(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の加工面データに基づくワークの加工面形状、及び、前記第2の加工面データに基づくワークの加工面形状を表示する表示部を、更に備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項記載の計算装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
本実施形態の計算装置は、NC工作機械で加工されるワークの加工面が点群で表される第1の加工面データが入力される加工面データ入力部と、上記第1の加工面データに補正処理を行い、点群で表される第2の加工面データを作成する補正処理部と、上記第2の加工面データを出力する加工面データ出力部と、を備える。
【0029】
また、本実施形態の加工システムは、上記計算装置と、上記第2の加工面データに基づきNCデータを作成するNCデータ作成部と、上記ワークを保持するワーク保持部と、上記ワークを加工する工具と、上記工具を用いた上記ワークの加工を、上記NCデータに基づき制御するNC制御部と、を有するNC工作機械と、を備える。
【0030】
図1は、本実施形態の加工システムの一例を示すブロック図である。本実施形態の加工システムは、CADで設計されたワークの加工面形状を、NC工作機械で工作する加工システムである。
【0031】
図1に示すように、本実施形態の加工システム100は、CAD10、計算装置12、NCデータ作成部14、NC工作機械16を備える。
【0032】
計算装置12は、加工面データ入力部12a、補正処理部12b、表示部12c、加工面データ出力部12d、空間フィルタ選択部12e、空間フィルタ編集部12fを備える。また、NC工作機械16は、NC制御部16aを備える。
【0033】
CAD10は、NC工作機械16で加工されるワークの加工面形状を設計する機能を備える。CAD10は、たとえば、3次元CADである。ワークの加工面形状は、たとえば、自由曲面が組み合わさった曲面である。ワークの加工面形状は、たとえば、ワイヤーフレームモデル、サーフェイスモデル、ソリッドモデルなどのモデルを用いた3次元の形状データである。CADで作成されるワークの加工面形状のデータは、ベクトルデータである。
【0034】
CAD10は、ベクトルデータで表された加工面形状のデータを、点群で表される第1の加工面データに変換する機能を備える。
【0035】
第1の加工面データは、ワークの加工面を点群で表す点群データである。第1の加工面データは、たとえば、3次元のCADで設計されたワークの加工面を、直交座標(x、y、z)で表される点の集合で表したデータである。
【0036】
計算装置12は、点群で表される第1の加工面データに補正処理を行い、点群で表される第2の加工面データを作成する機能を備える。計算装置12は、たとえば、一つのコンピュータで構成される。
【0037】
加工面データ入力部12aには、点群で表される第1の加工面データが入力される。加工面データ入力部12aは、電子データが入力可能であれば、キーボード、記憶媒体とのインターフェース、あるいは、電気配線など、その形態は限定されるものではない。
【0038】
補正処理部12bは、点群で表される第1の加工面データに補正処理を行い、点群で表される第2の加工面データを作成する機能を有する。補正処理部12bは、たとえば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。たとえば、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリ及び半導体メモリに記憶された変換プログラムで構成される。
【0039】
本実施形態では、補正処理部12bで行われる補正処理が、空間フィルタを用いた空間フィルタリングである場合を例に説明する。
【0040】
図2は、本実施形態の補正処理の説明図である。第1の加工面データは、ワークの加工面を、直交座標(x、y、z)で表される点の集合で表したデータである。
【0041】
図2では、x座標とy座標で位置が特定される各マス目が、それぞれz座標を有している。空間フィルタリングは、着目点とその周辺の点のz座標値を使用して、着目点のz座標値を変換する。
【0042】
具体的には、たとえば、
図2の場合、第1の加工面データの着目点を中心とした5×5の点のz座標値に、5×5のフィルタサイズの空間フィルタを掛けることで、第2の加工面データの着目点のz軸座標値を算出する。空間フィルタは、着目点を中心にしたM行×N列の近傍マトリックスに対する処理を行うフィルタのことであり、カーネルとも称される。また、空間フィルタを用いて各点のデータを変換することを空間フィルタリングと称することとする。
【0043】
第1の加工面データのすべてのマス目に対し、順に空間フィルタを掛けていくことで、点群で表される第2の加工面データに変換される。第2の加工面データも、ワークの加工面を、直交座標(x、y、z)で表される点の集合で表したデータである。
【0044】
図3は、本実施形態の空間フィルタの具体例を示す図である。
図3(a)は、係数に重み付のない重みなし空間フィルタ(空間フィルタA)、
図3(b)は係数に重みが付けられた重み付き空間フィルタ(空間フィルタB)である。
【0045】
空間フィルタAや空間フィルタBは、加工面形状を平滑化する空間フィルタである。空間フィルタを用いた空間フィルタリングは、平滑化に限らず、たとえば、加工面形状のエッジ抽出や加工面形状の鮮鋭化など、その他の空間フィルタリングとすることも可能である。適当なフィルタサイズや重み付けを有する空間フィルタを用いることにより、所望の効果を有する空間フィルタリングが可能となる。
【0046】
表示部12cは、第1の加工面データの加工面形状、又は、補正処理後の第2の加工面データの加工面形状を画面に表示する機能を備える。たとえば、表示部12cは、たとえば、工具パス(x軸座標)に沿ったz軸座標を表示する。また、たとえば、加工面形状を、等高線を用いた3次元イメージとして表示する。
【0047】
加工面データ出力部12dは、点群で表される第2の加工面データを出力する機能を備える。加工面データ出力部12dは、電子データが出力可能であれば、ディスプレイ、記憶媒体とのインターフェース、或いは、電気配線等、その形態は限定されるものではない。
【0048】
空間フィルタ選択部12eは、複数種類の空間フィルタから所望の空間フィルタを選択することを可能とする機能を有する。空間フィルタ選択部12eは、たとえば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。たとえば、CPU、半導体メモリ及び半導体メモリに記憶された変換プログラムで構成される。
【0049】
空間フィルタ選択部12eは、たとえば、フィルタリング効果の異なる空間フィルタを複数種類あらかじめ準備しておき、適切な空間フィルタをユーザが選択できる機能を実現する。たとえば、表示部12cに複数種類の空間フィルタをメニュー形式で表示することにより、ユーザが所望の空間フィルタを選択可能とする。
【0050】
空間フィルタ編集部12fは、ユーザによる空間フィルタの編集を可能とする機能を有する。空間フィルタ編集部12fは、たとえば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。たとえば、CPU、半導体メモリ及び半導体メモリに記憶された変換プログラムで構成される。空間フィルタ編集部12fは、たとえば、表示部12cを用いてユーザが空間フィルタのサイズや重み付けを編集可能とする。
【0051】
NCデータ作成部14は、点群で表される第2の加工面データから、第2の加工面データに基づきNCデータを作成する。NCデータは、NC工作機械16を制御するプログラムである。NCデータには、工具が移動する経路(以下、工具パスとも称する)や、工具の送り速度などNC工作機械16の動きに対する指令値が指定される。
【0052】
NCデータ作成部14では、たとえば、ワークの加工面が点群で表される第2の加工面データから、関数で表される工具パスを作成する。工具パスは、たとえば、z=f(x,y)と記述される。
【0053】
工具パスは、たとえば、ワークの加工面が複数の領域i(i=1〜n、nは自然数)に分割されたデータであり、それぞれの領域iがz=f
i(x,y)と記述される。工具パスは、点群で表される第2の加工面データから、スプライン補間、NURBS(Non−Uniform Rational B−Spline)補間、多項式補間等の処理を行うことで生成される。
【0054】
NCデータ作成部14は、たとえば、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで構成される。たとえば、CPU(Central Processing Unit)、半導体メモリ及び半導体メモリに記憶された変換プログラムで構成される。
【0055】
NCデータ作成部14は、たとえば、計算装置12の中に組み込まれていても構わない。
【0056】
図4は、本実施形態のNC工作機械16の一例を示す模式図である。本実施形態のNC工作機械16は研削加工装置であり、直交3軸加工機である。
【0057】
図4に示すように、NC工作機械16は、その主要な構成として、NC制御部16a、機台110、X軸テーブル112、Y軸テーブル114、Z軸テーブル116、ワークスピンドルユニット118、ワークスピンドル118a、ワークスピンドルモータ118b、ジグ118c(ワーク保持部)、工具スピンドルユニット120、工具スピンドル120a、工具スピンドルモータ120b、砥石122(工具)、Y軸カラム126を備える。
【0058】
NC制御部16aは、NC工作機械16をNCデータに基づき制御する。NC制御部16aは、X軸テーブル112、Y軸テーブル114、及び、Z軸テーブル116をNCデータに従って制御する。NC制御部16aは、X軸、Y軸、及び、Z軸の同時3軸制御を行う。
【0059】
NC制御部16aは、たとえば、マイクロコンピュータである。NC制御部16aを構成するマイクロコンピュータは、たとえば、CPU、メモリを備える。メモリには、NCデータが記憶される。
【0060】
X軸テーブル112は、機台110上に設けられる。X軸テーブル112は、X軸方向に直線移動が可能である。X軸テーブル112は、たとえば、図示しないサーボモータにより駆動される。
【0061】
Z軸テーブル116は、機台110上に設けられる。Z軸テーブル116は、Z軸方向に直線移動が可能である。Z軸テーブル116は、たとえば、図示しないサーボモータにより駆動される。
【0062】
Z軸テーブル116上には、ワークスピンドルユニット118が搭載されている。ワークスピンドルユニット118は、ワークスピンドル118a、ワークスピンドルモータ118b、及び、ジグ118cを備える。
【0063】
ワークスピンドル118aは、空気軸受けにより回転軸Aの周りに回転可能である。ワークスピンドル118aは、ワークスピンドルモータ118bにより回転駆動される。
【0064】
ジグ118cは、ワークスピンドル118aの先端部に固定される。ジグ118cは、ワークWを保持する。ワークスピンドル118aは、ワークWを回転軸Aの周りに所望の回転数で回転させる。
【0065】
Y軸カラム126は、X軸テーブル112上に固定される。Y軸カラム126は、Y軸テーブル114を支持している。Y軸テーブル114は、Y軸方向に直線移動が可能である。Y軸テーブル114は、たとえば、図示しないサーボモータにより駆動される。
【0066】
Y軸テーブル114には、工具スピンドルユニット120が固定されている。工具スピンドルユニット120は、工具スピンドル120a、及び、工具スピンドルモータ120bを備える。
【0067】
工具スピンドル120aは、空気軸受けにより回転軸Bの周りに回転可能である。工具スピンドル120aは、工具スピンドルモータ120bにより回転駆動される。
【0068】
工具スピンドル120aの先端に、工具としての砥石122が取り付けられる。工具スピンドル120aにより砥石122が回転される。回転する砥石122により、ワークWが研削される。
【0069】
工具スピンドル120aは、X軸テーブル112に間接的に固定される。X軸テーブル112は、砥石122を回転軸Aに対し直交する方向に所望の送り速度で移動させる。
【0070】
砥石122は、たとえば、円盤状のV型砥石である。砥石122は、たとえば、ダイヤモンド砥粒が樹脂で固められたレジンボンド系砥石である。
【0071】
ワークWは、たとえば、自由曲面が組み合わされた加工面を備える。
【0072】
X軸、Y軸、及び、Z軸の各制御軸に関しては、図示しないリニアスケール等が設けられ、フルクローズド方式による位置フィードバック制御が行われる。
【0073】
また、NC制御部16aは、NCデータに従って、ワークスピンドルユニット118、及び、工具スピンドルユニット120を制御する。NC制御部16aは、ワークスピンドルモータ118bの回転を制御することで、ワークWの回転数を制御する。また、NC制御部16aは、工具スピンドルモータ120bの回転を制御することで、砥石122の回転数を制御する。
【0074】
ワークWの回転数は、たとえば、10rpm以上300rpm以下である。ワークWの回転数は、回転軸Aから砥石122とワークWの接触点(加工点)までの距離を関数として制御することが可能である。
【0075】
砥石122の回転数は、たとえば、200rpm以上7000rpm以下である。
【0076】
次に、本実施形態の加工システムを用いた加工方法について説明する。
図5は、本実施形態の加工システム100を用いた加工方法の一例を示すフロー図である。
【0077】
本実施形態の加工方法は、NC工作機械で加工されるワークの加工面形状を、CADを用いて設計し、上記加工面形状を加工面が点群で表される第1の加工面データに変換し、上記第1の加工面データに補正処理を行い、点群で表される第2の加工面データを作成し、上記第2の加工面データに基づきNCデータを作成し、上記第NCデータに基づきワークを加工する。
【0078】
最初に、ワークの加工面形状の設計が、たとえば、3次元のCADを用いて行われる(S10)。設計されたCADデータは、ベクトルデータである。
【0079】
次に、たとえば、CADデータを加工面が点群で表される第1の加工面データに変換する(S12)。データの変換は、たとえば、CADの機能を用いて実行される。
【0080】
次に、点群で表される第1の加工面データに補正処理を行い、点群で表される第2の加工面データを作成する(S14)。補正処理は、補正処理部12bで行われる。たとえば、補正処理は、空間フィルタを用いた空間フィルタリングである。
【0081】
空間フィルタは、たとえば、第1の加工面データを用いて加工されたワークの形状に基づきフィルタサイズ及び重み付けが決定される。また、たとえば、第1の加工面データを用いてワークを加工した際の工具送り速度に基づきフィルタサイズ及び重み付けが決定される。また、たとえば、第1の加工面データを用いてワークを加工した際のモータトルクに基づきフィルタサイズ及び重み付けが決定される。
【0082】
次に、第2の加工面データに基づきNCデータを作成する(S16)。NCデータの作成は、NCデータ作成部14で行われる。
【0083】
次に、NCデータに基づきワークを加工する(S18)。ワークは、NC工作機械16をNC制御部16aにより制御することで加工される。NC工作機械16は、NCデータに含まれる指令値に基づき制御される。
【0084】
以下、本実施形態の作用・効果について説明する。
【0085】
CADで設計されるワークの加工面形状のベクトルデータは、CADに固有のトレランス(モデリング精度)が含まれる。トレランスを小さくすることで高精度なデータが作成できるが、NCデータの作成に膨大な計算時間が必要となるおそれがある。また、CADの種類によりトレランスの大きさが異なるため、NCデータの作成にCADの種類に応じた対応が必要となる。このため、NCデータの作成の汎用性が低下する。
【0086】
本実施形態の加工システム100は、CAD10で設計されたワークの加工面形状のベクトルデータを、点群データに変換する。そして、NCデータ作成部14で、点群データからNCデータを作成する。
【0087】
たとえば、点群データで表される加工面データに対して演算処理を行い、加工面形状の最適化を行う。加工面データは、たとえば、関数で表される加工面に再構築される。関数を用いた加工面データを用いてNCデータが作成される。
【0088】
点群データはベクトルデータに比べ演算処理が容易である。したがって、演算処理による加工面形状の最適化が容易となる。また、点群データを用いることでCADの種類に依存しない汎用性の高いNCデータの作成が可能となる。
【0089】
図6、
図7、
図8、
図9は、本実施形態の作用及び効果の説明図である。
図6、
図7、
図8、
図9は、本実施形態の加工システム100を用いた加工方法の一具体例の説明図である。
【0090】
図6は、NC工作機械に対する指令値のを示す。x軸方向(水平方向)に工具を一定速度で移動しながら、z軸方向(高さ方向)に0.01mm揺動させる動作の指令をNC工作機械16に対して行い、ワークを加工する場合を考える。点群で表される第1の加工面データに、空間フィルタによるフィルタリング処理を行って第2の加工面データを作成する場合と、フィルタリング処理を行わない場合を考える。空間フィルタは、
図3(a)に示す重みなし空間フィルタ(空間フィルタA)と、
図3(b)に示す重み付き空間フィルタ(空間フィルタB)を用いた。
【0091】
図6(a)は、加工面のx軸座標の値に対するz軸座標の値を示す。フィルタリング処理なし(実線)、重みなし空間フィルタ(空間フィルタA)を用いたフィルタリング処理あり(一点鎖線)、重み付き空間フィルタ(空間フィルタB)を用いたフィルタリング処理あり(点線)の場合をそれぞれ示す。
【0092】
図6(b)は、加工面のx軸座標の値に対するz軸速度の値を示す。フィルタリング処理なし(実線)、重みなし空間フィルタ(空間フィルタA)を用いたフィルタリング処理あり(一点鎖線)、重み付き空間フィルタ(空間フィルタB)を用いたフィルタリング処理あり(点線)の場合をそれぞれ示す。
【0093】
図6(b)に示すように、フィルタリング処理を行わない場合は、z軸速度が瞬間的に増大する。一方、フィルタリング処理を行うとz軸速度の増減が緩和される。特に、重み付き空間フィルタ(空間フィルタB)を用いた場合、z軸速度の増減の緩和効果が顕著である。
【0094】
図7は、フィルタリング処理なしの指令値を用いてワークを加工した場合の、x軸位置、x軸速度、x軸トルク、z軸位置、z軸速度、及び、z軸トルクを示す。
図8は、重みなし空間フィルタ(空間フィルタA)を用いたフィルタリング処理をした指令値を用いてワークを加工した場合の、x軸位置、x軸速度、x軸トルク、z軸位置、z軸速度、及び、z軸トルクを示す。
図9は、重み付き空間フィルタ(空間フィルタB)を用いたフィルタリング処理をした指令値を用いてワークを加工した場合の、x軸位置、x軸速度、x軸トルク、z軸位置、z軸速度、及び、z軸トルクを示す。
【0095】
図7に示すように、フィルタリング処理なしの指令値を用いた場合、z軸速度が瞬間的に過大となり、一定速度で同期動作するよう指令されているx軸速度が減速する。したがって、x軸速度が指令値に対して未達となる。また、z軸位置においてもオーバーシュートが確認される。よって、指令値に対応した加工形状が得られず、加工動作として不適切であることが分かる。
【0096】
図8に示すように、重みなし空間フィルタ(空間フィルタA)を用いたフィルタリング処理をした指令値を用いた場合、x軸速度の減速は緩和される。また、z軸位置のオーバーシュートはなくなり、指令値に対する追従性が向上している。
【0097】
図9に示すように、重み付き空間フィルタ(空間フィルタB)を用いたフィルタリング処理をした指令値を用いた場合、x軸速度の低下は認められず、指令値に追従した加工が実現されていることが分かる。
【0098】
このように、本実施形態によれば、第1の加工面データが点群データであることにより、空間フィルタを用いた空間フィルタリングを行うことが可能となる。適切な空間フィルタを用いて空間フィルタリングを行うことで、ワークの加工精度の向上及び機械動作の最適化が容易となる。
【0099】
空間フィルタのフィルタサイズ及び重み付けは、たとえば、第1の加工面データを用いて加工されたワークの形状に基づき設定される。たとえば、フィルタリング処理なしのデータが第1の加工面データである場合、第1の加工面データを用いてワークを加工し、加工形状を確認する。所望の加工形状が実現できていない場合、空間フィルタに適切なフィルタサイズ及び重み付けを与えてフィルタリング処理を行い第2の加工面データを作成する。作成された第2の加工面データを用いてワークを加工することで、所望の加工形状が実現できる。
【0100】
空間フィルタのフィルタサイズ及び重み付けは、たとえば、第1の加工面データを用いてワークを加工した際の工具送り速度に基づき設定される。たとえば、フィルタリング処理なしのデータが第1の加工面データである場合、第1の加工面データを用いてワークを加工し、加工形状を確認する。たとえば、工具送り速度(x軸速度)を同一の値に保ったまま、空間フィルタに適切なフィルタサイズ及び重み付けを与えてフィルタリング処理を行い第2の加工面データを作成する。作成された第2の加工面データを用いてワークを加工することで、加工時間を増加させずに、ワークを加工することが可能となる。
【0101】
空間フィルタのフィルタサイズ及び重み付けは、たとえば、第1の加工面データを用いてワークを加工した際のモータトルクに基づき設定される。たとえば、フィルタリング処理なしのデータが第1の加工面データである場合、第1の加工面データを用いてワークを加工し、加工形状及びモータトルクを確認する。たとえば、モータトルクの増減が大きい場合、モータトルクの増減が緩和する方向で空間フィルタに適切なフィルタサイズ及び重み付けを与えてフィルタリング処理を行い第2の加工面データを作成する。作成された第2の加工面データを用いてワークを加工することで、たとえば、z軸位置のオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0102】
本実施形態では、点群データを用いて補正処理を行うため、たとえば、表示部12cを用いた補正処理内容の可視化が容易である。また、空間フィルタによるフィルタリング処理は、概念的に理解が容易である。したがって、補正処理の処理内容のユーザによる把握が容易となる。よって、ユーザによるワークの加工精度の向上や機械動作の最適化が容易となる。
【0103】
本実施形態の計算装置12が、複数種類の空間フィルタから所望の空間フィルタを選択する空間フィルタ選択部12eを備えることが好ましい。空間フィルタ選択部12eを備えることで、ユーザによるワークの加工精度の向上や機械動作の最適化が更に容易となる。
【0104】
本実施形態の計算装置12が、空間フィルタを編集する空間フィルタ編集部12fを備えることが好ましい。空間フィルタ編集部12fを備えることで、ユーザの意図に応じた空間フィルタの設定が容易になり、ユーザによるワークの加工精度の向上や機械動作の最適化が更に容易となる。
【0105】
以上、本実施形態によれば、点群データを用いることでNCデータの作成が簡易化される。また、点群データを用いた補正処理により、ワークの加工精度の向上及び機械動作の最適化が容易となる。したがって、NCデータの作成が簡易化され、ワークの加工精度の向上及び機械動作の最適化が容易となる計算装置、加工システム、及び、加工方法を提供することができる。
【0106】
(第2の実施形態)
本実施形態の計算装置、加工システム、及び、加工方法は、補正処理が第1の加工面データを用いて加工されたワークの加工誤差が点群で表された誤差データを用いて第1の加工面データを補正する処理であること以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0107】
本実施形態の補正処理では、最初に第1の加工面データから作成されたNCデータを用いて第1のワークを加工し第1の加工品を製造する。次に、第1の加工品の表面形状を、レーザ干渉計などを用いて測長し、点群で表される誤差データを作成する。誤差データは、測長値と設計値の差分を算出することによって作成する。
【0108】
点群で表される第1の加工面データに点群で表される誤差データを反転した反転誤差データを足し合わせ、点群で表される第2の加工面データを作成する。第2の加工面データから、NCデータを作成し、第2のワークを加工し第2の加工品を製造する。
【0109】
本実施形態によれば、第1の加工品の誤差を補正した第2の加工面データを用いることにより、設計値に近い第2の加工品を製造することが可能となる。
【0110】
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態同様、NCデータの作成が簡易化され、ワークの加工精度の向上及び機械動作の最適化が容易となる計算装置、加工システム、及び、加工方法を提供することができる。
【0111】
(第3の実施形態)
本実施形態の計算装置、加工システム、及び、加工方法は、補正処理が第1の加工面データの高さ方向の増減であること以外は、第1の実施形態と同様である。したがって、第1の実施形態と重複する内容については記述を省略する。
【0112】
本実施形態の補正処理では、点群で表される第1の加工面データのz軸座標値に一定の係数を掛ける処理を行う。たとえば、係数として「2」をかけることにより、z軸方向の高さを倍に強調することが可能となる。係数を掛ける処理は、第1の加工面データの全体に対して行っても、一部に対して行っても構わない。
【0113】
本実施形態の補正処理によれば、ワークの加工形状を容易に所望の形状に変更することが可能である。
【0114】
以上、本実施形態によれば、第1の実施形態同様、NCデータの作成が簡易化され、ワークの加工精度の向上及び機械動作の最適化が容易となる計算装置、加工システム、及び、加工方法を提供することができる。さらに、ワークの加工形状を容易に所望の形状に変更することが可能となる。
【0115】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態及び実施例について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。実施形態においては、計算装置、加工システム、加工方法などで、本発明の説明に直接必要としない部分については記載を省略したが、必要とされる計算装置、加工システム、加工方法などに関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0116】
たとえば、実施形態では、補正処理として空間フィルタリング、誤差データの足し合わせ、高さ方向の増減を例に説明したが、補正処理は上記処理に限定されるものではない。点群データを用いた補正処理であれば、たとえば、表面テクスチャーの足し合わせ、凹凸の反転など、その他の補正処理であっても構わない。
【0117】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての計算装置、加工システム、加工方法は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲及びその均等物の範囲によって定義されるものである。