(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
相対向する上面板および底面板と、相対向する一対の側面板とを有する矩形筒状の本体部と、当該本体部の一方の開口端を閉塞する蓋部と、を備える紙製の包装容器であって、
上記蓋部は、上記底面板の筒軸方向の一方端と折り目を介して繋がる第1板と、当該一方端よりも筒軸方向他方側で上記底面板と折り目を介して繋がる第3板と、当該第1板および第3板とそれぞれ折り目を介して繋がる第2板とを有していて、これら第1板、第2板および第3板が、上記一対の側面板の対向方向から見て、上記底面板側に開いたコ字状をなす閉塞形態と、上記第1板と上記第2板とが重なり且つ上記第3板と上記底面板とが重なる開封形態と、を採るように構成されており、
上記第2板または第3板には、上記開封形態を採った状態で、当該第2板または第3板における上記第1板と重なった部位が上記底面板よりも上記上面板から離れる側に反るように、上記底面板の一方端と重なる部位に折り線が設けられており、
上記第1板、第2板および第3板が繋がる方向における、上記第3板の長さが上記第1板の長さよりも長いことを特徴とする包装容器。
相対向する上面板および底面板と、相対向する一対の側面板とを有する矩形筒状のカバー部と、上記底面板と重なりながら当該カバー部に出し入れ自在に収容される内板部と、当該カバー部の一方の開口端を閉塞する蓋部と、を備える紙製の包装容器であって、
上記蓋部は、上記内板部の筒軸方向の一方端と折り目を介して繋がる第1板と、当該一方端よりも筒軸方向他方側で上記内板部と折り目を介して繋がる第3板と、当該第1板および第3板とそれぞれ折り目を介して繋がる第2板とを有していて、これら第1板、第2板および第3板が、上記一対の側面板の対向方向から見て、上記内板部側に開いたコ字状をなす閉塞形態と、上記第1板と上記第2板とが重なり且つ上記第3板と上記内板部とが重なる開封形態と、を採るように構成されており、
上記第2板または第3板には、上記開封形態を採った状態で、当該第2板または第3板における上記第1板と重なった部位が上記内板部よりも上記上面板から離れる側に反るように、上記内板部の一方端と重なる部位に折り線が設けられており、
上記第1板、第2板および第3板が繋がる方向における、上記第3板の長さが上記第1板の長さよりも長いことを特徴とする包装容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記「枕」と称される立体的な蓋部は、スライドオープンパッケージ方式の包装容器のみならず、通常の包装容器における蓋板およびフラップの代わりとして用いられることが、具体的には、有底矩形筒状の容器本体の開口端に設けられることがある。この場合には、引き出し片を押圧し、引き出し片と側面板とが重なるように蓋部を押し潰すことで、蓋部によって閉塞されていた開口端が開放されるので、開放された開口端から包装対象物を直接取り出すことになる。
【0009】
しかしながら、立体的な蓋部を通常の包装容器に設けた場合には、以下のような問題が生じ得る。すなわち、上述の如く包装容器は通常コートボールで形成されていることから、矩形筒状をなすように折られていた蓋部の折り目には折り癖がついているため、引き出し片を押圧することで一旦押し潰されたとしても、押圧を止めれば、折り重ねられた蓋部が不完全ながら元の立体形状に戻ろうとする。このため、開口端の一部が蓋部によって塞がれ、包装対象物を取り出し難くなるという問題がある。
【0010】
この点、スライドオープンパッケージ方式の包装容器では、押し潰されることで突出した引き出し片等を摘んで容器本体をカバーから引き出すことから、蓋部が元の立体形状に戻っても支障はないとも思われる。しかしながら、カバーから容器本体を引き出すことなく、包装対象物をカバーから直接取り出そうとする消費者も想定されることから、スライドオープンパッケージ方式の包装容器においてもこのような問題は生じ得る。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、立体的な蓋部を有する包装容器において、開封時に、折り重なるように変形させた蓋部が意図せず立体形状に戻るのを抑える技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明に係る包装容器では、開封時に、蓋部が立体形状に戻り難い形態を採るような折り目がつくように、蓋部を構成する部位に折り線を設けるようにしている。
【0013】
具体的には、本発明は、相対向する上面板および底面板と、相対向する一対の側面板とを有する矩形筒状の本体部と、当該本体部の一方の開口端を閉塞する蓋部と、を備える紙製の包装容器を対象としている。
【0014】
そして、上記蓋部は、上記底面板の筒軸方向の一方端と折り目を介して繋がる第1板と、当該一方端よりも筒軸方向他方側で上記底面板と折り目を介して繋がる第3板と、当該第1板および第3板とそれぞれ折り目を介して繋がる第2板とを有していて、これら第1板、第2板および第3板が、上記一対の側面板の対向方向から見て、上記底面板側に開いたコ字状をなす閉塞形態と、上記第1板と上記第2板とが重なり且つ上記第3板と上記底面板とが重なる開封形態と、を採るように構成されており、上記第2板または第3板には、上記開封形態を採った状態で、当該第2板または第3板における上記第1板と重なった部位が上記底面板よりも上記上面板から離れる側に反るように、上記底面板の一方端と重なる部位に折り線が設けられて
おり、上記第1板、第2板および第3板が繋がる方向における、上記第3板の長さが上記第1板の長さよりも長いことを特徴とするものである。
【0015】
なお、本発明において、「折り線」とは、例えば、切込み溝を入れたり、エンボス加工を施したりすること等により形成された、折り位置を明示するとともに紙を折り易くする線を意味する。また、本発明では、例えばこのような折り線に沿って、実際に折り曲げられた部位を「折り目」と称する。
【0016】
この構成によれば、第2板または第3板における底面板の一方端と重なる部位に折り線を設けることで、第2板または第3板における第1板と重なった部位を、底面板よりも上面板から離れる側に容易に反らせることができる。なお、以下では第2板に折り線を設けた場合について説明するが、第3板に折り線を設けた場合も同様である。
【0017】
ここで、折り重ねられた蓋部が不完全ながら元の立体形状に戻ろうとするような、折り目についた折り癖としては、以下の(1)〜(4)が挙げられる。すなわち、(1)底面板と第1板との折り目(仮に第1折り目という)については、第1板を底面板に対して上面板側に立ち上がらせようとする折り癖、(2)第1板と第2板との折り目(仮に第2折り目という)については、重なった第1板と第2板とを開かせようとする折り癖、(3)第2板と第3板との折り目(仮に第3折り目という)については、扁平状になった第2板と第3板とを閉じさせようとする折り癖、(4)第3板と底面板との折り目(仮に第4折り目という)については、第3板を底面板に対して上面板側に立ち上がらせようとする折り癖である。
【0018】
この点、本発明では、第2板における第1板と重なった部位を、底面板よりも上面板から離れる側に反らせるので、これに伴い第1板も上面板から離れる側に反る。これにより、(1)については、第1折り目は折り癖がついた方向とは反対側に折り曲げられるので、第1板が底面板に対して上面板側に立ち上がり難くなる。また、第2板における第1板と重なった部位が上面板から離れる側に反ると、第2板および第3板は筒軸方向で弓状に張った状態になる。これにより、(3)および(4)については、第3および第4折り目は扁平状に強く延ばされるので、扁平状になった第2板と第3板とが閉じたり、第3板が底面板に対して上面板側に立ち上がったりし難くなる。さらに、第2板における第1板と重なった部位が上面板から離れる側に反ると、第1板と第2板とが強く重なるので、(2)については、第2折り目が開き難くなる。
【0019】
加えて、第2板または第3板には、第1板と重なって反った状態を維持しようとする折り癖がつくことになる。
【0020】
以上のように、第1〜第4折り目の折り癖が減殺されることと、第2板または第3板に第1板と重なって反った状態を維持しようとする折り癖がつくこととが相俟って、蓋部が立体形状に戻り難くなることから、開封時に、折り重なるように変形させた蓋部が意図せず立体形状に戻るのを抑えることができる。
しかも、第1板よりも本体部またはカバー部に深く入り込む第3板の長さが、第1板の長さよりも長くなっていることから、換言すると、一対の側面板の対向方向から見て、蓋部が逆くさび状をなしていることから、上面板と底面板とによって当該第3板がしっかりと挟まれるので、本体部またはカバー部の開口端をしっかりと閉塞することができる。
【0021】
また、本発明は、スライドオープンパッケージ方式の包装容器にも適用可能である。
【0022】
すなわち、本発明は、相対向する上面板および底面板と、相対向する一対の側面板とを有する矩形筒状のカバー部と、上記底面板と重なりながら当該カバー部に出し入れ自在に収容される内板部と、当該カバー部の一方の開口端を閉塞する蓋部と、を備える紙製の包装容器をも対象としている。
【0023】
そして、上記蓋部は、上記内板部の筒軸方向の一方端と折り目を介して繋がる第1板と、当該一方端よりも筒軸方向他方側で上記内板部と折り目を介して繋がる第3板と、当該第1板および第3板とそれぞれ折り目を介して繋がる第2板とを有していて、これら第1板、第2板および第3板が、上記一対の側面板の対向方向から見て、上記内板部側に開いたコ字状をなす閉塞形態と、上記第1板と上記第2板とが重なり且つ上記第3板と上記内板部とが重なる開封形態と、を採るように構成されており、上記第2板または第3板には、上記開封形態を採った状態で、当該第2板または第3板における上記第1板と重なった部位が上記内板部よりも上記上面板から離れる側に反るように、上記内板部の一方端と重なる部位に折り線が設けられて
おり、上記第1板、第2板および第3板が繋がる方向における、上記第3板の長さが上記第1板の長さよりも長いことを特徴とするものである。
【0024】
この構成によれば、第2板または第3板における内板部の一方端と重なる部位に折り線を設けることで、第2板または第3板における第1板と重なった部位を内板部よりも上面板から離れる側に容易に反らせることができる。これにより、スライドオープンパッケージ方式の包装容器においても、開封時に、折り重なるように変形させた蓋部が意図せず立体形状に戻るのを抑えることができる。したがって、スライドオープンパッケージ方式の包装容器においても、消費者は、カバー部から容器本体を引き出すことなく、包装対象物をカバー部から直接且つスムーズに取り出すことができる。
【0026】
また、第1板よりも本体部またはカバー部に深く入り込む第3板の長さが、第1板の長さよりも長くなっていることから、換言すると、一対の側面板の対向方向から見て、蓋部が逆くさび状をなしていることから、上面板と底面板とによって当該第3板がしっかりと挟まれるので、本体部またはカバー部の開口端をしっかりと閉塞することができる。
【発明の効果】
【0027】
以上、説明したように本発明に係る包装容器によれば、開封時に、折り重なるように変形させた蓋部が意図せず立体形状に戻るのを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0030】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る包装容器1を模式的に示す斜視図であり、
図2は、包装容器1の展開図である。この包装容器1は、有底矩形筒状の本体部10と、当該本体部10の筒軸方向一方側の開口端を閉塞する蓋部20と、を備えている。本体部10は、相対向する上面板11および底面板12と、相対向する一対の側面板13,14と、これら上面板11、底面板12および側面板13,14からなる矩形筒の筒軸方向他方側の端部を閉塞する閉塞部15と、を有している。
【0031】
包装容器1は、コートボールを
図2に示す展開図に沿って打ち抜いた後、折り線に沿って折り曲げるとともに、所定部分を糊付することによって組み立てられるものである。なお、
図2は、本体部10の外面が図の表側となるように記載されている。
【0032】
−展開図−
図2に示す展開図において、矩形状の側面板14の左側には折り線31aを介して略矩形状の上面板11が連設され、上面板11の左側には折り線32aを介して矩形状の側面板13が連設され、側面板13の左側には折り線33aを介して矩形状の底面板12が連設され、底面板12の左側には折り線34aを介して糊代部16が連設されている。また、側面板14、上面板11、側面板13および底面板12の下側には、閉塞部15を構成するフラップ14a、上側閉塞板11a、フラップ13aおよび底側閉塞板12aがそれぞれ折り線35a,36a,37a,38aを介して連設されている。さらに、底面板12の上側には第1折り線41aを介して第1板21が連設され、第1板21の上側には第2折り線42aを介して第2板22が連設され、第2板22の上側には第3折り線43aを介して第3板23が連設され、第3板23の上側には第4折り線44aを介して糊代部24が連設されている。
【0033】
上面板11の上端部(筒軸方向一方側の端部)には、切取ミシン線39aを介して開閉体11bが形成されている。この開閉体11bは、蓋部20を構成する第2板22と糊付され、包装容器1を初めて開封する際に切取ミシン線39aに沿って切り取られる。
【0034】
後述するように、糊代部24は底面板12の内面(
図2の裏面)に糊付されるところ、底面板12には、糊付された糊代部24の先端よりも僅かに下側(筒軸方向他方側)に、
図2の左右方向に延び且つ
図2の裏面側に窪むエンボス部12bが形成されている。
【0035】
図2に示すように、第1板21の幅(左右方向の幅)は、上面板11および底面板12の幅よりも大きく設定されている。また、第2板22は、第1板21側の部位が上面板11および底面板12の幅と同じ幅を有する矩形状に形成されている一方、第3板23側の部位が先端(上側)に向かって窄む台形状に形成されている。さらに、第1板21、第2板22および第3板23が連設される(繋がる)方向(
図2の上下方向)における、第3板23の長さは、第1板21の長さよりも長く設定されている。
【0036】
また、第2板22には、第2折り線42aを挟んで第1折り線41aと線対称となる部位にエンボス加工によって折り線45aが形成されている。換言すると、第2折り線42aと折り線45aとの間隔は、第1板21、第2板22および第3板23が連設される方向(以下、連設方向ともいう)における第1板21の長さと等しくなっている。
【0037】
−組み立て手順−
次に、以上のように構成された包装容器1の組み立て手順について説明する。
【0038】
先ず、
図2の展開図に従ってコートボールを打ち抜くとともに、
図2の裏面が表側になるように反転させる。次いで、底面板12と第1板21とが直交し、第1板21と第2板22とが略直交し、且つ、第2板22と第3板23とが略直交するように、第1〜第3折り線41a,42a,43aをそれぞれ谷折りするとともに、第3板23と糊代部24とが直交するように、第4折り線44aを山折りし、接着剤を塗布した糊代部24を底面板12の内面に貼り付ける。これにより、底面板12の筒軸方向の一方端と第1折り目41を介して繋がる第1板21と、当該一方端よりも筒軸方向他方側で底面板12と第4折り目44を介して繋がる第3板23と、第1板21および第3板23とそれぞれ第2および第3折り目42,43を介して繋がる第2板22とを有し、底面板12側に開いたコ字状をなす立体的な蓋部20が形成される(
図3(a)参照)。なお、
図3(a)および(b)では、図を見易くするために、側面板13,14等を図示省略している。
【0039】
次いで、側面板14と上面板11とが直交し、上面板11と側面板13とが直交し、側面板13と底面板12とが直交し、且つ、底面板12と糊代部16とが直交するように、折り線31a,32a,33a,34aをそれぞれ谷折りする。そうして、糊代部16および開閉体11bに接着剤を塗布して、糊代部16を側面板14の内面に貼り付けるとともに、開閉体11bを第2板22の上面に貼り付ける。これにより、糊代部16と貼着された側面板14と、側面板14と折り目31を介して繋がる上面板11と、上面板11と折り目32を介して繋がる側面板13と、側面板13および側面板14とそれぞれ折り目33,34を介して繋がる底面板12とを有し、蓋部20を包む矩形筒が形成される。なお、包装対象物(図示せず)は、蓋部20を包む矩形筒が形成された段階で箱詰め包装される。
【0040】
次いで、折り線35a,37aをそれぞれ谷折りして、フラップ14a,13aを折畳む。そうして、折り線36a,38aをそれぞれ谷折りするとともに、上側閉塞板11aの内面と底側閉塞板12aの外面とを接着剤で貼り合せる。これにより、側面板14と折り目35を介して繋がるフラップ14aと、上面板11と折り目36を介して繋がる上側閉塞板11aと、側面板13と折り目37を介して繋がるフラップ13aと、底面板12と折り目38を介して繋がる底側閉塞板12aとで構成される閉塞部15が形成されて、包装容器1の組み立てが完了する。
【0041】
−蓋部−
以上のように組み立てられた包装容器1においては、包装容器1を初めて開封する際に、開閉体11bを押圧して切取ミシン線39aに沿って開閉体11bを切り取ることで、蓋部20がリクローズ時の閉塞形態と使用時の開封形態とを採ることが可能な状態となる。ここに、閉塞形態とは、
図3(a)および
図4(a)に示すように、第1板21、第2板22および第3板23が、一対の側面板13,14の対向方向から見て、底面板12側に開いたコ字状をなす立体的な形態をいう。一方、開封形態とは、
図3(b)および
図4(b)に示すように、第1板21と第2板22とが重なり且つ第3板23と底面板12とが重なる形態をいう。これら閉塞形態と開封形態とは、閉塞形態から、第2板22に貼着された開閉体11bを押圧して、立体形状の蓋部20を押し潰すことで開封形態となる一方、開封形態から、第1板21を起こすようにして第2板22を本体部10に押し込むことで閉塞形態となる、という関係にある。
【0042】
[閉塞形態]
先ず、第1板21の幅は、上述の如く、上面板11および底面板12の幅よりも大きく設定されていることから、蓋部20によって本体部10の筒軸方向一方側の開口端を閉塞する際、側面板13,14の筒軸方向一方側の端縁に第1板21の両側縁部が当接するので、蓋部20が本体部10に対して必要以上に押し込まれないようになっている。
【0043】
また、第2板22は、上述の如く、第1板21側の部位が上面板11および底面板12の幅と同じ幅を有する矩形状に形成されている一方、第3板23側の部位が先端に向かって窄む台形状に形成されていることから、第1板21を起こすようにして第2板22を本体部10に押し込む際、第2板22を本体部10に対して押し込み易くなっている。
【0044】
さらに、連設方向における第3板23の長さは、第1板21の長さよりも長く設定されていることから、換言すると、第3板23の高さは、第1板21の高さよりも高く設定されていることから、
図4(a)に示すように、蓋部20は筒軸方向に抜け出し難い逆くさび状をなして本体部10に押し込まれることになる。これにより、上面板11と底面板12とによって第3板23がしっかりと挟まれるので、本体部10の開口端をしっかりと閉塞することができる。なお、第3板23の長さと第1板21の長さとの差は、実際には0.5mm程度であるが、
図4(a)では、図を見易くするために、両者の差を誇張して示している。
【0045】
[開封形態]
開封形態では、第1板21と第2板22とが重なり且つ第3板23と底面板12とが重なるように蓋部20が押し潰されるが、第1および第4折り目41,44には、第1板21および第3板23を底面板12に対して上面板11側にそれぞれ立ち上がらせようとする折り癖が、第2折り目42には、重なった第1板21と第2板22とを開かせようとする折り癖が、第3折り目43には、扁平状になった第2板22と第3板23とを閉じさせようとする折り癖が、それぞれついている。このため、第2板22を押圧することで蓋部20が一旦押し潰されたとしても、押圧を止めれば、折り重ねられた蓋部20が不完全ながら元の立体形状に戻ろうとする。それ故、
図4(c)に示すように、開口端の一部が蓋部20によって塞がれ、包装対象物を取り出すことが困難になる場合も想定される。
【0046】
そこで、本実施形態の包装容器1では、上述の如く、第2板22に折り線45aを形成して、かかる折り線45aに沿って第2板22を折り曲げることにより、
図4(b)に示すように、第2板22における第1板21と重なった部位を、底面板12よりも上面板11から離れる側に反らせるようにしている。より詳しくは、第2折り線42aと折り線45aとの間隔は、連設方向における第1板21の長さと等しくなっていることから、折り線45aは、第2板22における底面板12の一方端と重なる部位に設けられていることになる。それ故、折り線45aに沿って第2板22を折り曲げると、第2板22における第1板21と重なった部位と、第1板21とが、底面板12よりも上面板11から離れる側に反ることになる。
【0047】
これにより、第1折り目41は折り癖がついた方向とは反対側に折り曲げられるので、第1板21が底面板12に対して上面板11側に立ち上がり難くなる。また、第2板22における第1板21と重なった部位が上面板11から離れる側に反ると、第2板22および第3板23は筒軸方向で弓状に張った状態となる。これにより、第3および第4折り目43,44は扁平状に強く延ばされるので、扁平状になった第2板22と第3板23とが閉じたり、第3板23が底面板12に対して上面板11側に立ち上がったりし難くなる。さらに、第2板22における第1板21と重なった部位が上面板11から離れる側に反ると、第1板21と第2板22とが強く重なるので、第2折り目42が開き難くなる。
【0048】
加えて、第2板22における第1板21と重なった部位を反らせるように第2板22を折り曲げると、折り線45aを折り曲げた折り目45にも、第1板21と重なって反った状態を維持しようとする折り癖がつくことになる。
【0049】
以上のように、第1〜第4折り目41,42,43,44の折り癖が減殺されることと、折り目45に第2板22が第1板21と重なって反った状態を維持しようとする折り癖がつくこととが相俟って、蓋部20が立体形状に戻り難くなる。したがって、開封時に、折り重なるように変形させた蓋部20が意図せず立体形状に戻ることなく、
図5に示すような状態が維持されるので、包装対象物を容易に取り出すことが可能となる。
【0050】
なお、包装対象物を取り出す際には、底面板12に糊付された糊代部24の先端に包装対象物が引っ掛ることも想定されるが、本実施形態の包装容器1では、糊代部24の先端近傍にエンボス部12bが形成されていることから、
図4(b)に示すように、底面板12と糊代部24との段差が解消されるので、包装対象物をスムーズに取り出すことができる。
【0051】
−実施形態1の変形例−
本変形例は、包装容器2がスライドオープンパッケージ方式の包装容器である点が、上記実施形態1と異なるものである。以下、上記実施形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0052】
図6は、本変形例に係る包装容器2を模式的に示す斜視図である。この包装容器2は、スライドオープンパッケージ方式の紙製の包装容器であり、
図6に示すように、矩形筒状のカバー部50と、カバー部50に出し入れ自在に収容される内箱部60と、カバー部50の筒軸方向一方側の開口端を閉塞する蓋部70と、を備えている。なお、展開図を図示省略するが、包装容器2も、実施形態1の包装容器1と同様に、コートボールを打ち抜いた後、折り線に沿って折り曲げるとともに、所定部分を糊付することによって組み立てられるものである。
【0053】
カバー部50は、相対向する上面板51および底面板52と、相対向する一対の側面板53,54と、を有している。上面板51の筒軸方向一方側の端部には、三角形状の切欠部51aが形成されており、この切欠部51aから蓋部70の第2板72を押圧することが可能となっている。なお、カバー部50の内寸は、カバー部50に対して内箱部60を円滑に摺動することができるように、内箱部60の外寸に対応して設定されている。
【0054】
内箱部60は、底面板62と、相対向する一対の側面板63,64と、軸方向他方側の端部で底面板62および側面板63,64と繋がる閉塞板65と、を有していて、蓋部70と共に、上面が開放された箱状体を形成している。なお、閉塞板65は、側面板63,64の軸方向他方側の端部に設けられたフラップ(図示せず)と接着剤で貼り合わされている。この内箱部60は、底面板62がカバー部50の底面板52と重なりながら、カバー部50に出し入れ自在に収容される。これにより、本変形例では、内箱部60の底面板62が、本発明にいう「底面板と重なりながらカバー部に出し入れ自在に収容される内板部」に対応している。
【0055】
蓋部70は、上記実施形態1の蓋部20が底面板12の上側に、順次折り線を介して連設された第1板21、第2板22、第3板23および糊代部24によって構成されていたのと同様に、底面板62の筒軸方向一方側に、順次折り線を介して連設された第1板71、第2板72、第3板73および糊代部74によって構成されている。そうして、折り線をそれぞれ折るとともに、接着剤を塗布した糊代部74を底面板62の内面に貼り付けることで、底面板(内板部)62の筒軸方向の一方端と第1折り目81を介して繋がる第1板71と、当該一方端よりも筒軸方向他方側で底面板62と第4折り目84を介して繋がる第3板73と、第1板71および第3板73とそれぞれ第2および第3折り目82,83を介して繋がる第2板72とを有し、底面板62側に開いたコ字状をなす立体的な蓋部70が形成される。
【0056】
この蓋部70は、第1板71、第2板72および第3板73が、一対の側面板53,54の対向方向から見て、底面板62側に開いたコ字状をなす閉塞形態と、第1板71と第2板72とが重なり且つ第3板73と底面板62とが重なる開封形態と、を採るように構成されている。これら閉塞形態と開封形態とは、切欠部51aから第2板72を押圧して、立体形状の蓋部70を押し潰すことで、閉塞形態から開封形態となる一方、開封形態から、第1板71を起こすようにして内箱部60をカバー部50に収容することで閉塞形態となる、という関係にある。
【0057】
また、第1板71の幅は、カバー部50の上面板51および底面板52の幅よりも大きく設定されており、これにより、内箱部60をカバー部50に収容する際、側面板53,54の筒軸方向一方側の端縁に第1板71の両側縁部が当接するので、内箱部60がカバー部50に対して必要以上に押し込まれないようになっている。
【0058】
さらに、第2板72は、その第1板71側の部位が底面板62の幅よりも大きい幅を有しており、閉塞形態では、当該第1板71側の部位の幅方向両端部が、一対の側面板63,64の上縁に形成された切欠部(図示せず)に乗り上げて載置されるようになっている。これにより、消費者が第2板72を押圧して蓋部70を押し潰さない限り、蓋部70の閉塞形態が維持されることから、包装対象物が脱落するのを抑えることができる。
【0059】
加えて、第2板72には、開封形態を採った状態で、第2板72における第1板71と重なった部位が底面板62よりも上面板51から離れる側に反るように、底面板62の筒軸方向の一方端と重なる部位に折り線85aが設けられている。そうして、第2板72を折り線85aに沿って折り曲げて第2板72における第1板71と重なった部位を反らせると、上記実施形態1と同様に、第1〜第4折り目81,82,83,84の折り癖が減殺されることと、折り線85aを折り曲げた折り目に折り癖がつくこととが相俟って、蓋部70が立体形状に戻り難くなる。したがって、開封時に、折り重なるように変形させた蓋部70が意図せず立体形状に戻るのを抑えることができる。
【0060】
以上のように、本変形例によれば、スライドオープンパッケージ方式の包装容器2においても、カバー部50から内箱部60を引き出すことなく、包装対象物をカバー部50から直接且つスムーズに取り出すことができる。
【0061】
(実施形態2)
本実施形態は、開封形態を維持するための折り線125aが第2板102ではなく第3板103に設けられている点が、上記実施形態1と異なるものである。以下、上記実施形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0062】
図7は、本実施形態に係る包装容器3を模式的に示す斜視図であり、
図8は、包装容器3の展開図である。この包装容器3は、相対向する上面板91および底面板92と、相対向する一対の側面板93,94と、筒軸方向他方側の端部を閉塞する閉塞部95と、を有する有底矩形筒状の本体部90と、当該本体部90の筒軸方向一方側の開口端を閉塞する蓋部100と、を備えている。なお、
図8は、本体部90の外面が図の表側となるように記載されている。
【0063】
−展開図−
図8に示す展開図において、矩形状の側面板94の左側には略矩形状の上面板91が、上面板91の左側には矩形状の側面板93が、側面板93の左側には矩形状の底面板92が、底面板92の左側には糊代部96が、それぞれ折り線111a,112a,113a,114aを介して連設されている。また、側面板94、上面板91、側面板93および底面板92の下側には、閉塞部95を構成するフラップ94a、上側閉塞板91a、フラップ93aおよび底側閉塞板92aがそれぞれ折り線115a,116a,117a,118aを介して連設されている。さらに、底面板92の上側には第1板101が、第1板101の上側には第2板102が、第2板102の上側には第3板103が、第3板103の上側には糊代部104が、それぞれ第1折り線121a,第2折り線122a,第3折り線123a,第4折り線124aを介して連設されている。上面板91の上端部には、切取ミシン線119aを介して開閉体91bが形成されている。
【0064】
図8に示すように、第1板101の幅は、蓋部100が本体部90に対して必要以上に押し込まれないように、上面板91および底面板92の幅よりも大きく設定されている。また、第2板102を本体部90に対して押し込み易くなるように、第2板102は、第1板101側の部位が上面板91および底面板92の幅と同じ幅を有する矩形状に形成されている一方、第3板103側の部位が先端に向かって窄む台形状に形成されている。さらに、本体部90の開口端をしっかりと閉塞することができるように、第1板101、第2板102および第3板103が連設される方向(以下、連設方向ともいう)における、第3板103の長さは、第1板101の長さよりも長く設定されている。
【0065】
また、第3板103には、第2折り線122aを挟んで第1折り線121aと線対称となる部位にエンボス加工によって折り線125aが形成されている。換言すると、第2折り線122aと折り線125aとの間隔は、連設方向における第1板101の長さと等しくなっている。
【0066】
−組み立て手順−
次に、以上のように構成された包装容器3の組み立て手順について説明する。先ず、
図8の展開図に従ってコートボールを打ち抜くとともに、
図8の裏面が表側になるように反転させる。次いで、第1〜第3折り線121a,122a,123aをそれぞれ谷折りするとともに第4折り線124aを山折りし、糊代部104を底面板92の内面に接着剤で貼り付ける。これにより、底面板92の筒軸方向の一方端と第1折り目121を介して繋がる第1板101と、当該一方端よりも筒軸方向他方側で底面板92と第4折り目124を介して繋がる第3板103と、第1板101および第3板103とそれぞれ第2および第3折り目122,123を介して繋がる第2板102とを有し、底面板92側に開いたコ字状をなす立体的な蓋部100が形成される(
図9(a)参照)。
【0067】
次いで、折り線111a,112a,113a,114aをそれぞれ谷折りし、糊代部96を側面板94の内面に接着剤で貼り付けるとともに、開閉体91bを第2板102の上面に接着剤で貼り付ける。これにより、糊代部96と貼着された側面板94と、側面板94と折り目111を介して繋がる上面板91と、上面板91と折り目112を介して繋がる側面板93と、側面板93および側面板94とそれぞれ折り目113,114を介して繋がる底面板92とを有し、蓋部100を包む矩形筒が形成される。
【0068】
次いで、折り線115a,117aをそれぞれ谷折りして、フラップ94a,93aを折畳み、折り線116a,118aをそれぞれ谷折りするとともに、上側閉塞板91aの内面と底側閉塞板92aの外面とを接着剤で貼り合せる。これにより、側面板94、上面板91、側面板93および底面板92とそれぞれ折り目115,116,117,118を介して繋がるフラップ94a、上側閉塞板91a、フラップ93aおよび底側閉塞板92aで構成される閉塞部95が形成されて、包装容器3の組み立てが完了する。
【0069】
−蓋部−
以上のように組み立てられた包装容器3においては、包装容器3を初めて開封する際に、第2板102と糊付された開閉体91bを押圧して切取ミシン線119aに沿って切り取る。これにより、蓋部100は、
図9(a)に示すように、第1板101、第2板102および第3板103が、一対の側面板93,94の対向方向から見て、底面板92側に開いたコ字状をなす閉塞形態と、
図9(b)に示すように、第1板101と第2板102とが重なり且つ第3板103と底面板92とが重なる開封形態と、を採ることが可能な状態となる。
【0070】
ここで、上記実施形態1と同様に、第2板102に折り線を形成して底面板92よりも上面板91から離れる側に反らせれば、蓋部100が立体形状に戻るのを抑制することができる。しかしながら、本実施形態のように包装容器3の厚さが相対的に厚い場合、換言すると、連設方向における第1板101の長さが相対的に長い場合に、第2板102に折り線を形成しようとすると、必然的に第2板102が長くなり、その結果、本体部90における蓋部100の占める割合が大きくなり過ぎて、包装可能な包装対象物の数が少なくなるという問題がある。
【0071】
そこで、本実施形態の包装容器3では、上述の如く、第3板103に折り線125aを形成して、かかる折り線125aに沿って第3板103を折り曲げることにより、
図4(b)に示すように、第2板102と共に第3板103における第1板101と重なった部位を、底面板92よりも上面板91から離れる側に反らせるようにしている。より詳しくは、第2折り線122aと折り線125aとの間隔は、連設方向における第1板101の長さと等しくなっていることから、折り線125aは、第3板103における底面板92の一方端と重なる部位に設けられていることになる。それ故、折り線125aに沿って第3板103を折り曲げると、第3板103における第1板101と重なった部位と第1板101と第2板102とが、底面板92よりも上面板91から離れる側に反ることになる。
【0072】
このように、第3板103を折り曲げて第3板103における第1板101と重なった部位を反らせると、上記実施形態1と同様に、第1〜第4折り目121,122,123,124の折り癖が減殺されることと、折り線125aを折り曲げた折り目125に折り癖がつくこととが相俟って、蓋部100が立体形状に戻り難くなる。これにより、本実施形態の包装容器3では、開封時に、折り重なるように変形させた蓋部100が意図せず立体形状に戻ることなく、
図10に示すような状態が維持されるので、包装対象物を容易に取り出すことが可能となる。
【0073】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神または主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0074】
上記各実施形態では、包装容器1,2,3の筒軸方向一方側に蓋部20,70,100を設けるようにしたが、これに限らず、例えば包装容器1,2,3の筒軸方向両側に蓋部20,70,100を設けるようにしてもよい。
【0075】
また、上記変形例では、カバー部50を両端が開口された矩形筒状としたが、これに限らず、例えば閉塞板65側が閉塞された有底矩形筒状のカバー部としてもよい。
【0076】
さらに、上記変形例では、内箱部60を上面が開放された箱状体としたが、カバー部50の底面板52と重なりながらカバー部50に出し入れ自在に収容される底面板(内板部)62を備えているのであれば、これに限らず、内箱部60をどのような形状に形成してもよい。
【0077】
また、上記実施形態2では、有底矩形筒状の本体部90に蓋部100を設けた包装容器3についてのみ説明したが、これに限らず、第3板103に折り線125aが設けられた包装容器3についても、上記実施形態1の変形例と同様に、スライドオープンパッケージ方式を採用してもよい。
【0078】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。