒軸O
1,O
2が平行となるように、かつ、超音波センサ11から媒質可変レンズ12Aへ送信する超音波ビームの軸線Lが円筒軸O
1,O
2と交わらないように配置されている。
【0046】
媒質入替装置20は、外壁71Aと内壁72Aの間に満たす媒質を入れ替えるとともに、内壁72Aの内側に満たす媒質を入れ替えるようになっている。詳細には、例えば、外壁71Aと内壁72Aの間にチューブ21Aを介して接続され、かつ内壁72Aの内側にチューブ21Bを介して接続され、媒質Maを送出・吸引する媒質送出・吸引機構23を有している。また、外壁71Aと内壁72Aの間にチューブ22Aを介して接続され、かつ内壁72Aの内側にチューブ22Bを介して接続され、媒質Mbを送出・吸引する媒質送出
・吸引機構24を有している。
【0047】
そして、
図15(a)で示すように、外壁71Aと内壁72Aの間及び内壁72Aの内側に媒質Maを満たした場合は、外壁71A及び内壁72Aと媒質Maの音響インピーダンスがほぼ同じであるから、外側レンズ及び内側レンズのレンズ機能を無効化する(詳細視モード)。これにより、超音波センサ11からの超音波ビームを透過して直進させるとともに、レンズ透過後の超音波ビーム100Aの指向角φ
aを維持する。したがって、計算機40のコントローラ41は、粗視画像を生成し、生成した粗視画像を表示部42に表示させる。
【0048】
一方、
図15(b)で示すように、外壁71Aと内壁72Aの間に媒質Maを満たし、内壁72Aの内側に媒質Mbを満たした場合は、外側レンズのレンズ機能を無効化し、内側レンズの反射機能を有効化する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビームを媒質Mbの外周面の曲率(言い換えれば、内壁72Aの内周面の曲率)に応じて反射して進行方向を変えるとともに、レンズ反射後の超音波ビーム100Cの指向角φ
cを拡大する(φ
c>φ
a)。したがって、計算機40のコントローラ41は、第1の粗視画像を生成し、生成した第1の粗視画像を表示部42に表示させる。
【0049】
また、
図15(c)で示すように、外壁71Aと内壁72Aの間及び内壁72Aの内側に媒質Mbを満たした場合は、外側レンズの反射機能を有効化する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビームを媒質Mbの外周面の曲率(言い換えれば、外壁71Aの内周面の曲率)に応じて反射して進行方向を変えるとともに、レンズ反射後の超音波ビーム100Dの指向角φ
dを拡大する(φ
c>φ
d>φ
a)。したがって、計算機40のコントローラ41は、第2の粗視画像を生成し、生成した第2の粗視画像を表示部42に表示させる。
【0050】
以上のように構成された本実施形態においても、第1の実施形態と同様、媒質可変レンズを用いることにより、プローブの大型化を抑制しつつ、粗視機能と詳細視機能を兼ね備えることができる。また、2段階の粗視機能を備えることができる。
【0051】
なお、第2の実施形態において、媒質可変レンズ12Aは、半円筒形状の外壁71Aと内壁72Aを有する二重構造(同心二重半円筒構造)の容器で構成された場合を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、半円筒形状以外の他の部分円筒形状の外壁と内壁を有する二重構造(同心二重部分円筒構造)の容器で構成されてもよいし、円筒形状の外壁と内壁を有する二重構造(同心二重円筒構造)の容器で構成されてもよい。これらの場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0052】
本発明の第3の実施形態を、
図16により説明する。なお、本実施形態において、第1及び第2の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0053】
図16(a)、
図16(b)、及び
図16(c)は、本実施形態における超音波センサと媒質可変レンズの構造を表すとともに動作を説明するためのXZ平面図であり、
図16(a)が外側レンズ及び内側レンズのレンズ機能を無効化した状態、
図16(b)が外側レンズのレンズ機能を無効化し内側レンズの反射機能を有効化した状態、
図16(c)が外側レンズの屈折機能を有効化し内側レンズの反射機能を有効化した状態を示す。
【0054】
本実施形態の媒質可変レンズ12Bは、偏心二重円筒構造の容器で構成されている。詳細には、円筒形状の外壁71Bと円筒形状の内壁72Bを有し、それらの円筒軸O
1,O
2が偏心している。これら外壁71B及び内壁72Bは、音響インピーダンスが液体Wとほぼ同じである合成樹脂で形成されている。すなわち、外壁71B及び内壁72B自体にレンズ機能が無く、外壁71Bと内壁72Bの間に満たす媒質によって外側レンズのレンズ機能を、内壁72Bの内側に満たす媒質によって内側レンズのレンズ機能を得るようになっている。
【0055】
なお、媒質可変レンズ12Bは、圧電素子13の配列方向(言い換えれば、超音波ビームの走査方向)と円筒軸O
1,O
2が平行となるように、かつ、超音波センサ11から媒質可変レンズ12へ送信する超音波ビームの軸線Lが外壁71Bの円筒軸O
1と交わって内壁72Bの円筒軸O
2と交わらないように配置されている。
【0056】
媒質入替装置20は、外壁71Bと内壁72Bの間に満たす媒質を入れ替えるとともに、内壁72Bの内側に満たす媒質を入れ替えるようになっている。詳細には、例えば、外壁71Bと内壁72Bの間にチューブ21Aを介して接続され、かつ内壁72Bの内側にチューブ21Bを介して接続され、媒質Maを送出・吸引する媒質送出・吸引機構23を有している。また、内壁72Bの内側にチューブ22を介して接続され、媒質Mbを送出・吸引する媒質送出
・吸引機構24を有している。また、外壁71Bと内壁72Bの間にチューブ27を介して接続され、液体Wの音響インピーダンスと少し異なる(詳細には、桁数が同じものの、上位二桁の数字が異なる程度の)音響インピーダンスを有する媒質Mc(本実施形態では、例えばトリエチレングリコール等)を送出・吸引する媒質送出・吸引機構(詳細には、ポンプ等)を有している。
【0057】
そして、
図16(a)で示すように、外壁71Bと内壁72Bの間及び内壁72Bの内側に媒質Maを満たした場合は、外壁71B及び内壁72Bと媒質Maの音響インピーダンスがほぼ同じであるから、外側レンズ及び内側レンズのレンズ機能を無効化する(詳細視モード)。これにより、超音波センサ11からの超音波ビームを透過して直進させるとともに、レンズ透過後の超音波ビーム100Aの指向角φ
aを維持する。したがって、計算機40のコントローラ41は、粗視画像を生成し、生成した粗視画像を表示部42に表示させる。
【0058】
一方、
図16(b)で示すように、外壁71Bと内壁72Bの間に媒質Maを満たし、内壁72Bの内側に媒質Mbを満たした場合は、外側レンズのレンズ機能を無効化し、内側レンズの反射機能を有効化する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビームを媒質Mbの外周面の曲率(言い換えれば、内壁72Bの内周面の曲率)に応じて反射して進行方向を変えるとともに、レンズ反射後の超音波ビーム100Eの指向角φ
eを拡大する(φ
e>φ
a)。したがって、計算機40のコントローラ41は、第1の粗視画像を生成し、生成した第1の粗視画像を表示部42に表示させる。
【0059】
また、
図16(c)で示すように、外壁71Bと内壁72Bの間に媒質Mcを満たし、内壁72Bの内側に媒質Mbを満たした場合は、外側レンズの屈折機能を有効化し、内側レンズの反射機能を有効化する。これにより、超音波センサ11からの超音波ビームを媒質Mcの外周面の曲率(言い換えれば、外壁71Bの内周面の曲率)に応じて屈折し、その後、媒質Mbの外周面の曲率(言い換えれば、内壁72Bの内周面の曲率)に応じて反射して進行方向を変えるとともに、レンズ反射後の超音波ビーム100Fの指向角φ
fを拡大する(φ
e>φ
f>φ
a)。したがって、計算機40のコントローラ41は、第2の粗視画像を生成し、生成した第2の粗視画像を表示部42に表示させる。
【0060】
以上のように構成された本実施形態においても、第1の実施形態と同様、媒質可変レンズを用いることにより、プローブの大型化を抑制しつつ、粗視機能と詳細視機能を兼ね備えることができる。また、第2の実施形態と同様、2段階の粗視機能を備えることができる。
【0061】
なお、第1〜第3の実施形態においては、複数の圧電素子13を有するアレイ型の超音波センサ11を備えた場合(すなわち、圧電素子13の配列方向に超音波ビームを電子走査する場合)を例にとって説明したが、これに限られず、本発明の趣旨及び技術思想を逸脱しない範囲内で変形が可能である。例えば、1つだけの圧電素子13を有する超音波センサと、この超音波センサを回動又は平行移動させる駆動機構とを備えてもよい。すなわち、圧電素子13の配列方向に超音波ビームを機械的に走査してもよい。