(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706286
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの改良された合成方法
(51)【国際特許分類】
C08F 214/20 20060101AFI20200525BHJP
C08F 2/22 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
C08F214/20
C08F2/22
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-109466(P2018-109466)
(22)【出願日】2018年6月7日
(62)【分割の表示】特願2015-549468(P2015-549468)の分割
【原出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2018-154847(P2018-154847A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2018年7月6日
(31)【優先権主張番号】61/745,172
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/099,602
(32)【優先日】2013年12月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】ルゥ,チャーンチーン
(72)【発明者】
【氏名】ポス,アンドリュー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ラジヴ・アール
(72)【発明者】
【氏名】ナレワジェク,デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】キャントロン,シェリル
【審査官】
小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−501965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 214/20
C08F 2/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの合成方法であって、
当該コポリマーのモノマーモル比が、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデン=80/20〜99/1モル%であり、
水溶性ラジカル開始剤の存在下で前記モノマーを水性乳化共重合して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーを形成する工程を含み、
前記共重合を55〜70℃で行い、かつ
前記水溶性ラジカル開始剤は、前記共重合に複数回添加され、かつ
前記水溶性ラジカル開始剤は、前記共重合において2つの異なる共重合温度において添加される、合成方法。
【請求項2】
前記モノマーが、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびフッ化ビニリデンである、請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
前記ラジカル開始剤が、共重合における全モノマー重量に対して、1重量%未満の濃度で存在する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーにおける2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンのモノマー単位の比が、80/20〜99/1モル%である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記水溶性ラジカル開始剤が、Na2S2O8、K2S2O8、(NH4)2S2O8、Fe2(S2O8)3、K2S2O8/FeSO4、および(NH4)2S2O8/FeSO4からなる群より選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記水溶性ラジカル開始剤が、共重合において2回または3回添加される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第一水溶性ラジカル開始剤を第一の時機に共重合に添加し、
第二水溶性ラジカル開始剤を、第一の時機とは異なる第二の時機に共重合に添加し、
第一水溶性ラジカル開始剤は第二水溶性ラジカル開始剤とは異なる、
請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]関連出願の相互参照
本願は35USC119条(e)に基づき、2012年12月21日に出願された米国仮出願61/745,172の優先権を主張する。当該出題のすべてが参照により本明細書に包含される。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの改良された合成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマー(ポリ1234yf/VDF)は種々の潜在的な使用および用途を有する。2つのモノマー比によって、ポリ1234yf/VDFは熱可塑性樹脂、コーティング、エラストマー、および膜材料として使用が可能である。
【0004】
[0004]フッ素ポリマーの重要な用途の一つとして、選択的なガス分離の分野における膜材料がある。当該分野で市販されているものの例としては、テフロン(登録商標)AF2400およびAF1600、ハイフロン(登録商標)AD80およびAD60、ならびにサイトップ(CYTOP)(登録商標)が挙げられる。Ind. Eng. Chem. Res. 2009, 48, 4638-4663を参照。最近、ポリ1234yf/VDFがいくつかのガスの組合せに対して優れた分離特性を持つことが示された。国際公開第2012/112840は、VDFを主モノマー単位として含む2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーで製造された高分子膜の使用により、O
2/N
2およびCO
2/N
2の分離において優れた選択性が得られたことを示す。米国特許出願13/679,251に開示されるように、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位として含む(約90/10モル%)高分子量の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーはCO
2/CH
4およびH
2/CH
4の分離において優れた選択性を示す。
【0005】
[0005]国際公開第2010/101304に開示されるように、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマー溶液重合法にて製造できる。すなわち、低温(例えば25℃)で、幅広いモノマー比の範囲において製造できる。しかしながら、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位として含む製造されたコポリマーは、比較的低い分子量および低いガラス転移温度を有する。
【0006】
[0006]2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーは、水性乳化重合法によっても製造できる。米国特許出願公開2011/0097529は、83℃〜110℃での水性乳化重合法によって2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーを製造することを開示する。国際公開2012/125786および2012/125788は、83℃において非フッ素系界面活性剤を用いた水性乳化重合法によって2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーを製造することを開示する。しかしながら、まずもって、これらの特許文献は、VDFを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーを比較的高い温度で合成することに関心がある。
【0007】
[0007]高分子量のポリマーを得るためには、通常、重合は比較的低い温度において酸化還元対開始剤を用いて実施される。しかしながら、例えば35〜45℃の比較的低い温度では、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの水性乳化重合における開始反応および成長反応の進行が困難となる。これは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの重合反応性が比較的低下することと、より低い沸点を有するVDFが気相に存在しがちになるためである。このような条件下では、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの共重合は、反応器の構造や撹拌速度によっては開始反応および成長反応において不活性となる。さらに、低温では、比較的多量の酸化還元対開始剤を用いたとしても共重合収率が比較的低くなり、このことはある程度の2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの単独重合を引き起こしうる。
【0008】
[0008]2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの改良された重合方法に対する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2012/112840
【特許文献2】米国特許出願13/679,251
【特許文献3】国際公開第2010/101304
【特許文献4】米国特許出願公開2011/0097529
【特許文献5】国際公開2012/125786
【特許文献6】国際公開2012/125788
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ind. Eng. Chem. Res. 2009, 48, 4638-4663
【発明の概要】
【0011】
[0009]本発明の一態様において、前記要求は、約55〜約70℃においてラジカル開始剤を用いた水性乳化重合法による2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンの共重合によって解決される。
[0010]本発明の一態様において、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンの共重合は、共重合においてラジカル開始剤を複数回添加する水性乳化重合法によって実施される。
【0012】
発明の詳細な説明
[0011]本発明は、少なくとも1つの水溶性ラジカル開始剤を用いた水性乳化重合法による、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの改良された合成方法を提供する。
【0013】
[0012]水溶性ラジカル開始剤は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとフッ化ビニリデンの共重合を開始できる任意の化合物であってよい。当該開始剤の非限定的な例としては、Na
2S
2O
8、K
2S
2O
8、(NH
4)
2S
2O
8、Fe
2(S
2O
8)
3、K
2S
2O
8/FeSO
4、(NH
4)
2S
2O
8/FeSO
4等、およびこれらの組合せが挙げられる。
[0013]2,3,3,3−テトラフルオロプロペンとフッ化ビニリデンの共重合は
任意の水性乳化系で、特にフリーラジカル重合に使用できる水性乳化系で実施しされうる。このような水性乳化系は、限定されないが、脱ガス脱イオン水、緩衝剤(限定されないが例えばNa
2HPO
4/NaH
2PO
4)、乳化剤(限定されないが例えばC
7F
15CO
2NH
4、C
4F
9SO
3K、CH
3(CH
2)
11OSO
3Na、C
12H
25C
6H
4SO
3Na、C
9H
19C
6H
4O(C
2H
4O)
10H等)を含んでよい。
【0014】
[0014]共重合は、通常は、所望の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーを得るのに十分な温度、圧力、反応時間で実施され、このような目的で使用されることが公知である任意の反応器(限定されないが例えばオートクレーブ反応器)中で実施されうる。
【0015】
[0015]本発明のある態様において、約55〜約70℃の温度で、かつ約50〜約1000psiの圧力において共重合を行ってよい。共重合は、所望の重合度が達成できる任意の時間で行われる。本発明のある態様において、約12〜約100時間で共重合を行ってよい。当業者は、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの所望の転化率および分子量によって前記条件が改良または変動されることを理解できる。
【0016】
[0016]2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの相対的なモノマー単位の比は、ガラス転移温度、機械的強度、および当該コポリマーで製造された高分子膜のガス分離選択性を制御するために決定される。限定されないが、概して、本発明の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーのモノマー単位の比は、約80/20〜約99/1モル%の範囲で調整される。
【0017】
[0017]開始剤の相対的な量は、製造されるコポリマーの転化パーセンテージ、および/または分子量の範囲を制御するために決定される。限定されないが、概して、ラジカル開始剤は、共重合反応における全モノマー量に対して1重量%未満である。
【0018】
[0018]製造されるコポリマーの所望の共重合収率および分子量範囲を達成するために、共重合系へ開始剤を複数回で添加してよい。限定されないが、概して、開始剤は共重合系に1〜3回で添加される。
【0019】
[0019]以下の米国特許および公開公報は2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンの共重合についてさらに開示する。参照によりこれらのすべてが本明細書に包含される。米国特許2,970,988、米国特許3,085,996、米国特許公開公報2008/0153977、米国特許公開公報2008/0153978、米国特許公開公報2008/0171844。
【0020】
[0020]以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はいかようにも限定されない。
【実施例】
【0021】
[0021]比較例1
撹拌している100mLの脱ガス脱イオン水に、2.195gのNa
2HPO
4・7H
2O、0.579gのNaH
2PO
4、2.168gのC
7F
15CO
2NH
4を加えた。次いで、前記水溶液に、0.304gの(NH
4)
2S
2O
8を撹拌かつ窒素バブリングしながら加えた。シリンジを用いて、得られた水溶液を速やかに真空の300mLオートクレーブ反応器に移した。内部の水溶液をゆっくり撹拌しながらオートクレーブ反応器をドライアイスにて冷却した。内部温度が約−4℃に低下したとき、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(114.1g)およびフッ化ビニリデン(17.7g)の混合物の移送を開始した。移送の終点において、トータルで130.8gの混合物をオートクレーブ反応器内に移送した。ドライアイスによる冷却を止めた。オートクレーブ反応器を空気によってゆっくり加熱した。内部の水溶液を300rpmで撹拌した。
【0022】
[0022]内部温度が約10℃に上昇したとき、0.303gのNa
2S
2O
5を5mLの脱ガス脱イオン水に溶解したものをオートクレーブ反応器中にポンプにて注入した。オートクレーブ反応器を45℃までゆっくり加熱した。撹拌速度を650rpmに上げた。初期の内部圧力は282psiであった。
【0023】
[0023]60時間超の重合により、内部圧力が125psiに低下した。撹拌が困難となり、加熱を停止した。室温にて、残圧をゆっくり解放した。撹拌機の周りの固体ポリマー析出物を取出して、脱イオン水で十分に洗浄した。コポリマーを減圧下(29inHg)35℃で乾燥し乾燥物とした。乾燥コポリマーの量は33.9gであり、収率は25.9%であった。
【0024】
[0024]コポリマーの実際のモノマー単位の比は、
19F−NMRで分析したところ91.1モル%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン対8.9モル%のフッ化ビニリデンであった。GPCで分析したコポリマーの重量平均分子量は900,060(主成分)および19,284(副成分)であった。
【0025】
[0025]実施例1
撹拌している100mLの脱ガス脱イオン水に、2.136gのNa
2HPO
4・7H
2O、0.588gのNaH
2PO
4、2.157gのC
7F
15CO
2NH
4を加えた。次いで、前記水溶液に、0.109gの(NH
4)
2S
2O
8を撹拌かつ窒素バブリングしながら加えた。シリンジを用いて、得られた水溶液を速やかに真空の300mLオートクレーブ反応器に移した。内部の水溶液をゆっくり撹拌しながらオートクレーブ反応器をドライアイスにて冷却した。内部温度が約−4℃に低下したとき、110.5gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび11.9gのフッ化ビニリデンの混合物のオートクレーブ反応器への移送を開始した。移送の終点において、トータルで121.8gの混合物をオートクレーブ反応器内に移送した。ドライアイスによる冷却を止めた。オートクレーブ反応器を空気によってゆっくり加熱した。内部の水溶液を300rpmで撹拌した。
【0026】
[0026]内部温度が約10℃に上昇したとき、0.296gのFeSO
4・7H
2Oを7mLの脱ガス脱イオン水に溶解したものをオートクレーブ反応器中にポンプにて注入した。オートクレーブ反応器を55℃までゆっくり加熱した。撹拌速度を500rpmに上げた。初期の内部圧力は293psiであった。
【0027】
[0027]55℃にて63時間後、内部圧力は297psiであった。加熱を停止した。室温にて、0.110gの(NH
4)
2S
2O
8を5mLの脱ガス脱イオン水に溶解したものをオートクレーブ反応器中にポンプにて注入した。オートクレーブ反応器を60℃までゆっくり加熱した。撹拌速度を500rpmに上げた。初期の内部圧力は348psiであった。
【0028】
[0028]60℃で42時間重合した後、内部圧力が134psiに低下した。撹拌が困難となり加熱を停止した。室温にて、残圧をゆっくり解放した。撹拌機の周りの固体ポリマー析出物を取出して、脱イオン水で十分に洗浄した。コポリマーを減圧下(29inHg)40℃で乾燥し乾燥物とした。乾燥コポリマーの量は73.9gであり、収率は60.7%であった。
【0029】
[0029]コポリマーの実際のモノマー単位の比は、
19F−NMRで分析したところ89.9モル%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン対10.1モル%のフッ化ビニリデンであった。GPCで分析したコポリマーの重量平均分子量は120,540であった。
【0030】
[0030]実施例2
撹拌している100mLの脱ガス脱イオン水に、2.187gのNa
2HPO
4・7H
2O、0.583gのNaH
2PO
4、2.120gのC
7F
15CO
2NH
4を加えた。次いで、前記水溶液に、0.106gの(NH
4)
2S
2O
8を撹拌かつ窒素バブリングしながら加えた。シリンジを用いて、得られた水溶液を速やかに真空の300mLオートクレーブ反応器に移した。内部の水溶液をゆっくり撹拌しながらオートクレーブ反応器をドライアイスにて冷却した。内部温度が約−4℃に低下したとき、100.7gの2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよび11.7gのフッ化ビニリデンの混合物のオートクレーブ反応器への移送を開始した。移送の終点において、トータルで111.7gの混合物をオートクレーブ反応器内に移送した。ドライアイスによる冷却を止めた。オートクレーブ反応器を空気によってゆっくり加熱した。内部の水溶液を300rpmで撹拌した。
【0031】
[0031]オートクレーブ反応器を60℃までゆっくり加熱した。同時に撹拌速度を500rpmに上げた。初期の内部圧力は327psiであった。
【0032】
[0032]63時間超の重合により、内部圧力が29psiに低下した。加熱を停止した。オートクレーブ反応器を空冷した。室温にて、残圧をゆっくり解放した。共重合混合物は白いペーストおよび撹拌機の周辺に存在する固体の大きな塊となった。白いペーストと固体の大きな塊を取出て脱イオン水で十分に洗浄した。濾過した後、コポリマーを合わせて、減圧下(29inHg)35℃で乾燥し乾燥物とした。乾燥コポリマーの量は98.7gであり、収率は88.4%であった。
【0033】
[0033]コポリマーの実際のモノマー単位の比は、
19F−NMRで分析したところ84.7モル%の2,3,3,3−テトラフルオロプロペン対15.3モル%のフッ化ビニリデンであった。GPCで分析したコポリマーの重量平均分子量は90,559であった。
以下に本発明の態様を示す。
[1]2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの合成方法であって、
水溶性ラジカル開始剤の存在下でモノマーを水性乳化共重合して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーを形成する工程を含み、
前記共重合を55〜70℃で行う、合成方法。
[2]前記モノマーが2,3,3,3−テトラフルオロプロペンおよびフッ化ビニリデンである、[1]に記載の方法。
[3]前記ラジカル開始剤が、共重合における全モノマー重量に対して、1重量%未満の濃度で存在する、[1]に記載の方法。
[4]前記2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーにおける2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンのモノマー単位の比が、80/20〜99/1モル%である、[1]に記載の方法。
[5]前記水溶性ラジカル開始剤が、Na
2S
2O
8、K
2S
2O
8、(NH
4)
2S
2O
8、Fe
2(S
2O
8)
3、K
2S
2O
8/FeSO
4、および(NH
4)
2S
2O
8/FeSO
4からなる群より選択される、[1]に記載の方法。
[6]前記水溶性ラジカル開始剤が、共重合において複数回添加される、[1]に記載の方法。
[7]前記水溶性ラジカル開始剤が、共重合において2つの異なる共重合温度において添加される、[6]に記載の方法。
[8]2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーの合成方法であって、
水溶性ラジカル開始剤の存在下でモノマーを水性乳化共重合して2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを主モノマー単位とする2,3,3,3−テトラフルオロプロペン/フッ化ビニリデンコポリマーを形成する工程を含み、
前記水溶性ラジカル開始剤を共重合に複数回添加する、合成方法。
[9]前記水溶性ラジカル開始剤が、共重合において2回または3回添加される、[8]に記載の方法。
[10]第一水溶性ラジカル開始剤を第一の時機に共重合に添加し、
第二水溶性ラジカル開始剤を、第一の時機とは異なる第二の時機に共重合に添加し、
第一水溶性ラジカル開始剤は第二水溶性ラジカル開始剤とは異なる、[8]に記載の方法。