特許第6706170号(P6706170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706170
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】流体圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/08 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   F15B11/08 B
   F15B11/08 A
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2016-153158(P2016-153158)
(22)【出願日】2016年8月3日
(65)【公開番号】特開2018-21605(P2018-21605A)
(43)【公開日】2018年2月8日
【審査請求日】2019年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100197516
【弁理士】
【氏名又は名称】秋岡 範洋
(72)【発明者】
【氏名】木村 潤
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−204603(JP,A)
【文献】 特開2004−084727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00−11/22;21/14
E02F 3/42− 3/43; 3/84− 3/85; 9/20− 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷を駆動するシリンダの伸縮作動を制御する流体圧制御装置であって、
流体圧供給源から前記シリンダへの作動流体の供給を制御する制御弁と、
パイロット圧供給源から前記制御弁に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁と、
前記制御弁が中立位置の場合に負荷による負荷圧が作用する前記シリンダの負荷側圧力室と前記制御弁とを接続するメイン通路と、
前記メイン通路に設けられる負荷保持機構と、を備え、
前記負荷保持機構は、
前記制御弁から前記負荷側圧力室への作動流体の流れを許容する一方、背圧に応じて前記負荷側圧力室から前記制御弁への作動流体の流れを許容するオペレートチェック弁と、
前記パイロット制御弁を通じて導かれる前記パイロット圧によって前記制御弁と連動して動作し、前記オペレートチェック弁の作動を切り換えるための切換弁と、
前記負荷側圧力室の圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁と、
前記リリーフ弁から排出されたリリーフ流体をタンクへ導くリリーフ排出通路と、を備え、
前記切換弁は、
前記パイロット制御弁からパイロット通路を通じて前記パイロット圧が導かれるパイロット室と、
前記パイロット室の前記パイロット圧に応じて移動するスプールと、
前記スプールを閉弁方向に付勢する付勢部材が収容されたスプリング室と、
背面に前記パイロット圧を受けて前記スプールに前記付勢部材の付勢力に抗する推力を付与するピストンと、
前記スプールと前記ピストンで区画されたドレン室と、
前記ドレン室と前記スプリング室とを前記リリーフ排出通路へ連通させるドレン通路と、を備え、
前記パイロット通路及び前記パイロット室によってパイロットラインが構成され、
前記リリーフ排出通路、前記ドレン室、及び前記ドレン通路によって戻りラインが構成され、
前記負荷保持機構は、前記パイロットラインと前記戻りラインとを接続する接続通路と、前記接続通路に設けられ前記戻りラインから前記パイロットラインへの作動流体の通過のみを許容するチェック弁と、をさらに備えることを特徴とする流体圧制御装置。
【請求項2】
前記接続通路は、前記ピストンに形成されて、前記ドレン室と前記パイロット室とを接続することを特徴とする請求項1に記載の流体圧制御装置。
【請求項3】
前記接続通路は、前記リリーフ排出通路と前記パイロット通路とを接続することを特徴とする請求項1に記載の流体圧制御装置。
【請求項4】
前記接続通路は、前記ドレン通路と前記パイロット通路とを接続することを特徴とする請求項1に記載の流体圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧作業機器の動作を制御する流体圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧作業機器の動作を制御する油圧制御装置として、特許文献1には、シリンダ装置と、シリンダ装置の伸縮作動を制御するコントロールバルブと、シリンダ装置とコントロールバルブの間に設けられた負荷保持弁と、を備えるものが開示されている。負荷保持弁は、パイロットチェック弁と、パイロットチェック弁のチェック機能を解除するための切換弁と、シリンダ装置のボトム側圧力室の負荷圧が上昇した際に開弁するリリーフ弁と、を備える。
【0003】
切換弁は、パイロット圧が導かれるパイロット室と、パイロット室のパイロット圧によって移動するスプールと、を備える。パイロット室には、スプールの端部が直接臨むのではなく、スプールに隣接して設けられたサブスプールの端部が臨んでいる。
【0004】
シリンダ装置のボトム側圧力室の負荷圧が上昇してリリーフ弁が開くと、リリーフ弁の下流に設けられたオリフィスの上流側にリリーフ背圧が発生し、そのリリーフ背圧が切換弁のパイロット室におけるスプールとサブスプールの間に導かれる。これにより、スプールが移動して切換弁が切り換わり、パイロットチェック弁のチェック機能が解除されてボトム側圧力室の圧力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−220603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された油圧制御装置において、シリンダ装置を収縮作動させる際には、油圧ショベルのオペレータが操作レバーを手動操作することによって、切換弁のパイロット室にパイロット圧が導かれる。そのパイロット圧がサブスプールに作用し、サブスプールがスプールに推力を付与することによってスプールが開き、パイロットチェック弁のチェック機能が解除されてシリンダ装置が収縮作動する。一方、シリンダ装置のボトム側圧力室の負荷圧が上昇してリリーフ弁が開くと、リリーフ弁の下流に設けられたオリフィスの上流側に発生するリリーフ背圧がスプールとサブスプールの間に導かれてスプールに作用し、スプールに推力が付与される。このように、オペレータ操作によりパイロット室にパイロット圧を導いてスプールを移動させる場合には、サブスプールを介してスプールに推力が付与される一方、リリーフ弁の開弁時には、リリーフ背圧が直接スプールに作用する。
【0007】
ここで、オペレータ操作によりパイロット室にパイロット圧を導いてスプールが開いている状態でリリーフ弁が開弁した場合には、リリーフ背圧はスプールとサブスプールの間に導かれるため、サブスプールがスプールとは反対側に移動してしまい、パイロット圧による推力がサブスプールからスプールへと伝達され難くなる。また、リリーフ背圧が作用するスプールの受圧面積がサブスプールの受圧面積と比較して小さい場合には、リリーフ背圧によってはスプールは閉じ方向へと移動してしまう。
【0008】
したがって、オペレータがシリンダ装置を収縮作動させるように操作レバーを操作している最中にリリーフ弁が開弁した場合には、スプールが閉じ方向へと移動してしまい、オペレータが意図するシリンダ装置の収縮速度が得られない事態が生じ得る。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、シリンダの安定した作動を可能とする流体圧制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、負荷を駆動するシリンダの伸縮作動を制御する流体圧制御装置であって、流体圧供給源からシリンダへの作動流体の供給を制御する制御弁と、パイロット圧供給源から制御弁に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁と、制御弁が中立位置の場合に負荷による負荷圧が作用するシリンダの負荷側圧力室と制御弁とを接続するメイン通路と、メイン通路に設けられる負荷保持機構と、を備え、負荷保持機構は、制御弁から負荷側圧力室への作動流体の流れを許容する一方、背圧に応じて負荷側圧力室から制御弁への作動流体の流れを許容するオペレートチェック弁と、パイロット制御弁を通じて導かれるパイロット圧によって制御弁と連動して動作し、オペレートチェック弁の作動を切り換えるための切換弁と、負荷側圧力室の圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁と、リリーフ弁から排出されたリリーフ流体をタンクへ導くリリーフ排出通路と、を備え、切換弁は、パイロット制御弁を通じてパイロット通路からパイロット圧が導かれるパイロット室と、パイロット室のパイロット圧に応じて移動するスプールと、スプールを閉弁方向に付勢する付勢部材が収容されたスプリング室と、背面にパイロット圧を受けてスプールに付勢部材の付勢力に抗する推力を付与するピストンと、スプールとピストンで区画されたドレン室と、ドレン室とスプリング室とをリリーフ排出通路へ連通させるドレン通路と、を備え、パイロット通路及びパイロット室によってパイロットラインが構成され、リリーフ排出通路、ドレン室、及びドレン通路によって戻りラインが構成され、負荷保持機構は、パイロットラインと戻りラインとを接続する接続通路と、接続通路に設けられ戻りラインからパイロットラインへの作動流体の通過のみを許容するチェック弁と、をさらに備えることを特徴とする。
【0011】
第1の発明では、リリーフ弁から排出されたリリーフ流体はリリーフ排出通路を通じてタンクへ排出されるため、リリーフ流体が切換弁を作動させない。また、パイロットラインと戻りラインとが接続通路によって連通するため、リリーフ流体圧がリリーフ排出通路及びドレン通路を通じて切換弁のドレン室に導かれたとしても、同時に接続通路を通じてパイロット室にもリリーフ流体圧が導かれる。これにより、リリーフ流体圧によってピストンに作用する推力が互いに打ち消し合うため、リリーフ流体圧は切換弁の作動に影響を及ぼさない。よって、オペレータがシリンダを伸縮作動させるように操作レバーを操作している最中にリリーフ弁が開弁した場合であっても、スプールが閉じ方向へと移動することはなく、オペレータが意図するシリンダの伸縮速度が得られる。
【0012】
第2の発明は、接続通路が、ピストンに形成されて、ドレン室とパイロット室とを接続することを特徴とする。
【0013】
第2の発明によれば、接続通路の加工が容易になると共に、スペース効率を向上させることができる。
【0014】
第3の発明は、接続通路が、リリーフ排出通路とパイロット通路とを接続することを特徴とする。
【0015】
第4の発明は、接続通路が、ドレン通路とパイロット通路とを接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シリンダの安定した作動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】油圧ショベルの一部分を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置の油圧回路図である。
図3】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置の負荷保持機構の断面図である。
図4図3におけるA部の拡大断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る流体圧制御装置の負荷保持機構の平面図である。
図6】本発明の実施形態の第1変形例に係る流体圧制御装置の負荷保持機構の断面図である。
図7】本発明の実施形態の第2変形例に係る流体圧制御装置の油圧回路図である。
図8】本発明の実施形態の第2変形例に係る流体圧制御装置の負荷保持機構の平面図である。
図9】本発明の第1比較例に係る流体圧制御装置の油圧回路図である。
図10】本発明の第1比較例に係る流体圧制御装置の負荷保持機構の断面図である。
図11】本発明の第2比較例に係る流体圧制御装置の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧制御装置について説明する。
【0019】
流体圧制御装置は、油圧ショベル等の油圧作業機器の動作を制御するものであり、本実施形態では、図1に示す油圧ショベルのアーム(負荷)1を駆動するシリンダ2の伸縮作動を制御する油圧制御装置について説明する。
【0020】
まず、図2を参照して、油圧制御装置の油圧回路について説明する。
【0021】
シリンダ2は、筒状のシリンダチューブ2cと、シリンダチューブ2cに摺動自在に挿入されシリンダチューブ2c内をロッド側室2aと反ロッド側室2bに区画するピストン2dと、一端がピストン2dに連結され、他端側がシリンダチューブ2cの外部へ延びてアーム1に連結されるロッド2eと、を備える。
【0022】
油圧ショベルにはエンジンが搭載され、そのエンジンの動力によって流体圧供給源としてのポンプ4及びパイロット圧供給源としてのパイロットポンプ5が駆動する。
【0023】
油圧制御装置は、ポンプ4からシリンダ2への作動油の供給を制御する制御弁6と、パイロットポンプ5から制御弁6に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁9と、を備える。
【0024】
制御弁6とシリンダ2のロッド側室2aとは第1メイン通路7によって接続され、制御弁6とシリンダ2の反ロッド側室2bとは第2メイン通路8によって接続される。
【0025】
制御弁6は、油圧ショベルのオペレータが操作レバー10を手動操作することに伴ってパイロットポンプ5からパイロット制御弁9を通じてパイロット室6a,6bに導かれるパイロット圧によって動作する。
【0026】
具体的には、パイロット室6aにパイロット圧が導かれた場合には、制御弁6は位置6Aに切り換わり、ポンプ4から第1メイン通路7を通じてロッド側室2aに作動油が供給されると共に、反ロッド側室2bの作動油が第2メイン通路8を通じてタンクTへと排出される。これにより、シリンダ2は収縮作動し、アーム1は、図1に示す矢印80の方向へと上昇する。
【0027】
一方、パイロット室6bにパイロット圧が導かれた場合には、制御弁6は位置6Bに切り換わり、ポンプ4から第2メイン通路8を通じて反ロッド側室2bに作動油が供給されると共に、ロッド側室2aの作動油が第1メイン通路7を通じてタンクTへと排出される。これにより、シリンダ2は伸長作動し、アーム1は、図1に示す矢印81の方向へと下降する。
【0028】
パイロット室6a,6bにパイロット圧が導かれない場合には、制御弁6は位置6Cとなり、シリンダ2に対する作動油の給排が遮断され、アーム1は停止した状態を保つ。
【0029】
このように、制御弁6は、シリンダ2を収縮作動させる収縮位置6A、シリンダ2を伸長作動させる伸長位置6B、及びシリンダ2の負荷を保持する中立位置6Cの3ポジションを有し、シリンダ2に対する作動油の給排を切り換え、シリンダ2の伸縮作動を制御する。
【0030】
ここで、図1に示すように、バケット13を持ち上げた状態で、制御弁6を中立位置6Cに切り換えアーム1の動きを止めた場合には、バケット13とアーム1等の自重によって、シリンダ2には伸長する方向の力が作用する。このように、アーム1を駆動するシリンダ2においては、ロッド側室2aが、制御弁6が中立位置6Cの場合に負荷圧が作用する負荷側圧力室となる。
【0031】
負荷側圧力室であるロッド側室2aに接続された第1メイン通路7には、負荷保持機構20が設けられる。負荷保持機構20は、制御弁6が中立位置6Cの場合に、ロッド側室2aの負荷圧を保持するものであり、図1に示すように、シリンダ2の表面に固定される。
【0032】
なお、ブーム14を駆動するシリンダ15においては、反ロッド側室15bが負荷側圧力室となるため、ブーム14に負荷保持機構20を設ける場合には、反ロッド側室15bに接続されたメイン通路に負荷保持機構20が設けられる(図1参照)。
【0033】
負荷保持機構20は、第1メイン通路7に設けられたオペレートチェック弁21と、パイロット制御弁9を通じてパイロット室23に導かれるパイロット圧によって制御弁6と連動して動作し、オペレートチェック弁21の作動を切り換えるための切換弁22と、を備える。
【0034】
オペレートチェック弁21は、第1メイン通路7を開閉する弁体24と、弁体24が着座するシート部28と、弁体24の背面に画成された背圧室25と、弁体24に形成されロッド側室2aの作動油を背圧室25へと常時導く通路26とを備える。通路26には絞り26aが設けられる。
【0035】
第1メイン通路7は、ロッド側室2aとオペレートチェック弁21を接続するシリンダ側第1メイン通路7aと、オペレートチェック弁21と制御弁6を接続する制御弁側第1メイン通路7bと、を有する。
【0036】
弁体24には、制御弁側第1メイン通路7bの圧力が作用する第1受圧面24aと、シリンダ側第1メイン通路7aを通じてロッド側室2aの圧力が作用する第2受圧面24bと、が形成される。
【0037】
背圧室25には、弁体24を閉弁方向に付勢する付勢部材としてのスプリング27が収装される。背圧室25の圧力とスプリング27の付勢力とは、弁体24をシート部28に着座させる方向に作用する。
【0038】
弁体24がシート部28に着座した状態は、オペレートチェック弁21は、ロッド側室2aから制御弁6への作動油の流れを遮断する逆止弁としての機能を発揮する。つまり、オペレートチェック弁21は、ロッド側室2a内の作動油の漏れを防止して負荷圧を保持し、アーム1の停止状態を保持する。
【0039】
負荷保持機構20は、さらに、ロッド側室2aの作動油をオペレートチェック弁21をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導くバイパス通路30と、背圧室25の作動油を制御弁側第1メイン通路7bへと導く背圧通路31と、を備える。
【0040】
切換弁22は、バイパス通路30及び背圧通路31に設けられ、制御弁側第1メイン通路7bに対するバイパス通路30及び背圧通路31の連通を切り換え、シリンダ2を伸長作動させる際にメータアウト側となる第1メイン通路7の作動油の流れを制御する。
【0041】
切換弁22は、バイパス通路30に連通する第1供給ポート32、背圧通路31に連通する第2供給ポート33、及び制御弁側第1メイン通路7bに連通する排出ポート34の3つのポートを有する。また、切換弁22は、遮断位置22A、第1連通位置22B、第2連通位置22Cの3ポジションを有する。
【0042】
パイロット室23には、制御弁6のパイロット室6bにパイロット圧が導かれたときに、同時に同じ圧力のパイロット圧が導かれる。つまり、制御弁6を伸長位置6Bに切り換えた場合に、切換弁22も第1連通位置22B又は第2連通位置22Cに切り換わる。
【0043】
具体的に説明すると、パイロット室23にパイロット圧が導かれない場合には、スプリング36の付勢力によって、切換弁22は遮断位置22Aを保つ。遮断位置22Aでは、第1供給ポート32及び第2供給ポート33の双方が遮断される。
【0044】
パイロット室23に第1所定圧力以上第2所定圧力未満のパイロット圧が導かれた場合には、切換弁22は第1連通位置22Bに切り換わる。第1連通位置22Bでは、第1供給ポート32が排出ポート34と連通する。これにより、ロッド側室2aの作動油はバイパス通路30から切換弁22を通じて制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。つまり、ロッド側室2aの作動油はオペレートチェック弁21をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。このとき、絞り37によって作動油の流れに抵抗が付与される。第2供給ポート33は遮断された状態を保つ。
【0045】
パイロット室23に第2所定圧力以上のパイロット圧が導かれた場合には、切換弁22は第2連通位置22Cに切り換わる。第2連通位置22Cでは、第1供給ポート32が排出ポート34と連通すると共に、第2供給ポート33も排出ポート34と連通する。これにより、背圧室25の作動油は、背圧通路31から切換弁22を通じて制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。このとき、背圧室25の作動油は、絞り37をバイパスして制御弁側第1メイン通路7bへと導かれ、制御弁6からタンクTへと排出される。これにより、絞り26aの前後にて差圧が発生し、背圧室25内の圧力が小さくなるため、弁体24に作用する閉弁方向の力が小さくなり、弁体24がシート部28から離れ、オペレートチェック弁21の逆止弁としての機能が解除される。
【0046】
バイパス通路30における切換弁22の上流には、リリーフ通路40が分岐して接続される。リリーフ通路40には、ロッド側室2aの圧力が所定圧力に達した場合に開弁して作動油の通過を許容し、ロッド側室2aの作動油を逃がすリリーフ弁41が設けられる。リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油は、リリーフ弁41とタンクTを接続するリリーフ排出通路77を通じてタンクTへ排出される。
【0047】
リリーフ排出通路77は、リリーフ弁41に接続されるメイン排出通路77aと、メイン排出通路77aから2つに分岐した第1分岐通路77b及び第2分岐通路77cと、を有する。第1分岐通路77bは、第1ドレンポート53に接続され、第2分岐通路77cは、第2ドレンポート86に接続される。第1ドレンポート53及び第2ドレンポート86は、それぞれ後述するボディ60の外面に開口する。第1ドレンポート53は、第2ドレンポート86よりも径が小さく、より径が小さい配管を接続可能に構成される。本実施形態では、第1ドレンポート53にタンクTと連通する配管55が接続され、第2ドレンポート86はプラグ88(図5参照)によって封止される。よって、本実施形態では、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油は、メイン排出通路77a、第1分岐通路77b、第1ドレンポート53を通じて配管55に導かれて、タンクTに排出される。
【0048】
制御弁側第1メイン通路7bには、制御弁側第1メイン通路7bの圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁43が接続される。
【0049】
次に、主に図3から5を参照して、切換弁22について詳細に説明する。図3は負荷保持機構20の断面図であり、パイロット室23にパイロット圧が導かれておらず切換弁22が遮断位置22Aである状態を示す。図4は、図3におけるA部の拡大図であり、後述するチェック弁90が閉弁している状態を示すものである。図5は、負荷保持機構20の平面図である。なお、図3から5において、図2で示した符号と同一の符号を付したものは、図2で示した構成と同一の構成である。
【0050】
図3に示すように、切換弁22はボディ60に組み込まれる。ボディ60にはスプール孔60aが形成され、スプール孔60aには略円筒形状のスリーブ61が挿入される。スリーブ61内には、スプール56が摺動自在に組み込まれる。
【0051】
スプール56の一端面56aの側方には、キャップ57によってスプリング室54が区画される。スプリング室54は、スリーブ61の端面に形成された切り欠き61aを通じて第1ドレン通路76aに接続される。第1ドレン通路76aはリリーフ排出通路77の第1分岐通路77bに接続される。したがって、スプリング室54に漏れ込んだ作動油は第1ドレン通路76a及び第1分岐通路77bを通じてタンクTへ排出される。
【0052】
スプリング室54には、スプール56を付勢する付勢部材としてのスプリング36が収容される。また、スプリング室54には、スプール56の一端面56aに端面が当接すると共に中空部にスプール56の一端面56aに突出して形成されたピン部56cが挿入される環状の第1バネ受部材45と、キャップ57の底部近傍に配置された第2バネ受部材46と、が収装される。スプリング36は、第1バネ受部材45と第2バネ受部材46との間に圧縮状態で介装され、第1バネ受部材45を介してスプール56を閉弁方向に付勢する。
【0053】
スプリング室54内での第2バネ受部材46の軸方向位置は、キャップ57の底部に貫通して螺合する調節ボルト47の先端部が第2バネ受部材46の背面に当接することによって設定される。調節ボルト47をねじ込むことによって、第2バネ受部材46は第1バネ受部材45に近づく方向に移動する。したがって、調節ボルト47のねじ込み量を調節することによって、スプリング36の初期のスプリング荷重を調整することができる。調節ボルト47はナット48にて固定される。
【0054】
スプール56の他端面56bの側方には、スプール孔60aと連通して形成されたピストン孔60bと、ピストン孔60bを閉塞するキャップ58と、によってパイロット室23が区画される。パイロット室23には、ボディ60に形成されたパイロット通路52を通じてパイロット圧が導かれる。パイロット室23内には、背面にパイロット圧を受けてスプール56にスプリング36の付勢力に抗する推力を付与するピストン50が摺動自在に収容される。
【0055】
ピストン孔60b内には、スプール56とピストン50によってドレン室51が区画される。ドレン室51は第2ドレン通路76bに接続され、第2ドレン通路76bはリリーフ排出通路77の第1分岐通路77bに接続される。したがって、ドレン室51に漏れ込んだ作動油は第2ドレン通路76b及び第1分岐通路77bを通じてタンクTへ排出される。
【0056】
ピストン50は、外周面がピストン孔60bの内周面に沿って摺動する摺動部50aと、摺動部50aと比較して小径に形成され、スプール56の他端面56bに対峙する先端部50bと、摺動部50aと比較して小径に形成され、キャップ58の先端面に対峙する基端部50cと、を備える。
【0057】
ピストン50には、図3及び図4に示すように、ドレン室51とパイロット室23とを接続する接続通路78が設けられる。接続通路78には、ドレン室51からパイロット室23への作動油の流れのみを許容するチェック弁90が設けられる。ピストン50は、ドレン室51の圧力を受ける受圧面積とパイロット室23の圧力を受ける受圧面積とが等しくなるように形成される。
【0058】
接続通路78は、ピストン50の軸心位置において、軸方向両端面に開口するように形成される。
【0059】
チェック弁90は、接続通路78に形成される弁座78aに離着座するボール91と、ボール91を挟んで弁座78aとは反対側に設けられるキャップ部材92と、を有する。
【0060】
キャップ部材92には、軸方向に貫通する貫通孔93と、貫通孔93と連通するようにボール91側(図4中右側)の端面に径方向に延びて設けられるスリット94と、が形成される。
【0061】
パイロット室23の圧力がドレン室51の圧力よりも大きい場合には、チェック弁90は閉弁する。具体的には、ボール91が弁座78aに着座し、ドレン室51とパイロット室23との連通が遮断される。ドレン室51の圧力がパイロット室23の圧力よりも大きい場合には、チェック弁90は開弁する(図4に示す状態)。具体的には、ボール91が弁座78aから離れてキャップ部材92の端面に当接し、ドレン室51の作動油がスリット94及び貫通孔93を通じてパイロット室23に導かれる。このようにチェック弁90が開弁することにより、接続通路78を通じてドレン室51とパイロット室23とが連通する。
【0062】
なお、本実施形態では、チェック弁90は、ボール91を閉じ方向に付勢する付勢部材(例えばスプリング)を有していない構造であるが、これに限らず、付勢部材によってボール91を付勢してもよい。チェック弁90は、図3に示す構造に限らず、公知の構成を採用することができる。
【0063】
パイロット通路52を通じてパイロット室23内にパイロット圧油が供給されると、基端部50cの背面と摺動部50aの環状背面とにパイロット圧が作用する。これにより、ピストン50は、前進し、先端部50bがスプール56の他端面56bに当接してスプール56を移動させる。このように、スプール56は、ピストン50の背面に作用するパイロット圧に基づいて発生するピストン50の推力を受け、スプリング36の付勢力に抗して移動する。基端部50cの背面がキャップ58の先端面に当接している場合であっても、基端部50cは摺動部50aと比較して小径であり、摺動部50aの環状背面にパイロット圧が作用するため、ピストン50は前進可能である。
【0064】
ピストン50の一端部はパイロット室23に臨み、他端部はタンクTに接続されたドレン室51に臨んでいるため、パイロット室23のパイロット圧に基づいて発生するピストン50の推力は効率良くスプール56に伝達される。
【0065】
ドレン室51及びスプリング室54のそれぞれは、第1ドレン通路76a及び第2ドレン通路76bを通じてリリーフ排出通路77の第1分岐通路77bに連通する。第1分岐通路77bはボディ60の外面に開口する第1ドレンポート53に連通して形成される。第1ドレンポート53は配管55(図2参照)を通じてタンクTに接続される。ドレン室51とスプリング室54は双方ともタンクTに連通するため、切換弁22が遮断位置22Aの際には、スプール56の両端には大気圧が作用し、スプール56が意図せずに移動するような事態が防止される。
【0066】
このように、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油とドレン室51及びスプリング室54のドレンとは、合流して第1ドレンポート53及び配管55を通じてタンクTへ排出される。
【0067】
スプール56は、一端面56aに作用するスプリング36の付勢力と他端面56bに作用するピストン50の推力とがバランスした位置で停止し、そのスプール56の停止位置にて切換弁22の切り換え位置が設定される。
【0068】
スリーブ61には、バイパス通路30(図2参照)に連通する第1供給ポート32、背圧通路31(図2参照)に連通する第2供給ポート33、及び制御弁側第1メイン通路7bに連通する排出ポート34の3つのポートが形成される。
【0069】
スプール56の外周面は部分的に環状に切り欠かれ、その切り欠かれた部分とスリーブ61の内周面とで、第1圧力室64、第2圧力室65、第3圧力室66、及び第4圧力室67が形成される。
【0070】
第1圧力室64は、排出ポート34に常時連通している。
【0071】
第3圧力室66は、第1供給ポート32に常時連通している。スプール56のランド部72の外周には、スプール56がスプリング36の付勢力に抗して移動することによって、第3圧力室66と第2圧力室65を連通する複数の絞り37が形成される。
【0072】
第4圧力室67は、スプール56に軸方向に形成された導圧通路68を通じて第2圧力室65に常時連通している。
【0073】
パイロット室23にパイロット圧が導かれない場合には、スプリング36の付勢力によってスプール56に形成されたポペット弁70が、スリーブ61の内周に形成された弁座71に押し付けられ、第2圧力室65と第1圧力室64の連通が遮断される。したがって、第1供給ポート32と排出ポート34との連通が遮断される。これにより、ロッド側室2aの作動油が排出ポート34へと漏れることはない。この状態が、切換弁22の遮断位置22Aに相当する。スプリング36の付勢力によってポペット弁70が弁座71に着座した状態では、第1バネ受部材45の端面とスリーブ61の端面との間には僅かな隙間が存在するため、ポペット弁70は弁座71に対してスプリング36の付勢力によって確実にシートされる。
【0074】
パイロット室23にパイロット圧が導かれ、スプール56に作用するピストン50の推力がスプリング36の付勢力よりも大きくなった場合には、スプール56はスプリング36の付勢力に抗して移動する。これにより、ポペット弁70が弁座71から離れると共に、第3圧力室66と第2圧力室65が複数の絞り37を通じて連通するため、第1供給ポート32は第3圧力室66、第2圧力室65、及び第1圧力室64を通じて排出ポート34と連通する。第1供給ポート32と排出ポート34の連通によって、ロッド側室2aの作動油が、絞り37を通じて制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。この状態が、切換弁22の第1連通位置22Bに相当する。
【0075】
パイロット室23に導かれるパイロット圧が大きくなると、スプール56はスプリング36の付勢力に抗してさらに移動し、第2供給ポート33に第4圧力室67が連通する。これにより、第2供給ポート33は、第4圧力室67、導圧通路68、第2圧力室65、及び第1圧力室64を通じて排出ポート34と連通する。第2供給ポート33と排出ポート34の連通によって、背圧室25の作動油が制御弁側第1メイン通路7bへと導かれる。この状態が、切換弁22の第2連通位置22Cに相当する。
【0076】
次に、主に図2及び図3を参照して、油圧制御装置の動作について説明する。
【0077】
制御弁6が中立位置6Cの場合には、ポンプ4が吐出する作動油はシリンダ2に供給されない。このとき、切換弁22のパイロット室23にはパイロット圧が導かれないため、切換弁22も遮断位置22Aの状態となる。
【0078】
このため、オペレートチェック弁21の背圧室25は、ロッド側室2aの圧力に維持される。ここで、弁体24における閉弁方向の受圧面積(弁体24の背面の面積)は、開弁方向の受圧面積である第2受圧面24bの面積よりも大きいため、背圧室25の圧力による弁体24の背面に作用する荷重とスプリング27の付勢力とによって、弁体24はシート部28に着座した状態となる。このように、オペレートチェック弁21によって、ロッド側室2a内の作動油の漏れが防止され、アーム1の停止状態が保持される。
【0079】
操作レバー10が操作され、パイロット制御弁9から制御弁6のパイロット室6aへとパイロット圧が導かれると、制御弁6は、パイロット圧に応じた量だけ収縮位置6Aへと切り換わる。制御弁6が収縮位置6Aへと切り換わると、ポンプ4の吐出圧がオペレートチェック弁21の第1受圧面24aへと作用する。このとき、切換弁22は、パイロット室23にパイロット圧が導かれず遮断位置22Aの状態であるため、オペレートチェック弁21の背圧室25は、ロッド側室2aの圧力に維持される。第1受圧面24aに作用する荷重が、背圧室25の圧力による弁体24の背面に作用する荷重とスプリング27の付勢力との合計荷重よりも大きくなった場合には、弁体24はシート部28から離れる。このようにしてオペレートチェック弁21が開弁すれば、ポンプ4から吐出された作動油はロッド側室2aに供給され、シリンダ2は収縮する。これにより、アーム1は、図1に示す矢印80の方向へと上昇する。
【0080】
操作レバー10が操作され、パイロット制御弁9から制御弁6のパイロット室6bへとパイロット圧が導かれると、制御弁6はパイロット圧に応じた量だけ伸長位置6Bへと切り換わる。これと同時に、パイロット室23へもパイロット圧が導かれるため、切換弁22は、供給されるパイロット圧に応じて第1連通位置22B又は第2連通位置22Cに切り換わる。
【0081】
パイロット室23に導かれるパイロット圧が第1所定圧力以上第2所定圧力未満の場合には、切換弁22は第1連通位置22Bに切り換わる。この場合、第2供給ポート33と排出ポート34との連通は遮断された状態であるため、オペレートチェック弁21の背圧室25はロッド側室2aの圧力に維持され、オペレートチェック弁21は閉弁状態となる。
【0082】
一方、第1供給ポート32は排出ポート34と連通するため、ロッド側室2aの作動油は、バイパス通路30から絞り37を通過して制御弁側第1メイン通路7bへと導かれ、制御弁6からタンクTへと排出される。また、反ロッド側室2bには、ポンプ4から吐出される作動油が供給されるため、シリンダ2は伸長する。これにより、アーム1は、図1に示す矢印81の方向へと下降する。
【0083】
ここで、切換弁22を第1連通位置22Bに切り換えるのは、例えば、バケット13に取り付けた搬送物を、目的の位置に下ろすクレーン作業を行う場合や、アーム1及びブーム14を同時に動かして、バケット13を水平に動かす水平引き作業を行う場合である。クレーン作業では、シリンダ2を低速で伸長作動させてアーム1を矢印81の方向へとゆっくりと下降させる必要があるため、制御弁6は、伸長位置6Bにわずかに切り換えられるだけである。また、水平引き作業は、バケット13が水平に動くようにアーム1とブーム14とを同時に動かす高度な作業であるため、アーム1及びブーム14はゆっくり動かされる。このため、水平引き作業においても、制御弁6は、伸長位置6Bにわずかに切り換えられるだけである。よって、制御弁6のパイロット室6bに導かれるパイロット圧は小さく、切換弁22のパイロット室23に導かれるパイロット圧は第1所定圧力以上第2所定圧力未満となり、切換弁22は第1連通位置22Bまでしか切り換わらない。したがって、ロッド側室2aの作動油は絞り37を通過して排出されることになり、アーム1はクレーン作業や水平引き作業に適した低速で移動する。
【0084】
また、切換弁22が第1連通位置22Bの場合において、制御弁側第1メイン通路7bが破裂などして作動油が外部へと漏れるような事態が発生したとしても、ロッド側室2aから排出される作動油の流量は絞り37によって制限されるため、バケット13の落下速度は抑制される。この機能をメータリング制御という。このため、バケット13が地面に落下する前に、切換弁22を遮断位置22Aに切り換えることができ、バケット13の急落下を防止することができる。
【0085】
このように、絞り37は、オペレートチェック弁21の閉弁時におけるシリンダ2の下降速度を抑えると共に、制御弁側第1メイン通路7bの破裂時におけるバケット13の落下速度を抑えるためのものである。
【0086】
パイロット室23に導かれるパイロット圧が第2所定圧力以上の場合には、切換弁22は第2連通位置22Cに切り換わる。この場合、第2供給ポート33が排出ポート34と連通するため、オペレートチェック弁21の背圧室25の作動油は、背圧通路31を通じて制御弁側第1メイン通路7bへと導かれ、制御弁6からタンクTへと排出される。これにより、絞り26aの前後で差圧が発生し、背圧室25内の圧力が小さくなるため、弁体24に作用する閉弁方向の力が小さくなり、弁体24がシート部28から離れ、オペレートチェック弁21の逆止弁としての機能が解除される。
【0087】
このように、オペレートチェック弁21は、制御弁6からロッド側室2aへの作動油の流れを許容する一方、背圧室25の圧力に応じてロッド側室2aから制御弁6への作動油の流れを許容するように動作する。
【0088】
オペレートチェック弁21が開弁すると、ロッド側室2aの作動油は第1メイン通路7を通りタンクTへと排出されるため、シリンダ2は素早く伸長する。つまり、切換弁22を第2連通位置22Cに切り換えると、ロッド側室2aから排出される作動油の流量が多くなるため、反ロッド側室2bに供給される作動油の流量が多くなり、シリンダ2の伸長速度は速くなる。これにより、アーム1は矢印81の方向へと素早く下降する。
【0089】
切換弁22を第2連通位置22Cに切り換えるのは、掘削作業等を行う場合であり、制御弁6は伸長位置6Bに大きく切り換えられる。このため、制御弁6のパイロット室6bに導かれるパイロット圧は大きく、切換弁22のパイロット室23に導かれるパイロット圧は第2所定圧力以上となり、切換弁22は第2連通位置22Cまで切り換わる。
【0090】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0091】
まず、図9から11を参照して、本実施形態の比較例について説明する。図9及び図10は、第1比較例を示す図であり、図11は、第2比較例を示す図である。図9から11において、上記実施形態と同一の構成には、図2〜3と同一の符号を付す。
【0092】
図9及び10に示す第1比較例では、リリーフ通路40に、ロッド側室2aの圧力が所定圧力に達した場合に開弁して、ロッド側室2aの作動油を逃がすリリーフ弁110が設けられる。リリーフ弁110とタンクTを接続するリリーフ排出通路77にはオリフィス111が設けられる。ロッド側室2aの圧力が所定圧力に達してリリーフ弁110が開弁すると、リリーフ弁110から排出されたオリフィス111の上流側のリリーフ圧油が第2ドレン通路76bを通じてドレン室51に導かれる。これにより、切換弁22が第2連通位置22Cに切り換わることによって、オペレートチェック弁21が開弁し、ロッド側室2aの作動油の圧力が低下する。
【0093】
このような第1比較例において、オペレータ操作によりパイロット室23にパイロット圧を導いてスプール56を移動させ、シリンダ2を伸長作動させている状態で、ロッド側室2aの圧力が上昇してリリーフ弁110が開弁した場合には、リリーフ弁110から排出されたオリフィス111の上流側のリリーフ圧油がドレン室51に導かれる。ドレン室51に導かれるオリフィス111の上流側のリリーフ背圧は、パイロット室23に導かれるパイロット圧と比較して大きいため、ピストン50はスプール56から離れる方向へと移動してしまう。したがって、パイロット圧によって発生するピストン50の推力がスプール56へと伝達されない。また、ドレン室51の圧力が作用するスプール56の受圧面積はピストン50の受圧面積と比較して小さいため、ドレン室51に導かれるオリフィス111の上流側のリリーフ背圧の大きさによっては、スプール56はスプリング36の付勢力によって閉じ方向へと移動してしまう事態が起こり得る。
【0094】
このように、第1比較例においては、オペレータがシリンダ2を伸長作動させるように操作レバーを操作している最中にリリーフ弁110が開弁した場合には、スプール56が閉じ方向へと移動してしまい、オペレータが意図するシリンダ2の伸長速度が得られない事態が生じ得る。
【0095】
図11に示す第2比較例では、リリーフ弁41とタンクTを接続するリリーフ排出通路77にはオリフィスが設けられず、ピストン50にはドレン室51とパイロット室23とを接続する接続通路78が設けられない。
【0096】
第2比較例では、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油はリリーフ排出通路77を通じてタンクTへ排出され、ドレン室51に高圧が作用することはほとんどない。しかしながら、リリーフ弁41が開弁すると、第2ドレン通路76bを通じてドレン室51には、若干のリリーフ圧油が導かれる。ドレン室51に導かれたリリーフ圧油は、パイロット圧によって発生するピストン50の推力に抗するように作用する。
【0097】
オペレータによる操作レバーの操作量が比較的小さく、パイロット室23に導かれるパイロット圧も比較的小さいような場合にリリーフ弁41が開弁すると、パイロット圧よりも圧力が大きなリリーフ圧油がドレン室51に導かれることがある。このような場合には、ドレン室51の圧力によってピストン50がパイロット圧の推力に抗してスプール56から離れる方向に押し戻される。
【0098】
よって、第2比較例では、オペレータがシリンダ2を伸長作動させるように操作レバーを操作している最中にリリーフ弁41が開弁した場合に、ドレン室51の圧力によって意図せずにスプール56が閉じ方向に移動してしまうことがある。また、リリーフ弁41が開弁した状態から閉弁すると、ドレン室51のリリーフ圧油はリリーフ排出通路77を通じてタンクTへ排出されるため、スプール56が開き方向へ移動して、シリンダ2の速度が意図せず速くなる。このように、第2比較例であっても、オペレータが意図するシリンダ2の伸長速度が得られないことがある。
【0099】
これに対し、本実施形態では、ドレン室51とパイロット室23とは、ピストン50に形成される接続通路78によって接続される。このため、リリーフ弁41が開弁してパイロット圧よりも大きな圧力のリリーフ圧油がドレン室51に導かれると、リリーフ圧油によってチェック弁90が開弁し、同時にパイロット室23にもリリーフ圧油が導かれる。ドレン室51の圧力を受けるピストン50の受圧面積とパイロット室23の圧力を受けるピストン50の受圧面積とは、互いに略等しいため、リリーフ圧油によってピストン50に作用する推力が互いに打ち消しあう。
【0100】
よって、オペレータがシリンダ2を伸長作動させるように操作レバーを操作している最中にリリーフ弁41が開弁しパイロット圧よりも圧力が大きなリリーフ圧油がドレン室51に導かれた場合であっても、リリーフ圧油によってピストン50が移動することはない。したがって、スプール56が閉じ方向へ移動することもない。このように、本実施形態では、オペレータがシリンダ2を伸縮作動させるように操作レバーを操作している最中にリリーフ弁41が開弁した場合であっても、スプール56が閉じ方向へと移動することはなく、オペレータが意図するシリンダ2の伸縮速度が得られる。
【0101】
なお、リリーフ弁41から排出されるリリーフ圧油は、ほとんどがリリーフ排出通路77を通じてタンクTに排出され、ドレン室51に導かれる流量は少ない。よって、接続通路78を通じてパイロット室23に導かれるリリーフ圧油が制御弁6のパイロット室6bに導かれることはなく、制御弁6の作動に影響することはない。
【0102】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0103】
上記実施形態では、ドレン室51とパイロット室23とを接続する接続通路78がピストン50に形成される。これにより、リリーフ弁41が開弁してパイロット圧よりも圧力が高いリリーフ圧油がドレン室51に導かれても、これと同時にパイロット室23にもリリーフ圧油が導かれる。このため、リリーフ圧油によってピストン50に作用する推力が打ち消されて、オペレータが意図するシリンダ2の伸縮速度が得られる。これに対し、接続通路78は、パイロット制御弁9からのパイロット圧が導かれるパイロットラインと、リリーフ弁41からのリリーフ圧が導かれる戻りラインと、を接続するものであればよい。パイロットラインには、パイロット通路52及びパイロット室23が含まれる。戻りラインには、リリーフ排出通路77、第1,第2ドレン通路76a.76b、及びドレン室51が含まれる。以下、具体的に説明する。
【0104】
図6に示す第1変形例では、接続通路78は、ボディ60に形成され、パイロット通路52と第2ドレン通路76bとを接続する。このような第1変形例であっても、リリーフ弁41が開弁すると、リリーフ圧油は、第2ドレン通路76bを通じてドレン室51に導かれると共に、同時に、第2ドレン通路76b、接続通路78、及びパイロット通路52を通じてパイロット室23にも導かれる。よって、第1変形例によれば、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0105】
また、上記実施形態では、第1ドレンポート53に配管55を接続して、その配管55を介して第1ドレンポート53とタンクTとが接続される。これに対し、第1ドレンポート53がプラグによって封止され、第2ドレンポート86に配管55aを接続して、その配管55aを介して第2ドレンポート86とタンクTを接続してもよい。
【0106】
このような場合には、図7及び図8に示す第2変形例のように、接続通路78は、ボディ60に形成され、第2分岐通路77cとパイロット通路52とを接続してもよい。第2ドレンポート86に接続される配管55aは、第1ドレンポート53に接続される配管55よりも径が大きいものを接続することができる。このため、比較的径が大きい配管55aを接続することで、コストは増加するものの、流路抵抗を小さくでき、ドレン室51に導かれるリリーフ圧の大きさを小さくすることができる。これにより、リリーフ圧油によるスプール56の移動がより確実に防止できる。
【0107】
なお、第1ドレンポート53及び第2ドレンポート86の両方に配管を接続して、第1分岐通路77b及び第2分岐通路77cを通じてもリリーフ圧油をタンクTへ排出してもよい。この場合には、接続通路78は、第1分岐通路77bに接続されてもよいし、第2分岐通路77cに接続されてもよい。これによれば、ドレン室51に導かれるリリーフ圧油の流量を減らすことができる。ただ、負荷保持機構20のボディ60とタンクTを接続する配管を減らすためには、上記実施形態のように、第2ドレンポート86には配管を接続せず、第2ドレンポート86をプラグ88によって封止するのが好ましい。
【0108】
また、図示を省略するが、リリーフ排出通路77におけるメイン排出通路77a、第1分岐通路77b、第1ドレン通路76aのいずれかと、パイロット室23及びパイロット通路52のいずれかと、を接続する接続通路を設けてもよい。
【0109】
以上のように、接続通路78は、パイロットラインを構成するパイロット通路52及びパイロット室23のいずれかと、戻りラインを構成するリリーフ排出通路77、第1,第2ドレン通路76a,76b、及びドレン室51のいずれかと、を接続するものであればよい。
【0110】
なお、ピストン50はボディ60に比べて小さいため加工がし易く、従来、ピストン50には他の油路等が形成されておらずスペース効率を向上させることができるため、接続通路78は、上記実施形態のように、ピストン50に形成することが好適である。
【0111】
以上の本実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0112】
リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油はリリーフ排出通路77を通じてタンクTへ排出されるため、リリーフ流体が切換弁22を作動させない。また、パイロット室23とドレン室51とが接続通路78によって接続されるため、リリーフ圧油がリリーフ排出通路77及びドレン通路76bを通じてドレン室51に導かれたとしても、同時に接続通路78を通じてパイロット室23にもリリーフ圧油が導かれる。これにより、リリーフ圧油によりピストン50に作用する推力が互いに打ち消し合うため、リリーフ圧油は切換弁の作動に影響を及ぼさない。よって、オペレータがシリンダ2を伸縮作動させるように操作レバーを操作している最中にリリーフ弁41が開弁した場合であっても、スプール56が閉じ方向へと移動することはなく、オペレータが意図するシリンダ2の伸縮速度が得られる。したがって、シリンダ2の安定した作動が可能となる。
【0113】
また、本実施形態では、ドレン室51とパイロット室23とを接続する接続通路78がピストン50に形成される。このため、接続通路78の加工が容易になると共に、スペース効率を向上させることができる。
【0114】
また、本実施形態では、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油は、ドレン室51及びスプリング室54のドレンと合流して第1ドレンポート53及び配管55を通じてタンクTへ排出される。したがって、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油をタンクTへ導く専用の配管を設ける必要がないため、配管の本数を低減することができる。
【0115】
また、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油はリリーフ排出通路77を通じてタンクTへ排出されドレン室51へはほとんど導かれないため、リリーフ弁41の開弁時にリリーフ背圧が脈動した場合であっても、その脈動がスプール56に伝播することが防止される。したがって、振動の発生が抑制される。
【0116】
また、排出されたリリーフ圧油によって切換弁22を切り換えてオペレートチェック弁21を開弁させる第1比較例のリリーフ弁110は、切換弁22のスプール56を第2連通位置22Cに切り換えるだけの圧力をドレン室51に導ければ足りるため、排出流量の少ない少容量型リリーフ弁が用いられる。これに対して、本実施形態のリリーフ弁41は、ロッド側室2aの圧力が所定圧力に達した場合に開弁して、ロッド側室2aの作動油をタンクTへ逃がし、ロッド側室2aの圧力を低下させる機能を有する必要があるため、第1比較例のリリーフ弁110と比較して排出流量が多い大容量型リリーフ弁が用いられる。このように、本実施形態のリリーフ弁41は、大容量型であるため設計の自由度が向上する。また、リリーフ弁41は大容量型であるため、ロッド側室2aの圧力が急激に上昇するようなサージ圧が発生した場合であっても、ロッド側室2aの圧力を所定圧力に保つことができる。よって、サージ圧によるシリンダ2の破損を防止することができる。
【0117】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0118】
本実施形態では、アーム1を駆動するシリンダ2の伸縮作動を制御する流体圧制御装置であって、ポンプ4からシリンダ2への作動油の供給を制御する制御弁6と、パイロットポンプ5から制御弁6に導かれるパイロット圧を制御するパイロット制御弁9と、制御弁6が中立位置6Cの場合にアーム1による負荷圧が作用するシリンダ2のロッド側室2aと制御弁6とを接続するメイン通路7と、メイン通路7に設けられる負荷保持機構20と、を備え、負荷保持機構20は、制御弁6からロッド側室2aへの作動油の流れを許容する一方、背圧に応じてロッド側室2aから制御弁6への作動油の流れを許容するオペレートチェック弁21と、パイロット制御弁9を通じて導かれるパイロット圧によって制御弁6と連動して動作し、オペレートチェック弁21の作動を切り換えるための切換弁22と、ロッド側室2aの圧力が所定圧力に達した場合に開弁するリリーフ弁41と、リリーフ弁41から排出されたリリーフ流体をタンクTへ導くリリーフ排出通路77と、を備え、切換弁22は、パイロット制御弁9からパイロット通路52を通じてパイロット圧が導かれるパイロット室23と、パイロット室23のパイロット圧に応じて移動するスプール56と、スプール56を閉弁方向に付勢するスプリング36が収容されたスプリング室54と、背面にパイロット圧を受けてスプール56にスプリング36の付勢力に抗する推力を付与するピストン50と、スプール56とピストン50で区画されたドレン室51と、ドレン室51とスプリング室54とをリリーフ排出通路77へ連通させる第1,第2ドレン通路76a,76bと、を備え、パイロット通路52及びパイロット室23によってパイロットラインが構成され、リリーフ排出通路77、ドレン室51、及び第1,第2ドレン通路76a,76bによって戻りラインが構成され、負荷保持機構20は、パイロットラインと戻りラインとを接続する接続通路78と、接続通路78に設けられ戻りラインからパイロットラインへの作動油の通過のみを許容するチェック弁90と、をさらに備える。
【0119】
この構成では、リリーフ弁41から排出されたリリーフ圧油はリリーフ排出通路77を通じてタンクTへ排出されるため、リリーフ圧油が切換弁22を作動させない。また、パイロットラインと戻りラインとが接続通路78によって連通するため、リリーフ圧油がリリーフ排出通路77及びドレン通路76bを通じて切換弁22のドレン室51に導かれたとしても、同時に接続通路78を通じてパイロット室23にもリリーフ圧油が導かれる。これにより、リリーフ圧油によりピストン50に作用する推力が互いに打ち消し合うため、リリーフ圧油は切換弁22の作動に影響を及ぼさない。よって、オペレータがシリンダ2を伸縮作動させるように操作レバーを操作している最中にリリーフ弁41が開弁した場合であっても、スプール56が閉じ方向へと移動することはなく、オペレータが意図するシリンダ2の伸縮速度が得られる。したがって、シリンダ2の安定した作動が可能となる。
【0120】
また、本実施形態では、接続通路78は、ピストン50に形成されて、ドレン室51とパイロット室23とを接続する。
【0121】
この構成によれば、接続通路78の加工が容易になると共に、スペース効率を向上させることができる。
【0122】
また、本実施形態の第1変形例では、接続通路78は、リリーフ排出通路77とパイロット通路52とを接続する。
【0123】
また、本実施形態の第2変形例では、接続通路78は、ドレン通路76bとパイロット通路52とを接続する。
【0124】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0125】
1・・・アーム(負荷)、2・・・シリンダ、2a・・・ロッド側圧力室(負荷側圧力室)、4・・・ポンプ(流体圧供給源)、5・・・パイロットポンプ(パイロット圧供給源)、6・・・制御弁、7・・・第1メイン通路、9・・・パイロット制御弁、20・・・負荷保持機構、21・・・オペレートチェック弁、22・・・切換弁、23・・・パイロット室、41・・・リリーフ弁、50・・・ピストン、51・・・ドレン室、53・・・ドレンポート、54・・・スプリング室、56・・・スプール、76a・・・第1ドレン通路、76b・・・第2ドレン通路、77・・・リリーフ排出通路、78・・・接続通路、90・・・チェック弁
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