(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706317
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ルーペ、及びこうしたルーペを含む眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 25/00 20060101AFI20200525BHJP
G02C 9/00 20060101ALI20200525BHJP
G02B 5/04 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
G02B25/00 Z
G02C9/00
G02B5/04 F
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-511582(P2018-511582)
(86)(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公表番号】特表2018-514818(P2018-514818A)
(43)【公表日】2018年6月7日
(86)【国際出願番号】SE2016050366
(87)【国際公開番号】WO2016182488
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】1550619-9
(32)【優先日】2015年5月13日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】517395725
【氏名又は名称】メリデントオプテルゴ・アクチェボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】ヘルストロム,ビョルン
【審査官】
堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】
特表平10−509527(JP,A)
【文献】
米国特許第01610553(US,A)
【文献】
特開2014−115319(JP,A)
【文献】
特開2003−315688(JP,A)
【文献】
中国実用新案第202735588(CN,U)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0091305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3倍以上6倍以下の倍率を提供するルーペ(1)と、
少なくとも1つの眼鏡レンズ(28)と、
を備えた眼鏡(26)であって、
前記ルーペ(1)は、
第1の開口(3)及び第2の開口(4)を有するハウジング(2)と、
前記第1の開口(3)に隣接して前記ハウジング内に配置される対物レンズ装置(8)と、
前記第2の開口(4)に隣接して前記ハウジング内に配置される接眼レンズ装置(9)と、
前記ハウジング(2)内に配置されて前記対物レンズ装置(8)と前記接眼レンズ装置(9)との間に位置する光学装置と、
を備え、
光中心軸(23)が前記対物レンズ装置(8)から前記光学装置を介して前記接眼レンズ装置(9)へ延び、
前記光中心軸(23)が、対物レンズ軸(24)及び接眼レンズ軸(25)を含み、前記対物レンズ軸(24)が、10°以上20°以下である鋭角αで前記接眼レンズ軸(25)と交わり、前記光学装置がミラー(10)とプリズム(11)とを備え、
前記ルーペ(1)が前記眼鏡レンズ(28)に取り付けられており、
前記接眼レンズ軸(25)は前記眼鏡(26)の仮想水平面(30)に対して鉛直下方に傾斜し、前記対物レンズ軸(24)は前記接眼レンズ軸(25)に対して鉛直下方に傾斜する、
ことを特徴とする、眼鏡。
【請求項2】
前記対物レンズ軸(24)は、12°以上である鋭角αで前記接眼レンズ軸(25)と交わる、請求項1に記載の眼鏡。
【請求項3】
前記対物レンズ軸(24)は、18°以下である鋭角αで前記接眼レンズ軸(25)と交わる、請求項1または2に記載の眼鏡。
【請求項4】
前記光学装置の前記ミラー(10)は、前記対物レンズ装置(8)と前記光学装置の前記プリズム(11)との間に位置する、請求項1から3の何れか1項に記載の眼鏡。
【請求項5】
前記接眼レンズ装置(9)は、少なくとも1つの調整レンズ22を備えている、請求項1から4の何れか1項に記載の眼鏡。
【請求項6】
前記光学装置の前記プリズム(11)は、ルーフペンタプリズムによって構成される、請求項1から5の何れか1項に記載の眼鏡。
【請求項7】
前記対物レンズ装置(8)は、前記ハウジング(2)の前記第1の開口(3)に対して前記対物レンズ軸(24)に沿って前後に変位可能である対物レンズ(15)を備えている、請求項1から6の何れか1項に記載の眼鏡。
【請求項8】
前記ルーペ(1)が、前記眼鏡レンズ(28)の貫通孔(29)内に配置されている、請求項1から7の何れか1項に記載の眼鏡。
【請求項9】
前記眼鏡(26)は、右側と左側とに眼鏡(26)を分割すると共に仮想水平面30と垂直に交わる仮想鉛直面(31)を有し、前記仮想水平面(30)に対して垂直に見て、前記ルーペ(1)の前記光中心軸(23)が、2°以上7°以下である鋭角βで前記仮想鉛直面(31)と交わる、請求項1から8の何れか1項に記載の眼鏡。
【請求項10】
前記眼鏡(26)は、右側と左側とに眼鏡(26)を分割すると共に仮想水平面30と垂直に交わる仮想鉛直面(31)を有し、前記仮想鉛直面(31)に対して垂直に見て、前記対物レンズ軸(24)が、20°以上50°以下である角度γで前記仮想水平面(30)と交わる、請求項1から9の何れか1項に記載の眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、使用者/着用者の手によって取り扱われ、使用者の通常の視野下に置かれた対象物を拡大するように構成されたルーペ又は双眼鏡に関する。ルーペは、特に、高い精度を要求する作業を対象物に行う歯科医、外科医などによって使用されることを意図している。
【0002】
第1の観点によれば、本発明は特に、3倍以上6倍以下の倍率を提供するルーペに関する。かかるルーペは、第1の開口及び第2の開口を有するハウジングと、第1の開口に隣接してハウジング内に配置される対物レンズ装置と、第2の開口に隣接してハウジング内に配置される接眼レンズ装置と、ハウジング内に配置されて対物レンズ装置と接眼レンズ装置との間に位置する光学装置と、を備え、光中心軸が、対物レンズ装置から光学装置を介して接眼レンズ装置へ延びる。第2の観点によれば、本発明は、少なくとも1つの眼鏡レンズと、こうしたルーペとを備える、一対の眼鏡に関する。
【背景技術】
【0003】
歯科医または外科医の患者は多くの場合仰向けになっており、意図した手術を行うことができるように、つまり、非人間工学的な位置に置かれた腕で作業しなければならないようなことがないように、歯科医/外科医は患者の近くに立っているか又は近くに座っている。しかしながら、これは、患者/対象物が観察者の通常の視野下に置かれ、概して小さい対象物が、意図された精度を得るには離れすぎた距離に置かれることになり、観察者は、対象物を見ることができるように頭部を有害な角度で前方に傾けることを余儀なくされる。
【0004】
取り扱われる対象物を拡大するルーペ、並びに、プリズムまたはミラーによって光中心軸を変えるルーペが知られている。これらのルーペによって、適切な倍率が得られると同時に、使用者は、有害な角度で頭を前方に向けなくて済む。
【0005】
このようなルーペの例は、米国特許第5,923,467号(Pericic)に開示されており、方向変換角度は30−60度であり、好ましくは45度である。ルーペは、観察者/使用者が部屋の水平面と平行に真っ直ぐ前を向くように配置される。つまり、使用者の目は傾いていない位置にあり、使用者の頭は前方に傾かず、完全にまっすぐ上に位置する。しかしながら、このルーペは重く、且つ重心が前方遠くに位置しているため、使用者の首、耳、及び鼻に大きな局所的ストレス/不快感を生じさせる。大きな方向転換と、使用者が前方をまっすぐに見るという事実とによって、脳にとって不自然な方法で対象物に対して正確に手を動かすことになり、使用者は、学習に大きな問題をかかえ、習得するために絶えず奮闘しなければならなくなる。使用者の脳は、腕/手が体の近くで作業することと、使用者の頭が直立姿勢にあって目がまっすぐに見えていることとの合致に大きな問題をかかえる。ルーペが視界を遮る結果として、使用者は、ルーペなしで周囲/仲間を見ることと、ルーペを使用して対象物を見ることとを、容易に切り替えることができない。
【0006】
米国特許第6,120,145号(Lyst)は、方向変換のないルーペと、ルーペの前に配置された方向変換ユニットと、を備えるシステムを開示している。方向変換ユニットは複数の実施形態で開示され、これらの実施形態における方向変換角度は25−60度の範囲内にある。このシステムは、ルーペがまっすぐなルーペであり、方向変換ユニットがルーペの前に配置されているので、非常に鼻が重く、使用者の首に大きなストレス/不快感を生じさせる。
【0007】
米国特許第4,652,094号は、着脱可能な方向変換ユニットを有するルーペシステムを開示している。ルーペは、方向変換ユニットが使用されていないときにまっすぐのルーペである。開示されたルーペシステムは、方向変換ユニットが使用されるときに30−90度の範囲で方向変換する。このルーペシステムは、眼鏡に取り付けられるように構成され、着脱可能な方向変換ユニットのために長くて重く、使用者の首、耳、及び鼻に大きく局所的なストレス/不快感をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来知られていたルーペの前述の欠点および不具合を解消し、改良されたルーペを提供することを目的とする。本発明の第1の目的は、コンパクト且つ軽量であり、それにより、ルーペが一対の眼鏡に取り付けられたときに使用者の首、耳、及び鼻における局所的なストレス/不快感を減少させる、先に定義されたタイプの改良されたルーペを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、使用者がまっすぐ前方を見ているときにルーペが使用者の視野を邪魔しないルーペ、及び眼鏡を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、使用者が目を基本位置から下方に回転させたときに、使用者の眼が自動的に内側に回転する(収束する)と共に、実際の対象物とその対象物の知覚された画像との間の高さ方向の距離が減少するルーペを提供することであり、それにより、使用者の身体/胴体の近くに位置する物体を扱うように手を制御するために、使用者の脳が自動的に準備することを簡単化できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、独立請求項に定義された特徴を有すると共に先に定義されたルーペ及び眼鏡によって、少なくとも第1の目的が達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項においてさらに定義されている。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、先に定義されたタイプのルーペであって、光中心軸が、対物レンズ軸および接眼レンズ軸を含み、対物レンズ軸が、10°以上20°以下である鋭角αで接眼レンズ軸と交わり、光学装置がミラーとプリズムとを備えることを特徴とするルーペが提供される。本発明の第2の観点によれば、少なくとも1つのこうしたルーペを備える一対の眼鏡が提供される。
【0013】
本発明は、以下のことの理解に基づく。つまり、使用者が目を下方に回転させると目が自動的に内側に回転するようにルーペが構成され、このことと、10度から20度の範囲の方向変換との組み合わせにより、有害な程度までではなく使用者が頭を前方に傾けるようになるということの理解に基づく。軽くてコンパクトな設計によって、使用者がルーペを使用している間に不快さを感じない。これらによって、使用者の脳が視覚的な所感に対して容易に取り組むことができ、使用者は、神経活動を容易に制御して、高い精度を必要とする意図した作業を実行することができる。ルーペの20°より大きい方向変換は、使用者がルーペを使用することの学習において大きな問題を生じさせ、ルーペを使用する場合と使用しない場合とで、使用者がそれぞれを切り替えることも困難になる。
【0014】
光学装置にプリズムを使用することによって、例えばルーペをよりコンパクトにすることができ、光学装置にミラーを使用することによって、例えばルーペのカラーオフセット誤差を補う必要性を最小限に抑えることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態によれば、光学装置のミラーが、対物レンズ装置と光学装置のプリズムとの間に位置する。この設計によって、使用者は、ルーペの上方を容易に見ることができる。
【0016】
本発明の好ましい形態によれば、光学装置のミラーがルーフペンタプリズムによって構成される。これにより、実際のルーフペンタプリズムにおける長いビーム経路のおかげで、ルーペを非常にコンパクトに作ることができる。
【0017】
ルーペは、眼鏡の貫通孔内に配置されることが好ましい。これにより、ルーペの重心を可能な限り使用者の目の近くに移動させることができる。
【0018】
本発明のさらなる利点および特徴は、他の従属請求項ならびに以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態のルーペを下方から見た概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1による実施形態のルーペを上方/後方から見た概略斜視図である。
【
図5】
図5は、少なくとも1つのルーペを備える実施形態の一対の眼鏡の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の上記およびその他の特徴および利点のより完全な理解は、添付の図面と併せて以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0021】
まず、
図1及び
図2を参照する。本発明は、概して双眼鏡、顕微鏡などとしても知られている、概して1が付されている、ルーペに関する。ルーペ1は、使用者によって使用されるように構成され、使用者が拡大画像を取得しようとする対象物の拡大を提供するために、使用者の頭部の動きに追従するように構成される。実施形態にかかるルーペ1は、3倍以上6倍以下の倍率を提供し、好ましくは、ルーペ1は約4倍の倍率を提供する。ルーペ1はケプラー(Kepler)タイプのものであり、できるだけコンパクトなルーペを得るために、対物レンズおよび接眼レンズにおいて正レンズシステムを備える。
【0022】
ルーペ1は、第1の開口3および第2の開口4を有するハウジング2を備えている。第1の開口3と第2の開口4とは、ハウジングの内部空間を介して連通している。第2の開口4(ルーペ1の近位側の開口)は、使用者の目に隣接して配置され、第1の開口3(ルーペ1の遠位側の開口)は、観察される対象物に対して最も近くに配置される。第2の開口4に関係して、ハウジング2は、好ましくは筒状のパイプ5を備え、第1の開口3に関係して、ハウジング2は、第1の開口3において最大の外径を有する漏斗状のパイプ6を備える。漏斗状のパイプ6は、好ましくは円筒形の内面を呈し、別の実施形態では、漏斗状のパイプ6は、円筒形のパイプによって構成されてもよい(交換されてもよい)ことを指摘しておく。ここで、ハウジング2は、筒状のパイプ5と漏斗状のパイプ6とを接続する中間ハウジング本体7を備えている。
【0023】
ここで主として、本発明のルーペ1の好ましい実施形態の概略側面断面図および概略分解断面図を示す
図3および
図4を参照する。
【0024】
ルーペ1は、ハウジング2の第1の開口3に隣接してハウジング2内に配置された、概して8が付されている対物レンズ装置を備えており、より正確には対物レンズ装置8がハウジング2の漏斗状のパイプ6内に配置され、漏斗状パイプもまた対物レンズとして識別される。ルーペ1は、ハウジング2の第2の開口4に隣接してハウジング2内に配置された、概して9が付されている接眼レンズ装置を備えており、より正確には接眼レンズ装置9がハウジング2の筒状のパイプ5内に配置されている。ルーペ1は、ハウジング内に配置されて対物レンズ装置8と接眼レンズ装置9との間に配置された光学装置を備えており、より正確には光学装置がハウジング2の中間ハウジング本体7内に配置されている。実施形態では、光学系がミラー10及びプリズム11を備えることが必須である。ミラーは、平面/平坦なミラーである。ミラー10は、少なくとも、軽量で、小型で、そして、反射におけるカラーオフセット誤差がないという利点を有する。ミラー10は、画像を上下方向に回転させる一回の反射をもたらす。プリズム11は、ルーフペンタプリズムで構成されていることが好ましい。ルーフペンタプリズムは、小さな領域で比較的長いビーム経路を提供するという利点を少なくとも有し、これにより、ルーペ1が小さくコンパクトな寸法を維持して大きな倍率を有することが可能になる。ルーフペンタプリズム11は、左右方向における一度の画像シフトと、画像を上下方向に回転させる二度の反射と、をもたらし、これらと、ミラー10による上下方向の反射とは、使用者にとって正しい画像をもたらす。
【0025】
平面なミラー10は、ハウジング2の中間ハウジング本体7に配置された座部12と、ハウジング2の一部を形成して座部12内の場所にミラー10を保持する蓋13との内部に配置される。蓋13は、損傷を受けた場合にミラー10の交換を可能にするために取り外し可能であってもよい。ミラー10は、好ましくは、光学装置のプリズム11と対物レンズ装置8との間に配置される。プリズム11は、ハウジング2の一部であるホルダ14内に配置されており、ホルダ14は、ハウジング2の中間ハウジング本体7の残りの部分に適切な方法で固定的に又は着脱自在に取り付けられる。ルーペ1が組み立てられた状態にあるとき、ミラー10及びプリズム11がそれらの相対的な位置を変更できてはならないことが非常に重要であると理解されたい。
【0026】
対物レンズ装置8は、好ましくは両凸型の少なくとも1つの対物レンズ15を備え、この対物レンズ15は、本実施形態ではランナー16に接続されている。異なる色補正の度合い、及び異なる倍率を得るために、対物レンズ装置8は複数の対物レンズを備えていてもよいことを理解されたい。ランナー16は、ハウジング2の第1の開口3に対して前後に変位可能であり、より正確には、ランナー16は、ハウジング2の漏斗状のパイプ6内を前後に変位可能である。ランナー16の外面には、ハウジング2の漏斗状のパイプ6の内面に設けられた雌ねじと係合する雄ねじが設けられることが好ましい。これにより、対物レンズ15及びランナー16の第1の開口3に対する位置、結果として対物レンズ15及びランナー16の接眼レンズ装置9に対する位置が、使用者の眼と対象物との間の距離、及び使用者の視力に基づいて調整される。対象物と対物レンズ15との間の距離は、好ましくは350−600ミリメートルの範囲内、最も好ましくは約450ミリメートルであるが、個々の使用者の物理的条件および要望から決定される。使用者が人間工学的な位置をとるためには、使用者の上腕を鉛直に向け、肘を胴体に隣接させて配置することが好ましい。さらに、高さ方向において使用者の手が胸と臍の間に位置することが好ましい。
【0027】
ここで、対物レンズ装置8は、ハウジング2の第1の開口3内に配置される保護レンズホルダ18に取り付けられた保護レンズ17を備えることが好ましい。保護レンズ17は、屈折がなくレンズ全体にわたって均一な厚さを示すことが好ましく、メニスカスタイプであることが好ましい。保護レンズ17は、対物レンズ15を、例えば、対象物からの液体の飛散および洗浄時のひっかきのような機械的なストレス、並びに、対物レンズ15のARコーティングの劣化のような科学的なストレスから保護する。保護レンズ17がルーペ1に取り付けられた後は、ランナー16にアクセスできないことが好ましい。保護レンズホルダ18は、本発明の実施形態では、ハウジング2の漏斗状のパイプ6と螺合している。
【0028】
図示していないが、別の実施形態において、ランナー16は、保護レンズ17がルーペ1に取り付けられたときに、ハウジング2の外側から直接的または間接的に操作されるように構成されてもよい。
【0029】
接眼レンズ装置9は、少なくとも1つの接眼レンズ19を備える。接眼レンズ装置9は、ケプラー(Kepler)、プルッセル(Plossl)、ケーニヒ(Konig)、ケルナー(Kellner)等、又はそれらの変形物、又は個人的に組み合わせた接眼レンズのような、異なる所定の接眼レンズタイプを備えていてもよい。本実施形態では、接眼レンズ装置9は、複数の接眼レンズを有する逆ケルナーの接眼レンズ20と、距離リング21とを備えている。異なるタイプの接眼レンズ装置、及び接眼レンズ装置における異なる数のレンズによって、異なる色補正の度合い、及び異なる倍率が提供される。ここで、接眼レンズ装置9は、好ましくは、使用者の潜在的な非点収差の視覚欠損を補正し、ハウジング2の第1の開口3に対する対物レンズ15の位置の設定/調整を補うように構成された調整レンズ22を備えることが好ましい。
【0030】
本発明の実施形態では、概して23が付されている光中心軸が、対物レンズ装置8から光学装置を介して接眼レンズ装置9へ延びていることが必須である。この光中心軸23は、対物レンズ軸24と接眼レンズ軸25とを含み、対物レンズ軸24は、10°以上20°以下である鋭角の角度αで接眼レンズ軸25と交わる。光学装置のミラー10と光学装置のプリズム11との互いの傾き/配向は、角度αの大きさを決定する。光中心軸23は、対象物から使用者の目までのすべての経路にわたって延びることが理解されよう。
【0031】
対物レンズ軸24と接眼レンズ軸25との間の角度αは、12°以上であることが好ましく、14°以上であることが更に好ましい。対物レンズ軸24と接眼レンズ軸25との間の角度αは、18°以下であることが好ましく、16°以下であることが更に好ましい。最も好ましくは、角度αは15°である。これについては後で更に説明する。
【0032】
ここで主として、少なくとも1つの本実施形態のルーペ1を含む本実施形態の一対の眼鏡26の概略側面図を開示する
図5を参照する。もっとも、眼鏡26は、通常、使用者のそれぞれの目に対して1つが対応する、2つのルーペ1を備えることを指摘しておく。
【0033】
本実施形態による眼鏡26は、従来の眼鏡フレーム27、及び少なくとも1つの眼鏡レンズ28を備える。ルーペ1は、キャリアレンズとも言える眼鏡レンズ28に取り付けられ、UV硬化接着剤のような適切な接着の手法によって眼鏡レンズ28に取り付けられる。ルーペ1は、眼鏡レンズ28の貫通孔29内に配置され、使用者の眼の瞳孔および/または網膜と接眼レンズ装置9との間の距離が最小にされることが好ましい。これにより、ルーペ1をよりコンパクトにすることができる。眼鏡レンズ28は、使用者の一般的な視覚状態に応じて、光パワー/屈折の程度/研削を伴って、又は伴わずに作成できることを指摘しておく。ルーペ1が眼鏡レンズ28に接続されていることの利点は、ルーペ1と使用者の眼の瞳孔および/または網膜との間の距離を、明確に画定できると共に使用者に適合/個別化させられることである。同時に、使用者は、ルーペ1と目との協調作業なしに、簡単に眼鏡26を外して繰り返し着用することができる。図示していないが、別の実施形態によれば、ルーペ1は、使用者によって運ばれるように構成された別のユニット、例えばヘッドバンド類又はヘルメット類のユニット、眼鏡レンズなしの眼鏡フレームなどに取り付けられてもよい。
【0034】
使用者と対象物とは対象空間内に位置し、使用者が基準位置に位置するとき、つまり頭を傾けずにまっすぐ前を見るとき、使用者の両目は、対象空間における水平基準面に沿って見ることになる。眼鏡26は、眼鏡26を着けている使用者が上記の基準位置に位置するとき、対象空間における水平基準面と平行な仮想水平面30を有する。使用者が頭を前方に、例えば10度または15度傾けると、仮想水平面が、対象空間における水平基準面に対してそれぞれ10度または15度傾くことをもたらす。使用者が長時間にわたって頭を前方に25度を超えて傾けると、いわゆる筋骨格障害が生じるリスクがかなり高くなる。10−15度の範囲で頭を傾けることは使用者にとって好ましいものであり、使用者は頭を同じ角度/位置で長い時間にわたって作業することができる。ルーペ1は、眼鏡26を着けている使用者が基準位置に位置するときに、対象空間における上記した水平基準面の完全に下方に位置することが好ましい。
【0035】
ここで、2つのルーペ1を備える実施形態の一対の眼鏡26の上方からの概略図を開示する
図6も参照する。
【0036】
眼鏡26は、使用者の視線方向に見て右側と左側とに眼鏡26を分割すると共に仮想水平面30と垂直に交わる仮想鉛直面31を有する。2つのルーペ1のそれぞれの第2の開口4の間の相互の距離は、使用者に適合され、好ましくは50−75ミリメートルの範囲内である。このことと、対象物とルーペ1との間の距離とによって、仮想水平面30に対して垂直に見たときに、個々のルーペ1の光中心軸23が、2°以上で7°以下である鋭角な角度βで仮想鉛直面31と交わる。
図6では、角度2βが示されており、4°−14°の範囲にあることを指摘しておく。
【0037】
ここで、各ルーペ1は、仮想鉛直面31に対して垂直に見てルーペ1の対物レンズ軸24が仮想水平面30に対して20°以上50°以下である角度γで交わるように、眼鏡26の仮想水平面30に対して傾斜している。ここで、角度γは角度αよりも厳密に大きくなければならない。これにより、ルーペ1の第2の開口4に向かってまっすぐ見るために、使用者は目をγ−αに等しい回転角度で下方に回転させることになる。不慣れな使用者は、目を30度まで下方に向けた状態で労力なく作業をすることができ、熟練した使用者は、目を40度まで下方に向けた状態で大きな労力なく作業をすることができる。使用者の目を下方に回転させることの大きな利点は、目が自動的に内側に回転し、それによって、仮想鉛直面31に対して傾斜しているルーペ1をまっすぐ見ることである。
【0038】
対物レンズ軸24と接眼レンズ軸25との間の角度αが10°未満であると、使用者は頭を大きく前方に傾けなければならないか、又は、目を不自然な又は痛める角度で下方に回転させなければならない。対物レンズ軸24と接眼レンズ軸25との間の角度αが20°より大きいと、慣れることが非常に困難になり、使用者は視覚的な所感と手の動きとを調整するために脳に多くの練習を必要とする。また、ルーペを使用する場合と使用しない場合とで、使用者がそれぞれ切り替えることもより困難になる。
【0039】
発明の実行可能な変形例
本発明は、上記で説明され図示された実施形態のみに限定されるものではなく、実施形態は主に説明目的および例示目的を有するである。本願は、本明細書に記載の好ましい実施形態のすべての適応および変形を含むことを意図している。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものであり、添付の特許請求の範囲において、あらゆる種類の方法で構成を変形することができる。
【0040】
上方、下方、上、下等のような用語に関するすべての情報は、図面による装置の方位を示すものであり、参照を正しく理解できるように図面に方向付けられているものであると解釈/読取りされたい。したがって、こうした用語は、図示された実施形態における相互関係を示すに過ぎず、本発明の装置に別の構造/設計が用いられる場合、その関係は変更され得る。
【0041】
また、特定の実施形態の特徴を別の実施形態の特徴と組み合わせることができると明示的に述べられていないとしても、組み合わせが可能である場合、その組み合わせは明白なものであることを指摘しておく。