(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、一実施形態に係る無線通信システム1の構成例を示す図である。
図1において、無線通信システム1は、基地局(図示せず)と、基地局のアンテナ3と、端末装置5と、端末情報収集装置10と、制御装置30とを備える。基地局のアンテナ(以下、単にアンテナと称する)3は、施設50の内部に設けられる。施設50の内部には、複数のアンテナ3が設けられる。基地局、端末情報収集装置10、及び、制御装置30は、施設50の内部に設けられてもよく、又は、施設50の外部に設けられてもよい。施設50内に設けられる複数のアンテナ3は、全て同じ無線通信方式の基地局のアンテナ3であってもよく、又は、複数の無線通信方式の基地局のアンテナ3が混在してもよい。無線通信方式として、例えば、LTE(Long Term Evolution)方式(TDD(Time Division Multiple Access)方式又はFDD(Frequency Division Duplex)−LTE方式)、無線LAN(Local Area Network)方式などが挙げられる。
【0013】
端末装置5は、いずれかのアンテナ3と無線信号を送受する。端末装置5は、無線信号を送受するアンテナ3を介して当該アンテナ3に接続される基地局と通信を行う。端末装置5は、基地局を介して、他の端末装置5と通信を行ったり、又は、無線通信システム1に備わるサーバ装置と通信を行ったり、又は、無線通信システム1に接続されるインターネット等の通信ネットワークを経由して通信相手の装置と通信を行ったりする。
【0014】
端末情報収集装置10は、アンテナ3に接続される基地局に接続され、当該基地局と通信を行う。制御装置30は、アンテナ3に接続される基地局に接続され、当該基地局と通信を行う。端末情報収集装置10と制御装置30とは接続される。端末情報収集装置10と制御装置30とは通信を行う。
【0015】
施設50には、複数の人が収容される。施設50として、例えば、スタジアム、ドーム型スタジアム、ホールなどが挙げられる。
【0016】
図2は、本実施形態に係る端末情報収集装置10の機能構成例を示すブロック図である。
図2において、端末情報収集装置10は、通信部101と、端末アンテナ間距離情報取得部102と、端末通信品質情報取得部103と、端末位置情報算出部104と、端末情報記録部105と、データ格納部120とを備える。データ格納部120は、アンテナ位置リスト121と、端末アンテナ間距離情報122と、端末通信品質情報123と、端末情報124とを格納する。
【0017】
端末情報収集装置10の機能は、端末情報収集装置10が備えるCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)がコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、端末情報収集装置10として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0018】
通信部101は、端末情報収集装置10の外部の装置と通信を行う。通信部101は、アンテナ3に接続される基地局と通信を行う。また、通信部101は、制御装置30と通信を行う。
【0019】
端末アンテナ間距離情報取得部102は、端末アンテナ間距離情報122を取得する。端末アンテナ間距離情報122は、端末装置5が無線信号を送受するアンテナ3と当該端末装置5との間の距離を示す情報である。
【0020】
端末通信品質情報取得部103は、端末通信品質情報123を取得する。端末通信品質情報123は、端末装置5の通信品質を示す情報である。端末通信品質情報123は、少なくとも施設50内の通信品質を示す情報である。例えば、端末通信品質情報取得部103は、端末装置5が通信を行う基地局から当該端末装置5の端末通信品質情報123を取得する。基地局から取得される端末通信品質情報123として、例えば、端末装置5のスループット、端末装置5の往復遅延時間(Round-Trip Time:RTT)などが挙げられる。なお、端末通信品質情報取得部103は、端末装置5の端末通信品質情報123として、端末装置5がウェブ(Web)サイトにアクセスした際のWebページの表示にかかったWeb表示時間を、基地局を介して該端末装置5から取得してもよい。また、端末通信品質情報123は、実測値であってもよく、又は、統計的な値(例えば、平均値、最大値、最小値、標準偏差など)であってもよい。
【0021】
端末位置情報算出部104は、端末位置情報を算出する。端末位置情報は、端末装置5の位置を示す情報である。端末位置情報は、少なくとも施設50内の位置を特定する情報である。端末位置情報算出部104は、端末装置5が無線信号を送受するアンテナ3を切り替えた場合に、当該端末装置5が無線信号を送受した複数のアンテナ3の各位置を示すアンテナ位置情報と、当該端末装置5に係る当該複数のアンテナ3の端末アンテナ間距離情報122とを使用して、当該端末装置5の端末位置情報を算出する。アンテナ位置リスト121には、複数のアンテナ3の各位置を示すアンテナ位置情報が記載されている。アンテナ位置情報は、アンテナ3の位置を示す情報である。アンテナ位置情報は、少なくとも施設50内の位置を特定する情報である。
【0022】
端末情報記録部105は、端末装置5の端末位置情報と当該端末装置5の端末通信品質情報123とを関連付けて、端末情報124に記録する。端末情報記録部105は、端末装置5の端末位置情報と当該端末装置5の端末通信品質情報123とを、さらに、当該端末装置5の識別情報(端末ID)若しくは当該端末装置5のユーザの識別情報(端末ユーザID)、又は、当該端末装置5の端末ID及び当該端末装置5の端末ユーザIDの両方とに関連付けて、端末情報124に記録してもよい。
【0023】
図3は、本実施形態に係るアンテナ位置リスト121の構成例を示す図である。アンテナ位置リスト121は、アンテナ3の位置を示すアンテナ位置情報のリストである。
図3において、アンテナ位置リスト121には、アンテナ3の識別情報(アンテナID)と、アンテナIDに関連付けて当該アンテナ3の位置を示すアンテナ位置情報とが記載される。
【0024】
図4は、本実施形態に係る端末情報124の構成例を示す図である。端末情報124は、端末装置5の端末位置情報と当該端末装置5の端末通信品質情報123とを含む情報である。
図4において、端末情報124には、端末装置5の端末IDと、当該端末装置5の端末ユーザIDと、当該端末装置5の端末位置情報と、当該端末装置5の端末通信品質情報123とが関連付けて格納される。
【0025】
図5は、本実施形態に係る制御装置30の機能構成例を示すブロック図である。
図5において、制御装置30は、通信部300と、通信容量調整部301と、置局計画部302とを備える。
【0026】
制御装置30の機能は、制御装置30が備えるCPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、制御装置30として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。
【0027】
通信部300は、制御装置30の外部の装置と通信を行う。通信部300は、アンテナ3に接続される基地局と通信を行う。また、通信部300は、端末情報収集装置10と通信を行う。
【0028】
通信容量調整部301は、端末情報収集装置10が収集した端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて、アンテナ3毎の通信容量の調整を行う。本実施形態の一の例1として、アンテナ3の通信容量は、次式で表される。
「一のアンテナ3の通信容量」=「1ユーザ当たりの想定平均スループット」×「1アンテナ当たりの最大同時収容ユーザ数」
【0029】
アンテナ3の通信容量の例1において、「1ユーザ当たりの想定平均スループット」と、「1アンテナ当たりの最大同時収容ユーザ数」とは、「一のアンテナ3の通信容量」を決定するパラメータである。本実施形態の一例として、1ユーザ当たりの想定平均スループットは、施設50で開催されるイベントの内容に応じて決定される。又は、1ユーザ当たりの想定平均スループットは、イベント開催中の施設50内のスループット測定値に応じて決定されてもよい。
【0030】
1アンテナ当たりの最大同時収容ユーザ数が変わることによって、一のアンテナ3の通信容量が変わる。例えば、通信容量調整部301は、端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて通信容量が不足していると判断した施設50内のエリアが存在する場合に、当該エリアをカバレッジ内に有するアンテナ3に対して1アンテナ当たりの最大同時収容ユーザ数を増やすことにより、当該アンテナ3の通信容量を増やす。これにより、当該エリアの通信容量を増やして通信容量の不足の解消を図ることができる。
【0031】
例えば、通信容量調整部301は、端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて通信容量が過剰であると判断した施設50内のエリアが存在する場合に、当該エリアをカバレッジ内に有するアンテナ3に対して1アンテナ当たりの最大同時収容ユーザ数を減らすことにより、当該アンテナ3の通信容量を減らす。これにより、当該エリアの通信容量を減らして適切な通信容量に調節することができる。
【0032】
また、本実施形態の他の例2として、アンテナ3の通信容量は、1アンテナ当たりの通信伝送量であってもよい。例えば、通信容量調整部301は、アンテナ3毎に1アンテナ当たりの通信伝送量の一定期間における上限を設けることにより、アンテナ3毎の通信容量の調整を行う。アンテナ3の通信容量の例2において、「1アンテナ当たりの通信伝送量の一定期間における上限」は、「一のアンテナ3の通信容量」を決定するパラメータである。
【0033】
なお、通信容量調整部301は、アンテナ3の通信容量の調整を無線通信方式毎に行ってもよい。また、通信容量調整部301は、アンテナ3の通信容量の調整を無線周波数帯毎に行ってもよい。例えば、通信容量調整部301は、同じ無線通信方式が使用可能な複数の無線周波数帯毎にアンテナ3の通信容量の調整を行ってもよい。通信容量調整部301は、例えばLTE方式の基地局のアンテナ3に対して、LTE方式が使用可能な複数の無線周波数帯、例えば800MHz帯と2GHz帯とでそれぞれに通信容量の調整を行ってもよい。
【0034】
置局計画部302は、端末情報収集装置10が収集した端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて、基地局の変更計画データを生成する。基地局の変更計画データは、施設50内に設けられる基地局の追加、削除又は変更の情報を含むデータである。
【0035】
次に
図6を参照して本実施形態に係る端末情報収集方法を説明する。
図6は、本実施形態に係る端末情報収集方法の例を示すフローチャートである。
【0036】
(ステップS11)制御装置30の通信容量調整部301は、予め決定されたアンテナ毎の通信容量の計画データを実行する。一のアンテナ3の通信容量の計画データは、当該アンテナ3の通信容量を決定するパラメータの初期値を有する。また、当該計画データは、当該アンテナ3のカバレッジを決定するパラメータの初期値を有してもよい。アンテナ3のカバレッジを決定するパラメータとして、例えば、送信電力、チルト角、指向方向などが挙げられる。本ステップS11によって、施設50内の各アンテナ3に対して、それぞれの通信容量の計画値が設定される。
【0037】
なお、施設50内のアンテナ3の通信容量の計画データは、例えば、施設50内の収容人数に基づいて決定されてもよい。また、施設50内のエリア毎の収容人数に基づいて、各エリアをカバレッジ内に有するアンテナ3の通信容量の計画データが決定されてもよい。
【0038】
(ステップS12)端末情報収集装置10は、各端末装置5の端末情報124を取得する。この端末情報取得方法の例を説明する。
【0039】
[端末情報取得方法の例]
端末情報収集装置10の端末アンテナ間距離情報取得部102は、端末装置5とアンテナ3との間の距離を示す端末アンテナ間距離情報122を取得する。端末装置5とアンテナ3との間の距離は、例えば、当該端末装置5と当該アンテナ3の基地局との間の無線伝搬遅延時間(Round Trip Delay:RTD)から換算することができる。当該端末装置5と当該アンテナ3の基地局との間のRTDは、当該アンテナ3の基地局が保持する通信ログから取得することができる。RTDから距離への換算方法の一例として、端末アンテナ間距離情報取得部102は、RTDと距離との換算テーブル(RTD−距離換算テーブル)を備え、RTDに対応する距離を当該RTD−距離換算テーブルから取得する。RTD−距離換算テーブルは、一定のRTDの範囲毎に、RTDの範囲と当該RTDの範囲に対応する距離とを関連付けて格納する。RTD−距離換算テーブルによって、あるRTDに対応する距離を取得することができる。RTD−距離換算テーブルは、例えば、RTDと距離との実際の測定値から作成される。なお、施設50内の電波の速度は一定であるので、RTDと電波の速度とに基づいてアンテナ3と端末装置5との間の距離を測定することができる。
【0040】
端末位置情報算出部104は、端末装置5が無線信号を送受するアンテナ3を切り替えた場合に、当該端末装置5が無線信号を送受した複数のアンテナ3のアンテナ位置情報と、当該端末装置5に関する当該複数のアンテナ3の端末アンテナ間距離情報122とを使用して、当該端末装置5の位置を示す端末位置情報を算出する。
【0041】
図7は、本実施形態に係る端末位置情報算出方法の説明図である。
図7には、施設50内に存在する端末装置5のうち一の端末装置5−Xと、施設50内のアンテナ3のうちアンテナ3−A,3−B,3−Cが示される。
図7において、端末装置5−Xは、まずアンテナ3−Aと無線信号を送受してアンテナ3−Aの基地局と通信を行う。これにより、アンテナ3−Aの基地局は、端末装置5−XのRTDを通信ログに記録する。次いで、ハンドオーバが発生したことにより、端末装置5−Xは、無線信号を送受するアンテナ3をアンテナ3−Bに切り替えて、アンテナ3−Bの基地局と通信を行う。これにより、アンテナ3−Bの基地局は、端末装置5−XのRTDを通信ログに記録する。なお、端末装置5−Xのハンドオーバは、例えば、端末装置5−Xの接続先の基地局(アンテナ3−Aの基地局)に同時に接続する端末装置5の数(同時接続端末数)が増加することにより端末装置5−Xとアンテナ3−Aの基地局との間の通信品質が所定の通信品質を満たさなくなった場合に実施される。
【0042】
端末情報収集装置10の端末アンテナ間距離情報取得部102は、通信部101により、アンテナ3−Aの基地局から、通信ログに記録された端末装置5−XのRTDを取得する。端末アンテナ間距離情報取得部102は、アンテナ3−Aの基地局から取得した端末装置5−XのRTDを距離d
AXに換算する。端末アンテナ間距離情報取得部102は、距離d
AXを、端末装置5−Xとアンテナ3−Aの端末アンテナ間距離情報122としてデータ格納部120に格納する。
【0043】
また、端末アンテナ間距離情報取得部102は、通信部101により、アンテナ3−Bの基地局から、通信ログに記録された端末装置5−XのRTDを取得する。端末アンテナ間距離情報取得部102は、アンテナ3−Bの基地局から取得した端末装置5−XのRTDを距離d
BXに換算する。端末アンテナ間距離情報取得部102は、距離d
BXを、端末装置5−Xとアンテナ3−Bの端末アンテナ間距離情報122としてデータ格納部120に格納する。
【0044】
端末情報収集装置10の端末位置情報算出部104は、アンテナ3−Aのアンテナ位置情報と、アンテナ3−Bのアンテナ位置情報とを、アンテナ位置リスト121から取得する。端末位置情報算出部104は、アンテナ3−Aのアンテナ位置情報と、アンテナ3−Bのアンテナ位置情報と、端末装置5−Xとアンテナ3−Aの端末アンテナ間距離情報122「距離d
AX」と、端末装置5−Xとアンテナ3−Bの端末アンテナ間距離情報122「距離d
BX」とを使用して、端末装置5−Xの位置を示す端末位置情報を算出する。
【0045】
端末情報収集装置10の端末通信品質情報取得部103は、通信部101により、アンテナ3−Aの基地局から、通信ログに記録された端末装置5−Xの端末通信品質情報123を取得する。また、端末位置情報算出部104は、通信部101により、アンテナ3−Bの基地局から、通信ログに記録された端末装置5−Xの端末通信品質情報123を取得する。基地局から取得される端末通信品質情報123として、例えば、端末装置5−Xのスループット、端末装置5−Xの往復遅延時間(RTT)などが挙げられる。端末通信品質情報取得部103は、端末装置5−Xの端末通信品質情報123をデータ格納部120に格納する。なお、端末通信品質情報取得部103は、端末装置5−Xの端末通信品質情報123として、端末装置5−XがWebサイトにアクセスした際のWebページの表示にかかったWeb表示時間を、基地局を介して該端末装置5−Xから取得してもよい。また、端末通信品質情報123は、実測値であってもよく、又は、統計的な値(例えば、平均値、最大値、最小値、標準偏差など)であってもよい。
【0046】
端末情報記録部105は、アンテナ3−Aからアンテナ3−Bへの切り替えにより算出された端末装置5−Xの端末位置情報と、該アンテナ3−Aの基地局から取得された該端末装置5−Xの端末通信品質情報123と、該アンテナ3−Bの基地局から取得された該端末装置5−Xの端末通信品質情報123とを関連付けて、端末情報124に記録する。なお、
図4に示されるように、さらに端末装置5−Xの端末ID及び端末ユーザIDを、端末装置5−Xの端末位置情報及び端末通信品質情報123に関連付けて端末情報124に記録してもよい。
【0047】
以上が端末情報取得方法の例の説明である。説明を
図6に戻す。
【0048】
(ステップS13)制御装置30の通信容量調整部301は、通信部300により、端末情報収集装置10から端末情報124を取得する。通信容量調整部301は、端末情報124の端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて、アンテナ3毎の通信容量を再設定する。例えば、通信容量調整部301は、端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて通信容量が不足していると判断した施設50内のエリアが存在する場合に、当該エリアをカバレッジ内に有するアンテナ3の通信容量を増やす。例えば、通信容量調整部301は、端末情報124の端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて通信容量が過剰であると判断した施設50内のエリアが存在する場合に、当該エリアをカバレッジ内に有するアンテナ3の通信容量を減らす。
【0049】
(ステップS14)施設50の利用が終了した場合には
図6の処理を終了し、施設50の利用が継続する場合にはステップS12に戻る。
【0050】
図8は、本実施形態に係る端末情報取得方法の説明図である。
図8には、施設50内に存在する端末装置5のうち端末装置5−1,5−2と、施設50内のアンテナ3のうちアンテナ3−D,3−Eが示される。
図7において、端末装置5−1,5−2は、アンテナ3−Dのカバレッジ1000−Dと、アンテナ3−Eのカバレッジ1000−Eとの重複エリア1000−DEに存在する。重複エリア1000−DEは、アンテナ3−Dのカバレッジ1000−Dのエッジ領域であると共に、アンテナ3−Eのカバレッジ1000−Eのエッジ領域でもある。このことから、重複エリア1000−DEに存在する端末装置5−1,5−2は、ハンドオーバの対象となって、無線信号を送受するアンテナ3の切り替えが発生しやすい端末装置5である。また、重複エリア1000−DEは、カバレッジのエッジ領域であるので、通信品質が比較的悪い可能性が高い。このため、重複エリア1000−DEに存在する端末装置5−1,5−2の通信品質を知ることは、施設50内の通信状況の改善に役に立つと言える。
【0051】
本実施形態によれば、端末装置5が無線信号を送受するアンテナ3を切り替えた場合に、当該端末装置5の端末位置情報を算出し、該算出した端末位置情報を当該端末装置5の端末通信品質情報123に関連付けて端末情報124に記録する。これは、無線信号を送受するアンテナ3の切り替えが発生しやすい重複エリア1000−DEに存在する端末装置5−1,5−2の端末位置情報と端末通信品質情報123とを記録することに寄与する。これにより、重複エリア1000−DEに存在する端末装置5−1,5−2の通信品質を知って施設50内の通信状況を改善させることに寄与する効果が得られる。
【0052】
また、本実施形態によれば、施設50が例えば屋内施設である場合など、端末装置5が有するGPS(Global Positioning System)を利用できないときであっても、当該端末装置5の端末位置情報を取得することができる。これにより、本実施形態によれば、端末装置5の位置を特定するための測定機器等を追加する事無く、端末装置5の位置を特定し、特定された端末装置5の位置と当該端末装置5の通信品質とを関連付けることができるので、例えば、基地局の切り替えが発生するような通信逼迫時における通信逼迫位置及び通信品質などの通信状況を低コストで精度よく把握することができるという効果が得られる。
【0053】
なお、端末装置5が無線信号を送受するアンテナ3を切り替える場合の一例として、基地局から強制的に端末装置5にハンドオーバを実行させてもよい。例えば、
図8において、重複エリア1000−DEに存在する端末装置5−2は、アンテナ3−Dを介してアンテナ3−Dの基地局(基地局BS_3_Dと称する)と通信を行っている。端末情報収集装置10の端末アンテナ間距離情報取得部102は、基地局BS_3_Dから端末装置5−2のRTDを取得して距離に換算することにより、端末装置5−2とアンテナ3−Dの端末アンテナ間距離情報122を取得する。また、端末情報収集装置10の端末通信品質情報取得部103は、基地局BS_3_Dから端末装置5−2の端末通信品質情報123を取得する。このとき、端末情報収集装置10の端末アンテナ間距離情報取得部102は、端末装置5−2の端末通信品質情報123が基準の通信品質よりも悪い通信品質を示していると判断すると、基地局BS_3_Dに対して端末装置5−2の強制ハンドオーバを要求する。基地局BS_3_Dは、端末装置5−2の強制ハンドオーバの要求を受けると、端末装置5−2の強制ハンドオーバの実行の可否を判断する。
図8の例では、基地局BS_3_Dは、端末装置5−2の強制ハンドオーバ先のアンテナ3−Eの基地局(基地局BS_3_Eと称する)が端末装置5−2を収容することができる、且つ、端末装置5−2におけるアンテナ3−Eからの無線信号の受信強度が基準の受信強度を満たす場合に、端末装置5−2の強制ハンドオーバの実行可であると判断し、そうではない場合には端末装置5−2の強制ハンドオーバの実行不可であると判断する。基地局BS_3_Dは、端末装置5−2の強制ハンドオーバの実行可である場合には、端末装置5−2に対して、基地局BS_3_Eへの強制ハンドオーバを指示する。端末装置5−2は、基地局BS_3_Eへの強制ハンドオーバの指示に応じて、基地局BS_3_Eへのハンドオーバを実行する。これにより、端末装置5−2が無線信号を送受するアンテナ3は、アンテナ3−Dからアンテナ3−Eに切り替わる。端末情報収集装置10の端末アンテナ間距離情報取得部102は、基地局BS_3_Eから端末装置5−2のRTDを取得して距離に換算することにより、端末装置5−2とアンテナ3−Eの端末アンテナ間距離情報122を取得する。また、端末情報収集装置10の端末通信品質情報取得部103は、基地局BS_3_Eから端末装置5−2の端末通信品質情報123を取得する。これにより、端末情報収集装置10は、基準の通信品質よりも悪い通信品質である場所の情報と該悪い通信品質の情報とを取得することができる。なお、端末装置5−2の強制ハンドオーバの手順は、端末装置5−2が殆ど移動していない状況下で実行されることが好ましい。このため、強制ハンドオーバの手順は、予め定められた規定時間内に完了させるようにしてもよい。
【0054】
[通信容量調整方法の変形例1]
通信容量調整部301は、アンテナ3の通信容量を再設定する際に、当該アンテナ3を介して基地局と通信を行っている端末装置5のうち、通信品質の改善が見込めない端末装置5を判断する。この判断では、アンテナ3の再設定後の通信容量に収まらない所要通信容量の端末装置5を判断する。通信容量調整部301は、通信部300により、アンテナ3の基地局を介して、通信品質の改善が見込めない端末装置5に対し、当該アンテナ3の基地局とは異なる他の無線通信方式の基地局のアンテナ3を選択するように通知する。例えば、通信容量調整部301は、LTE方式の基地局のアンテナ3を選択している端末装置5に対して、「Wi−Fi(登録商標)」等の無線LANの基地局(アクセスポイント)のアンテナ3を選択するように、当該端末装置5の無線LAN接続アプリケーションに対して通知メッセージを通信部300により送信する。これにより、端末装置5の無線LAN接続アプリケーションが検知している無線LANアクセスポイントが存在していれば、無線LAN接続アプリケーションが無線LANへの切り替えを報知することにより、端末装置5のユーザに対して、端末装置5の無線通信方式を無線LANに切り替えるように促すことができる。
【0055】
[通信容量調整方法の変形例2]
通信容量調整部301は、端末情報124の端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて、施設50内のエリア毎に、エリア内に存在する複数の端末装置5の通信品質の平均値を算出する。通信容量調整部301は、隣り合うエリアの通信品質の平均値を比較し、通信品質の平均値が高い方のエリアのアンテナ3の指向方向を、通信品質の平均値が低い方のエリアに向かせる。
【0056】
[端末情報収集方法の変形例]
制御装置30は、端末装置5の端末通信品質情報123に基づいて、当該端末装置5の通信品質が所定の通信品質基準を満たすか否かを判断する。制御装置30は、端末装置5の通信品質が所定の通信品質基準を満たさないと判断した場合には、当該端末装置5に対してアンテナ3の切り替えを実行させる。制御装置30は、当該アンテナ3の切り替え後に、当該端末装置5の端末情報124の取得を、端末情報収集装置10に実行させる。これにより、通信品質の悪い状況下で端末装置5の端末情報124を取得することにより、端末アンテナ間距離情報122等の情報の精度が低下して端末情報124の精度が悪くなることを防止できる。
【0057】
[置局計画方法の例]
次に本実施形態に係る基地局の置局計画方法の例を説明する。制御装置30の置局計画部302は、端末情報収集装置10が収集した端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて、基地局の変更計画データを生成する。基地局の変更計画データ(以下、単に変更計画データと称する)は、施設50内に設けられる基地局の追加、削除又は変更の情報を含むデータである。例えば、変更計画データは、固定基地局のアンテナ3の追加の配置を含むデータであってもよく、又は、削除する固定基地局のアンテナ3の配置を含むデータであってもよい。例えば、変更計画データは、移動基地局のアンテナ3と一緒に移動する当該移動基地局の移動の配置を含むデータであってもよい。移動基地局として、例えば、人が携行して施設50内を移動する可搬型基地局装置が挙げられる。
【0058】
例えば、置局計画部302は、端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて通信容量が不足していると判断した施設50内のエリアが存在する場合に、当該エリアをカバレッジ内に有するアンテナ3の基地局を増設したり、又は、当該エリアをカバレッジ内に有するアンテナ3の基地局の性能を強化したりすることを示す変更計画データを生成する。例えば、置局計画部302は、端末位置情報と端末通信品質情報123とに基づいて通信容量が過剰であると判断した施設50内のエリアが存在する場合に、当該エリアをカバレッジ内に有するアンテナ3の基地局を削除したり、又は、当該エリアをカバレッジ内に有するアンテナ3の基地局の性能を縮小したりすることを示す変更計画データを生成する。
【0059】
なお、変更計画データには、対象の基地局が用いる無線通信方式、無線周波数帯、電波強度、アンテナ3の指向方向等の情報を含めてもよい。無線通信方式として、例えば、LTE方式(TDD方式又はFDD−LTE方式)、無線LAN方式などが挙げられる。
【0060】
また、置局計画部302は、通信部300により、施設50内において可搬型基地局装置を携行しているオペレータの携帯端末に対して、変更計画データに基づいた施設50内の移動先や移動経路の情報を送信してもよい。当該オペレータは、自己の携帯端末に送られてきた施設50内の移動先や移動経路の情報に基づいて、可搬型基地局装置を携行して移動する。これにより、変更計画データをいち早く施設50内の通信状況に反映させることができる。
【0061】
置局計画部302が変更計画データを生成するタイミングは、施設50内で開催されるイベントのタイムスケジュールに連動してもよい。例えば、置局計画部302は、イベントのタイムスケジュールにおいて、施設50内の電波環境が変わるタイミングに合わせて、変更計画データを生成してもよい。施設50内の電波環境が変わるタイミングとして、例えば、ドーム型スタジアムでのライブコンサートなどにおいて、大型セットの配置転換や移動が行われるタイミングなどが挙げられる。
以上が基地局の置局計画方法の例の説明である。
なお、施設50で開催されるイベントに使用される可能性のある施設50内の複数の会場レイアウト毎に、基地局のパラメータのデフォルト値のセット(デフォルトパラメータセット)を予めデータベース化しておいてもよい。基地局運用者は、施設50で開催されるイベントの会場レイアウトに応じて、該当するデフォルトパラメータセットを参考にして当該イベントにおける基地局のパラメータの設定を行ってもよい。また、制御装置30は、施設50のイベント開催時に収集された端末情報124(端末位置情報と端末通信品質情報)に基づいて施設50のいずれのデフォルトパラメータセットが当該イベントに適するのかを判断し、該判断の結果を出力してもよい。基地局運用者は、該判断の結果を参考にして当該イベントにおける基地局のパラメータの設定を行ってもよい。基地局のパラメータとして、例えば、アンテナ3の電波強度、チルト角、指向方向、及び、最大同時収容ユーザ数などが挙げられる。
【0062】
本実施形態によれば、施設内の座席が存在しない場所に存在する端末装置に対しても位置の特定を行うことができる。これにより、施設内の通信品質の向上を図ることに寄与するという効果が得られる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0064】
上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0065】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。