特許第6706164号(P6706164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706164アライメント装置、露光装置、およびアライメント方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706164
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】アライメント装置、露光装置、およびアライメント方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20200525BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20200525BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G03F9/00 A
   G01B11/00 H
   H01L21/68 F
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-129578(P2016-129578)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-4860(P2018-4860A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】山賀 勝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 文雄
(72)【発明者】
【氏名】船山 昌彦
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−231062(JP,A)
【文献】 特開2014−197136(JP,A)
【文献】 特開2005−316461(JP,A)
【文献】 特開2006−284890(JP,A)
【文献】 特開平11−126741(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0181856(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 9/00
G01B 11/00
H01L 21/68
H01l 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに設けられたアライメントマークを撮像する少なくとも1つのアライメントカメラと、
装置本体部分に対して所定方向に移動するステージ部に取り付けられるとともに、前記アライメントカメラによって撮像される校正マークを複数並べた校正スケールと、
前記ステージ部が所定位置に位置決めされたときの前記装置本体部分に対する前記校正スケールもしくは所定の校正マークの位置変動を検出可能な位置ずれ測定部とを備え
前記位置ずれ測定部が、少なくともアライメントカメラ移動方向に関して前記装置本体部分に固定され、前記ステージ部に設けられる基準マークを撮像可能な撮像部を有することを特徴とするアライメント装置。
【請求項2】
前記基準マークが、前記複数の校正マークの配列ラインに沿うように設けられていることを特徴とする請求項に記載のアライメント装置。
【請求項3】
前記位置ずれ測定部が、前記基準マークを設けた基準部材を有し、
前記基準部材が、前記校正スケールの傍に配置されることを特徴とする請求項又はに記載のアライメント装置。
【請求項4】
前記基準マークが、前記校正スケールに含まれることを特徴とする請求項又はに記載のアライメント装置。
【請求項5】
前記撮像部が、前記アライメントカメラを支持するカメラベース部に対して固定されていることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載のアライメント装置。
【請求項6】
前記校正スケールおよび前記基準マークが、前記ステージ部において、前記ワークを搭載するテーブル、もしくは前記テーブルの傍に設けられる校正スケール支持台に設けられていることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載のアライメント装置。
【請求項7】
前記位置ずれ測定部によって検出された位置変動量に基づいて、前記校正スケールの位置ずれ量を補正することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のアライメント装置。
【請求項8】
前記請求項1乃至のいずれかに記載のアライメント装置を備えたことを特徴とする露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置などに組み込まれるアライメント(位置合わせ)装置に関し、特に、アライメントカメラの位置の校正に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置などでは、基板などの作業対象物(以下、ワークという)の位置合わせを正確に行うため、ワークに設けられたアライメントマークをアライメントカメラで撮像し、検出された実際のアライメントマークの位置と設計(理論)上の位置とを比較することにより、搬送精度などに起因するワーク位置の変位量を検出する。そして、検出された変位量に基づき、ワーク位置調整などを行う。
【0003】
通常、ワークサイズおよびアライメントマークの位置は品種などによって異なり、アライメントカメラは副走査方向に沿って移動可能なように取り付けられている。そのため、カメラ駆動機構のピッチングやヨーイング、および送り誤差などによって、カメラレンズの視野中心位置が本来の中心位置からずれてしまう。これを校正するため、基準位置を示す校正用マークを設けたスケールをステージに取り付け、校正マークをアライメントカメラで撮像することによってカメラの位置ずれを検出する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、露光装置などでは、光源の駆動、搬送ステージの駆動などによる発熱、温度変化などによって、露光位置にずれが生じる場合がある。これを解消するため、温度検出器によって装置の温度を検出し、事前測定によって得られた装置温度と露光位置変動量との相関関係に基づき、露光位置を補正する(特許文献2参照)。この場合、校正用スケールの温度依存性の位置ずれを加味して露光位置を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−316461号公報
【特許文献2】特開2014−197136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
装置の温度変化は、その使用状況、累積使用時間などによって異なるものであり、事前測定によって実際の露光位置のずれを相関関係から一義的に導き出すことは困難である。先に計測された温度情報を加味して露光位置を補正しても、実際の変位量と一致せず、正確に露光位置を補正することができない。特に、ミクロンオーダー、あるいはサブミクロンオーダーが要求される露光装置などでは、推定するワークの位置変動と実際のワーク位置変動の違いが、看過できない位置ずれをもたらす。
【0007】
したがって、装置の使用状況に関わらず、熱などの影響によって位置ずれが生じないようにカメラ位置の校正を正確に行うことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアライメント装置は、露光装置などに適用可能であり、ワークに設けられたアライメントマークを撮像する少なくとも1つのアライメントカメラと、装置本体部分に対して所定方向に移動するステージ部に取り付けられるとともに、アライメントカメラによって撮像される複数の校正マークを並べた校正スケールとを備える。
【0009】
ワークは、ステージ部に搭載されて処理対象となるものであり、例えば基板などがステージ部に搭載される。また、装置本体部分は、ステージ部が搭載される架台/基台、あるいは露光ヘッドおよび光学系を支持する支持体など、アライメント装置が組み込まれる装置の固定されたベース部分を表し、ステージ部は装置本体部分に対して相対移動する。
【0010】
本発明のアライメント装置は、ステージ部が所定位置に位置決めされたときの装置本体部分に対する校正スケールもしくは所定の校正マークの位置変動を検出可能な位置ずれ測定部を備えている。アライメント装置は、位置ずれ測定部によって検出された位置変動量に基づいて、校正スケールの位置ずれ量を補正することが可能である。
【0011】
自身の移動機構などに起因して校正マークの位置変動を検出することができないアライメントカメラとは異なり、装置本体部分に対して少なくともステージ移動方向に関して位置変動が生じない位置ずれ測定部は、ステージ部の熱などの影響によってテーブルなどの部材に伸縮が生じたとき、校正スケールもしくは校正マークの位置変動を検出することが可能となる。
【0012】
すなわち、位置ずれ測定部は、装置本体部分に対して規定される座標系に対して位置変動しない構成となっており、校正スケールによるアライメントカメラの位置補正時に用いられるその座標系によって校正スケールもしくは校正マークの位置変動を検出することが可能である。例えば、アライメントカメラによって校正マークを測定する位置にステージ部を位置決めした時の校正スケールもしくは校正マークの位置変動を検出すればよい。
【0013】
位置ずれ測定部の構成としては、例えば、アライメントカメラとは異なる撮像部(カメラなど)で構成することが可能である。アライメントカメラの位置ずれがアライメントカメラの移動機構に起因していることを考慮すると、位置ずれ測定部は、少なくともアライメントカメラ移動方向(例えば副走査方向)に関して装置本体部分に固定され、ステージ部に設けられる、すなわち、ステージ部の熱などの影響によって装置本体部分に対し位置変動する基準マークを撮像可能な撮像部によって構成することができる。
【0014】
ステージ部などの部材伸縮は場所によって相違することを考慮すると、アライメントカメラで校正マークを撮像する状態での位置変動を検出できることが望ましい。したがって、基準マークを、複数の校正マークの配列ラインに沿うように設けるのがよい。
【0015】
基準マークの配置構成としては様々な構成を採用することができる。例えば、基準マークを設けた基準部材をステージ部に取り付けることが可能である。この場合、基準部材を、校正スケールの傍に配置することで、基準マークの位置変動量を、校正スケールもしくは校正マークの位置変動量により確実に合わせることができる。
【0016】
一方、基準マーク用の専用部材を設ける代わりに、基準マークを校正スケールに含ませるように構成することも可能である。例えば、アライメントカメラの移動範囲外に撮像部を設けることを考慮し、複数の構成マークの両端の隣に基準マークを設けることが可能である。
【0017】
撮像部の装置本体部分に対する固定箇所としては、アライメントカメラを支持するカメラベース部に対して撮像部を固定することが可能である。例えば、アライメントカメラと撮像部を構成するカメラが同製品、同じ光学特性などの場合、アライメントカメラと同じ高さに設置し、基準マークを校正マークと同じ高さに設定すればよい。
【0018】
ステージ部の熱に起因する部材伸縮などが場所によって異なる場合、校正スケールの取り付け箇所と基準マークの設置個所を揃えるのが好ましい。例えば、校正スケールおよび基準マークを、ステージ部において、ワークを搭載するテーブル、もしくはテーブルの傍に設けられる独自の校正スケール支持台に設けることが可能である。
【0019】
本発明の他の態様におけるアライメント方法は、ワークに設けられたアライメントマークをアライメントカメラによって撮像し、装置本体部分に対して所定方向に移動するステージ部に取り付けられた校正スケールに設けられた複数の校正マークを、アライメントカメラによって撮像し、装置本体部分に固定されたアライメントカメラとは異なるカメラによって、ステージ部に設けられた校正マークとは異なる基準マークを撮像する方法であって、基準マークの位置ずれ量から校正マークの位置ずれ量を補正可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、熱などの影響を受けることなく、適切なアライメント調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態である露光装置の概略的側面図である。
図2】露光装置の上から見た概略的平面図である。
図3】テーブルに取り付けられる校正スケールと基準板を示した図である。
図4】露光装置のブロック図である。
図5】制御部によって実行されるカメラ位置校正処理を示したフローチャートである。
図6】露光装置のステージ部の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本実施形態である露光装置の概略的側面図である。図2は、露光装置の上から見た概略的平面図である。
【0024】
露光装置10は、架台15と架台15の上面15Sに設置された支持体40を備えている。支持体40は、矩形状の支持台42とその四隅に設けられた脚部43A、43B、44A、44Bから構成されており、脚部43A、43B、44A、44Bが架台15に固定されている。支持台42の上面42Sには、露光ヘッド20および光源部30が設けられている。
【0025】
架台15の上面15Sには、架台長手方向に沿ってガイドレール60A、60Bが所定間隔で互いに平行となるように配置されており、支持台42の一方の端から脚部43A、43B、および脚部44A、44Bの間を通って他方の端まで延びている。このガイドレール60A、60Bには、ガイドレール60A、60Bに沿って移動可能なステージ部50が設置されている。
【0026】
ステージ部50は、基板(ワーク)Wが搭載されるテーブル52と、テーブル52を下方から支持するとともに、テーブル52をX、Y方向およびZ方向に沿って移動させるステージ移動機構55を備える。ステージ移動機構55は、ガイドレール60A、60Bに沿ってステージ部50を移動させるXステージ機構56と、Y方向への移動およびZ軸回り回転させる微動ステージ機構54から構成される。
【0027】
架台15の上面15Sには、装置を基準とするX−Y座標系が規定されており、それの垂直(鉛直)方向としてZ方向が規定されている。ガイドレール60A、60Bは、X方向に沿って配置されており、ステージ部50のX方向位置検出用のリニアスケール58が架台15に設置されている。矩形状のテーブル52は、その長手方向端面52L、およびそれに垂直な端面52Tが、それぞれX方向,Y方向と平行となるようにステージ部50に設けられている。
【0028】
支持体40の脚部44A、44B側、すなわち中央側には、Y方向に延びる板(以下、カメラベースという)45が、支持体40の側面および脚部44A、44Bに固定されている。そして、ガイド板45の支持体40とは反対側の面には、アライメントカメラ80をY方向に移動させるガイド機構46が装着されている。ガイド機構46は、例えば、ボールネジ機構などによって構成されており、ここでは図示しないモータなどを備えたカメラ駆動部によってアライメントカメラ80を移動させる。ここでは、所定間隔離れた2つのアライメントカメラ80A、80Bによってアライメントカメラ80が構成される。
【0029】
図2に示すように、テーブル52の所定位置に置かれた基板Wには、複数のアライメントマーク(ここでは9つ)AMが規則的に所定間隔で並んでいる。アライメントカメラ80は、ステージ部50のX方向移動、およびアライメントカメラ80のY方向移動によって、各アライメントマークAMを撮像することが可能である。
【0030】
テーブル52には、カメラ位置校正用のスケール(以下、校正スケールという)62が、カメラベース45に平行な一方の端面52Tに沿って設置されている。校正スケール62には、テーブル端面52Tに沿って、すなわちY方向に沿って並ぶ複数(ここでは10個)の校正マークCMが設けられている。アライメントカメラ80は、ステージ部50の移動、アライメントカメラ80の移動によって、校正マークCM各々を撮像することが可能である。
【0031】
この校正スケール62とは別に、1つのマーク(以下、基準マークとという)SMが形成された矩形状板(以下では、基準板という)72が、テーブル52に取り付けられている。基準マークSMは、校正スケール62の校正マークCMが並ぶ同一ライン上にある。そして、アライメントカメラ80とは異なるカメラ(以下、基準カメラという)70が、カメラベース45に対し、アライメントカメラ80と同じ高さの位置で固定されている。
【0032】
基準カメラ70は、アライメントカメラ80のY方向に沿った移動範囲、すなわち撮像範囲から退避した位置で、カメラベース46に取り付けられた保持部71により保持されており、ステージ部50の移動によって、基準マークSMを撮像することが可能である。また、基準カメラ70のカメラベース46に対するX方向の位置は、アライメントカメラ80と同じ位置に固定されている。すなわち、基準カメラ70は、X方向に関してアライメントカメラ80の視野中心と基準カメラ70の視野中心とがともに同じ位置座標をもつように、保持部71を介してカメラベース46に対して取り付けられている。
【0033】
図3は、テーブルに取り付けられる校正スケールと基準板を示した図である。
【0034】
校正スケール62は、ガラス製であって、その表面に校正マークCMを描画したクロム膜が形成されている。校正マークCMの並ぶピッチは、アライメントカメラ80の視野サイズなどに従って定められている。校正マークCMは、アライメントカメラ80によって撮像したときにマーク位置座標が正確に求められるようなサイズおよび形状に定められている。ここでは角度誤差検出も可能となるように十字状に形成されている。
【0035】
校正スケール62は、テーブル端面52T側に設けられた凹部に設置されており、校正スケール62の表面が基板Wの表面と面一となるようにその高さが定められている(図2参照)。基準板72は、校正スケール62と同様、ガラス製でその表面には校正マークCMと同じ形状、サイズの十字型基準マークSMが形成されている。基準板72は、基準マークSMが校正マークCMと同一ライン状に位置するように、テーブル52に取り付けられている。基準板72の表面も、基板Wの表面と面一になっている。
【0036】
基準カメラ70は、ここでは、アライメントカメラ80と同種の製品によって構成されており、光学倍率、視野サイズなどの撮像特性およびサイズなどの外観特性は、アライメントカメラ80と同じである。上述したようにアライメントカメラ80の取り付け位置と基準カメラ70の取り付け位置の高さが同じであることから、撮像によって得られる校正マークCM、基準マークSMのイメージ像は、同サイズのイメージになる。
【0037】
図4は、露光装置のブロック図である。
【0038】
制御部25は、露光装置10の露光動作、アライメント調整、照明など、露光装置全体の動作を制御する。光源制御部31によって光源32が点灯すると、照明光が光学系23を経由してDMD(Digital Micro-mirror Device)24に入射する。
【0039】
露光制御部34は、ワークステーションから送信されてくるパターンデータ(ベクタデータ)をラスタデータに変換し、DMD駆動部22へラスタデータ(露光データ)を送信する。DMD駆動部22は、露光位置に応じたパターン光を投影するように、DMD24の各マイクロミラーをラスタデータに基づいてON/OFF制御する。DMD24で反射した光は、投影光学系25によって基板Wの表面にパターン光として結像する。
【0040】
モータなどを備えたステージ駆動部(移動機構)55は、図1に示した微動ステージ機構54、Xステージ機構56を駆動し、ステージ部50、すなわちテーブル52をX、Y方向に移動させる。リニアスケール58(図1参照)を含む位置検出器59は、架台15(すなわち支持体40を含む一つの構造体である露光装置本体)に対するテーブル52の位置座標を検出する。
【0041】
カメラ駆動部82は、アライメントカメラ80を駆動制御し、アライメント調整を行う際、基板WのアライメントマークAMの配列ラインに従ってアライメントカメラ80を移動させる。図3に示すように、基板Wには、両端および中央のラインa1〜a3に沿ってそれぞれ3つのアライメントマークAMが形成されている。
【0042】
アライメント調整を行うとき、アライメントカメラ80A、80Bは、ラインa1〜a3上に位置するようにY方向に沿って移動する。アライメントカメラ80の下方にアライメントマークAMが位置するようにテーブル52がX方向へ移動することで、アライメントマークAMが撮像される。
【0043】
画像処理部83は、アライメントカメラ80A、80Bから出力される撮像信号に基づいてアライメントマークAMの位置を検出する。具体的には、アライメントカメラ80A80Bの視野中心からのアライメントマーク中心位置のずれを検出する。アライメント制御部35は、送られてくる位置情報に基づいて露光制御部34を制御し、基板変形などを補償するようにラスタデータを補正する。
【0044】
また、画像処理部83は、アライメントカメラ80が校正マークCMを撮像すると、校正マークCMの視野中心からの位置ずれ量を検出する。カメラ校正部37は、カメラ位置ずれ量に基づく補正量を算出する。
【0045】
さらに画像処理部83は、基準カメラ70からの撮像信号に基づいて基準マークSMの視野中心からの位置ずれ量を検出することが可能である。カメラ校正部37は、校正マークCMの位置ずれに基づいて算出された補正量(以下、スケール補正量という)を算出する。アライメント制御部35は、スケール補正量を加味した補正量に基づいてラスタデータを補正する。
【0046】
ここで、校正スケール62すなわち校正マークCMの装置本体部分、すなわち架台15および支持体40に対する位置変動について説明する。
【0047】
アライメントカメラ80A、80Bは、Y方向に沿って移動可能なようにガイド機構46に取り付けられており、取り付け、組み立て誤差などが生じているとともに、ガイド機構46によってアライメントカメラ80A、80Bを往復運動させると、ガイド機構46の位置誤差、カメラ軸角度変化などに起因して、視野中心の位置が設計上の位置からずれる。
【0048】
この視野中心位置のずれ、すなわちアライメントカメラ80A、80Bの位置ずれを補正するために、校正マークCMの位置を測定し、実際の測定位置と本来あるべきマーク位置の差から、アライメントカメラ80の位置ずれ量(すなわちアライメントカメラ80と露光ヘッド20を固定する支持台42との位置関係の誤差)を求める。このようなアライメントカメラ80の位置ずれ量の測定は、校正スケール62の位置を基準としている。すなわち、校正スケール62の架台15および支持体40の一部である支持台42に対する位置座標が変わらないことを前提としている。
【0049】
しかしながら、この校正スケール62(校正マークCM)自体の位置ずれが、露光装置10の使用状況によっては生じる。露光装置10の使用中、長時間に渡ってステージ部50を往復移動させていると、Xステージ機構56のモータによる発熱などの影響によって、ステージ部50の微動ステージ機構54、テーブル52などに熱膨張、変形が生じる。また、露光動作中において発生する光源部30、露光ヘッド20の熱もステージ部50に影響を及ぼすことがある。
【0050】
このような熱の影響によってテーブル52がX方向に沿って熱膨張すると、校正スケール62の位置が変動することとなる。特に、テーブル52の中心部よりもその端面52Tにおいて膨張変化が大きく現れることから、校正スケール62の位置変動が起こりやすい。
【0051】
そのため、リニアスケール58によって架台15に対する位置を検出しても、Xステージ機構56から高さ方向およびX方向に関して離れているテーブル52の端面52T付近では、アライメント調整すなわちパターン精度に無視できない位置変動が生じていることがある。
【0052】
この状態で上述した校正スケール62によるカメラ位置ずれの補正を行っても、校正スケール62の位置誤差が含まれた状態で補正量を算出するため、アライメント調整を正しく行うことができない。一方、アライメントカメラ80にはカメラ位置ずれが生じていることから、誤差をもつアライメントカメラ80によって校正スケール62の位置ずれを検出することができない。
【0053】
そこで本実施形態では、校正スケール62(校正マークCM)の位置変動を測定するため独自に設けられた基準カメラ70によって、校正スケール62の傍に設置された基準板72の基準マークSMを撮像する。基準マークSMは、Y方向に沿って校正スケール62の校正マークCMと同一ライン上に形成されていることから、校正スケール62(校正マークCM)の位置変動と同様の位置変動が生じるものとみなせる。
【0054】
したがって、測定される基準マークSMの位置座標と、設計上(理想)の基準マークSMの位置座標とを比較して位置ずれ量を求め、カメラ位置ずれ補正量にこれを加味する(減算)ことで、正確なアライメント調整を行うことが可能となる。
【0055】
図5は、制御部によって実行されるカメラ位置校正処理を示したフローチャートである。カメラ位置校正処理は、ロットごと、あるいは基板1枚ごとに実行することが可能である。例えば、アライメントカメラ数よりもアライメントマーク列の数が大きい場合、アライメントカメラをY軸方向に移動させる必要があるため、基板1枚ごとに処理を実行させるのがよい。
【0056】
まず、アライメントカメラ80をアライメントマークAMのY座標に移動させる。ここでは、図3に示すラインa1〜a3の位置に合わせる。そして、校正スケール62がアライメントカメラ80の設計上の視野中心位置となるように、テーブル52が移動制御される(S101、S102)。このテーブル52(ステージ部50)の位置は、基準カメラ70の視野中心位置が理論上の基準マークSMの中心位置と一致する位置に相当する。
【0057】
次に、カメラ校正処理の前段階において、基準カメラ70により基準マークSMを撮像し(S103)、基準マークSMの視野中心位置からの位置ずれ量を算出する(S104)。ここでは、X、Y方向の位置ずれ、および回転角度(θ)を位置ずれ量として算出する。基準カメラ70の中心位置がアライメントカメラ80の視野中心位置と同じX座標をもつ、すなわちY方向に沿って視野中心位置が同一ライン上にあることから、このずれ量を架台15に対する校正スケール62(校正マークCM)の位置ずれ量とみなすことができる。
【0058】
その後、アライメントカメラ80によって校正マークCMの視野内座標を測定し(S105)、測定されたカメラ位置ずれ量から基準マークSMの位置ずれ量を減じた値を、カメラ校正の補正量として算出する(S106)。カメラ校正処理が終了すると、基板WのアライメントマークAMの位置が測定され、アライメント調整が行われる。
【0059】
このように本実施形態によれば、アライメントカメラ80によってアライメント調整可能な露光装置10において、テーブル52の端に複数の校正マークCMが並ぶ校正スケール62を取り付けるとともに、基準マークSMを設けた基準板72を、校正マークCMと基準マークSMが同一ライン上にあるように、テーブル52に取り付ける。そして、アライメントカメラ80に対して同じX方向位置座標の視野中心をもつ基準カメラ70を、カメラベース45に固定する。カメラ校正処理のとき、基準カメラ70による基準マークSMの撮像によって算出される校正スケール62(基準マークSM)の位置ずれ量に基づき、アライメントカメラ80による校正マークCMの撮像によって算出されるカメラ位置ずれ量を補正する。
【0060】
基準カメラ70、基準板72のX方向における設置場所を、アライメントカメラ80、校正スケール62の設置場所に合わせて配置することにより、簡易な構成、簡易な処理ステップによって熱などの影響による校正スケール62、校正マークCMの位置ずれを検出することができる。特に、基準板72が校正スケール62の傍に配置されることにより、正確な位置変動を検出することができる。
【0061】
なお、カメラ位置ずれ量を算出するのではなく、アライメントカメラ位置を微調整してもよい。また、アライメント調整時にアライメント補正量から基準マークSMの位置ずれ量を減じてもよく、あるいは、基準マークSMの位置ずれ量を考慮してラスタデータを補正してもよい。
【0062】
基準板を別途設ける代わりに、校正スケールの中に基準マークを含める構成にしてもよい。例えば、校正スケールの長手方向を延ばし、最も端に基準マークを設けてもよい。
【0063】
位置ずれ検出については、校正スケールの位置変動量が最も大きいX方向についてのみ、カメラ位置ずれ量に対する補正量を算出してもよい。また、X方向の位置再現性が確保される条件であれば、基準カメラの支持部材を別途設置し、それを動かすことで基準カメラをXまたはY方向に退避させてもよい。さらに、基準マークを設けず、校正スケールの四隅位置などを撮像することで、校正スケールの位置ずれ量を検出してもよい。
【0064】
校正スケールおよび基準板については、校正スケールおよび基準板をテーブルに取り付けず、ステージ部50の他の部分に固定させてテーブルとは独立させる構成にしてもよい。図6は、露光装置のステージ部の変形例を示した図である。Xステージ機構56に取り付けられた支持台92の上面に校正スケール62および基準板72が取り付けられている。ステージ部50のより端部側に取り付けることにより、位置変動の検出が容易となる。
【0065】
基準カメラの設置場所、基準板の設置場所は上記実施形態に限定されず、例えば、上方からの撮像ではなく下方からの撮像をおこなってもよい。また、アライメントカメラと同種ではないカメラなどによって撮像してもよい。さらに、基準板と撮像部を設けない構成でもよい。例えば、レーザーなどの光発信部をX方向に沿って放射し、ミラーで鉛直方向に反射させてその反射方向に設けられるフォトセンサで光を受光し、その受光位置のずれに基づいて校正スケールの位置ずれ量を算出してもよい。
【0066】
本実施形態では露光装置にアライメント装置が構成されているが、基板検査装置、基板穴あけ装置、部品実装装置など、ワークを対象にして作業を行う装置に組み込まれたアライメント装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 露光装置
50 ステージ部
52 テーブル
62 校正スケール
70 基準カメラ(撮像部、スケール位置測定部)
72 基準板(基準部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6