(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
粘度指数向上剤濃縮物であって、少なくとも90%の飽和物含有率を有する非エステル系希釈オイル中に、1種またはそれ以上の水添線状ブロックコポリマーおよび少なくとも1種の水添星形ポリマーを含み、ここで該水添線状ブロックコポリマーは、4〜12個の炭素原子を含むジエン由来の少なくとも一つのブロックに対して共有結合により結合された、8〜16個の炭素原子を含むモノアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを有し、該線状ブロックコポリマーの量は、該希釈オイル中の該線状ブロックコポリマーに関する、質量%単位で表された臨界重なり濃度(ch*)よりも大きく、該星形ポリマーのアームは、4〜12個の炭素原子を含むジオレフィンのホモポリマーまたはコポリマー、或いは、4〜12個の炭素原子を含有する1種またはそれ以上の共役ジオレフィンと8〜16個の炭素原子を含む1種またはそれ以上のモノアルケニルアレーンとのコポリマーであり、該星形ポリマーは、該濃縮物中の該星形ポリマーのc/ch*値が、0.01〜1.6の範囲に入るような量で存在し、ここでcは該濃縮物中の該星形ポリマーの質量%で表した濃度であり、またch*は該希釈オイル中の該星形ポリマーに関する質量%で表された臨界重なり濃度である、
300〜3,000cStという、100℃における動粘度(kv100)を持つ、前記粘度指数向上剤濃縮物。
前記線状ブロックコポリマーの前記ジエンブロックおよび/またはアルケニルアレーンブロックが官能化されて、ペンダントエステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を有している、請求項1のVI向上剤濃縮物。
VI向上剤濃縮物の形成において、少なくとも90%の飽和物含有率を有する非エステル系希釈オイル中に溶解することのできる、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合したアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、1種またはそれ以上の水添線状ブロックコポリマーの量を、該VI向上剤濃縮物の100℃における動粘度(kv100)を3,000cSt以上に高めることなしに、該希釈オイルにおける該水添線状ブロックコポリマーに関する、質量%で表された臨界重なり濃度(ch*)を超える量にまで高める方法であって、該方法が、該濃縮物に少なくとも一つの水添星形ポリマーを添加する工程を含み、該星形ポリマーのアームは、ジオレフィンのホモポリマーまたはコポリマー、或いは、1種またはそれ以上の共役ジオレフィンと1種またはそれ以上のモノアルケニル芳香族炭化水素とのコポリマーであり、該星形ポリマーは、該濃縮物中の該星形ポリマーのc/ch*値が、0.01〜1.6の範囲に入るような量で添加され、ここでcは該濃縮物中の該星形ポリマーに係る質量%で表した濃度であり、またch*は該希釈オイル中の該星形ポリマーに関する質量%で表された臨界重なり濃度である、前記方法。
前記線状ブロックコポリマーの前記ジエンブロックおよび/またはアルケニルアレーンブロックが官能化されて、ペンダントエステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を有している、請求項9の方法。
【発明の概要】
【0004】
希釈オイルにおけるポリマー濃縮物の流動性は、粘性(液体-様)応答対弾性(固体-様)応答の比として定義される、「Tan δ」または「損失正接」によって評価し得る。ある物質が液体のように挙動する場合、Ln(Tan δ)>>0であり;ある物質が固体のように挙動する場合、Ln(Tan δ)<<0である。高いLn(Tan δ)値、好ましくはLn(Tan δ)値≧1を持つポリマー濃縮物は、良好な流動性または取扱適正を持つ。ジエン由来の少なくとも一つのブロックに対して共有結合により結合した、アルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ線状ブロックコポリマーで作った濃縮物は、該ポリマーの濃度が、該ポリマーの臨界重なり濃度(約1質量%〜約2.5質量%)を超える場合に、主に弾性応答を示すであろう。該臨界重なり濃度以上の濃度において、該ポリマーは有意に絡合い(ことによると、少なくとも部分的には、該コポリマー鎖の該アルケニルアレーン由来のブロックの凝集によるものであろう)、結果として該濃縮物の流動性における低下をもたらす。多官能性分散剤粘度調整剤(またはDVM)を提供するための、これらポリマーの、エステル、アミン、イミドまたはアミド官能基による官能化は、該ポリマー濃縮物に係る取扱適正に、更に悪い影響を与える。
一般に、追加のポリマー(任意のポリマー)の上記ポリマー濃縮物への導入は、該濃縮物の粘度を高めるものと予想されるであろう。しかし、今や、より高い濃度の、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに対して共有結合により結合したアルケニルアレーンを由来とする少なくとも一つのブロックを持つ、線状ブロックコポリマーを、希釈オイル中に溶解させて、ポリマー濃縮物を形成することができ、該ポリマー濃縮物は、該濃縮物中に少量の星形(またはラジアル形)ポリマーおよび/または一定量のエステル系ベースストックを更に含めることにより、これらポリマー濃縮物が、完成状態にある潤滑剤へと、慣例的にブレンドされていた温度(約25〜約140℃)において許容される流動性を持つことが見出された。
【0005】
本発明の第一の局面に従えば、粘度指数向上剤(VI)濃縮物が提供され、該濃縮物は、希釈オイル中に、1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマーおよび少なくとも1種の星形(またはラジアル形)ポリマーを含み、ここで該線状ブロックコポリマーは、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに対して共有結合により結合したアルケニルアレーンを由来とする少なくとも一つのブロックを有し、該線状ブロックコポリマーの量は、該希釈オイルにおける該線状ブロックコポリマーに関する、質量%単位で表された臨界重なり濃度(c
h*)よりも大きな量(例えば、3質量%を超え)であり、該星形ポリマーは、該濃縮物中の該星形ポリマーのc/c
h*値が、0.01〜約1.6の範囲に入るような量で存在しており、ここでcは該濃縮物中の星形ポリマーの質量%で表された濃度であり、またc
h*は、該濃縮物を形成するのに使用される、該希釈オイル中の該星形ポリマーに関する質量%で表された臨界重なり濃度である。
本発明の第二の局面に従えば、上記第一の局面における如く、VI向上剤濃縮物が提供され、ここにおいて上記線状ブロックコポリマーの上記ジエンブロックおよび/またはアルケニルアレーンブロックは、ペンダントエステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を持つように官能化されている。
本発明の第三の局面に従えば、上記第一または第二の局面における如く、VI向上剤濃縮物が提供され、ここにおいて該濃縮物は、更に該濃縮物の全質量を基準として、1質量%を超える、例えば約5質量%〜約60質量%のエステル系ベースストックをも含む。
本発明の第四の局面に従えば、上記第一、第二または第三の局面における如く、VI向上剤濃縮物が提供され、ここにおいて該VI向上剤濃縮物は、希釈オイル、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合されたアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマー;少なくとも1種の星形ポリマー;および場合によりポリオールエステルから本質的になっている。
【0006】
本発明の第五の局面に従えば、上記第一、第二、第三または第四の局面における如く、VI向上剤濃縮物が提供され、ここにおいて上記星形ポリマーの少なくとも1種が、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合された、アルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、多数のブロックコポリマーアームを含む。
本発明の第六の局面に従えば、上記第一、第二、第三、第四または第五の局面における如く、VI向上剤濃縮物が提供され、ここにおいて上記星形ポリマーは、ペンダントエステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を持つように官能化されている。
本発明の第七の局面に従えば、上記第一、第二、第三、第四、第五または第六の局面における如く、VI向上剤濃縮物が提供され、ここにおいて該濃縮物は、約300〜約2,500cStという、100℃における動粘度(kv
100)を持つ。
本発明の第八の局面に従えば、VI向上剤濃縮物の形成において、希釈オイル中に溶解することのできる、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合したアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマーの量を、該VI向上剤濃縮物の100℃における動粘度(kv
100)を約3,000cSt以上に高めることなしに、該希釈オイルにおける該線状ブロックコポリマーに関する、質量%で表された臨界重なり濃度(c
h*)を超える量にまで高める方法が提供され、該方法は、該濃縮物に少なくとも1種の星形(またはラジアル形)ポリマーを添加する工程を含み、該星形ポリマーは、該濃縮物中の該星形ポリマーに係るc/c
h*値が、0.01〜約1.6の範囲に入るような量で添加され、ここでcは該濃縮物中の星形ポリマーの質量%で表した濃度であり、またc
h*は、該濃縮物を形成するのに使用された、該希釈オイル中の該星形ポリマーに関する質量%で表された臨界重なり濃度である。
本発明の第九の局面に従えば、上記第八の局面と同様な方法が提供され、該方法において、1質量%を超える、例えば約5質量%〜約60質量%のポリオールエステルが上記VI向上剤濃縮物中に存在するか、または該濃縮物に添加される。
【0007】
本発明の第十の局面に従えば、上記第八または第九の局面と同様な方法が提供され、該方法において、上記少なくとも1種の星形ポリマーは、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合された、アルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、多数のブロックコポリマーアームを含む。
本発明の第十一の局面に従えば、上記第八、第九または第十の局面と同様な方法が提供され、該方法において、上記星形ポリマーは、ペンダントエステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を持つように官能化されている。
本発明の第十二の局面に従えば、VI向上剤濃縮物の形成における、希釈オイル中に溶解することのできる、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合したアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマーの量を、該VI向上剤濃縮物の100℃における動粘度(kv
100)を約3,000cSt以上に高めることなしに、該希釈オイルにおける該線状ブロックコポリマーに関する、質量%で表された臨界重なり濃度(c
h*)を超える量にまで高めるための、一定量の少なくとも1種の星形(またはラジアル形)ポリマーの使用が提供され、該星形ポリマーの量は、該濃縮物中の該星形ポリマーに係るc/c
h*値が、0.01〜約1.6の範囲に入るような量であり、ここでcは該濃縮物中の星形ポリマーの質量%で表した濃度であり、またc
h*は、該濃縮物を形成するのに使用された、該希釈オイル中の該星形ポリマーに関する質量%で表された臨界重なり濃度である。
本発明の第十三の局面に従えば、一定量の少なくとも1種の星形(またはラジアル形)ポリマーおよび一定量のエステル系ベースストックの、VI向上剤濃縮物の形成における、希釈オイル中に溶解することのできる、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合したアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマーの量を、該VI向上剤濃縮物の100℃における動粘度(kv
100)を約3,000cSt以上に高めることなしに、該希釈オイルにおける該線状ブロックコポリマーに関する、質量%で表された臨界重なり濃度(c
h*)を超える量にまで高めるための使用が提供され、該濃縮物中の該エステル系ベースストックの量は、該VI向上剤濃縮物の全質量を基準として、1質量%を超え、例えば約5質量%〜約60質量%である。
【0008】
本発明の第十四の局面に従えば、上記第十二または第十三の局面における様な一定量の少なくとも1種の星形ポリマーの使用が提供され、ここにおいて該星形ポリマーの少なくとも1種は、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合したアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、多数のブロックコポリマーアームを含む。
本発明の第十五の局面に従えば、上記第十二、第十三または第十四の局面における様な一定量の星形ポリマーの使用が提供され、ここにおいて該星形ポリマーは、ペンダントエステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を持つように官能化されている。
本発明の第十六の局面に従えば、粘度指数向上剤(VI)濃縮物が提供され、該濃縮物は、希釈オイル中に、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合したアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマーを一定量で含んでおり、ここにおいて少なくとも1種の該線状ブロックコポリマーの該ジエンブロックおよび/またはアルケニルアレーンブロックは、ペンダントエステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を持つように官能化されており、該コポリマーの量が、該希釈オイルにおける該線状ブロックコポリマーに関する、質量%で表された臨界重なり濃度(c
h*)を超えており;また該濃縮物は、その全質量を基準として、1質量%を超える、例えば約5質量%〜約60質量%のエステル系ベースストックをも含む。
本発明の第十七の局面に従えば、上記第十六の局面における様なVI向上剤濃縮物が提供され、ここにおいて該VI向上剤濃縮物は、上記官能化されたポリマー、希釈オイルおよびエステル系ベースストックから本質的になっている。
【0009】
本発明の第十八の局面に従えば、VI向上剤濃縮物の形成において、希釈オイル中に溶解することのできる、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合したアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマーの量を、該VI向上剤濃縮物の100℃における動粘度(kv
100)を約3,000cSt以上に高めることなしに、該希釈オイルにおける該線状ブロックコポリマーに関する、質量%で表された臨界重なり濃度(c
h*)を超える量にまで高める方法であって、ここにおいて少なくとも1種の該線状ブロックコポリマーの該ジエンブロックおよび/またはアルケニルアレーンブロックは、ペンダントエステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を持つように官能化されており、該方法は、該濃縮物に対して、該濃縮物の全質量を基準として、1質量%を超え、例えば約5質量%〜約60質量%のエステル系ベースストックを添加する工程を含む。
本発明の第十九の局面に従えば、VI向上剤濃縮物の形成において、希釈オイル中に溶解することのできる、ジエン由来の少なくとも一つのブロックに共有結合により結合したアルケニルアレーン由来の少なくとも一つのブロックを持つ、1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマーの量を、該VI向上剤濃縮物の100℃における動粘度(kv
100)を約3,000cSt以上に高めることなしに、該希釈オイルにおける該線状ブロックコポリマーに関する、質量%で表された臨界重なり濃度(c
h*)を超える量にまで高めるための、一定量のエステル系ベースストックの使用が提供され、ここにおいて少なくとも1種の該線状ブロックコポリマーの該ジエンブロックおよび/またはアルケニルアレーンブロックは、ペンダントエステル、アミン、イミドまたはアミド官能基を持つように官能化されており、該エステル系ベースストックは、該VI向上剤濃縮物中に、該濃縮物の全質量を基準として、1質量%を超え、例えば約5質量%〜約60質量%の量で存在する。
本発明のその他のおよび更なる目的、利点および特徴は、以下の明細書を参照することにより理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の上記線状ブロックコポリマーは、1種またはそれ以上の、4〜約12個の炭素原子を含むジオレフィンまたはジエン、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンから主として誘導される少なくとも一つのブロックに対して共有結合により結合されている、8〜約16個の炭素原子を含む1種またはそれ以上のアルケニルアレーン、例えばアルキル-置換スチレン、アルコキシ-置換スチレン、ビニルナフタレン、アルキル-置換ビニルナフタレン等から主として誘導される少なくとも一つのブロックを持つ。これらの線状ブロックコポリマーは、以下の一般式で表すことができる:
A
z-(B-A)
y-B
x
ここにおいて、Aは、支配的にアルケニルアレーンモノマー単位を含有するポリマーブロックであり;
Bは、支配的に共役ジエンまたはジオレフィンモノマー単位を含有するポリマーブロックであり;
xおよびzは、独立に0または1に等しい数であり;および
yは、1〜約15の範囲内の全数値である。
ポリマーブロック組成との関連で、ここにおいて使用する如き「支配的に」とは、該当するポリマーブリックにおける主成分となっている指定されたモノマーまたはモノマー型が、該ブロックの少なくとも85質量%の量で存在することを意味する。
【0012】
好ましくは、本発明の上記線状ブロックコポリマーは、主として1種またはそれ以上のジオレフィンまたはジエンを由来とする一つのブロックまたは2つのブロックと共有結合により結合された、主として1またはそれ以上のアルケニルアレーンを由来とする単一のブロックを含むジ-またはトリ-ブロックコポリマーである。好ましくは、主として1またはそれ以上のアルケニルアレーンを由来とする該ブロックは、アルキル-置換スチレンから主として誘導される。好ましくは、1種またはそれ以上のジオレフィンまたはジエンから主として誘導される上記ブロック(1または複数)は、ブタジエン、イソプレンまたはこれらの混合物から主として誘導される。本発明の上記コポリマーのプリカーサとして使用し得るイソプレンモノマーは、1,4-または3,4-配置を持つ単位の何れか、およびこれらの混合物として、該ポリマー中に組込むことができる。好ましくは、該イソプレンの大多数は、該ポリマー中に、例えば約60質量%を超え、より好ましくは約80質量%を超え、例えば約80〜100質量%、最も好ましくは約90質量%を超え、例えば約93質量%〜100質量%の1,4-単位として組み込まれる。同様に、本発明の該コポリマーのプリカーサとして使用し得るブタジエンモノマーも、1,2-または1,4-配置を持つ単位の何れかとして、該ポリマー中に組込むことができる。好ましくは、ブタジエンがもう一つのジエン(例えば、イソプレン)と共重合されている本発明のポリマーにおいて、少なくとも約70質量%、例えば少なくとも約75質量%、より好ましくは少なくとも約80質量%、例えば少なくとも約85質量%、最も好ましくは少なくとも約90、例えば91〜100質量%の該ブタジエンが、1,4-配置の単位として該ポリマー中に組入れられる。
【0013】
ジオレフィンを用いて製造されるポリマーは、エチレン系の不飽和を含むであろうし、またこのようなポリマーは、好ましくは水素添加される。該ポリマーが水素添加される場合、該水素添加処理は、従来技術において公知の任意の技術を利用して達成することができる。例えば、該水素添加処理は、エチレン系および芳香族性不飽和両者が、例えば米国特許第3,113,986号および同第3,700,633号において教示されているもの等の方法を用いて転化される(飽和される)ように達成することができ、あるいは該水素添加処理は、例えば米国特許第3,634,595号;同第3,670,054号;同第3,700,633号およびRe 27,145号において教示されている如く、該エチレン系不飽和の相当な部分が転化され、一方で芳香族性不飽和が殆どまたは全く転化されないように、選択的に達成することができる。同様に、これら方法の何れも、エチレン系不飽和のみを含み、かつ芳香族性不飽和を含まないポリマーを、水素添加処理するためにも利用することができる。
本発明に係る上記線状ブロックコポリマーは、上に開示された如きものであるが、異なる分子量および/または異なるアルケニル芳香族含有率を持つ線状ポリマーの混合物を含むことができる。2またはそれ以上の異なるポリマーの使用は、その生成物が、処方されたエンジンオイルを製造するのに使用された場合に付与するように意図されているレオロジー特性に依存して、単一のポリマーよりも好まれる可能性がある。
本発明に係る上記線状ブロックコポリマーは、約5,000〜約700,000ダルトンの間、好ましくは約10,000〜約500,000ダルトンの間、より好ましくは約20,000〜約250,000ダルトンの間の数平均分子量を持つであろう。好ましくは、本発明に係る該線状ブロックコポリマーの約5%〜約60%、より好ましくは約25%〜約55質量%は、アルケニルアレーンから誘導される。ここにおいて使用するような用語「重量平均分子量」とは、水素添加処理後に、ポリスチレン標準物質を用いた、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)(「GPC」)により測定されるような重量平均分子量を言う。
【0014】
本発明に係る上記線状ブロックコポリマーは、塊状、懸濁液、溶液またはエマルションの状態で製造されたものを含む。周知の通り、炭化水素ポリマーを製造するためのモノマーの重合は、ラジカル、カチオンおよびアニオン開始剤または重合触媒、例えばチーグラー-ナッタ(Ziegler-Natta)に対して使用される遷移金属触媒およびメタロセン型の触媒を用いて達成し得る。好ましくは、本発明に係る該ブロックコポリマーは、アニオン重合を介して形成される。というのは、アニオン重合は、狭い分子量分布(Mw/Mn)、例えば約1.2未満の分子量分布を持つコポリマーを与えることが分かっているからである。
周知の通り、また米国特許第4,116,917号において開示されているように、リビングポリマーは、アニオン開始剤としてのアルカリ金属またはアルカリ金属炭化水素、例えばナトリウムナフタレンの存在下で、共役ジエンモノマーの混合物を、アニオン溶液重合することによって製造し得る。好ましい開始剤は、リチウムまたはモノリチウム炭化水素である。適当なリチウム炭化水素は、不飽和化合物、例えばアリルリチウム、メタアリルリチウム;芳香族化合物、例えばフェニルリチウム、トリルリチウム、キシリルリチウムおよびナフチルリチウム、および特にアルキルリチウム、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、アミルリチウム、へキシルリチウム、2-エチルヘキシルリチウムおよびn-ヘキサデシルリチウムを含む。Sec-ブチルリチウムが、好ましい開始剤である。該開始剤(1または複数)を、1またはそれ以上の段階において、場合によっては追加のモノマーと共に、該重合混合物に添加することができる。該リビングポリマーは、オレフィン性の不飽和状態にある。
【0015】
場合により、本発明の上記線状ブロックコポリマーは、上記VI向上剤に分散剤の能力を付与するエステル-または窒素-含有官能基を備えていてもよい。より詳しくは、本発明の該線状ブロックコポリマーの上記ジエンブロックおよび/またはアルケニルアレーンブロックは、エステル、アミン、イミドまたはアミド官能性を与えるように官能化された、ペンダントカルボニル-含有基を持つことができ;および/または本発明の該線状ブロックコポリマーの該ジエンブロック(1または複数)は、該ジエンブロックに直接結合したアミン官能基で官能化され得る。窒素-含有部分をポリマー上にグラフト化するための方法は、当分野において公知であり、また例えば混ぜ物のない純の状態または溶媒の共存下の何れかの、ラジカル開始剤の存在下で、該ポリマーと窒素-含有部分とを接触させることを含む。該ラジカル開始剤は、ラジカル開始剤プリカーサを剪断作用下に置く(押出機におけるように)または加熱することにより、発生させることができる。ポリマー主鎖上に窒素-含有モノマーをグラフトするための方法および適当な窒素-含有グラフト化モノマーは、例えば米国特許第5,141,996号、WO 98/13443、WO 99/21902、米国特許第4,146,489号、同第4,292,414号、および同第4,506,056号において更に説明されている。(同様に、全てGaylord & Mehtaに属する、J Polymer Science, Part A: Polymer Chemistry, Vol. 26, 1189-1198 (1988); J. Polymer Science, Polymer Letters, Vol. 20, 481-486 (1982)およびJ. Polymer Science, Polymer Letters, Vol. 21, 23-30 (1983)、並びにGaylord, Mehta & Mehtaに属する、無水マレイン酸および/またはパーオキサイドとの反応におけるエチレン-プロピレンコポリマーゴムの分解および架橋(
Degradation and Cross-linking of Ethylene-Propylene Copolymer Rubber on Reaction with Maleic Anhydride and/or Peroxides); J. Applied Polymer Science, Vol. 33, 2549-2558 (1987)を参照のこと)。窒素-含有官能基を誘導し得る適当な窒素-含有部分の例は、脂肪族アミン、芳香族アミンおよび非芳香族アミンを含み、特にここにおいて該アミンは、一級または二級の含窒素基を含む。好ましくは、官能化は、アニリン、ジエチルアミノプロピルアミン、N,N-ジメチル-p-フェニレンジアミン、1-ナフチルアミン、N-フェニル-p-フェニレンジアミン(4-アミノジフェニルアミンまたはADPAとしても知られている)、N-(3-アミノプロピル)イミダゾール、N-(3-アミノプロピル)モルホリン、m-アニシジン、3-アミノ-4-メチルピリジン、4-ニトロアニリン、およびこれらの組合せから選択されるアミンによって与えられる。
【0016】
窒素-含有グラフト化モノマーの量は、ある程度、その支持ポリマーの特性およびグラフト化されるポリマーに要求される分散性(dispersancy)のレベルに依存するであろう。該線状コポリマーに分散特性を付与するために、グラフト化窒素-含有モノマーの量は、グラフト化ポリマーの全質量を基準として、適切には約0.3〜約2.2質量%の間、好ましくは約0.5〜約1.8質量%、最も好ましくは約0.6〜約1.2質量%である。
本発明の実施において有用な星形またはラジアル形ポリマーは、4〜約12個の炭素原子を含むジオレフィン、例えば1,3-ブタジエン、イソプレン、ピペリレン、メチルペンタジエン、フェニルブタジエン、3,4-ジメチル-1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンのホモポリマーおよびコポリマー、および1種またはそれ以上の共役ジオレフィンと1種またはそれ以上の、8〜約16個の炭素原子を含むモノアルケニル芳香族炭化水素、例えばアリール-置換スチレン、アルコキシ-置換スチレン、ビニルナフタレン、アルキル-置換ビニルナフタレン等とのコポリマーを包含する。このようなポリマーおよびコポリマーは、ランダムポリマー、テーパー(tapered)ポリマーおよびブロックコポリマーを包含する。
星形ポリマーは、上記のアニオン溶液重合法を通して形成されたリビングポリマーを、追加の反応段階において、ポリアルケニルカップリング剤と反応させることにより製造し得る。星形ポリマーを形成することのできるポリアルケニルカップリング剤は、長年に渡り公知であり、また例えば米国特許第3,985,830号において記載されている。ポリアルケニルカップリング剤は、少なくとも2つの非-共役アルケニル基を持つ従来型の化合物である。このような基は、大抵は同一または異なる電子求引性部分、例えば芳香族核に結合されている。このような化合物は、該アルケニル基の少なくとも一つが、異なるリビングポリマーとの独立反応を起こす可能性があり、またこの点に関連して、従来の共役ジエン型重合性モノマー、例えばブタジエン、イソプレン等とは異なっている性質を有する。純粋なまたは技術的グレードのポリアルケニルカップリング剤を使用することができる。このような化合物は脂肪族、芳香族または複素環式化合物であり得る。脂肪族化合物の例は、ポリビニルおよびポリアリルアセチレン、ジアセチレン、およびホスフェート、並びにジメタクリレート、例えばエチレンジメチルアクリレートを含む。適当な複素環式化合物の例は、ジビニルピリジンおよびジビニルチオフェンを含む。
【0017】
好ましいカップリング剤は、ポリアルケニル芳香族化合物であり、また最も好ましいものは、ポリビニル芳香族化合物である。このような化合物の例は、そういった芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、アンスラセン、ナフタレンおよびジュレンを含み、これらは、好ましくは直接これらに結合している、少なくとも2つのアルケニル基で置換されている。具体的な例は、ポリビニルベンゼン、例えばジビニル、トリビニルおよびテトラビニルベンゼン;ジビニル、トリビニルおよびテトラビニルo-、m-およびp-キシレン、ジビニルナフタレン、ジビニルエチルベンゼン、ジビニルジフェニル、ジイソブテニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼン、およびジイソプロペニルビフェニルを包含する。好ましい芳香族化合物は、式:A-(CH=CH
2)
xによって表されるものであり、ここでAは場合により置換されている芳香族核であり、またxは少なくとも2の整数である。ジビニルベンゼン、特にm-ジビニルベンゼンは、最も好ましい芳香族化合物である。純粋なまたは技術的グレードのジビニルベンゼン(他のモノマー、例えばスチレンおよびエチルスチレンを含む)を使用することができる。該カップリング剤は、少量の、該核のサイズを増大する添加モノマー、例えばスチレンまたはアルキルスチレンとの混合物の状態で使用し得る。このような場合において、該核は、ポリ(ジアルケニルカップリング剤/モノアルケニル芳香族化合物)核、例えばポリ(ジビニルベンゼン/モノアルケニル芳香族化合物)核として説明することができる。
上記ポリアルケニルカップリング剤は、上記モノマーの重合が実質的に完了した後に、上記リビングポリマーに添加すべきであり、即ち該カップリング剤は、該モノマーの実質的全てが、該リビングポリマーに転化された後においてのみ添加すべきである。
【0018】
添加されるポリアルケニルカップリング剤の量は、広い範囲内で変えることが可能であるが、好ましくは少なくとも0.5モルの該カップリング剤が、不飽和リビングポリマー1モルにつき使用される。リビングポリマー1モルにつき、約1〜約15モル、好ましくは約1.5〜約5モルという量が好ましい。1またはそれ以上の段階で添加できるこの量は、通常少なくとも約80質量%〜85質量%の該リビングポリマーを、星形ポリマーに転化するのに十分な量である。
上記カップリング反応は、上記リビング重合反応と同一の溶媒中で行うことができる。該カップリング反応は、広い範囲、例えば0℃〜150℃、好ましくは約20℃〜約120℃の範囲の温度にて行うことができる。該反応は、窒素等の不活性雰囲気内で、および約0.05〜約1MPa(約0.5bar〜約10bar)の圧力の下で行うことができる。
このようにして形成された星形ポリマーは、架橋されたポリ(ポリアルケニルカップリング剤)の緻密な中心または核および該核から外向きに伸びている、多数の実質的に線状の不飽和ポリマーのアームによって特徴付けられる。該アームの数は、大幅に変えることができるが、典型的には約4〜25の間、例えば約6〜約22、または約8〜約20であり、各アームは、約10,000〜約200,000ダルトンの間の数平均分子量を持つ。
上述の線状ブロックコポリマーと同様に、上記星形またはラジアル形ポリマーは、好ましくは水素添加され、また同様に場合によっては、上記VI向上剤に分散剤の能力を付与する、エステル-または窒素-含有官能基を備えていてもよい。上述の線状ブロックコポリマーと同様に、該星形またはラジアル形ポリマーは、様々な分子量および/または様々なアルケニル芳香族含有率を持つ、星形ポリマーの混合物を含むこともできる。
【0019】
一般に、約80,000〜約1,500,000ダルトンの間の数平均分子量を持つ星形ポリマーが許容し得るものであり、また約350,000〜約800,000または900,000ダルトンの間のものが好ましい。上述の如く、ここにおいて使用する如き用語「重量平均分子量」とは、水添処理後に、ポリスチレン標準物質を用いた、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography)(「GPC」)により測定される如き重量平均分子量である。
上記星形ポリマーが、モノアルケニルアレーンと、重合されたα-オレフィン、水添され重合されたジオレフィンまたはこれらの組合せとのコポリマーである場合、該星形ポリマーにおけるモノアルケニルアレーンの量は、該ポリマーの全質量を基準として、好ましくは約5%〜約40質量%の間にある。
本発明の実施に際して有用なエステル系ベースストックは、C
5〜C
12モノカルボン酸とポリオールおよびポリオールエステル、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールから作られるもの、およびジカルボン酸(例えば、フタール酸、琥珀酸、アルキル琥珀酸およびアルケニル琥珀酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマール酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸)と、様々なアルコール(例えば、ブチルアルコール、へキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコール)とから作られるジエステルを包含する。このようなエステルの例は、ジブチルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ-n-へキシルフマレート、ジオクチルセバケート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソデシルアゼレート、ジオクチルフタレート、ジデシルフタレート、ジエイコシルセバケート、リノール酸ダイマーの2-エチルヘキシルジエステル、および1モルのセバシン酸と、2モルのテトラエチレングリコールおよび2モルの2-エチルヘキサン酸との反応により形成される複合エステルを含む。好ましくは、該エステル系ベースストックは、ポリオールエステルである。該エステル系ベースストックは、使用する場合、上記濃縮物の全質量を基準として、1質量%を超え、例えば約5質量%〜60質量%、約5質量%〜約40質量%、約5質量%〜約25質量%、または約5質量%〜約15質量%の量で存在するであろう。
【0020】
本発明に係る上記希釈剤として有用な潤滑粘度を持つオイルは、天然潤滑油、合成潤滑油およびこれらの混合物から選択することができる。
天然オイルは、動物油および植物油(例えば、ヒマシ油、ラード油);液状石油油分、およびパラフィン系、ナフテン系および混合パラフィン-ナフテン型の水素化精製され、溶媒処理されまたは酸処理された鉱油を含む。石炭またはシェール由来の潤滑粘度を持つオイルも、有用なベースオイルとして役立つ。
合成潤滑油は、上に記載されたエステル系ベースストックに加えて、炭化水素油およびハロ-置換炭化水素油、例えば重合および共重合されたオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン-イソブチレンコポリマー、塩素化ポリブチレン、ポリ(1-ヘキセン)、ポリ(1-オクテン)、ポリ(1-デセン));アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジノニルベンゼン、ジ(2-エチルヘキシル)ベンゼン);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェノール);およびアルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドおよびこれらの誘導体、類似体および同族体を包含する。
アルキレンオキサイドポリマーおよび共重合体並びに末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等により変性されているこれらの誘導体は、公知の合成潤滑油のもう一つの組を構成する。これらは、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの重合により製造されるポリオキシアルキレンポリマー、およびポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例えば、分子量1,000を持つメチル-ポリイソプロピレングリコールエーテルまたは分子量1,000〜1,500を持つポリエチレングリコールのジフェニルエーテル);およびこれらのモノ-およびポリ-カルボン酸エステル、例えばテトラエチレングリコールの酢酸エステル、混合C
3-C
8脂肪酸エステルおよびC
13オキソ酸ジエステルによって例証される。
【0021】
ケイ素-ベースのオイル、例えばポリアルキル-、ポリアリール-、ポリアルコキシ-またはポリアリールオキシシリコーンオイルおよびシリケートオイルは、合成潤滑剤のもう一つの有用な組を構成し、このようなオイルは、テトラエチルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラ-(2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)シリケート、テトラ-(p-tert-ブチルフェニル)シリケート、ヘキサ-(4-メチル-2-エチルヘキシル)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサンおよびポリ(メチルフェニル)シロキサンを含む。その他の合成潤滑油は、リン-含有酸の液状エステル(例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、デシルホスホン酸のジエチルエステル)およびポリマー系テトラヒドロフランを含む。
上記希釈オイルは、グループI(Group I)、グループII(Group II)、グループIII(Group III)、グループIV(Group IV)またはグループV(Group V)オイルまたは上述のオイルのブレンドを含むことができる。同様に、該希釈オイルは、グループIオイルと、グループII、グループIII、グループIVまたはグループVオイルの1種またはそれ以上とのブレンドを含むこともできる。好ましくは、経済的観点から、該希釈オイルは、グループIオイルと、グループII、グループIII、グループIVまたはグループVオイルの1種またはそれ以上との混合物、より好ましくはグループIオイルと、グループIIおよび/またはグループIIIオイルの1種またはそれ以上との混合物である。性能上の観点から、本発明は、特に濃縮物に係り、該濃縮物において、その希釈オイルの大部分、特に55質量%を超え、例えば75質量%を超え、とりわけ80質量%を超える該希釈オイルは、グループIIIオイルであるが、これに対して、アルケニルアレーンを由来とする少なくとも一つのブロックを持つブロックコポリマーは、さほど溶解性ではない(グループIおよびグループIIの希釈オイルと比較して)。
【0022】
本発明において使用されるようなオイルに関する定義は、米国石油協会(American Petroleum Institute)(API)の刊行物:「エンジンオイルのライセンスと認証システム(Engine Oil Licensing and Certification System)」,工業サービス部門(Industry Services Department),第14版, 1996年12月, 補遺1, 1998年12月において見出される定義と同一である。該刊行物は、オイルを以下のように分類している:
a) グループI(Group I)オイルは、90%未満の飽和物(saturates)および/または0.03%を超える硫黄を含み、かつ以下の表1において指定されたテスト法を利用して、80に等しいかまたはこれを超え、かつ120未満の粘度指数を持つ。
b) グループII(Group II)オイルは、90%に等しいかまたはこれを超える飽和物および0.03%に等しいかまたはそれ未満の硫黄を含み、かつ以下の表1において指定されたテスト法を利用して、80に等しいかまたはこれを超え、かつ120未満の粘度指数を持つ。
APIによって認識されている別のグループではないものの、約110を超える粘度指数を持つグループII(Group II)オイルが、しばしば「グループII+(Group II+)」オイルと呼ばれている。
c) グループIII(Group III)オイルは、90%に等しいかまたはこれを超える飽和物および0.03%に等しいかまたはそれ未満の硫黄を含み、かつ以下の表1において指定されたテスト法を利用して、120に等しいかまたはこれを超える粘度指数を持つ。
d) グループIV(Group IV)オイルは、ポリα-オレフィン(PAO)である。
e) グループV(Group V)オイルは、グループI、II、IIIまたはIVに含まれない全ての他のベースストックである。
【0024】
本発明の実施に際して有用な希釈オイルは、好ましくは3,700cPs未満、例えば3,300cPs未満、より好ましくは3,000cPs未満、例えば2,800cPsおよび特に2,500cPs未満、例えば2,300cPs未満という、-35℃におけるCCSを持つ。同様に、本発明の実施に際して有用な希釈オイルは、好ましくは少なくとも3.0cSt(センチストークス)、例えば約3cSt〜約5cSt、とりわけ約3cSt〜約4.5cSt、例えば約3.4cSt〜4cStという、100℃における動粘度(kv
100)をも持つ。該希釈オイルは、好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、例えば少なくとも85%という飽和物含有率を持つ。最も好ましくは、該希釈オイルは、90%を超える飽和物含有率を持つ。好ましくは、該希釈オイルは、1質量%未満、好ましくは0.6質量%未満、より好ましくは0.3質量%未満、例えば0〜0.3質量%という硫黄含有率を持つ。好ましくは、該希釈オイルの揮発度は、ノアック(Noack)テスト(ASTM D5880)により測定されたものとして、約40%に等しいかまたはそれ未満、例えば約35%に等しいかまたはそれ未満、好ましくは約32%に等しいかまたはそれ未満、例えば約28%に等しいかまたはそれ未満、より好ましくは約16%に等しいかまたはそれ未満である。より高い揮発度を持つ希釈オイルの使用は、15%に等しいかまたはそれ未満のノアック揮発度を持つ配合潤滑剤の提供を困難にする。より高レベルの揮発度を持つ配合潤滑剤は、燃料経済上の欠点を示す恐れがある。好ましくは、該希釈オイルの粘度指数(VI)は、少なくとも85、好ましくは少なくとも100、最も好ましくは約105〜140である。
【0025】
本発明に係る上記VI向上剤濃縮物は、周知の技術を用いて、上記VI向上剤ポリマーを、上記希釈オイル(および存在する場合には、エステル系ベースストック)中に溶解することにより製造し得る。濃縮物を形成するために、固体のVI向上剤ポリマーを溶解する場合、該ポリマーの高い粘度が、該希釈オイル内での低い拡散率の原因となり得る。溶解を容易にするために、例えば該ポリマーをペレット化し、細断し、粉砕しまたは微粉砕することにより、該ポリマーの表面積を増大させることが一般的である。同様に、該希釈オイルの温度は、例えばスチームまたは熱油を用いて加熱することにより高めることができる。該希釈剤の温度が大幅に高められる(例えば、100℃以上に)場合、加熱は、不活性ガス(例えば、N
2またはCO
2)のブランケットの下で行われるべきである。同様に、該ポリマーの温度は、例えば押出機またはマスチケータ内で該ポリマーに付与される機械的なエネルギーを利用して高めることも可能である。該ポリマー温度は、150℃以上に挙げることができ、該ポリマー温度は、不活性ガスのブランケットの下で上げるべきである。また、該ポリマーの溶解は、例えば掻き混ぜまたは攪拌(反応器またはタンク何れかの中で)することにより、または再循環ポンプを用いる等によって、上記濃縮物を攪拌することにより促進し得る。同様に、任意の2またはそれ以上の上記技術を組み合わせて利用することも可能である。濃縮物は、重合溶媒(通常は、例えばプロパン、ヘキサンまたはシクロヘキサン等の揮発性炭化水素)を、オイルで交換することによっても形成し得る。この交換は、例えば蒸留塔を用いて、如何なる該重合溶媒も実質的に残されていないことを確実にすることによって達成し得る。
【0026】
上述の如く、本発明のVI濃縮物は、ジエンを由来とする少なくとも一つのブロックと共有結合により結合している、アルケニルアレーンを由来とする少なくとも一つのブロックを持つ、1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマーを、該濃縮物を形成するために使用される希釈オイル中の該線状ブロックコポリマーに関する、質量%で表された、臨界重なり濃度(c
h*)を超える量にて含有する。該臨界重なり濃度、即ちそれ以上の濃度において、個々のポリマーが著しく絡み合う濃度、並びに本発明の該VI濃縮物の上記星形ポリマー成分の臨界重なり濃度は、
図1に示されているように、粘度対濃度に係るlog-logプロットから決定することができる。該臨界重なり濃度以上において、粘度は、濃度の増加に伴ってより急激に上昇する。グループI、IIおよびIII希釈オイルにおける本発明に係る線状ブロックコポリマーに対する、この臨界重なり濃度は、通常約1.5質量%〜約2.5質量%であろう。該VI濃縮物がエステル系ベースストックを含むことになる場合には、該エステル系ベースストックは、該VI濃縮物に係る、該線状ブロックコポリマー(1または複数)および星形ポリマー(1または複数)両者の臨界重なり濃度を決定する目的に対して、希釈オイルであると考えるべきである。
VI向上剤濃縮物が、慣例的に完成された潤滑剤へとブレンドされる温度(約25〜約140℃)における、容認し得る流動性/取扱適正を保証するために、本発明のVI向上剤濃縮物の100℃における動粘度(kv
100)は、好ましくは約3,000cSt以下、例えば約2,500cSt以下、好ましくは約2,000cSt以下(ASTM D445に従って測定されたものとしてのkv
100)である。あるいはまた、流動性/取扱適正は、「Tan δ」または「損失正接」で表すことができ、これは粘稠な(液体-様)応答対弾性(固体-様)応答の比として定義され、ここにおいて該濃縮物に対するTan δは、コケット(coquette)(同心状シリンダ)、円錐およびプレート、摺動プレートまたは平行ディスク状幾何形状を持つレオメータ内の該濃縮物に、小さな正弦波振動する歪を適用することにより決定される。得られる応力は、δなる量だけ位相シフトされ;「損失正接」は、この位相角δの正接である。本発明の取扱適正のあるVI向上剤濃縮物は、1に等しいかまたはこれを超え、好ましくは1.5に等しいかまたはこれを超えるTan δを持つであろう。
【0027】
好ましくは、本発明の上記VI濃縮物は、ジエンを由来とする少なくとも一つのブロックと共有結合により結合しているアルケニルアレーンを由来とする少なくとも一つのブロックを持つ、1種またはそれ以上の線状ブロックコポリマーを、該濃縮物の全質量を基準として、4質量%を超え、好ましくは少なくとも5質量%、例えば約5質量%〜約10質量%の量で含む。上記星形ポリマーは、主に該濃縮物に組込むことのできるジブロックコポリマーの量を増大するためであって、主として該星形ポリマーの粘度調節効果のために導入されるのではないので、組入れられる星形ポリマーの量は、該濃縮物中の線状ポリマーの濃度を増大するのに要求される最低の量近傍、特に該濃縮物の全質量を基準として、約5質量%未満、例えば3質量%未満、特に約1質量%〜約2質量%とすべきである。必要とされる星形ポリマーの量は、本発明の該VI濃縮物が、エステル系ベースストックを含む場合には、更に減じられる(または該星形ポリマーの必要性は、排除される可能性がある)。
【実施例】
【0028】
本発明は、以下の実施例を参照することにより更に理解されるであろう。
実施例
以下のものが、以下に示される実施例において使用された。
・DC1:25kDaのポリスチレンブロックおよび57kDaの水添ポリジエンブロックを有するジブロックコポリマー(19質量%のブタジエン単位;81質量%のイソプレン単位;>90質量%の両ジエンの1,4-付加);
・F-DC1:DC1を、0.6%のマレイン酸無水物でグラフトし、また該無水物グラフトをN-フェニル-p-フェニレンジアミンと反応させることにより形成される、官能化されたジブロックコポリマー;
・DC2:15kDaのポリスチレンブロックおよび57kDaの水添ポリジエンブロックを有するジブロックコポリマー(100質量%のイソプレン単位;>90質量%のイソプレンの1,4-付加);
・SP:多数(約15〜20)のアームを持ち、各々水添イソプレン単位で形成されており(≧90質量%のイソプレンの1,4-付加)、かつ35kDaの分子量を持つ星形ポリマー;
・希釈オイル1(DO1):4cStのグループIIIオイル;
・エステル系ベースストック(EB):クロダラブリカンツ(Croda Lubricants)から入手し得るプライオルード(Priolube
TM) 3970、4.4cStのグループVオイル;
・スクアラン。
以下の表2に示されるように、エステル系ベースストックおよび/または星形ポリマーの添加は、上記ジブロック濃縮物に関する損失正接を増大し、このことは、該濃縮物の流動性/取扱適正における改善を示唆しており、また該濃縮物において希釈されるポリマーの量が増やされた場合には、該濃縮物の、取扱適正を維持する能力における改善を暗示している。この利点は、また官能化されたジブロックコポリマーを用いても立証される。
【0029】
【表2】
【0030】
図1は、40℃におけるSPのスクアラン溶液に関する濃度依存性粘度を示す。その臨界重なり濃度c
h*は、そこにおいて粘度が、濃度に伴って非線形的に上昇し始める点である。
図2は、40℃における、線状ジブロックポリスチレン/水添ポリジエンコポリマー(15質量%)+星形ポリマーのスクアラン溶液に関する、Tan δ対c/c
h*のプロファイルを示す。DC-2(15質量%)+SPのスクアラン溶液に関する損失正接は、SPの含有率における増加と共に増大し、また減少を開始する前に、c/c
h*=1.60においてプラトー状態を示す。このことは、1.60というc/c
h*の値を達成するのに必要な量を超えるSPの量を添加しても、該テストされたポリマー濃縮物の流動性を更に改善することはないであろうことを明らかにしている。
【0031】
本明細書において記載された全ての特許、文献およびその他の資料に係る開示は、ここで言及することにより、全体として本明細書に組入れられる。本明細書においておよび添付した特許請求の範囲において提示した通り、多数の具体的に述べられた成分を含み、これらからなり、またはこれらから本質的になる組成物に関する記載は、該多数の特定された成分を混合することにより作られる組成物をも含むものと解釈されるべきである。本発明の諸原理、好ましい態様および操作様式は、上記明細書において説明されている。本出願人が提出するものは、その発明であるが、開示された特定の態様に限定されるものと解釈されるべきではない。というのは、該開示された態様は、限定ではなく寧ろ実例と見做されるからである。本発明の精神を逸脱することなしに、当業者によって変更が行われ得る。