特許第6706148号(P6706148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706148
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 5/02 20060101AFI20200525BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20200525BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20200525BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H01F5/02 B
   H01F5/02 J
   H01F27/28 131
   H01F27/29 P
   H01F27/32 150
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-111660(P2016-111660)
(22)【出願日】2016年6月3日
(65)【公開番号】特開2017-59813(P2017-59813A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-184173(P2015-184173)
(32)【優先日】2015年9月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220125
【氏名又は名称】東京パーツ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 一彰
(72)【発明者】
【氏名】成田 敏洋
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−316058(JP,A)
【文献】 実公昭36−018633(JP,Y1)
【文献】 実開昭53−133110(JP,U)
【文献】 特開平09−092548(JP,A)
【文献】 特開昭63−164410(JP,A)
【文献】 実開昭59−026204(JP,U)
【文献】 実開昭53−115952(JP,U)
【文献】 実開平02−024520(JP,U)
【文献】 実開昭63−067228(JP,U)
【文献】 特開2000−182848(JP,A)
【文献】 実開昭56−051319(JP,U)
【文献】 実開昭53−009454(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/02−5/04、17/00−19/08
H01F 27/28−27/32、30/00−38/12
H01F 38/16、38/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中脚と前記中脚に対向する側脚を有するコアと、
前記コアの前記中脚が挿入されるとともに外周の一部が前記コアの前記側脚と対向する巻芯部と、前記巻芯部の巻軸方向両端に設けられた第1外鍔部と第2外鍔部を有するボビンと、
前記巻芯部の外周に巻回された、巻き始め線と巻き終わり線を有するコイルと、
前記第1外鍔部に固定された複数の接続端子と、を備え、
前記巻軸方向と垂直な面における前記巻芯部の断面は四角形状であり、
前記巻芯部の外周のうち前記コアの前記側脚と対向しない面の少なくとも一面に、前記巻芯部の前記巻軸方向に沿って外側に突出した凸部を有し、
前記巻き始め線を収容するための収容溝が、前記凸部の存在によって前記巻芯部の外周に前記巻芯部の巻軸方向に沿って形成されていると共に、前記巻芯部の巻回方向に沿って複数箇所に形成されており、
前記巻き始め線を前記接続端子から前記収容溝に案内するための第1案内溝が、前記収容溝に連接して、前記第1外鍔部に複数箇所に形成されており、
前記収容溝に配置された前記巻き始め線を前記ボビン外方に引き延ばすための第3案内溝が、前記収容溝に連接して前記第2外鍔部に形成されており、
前記収容溝に収容された前記巻き始め線を覆うように、前記巻芯部に第1絶縁テープが巻回されており、
前記巻き始め線は、前記第2外鍔部側の前記第1絶縁テープの周縁を支点として巻軸方向と略直角方向に折り曲げられていることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
記収容溝は、前記断面の外形において隣接する二辺の外形包絡線から内側に凹に形成されたものであり、前記断面の外形の四隅の少なくとも2箇所に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記収容溝は、前記断面の外形の四隅全てに形成されていることを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記巻き終わり線を前記コイル外周から前記接続端子に案内するための第2案内溝が、前記第1外鍔部に複数箇所に形成されており、
前記巻き終わり線が前記第2案内溝に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項5】
前記コイル外周に第2絶縁テープが少なくとも巻回方向に1周巻回されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のコイル部品。
【請求項6】
中脚と前記中脚に対向する側脚を有するコアと、
前記コアの前記中脚が挿入されるとともに外周の一部が前記コアの前記側脚と対向する巻芯部と、前記巻芯部の巻軸方向両端に設けられた第1外鍔部と第2外鍔部を有するボビンと、
前記巻芯部の外周に巻回された、巻き始め線と巻き終わり線を有するコイルと、
前記第1外鍔部に固定された複数の接続端子と、を備え、
前記巻軸方向と垂直な面における前記巻芯部の断面は四角形状であり、
前記巻芯部の外周のうち前記コアの前記側脚と対向しない面の少なくとも一面に、前記巻芯部の前記巻軸方向に沿って外側に突出した凸部を有し、
前記巻き始め線を収容するための収容溝が、前記凸部の存在によって前記巻芯部の外周に前記巻芯部の巻軸方向に沿って形成されていると共に、前記巻芯部の巻回方向に沿って複数箇所に形成されており、
前記巻き始め線を前記接続端子から前記収容溝に案内するための第1案内溝が、前記収容溝に連接して、前記第1外鍔部に複数箇所に形成されており、
前記収容溝に配置された前記巻き始め線を前記ボビン外方に引き延ばすための第3案内溝が、前記収容溝に連接して前記第2外鍔部に形成されており、
前記第3案内溝に突部が設けられており、
前記巻き始め線は、前記突部を支点として巻軸方向と略直角方向に折り曲げられていることを特徴とするコイル部品。
【請求項7】
前記収容溝に収容された前記巻き始め線を覆うように、第1絶縁テープが前記第1外鍔部のみに接しながら前記巻芯部に巻回されていることを特徴とする請求項6に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子機器に使用するコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、巻線を巻回する巻芯部と、この巻線の巻幅を規制する両鍔部と、一方の鍔部に固定された端子と、巻き始め線を挿入する絶縁チューブを備えた絶縁トランスが記載されている。この絶縁チューブは、端子と巻き始め線との半田付け時において、皮膜の剥がれた巻き始め線と、コイル内周との絶縁を確保している。このトランスでは、巻き始め線を挿入する絶縁チューブがあるため、巻線の自動化ができなかった。
【0003】
一方、特許文献2には、巻線を巻回する巻線部と、この巻線の巻幅を規制する両鍔部を備えた巻線用ボビンが記載されている。この巻線用ボビンでは、両鍔部に、巻き始め線の線輪引き込み部と線輪引き出し部が1箇所に形成されており、巻線部には、巻き始め線の線輪引き込み部と線輪引き出し部に連接した溝が1箇所に形成されている。この溝に巻き始め線が配置されると、巻き始め線に絶縁チューブを挿入することなく巻き始め線とコイル内周との絶縁距離を確保して、巻線の自動化ができる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−72115号公報
【特許文献2】特開平8−316058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2のような構成では、この巻線用ボビンの外周にコアが配置されてコイル外形がコアに近接して巻線の積層ができない場合、巻き始め線の線輪引き込み部と線輪引き出し部と、これらに連接した溝が1箇所に形成されているため、インダクタンス特性の微調整が難しかった。
【0006】
そこで本発明は、巻線の自動化をできつつインダクタンスの微調整をできるコイル部品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、第1の本発明のコイル部品は、
中脚と前記中脚に対向する側脚を有するコアと、
前記コアの前記中脚が挿入されるとともに外周の一部が前記コアの前記側脚と対向する巻芯部と、前記巻芯部の巻軸方向両端に設けられた第1外鍔部と第2外鍔部を有するボビンと、
前記巻芯部の外周に巻回された、巻き始め線と巻き終わり線を有するコイルと、
前記第1外鍔部に固定された複数の接続端子と、を備え、
前記巻軸方向と垂直な面における前記巻芯部の断面は四角形状であり、
前記巻芯部の外周のうち前記コアの前記側脚と対向しない面の少なくとも一面に、前記巻芯部の前記巻軸方向に沿って外側に突出した凸部を有し、
前記巻き始め線を収容するための収容溝が、前記凸部の存在によって前記巻芯部の外周に前記巻芯部の巻軸方向に沿って形成されていると共に、前記巻芯部の巻回方向に沿って複数箇所に形成されており、
前記巻き始め線を前記接続端子から前記収容溝に案内するための第1案内溝が、前記収容溝に連接して、前記第1外鍔部に複数箇所に形成されており、
前記収容溝に配置された前記巻き始め線を前記ボビン外方に引き延ばすための第3案内溝が、前記収容溝に連接して前記第2外鍔部に形成されており、
前記収容溝に収容された前記巻き始め線を覆うように、前記巻芯部に第1絶縁テープが巻回されており、
前記巻き始め線は、前記第2外鍔部側の前記第1絶縁テープの周縁を支点として巻軸方向と略直角方向に折り曲げられていることを特徴とする。
【0008】
第1の本発明は、更なる特徴として、
記収容溝は、前記断面の外形において隣接する二辺の外形包絡線から内側に凹に形成されたものであり、前記断面の外形の四隅の少なくとも2箇所に形成されていること」、
「前記収容溝は、前記断面の外形の四隅全てに形成されていること」、
「前記巻き終わり線を前記コイル外周から前記接続端子に案内するための第2案内溝が、前記第1外鍔部に複数箇所に形成されており、
前記巻き終わり線が前記第2案内溝に配置されていること」、
「前記コイル外周に第2絶縁テープが少なくとも巻回方向に1周巻回されていること」、を含む。
【0009】
また、第2の本発明のコイル部品は、
中脚と前記中脚に対向する側脚を有するコアと、
前記コアの前記中脚が挿入されるとともに外周の一部が前記コアの前記側脚と対向する巻芯部と、前記巻芯部の巻軸方向両端に設けられた第1外鍔部と第2外鍔部を有するボビンと、
前記巻芯部の外周に巻回された、巻き始め線と巻き終わり線を有するコイルと、
前記第1外鍔部に固定された複数の接続端子と、を備え、
前記巻軸方向と垂直な面における前記巻芯部の断面は四角形状であり、
前記巻芯部の外周のうち前記コアの前記側脚と対向しない面の少なくとも一面に、前記巻芯部の前記巻軸方向に沿って外側に突出した凸部を有し、
前記巻き始め線を収容するための収容溝が、前記凸部の存在によって前記巻芯部の外周に前記巻芯部の巻軸方向に沿って形成されていると共に、前記巻芯部の巻回方向に沿って複数箇所に形成されており、
前記巻き始め線を前記接続端子から前記収容溝に案内するための第1案内溝が、前記収容溝に連接して、前記第1外鍔部に複数箇所に形成されており、
前記収容溝に配置された前記巻き始め線を前記ボビン外方に引き延ばすための第3案内溝が、前記収容溝に連接して前記第2外鍔部に形成されており、
前記第3案内溝に突部が設けられており、
前記巻き始め線は、前記突部を支点として巻軸方向と略直角方向に折り曲げられている
ことを特徴とする。
【0010】
第2の本発明は、更なる特徴として、
「前記収容溝に収容された前記巻き始め線を覆うように、第1絶縁テープが前記第1外鍔部のみに接しながら前記巻芯部に巻回されていること」を含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、巻線の自動化をできつつ、巻芯部の巻回方向にある複数の収容溝に巻き始め線が選択的に配置されると、巻芯部外周での巻き始めの位置が変わるため、1ターン未満の巻数を調整できて、インダクタンス特性の微調整が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るコイル部品の分解斜視図であって、コイルを省略して示している。
図2】本発明の実施形態に係るコイル部品の完成斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るコイル部品の組立手順を説明するためにあり、(a)は立面図、(b)は、(a)のA−A線の矢視断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るコイル部品の組立手順を説明するためにあり、(a)は立面図、(b)は、(a)のB−B線の矢視断面図である。
図5】本発明の実施形態に係るコイル部品の組立手順を説明するためにあり、(a)は立面図、(b)は、(a)のC−C線の矢視断面図である。
図6図5(b)の矢視Dの拡大図を示す。
図7】本発明の実施形態の変形例1に係るコイル部品の特徴を説明するための立面図である。
図8】本発明の実施形態の変形例2に係るコイル部品の特徴を説明するための立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を例示的に説明する。
【0014】
(実施形態)
まず、本発明の実施形態に係るコイル部品1の構成を図1図6により説明する。
【0015】
実施形態におけるコイル部品1は、縦型のチョークコイルであり、ボビン10と、コイル70と、接続端子77と、コア80を備えている。
【0016】
ボビン10は、絶縁性樹脂により成形されており、巻芯部11と第1外鍔部51と第2外鍔部52を有する。
巻芯部11は筒状に形成されており、巻芯部11の筒軸方向は巻軸方向(図3(a)のZ方向)となっている。
第1外鍔部51は、巻芯部11の巻軸方向の一端に一体成形されている。
第2外鍔部52は、巻芯部11の巻軸方向の他端に一体成形されている。
【0017】
コイル70は、巻芯部11の外周に単線の線材で積層された巻回部75と、巻き始め線73と、巻き終わり線74を有する。
【0018】
巻軸方向と垂直な面における巻芯部11の断面の外形は、短辺12と長辺13を有する長方形状に形成されており、巻芯部11は、第1面〜第4面21〜24を有する。この断面の外形は長方形状のみならず、正方形状、菱形形状、平行四辺形状、台形状の四角形状であればよい。
第1面21は、短辺12を有し、平面状に形成されている。巻軸方向に垂直な面における第1面21の両端には巻軸方向と並行に形成された第1収容溝31と第2収容溝32が形成されている。
第2面22は、短辺12を有し、平面状に形成されて、第1面21と互いに対向して並行に配されており、巻軸方向に垂直な面における第2面22の両端には巻軸方向と並行に形成された第3収容溝33と第4収容溝34が形成されている。
第3面23と第4面24は、長辺13を有し、平面状に形成されており、第1面21と第2面22の間にあって互いに対向して並行に配されている。
第1〜第4収容溝31〜34は巻き始め線73を収容するためにある。第1〜第4収容溝31〜34は、巻軸方向に沿って第1外鍔部側の巻芯部11の一端から第2外鍔部52側の巻芯部の他端まで連続して並行に形成されており、巻芯部の巻回方向(Z方向を中心とする周回方向)に沿って巻芯部11の断面外形の四隅全てに形成されている。
つまり、巻き始め線73を収容するための収容溝31〜34は、巻芯部11の外周に巻芯部11の巻軸方向に沿って形成されていると共に、巻芯部11の巻回方向に沿って4箇所に形成されている。
【0019】
第1〜第4収容溝31〜34について説明する。
例えば、第1収容溝31は、図6に示すように、巻芯部11の断面外形の四隅の1つにおいて隣接する短辺12と長辺13との外形包絡線36から内側に凹んで形成されている。この第1収容溝31は、巻軸方向に垂直な断面において、巻き始め線の断面の外形を全て内包できる大きさである。つまり、巻き始め線の断面外形の全てが、第1収容溝31に収容できる。
本例の第1収容溝31は、断面直角三角形状に形成されており、2つの直線部35と、外形包絡線36を有する。2つの直線部35は直角に形成されており、巻き始め線73は2つの直線部35に接して配され、外形包絡線36に非接触となっている。
このように第1収容溝31が巻芯部11に形成されており、第2〜第4収容溝32〜34も、第1収容溝31と同じように、巻芯部11の断面外形の四隅の残り3箇所にそれぞれ形成されている。
また、本例では、図6に示すように、第1収容溝31に巻き始め線73が配置されると、第2〜第4収容溝32〜34には巻き始め線73が配置されないものである。つまり、第1〜第4収容溝31〜34のいずれか1箇所のみに巻き始め線73が配置されるものである。
【0020】
第1外鍔部51は、巻芯部11の巻軸方向と垂直な方向となる径方向外側へ向けて突出する略矩形板状に形成されている。この第1外鍔部51は、巻き始め線73を接続端子77から第1〜第4収容溝31〜34に案内するための第1案内溝61と、巻き終わり線74をコイル外周から接続端子77に案内にするための第2案内溝62を有する。
第1案内溝61は、第1〜第4収容溝31〜34にそれぞれ連接する案内溝となっており4箇所有する。
第2案内溝62は、巻き終わり線74をコイル外周から接続端子77に案内するためにある。第2案内溝62は、8箇所形成されており、第1案内溝61の4箇所と、前記第1案内溝61以外の4箇所有している。
なお、巻き始め線と巻き終わり線は、第1案内溝61と第2案内溝62に、それぞれ別々の溝に配置されてもよいし、1つの溝に一緒に配置されてもよい。
第2外鍔部52は、巻芯部11の巻軸方向と垂直な方向となる径方向外側へ向けて突出する略矩形板状に形成されている。第2外鍔部52には、第1〜第4収容溝31〜34に連接する第3案内溝65が4箇所形成されている。第3案内溝65は、巻き始め線73を接続端子77から、第1案内溝61と、第1〜第4収容溝31〜34のどれか1箇所に配置した際に、巻き始め線73を図3(a)の図面上方向であるボビン外方に引き延ばすために形成されている。
【0021】
コア80は、中脚81と側脚84を有するE型コアより形成されている。中脚81は、巻芯部11に挿入されて固定されている。中脚81の巻芯部11への挿入方向は、巻軸方向と並行であり、挿入方向と垂直な面における中脚81の断面外形は、短辺82と長辺83を有する長方形状に形成されている。
【0022】
コア80の中脚81の挿入方向に垂直な面における断面の外形は、巻軸方向に垂直な面における巻芯部11の断面の内形とほぼ同形に形成されている。
【0023】
接続端子77は、図3(a)に示すように、第1外鍔部51の巻軸方向下端に下方に向けて10本固定されており、この接続端子77には巻き始め線73と巻き終わり線74が電気的に接続されている。
【0024】
次に、上記構成からなる実施形態のコイル部品1の組立方法について説明する。
【0025】
まず、線材と、接続端子77が固定されたボビン10と、絶縁テープを用意して、これらを自動巻線機にセットする。図3に示すように、自動巻線機により、巻き始め線73の先端部が1つの接続端子77に絡げられて仮固定される。そして、巻き始め線73が、例えば、第1案内溝61、第1収容溝31、第3案内溝65の順に、配置されて、図3(a)の図面上方向に引き延ばされる。つまり、巻き始め線73が、ある第1案内溝61と、この第1案内溝61に連接する収容溝と、この収容溝と連接する第3案内溝の順に配置される。
その後、図4(a)に示すように、第1絶縁テープ91が、巻芯部11に全周少なくとも巻回方向に1回、巻回される。この第1絶縁テープ91は、第1外鍔部側の巻芯部の一端から第2外鍔部側の巻芯部の他端まで、巻軸方向に沿って連続して巻回されている。すると、巻き始め線が収容された第1収容溝31の開口は、第1絶縁テープ91に覆われる。この第1絶縁テープ91は、第1収容溝31に収容された巻き始め線73に接しない。
そして、図5(a)に示すように、第1絶縁テープ91が巻芯部11に巻回された後に、第1収容溝31に収容された巻き始め線73は、第2外鍔部側の第1絶縁テープ91の周縁を支点として巻軸方向と略直角方向に折り曲げられる。
【0026】
その後、巻き始め線73が、巻芯部11の他端から一端に向かうように巻軸方向に巻き始められて、線材が巻芯部11に所定数積層されて、コイル70の巻回部75が巻回される。
また、巻き終わり線74が、コイル外周から第2案内溝62のどれか1つに案内されて、巻き始め線が絡げられた接続端子とは別の接続端子に絡げられて仮固定される。
【0027】
その後、コイル外周には第2絶縁テープ92が巻回される。第2絶縁テープ92は、コイル70の全周、巻回方向に少なくとも1回、巻回される。この第2絶縁テープ92は、巻芯部の一端から巻芯部の他端まで巻軸方向に沿って連続して巻回される。
その後、接続端子77が半田層に浸されることにより、巻き始め線73と巻き終わり線74が接続端子77に半田接続される。
【0028】
次に、2つのE型コアを用意する。図1に示すように、ボビンの巻芯部11の筒状内に2つE型コアの中脚81が挿入される。すると、中脚81の断面外形の短辺82と長辺83は、それぞれ巻芯部11の断面内形の短辺14と長辺15に対向して配置されて、巻芯部11の長辺13は、コア80の側脚84にコイル70を介して対向して配置される。この2つE型コアは、ボビン10に接着剤により固定される。そして、図2に示すように、日の字型コアが形成されて閉磁路を形成して、コイル部品1となる。
なお、必要に応じて、コイル70を1次巻線としてコイル外周と第2絶縁テープ92との間に、第3絶縁テープと2次巻線が巻回されてもいい。
また、コア80は、日の字型コアとなっているが、ロの字型コアでもよい。またコア80は、分割された複数のコアが組み合わされて日の字型コアあるいはロの字型コアになるものを含む。
【0029】
特許文献1では、接続端子に接続された巻き始め線とコイル内周との絶縁距離を確保する絶縁チューブを必要とするため巻線の自動化ができなかった。
また、特許文献2のような構成では、巻線の自動化ができる可能性があるものの、この巻線用ボビンの外周に配置されたコアにコイル外形が近接して巻回できない場合に、インダクタンス特性の微調整が難しかった。
そこで、上記構成からなる実施形態のコイル部品1は、コア80と、コア80の一部が挿入された巻芯部11と、巻芯部11の巻軸方向両端に設けられた第1外鍔部51と第2外鍔部52を有するボビン10と、巻芯部11の外周に巻回された、巻き始め線73と巻き終わり線74を有するコイル70と、第1外鍔部51に固定された接続端子77と、を備えている。
そして、巻き始め線73を収容するための収容溝31〜34が、巻芯部11の外周に巻芯部11の巻軸方向に沿って形成されていると共に、巻芯部11の巻回方向に沿って複数箇所に形成されている。
また、巻き始め線73を接続端子77から収容溝31〜34に案内するための第1案内溝61が、第1外鍔部51に複数箇所に形成されている。
また、収容溝31〜34に収容された巻き始め線73を覆うように、巻芯部11に第1絶縁テープ91が巻回されている。
また、巻き始め線73は、第2外鍔部側の第1絶縁テープ91の周縁を支点として巻軸方向と略直角方向に折り曲げられている。
【0030】
よって、巻き始め線73が収容溝に配置されることにより、絶縁チューブを用いることなく、巻き始め線とコイルとの絶縁距離を確保できると共に、巻き始め線は第2外鍔部側の第1絶縁テープの周縁を支点として巻軸方向と略直角方向に折り曲げられるため、線材の巻線工程において自動化できて、作業効率が向上できる。
また、線材の巻線時において、巻き始め線が巻芯部の巻回方向にある複数の収容溝31〜34に選択的に配置されると、巻芯部外周での巻き始めの位置が変わるため、1ターン未満の調整ができて、インダクタンス特性の微調整が容易にできる。
このように、巻き始め線とコイル内周との絶縁距離を確保できると共に巻線の自動化ができて、さらに、1個のボビンでインダクタンス特性を容易に微調整できる。
【0031】
また、巻軸方向と垂直な面における巻芯部の断面は四角形状であり、収容溝31〜34は、前記断面の外形において隣接する二辺の外形包絡線36から内側に凹に形成されたものであり、前記断面の外形の四隅の少なくとも2箇所に形成されている。
よって、巻軸方向と垂直な面における巻芯部11の断面の外形の四隅において少なくとも2箇所で線材の折り曲げ角度が緩やかになり線材の巻回時に線材の皮膜に傷が付きにくく、線材を巻きやすくできて、線材の潰れ防止や巻き膨らみ防止ができる。
【0032】
また、収容溝31〜34は、前記断面の外形の四隅全てに形成されている。
よって、巻軸方向と垂直な面における巻芯部11の断面の外形の四隅全てで線材の折り曲げ角度が緩やかになり線材の巻回時に線材の皮膜に傷が付きにくく、線材を巻きやすくできて、線材の潰れ防止や巻き膨らみ防止ができる。
【0033】
また、巻き終わり線をコイル外周から接続端子に案内するための第2案内溝が、第1外鍔部に複数箇所に形成されている。
また、巻き終わり線が第2案内溝に配置されている。
このため、巻き終わり線がボビンの巻回方向にある複数の第2案内溝62に選択的に配置されると、コイル外周での巻き終わりの位置が変わるため、1ターン未満の調整ができて、インダクタンス特性の微調整が容易にできる。
また、コイル外周に第2絶縁テープ92が少なくとも巻回方向に1周巻回されている。
なお、インダクタンス特性の微調整は、巻き始め線が巻芯部の巻回方向にある複数の収容溝に選択的に配置されること、あるいは、巻き終わり線がボビンの巻回方向にある複数の第2案内溝に選択的に配置されることのどちらか一方あるいは両方の組み合わせによってできる。
【0034】
(変形例1)
上記実施形態では、第1絶縁テープ91は、巻芯部11の一端から他端まで、巻軸方向に沿って連続して形成されて、巻芯部に少なくとも巻回方向に1周巻回されていることにより、第1絶縁テープ91の周縁が、巻き始め線の折り曲げ支点となり、また、収容溝に収容された巻き始め線とコイル内周との絶縁距離が確保できるが、これに限らない。
図7に示すように、巻き始め線の折り曲げ支点となる突部96が第2外鍔部52の第3案内溝65に設けられて、また、収容溝に収容された巻き始め線73とコイル内周との絶縁距離を確保できるならば、第1絶縁テープ91は、第1外鍔部51に接しながら(巻芯部11の一端から)巻軸方向に沿って第2外鍔部52に接しない形状であればよく、つまり、第1絶縁テープ91は、巻軸方向の巻芯部11の第1外鍔部のみに接して設けられていればよい。詳述すれば、接続端子が半田層に浸された際に、巻き始め線は、接続端子付近で皮膜が剥がれるため、その皮膜の剥がれた巻き始め線が、第1絶縁テープにより巻軸方向の巻芯部11の一端から一部覆われることで、収容溝に収容された巻き始め線73とコイル内周との絶縁距離を確保するものである。
この場合、第2外鍔部52の第3案内溝65に突部96が設けられるため、巻き始め線は、突部96を支点として巻軸方向と略直角方向に折り曲げられている。また、収容溝に収容された巻き始め線を覆うように、第1絶縁テープ91が第1外鍔部51のみに接しながら巻芯部に巻回されている。
よって、巻き始め線とコイル内周との絶縁距離を確保できると共に巻線の自動化ができて、さらに、1個のボビンでインダクタンス特性を容易に微調整できて、さらにまた、第1絶縁テープの使用量を減らすことができる。
【0035】
(変形例2)
また、上記実施形態では、巻き始め線73の断面外形の全てが、第1収容溝31内に収容されて、第1絶縁テープ91が巻芯部11に巻回されているが、収容溝が実施形態よりさらに深く形成されて、巻き始め線とコイル内周との絶縁距離を十分に確保できるならば、第1絶縁テープ91は巻芯部11に巻回される必要はない。この場合、収容溝に収容された巻き始め線73が、巻芯部11での巻き始めの始点して、巻軸方向と略直角方向に折り曲げられるように、第2外鍔部の第3案内溝に、図8に示すような突部96が設けられている。
この構成によるコイル部品の組立工程では、まず、巻き始め線73が接続端子77に絡げられて仮固定されて、巻き始め線73が、例えば、第1案内溝61、第1収容溝31、第3案内溝65の順に、配置される。その後、第1絶縁テープ91が巻芯部11に巻回されることなく、巻き始め線73が、突部96に係止されて突部96を支点に巻軸方向と略直角方向に折り曲げられる。そして、巻き始め線73が、巻芯部の他端から一端に沿って巻芯部11に巻回され、巻芯部11にコイル70が巻回される。この構成においても、巻き始め線73は突部96を巻芯部の巻き始めの始点として、線材が巻芯部に弛むことなく巻回される。そして、巻き終わり線74が、コイル外周から第2案内溝62に配されて、巻き始め線が絡げられた接続端子とは別の接続端子に絡げられて仮固定される。そして、コイル外周に第2絶縁テープ92が巻回される。各接続端子が半田層に浸されることにより、巻き始め線と巻き終わり線が各接続端子に半田接続される。
その後、ボビンの巻芯部11の筒状内にはE型コアの中脚81が組み込まれて日の字型コアが形成され、コイル部品1となる。
この場合、巻き始め線とコイル内周との絶縁距離を確保できると共に巻線の自動化ができて、さらに、1個のボビンでインダクタンス特性を容易に微調整できて、さらにまた、部品点数を少なくできる。
【0036】
(変形例3)
また、上記実施形態では、絶縁テープ91は、巻芯部11に少なくとも巻回方向に1周巻回されており、巻軸方向の巻芯部11の一端から他端まで、巻軸方向に沿って連続して巻回されているが、これに限らない。
第1絶縁テープ91が、巻芯部11の一端から他端まで、巻軸方向に沿って連続して巻回されているならば、巻芯部11に巻回方向に1周巻回されずに、巻き始め線73を収容した収容溝のみに、巻回方向に1周未満で巻回されたものでもよい。具体的には、第1絶縁テープ91が、巻軸方向の巻芯部11の一端から他端まで、巻軸方向に沿って連続して巻回されていると共に、巻回方向に例えば1/4周分巻回されて、巻き始め線73を収容した収容溝の上面を覆ってその収容溝を閉塞しているものである。
この場合、巻き始め線とコイル内周との絶縁距離を確保できると共に巻線の自動化ができて、さらに、1個のボビンでインダクタンス特性を容易に微調整できて、さらにまた、部品の使用量を少なくできる。
【0037】
(変形例4)
また、上記実施形態では、第1〜第4収容溝31〜34は、巻き始め線73を収容できて、巻芯部の断面外形の四隅全てに巻芯部の巻軸方向に沿って形成されているが、この収容溝は、巻芯部の断面外形の四隅のうち2箇所ないし3箇所に形成された構成でもよい。この場合、線材の巻回時に、巻芯部の断面外形の四隅の内、2箇所ないし3箇所の線材の折り曲げ角度が直角から緩やかになるため、上記実施形態には僅かに及ばないものの、線材の巻回時に線材の皮膜に傷が付きにくく、線材を巻きやすくできる。
この場合、前記収容溝に配置された巻き始め線をボビン外方に引き延ばすための第3案内溝が、前記収容溝のみに連接して第2外鍔部に形成される。
【0038】
(変形例5)
また、上記のコイル部品1は、縦型であり、接続端子77は、2つある外鍔部のうち第1外鍔部のみに固定されていたが、これに限定されるものではない。本発明のコイル部品は横型でもよく、この場合の接続端子は2つある第1外鍔部と第2外鍔部にそれぞれ設けられる。
縦型のコイル部品(実施形態)では、巻き始め線77を収容溝31〜34に案内するための第1案内溝61が第1外鍔部51のみに複数箇所に形成されていたが、横型のコイル部品では、巻き始め線73を接続端子77から収容溝に案内するための第1案内溝が、収容溝に連接して、第1外鍔部と第2外鍔部にそれぞれ複数箇所に形成される。
また縦型のコイル部品(実施形態)では、巻き終わり線をコイル外周から接続端子に案内するための第2案内溝が第1外鍔部のみに複数箇所に形成されていたが、横型のコイル部品では、巻き終わり線をコイル外周から接続端子に案内するための第2案内溝が第1外鍔部と第2外鍔部にそれぞれ複数箇所に形成される。
【0039】
(変形例6)
また、上記の収容溝は、外形包絡線36を有する断面直角三角形状に形成されているがこれに限定されない。例えば、巻き始め線の断面外形の全てが、収容溝内に収容されて、第1絶縁テープが、収容溝に収容された巻き始め線に接しなければ、収容溝は、上記外形包絡線36を一辺とする多角形状でも、上記外形包絡線を円の一部を切断した部分とする変形断面円形状でもよい(変形例2は除く)。
【0040】
(変形例7)
また、上記の説明では、巻き始め線73と収容溝との関係において、巻き始め線73の断面外形の全てが、第1収容溝31内に収容されて、第1絶縁テープ91は、巻き始め線73に接しないように構成されているが、巻き始め線の断面外形の大きさはこれに限定されない。第1絶縁テープ91が巻芯部11に巻回されていれば、第1収容溝に収容された巻き始め線が、第1収容溝31から僅かにはみ出す大きさであり、第1絶縁テープ91に接してもよい。(変形例1、2は除く)。
【0041】
(変形例8)
また、上述の説明では、第1〜第4収容溝31〜34は、巻芯部11の第1面〜第4面21〜24の内、第1〜第2面のみに形成されていたが、この形態に限らない。第1〜第4収容溝31〜34は、巻芯部11の第1面〜第4面21〜24の内、第3〜第4面のみに形成されてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 コイル部品
10 ボビン
11 巻芯部
12 巻芯部の断面外形の短辺
13 巻芯部の断面外形の長辺
14 巻芯部の断面内形の短辺
15 巻芯部の断面内形の長辺
21 第1面
22 第2面
23 第3面
24 第4面
31 第1収容溝
32 第2収容溝
33 第3収容溝
34 第4収容溝
35 直線部
36 外形包絡線
51 第1外鍔部
52 第2外鍔部
61 第1案内溝
62 第2案内溝
65 第3案内溝
70 コイル
73 巻き始め線
74 巻き終わり線
75 巻回部
77 接続端子
80 コア
81 中脚
82 中脚の断面外形の短辺
83 中脚の断面外形の長辺
84 側脚
91 第1絶縁テープ
92 第2絶縁テープ
96 突部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8