特許第6706249号(P6706249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706249被覆用途のための低VOC及び高固形分のフルオロポリマー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706249
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】被覆用途のための低VOC及び高固形分のフルオロポリマー
(51)【国際特許分類】
   B05D 7/24 20060101AFI20200525BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20200525BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20200525BHJP
   C08F 216/12 20060101ALI20200525BHJP
   C08F 218/04 20060101ALI20200525BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20200525BHJP
   C09D 129/10 20060101ALI20200525BHJP
   C09D 131/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B05D7/24 302L
   B05D7/24 302N
   B32B27/30 D
   C08F214/18
   C08F216/12
   C08F218/04
   C09D127/12
   C09D129/10
   C09D131/00
【請求項の数】30
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-512365(P2017-512365)
(86)(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公表番号】特表2017-534438(P2017-534438A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015049250
(87)【国際公開番号】WO2016040525
(87)【国際公開日】20160317
【審査請求日】2018年8月31日
(31)【優先権主張番号】62/047,959
(32)【優先日】2014年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ワンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ラジヴ・ラトナ
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ガン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シユアン
(72)【発明者】
【氏名】リン,ユン
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−255328(JP,A)
【文献】 特開2005−36024(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/035779(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/043831(WO,A1)
【文献】 特許第4144355(JP,B2)
【文献】 特表2004−506073(JP,A)
【文献】 特開昭62−7767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00− 7/26
B32B 1/00−43/00
C08F 214/00−218/18
C09D 127/00−131/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)揮発性有機化合物(VOC)を含むキャリアを含むタイプの被覆組成物で被覆する基材を与え;
(b)(i)(1)ヒドロフルオロエチレン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、ヒドロフルオロペンテン、及びこれらの組合せからなる群から選択される第1のモノマー、(2)1種類又は複数のビニルエステルを含む第2のモノマー、及び(3)1種類又は複数のビニルエーテルを含む第3のモノマー(ここで、ビニルエーテルモノマーの少なくとも一部はヒドロキシル基含有ビニルエーテルである)の共重合によって1種類以上のフルオロコポリマーを与え;そして
(ii)1種類以上のフルオロコポリマーのためのVOC化合物を含むキャリアを与え、ここでキャリアは揮発性有機化合物(VOC)を含み;そして
(iii)1種類以上のフルオロコポリマーをキャリアと混合して、フルオロコポリマーが被覆組成物の少なくとも70重量%を構成し、キャリアのVOCが被覆組成物の30重量%以下であるようにして、ここでフルオロコポリマーは10,000〜14,000の数平均分子量を有し、VOC含量が450g/L未満である;
ことを含む工程によって形成される被覆組成物を与え;
(c)工程(b)の被覆組成物で基材を被覆し;そして
(d)キャリア中のVOCの少なくとも相当部分を大気中に蒸発させることによって、基材上に配され且つ基材に接着している保護ポリマー層を形成して、それによって保護被覆を形成する;
ことを含む、大気中へVOCを流出させるタイプの被覆操作中において、地球の大気中への揮発性有機化合物(VOC)の放出を減少させる方法。
【請求項2】
(a)揮発性有機化合物(VOC)を含むキャリアを含むタイプの被覆組成物で被覆する基材を与え;
(b)(i)(1)45モル%〜55モル%のHFO−1234ze、
(2A)10モル%〜20モル%の、式:CH=CR−O(C=O)(式中、xは1であり、Rは水素であり、Rは6〜8個の炭素原子を有する非置換の分岐鎖アルキル基であり、かかるアルキル基は少なくとも1つの第3級又は1つの第4級炭素原子を含む)によって表されるビニルエステル、
(2B)10モル%〜20モル%の、式:CH=CR−OR(式中、Rは水素であり、Rは1〜3個の炭素原子を有する非置換の直鎖アルキル基である)によって表されるビニルエーテル、及び
(3)3モル%〜30モル%の、式:CH=CR−O−R−OH(式中、Rは水素であり、RはC〜Cの非置換直鎖アルキル基である)によって表されるヒドロキシアルキルビニルエーテル、
から実質的に構成されるモノマーの共重合によって1種類以上のフルオロコポリマー(ここで、1種類又は複数のフルオロコポリマーは10,000〜14,000の数平均分子量を有する)を与え;そして
(ii)1種類以上のフルオロコポリマーのためのキャリアを与え、ここでキャリアは揮発性有機化合物(VOC)を含み;そして
(iii)1種類以上のフルオロコポリマーをキャリアと混合して、少なくとも70重量%の1種類又は複数のフルオロコポリマー、及び30重量%以下のキャリアを含む被覆組成物を形成する;
ことを含む工程によって形成される被覆組成物を与え、VOC含量が450g/L未満であり;
(c)工程(b)の被覆組成物で基材を被覆し;そして
(d)キャリア中のVOCの少なくとも相当部分を大気中に蒸発させることによって、基材上に配され且つ基材に接着している保護ポリマー層を形成して、それによって保護被覆を形成する;
ことを含む、大気中へVOCを流出させるタイプの被覆操作中において、地球の大気中への揮発性有機化合物(VOC)の放出を減少させる方法。
【請求項3】
被覆組成物が70重量%〜90重量%固形分含量を有する、請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
被覆組成物が75重量%〜85重量%の固形分含量を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
被覆組成物が400g/L〜200g/LVOC含量を有する、請求項1又は2に記載の方法
【請求項6】
被覆組成物が350g/L〜250g/LのVOC含量を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第1のモノマー(1)が、1,3,3,3−テトラフルオロオレフィン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロオレフィン(HFO−1234yf)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
フルオロコポリマーが、モノマーの溶液共重合によって形成され請求項1又は2に記載の方法
【請求項9】
共重合プロセスにおいて用いるキャリアの量が10重量%〜40重量%である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
共重合プロセスにおいて用いるキャリアの量が15重量%〜25重量%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
キャリアがC〜Cアルキルアセテート含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法
【請求項12】
キャリアが酢酸ブチルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
基材を被覆する工程を屋外の現場で行、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
基材上に保護ポリマー層を形成する工程を前記屋外の現場で行う、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、VEOVA-9(Cカルボン酸から形成されるバーサチック酸ビニルエステル)、VEOVA-10(C10カルボン酸から形成されるバーサチック酸ビニルエステル)、及びシクロヘキサンカルボン酸ビニルからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法
【請求項16】
ビニルエーテルは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、及びラウリルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテル、ならびに、脂環式基を含むビニルエーテル、例えばシクロブチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、及びシクロヘキシルビニルエーテルからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法
【請求項17】
ヒドロキシ基含有ビニルエーテルは、ヒドロキシル−エチルビニルエーテル、ビドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、及びヒドロキシヘキシルビニルエーテルからなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法
【請求項18】
被覆組成物が、12毎分回転数(r/m)、30r/m、及び60r/mの少なくとも1つにおいてFord Cupによって測定して1900mPa・秒未満の粘度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
が、2個の炭素原子を有する非置換直鎖のアルキル基である、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
(i)(1)45モル%〜55モル%のHFO−1234ze、
(2A)10モル%〜20モル%の、式:CH=CR−O(C=O)(式中、xは1であり、Rは水素であり、Rは6〜8個の炭素原子を有する非置換の分岐鎖アルキル基であり、かかるアルキル基は少なくとも1つの第3級又は1つの第4級炭素原子を含む)によって表されるビニルエステル、
(2B)10モル%〜20モル%の、式:CH=CR−OR(式中、Rは水素であり、Rは1〜3個の炭素原子を有する非置換の直鎖アルキル基である)によって表されるビニルエーテル、及び
(3)3モル%〜30モル%の、式:CH=CR−O−R−OH(式中、Rは水素であり、RはC〜Cの非置換直鎖アルキル基である)によって表されるヒドロキシアルキルビニルエーテル、
から実質的に構成されるモノマーの共重合によって形成される1種類以上のフルオロコポリマー(ここで1種類又は複数のフルオロコポリマーは10,000〜14,000の数平均分子量を有する);及び
(ii)揮発性有機化合物(VOC)を含む、1種類以上のフルオロコポリマーのためのキャリア;
を含み;
被覆組成物は、(a)少なくとも70重量%の1種類又は複数のフルオロコポリマー;(b)30重量%以下のキャリア;を含み、(c)400g/L未満のVOC含量;及び、(d)12毎分回転数(r/m)、30r/m、及び60r/mの少なくとも1つにおいてFord Cupによって測定して1900mPa・秒未満の粘度;を有する被覆組成物。
【請求項21】
被覆組成物が70重量%〜90重量%の固形分含量を有する、請求項20に記載の被覆組成物。
【請求項22】
被覆組成物が75重量%〜85重量%の固形分含量を有する、請求項21に記載の被覆組成物。
【請求項23】
被覆組成物が400g/L〜200g/LのVOC含量を有する、請求項20に記載の被覆組成物
【請求項24】
被覆組成物が350g/L〜250g/LのVOC含量を有する、請求項23に記載の被覆組成物
【請求項25】
フルオロコポリマーが、モノマーの溶液共重合によって形成される、請求項20に記載の被覆組成物。
【請求項26】
共重合プロセスにおいて用いるキャリアの量が10重量%〜40重量%である、請求項25に記載の被覆組成物。
【請求項27】
共重合プロセスにおいて用いるキャリアの量が15重量%〜25重量%である、請求項26に記載の被覆組成物。
【請求項28】
ビニルエステルは、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、VEOVA-9(Cカルボン酸から形成されるバーサチック酸ビニルエステル)、VEOVA-10(C10カルボン酸から形成されるバーサチック酸ビニルエステル)、及びシクロヘキサンカルボン酸ビニルからなる群から選ばれる、請求項20に記載の被覆組成物
【請求項29】
ビニルエーテルは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、及びラウリルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテル、ならびに、脂環式基を含むビニルエーテル、例えばシクロブチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、及びシクロヘキシルビニルエーテルからなる群から選ばれる、請求項20に記載の被覆組成物。
【請求項30】
ヒドロキシ基含有ビニルエーテルは、ヒドロキシル−エチルビニルエーテル、ビドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、及びヒドロキシヘキシルビニルエーテルからなる群から選ばれる、請求項20に記載の被覆組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2014年9月9日出願の米国仮出願62/047,959(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)からの優先権を主張する。
[0002]本発明は、基材上に保護被覆を形成している間の揮発性有機化合物(VOC)の地球大気中への曝露を減少させる方法、及びかかる方法において用いる被覆組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]揮発性有機化合物(VOC)は、種々の政府機関による規制を受けている炭素の揮発性化合物であり、本発明の目的のためには、この用語は、米国環境保護庁(EPA)によって制定された規制案に合致して用いられる。より具体的には、これらの規制案においては、炭素の化合物は、20℃において約0.1mm−Hg未満の蒸気圧を有する場合にはVOCであると定められている。
【0003】
[0004]種々の化学物質がVOCの定義に含まれ、これらの化合物の幾つかは、大気中に放出されると短期間及び長期間の健康への悪影響を与える。したがって、多くの国は、かかる化合物の地球の大気中への放出を律する規制を有している。かかる化合物の環境中への放出の1つの比較的大きな原因は、塗料、ワニス、ワックス、接着剤、インクなどのような被覆製品において用いられている溶媒からである。多くの洗浄、消毒、化粧、脱脂、及び趣味製品も、溶媒又はキャリアとしてVOCを含んでいる。かかる化合物の大気中への放出を減少又は排除する1つの方法は、溶媒が被覆組成物から蒸発する際に溶媒を捕捉してその放出を阻止することである。かかる方法には、例えば蒸気を捕捉して、かかる蒸気を焼却炉で処理する装置を設置することを含めることができる。しかしながら、当業者に認められるように、かかる操作の結果として相当な資本コスト及び/又は処理コストがかかり、及びかかる操作は、時には被覆操作を完了するために必要な時間を不利益に増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[0005]地球の大気中へのVOCの放出を減少及び制御するために、ますます多くの国がVOC放出を規制し始めている。かかる規制としては、種々の国においてかかる化合物の放出に対してVOC税を課すことが含まれる。したがって、VOCの大気中への放出を減少させる多くの動機付けが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0006]本発明の一形態は、地球の大気中へVOCを流出させるタイプの被覆操作中において、地球の大気中への揮発性有機化合物(VOC)の放出を減少させる方法を提供する。好ましい態様においては、この形態による方法は、
(a)被覆する基材を与え;
(b)(i)(1)ヒドロフルオロエチレン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、ヒドロフルオロペンテン、及びこれらの組合せからなる群から選択され、好ましくは2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、及びこれらの組合せから選択される1種類以上のヒドロフルオロオレフィンモノマー、(2)1種類以上のビニルエステルモノマー、及び(3)1種類以上のビニルエーテルモノマー(ここで、ビニルエーテルモノマーの少なくとも一部はヒドロキシル基含有ビニルエーテルモノマーである)の共重合によって1種類以上のフルオロコポリマーを与え、ここでコポリマーは、ここに記載する手順にしたがって測定して約10,000より大きい数平均分子量、及び好ましくは約20,000より大きい重量平均分子量を有し;そして
(ii)1種類以上のフルオロコポリマーのための1種類以上のVOC化合物を含むキャリアを与え;そして
(iii)1種類以上のフルオロコポリマーをキャリアと混合して、約30重量%以下のキャリアを含み、好ましくは少なくとも約70重量%の固形分含量を有するポリマー組成物を生成させる;
ことを含む工程によって形成される被覆組成物を与え;
(c)工程(b)を含む工程によって与えられる被覆組成物で基材を被覆し;そして
(d)キャリア中のVOCの少なくとも相当部分を地球の大気中に蒸発させることによって、基材上に保護ポリマー層を形成して、それによって保護被覆を形成する;
工程を含む。
【0006】
[0007]本発明の他の形態は、地球の大気中へVOCを流出させるタイプの基準被覆操作と比べて地球の大気中への揮発性有機化合物(VOC)の放出を減少させる結果として、VOC税の控除を得る方法を提供する。好ましい態様においては、この形態による方法は、
(a)既存の被覆組成物で基材を被覆することを含む既存の操作からのVOCの基準放出量を定め;
(b)(i)(1)ヒドロフルオロエチレン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、ヒドロフルオロペンテン、及びこれらの組合せからなる群から選択され、好ましくは2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、及びこれらの組合せから選択される1種類以上のヒドロフルオロオレフィンモノマー、(2)1種類以上のビニルエステルモノマー、及び(3)1種類以上のビニルエーテルモノマー(ここで、ビニルエーテルモノマーの少なくとも一部はヒドロキシル基含有ビニルエーテルモノマーである)の共重合によって1種類以上のフルオロコポリマーを与え;そして
(ii)1種類以上のフルオロコポリマーのための1種類以上のVOC化合物を含むキャリアを与え;そして
(iii)1種類以上のフルオロポリマーをキャリアと混合して、約30重量%以下のキャリアを含み、好ましくは少なくとも約70重量%の固形分含量を有するポリマー組成物を生成させる;ことを含む工程によって形成される減少したVOCの被覆組成物を与え;
(c)減少したVOCの被覆組成物で基材を被覆し;そして
(d)キャリア中のVOCの少なくとも相当部分を地球の大気中に蒸発させることによって、基材上に保護ポリマー層を形成して、それによって保護被覆を形成し、それによって減少したVOCの被覆組成物を用いて放出されるVOCをVOCの基準放出量と比べて減少させ;そして
(e)被覆操作から放出されるVOCの減少に少なくとも部分的に基づいて税金控除の要求を適当な政府機関に提出する;
工程を含む。
【0007】
[0008]幾つかの好ましい態様によれば、本発明の工程(b)によって形成されるフルオロコポリマー被覆組成物は、約70重量%〜約90重量%、更により好ましくは幾つかの態様においては約75重量%〜約85重量%の固形分含量を有する。
【0008】
[0009]好ましい態様によれば、本発明の工程(b)によって形成されるフルオロコポリマー被覆組成物は、約450g/L未満、より好ましくは約400g/L未満、更により好ましくは約350g/L未満のVOC含量を有する。
【0009】
[0010]好ましい態様によれば、本発明の工程(b)によって形成されるフルオロコポリマー被覆組成物は、約450g/L〜約100g/L、より好ましくは約400g/L〜約200g/L、更により好ましくは約350g/L〜約250g/LのVOC含量を有する。
【0010】
[0011]本明細書において用いるヒドロフルオロオレフィンという用語は、ヒドロフルオロエチレン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、及びヒドロフルオロペンテンなどを含むが、必ずしもこれらに限定されない。幾つかの好ましい態様においては、工程(b)の被覆組成物を形成するために用いるヒドロフルオロオレフィンは、1,3,3,3−テトラフルオロオレフィン(HFO−1234ze)及び/又は2,3,3,3−テトラフルオロオレフィン(HFO−1234yf)を含む。
【0011】
[0012]好ましい態様においては、工程(b)のフルオロポリマーは、工程(b)(i)の(1)、(2)、及び(3)によって表されるモノマーの溶液共重合によって形成される。好ましい態様においては、工程(b)(i)は、
(1)約40モル%〜約60モル%、更により好ましくは約45モル%〜約55モル%、更により好ましくは約50モル%の、好ましくはヒドロフルオロエチレン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、及びヒドロフルオロペンテンからなる群から、より好ましくはHFO−1234ze、HFO−1234yf、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種類又は複数のヒドロフルオロオレフィンモノマー、更により好ましくはHFO−1234ze;
(2)約5モル%〜約45モル%、より好ましくは約10モル%〜約40モル%、更により好ましくは約20モル%〜約40モル%の、それぞれ式:CH=CR−O(C=O)及びCH=CR−OR(式中、xは1であり、R及びRは、独立して、水素又はメチル基のいずれか、好ましくは水素であり、R及びRは、独立して、1〜12個の炭素原子、好ましくは2〜8個の炭素原子を有する非置換の直鎖、分岐鎖、又は脂環式アルキル基からなる群から選択される)によって表されるビニルエステル又はビニルエーテル、或いはこれらの両方;並びに
(3)約3モル%〜約30モル%、より好ましくは約3モル%〜約20モル%、更により好ましくは約3モル%〜約10モル%の、式:CH=CR−O−R−OH(式中、Rは上記に規定した通りであり、好ましくは水素であり、Rは、C〜C12の非置換の直鎖、分岐鎖、又は脂環式アルキル基、より好ましくは3〜5個の炭素原子、好ましくは4個の炭素原子を有する非置換の直鎖アルキル基からなる群から選択される)によって表されるヒドロキシアルキルビニルエーテル;
を溶液共重合することを含み、ここで、モル%はコポリマー形成工程におけるモノマーの全量を基準とする。
【0012】
[0013]好ましい態様によれば、本発明の工程(b)によって形成されるフルオロコポリマー被覆組成物は、約450g/L〜約100g/L、より好ましくは約400g/L〜約200g/L、更により好ましくは約350g/L〜約250g/LのVOC含量を有する。
【0013】
[0014]本明細書において用いるヒドロフルオロオレフィンという用語は、ヒドロフルオロエチレン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、及びヒドロフルオロペンテンなどを含むが、必ずしもこれらに限定されない。幾つかの好ましい態様によれば、工程(b)の被覆組成物を形成するために用いるヒドロフルオロオレフィンは、1,3,3,3−テトラフルオロオレフィン(HFO−1234ze)及び/又は2,3,3,3−テトラフルオロオレフィン(HFO−1234yf)を含む。
【0014】
[0015]好ましい態様においては、工程(bi)のフルオロコポリマーは、下記の(1)、(2)、及び(3):
(1)約40モル%〜約60モル%、更により好ましくは約45モル%〜約55モル%、更により好ましくは約50モル%の、好ましくはヒドロフルオロエチレン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、及びヒドロフルオロペンテンからなる群から、好ましくはHFO−1234ze、HFO−1234yf、及びこれらの組合せからなる群から選択されるヒドロフルオロオレフィンモノマー、更により好ましくはHFO−1234ze;
(2A)約10モル%〜約40モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%の、式:CH=CR−O(C=O)(式中、xは1であり、Rは水素又はメチル基のいずれかであり、Rは、1〜12個の炭素原子を有する非置換の直鎖、分岐鎖、又は脂環式アルキル基からなる群から選択される)によって表されるビニルエステル;
(2B)約10モル%〜約40モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%の、それぞれ式:CH=CR−OR(式中、Rは、独立して、水素又はメチル基のいずれかであり、Rは、独立して、1〜12個の炭素原子を有する非置換の直鎖、分岐鎖、又は脂環式アルキル基からなる群から選択される)によって表されるビニルエーテル;並びに
(3)約3モル%〜約30モル%、より好ましくは約3モル%〜約20モル%、更により好ましくは約3モル%〜約10モル%の、式:CH=CR−O−R−OH(式中、Rは上記に規定した通りであり、好ましくは水素であり、Rは、C〜C12の非置換の直鎖、分岐鎖、又は脂環式アルキル基からなる群から選択される)によって表されるヒドロキシアルキルビニルエーテル;
によって表されるモノマーの共重合、好ましくは溶液共重合によって形成され、ここで、モル%はコポリマー形成工程におけるモノマーの全量を基準とする。
【0015】
[0016]好ましい態様においては、本発明の工程(b)によって形成されるフルオロポリマー被覆組成物は、約70重量%〜約90重量%、より好ましくは幾つかの態様においては約75重量%〜約85重量%の固形分含量を有し、同時に約450g/L〜約100g/L、より好ましくは約400g/L〜約200g/L、更により好ましくは約300g/L〜約200g/LのVOC含量を有する。
【0016】
[0017]本発明の好ましい態様によれば、コポリマー形成工程(b)(i)は、
(1)好ましくは約40モル%〜約60モル%、より好ましくは約45モル%〜約55モル%の量の、HFO−1234ze及び/又はHFO−1234yfから実質的に構成される1種類又は複数の第1のモノマー;
(2)(A)好ましくは約5モル%〜〜約45モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%の量の、式:CH=CR−O(C=O)(式中、xは1であり、Rは水素又はメチル基のいずれかであり、Rは、5〜12個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキル基からなる群から選択され、アルキル基は少なくとも1つの第3級又は第4級炭素原子を含む)によって表される1種類又は複数のビニルエステルモノマー;及び
(B)好ましくは約10モル%〜約40モル%、より好ましくは約5モル%〜約45モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%のビニルエーテルの量の、それぞれ式:CH=CR−OR(式中、Rは、独立して、水素又はメチル基のいずれかであり、Rは、独立して、1〜5個の炭素原子を有する置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキル基からなる群から選択される)によって表される1種類又は複数のビニルエーテルモノマー;を含む1種類又は複数の第2のモノマー;並びに
(3)約3モル%〜約60モル%のヒドロキシビニルエーテルモノマーの量、好ましくは約3モル%〜約30モル%、より好ましくは約3モル%〜約20モル%、更により好ましくは約3モル%〜約10モル%の量の、式:CH=C−R−OH(式中、RはC〜Cの置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキル基からなる群から選択される)によって表される1種類又は複数のヒドロキシル基含有ビニルエーテルモノマーから選択される1種類又は複数の第3のモノマー;
の共重合によって1種類以上のフルオロコポリマーを与えることを含み、ここで、モル%はコポリマー形成工程におけるモノマーの全量を基準とする。
【0017】
[0018]本明細書において用いるモル%の言及は、他に具体的に示していない限りにおいては、モノマーの全量を基準とする、本発明のフルオロコポリマーの形成において用いるモノマーのモル%である。
【0018】
[0019]本方法の幾つかの態様においては、本発明の工程(b)によって形成されるコポリマーは、Skoog, D.A. Principles of Instrumental Analysis, 6版; Thompson Brooks/Cole: Belmont, California, 2006, 28章(参照として本明細書中に包含する)に記載されている方法にしたがってゲル相クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、約5000〜約50000、より好ましくは約7000〜約15000の数平均分子量、及び約5000〜約30,000、より好ましくは約20,000〜約30,000の重量平均分子量を有する。
【0019】
[0020]幾つかの態様においては、工程(b)によって形成される被覆組成物は、約450g/L未満、より好ましくは約400g/L未満、更により好ましくは約300g/L未満のVOC含量を有する。
【0020】
[0021]本明細書において用いる「基材」という用語は、被覆する任意の装置又は物品、或いは装置又は物品の部品を指す。
[0022]本明細書において用いる「キャリア」という用語は、組成物のモノマー又はポリマー成分を溶媒和、分散、及び/又は乳化するように機能する組成物の成分を指すように意図される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0023]上記に記載したように、本発明の好ましい形態は、同時に基材上に有効で効率的な保護被覆を与えながら、減少したVOC放出を与える被覆方法を包含する。当業者が認識するように、基材に施される保護被覆の品質は、特定の用途に応じて商業的に成功する与えられた基材上の被覆を達成するために重要な種々の被覆特性によって測ることができる。これらの特性としては、(1)粘度、及び(2)色保持性が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの好ましい態様によれば、本方法にしたがって形成される被覆組成物は、(1)少なくとも約70重量%の固形分濃度;(2)示差粘度計を用いてポリマーの溶液粘度を測定するためのASTM標準試験法:D5225−14によって測定して25℃において約1700以下の粘度、及びそれぞれASTM−D7251,QUV−Aによって測定し、当初の色と比較して測定して2.0以下、より好ましくは約1.5以下、更により好ましくは約1.2以下の約1000時間後の色変化;並びに約450g/L以下、より好ましくは約400g/L以下、更により好ましくは約350g/L以下のVOC含量を示す。上述したように、かかる方法を達成する能力は、部分的に本発明のフルオロポリマー及び被覆組成物を形成するために用いる種々の成分のタイプ及び量の慎重な選択によって与えられる。
【0022】
モノマー:
ヒドロフルオロオレフィン:
[0024]本発明方法によるヒドロフルオロオレフィンモノマーとしては、幾つかの好ましい態様においては、ヒドロフルオロエチレンモノマー、即ち式:CX=CX(式中、X、X、X、及びXは、それぞれ独立してH又はF又はCl原子から選択されるが、これらの少なくとも1つは水素原子である)を有する化合物を挙げることができる。ヒドロフルオロエチレンモノマーの例としては、中でも、
CH=CHF;
CHF=CHF;
CH=CF;及び
CHF=CF
が挙げられる。
【0023】
[0025]本発明方法の幾つかの好ましい形態によるヒドロフルオロオレフィンモノマーとしては、式:CX=CXCX10(式中、X、X、X、X、X、及びX10は、独立してH又はF又はCl原子から選択されるが、これらの少なくとも1つは水素原子である)を有するヒドロフルオロプロペンが挙げられ、好ましくはこれから実質的に構成され、又はこれから構成される。ヒドロフルオロプロペンモノマーの例としては、中でも、
CH=CFCF(HFO−1234yf);
CHF=CHCF(HFO−1234ze);
CHCl=CFCF;及び
CH=CHCF
が挙げられる。
【0024】
好ましい態様においては、ヒドロフルオロオレフィンは、HFO−1234yf及び/又はHFO−1234zeを含むか、これらから実質的に構成されるか、又はこれらから構成される。
【0025】
[0026]本発明方法の幾つかの好ましい形態によるヒドロフルオロオレフィンモノマーとしては、次式:CX1112=CX13CX1415CX161718(式中、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、及びX18は、独立してH又はF又はCl原子から選択されるが、これらの少なくとも1つは水素原子である)にしたがうヒドロフルオロブテンが挙げられる。ヒドロフルオロブテンの例としては、中でもCFCH=CHCFが挙げられる。
【0026】
ビニルエステル:
[0027]本発明によるコポリマーは、好ましくはまた、好ましくは約5モル%〜約45モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%の量のビニルエステルモノマー単位から形成される。好ましい態様においては、1種類又は複数のビニルエステルモノマーは、式:CH=CR−O(C=O)(式中、xは1であり、Rは水素又はメチル基のいずれかであり、Rは、5〜12個の炭素原子を有し、より好ましくは5〜10個の炭素原子、更により好ましくは8〜10個の炭素原子を有する、置換又は非置換、好ましくは非置換の、直鎖又は分岐鎖、好ましくは分岐鎖のアルキル基からなる群から選択される)によって表される。好ましい態様においては、アルキル基は少なくとも1つの第3級又は第4級炭素原子を含む。非常に好ましい態様においては、ビニルエステルは、次式:
【0027】
【化1】
【0028】
(式中、R及びRのそれぞれは、合計で5〜約8個、より好ましくは6〜7個の炭素原子を含むアルキル基、好ましくは分岐アルキル基である)
にしたがう、少なくとも1つの第4級炭素を含む化合物である。
【0029】
[0028]幾つかの好ましい態様にしたがって好ましいビニルエステルモノマーの例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、カプロン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、VEOVA-9(Momentiveによって製造されているCカルボン酸から形成されるバーサチック酸ビニルエステル)、VEOVA-10(Momentiveによって製造されているC10カルボン酸から形成されるバーサチック酸ビニルエステル)、及びシクロヘキサンカルボン酸ビニルが挙げられる。VEOVA-9及びVEOVA-10のそれぞれは、上記の式Aにしたがって少なくとも1つの第4級炭素を含む。好ましい態様によれば、ビニルエステルは、好ましくは上記の式Aにしたがう少なくとも1つの第4級炭素を有する、分子中に11〜12個の炭素原子を有するバーサチック酸ビニルエステルを含む。
【0030】
ビニルエーテル:
[0029]本発明によるコポリマーは、好ましくはまた、好ましくは約5モル%〜約45モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%の量のビニルエーテルモノマー単位から形成される。好ましい態様においては、1種類又は複数のビニルエステルモノマーは、式:CH=CR−OR(式中、Rは、独立して水素又はメチル基のいずれかであり、Rは、1〜5個の炭素原子、より好ましくは1〜3個の炭素原子を有する、置換又は非置換、好ましくは非置換で、直鎖又は分岐鎖、好ましくは直鎖のアルキル基からなる群から選択される)によって表される。幾つかの好ましい態様にしたがって好ましいビニルエーテルモノマーの例としては、メチルビニルエーテル、エチル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、及びラウリルビニルエーテルのようなアルキルビニルエーテルが挙げられる。また、脂環式基を含むビニルエーテル、例えばシクロブチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、及びシクロヘキシルビニルエーテルを用いることもできる。好ましい態様によれば、ビニルエーテルは、エチルビニルエーテルを含むか、これから実質的に構成されるか、又はこれから構成される。
【0031】
[0030]好ましくは、ビニルエーテル及びビニルエステルモノマーが両方とも存在する態様においては、ビニルエーテル及びビニルエステルモノマーの量は、合計で全モノマーの約25モル%〜約45モル%を構成する。
【0032】
ヒドロキシビニルエーテル:
[0031]本発明によるコポリマーは、好ましくはまた、好ましくは約3モル%〜約60モル%のヒドロキシビニルエーテルモノマーの量、好ましくは約3モル%〜約30モル%、より好ましくは約3モル%〜約20モル%、更により好ましくは約3モル%〜約10モル%の量のヒドロキシビニルエーテルモノマー単位から形成される。好ましい態様においては、1種類又は複数のヒドロキシルビニルエーテルモノマーは、式:CH=CR−O−R−OH(式中、Rは上記に規定した通りであり、好ましくは水素であり、RはC〜Cの置換又は非置換、好ましくは非置換で、直鎖又は分岐鎖、好ましくは直鎖のアルキル基からなる群から選択される)によって表される。好ましいヒドロキシアルキルビニルエーテルモノマーの例としては、ヒドロキシル−エチルビニルエーテル、ビドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル、及びヒドロキシヘキシルビニルエーテルが挙げられる。幾つかの態様においては、コポリマーは、モノマーの全重量を基準として約5モル%〜約20モル%のヒドロキシアルキルビニルエーテルモノマーから形成される。
【0033】
[0032]好ましい態様においては、フルオロコポリマー形成工程(b)(i)にしたがうコモノマーは、
(1)好ましくは約40モル%〜約60モル%、更により好ましくは約45モル%〜約55モル%、更により好ましくは約50モル%の量のHFO−1234zeから実質的に構成される第1のモノマー;
(2)(A)式:CH=CR−O(C=O)(式中、xは1であり、Rは水素又はメチル基のいずれか、好ましくは水素であり、Rは6〜8個の炭素原子を有する非置換の分岐鎖アルキル基であり、かかるアルキル基は好ましくは少なくとも1つの第3級又は第4級炭素原子を含む)によって表されるビニルエステルモノマー(ビニルエステルモノマーは、約5モル%〜約45モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%の量で存在する);及び
(B)それぞれ式:CH=CR−OR(式中、Rは、独立して水素又はメチル基のいずれか、好ましくは水素であり、Rは、1〜3個の炭素原子、好ましくは2個の炭素原子を有する、置換又は非置換で直鎖又は分岐鎖、好ましくは直鎖のアルキル基からなる群から選択される)によって表される1種類又は複数のビニルエーテルモノマー(1種類又は複数のビニルエーテルモノマーは、好ましくは、約10モル%〜約40モル%、より好ましくは約5モル%〜約45モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%の量で存在する);を含む1種類又は複数の第2のモノマー;並びに
(3)式:CH=CR−O−R−OH(式中、Rはメチル又は水素、好ましくは水素であり、Rは、C〜C、好ましくはCの非置換直鎖アルキル基からなる群から選択される)によって表されるヒドロキシアルキルビニルエーテルから構成される1種類又は複数の第3のモノマー(第3のモノマーの量は、好ましくは約3モル%〜約30モル%の量で存在する);
を含み、好ましくはこれらから実質的に構成される。
【0034】
コポリマー形成方法:
[0033]ここに含まれる教示事項に基づけば、種々の技術を用いて本発明のコポリマーを形成してここに記載する好ましい特徴を達成することができ、全てのかかる技術は本発明の広い範囲内に存することが当業者に認識されるであろう。
【0035】
[0034]好ましい態様においては、フルオロコポリマーは、好ましくは形成中及び/又は形成後にモノマー/ポリマーのためのキャリアを用いる重合システムにおいて製造される。1つの好ましい態様によれば、キャリアはモノマー及び/又はポリマーのための溶媒及び/又は分散剤として作用し、かかる操作としては、分散、乳化、及び溶液重合が挙げられる。かかるシステムにおけるキャリア、例えば好ましくは溶液重合のための溶媒の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、及び酢酸ブチルのようなエステル;アセトン、メチルエチルアセトン、及びシクロヘキサノンのようなケトン;ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、及びミネラルスピリットのような脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、及び溶剤ナフサのような芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、tert−ブタノール、イソプロパノール、エチレングリコールモノアルキルエーテルのようなアルコール;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、及びジオキサンのような環式エーテル;HCFC−225及びHCFC−141bのようなフッ素化溶剤;ジメチルスルホキシド;及びこれらの混合物が挙げられる。
【0036】
[0035]本発明の重合プロセスにおいて用いる温度条件は関係する特定の装置及び用途にしたがって変化させることができ、全てのかかる温度は本発明の範囲内に存すると意図される。好ましくは、重合は、重合開始源及び重合媒体のタイプのようなファクターに応じて、約30℃〜約150℃、より好ましくは約40℃〜約100℃、更により好ましくは約50℃〜約70℃の範囲の温度で行う。
【0037】
[0036]幾つかの好ましい態様においては、溶液重合は、共重合プロセスにおいて用いる溶媒の全量が、溶液中の溶媒及びモノマーの重量を基準として約10重量%〜約40重量%、より好ましくは約10重量%〜約30重量%の量、より好ましくは幾つかの態様においては約15%〜約25%の量である条件下で行う。幾つかのかかる態様においては、溶液共重合プロセスにおいて用いる溶媒は、C〜Cアルキルアセテート、更により好ましくは酢酸ブチルを含み、好ましくはこれから実質的に構成され、より好ましくは幾つかの態様においてはこれから構成される。
【0038】
[0037]好ましい態様においては、ここに記載する好ましい方法にしたがって形成されるコポリマーは、Skoog, D.A. Principles of Instrumental Analysis, 6版; Thompson Brooks/Cole: Belmont, California, 2006, 28章(参照として本明細書中に包含する)に記載されている方法にしたがってゲル相クロマトグラフィー(GPC)によって測定して5000〜50000、又は幾つかの態様においては5000〜10000の数平均分子量を有するコポリマーを達成するのに有効な条件下で、これらのモノマーを共重合することによって製造される。幾つかの態様においては、コポリマーは、約10000より大きく、更により好ましくは10,000〜約14,000の数平均分子量を有する。幾つかの好ましい態様によれば、コポリマーは、2〜10、より好ましくは2.5〜8、最も好ましくは3〜6の分子量分布を有する。本出願人らは、幾つかの態様においては、5000未満の分子量を有するコポリマーを用いると、幾つかの用途のために望ましいものよりも低い保護被覆の耐候性及び耐化学薬品性が与えられ、ポリマーが50000より大きい分子量を有する場合には、被覆組成物の延展又は被覆特性、及びしたがって被覆操作における困難性に悪影響を与える可能性がある粘度を有する被覆組成物が与えられることを見出した。
【0039】
[0038]好ましい態様においては、フルオロコポリマー被覆組成物の形成は、
(i)(1)好ましくは約40モル%〜約60モル%、更により好ましくは約45モル%〜約55モル%、更により好ましくは約50モル%の量の、HFO−1234zeから実質的に構成される第1のモノマー;
(2)(A)式:CH=CR−O(C=O)(式中、xは1であり、Rは水素又はメチル基のいずれか、好ましくは水素であり、Rは6〜8個の炭素原子を有する非置換の分岐鎖アルキル基であり、かかるアルキル基は好ましくは少なくとも1つの第3級又は第4級炭素原子を含む)によって表されるビニルエステルモノマー(ビニルエステルモノマーは、約5モル%〜約45モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%の量で存在する);及び
(B)式:CH=CR−OR(式中、Rは、水素又はメチル基のいずれか、好ましくは水素であり、Rは、1〜3個の炭素原子、好ましくは2個の炭素原子を有する、置換又は非置換で直鎖又は分岐鎖、好ましくは直鎖のアルキル基からなる群から選択される)によって表される1種類又は複数のビニルエーテルモノマー(1種類又は複数のビニルエーテルモノマーは、好ましくは、約10モル%〜約40モル%、より好ましくは約5モル%〜約45モル%、より好ましくは約10モル%〜約30モル%、更により好ましくは約10モル%〜約20モル%の量で存在する);を含む1種類又は複数の第2のモノマー;並びに
(3)式:CH=CR−O−R−OH(式中、Rはメチル又は水素、好ましくは水素であり、Rは、C〜C、好ましくはCの非置換直鎖アルキル基からなる群から選択される)によって表されるヒドロキシアルキルビニルエーテルから構成される1種類又は複数の第3のモノマー(第3のモノマーの量は、好ましくは約3モル%〜約30モル%である);
の共重合によって1種類以上のフルオロコポリマーを与え;そして
(ii)1種類以上のVOC化合物を含み、好ましくはキシレン及びトルエンのような芳香族炭化水素;n−ブタノールのようなアルコール;酢酸ブチルのようなエステル;メチルイソブチルケトンのようなケトン、及びエチルセロソルブのようなグリコールエーテルから選択され(C〜Cアルキルアセテートが好ましい)、更により好ましくは酢酸ブチルを含むか、これから実質的に構成されるか、又はこれから構成される、1種類以上のフルオロコポリマーのためのキャリアを与え;そして
(iii)1種類以上のフルオロコポリマーをキャリアと混合して、約30重量%以下のキャリアを含み、好ましくは少なくとも約70重量%の固形分含量を有するポリマー組成物を生成させる;
ことを含み、好ましくはこれから実質的に構成される。好ましい態様によれば、本発明のフルオロコポリマー組成物、特に従前のセンテンスで記載したようにして形成されるフルオロコポリマーは、Skoog, D.A. Principles of Instrumental Analysis, 6版; Thompson Brooks/Cole: Belmont, California, 2006, 28章(参照として本明細書中に包含する)に記載されている方法にしたがってゲル相クロマトグラフィー(GPC)によって測定して約5000〜50000、より好ましくは約7000〜約15000のポリマー数平均分子量を有し、約70重量%〜約90重量%、更により好ましくは約70重量%〜約85重量%の固形分含量、及び好ましくは約400g/L未満、より好ましくは約400g/L〜約100g/L、更により好ましくは約350g/L〜約200g/LのVOC含量を有する。また、概して本出願において、特にこの段落において記載されている態様においては、本発明の被覆組成物は、好ましくは必要に応じてASTM−D1200−10(2014)又はASTM−D2196にしたがって測定して、12毎分回転数(r/m)、30r/m、及び60r/mの少なくとも1つにおいて、好ましくは3つの速度全部においてFord Cupによって測定して約1900mPa・秒未満、より好ましくは約1800mPa・秒未満、更により好ましくは約1700mPa・秒未満の25℃における粘度を有する。
【0040】
被覆組成物形成方法:
[0039]ここに記載する手順にしたがって形成されるコポリマーは、次に、上記に記載した実質的な有利性を有する種々の被覆組成物を形成するために用いることができる。例えば、ここに記載するようにして形成される本発明のフルオロコポリマーに溶媒を加えることによって溶液タイプの塗料又は被覆剤を製造するために、種々の溶媒を用いることができる。幾つかの態様においては、被覆組成物を形成するために好ましい溶媒としては、キシレン及びトルエンのような芳香族炭化水素;n−ブタノールのようなアルコール;酢酸ブチルのようなエステル;メチルイソブチルケトンのようなケトン;及びエチルセロソルブのようなグリコールエーテル、並びに種々の商業的なシンナーが挙げられる。
【0041】
[0040]幾つかの態様においては、本発明の被覆組成物は、被覆組成物の全重量を基準として約70重量%〜約90重量%の固形分含量、より好ましくは幾つかの態様においては約75重量%〜約85重量%の固形分を有する。幾つかの好ましい態様においては、固形物は、本発明のコポリマー、及び/又は本発明のコポリマーを用いて形成される架橋コポリマーを含み、好ましくはこれらから実質的に構成される。
【実施例】
【0042】
[0041]以下の非限定的な実施例によって本発明を更に示す。
実施例1:フルオロポリマーの製造:
[0042]スターラーを装備した5500mLのステンレススチールオートクレーブ中に下表1Aに示す成分を充填することによって、溶液重合運転を行った。
【0043】
【表1-1】
【0044】
[0043]キャリア/溶媒として1780gの酢酸ブチル、259gのエチルビニルエーテルモノマー、708gのビニルエステルモノマー(VEOVA-10)、325gのヒドロキシブチルビニルエーテル、及び6.7gの重合反応のための開始剤、即ちtert−ブチルペルオキシピバレートを加えた。液体窒素を用いて混合物を凝固させ、脱気して溶解空気を除去した。次に、1150gの1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)をオートクレーブ内の混合物に加え、次に混合物を約57℃に徐々に加熱した。次に、混合物を約18時間撹拌して、モノマーの溶液共重合を行った。オートクレーブを室温に冷却した後、未反応のモノマーをパージし、次にオートクレーブを開放し、オートクレーブ内において約70重量%の固形分含量(コポリマー含量)を達成するのに十分な過剰の溶媒を除去するのに十分な時間、真空をオートクレーブに加えた。最終的なフルオロコポリマー(溶媒なし)を試験したところ、約10951の数平均分子量(Mn)及び約23263の重量平均分子量(Mw)、並びに2.12のMw/Mnを有することが分かった。得られたコポリマーと溶媒の混合物は、約70%の固形分、即ちコポリマーの含量、及び約400g/LのVOC含量を有する明澄な溶液の形態であった。
【0045】
[0044]次に、上記に記載の操作から得られた溶媒/ポリマーを、下表1Bに規定するそれぞれの材料に重量基準で1:1で加えたところ、室温において明澄な溶液が形成されることが分かった。
【0046】
【表1-2】
【0047】
上記に報告した結果は、本発明によるフルオロコポリマーは、保護被覆のための配合物の本質的部分において用いることができるか、又はそれを形成することができる多くの材料と溶液を形成することができ、したがって、本フルオロコポリマーは、例えばかかる被覆組成物における追加のキャリアとして用いることができる広範囲の材料と組み合わせて保護被覆を形成する際に優れた有用性を有することを示している。
【0048】
実施例2:被覆組成物及び被覆特性:
[0045]実施例1のオートクレーブから取り出された30/70の溶媒/フルオロコポリマー混合物60重量部を、40重量部の酸化チタンとブレンドすることによって、白色ペーストの形態の被覆組成物を形成した。混合物をペイントシェーカーによって1時間混合した。
【0049】
[0046]上記で形成された白色ペースト40重量部と、実施例1のオートクレーブから取り出された30/70の溶媒/フルオロコポリマー混合物60重量部とをブレンドすることによって、白色塗料の形態の被覆組成物を形成した。混合物をペイントシェーカーによって1時間混合した。
【0050】
[0047]固形分含量、VOC含量、及び粘度を測定し、結果を下表2Aにおいて示す。
【0051】
【表2-1】
【0052】
[0048]上記に報告した結果から分かるように、次の非常の望ましい特性:(1)76重量%の高いコポリマー(固形分)含量;(2)340g/Lの低いVOC含量;及び(3)例えば噴霧、ブラシ塗布、ロール塗布、及び浸漬のような多くの被覆用途のために有効で効率的な粘度;の組合せを同時に有する被覆配合物が達成された。
【0053】
[0049]次に、約8〜約10重量部のDesmoudur N3390のような硬化剤を、高速分散機において、約100重量部の上記に記載した白色塗料と1500RPMにおいて30分間混合して、硬化性の保護被覆組成物を形成した。
【0054】
[0050]硬化性の保護被覆組成物を、ASTM−D7251,QUV−Aにしたがって色保持性に関して試験し、結果を下表2Bに示す。
【0055】
【表2-2】
【0056】
[0051]この結果は、1000時間のQUV試験の後、実施例1からのフルオロコポリマー及び実施例2の被覆組成物をベースとする硬化被覆は、優れた色保持性能を有し、約1.2以下の色抜けしか示さなかったことを示した。
【0057】
比較例1:比較被覆組成物:
[0052]実施例1によって形成されたフルオロコポリマー/溶媒混合物に代えて、Shanghai 3F New Materials Company LTDからZHM-2の商品名で商業的に入手できるクロロトリフルオロエチレンとビニルエーテルのフルオロコポリマーを用いた他は、実施例2と同じ手順を用いて白色ペースト及び白色塗料を配合した。ZHM-2は60重量%の固形分含量を有しており、白色塗料被覆組成物は、実施例2において例示された本発明の白色塗料被覆配合物よりも相当に高い66.7重量%の固形分含量及び420g/LのVOC含量を有していた。この配合物は、12毎分回転数(r/m)及び30r/mにおいてそれぞれ3560及び3525mPa・秒の25℃における粘度を有しており、これは本発明の組成物を用いて得られたものよりも相当に且つ望ましくなく高かった。60r/mにおける粘度に関して試験すると、被覆粘度は試験することができる点を超えて上昇した。かくして製造された硬化性保護被覆組成物を、上記の実施例と同じASTM−D7251,QUV−Aにしたがって色保持性に関して試験し、結果は下表C1に示す通りであった。
【0058】
【表3-1】
【0059】
[0053]上記から分かるように、ZHM-2を用いて製造した保護被覆は、各試験時間の後に相当により低い色変化をもたらし、1128時間後において、本発明にしたがって形成した被覆よりも相対的基準で約400%悪かった。
【0060】
比較例2:比較被覆組成物:
[0054]実施例1によって形成されたフルオロコポリマー/溶媒混合物に代えて、日本企業のDaikinからGK-570として商業的に入手できるクロロトリフルオロエチレンとビニルエーテル/エステルのフルオロコポリマーを用いた他は、実施例2と同じ手順を用いて白色ペースト及び白色塗料を配合した。GK-570は65重量%の固形分含量を有しており、それから製造した白色塗料被覆組成物は、実施例2において例示された本発明の白色塗料被覆配合物よりも相当に高い71.9重量%の固形分含量及び380g/LのVOC含量を有していた。この配合物は、12毎分回転数(r/m)、30r/m、及び60r/mにおいてそれぞれ1960、1950、及び1935mPa・秒の25℃における粘度を有しており、これは本発明の組成物を用いて得られたものよりも相当に且つ望ましくなく高かった。かくして製造された硬化性保護被覆組成物を、ASTM−D7251,QUV−Aにしたがって色保持性に関して試験し、結果は下表C3に示す通りであった。
【0061】
【表3-2】
【0062】
比較例3:高VOCの被覆基準操作:
[0055]100リットルの比較例2の白色塗料被覆組成物を用い、それぞれの部品上への所望の被覆率を得るために部品あたり1リットルの被覆組成物を用いて、建築物の建設において用いるための100個の金属部品のそれぞれを噴霧被覆することによって、金属基材上へ保護被覆を与えることを含む操作を行った。噴霧操作は屋外環境で行い、そこでは噴霧被覆操作中に蒸発した溶媒が地球の大気中に放出された。全ての部品を噴霧被覆した後、約42,000グラムのVOCのVOCの基準放出量が生じた。
【0063】
実施例3:減少したVOCの被覆操作:
[0056]被覆組成物を、実施例2にしたがう本発明の被覆組成物で置き換えた他は、比較例3にしたがって行った操作を繰り返した。100リットルの実施例2の白色塗料被覆組成物を用い、それぞれの部品上への所望の被覆率を得るために部品あたり1リットルの被覆組成物を用いて、建築物の建設において用いるための100個の金属部品のそれぞれを噴霧被覆した。噴霧操作は屋外環境で行い、そこでは噴霧被覆操作中に蒸発した溶媒が地球の大気中に放出された。全ての部品を噴霧被覆した後、約34,000グラムのVOCが大気中に放出され、これは操作の結果として放出されたVOCの量において8,000グラムの減少を構成した。更に、比較例3の被覆組成物と比べてより低い被覆組成物の粘度のために、操作は相当により短い時間及び/又はより低いコストで完了し、部品上の被覆は、少なくとも色保持性において比較例3の被覆よりも相当に優れていた。
【0064】
実施例4:減少したVOCの被覆操作に関するVOC税の控除又は他の法的利益の獲得:
[0057]比較例3にしたがって行った基準操作を記録し、操作を行った管轄区域における減少したVOC操作に関する利益を与えるVOC税又は他の法律若しくは規制にしたがう適当な文書を作成する。実施例3の減少したVOCの操作は、高VOCの基準操作に代えて行うか、又は行うことを意図しており、控除又は他の利益に関する責務を有する管轄機関に対して、控除又は他の利益を受け取る要求を行う。要求が処理されると、控除又は他の利益が受けられる。
【0065】
[0058]本明細書において用いる単数形の「a」、「an」、及び「the」は、記載が他に明確に示していない限りにおいて、複数のものを包含する。更に、量、濃度、又は他の値若しくはパラメーターを、範囲、好ましい範囲、又はより高い好ましい値とより低い好ましい値のリストのいずれかとして与える場合には、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意のより高い範囲限界又は好ましい値と、任意のより低い範囲限界又は好ましい値の任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解すべきである。明細書において数値の範囲が示されている場合には、他に示されていない限りにおいて、この範囲はその端点並びにこの範囲内の全ての整数及び小数を含むと意図される。本発明の範囲を、範囲を規定する際に示される具体的な値に限定することは意図しない。
【0066】
[0059]本発明の任意の特定の形態及び/又は態様に関して本明細書に記載する任意の特徴を、組合せの適合性を確保するために適当な場合には修正を行って、本明細書に記載する本発明の任意の他の形態及び/又は態様の任意の他の特徴の1以上と組み合わせることができることは、本発明が関連する技術の当業者によって認められる。かかる組合せは、本開示によって意図される本発明の一部であるとみなされる。
【0067】
[0060]上記の一般的な記載及び以下の詳細な記載は両方とも例示及び説明のみのものであり、特許請求されている発明を限定するものではないことを理解すべきである。他の態様は、本明細書及びそこに開示する発明の実施を考慮することによって当業者に明らかになるであろう。
【0068】
[0061]上記から、例示の目的のために具体的な例をここに記載したが、本発明の精神又は範囲から逸脱することなく種々の修正を行うことができることが認識されるであろう。したがって、上記の詳細な記載は限定ではなく例示とみなされ、特許請求する主題を特に指摘し明確に主張することを意図するものは、特許請求の範囲(全ての均等物を包含する)であると理解されると意図される。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
(a)揮発性有機化合物(VOC)を含むキャリアを含むタイプの被覆組成物で被覆する基材を与え;
(b)(i)(1)ヒドロフルオロエチレン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、ヒドロフルオロペンテン、及びこれらの組合せからなる群から選択される第1のモノマー、(2)1種類又は複数のビニルエステルを含む第2のモノマー、及び(3)1種類又は複数のビニルエーテルを含む第3のモノマー(ここで、ビニルエーテルモノマーの少なくとも一部はヒドロキシル基含有ビニルエーテルである)の共重合によって1種類以上のフルオロコポリマーを与え;そして
(ii)1種類以上のフルオロコポリマーのためのVOC化合物を含むキャリアを与え、ここでキャリアは揮発性有機化合物(VOC)を含み;そして
(iii)1種類以上のフルオロコポリマーをキャリアと混合して、フルオロコポリマーが被覆組成物の少なくとも約70重量%を構成し、キャリアのVOCが被覆組成物の約30重量%以下であるようにして、ここでフルオロコポリマーは約10,000〜約14,000の数平均分子量を有する;
ことを含む工程によって形成される被覆組成物を与え;
(c)工程(b)の被覆組成物で基材を被覆し;そして
(d)キャリア中のVOCの少なくとも相当部分を大気中に蒸発させることによって、基材上に配され且つ基材に接着している保護ポリマー層を形成して、それによって保護被覆を形成する;
ことを含む、大気中へVOCを流出させるタイプの被覆操作中において、地球の大気中への揮発性有機化合物(VOC)の放出を減少させる方法。
[2]
工程(b)によって形成されるフルオロポリマー被覆組成物が約70重量%〜約90重量%の固形分含量を有する、[1]に記載の方法。
[3]
工程(b)によって形成されるフルオロポリマー被覆組成物が約75重量%〜約85重量%の固形分含量を有する、[1]に記載の方法。
[4]
工程(b)によって形成されるフルオロポリマー被覆組成物が約400g/L未満のVOC含量を有する、[3]に記載の方法。
[5]
工程(b)によって形成されるフルオロポリマー被覆組成物が約400g/L〜200g/LのVOC含量を有する、[3]に記載の方法。
[6]
第1のモノマーが、1,3,3,3−テトラフルオロオレフィン(HFO−1234ze)、2,3,3,3−テトラフルオロオレフィン(HFO−1234yf)、及びこれらの組合せからなる群から選択される、[4]に記載の方法。
[7]
工程(b)のフルオロコポリマーが、工程(b)のモノマー(1)、(2)、及び(3)の溶液共重合によって形成される、[6]に記載の方法。
[8]
工程(b)のフルオロコポリマーが、共重合プロセスにおいて用いるキャリアの量が約10重量%〜約40重量%である溶液共重合によって形成される、[6]に記載の方法。
[9]
工程(b)のフルオロコポリマーが、共重合プロセスにおいて用いるキャリアの量が約15重量%〜約25重量%である溶液共重合によって形成される、[6]に記載の方法。
[10]
キャリアがC〜Cアルキルアセテートを含む、[6]に記載の方法。
[11]
基材を被覆する工程を屋外の現場で行う、[1]に記載の方法。
[12]
基材上に保護ポリマー層を形成する工程をかかる屋外の現場で行う、[11]に記載の方法。
[13]
(a)揮発性有機化合物(VOC)を含むキャリアを含むタイプの被覆組成物で被覆する基材を与え;
(b)(i)(1)約45モル%〜約55モル%のHFO−1234ze、
(2A)約10モル%〜約20モル%の、式:CH=CR−O(C=O)(式中、xは1であり、Rは水素であり、Rは6〜8個の炭素原子を有する非置換の分岐鎖アルキル基であり、かかるアルキル基は少なくとも1つの第3級又は1つの第4級炭素原子を含む)によって表されるビニルエステル、
(2B)約10モル%〜約20モル%の、式:CH=CR−OR(式中、Rは水素であり、Rは1〜3個の炭素原子を有する非置換の直鎖アルキル基である)によって表されるビニルエーテル、及び
(3)約3モル%〜約30モル%の、式:CH=CR−O−R−OH(式中、Rは水素であり、RはC〜Cの非置換直鎖アルキル基である)によって表されるヒドロキシアルキルビニルエーテル、
から実質的に構成されるモノマーの共重合によって1種類以上のフルオロコポリマー(ここで、1種類又は複数のフルオロコポリマーは約10,000〜約14,000の数平均分子量を有する)を与え;そして
(ii)1種類以上のフルオロコポリマーのためのキャリアを与え、ここでキャリアは揮発性有機化合物(VOC)を含み;そして
(iii)1種類以上のフルオロコポリマーをキャリアと混合して、少なくとも約70重量%の1種類又は複数のフルオロコポリマー、及び約30重量%以下のキャリアを含む被覆組成物を形成する;
ことを含む工程によって形成される被覆組成物を与え;
(c)工程(b)の被覆組成物で基材を被覆し;そして
(d)キャリア中のVOCの少なくとも相当部分を大気中に蒸発させることによって、基材上に配され且つ基材に接着している保護ポリマー層を形成して、それによって保護被覆を形成する;
ことを含む、大気中へVOCを流出させるタイプの被覆操作中において、地球の大気中への揮発性有機化合物(VOC)の放出を減少させる方法。
[14]
キャリアがアルキルアセテートを含む、[13]に記載の方法。
[15]
キャリアが酢酸ブチルを含む、[13]に記載の方法。
[16]
被覆組成物が、約400g/L未満のVOC含量、及び12毎分回転数(r/m)、30r/m、及び60r/mの少なくとも1つにおいてFord Cupによって測定して約1900mPa・秒未満の粘度を有する、[13]に記載の方法。
[17]
被覆組成物が、約400g/L未満のVOC含量、及び12毎分回転数(r/m)、30r/m、及び60r/mの少なくともそれぞれにおいてFord Cupによって測定して約1900mPa・秒未満の粘度を有する、[13]に記載の方法。
[18]
がC〜Cの非置換直鎖アルキル基である、[13]に記載の方法。
[19]
が2個の炭素原子を有する非置換直鎖アルキル基である、[18]に記載の方法。
[20]
(i)(1)約45モル%〜約55モル%のHFO−1234ze、
(2A)約10モル%〜約20モル%の、式:CH=CR−O(C=O)(式中、xは1であり、Rは水素であり、Rは6〜8個の炭素原子を有する非置換の分岐鎖アルキル基であり、かかるアルキル基は少なくとも1つの第3級又は1つの第4級炭素原子を含む)によって表されるビニルエステル、
(2B)約10モル%〜約20モル%の、式:CH=CR−OR(式中、Rは水素であり、Rは1〜3個の炭素原子を有する非置換の直鎖アルキル基である)によって表されるビニルエーテル、及び
(3)約3モル%〜約30モル%の、式:CH=CR−O−R−OH(式中、Rは水素であり、RはC〜Cの非置換直鎖アルキル基である)によって表されるヒドロキシアルキルビニルエーテル、
から実質的に構成されるモノマーの共重合によって形成される1種類以上のフルオロコポリマー(ここで1種類又は複数のフルオロコポリマーは約10,000〜約14,000の数平均分子量を有する);及び
(ii)揮発性有機化合物(VOC)を含む、1種類以上のフルオロコポリマーのためのキャリア;
を含み;
被覆組成物は、(a)少なくとも約70重量%の1種類又は複数のフルオロコポリマー;(b)約30重量%以下のキャリア;を含み、(c)約400g/L未満のVOC含量;及び、(d)12毎分回転数(r/m)、30r/m、及び60r/mの少なくとも1つにおいてFord Cupによって測定して約1900mPa・秒未満の粘度;を有する被覆組成物。
[21]
(a)既存の被覆組成物で基材を被覆することを含む既存の操作からのVOCの基準放出量を定め;
(b)(i)(1)ヒドロフルオロエチレン、ヒドロフルオロプロペン、ヒドロフルオロブテン、ヒドロフルオロペンテン、及びこれらの組合せからなる群から選択される第1のモノマー、(2)1種類又は複数のビニルエステルを含む第2のモノマー、及び(3)1種類又は複数のビニルエーテルを含む第3のモノマー(ここで、ビニルエーテルモノマーの少なくとも一部はヒドロキシル基含有ビニルエーテルである)の共重合によって1種類以上のフルオロコポリマーを与え;
(ii)1種類以上のフルオロコポリマーのためのVOC化合物を含むキャリアを与え、ここでキャリアは揮発性有機化合物(VOC)を含み;そして
(iii)1種類以上のフルオロコポリマーをキャリアと混合して、フルオロコポリマーが被覆組成物の少なくとも約70重量%を構成し、キャリアのVOCが被覆組成物の約30重量%以下であるようにする;
ことを含む工程によって形成される減少したVOCの被覆組成物を与え;
(c)工程(b)の減少したVOCの被覆組成物で基材を被覆し;そして
(d)キャリア中のVOCの少なくとも相当部分を大気中に蒸発させることによって、基材上に配され且つ基材に接着している保護ポリマー層を形成して、それによって保護被覆を形成し、それによって減少したVOCの被覆組成物を用いて放出されるVOCをVOCの基準放出量と比べて減少させ;そして
(e)被覆操作から放出されるVOCの減少に少なくとも部分的に基づいて税金控除又は他の法的利益の要求を適当な政府機関に提出する;
ことを含む、地球の大気中へVOCを流出させるタイプの基準被覆操作と比べて地球の大気中への揮発性有機化合物(VOC)の放出を減少させる結果として、VOC税の控除又は他の法的利益を得る方法。