(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
使用者を支持する支持面の少なくとも一部がセルで構成されていると共に、中空構造とされた該セル内の流体室に対する流体の給排によって該セルが伸縮可能とされている流体セル式マットレスにおいて、
複数の前記セルを含んで構成されるセル群が設けられており、該セル群をなす複数の該セルの前記流体室が群内連通路を通じて相互に連通されていると共に、該群内連通路には該セル群をなす複数の該セルの該流体室間の連通と遮断を一括して切り替える第一のバルブが配設されている一方、該セル群が複数設けられて、それらセル群を相互に繋ぐ群間連通路がそれらセル群の各該第一のバルブに接続されており、該群内連通路の流通抵抗が該群間連通路を含んで構成された排出側流路の流通抵抗よりも小さくされていることを特徴とする流体セル式マットレス。
複数の前記セル群の間における前記流体室の前記群間連通路を通じた連通と遮断を一括して切り替える第二のバルブが配設されていると共に、該群間連通路と協働して前記排出側流路を構成する外部流路が該第二のバルブに接続されており、該群間連通路の流通抵抗が前記群内連通路の流通抵抗よりも大きく且つ該外部流路の流通抵抗よりも小さくされている請求項1〜3の何れか一項に記載の流体セル式マットレス。
弾性体層の両面に相互に異なる方向へ延びる電極の各一方を重ね合わせた構造を有するとともにそれら電極の交差対向部分に構成される圧力検出部に対してそれら電極の対向方向に作用する圧力を検出して前記支持面の圧力分布を検出するシート状の圧力センサが設けられており、
前記第一のバルブが該圧力センサの検出結果に基づいて連通状態と遮断状態に切り替えられるようになっていると共に、
該圧力センサが厚さ方向と面方向の伸縮性を備えている請求項1〜5の何れか一項に記載の流体セル式マットレス。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、使用者の体表面の凹凸に対して可及的速やかに且つ精度よく対応可能な支持面を、簡単な構造によって実現することができる、新規な構造の流体セル式マットレスを提供することにある。
【0008】
また、本発明は、流体セル式マットレスにおいて、セルの伸縮を使用者の体圧分布に応じて簡単に精度よく制御することができる、新規な流体セル式マットレスの制御方法を提供することも、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0010】
すなわち、本発明の第一の態様は、使用者を支持する支持面の少なくとも一部がセルで構成されていると共に、中空構造とされた該セル内の流体室に対する流体の給排によって該セルが伸縮可能とされている流体セル式マットレスにおいて、複数の前記セルを含んで構成されるセル群が設けられており、該セル群をなす複数の該セルの前記流体室が群内連通路を通じて相互に連通されていると共に、該群内連通路には該セル群をなす複数の該セルの該流体室間の連通と遮断を一括して切り替える第一のバルブが配設されている一方、該セル群が複数設けられて、それらセル群を相互に繋ぐ群間連通路がそれらセル群の各該第一のバルブに接続されており、該群内連通路の流通抵抗が該群間連通路を含んで構成された排出側流路の流通抵抗よりも小さくされていることを、特徴とする。
【0011】
本発明の第一の態様に従う構造とされた流体セル式マットレスによれば、セル群を構成する複数のセルの流体室間の連通と遮断が第一のバルブによって切り替えられることから、連通状態においてセル相互間で圧力の分配が生じて体圧の分散化などが図られる。一方、遮断状態において各セルの流体室が独立することで、特定のセルに大きな圧力が作用して当該セルが収縮する際に、入力を受けたセルと同じセル群の他のセルが入力を受けたセルからの流体流入によって伸長するのを防いで、支持面における圧力作用部分で安定した支持が実現されると共に、他の部分で支持面の不必要な変形が回避されて寝心地の改善などが図られる。
【0012】
さらに、セル群を構成する複数のセルの流体室間の連通と遮断が、第一のバルブによって一括で切り替えられることから、セルごとにバルブを配する構造に比べてバルブの数を少なくすることができる。しかも、バルブの切替え制御も簡単になって、制御装置の小型化なども図られ得る。
【0013】
また、例えば、同じセル群を構成する複数のセルを相互に近い位置に配置して、それら同じセル群のセルが使用者の体表面における同じ凸部または凹部を支持し得るようにすれば、第一のバルブの開放時にセル群内での流体の移動が優先的に生じて、セル群を構成する複数のセルが相互に連動して伸縮することにより、支持面が使用者の体表面の凹凸に対応する形状により短い時間で且つ高精度に変形して、体圧の分散化が有利に図られ得る。また、第一のバルブを選択的に閉じることにより、1つのセル群で構成される支持面の局所的な領域ごとに選択的に支持面の変形を制限することができて、体表面の凹凸に対応した領域において安定した支持面を維持することができる。
【0014】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載された流体セル式マットレスにおいて、前記排出側流路の外部への開放と遮断を切り替える排出バルブが設けられているものである。
【0015】
第二の態様によれば、セル群を構成するセル間での流体流動だけでなく、流体室から外部への流体の排出が排出バルブによって可能とされることから、支持面の変形特性を調節することができると共に、体圧分散をより効果的に実現することができる。
【0016】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載された流体セル式マットレスにおいて、前記セルの前記流体室に流体を供給するポンプが前記排出側流路に接続されているものである。
【0017】
第三の態様によれば、外部から流体室への流体の供給がポンプによって可能とされることから、支持面の変形特性を調節することができる。また、第二の態様と組み合わせて採用することにより、圧力作用時に排出バルブによって流体室内の流体を外部へ排出するとともに圧力作用の解除時にポンプによって流体を流体室に補充することができる。
【0018】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか一つの態様に記載された流体セル式マットレスにおいて、複数の前記セル群の間における前記流体室の前記群間連通路を通じた連通と遮断を一括して切り替える第二のバルブが配設されていると共に、該群間連通路と協働して前記排出側流路を構成する外部流路が該第二のバルブに接続されており、該群間連通路の流通抵抗が前記群内連通路の流通抵抗よりも大きく且つ該外部流路の流通抵抗よりも小さくされているものである。
【0019】
第四の態様によれば、セル群間における群間連通路を通じた流体移動の許容と阻止が第二のバルブによって切替え可能とされることから、セル群間における流体の移動を許容することで圧力の分散化がより有効に実現される。一方、セル群間における流体の移動を遮断することにより、例えば近くに配されてセル群を構成するセルの流体室間でのみ流体移動を許容して、体表面の凹凸に沿った支持面をより速やかに実現することができる。
【0020】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか一つの態様に記載された流体セル式マットレスにおいて、前記排出側流路が前記群内連通路よりも長くされているものである。
【0021】
第五の態様によれば、群内連通路の流通抵抗を排出側流路の流通抵抗よりも小さくし易くなる。
【0022】
本発明の第六の態様は、第一〜第五の何れか一つの態様に記載された流体セル式マットレスにおいて、弾性体層の両面に相互に異なる方向へ延びる電極を重ね合わせた構造を有するとともにそれら電極の交差対向部分に構成される圧力検出部に対してそれら電極の対向方向に作用する圧力を検出して前記支持面の圧力分布を検出するシート状の圧力センサが設けられており、前記第一のバルブが該圧力センサの検出結果に基づいて連通状態と遮断状態に切り替えられるようになっていると共に、該圧力センサが厚さ方向と面方向の伸縮性を備えているものである。
【0023】
第六の態様によれば、支持面に作用する圧力の圧力センサによる検出結果に基づいて第一のバルブの開閉が制御されることにより、使用者の体表面の凹凸に沿った支持面の変形が精度よく制御されて、体圧の分散化による寝心地の改善などが有利に実現される。更に、圧力センサが伸縮性を備えていることにより、例えば圧力センサが支持面上に配設される場合などに、圧力センサが支持面の変形に追従して変形可能とされて、圧力センサが突っ張るなどして寝心地が悪化するのを回避することができる。
【0024】
本発明の第七の態様は、第一〜第六の何れか一つの態様に記載された流体セル式マットレスを制御する方法であって、前記流体セル式マットレスには前記排出側流路の外部への開放と遮断を切り替える排出バルブが設けられており、前記セルに対する圧縮力の作用時に前記排出バルブを開く排出バルブ開放ステップと、該排出バルブの開放と同時に或いは該排出バルブの開放後に少なくとも一つの前記セル群に接続された前記第一のバルブを開く第一のバルブ開放ステップとを、
おこなわせる制御装置を前記流体セル式マットレスが有することを、特徴とする。
【0025】
第七の態様によれば、第一のバルブの開放によって、セル群をなすセルの流体室間での流体移動と、排出バルブによる外部への流体の排出が同時に開始されることから、流体の移動と排出によって速やかな体圧の分散化が図られる。
【0026】
本発明の第八の態様は、第一〜第六の何れか一つの態様に記載された流体セル式マットレスを制御する方法であって、前記流体セル式マットレスには前記排出側流路の外部への開放と遮断を切り替える排出バルブが設けられており、少なくとも一つの前記セル群に接続された前記第一のバルブを開く第一のバルブ開放ステップと、該第一のバルブの開放から所定の時間が経過した後で前記排出バルブを開く排出バルブ開放ステップとを、
おこなわせる制御装置を前記流体セル式マットレスが有することを、特徴とする。
【0027】
第八の態様によれば、排出バルブを閉じながら第一のバルブを開放した状態を所定の時間に亘って維持して、支持面を体圧分布に応じた形状に変形させた後、排出バルブを開くことで支持面全体において圧力の低減が図られる。これにより、体圧分散を十分に実現しながら流体の過剰な排出を回避することができて、底付きの発生を有利に防ぐことなどが可能になる。
【0028】
本発明の第九の態様は、第七又は第八の態様に記載された流体セル式マットレスの制御方法において、前記第一のバルブ開放ステップにおいて複数の
前記セル群に接続された各前記第一のバルブを同時に開放するものである。
【0029】
第九の態様によれば、複数の第一のバルブを同時に開放することにより、複数のセル群をなすセルの流体室が相互に連通されて、体圧の分散化が図られる。なお、第七の態様と組み合わせて採用することにより、複数のセル群をなすセルの流体室からそれぞれ流体が排出されて、体圧分散がより速やかに実現され得る。一方、第八の態様と組み合わせて採用して、排出バルブを閉じながら複数の第一のバルブを開くことにより、セル群間での流体の移動が許容されて、支持面がより効率的に体表面に沿った形に変形し得る。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、セル群を構成する複数のセルの流体室相互の連通と遮断が第一のバルブによって切り替えられることによって、連通状態で流体の移動による体圧の分散化などが図られると共に、遮断状態では各セルの流体室が独立して流体室間での流体の移動が防止されることから、支持面における圧力作用部分での安定した支持が実現されると共に、他の部分で支持面の不必要な変形が回避されて寝心地の改善などが図られる。更に、セル群を構成する複数のセルの流体室間の連通と遮断が、第一のバルブによって一括して切り替えられることから、セルごとにバルブを配する構造に比べてバルブの数を少なくすることができると共に、バルブの切替え制御も簡単になる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0033】
図1には、本発明の第一の実施形態としての流体セル式マットレス10(以下、マットレス10)が分解された状態で示されている。マットレス10は、マットレス本体12と圧力センサ14と上クッション16を備えている。以下の説明において、上下方向とは、鉛直方向となる
図1中の上下方向を言う。また、幅方向とはマットレス10上に仰向けに横たわる使用者の左右方向となるマットレス10の短手方向を、長さ方向とはマットレス10上に横たわる使用者の体軸方向となるマットレス10の長手方向を、それぞれ言う。
【0034】
マットレス本体12は、
図1,2に示すように、略矩形平板形状の底板部18と、幅方向(
図2中、左右方向)の両端部において底板部18上に配設された端座部20,20と、それら端座部20,20の間において底板部18上に配設されたクッション部22とを、備えている。
【0035】
底板部18は、例えば独立気泡で発泡率の低い比較的に硬いウレタンフォームなどで形成されており、使用者や介護者(看護者)などが及ぼす荷重によってある程度までの弾性変形を生じるようになっていると共に、後述する上クッション16に比して変形し難くなっている。なお、底板部18は、長さ方向(
図2の紙面直交方向)の中間部分で頭部側と脚部側に分割されている。
【0036】
端座部20は、
図1に示すように、底板部18と同様の材質で形成されており、底板部18の幅方向端部上に配設される柱状下部24が長さ方向に所定の間隔で複数設けられていると共に、長さ方向へ連続して延びる梁状上部26が柱状下部24に載せられた構造を有している。なお、端座部20は、底板部18の分割位置と対応する位置で頭部側と脚部側に分割されている。
【0037】
クッション部22は、3つの弾性支持体28,28,28と、多数のセル30,30,・・・,30とによって構成されている。弾性支持体28は、底板部18および端座部20と同様の材質で形成されており、幅方向に延びる矩形ブロック形状を有している。本実施形態では、2つの弾性支持体28,28が図示しない使用者の背中を支持する部分に長さ方向に隣接して配設されていると共に、1つの弾性支持体28が図示しない使用者の足を支持する部分に他の2つから離れて配設されている。
【0038】
セル30は、
図2に示すように、合成樹脂膜などで形成された中空の袋状とされており、内部に流体室32を備えている。この流体室32は、流体が充填されていると共に、セル30の下端に設けられたセル側ポート34を通じて流体室32に対する流体の給排が可能とされている。そして、セル30は、流体室32に対する流体の給排によって上下方向に伸縮可能とされている。流体室32内の流体は、特に限定されるものではなく、各種の気体や液体が採用され得るが、本実施形態では流体として空気が採用されている。
【0039】
なお、本実施形態のセル30は、上部袋体36と下部袋体38を上下に重ねて配置して、重なり合った中央部分に貫通孔を形成することで流体室32を形成した構造とされており、上下中間部分に括れを有する二段形状を有している。これにより、使用者の体表面形状に対する支持面42(後述)の変形追従性の向上や、セル30の上下方向の伸縮ストロークの拡大などが実現される。
【0040】
このようなセル30は、
図1に示すように、端座部20,20の幅方向間で3つの弾性支持体28,28,28を長さ方向へ外れた位置に配設されており、複数が二次元的に並んで配置されている。本実施形態では、セル30が幅方向に6列で配列されており、使用者の頭部を支持する部分に18個のセル30が配設されていると共に、使用者の腰部および脚部を支持する部分に54個のセル30が配設されている。なお、複数のセル30は、それぞれが独立して配設されるようになっていても良いが、本実施形態では、下方へ突出するセル側ポート34がウレタンフォームなどで形成された連結シート40に固定されることにより、それらセル30が相互に位置決めされていると共に、それらセル30を一体的に取り扱うことができるようになっている。
【0041】
このように、3つの弾性支持体28,28,28と複数のセル30が底板部18上で端座部20,20の幅方向間に配設されることにより、マットレス本体12が構成されている。このマットレス本体12の上面が支持面42とされており、支持面42がセル30の上面を含んで構成されている。なお、本実施形態の端座部20,20は、例えば、使用者がマットレス10上から車椅子へ移動する際に座したり、介護者(看護者)が手や膝などをついたりする領域であって、比較的に硬く形状が安定していることから、使用者は、クッション部22で構成される支持面42の幅方向中央部分に横たわることによって、優れたクッション性(体圧分散性)を得ることができる。
【0042】
また、各セル30のセル側ポート34には、
図3に示すように、群内配管44が接続されている。群内配管44は、中空チューブ状であって、本実施形態では幅方向に並んで配される3つのセル30,30,30の各セル側ポート34に接続されている。そして、3つのセル30,30,30の流体室32が群内配管44の内孔と後述する第一のバルブ50の第一の内部流路62とで構成された群内連通路46によって相互に連通されており、それら3つのセル30,30,30によってセル群48が構成されている。なお、本実施形態では、2つのセル群48,48がマットレス本体12の幅方向に並んで設けられており、マットレス本体12の全体では24のセル群48が設けられている。
【0043】
さらに、群内配管44には、第一のバルブ50が接続されている。第一のバルブ50は、多ポート弁であって、本実施形態では
図4に示すようなスプール弁とされている。この第一のバルブ50は、筒状のスリーブ52に対してスプール54が軸方向で摺動可能に挿入された構造を有している。なお、ここではスプール弁を採用した例を説明するが、第一のバルブ50および後述する第二のバルブ74としては、例えばポペット弁などの各種公知構造の多ポート弁を採用することが可能である。
【0044】
スリーブ52は、スプール収容空所56を備えた筒状の部材であって、周壁には3つの第一のポート58,58,58が形成されている。第一のポート58は、筒状とされてスリーブ52から外周へ向けて突出していると共に、内孔がスリーブ52の周壁を貫通してスプール収容空所56に繋がっている。更に、スリーブ52の周壁には、第二のポート60が形成されている。この第二のポート60は、第一のポート58と同様の構造とされており、内孔がスリーブ52の周壁を第一のポート58とは異なる部位で貫通してスプール収容空所56に繋がっている。そして、スリーブ52の内孔と第一のポート58の内孔と第二のポート60の内孔とによって、第一の内部流路62が形成されており、群内連通路46が第一の内部流路62を含んで構成されることによって、群内連通路46上に第一のバルブ50が配設されている。本実施形態の第一の内部流路62は、第一のポート58の内孔で構成された一方の端部が、3つに分岐している。また、スリーブ52には、周壁を貫通する空気抜き孔64が形成されている。
【0045】
スプール54は、全体として略円柱形状とされて、スリーブ52のスプール収容空所56に収容されており、スリーブ52に摺接する4つの大径部66,66,66,66が軸方向に所定の距離を隔てて設けられている。
さらに、図4に示すように、軸方向で隣り合う大径部66,66の間には、それぞれ小径部68が設けられており、4つの大径部66,66,66,66が、3つの小径部68,68,68によって軸方向で相互に連結されている。
【0046】
なお、図示は省略したが、スリーブ52の基端側(図
4中の左側)に電磁式アクチュエータの固定子が取り付けられていると共に、スプール54の基端部分に電磁式アクチュエータの可動子が取り付けられており、電磁式アクチュエータの出力によってスプール54がスリーブ52に対して軸方向(図
4中の左右方向)へ相対変位可能とされている。この電磁式アクチュエータとしては、直線的な出力を得ることができるものであれば、各種公知の構造を採用可能であり、例えば特開2007−211857号公報に記載の構造などが採用され得る。尤も、第一のバルブ50および後述する第二のバルブ74は、例えば油圧や空気圧で作動するものであっても良い。
【0047】
そして、第一のバルブ50は、スプール54の大径部66が各第一のポート58のスリーブ52内への開口部を外れて位置する
図4(a)の状態において、スプール54の大径部66を外れた部分
(小径部68)の外周側で第一のポート58と第二のポート60が連通されて、第一の内部流路62が連通状態とされている。
【0048】
一方、スプール54の大径部66が各第一のポート58の開口部に位置する
図4(b)の状態において、各第一のポート58の開口部がスプール54の大径部66によって塞がれて、第一の内部流路62が遮断状態とされている。このように、第一のバルブ50は、スプール54の軸方向(
図4中、左右)への移動によって、3つの第一のポート58,58,58の連通と遮断を一括して切り替え可能とされている。なお、本実施形態では、スプール54の先端とスリーブ52の先端との軸方向対向間にコイルスプリング70が配設されており、図示しない電磁式アクチュエータの出力によってコイルスプリング70が圧縮されて第一の内部流路62が連通されると共に、電磁式アクチュエータの出力を解除することによって、コイルスプリング70の弾性に基づいてスプール54が初期位置に移動して、第一の内部流路62が遮断されるようになっている。また、空気抜き孔64がスプール54よりも先端側に形成されており、電磁式アクチュエータの出力時にスプール54の先端に作用する空気ばねが低減されている。
【0049】
かくの如き構造とされた第一のバルブ50の3つの第一のポート58,58,58に対して、それぞれ群内配管44が取り付けられており、それら3つの第一のポート58,58,58が3つのセル30,30,30のセル側ポート34,34,34に対してそれぞれ群内配管44で接続されている。これにより、3つのセル30,30,30の流体室32を相互に連通する群内連通路46が、群内配管44の内孔と第一のバルブ50の第一の内部流路62によって構成されている。更に、同じセル群48を構成する3つのセル30,30,30は、各流体室32間の連通と遮断が第一のバルブ50によって一括して切り替えられるようになっている。
【0050】
一方、第一のバルブ50の第二のポート60には、群間配管72が取り付けられている。群間配管72は、
図3に示すように、複数の第一のバルブ50の第二のポート60を相互に繋ぐように設けられており、本実施形態では、群間配管72の一方の端部が第一のバルブ50の第二のポート60に接続されていると共に、他方の端部が第二のバルブ74に接続されている。
【0051】
第二のバルブ74は、第一のバルブ50と同様のスプール弁などとされており、本実施形態では、
図5に示すように、スリーブ76に2つの第三のポート78,78が設けられているとともに1つの第四のポート80が設けられている一方、スプール54には3つの大径部66,66,66が形成されて
おり、それら3つの大径部66,66,66が2つの小径部68,68で軸方向に連結されている。そして、スリーブ76の内孔と第三のポート78,78の内孔と第四のポート80の内孔とによって、第二の内部流路82が形成されている。なお、第二のバルブ74において第一のバルブ50と実質的に同一であると把握される部材および部位は、図中に同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
そして、2つの第三のポート78,78にそれぞれ群間配管72が取り付けられて、第二のバルブ74の第三のポート78,78が2つの第一のバルブ50,50の各第二のポート60と群間配管72,72によって接続されており、2つのセル群48,48が群間配管72および第二のバルブ74を介して相互に接続されている。これにより、2つのセル群48,48を構成する複数のセル30の流体室32は、群内配管44の内孔と第一のバルブ50の第一の内部流路62で構成される群内連通路46と、群間配管72の内孔と第二のバルブ74の第二の内部流路82で構成される群間連通路84とによって、相互に連通される。
【0053】
さらに、第二のバルブ74の第四のポート80には、外部配管86が取り付けられている。外部配管86は、群内配管44や群間配管72と同様のチューブであって、一方の端部が第二のバルブ74の第四のポート80に取り付けられると共に、他方の端部がポンプ88および排出バルブ90に取り付けられることにより、
図3に示すように、第二のバルブ74の第四のポート80とポンプ88および排出バルブ90を接続している。これにより、2つのセル群48,48を構成する複数のセル30の流体室32は、群内連通路46と、群間連通路84と、外部配管86の内孔で構成される外部流路92とによって、ポンプ88および排出バルブ90に連通される。なお、本実施形態では、
図1,2に示すように、外部配管86が端座部20の柱状下部24を貫通して長さ方向に延びており、端座部20の脚部側端部から外部へ延び出して、ポンプ88と排出バルブ90に接続されている。
【0054】
そして、第一のバルブ50と第二のバルブ74が開放された状態では、ポンプ88による流体室32への空気の供給と、排出バルブ90を通じた流体室32の空気の排出とが、選択的に実行可能とされている。なお、本実施形態では、セル30の流体室32に空気を圧送するポンプ88と、セル30の流体室32の外部流路92を介した大気中への開放と遮断を切り替える排出バルブ90とが、別々に設けられているが、流体室32に対する空気の給排を可能とする装置によってポンプ88と排出バルブ90の機能を併せ持たせることもできる。
【0055】
また、第一のバルブ50を開くとともに第二のバルブ74を閉じた状態において、同じセル群48を構成する3つのセル30,30,30の各流体室32が相互に連通されると共に、異なるセル群48に属するセル30の流体室32間が遮断される。これにより、相互に近い位置に配されて同じセル群48を構成する3つのセル30,30,30において、流体室32間の空気の移動による支持面42の変形が許容される。その結果、使用者の体表面の凸部を支持するセル30が収縮するとともに同じセル群48内の他のセル30が伸長することにより、支持面42が体表面の凹凸に沿って可及的速やかに変形して、体圧の分散化が迅速且つ高度に図られる。一方、相互に離れた位置に配されて別のセル群48を構成するセル30の間では、流体室32間の空気の移動が阻止されるようになっていることから、入力を受けたセル30の流体室32から遠くのセル30の流体室32へ空気が移動するのを防いで、底付きの防止などが図られる。なお、第二のバルブ74を閉じた状態では、ポンプ88による流体室32への空気の供給と、排出バルブ90による流体室32の空気の排出が何れも阻止されている。
【0056】
また、第一のバルブ50を閉じることにより、同じセル群48を構成する3つのセル30,30,30の各流体室32間が遮断される。これにより、3つのセル30,30,30の流体室32,32,32を独立させて、それらセル30,30,30の伸縮を制限し、支持面42の安定化を図ることができる。
【0057】
ここにおいて、群内連通路46の流通抵抗は、群間連通路84および外部流路92によって構成される排出側流路94の流通抵抗よりも小さくされている。本実施形態では、相互に近くに配置されたセル群48内のセル30,30,30を相互に繋ぐ群内連通路46が、セル群48,48を相互に繋ぐ群間連通路84および群間連通路84をポンプ88や排出バルブ90に繋ぐ外部流路92に対して、略同じ断面積で且つ短くされていることにより、群内連通路46の流通抵抗が排出側流路94の流通抵抗よりも小さくされている。
【0058】
このように、群内連通路46の流通抵抗が排出側流路94の流通抵抗よりも小さくされていることによって、第一のバルブ50と第二のバルブ74が何れも開いている状態において、同じセル群48を構成するセル30,30,30の各流体室32間における空気の移動が、異なるセル群48,48間での空気の移動よりも優先的に生じるようになっている。
【0059】
さらに、群間連通路84の流通抵抗は、群内連通路46の流通抵抗よりも大きく且つ外部流路92の流通抵抗よりも小さくされている。これにより、同じセル群48を構成するセル30,30,30の各流体室32間における空気の移動が、異なるセル群48,48間での空気の移動よりも優先的に生じるようになっていると共に、異なるセル群48,48間での空気の移動が流体室32内の空気の外部への排出よりも優先的に生じるようになっている。本実施形態では、群間連通路84の長さが群内連通路46よりも長く且つ外部流路92よりも短くされていることによって、群間連通路84の流通抵抗が群内連通路46の流通抵抗よりも大きく且つ外部流路92の流通抵抗よりも小さくされている。
【0060】
なお、群内連通路46と群間連通路84と外部流路92の各流通抵抗の違いは、上記のように通路長さの違いで設定する他、例えば、通路断面積を大きくしたり、通路壁内面を滑らかにしたり、通路壁内面に低摩擦層を設けたりすることによって流通抵抗を小さくするなど、種々の手法で設定することが可能である。
【0061】
このようなマットレス本体12の支持面42には、
図1に示すように、圧力センサ14が重ね合わされている。圧力センサ14は、全体として可撓性のシート状とされており、本実施形態では面方向および厚さ方向の伸縮性も備えている。この圧力センサ14は、
図6に示すように、弾性体層としての誘電体層96の一方の面にエラストマシート98aが重ね合わされると共に、誘電体層96の他方の面にエラストマシート98bが重ね合わされた構造を、有している。
【0062】
誘電体層96は、電気絶縁性エラストマや樹脂発泡体で形成されて、板状乃至はシート状とされており、面方向および厚さ方向で弾性的に伸縮変形可能とされている。なお、誘電体層96の形成材料としては、例えば、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル−ポリ塩化ビニリデン共重合体、エチレン−酢酸共重合体などが、好適に採用される。更に、誘電体層96は発泡体であっても良く、必要な誘電率と柔軟性が確保されれば、その発泡体は、必ずしも独立気泡によって均質な相を呈するものに限定されず、例えば連続気泡が形成されるなどして不均一な相を呈していても良い。また、誘電体層96の厚さや形成材料などは、後述する圧力検出部106において求められる比誘電率や柔軟性に応じて適宜に設定される。
【0063】
エラストマシート98aとエラストマシート98bは、本実施形態では平面視で略矩形とされて、互いに略同じ材料および形状で形成されており、繊維やゴム弾性を有するエラストマで形成された電気絶縁性のシートであって、厚さ方向の曲げ変形と面方向の伸縮変形が何れも許容されている。さらに、エラストマシート98a,98bには、周上の一辺において外周へ突出する一組の接続片100,102が並んで設けられている。なお、エラストマシート98a,98bの形成材料は、特に限定されるものはないが、たとえばシリコーンゴム、エチレン−プロピレン共重合ゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、ポリエステル繊維、アクリル繊維などが、好適に採用される。また、図中のエラストマシート98a,98bは、理解を容易とするために透明とされているが、不透明でも良い。
【0064】
さらに、エラストマシート98aの下面に電極104aが形成されていると共に、エラストマシート98bの上面に電極104bが形成されている。電極104a,104bは、何れも導電性の金属や導電性フィラーを混合したエラストマで形成されており、直線的に延びる薄肉帯状とされている。また、電極104a,104bは、各複数が並列的に並んで形成されていると共に、それら電極104aと電極104bが互いに傾斜して延びており、本実施形態では互いに略直交する方向へ延びている。
【0065】
更にまた、エラストマシート98a,98bは、電極104a,104bの配設領域よりも外側まで広がっており、エラストマシート98a,98bの電極104a,104bよりも外側には、それぞれ図示しないプリント配線が導電性材料によって印刷されている。そして、エラストマシート98aのプリント配線が電極104aの一端から一方の接続片100まで延びていると共に、エラストマシート98bのプリント配線が電極104bの一端から他方の接続片102まで延びている。なお、プリント配線は、例えば、エラストマシート98a,98bの表面に導電性インクによってプリントされた配線パターンとして得ることができる。更に、電極104a,104bは、導電性エラストマで形成された導電性インクによって、プリント配線と同様にエラストマシート98a,98bに印刷して形成することもできる。また、エラストマシート98a,98bは、電極104a,104bの配設領域およびプリント配線の形成領域を外れた外周端部において、接着剤や接着テープなどによって相互に固着されている。
【0066】
かくの如き構造とされたエラストマシート98aとエラストマシート98bが、誘電体層96の上下各一方側から重ね合わされている。これにより、エラストマシート98aの電極104aとエラストマシート98bの電極104bとが、誘電体層96を挟んで互いに対向するように交差して配置されている。そして、電極104aと電極104bの誘電体層96を介した交差対向部分においてコンデンサが構成されており、かかるコンデンサによって圧力検出部106が構成されている。なお、
図6(a)では、誘電体層96および電極104a,104bが細線によって図示されている。
【0067】
これら電極104a,104bの交差対向部分(圧力検出部106)では、誘電体層96とエラストマシート98a,98bの積層方向(上下方向)へ圧力が加わると、誘電体層96が変形して電極104a,104b間の距離が短くなって、入力を受けた圧力検出部106の静電容量が変化する。それ故、各圧力検出部106における静電容量の変化を検知することで、各圧力検出部106に及ぼされた圧力を検出することが可能とされて、感圧部108が構成されており、複数の圧力検出部106によって感圧部108に作用する圧力の分布を検出可能とされている。要するに、圧力センサ14は、電極104a,104bの各交差部分(圧力検出部106)が静電容量型の圧力検出素子として機能して、各圧力検出素子の検出結果に基づいて圧力分布を検出する静電容量型のセンサとされている。なお、圧力センサ14が厚さ方向の伸縮性を有しているとは、圧力センサ14が厚さ方向の圧縮入力に対して収縮変形可能とされていると共に、入力の解除時に圧力センサ14が弾性によって元の形状に復元することであって、必ずしも厚さ方向で初期形状よりも伸び得るものではなくても良い。
【0068】
また、端座部20の柱状下部24の長さ方向間に制御装置110が配設されている(
図1参照)と共に、電極104a,104bがプリント配線を介して制御装置110に電気的に接続されており、電極104a,104bが制御装置110から検出用電流を供給されると共に、圧力検出部106の静電容量値が制御装置110によって検出されるようになっている。更に、制御装置110が端座部20に配されており、外部配管86とともに配索されて長さ方向へ延びる図示しない電気配線によって、制御装置110が図示しない外部電源や演算装置などに接続されている。更にまた、制御装置110は、第一,第二のバルブ50,74と接続されており、制御装置110が第一,第二のバルブ50,74に開閉信号を送信することで、それら第一,第二のバルブ50,74を圧力センサ14の検出結果に基づいて開閉する。
【0069】
また、
図1に示すように、マットレス本体12の支持面42には、上クッション16が重ね合わされている。上クッション16は、略板状の柔軟なウレタンフォームによって形成されている。
【0070】
そして、3つの圧力センサ14,14,14が長さ方向に並んでマットレス本体12の支持面42上に配設されると共に、マットレス本体12および圧力センサ14,14,14の上に上クッション16が重ね合わされて、圧力センサ14,14,14がマットレス本体12と上クッション16の間で支持面42に対して位置決めされている。圧力センサ14,14,14の各圧力検出部106が各セル30の上面に位置決めされており、各圧力検出部106が支持面42に作用する圧力を精度よく検出可能とされている。なお、圧力センサ14は、マットレス本体12と上クッション16の間に配されて位置決めされていても良いが、上クッション16に圧力センサ14を収容する袋状の位置決め体を設けて、位置決め体に収容された圧力センサ14が支持面42上に位置決めされるようにしても良い。
【0071】
このように支持面42上に配設される圧力センサ14,14,14によって支持面42の圧力分布が検出されると共に、圧力センサ14,14,14によって検出された支持面42の圧力分布に基づいて、第一,第二のバルブ50,74および排出バルブ90の開放と閉鎖の切り替えが制御されると共に、ポンプ88の作動と停止が制御されるようになっている。
【0072】
このような本実施形態に従う構造とされたマットレス10では、群内連通路46の流通抵抗が、群間連通路84および外部流路92で構成される排出側流路94の流通抵抗よりも小さくされている。これにより、第一,第二のバルブ50,74が開いた状態において、同じセル群48のセル30,30,30が相互に連動して伸縮することから、支持面42においてそれらセル30,30,30で構成された部分が体表面の凹凸に沿って速やかに変形し易くなる。具体的には、例えば特定のセル30に圧縮力が作用すると、入力を受けたセル30から流出した空気が同じセル群48の他のセル30,30に流入して、入力を受けたセル30が収縮する一方で、他のセル30,30が伸長する。それ故、体表面の凸部の頂点を支持するセル30が収縮すると共に、頂点を外れた部位を支持するセル30,30が伸長して、体表面の凸部に対してセル群48が速やかに広い範囲で当接することから、体圧の分散化が有利に図られる。
【0073】
また、群間連通路84の流通抵抗が、群内連通路46の流通抵抗よりも大きく且つ外部流路92の流通抵抗よりも小さくされている。これにより、同じセル群48内での空気の移動が異なるセル群48,48間での空気の移動よりも優先的に生じるようになっていると共に、異なるセル群48,48間での空気の移動が流体室32から大気中への空気の排出よりも優先的に生じるようになっている。それ故、使用者の体表面に沿った支持面42の変形が有効に生じると共に、流体室32から大気中への空気の排出が制限されて、空気の過剰な抜けによる底付きの発生などが回避される。
【0074】
さらに、本実施形態では、群内連通路46と群間連通路84と外部流路92の流通抵抗の違いが、それら通路の長さの違いによって設定されており、目的とする流通抵抗の違いを簡単に実現することができる。
【0075】
また、マットレス10では、相互に近い位置に配されて同じセル群48を構成する三つのセル30,30,30の各流体室32が、相互の連通と遮断を第一のバルブ50によって一括して切り替えられるようになっている。これにより、セル群48内で空気の移動が許容される状態と、各セル30の流体室32が相互に独立した状態とを、少ないバルブで切り替えることができる。
【0076】
さらに、マットレス10では、幅方向に並んで配置される二つのセル群48,48を繋ぐ群間配管72が第二のバルブ74に接続されており、一方のセル群48を構成するセル30,30,30の各流体室32と他方のセル群48を構成するセル30,30,30の各流体室32との連通と遮断が第二のバルブ74によって一括して切り替えられるようになっている。これにより、セル群48間での空気の移動が許容される状態と、セル群48,48が相互に独立した状態とを、少ないバルブで切り替えることができる。
【0077】
なお、セル群48内およびセル群48間における空気の移動の許容と阻止が、少ないバルブによって切り替えられるようになっていることから、バルブの切替え制御も簡易になり得る。
【0078】
また、本実施形態では、外部配管86にポンプ88および排出バルブ90が取り付けられていることにより、セル30の流体室32内の空気の総量を変更することが可能とされており、流体室32間での空気の移動だけが許容されて流体室32内の空気の総量が略一定に保たれる場合に比して、体圧の分散化がより有利に実現される。
【0079】
また、支持面42の変形をコントロールする第一,第二のバルブ50,74、ポンプ88、排出バルブ90などが、圧力センサ14による支持面42の圧力分布の検出結果に基づいて制御されることから、支持面42の変形による体圧の分散化が効果的に実現される。更に、圧力センサ14が厚さ方向の曲げ変形と面方向の伸縮変形を許容されていることから、圧力センサ14が支持面42上に配設された構造であっても、圧力センサ14が支持面42の変形に追従して、寝心地への悪影響が回避される。
【0080】
ところで、マットレス10は、使用者が支持面42上に寝る前(使用前)には第一のバルブ50が閉じられて、各セル30の流体室32がそれぞれ独立して密閉されている。これにより、使用者が支持面42上に横たわる際に、セル30が過剰に潰れて底付きが生じるのを防ぐことができる。そして、マットレス10の使用時には、例えば、
図7のフローチャートに示す流体セル式マットレス10の制御方法に従って、第一,第二のバルブ50,74の開閉を制御する。
【0081】
すなわち、使用者が支持面42上に横たわってセル30に対して圧縮力を作用させると、圧力センサ14が支持面42に対する圧力の作用を検出する。そして、圧力センサ14による検出結果に基づいて、制御装置110が排出バルブ90に開放信号を送信して、排出バルブ90を開く。これにより、排出バルブ開放ステップS1を完了する。
【0082】
また、排出バルブ90の開放と同時に、或いは排出バルブ90の開放後に、制御装置110は、第一のバルブ50と第二のバルブ74に開放信号を送信して、第一,第二のバルブ50,74を開く。これにより、第一のバルブ開放ステップS2と第二のバルブ開放ステップS3を完了する。第一のバルブ開放ステップS2を完了することにより、群内連通路46が連通状態に切り替えられて、同じセル群48内のセル30の流体室32が相互に連通されると共に、第二のバルブ開放ステップS3を完了することにより、群間連通路84および外部流路92で構成される排出側流路94が連通状態に切り替えられて、セル群48間での空気の移動が許容されると共に、セル30の流体室32が大気開放される。
【0083】
本実施形態では、第一のバルブ開放ステップS2において、全ての第一のバルブ50,50,・・・,50の開閉が、一括して同時に切り替えられるようになっている。尤も、各第一のバルブ50の開閉がそれぞれ独立して切り替えられるようにしても良いし、第一のバルブ50の幾つかの開閉が一括して同時に切り替えられるようにしても良い。また、第二のバルブ開放ステップS3において、全ての第二のバルブ74,74,・・・,74の開閉が、一括して同時に切り替えられるようになっているが、各第二のバルブ74の開閉がそれぞれ独立して切り替えられるようにしても良いし、第二のバルブ74の幾つかの開閉が一括して同時に切り替えられるようにしても良い。
【0084】
そして、同じセル群48内のセル30の流体室32間で群内連通路46を通じて空気が移動することにより、セル群48内の3つのセル30,30,30の内で比較的に大きな圧力が作用するセル30が収縮するとともに比較的に小さな圧力が作用するセル30が伸長する。その結果、支持面42において各セル群48で構成される部分が、それぞれ使用者の体表面の凹凸に沿った形に変形して、体圧の分散化が図られる。
【0085】
さらに、幅方向で隣り合う2つのセル群48,48の間でセル30の流体室32が相互に連通されて、それら流体室32の間で空気の移動が許容されると共に、流体室32が排出バルブ90を介して大気中に開放される。その結果、セル群48,48の間で圧力の差が低減されると共に、空気の流体室32から大気中への排出によって体圧の低減が図られる。
【0086】
更にまた、排出バルブ90を開くと同時に或いは開いた後で第一,第二のバルブ50,74を開くことにより、セル群48内での空気の移動と、セル群48間での空気の移動と、大気中への空気の排出とが、同時に進行する。これにより、より短い時間でセル30の伸縮による圧力の分散化が実現され得る。しかも、群内連通路46の流通抵抗が排出側流路94の流通抵抗よりも小さいことから、セル群48間での空気の移動やセル群48から外部への空気の排出よりも、セル群48内での空気の移動が優先的に生じて、支持面42が使用者の体表面の凹凸に沿って変形し易くなっている。更に、群間連通路84の流通抵抗が外部流路92の流通抵抗よりも小さくされていることから、セル群48間での空気の移動が大気中への空気の排出よりも優先的に生じて、支持面42が使用者の体表面の凹凸に沿って変形し易くなっていると共に、空気の過剰な抜けが防止される。
【0087】
流体室32間における空気の移動と、大気中への空気の排出による体圧の分散化とによって、圧力センサ14によって検出される圧力が十分に小さくなると、制御装置110が第一のバルブ50に閉鎖信号を送信して第一のバルブ50を閉じることにより、第一のバルブ閉鎖ステップS4を完了する。尤も、バルブ閉鎖ステップS4の完了後に、圧力センサ14が大きな圧力を検出すると、制御装置110は、第一のバルブ50の開放信号を再度送信して、再び第一のバルブ50を開くことにより、排出バルブ90による流体室32から大気中への空気の排出などを適宜に行う。なお、第一のバルブ50を閉じる前に第二のバルブ74を閉じて、群内連通路46を連通させつつ群間連通路84と外部流路92を遮断することにより、空気の過剰な排出を防ぎつつ、支持面42におけるセル群48で構成された部分が使用者の体表面の凹凸に精度よく沿うようにもできる。
【0088】
また、支持面42に作用する圧力が解除されると、制御装置110が圧力センサ14による検出結果に基づいて第一,第二のバルブ50,74を開くとともにポンプ88を作動させる。これにより、セル30の流体室32に空気を送入してセル30を伸長させる空気供給ステップS5を完了して、次の使用時に底付きなどの不具合が発生するのを回避する。なお、ポンプ88の作動時に排出バルブ90は閉じられており、空気の大気中への逃げが防止されている。
【0089】
一方、
図8のフローチャートに示す流体セル式マットレス10の別の制御方法に従って、第一,第二のバルブ50,74の開閉を制御することもできる。即ち、圧力センサ14が閾値以上の圧力を検出した場合に、制御装置110が第二のバルブ74を閉じたままで第一のバルブ50を開く。これにより、第一のバルブ開放ステップS1を完了する。第一のバルブ開放ステップS1を完了することにより、群内連通路46が連通状態に切り替えられて、同じセル群48内のセル30,30,30の各流体室32が相互に連通される。そして、同じセル群48内のセル30,30,30の各流体室32間で群内連通路46を通じて空気が移動することにより、セル群48内の3つのセル30,30,30の内で比較的に大きな圧力が作用するセル30が収縮するとともに比較的に小さな圧力が作用するセル30が伸長する。その結果、支持面42において1つのセル群48で構成される部分が、使用者の体表面の凹凸に沿った形に変形して、体圧の分散化が図られる。
【0090】
また次に、第一のバルブ50を開いたままで第二のバルブ74を開いて第二のバルブ開放ステップS2を完了すると共に、排出バルブ90を開いて排出バルブ開放ステップS3を完了する。これにより、群間連通路84と外部流路92が連通状態に切り替えられて、幅方向で隣り合う2つのセル群48,48の間でセル30の流体室32が相互に連通されることにより、それら異なるセル群48,48の間で空気の移動が許容されると共に、流体室32が排出バルブ90を介して大気中に開放される。その結果、セル群48,48の間で流体室32の内圧の差が低減されると共に、空気の流体室32から大気中への排出によって体圧の低減が図られる。
【0091】
なお、第二のバルブ開放ステップS2の前に、第二のバルブ74を閉じたままで第一のバルブ50を開いた状態が所定の時間に亘って維持されることにより、セル群48を構成する3つのセル30,30,30間での空気の移動が十分に生じて、支持面42においてセル群48で構成される部分を使用者の体表面の凹凸に沿わせることができる。一方、第一のバルブ50と第二のバルブ74と排出バルブ90を開いた状態を短時間として、例えば第二のバルブ74を速やかに閉じることにより、セル群48,48間での空気の移動量と大気中への空気の排出量とが制限される。その結果、セル群48,48間での空気の移動によって、支持面42の相互に離れた部分が影響し合って支持面42が不安定になるのを防ぐことができると共に、過剰な空気の抜けによる底付きが防止される。
【0092】
体圧分散完了後の第一のバルブ閉鎖ステップS4と、体圧解除後の空気供給ステップS5は、
図7に示した制御態様と同様であることから、ここでは説明を省略する。
【0093】
このような
図8の制御態様では、流体室32内の空気の大気への排出を開始する前に、セル群48内での空気の移動を完了させることにより、空気の排出量を抑えつつ、支持面42を使用者の体表面に沿って変形させることができて、体圧の分散化を図りながら、セル30のクッション性を有利に保つことができる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、支持面42を構成するセル30の数やセル30の具体的な構造などは適宜に変更可能であり、前記実施形態では上部袋体36と下部袋体38を備える二段構造のセル30が例示されているが、一段の中空袋状とされたセルも採用可能である。
【0095】
また、セル群48を構成するセル30の数は、複数であれば3つに限定されない。更に、同じセル群48を構成するセル30は、相互に近くに配置されていることが望ましいが、その配置は適宜に変更され得る。具体的には、例えば、長さ方向に並ぶ3つのセル30,30,30が1つのセル群48を構成するようにもできるし、長さ方向および幅方向に各2列で配置された4つのセル30,30,30,30が1つのセル群48を構成するようにしても良い。
【0096】
さらに、群間連通路84によって繋がれるセル群48の数は複数であれば2つに限定されず、群間連通路84によって繋がれるセル群48の配置も特に限定されるものではない。具体的には、例えば、長さ方向に並ぶ3つのセル群48が群間連通路84で繋がれていても良い。
【0097】
また、前記実施形態では、第一のバルブ50と第二のバルブ74を備える構造が例示されているが、第二のバルブ74は省略することもできる。
【0098】
また、排出バルブ90やポンプ88は必須ではなく、例えば、流体室32が大気中に対して略密閉されて、流体室32と大気中の間での空気の移動が阻止されていると共に、第一のバルブ50の開放時に複数のセル30の流体室32間で空気の移動が許容される構造も採用され得る。
【0099】
また、圧力センサ14としては、前記実施形態に例示した静電容量型センサに限定されるものではなく、例えば、ゴム材料に導電性フィラーを混合した導電性ゴムによって弾性体層を形成して、荷重の入力時に弾性部が弾性変形して弾性体層の電気抵抗が変化することに基づいて圧力を検出する、抵抗型の圧力センサを採用することもできる。