特許第6706324号(P6706324)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706324ポリマーコーティングの選択的堆積により電子装置を保護する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706324
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ポリマーコーティングの選択的堆積により電子装置を保護する方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20200525BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20200525BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20200525BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H05K3/28 G
   H01L21/56 E
   H01L23/30 B
【請求項の数】32
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-532516(P2018-532516)
(86)(22)【出願日】2016年9月9日
(65)【公表番号】特表2018-537864(P2018-537864A)
(43)【公表日】2018年12月20日
(86)【国際出願番号】US2016050935
(87)【国際公開番号】WO2017044736
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2019年8月29日
(31)【優先権主張番号】62/217,416
(32)【優先日】2015年9月11日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518084888
【氏名又は名称】サイド・タイムール・アフマド
(73)【特許権者】
【識別番号】518084899
【氏名又は名称】ブルース・アクトン
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(74)【代理人】
【識別番号】100205453
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 朝彦
(72)【発明者】
【氏名】サイド・タイムール・アフマド
(72)【発明者】
【氏名】ブルース・アクトン
【審査官】 ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−034550(JP,A)
【文献】 特開平09−129306(JP,A)
【文献】 特開平03−210973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/28
H01L 21/56
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷回路板を有する電子装置を保護する方法であって、
前記方法は、前記印刷回路板の裏側および表側を任意の順序で処理すること、
ここで、前記印刷回路板の前記裏側を前記処理することは、
・少なくとも1つのメスコネクターの外辺部周囲、少なくとも1つの内部の構成部品の表面、またはこれらの組み合わせに、第1のポリマーを適用すること;
・前記第1のポリマーを硬化させること;
・少なくとも1つの内部の構成部品に第2のポリマーを適用すること
を含み、
前記印刷回路板の前記表側を前記処理することは、
・少なくとも1つのメスコネクターの外辺部周囲、1つ以上の接続されたカメラの外辺部周囲、少なくとも1つの内部の構成部品の表面、またはこれらの組み合わせに、前記第1のポリマーを適用すること;
・前記第1のポリマーを硬化させること;
・少なくとも1つの内部の構成部品に前記第2のポリマーを適用すること;
を含む、ならびに、前記電子装置を組み立てること、
ここで、前記組み立てることは、
・前記印刷回路板およびバッテリーをハウジング内に設置すること;
・前記印刷回路板の前記裏側に取り付けられたメスコネクターに、前記装置のオスコネクターを接続すること;および
・外辺部周囲に吸上に対する保護被覆を達成するのに十分な量で、前記メスコネクターの側面及び前記オスコネクターの側面に前記第1のポリマーを適用することを含む、
を含み、ここで、前記第1のポリマーが前記第2のポリマーよりも高い硬度を有する、
前記方法。
【請求項2】
前記第1のポリマーおよび前記第2のポリマーが、硬化後に少なくとも90°の接触角を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のポリマーおよび前記第2のポリマーが、硬化後に100〜120°の範囲の接触角を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のポリマーが、フルオロアクリレートを含むアクリル系ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のポリマーが、脂肪族ポリシロキサンを含むシリコーン系ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のポリマーを硬化させることが、前記ポリマーを周囲条件に少なくとも24時間曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のポリマーを硬化させることが、前記ポリマーを周囲条件に少なくとも30分間曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のポリマーを硬化させることが、前記ポリマーを90〜110℃の範囲の温度に最長5分間曝露することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
どの工程においても、前記第1のポリマーおよび前記第2のポリマーを適用することが単一層をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のポリマーの前記単一層の厚さが20〜1000nmの範囲であり、かつ、前記第2のポリマーの前記単一層の厚さが50〜500nmの範囲である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のポリマーもしくは前記第2のポリマー、または前記第1のポリマーおよび前記第2のポリマーの両方が、浸漬、噴霧、真空蒸着、およびワイプコーティングから選択される、少なくとも1つの自動堆積技術または手動堆積技術により適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
装置の前記少なくとも1つの内部の構成部品が、電源スイッチ、音量スイッチ、ライト、液晶ディスプレイ、タッチスクリーン、タッチパネル、カメラ、アンテナ、内部コネクター、およびこれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記内部コネクターが、印刷回路板、ボタン、高電圧の構成部品、およびこれらの組み合わせを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記内部コネクターがオス型端部およびメス型端部を有する場合において、前記オス型端部を前記メス型端部に接続する前に前記内部コネクターの前記オス型端部および前記メス型端部の両方に多層疎水性コーティングを適用することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記組み立てられた装置が、コーティングされた構成部品を有していない装置と比較して、改善された疎水特性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記電子装置が、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、タブレット、ノートブック、ラップトップ、デスクトップコンピューター、音楽プレーヤー、カメラ、ビデオレコーダー、バッテリー、電子リーダー、無線装置、ゲーム機器、サーバー、ヘッドホン、ターミナルブロック、制御パネル、ウェアラブルデバイス、医療用具、無線制御装置、産業用装置、およびアプライアンスデバイスからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
スマートフォンを汚染物から保護する方法であって、
前記方法は、印刷回路板、バッテリー、ならびに前記印刷回路板および前記バッテリーを収容するためのハウジングを含む、分解されたスマートフォンを用意すること;
前記印刷回路板の裏側および表側を任意の順序で処理すること、
ここで、前記印刷回路板の前記裏側を前記処理することは、
・1つ以上のフレキシブルプリント回路(FPC)を基部とするメスコネクターの外辺部周囲にアクリル系ポリマーを適用すること;
・少なくとも1つ以上の内部の構成部品にアクリル系ポリマーを適用すること;
・前記アクリル系ポリマーを硬化させること;
・前記印刷回路板上に配置された少なくとも1つ以上の内部の構成部品にシリコーン系ポリマーを適用すること;
を含み、
前記印刷回路板の前記表側を前記処理することは、
・前記印刷回路板上に配置された1つ以上のフレキシブルプリント回路(FPC)を基部とするメスコネクターの外辺部周囲にアクリル系ポリマーを適用すること;
・前記印刷回路板上に配置された1つ以上の接続されたカメラの外辺部周囲にアクリル系ポリマーを適用すること;
・前記印刷回路板上に配置された少なくとも1つ以上の内部の構成部品にアクリル系ポリマーを適用すること;
・前記アクリル系ポリマーを硬化させること;
・前記印刷回路板上に配置された少なくとも1つ以上の内部の構成部品にシリコーン系ポリマーを適用すること;
を含む、
ならびに、前記スマートフォンを組み立てること、
ここで、前記組み立てることは、
・前記印刷回路板およびバッテリーを前記ハウジング内に設置すること;
・前記印刷回路板の前記裏側に取り付けられたメスコネクターに、前記スマートフォンのオスコネクターを接続すること;および
・外辺部周囲に吸上に対する保護被覆を達成するのに十分な量で、前記メスコネクターの側面及びオスコネクターの側面に前記アクリル系ポリマーを適用すること
を含む、
を含む、方法。
【請求項18】
電子装置であって、
前記電子装置は、表側と裏側を有する印刷回路板であり、前記裏側は、
・第1のポリマーが外辺部周囲に配置された少なくとも1つのメスコネクター;
・前記第1のポリマーがその上に配置された少なくとも1つの内部の構成部品;および
・第2のポリマーがその上に配置された少なくとも1つの異なる内部の構成部品
を備え、
前記印刷回路板の前記表側は、
・前記第1のポリマーが外辺部周囲に配置された少なくとも1つのメスコネクター;
・前記第1のポリマーが外辺部周囲に配置された少なくとも1つのカメラ;
・前記第1のポリマーがその上に配置された少なくとも1つの内部の構成部品;および
・第2のポリマーがその上に配置された少なくとも1つの異なる内部の構成部品
を備えた、
印刷回路板を含み、
前記組み立てられた電子装置は、ハウジングの外辺部周囲に前記第1のポリマーを更に含み、前記第1のポリマーは前記第2のポリマーよりも高い硬度を有する、
電子装置。
【請求項19】
前記第1のポリマーおよび前記第2のポリマーが、硬化後に少なくとも90°の接触角を示す、請求項18に記載の電子装置。
【請求項20】
前記第1のポリマーおよび前記第2のポリマーが、硬化後に100〜120°の範囲の接触角を示す、請求項19に記載の電子装置。
【請求項21】
前記第1のポリマーが、フルオロアクリレートを含むアクリル系ポリマーを含む、請求項18に記載の電子装置。
【請求項22】
前記第2のポリマーが、脂肪族ポリシロキサンを含むシリコーン系ポリマーを含む、請求項18に記載の電子装置。
【請求項23】
前記1つ以上の構成部品が、電源スイッチ、音量スイッチ、ライト、液晶ディスプレイ、タッチスクリーン、タッチパネル、カメラ、アンテナ、内部コネクター、およびこれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の電子装置。
【請求項24】
前記内部コネクターが、印刷回路板、ボタン、高電圧の構成部品、およびこれらの組み合わせを含む、請求項23に記載の電子装置。
【請求項25】
前記高電圧の構成部品が、HDMIコンポーネントを含む、請求項24に記載の電子装置。
【請求項26】
前記内部コネクターが、オス型端部、メス型端部、またはその両方を有し、多層疎水性コーティングが、前記内部コネクターの前記オス型端部と前記メス型端部の両方の上に配置された、請求項24に記載の電子装置。
【請求項27】
携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、タブレット、ノートブック、ラップトップ、デスクトップコンピューター、音楽プレーヤー、カメラ、ビデオレコーダー、バッテリー、電子リーダー、無線装置、ゲーム機器、サーバー、ヘッドホン、ターミナルブロック、制御パネル、ウェアラブルデバイス、医療用具、無線制御装置、産業用装置、およびアプライアンスデバイスを含む、請求項18に記載の電子装置。
【請求項28】
前記印刷回路板上に前記第1ポリマーおよび第2のポリマーを含有しない同じ装置と比較して、水中に浸漬させた分数に関して、少なくとも10倍高い耐水性を示す、請求項18に記載の電子装置。
【請求項29】
前記印刷回路板上に前記第1ポリマーおよび第2のポリマーを含有しない同じ装置と比較して、水中に浸漬させた分数に関して、少なくとも25倍高い耐水性を示す、請求項28に記載の電子装置。
【請求項30】
前記印刷回路板上に前記第1ポリマーおよび第2のポリマーを含有しない同じ装置と比較して、水中に浸漬させた分数に関して、少なくとも50倍高い耐水性を示す、請求項29に記載の電子装置。
【請求項31】
前記第1のポリマーの層の厚さが20〜1000nmの範囲であり、かつ、前記第2のポリマーの層の厚さが50〜500nmの範囲である、請求項18に記載の電子装置。
【請求項32】
改善された疎水特性を有するスマートフォンであって、
表側と裏側を有する印刷回路板であり、前記裏側が、
・アクリル系ポリマーが外辺部周囲に配置された少なくとも1つのメスコネクター;
・前記アクリル系ポリマーがその上に配置された少なくとも1つの内部の構成部品;
および
・シリコーン系ポリマーがその上に配置された少なくとも1つの異なる内部の構成部品
を備え、
前記印刷回路板の前記表側が、
・前記アクリル系ポリマーが外辺部周囲に配置された少なくとも1つのメスコネクター;
・前記アクリル系ポリマーが外辺部周囲に配置された少なくとも1つのカメラ;
・前記アクリル系ポリマーがその上に配置された少なくとも1つの内部の構成部品;
および
・前記シリコーン系ポリマーがその上に配置された少なくとも1つの異なる内部の構成部品
を備えた、
印刷回路板を含み、
前記組み立てられたスマートフォンが、ハウジングの外辺部周囲に前記アクリル系ポリマーを更に含む、
スマートフォン。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
[001]本出願は、2015年9月11日に出願された米国特許仮出願第62/217,416号に対する優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
[002]本開示は、概して、異なるポリマー材料を異なる個々の装置の構成部品に適用し、得られた装置を疎水性にすることにより、携帯電話またはコンピューターなどの電子装置を保護する方法に関する。本開示はまた、そのようなポリマーコーティングによって保護される装置、例えば印刷回路板を備えた装置に関する。
【背景技術】
【0003】
[003]電子装置は、種々の汚染物によって悪影響を受けるおそれがある、導電性の構成部品および絶縁性の構成部品から構成される。水のような液体への曝露は、しばしばこれらの構成部品の腐食をもたらし、結果的に電子装置の機能を破壊する。さらに、そのような装置は、機能向上による高性能化に伴い、汚染物、特に液体からの保護を強化する必要がある、より危険な環境で使用されるようになっている。
【0004】
[004]結果として、耐水コーティングが、そのような装置の保護の形態として普及してきている。しかし、ほとんどの耐水技術は、(1種類の分子の)ナノコーティングの1つの形態および1つの適用方法しか実現していない。したがって、コーティングされた電子装置、ならびに電子装置を汚染物から保護することを可能にする方法であって、複数のコーティングまたは異なる化学作用を含む方法、およびそのようなコーティングを適用するための複数の方法、が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
[005]上記に鑑みて、装置の重要な構成部品に異なるポリマー材料を適用することにより電子装置を保護する方法が開示される。一実施形態において、開示された方法は、概して、印刷回路板の裏側および表側を任意の順序で処理することを含む。一実施形態において、回路板の裏側を処理することは、少なくとも1つのメスコネクターの外辺部周囲、少なくとも1つの内部の構成部品の表面、またはこれらの組み合わせに、第1のポリマーを適用すること;第1のポリマーを硬化させること;少なくとも1つの内部の構成部品に第2のポリマーを適用することを含む。一実施形態において、回路板の表側を処理することは、少なくとも1つのメスコネクターの外辺部周囲、1つ以上の接続されたカメラの外辺部周囲、少なくとも1つの内部の構成部品の表面、またはこれらの組み合わせに、第1のポリマーを適用すること;第1のポリマーを硬化させること;少なくとも1つの内部の構成部品に第2のポリマーを適用することを含む。
【0006】
[006]本方法は、次いで、印刷回路板およびバッテリーをハウジング内に設置することにより電子装置を組み立てること;印刷回路板の裏側に取り付けられた基部メスコネクターに、装置のオスコネクターを接続すること;ならびに外辺部周囲に吸上に対する保護被覆を達成するのに十分な量で、コネクターの側面に第1のポリマーを適用することを含む。
【0007】
[007]本明細書に記載された第1のポリマーは、第2のポリマーよりも高い硬度を有する。例えば、一実施形態において、第1のポリマーはアクリル系ポリマーを含む。このようなポリマーは、周囲条件に24時間曝露されたときに完全に硬化し得る。一実施形態において、第2のポリマーはシリコーン系ポリマーを含む。このようなポリマーは、周囲条件に最長30分間曝露されたときに硬化し得る。
【0008】
[008]一実施形態において、本明細書に記載された処理方法により汚染物から保護される電子装置が開示される。例えば、表側と裏側を有する印刷回路板であって、裏側が、第1のポリマーが外辺部周囲に配置された少なくとも1つのメスコネクター;第1のポリマーがその上に配置された少なくとも1つの内部の構成部品;および第2のポリマーがその上に配置された少なくとも1つの異なる内部の構成部品を含む印刷回路板が開示される。
【0009】
[009]一実施形態において、印刷回路板の表側は、第1のポリマーが外辺部周囲に配置された少なくとも1つのメスコネクター;第1のポリマーが外辺部周囲に配置された少なくとも1つのカメラ;第1のポリマーが上に配置された少なくとも1つの内部の構成部品;第2のポリマーが上に配置された少なくとも1つの異なる内部の構成部品を含む。組み立てられた電子装置は、ハウジングの外辺部周囲に配置された第1のポリマーを更に含む。
【0010】
[010]前述の概要説明および下記の詳細な説明は、例示であり、例示のみを目的とし、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。
【0011】
[011]添付図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を構成するものであり、本発明のいくつかの実施形態を示し、説明と併せて本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】[012]本発明に従い印刷回路板を処理するために用いられる方法の概要を示すフローチャートである。
図2】[013]本発明に従いアクリル系ポリマーおよびシリコーン系ポリマーにより印刷回路板を処理するために用いられる、より具体的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[014]本明細書で使用するとき、「周囲条件」とは、22.2℃(72°F)および湿度45%を指す。
[015]本明細書で使用するとき、「導電性に対して不活性である」とは、材料が電気を通さない、または電荷に抵抗することを意味する。
【0014】
[016]本明細書で使用されるとき、「水接触角」は、本明細書に記載のポリマーで処理された304ステンレス鋼表面に置かれた水滴を使用して測定される。例えば、硬化後に90°超の水接触角を有する第1のポリマーは、304ステンレス鋼表面が第1のポリマーでコーティングされていることを意味し、この場合、コーティングは硬化され、その後1つの水滴がその上に滴下される。第2のポリマーの水接触角についても同様である。
【0015】
[017]異なる支持体上に配置された本明細書に記載のコーティングの疎水性を決定するために、他の接触角も用いた。例えば、処理済みガラススライドおよび処理済みアルミニウム支持体上で測定された水接触角および油接触角が、本明細書に記載されている。これらの接触角を測定するために使用される方法は、処理済み304ステンレス鋼表面に関して記載された方法と同様のものである。
【0016】
[018]水などの汚染物から電子装置を保護するために、装置の少なくとも1つの構成部品に適用し、印刷回路板上に配置された異なる接続部および構成部品に異なるポリマーを適用する方法が開示される。
【0017】
[019]ここで図1を参照されたい。図1は、本開示の一実施形態、具体的には印刷回路板100を備える電子装置を保護する全体的プロセスのフローダイヤグラムを示す。
[020]図1に記載の通り、本方法は、印刷回路板の裏側100に配置された1つ以上のコネクターに第1のポリマーを適用すること(110)、および同じく配置された構成部品に第1のポリマーを適用すること(120)を含む。本方法は次に、PCB裏側の異なる構成部品に第2のポリマーを適用すること(140)の前に、第1のポリマーを硬化させること(130)を含む。第1のポリマーおよび第2のポリマーの両方は、90°より大きい水接触角、例えば、少なくとも110°、115°以上、または100〜120°の範囲の接触角によって決定される、疎水性を示す層を形成する。
【0018】
[021]回路板の表側150を処理することは、少なくとも1つのメスコネクターの外辺部周囲に第1のポリマーを適用すること(160)、1つ以上の接続されたカメラの外辺部周囲に第1のポリマーを適用すること(170)、少なくとも1つの内部の構成部品の表面に第1のポリマーを適用すること(180)、またはこれらの組み合わせを含む。次に、少なくとも1つの内部の構成部品に第2のポリマーを適用すること(192)の前に、第1のポリマーを硬化させる(190)。
【0019】
[022]図1のフローチャートに更に記載されている通り、本方法は、電子装置を組み立てること(195)を次に含む。電子装置を組み立てることは、印刷回路板およびバッテリーを適切なハウジング内に設置すること、および印刷回路板の裏側に取り付けられた基部メスコネクターに、装置のオスコネクターを接続することを含む。最後に、外辺部周囲に吸上に対する保護被覆を達成するのに十分な量で、コネクターの側面に第1のポリマーを適用する(198)。
【0020】
[023]一実施形態において、第1のポリマーは、第2のポリマーよりも高い硬度を有する。例えば、第1のポリマーは、フルオロアクリレートなどのアクリル系ポリマーを含んでいてもよい。本明細書で用いられる場合がある、フッ素化アクリルの1つの非限定例を下記(I):
【0021】
【化1】
【0022】
に示す。
[024]硬化時に、アクリル系ポリマーを含むコーティングは、優れた絶縁特性および耐食特性を示す硬質バリアを形成する。フッ素化アクリル系ポリマーの硬化は、典型的に、ポリマーを周囲条件に少なくとも24時間曝露することを含む。上記の硬化は、24時間未満の時間にわたり、加熱条件下で行ってもよい。硬化は、ポリマー材料を硬化させるのに十分な温度および時間で行われる。一実施形態において、第1のポリマーは、単一層内のコネクターおよび/または構成部品に適用される。一実施形態において、シリコーン系ポリマー層の厚さは、20〜1000nmの範囲である。
【0023】
[025]一実施形態において、第2のポリマーはシリコーン系ポリマーを含む。本明細書で用いられる場合がある、シリコーン系ポリマーの1つの非限定例は、下記(II):
【0024】
【化2】
【0025】
に示された脂肪族シロキサンである。
[026]硬化時に、シリコーン系ポリマーを含むコーティングは、改善された疎水性、改善された疎油性および低減された摩擦を含む、改善された表面特性をもたらす。コーティングされた表面はまた、耐食特性をも示す。シリコーン系ポリマーの硬化は、典型的に、ポリマーを周囲条件に少なくとも30分間曝露することを含む。あるいは、硬化は、80℃超の温度、例えば90〜110℃で、ポリマーを硬化させるのに十分な時間加熱するなどの加熱条件下で行ってもよい。そのような時間範囲は、典型的には最大5分であるが、ポリマー組成物および層厚に応じて2〜10分の範囲であってもよい。一実施形態において、シリコーン系ポリマー層の厚さは、50〜500nmの範囲である。
【0026】
[027]シリコーン系ポリマーは、有機金属化合物などの、少なくとも1種の疎水試薬を更に含んでいてもよい。一実施形態において、有機金属ハロゲン材料は、金属原子に結合した、少なくとも1つのアルキル基および少なくとも1つのハロゲン原子を含む。金属原子の非限定例としては、チタン、ジルコニウム、タンタル、ゲルマニウム、ホウ素、ストロンチウム、鉄、プラセオジム、エルビウム、セリウム、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、リンおよびケイ素が挙げられる。
【0027】
[028]一実施形態において、第1および第2のポリマーは、浸漬、噴霧、真空蒸着、およびワイプコーティングから選択される、少なくとも1つの自動堆積技術または手動堆積技術によって適用される。ポリマーを適用する前または後に追加の工程を実施してもよい。例えば、一実施形態において、本方法は、いずれかの一方のポリマー材料を適用する前に電子部品を洗浄し、粉塵、汚れまたはその他の表面夾雑物を除去することを更に含んでいてもよい。
【0028】
[029]開示された方法を用いてコーティングすることができる電子部品の非限定例としては、電源スイッチ、音量スイッチ、ライト、液晶ディスプレイ、タッチスクリーン、タッチパネル、カメラ、アンテナ、印刷回路板などの内部コネクター、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0029】
[030]内部コネクターがオス型端部とメス型端部を有する場合、本方法は、オス型端部をメス型端部に接続する前に、コネクターのオス型端部とメス型端部の両方にポリマーを適用することを含むと理解される。
【0030】
[031]また、少なくとも1つのコネクターおよび/または1つの内部の構成部品上に疎水性ポリマーを含むことから、水などの汚染物から保護される、電子装置も開示される。開示された方法を使用して保護することができる、少なくとも1つ以上の装置の非限定例としては、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、タブレット、ノートブック、ラップトップ、デスクトップコンピューター、音楽プレーヤー、カメラ、ビデオレコーダー、バッテリー、電子リーダー、無線装置、ゲーム機器、サーバー、ヘッドホン、ターミナルブロック、および制御パネルが挙げられる。さらに、開示された方法を使用して保護することができる他の装置としては、ウェアラブルデバイス、医療用具、無線制御装置、産業用装置、アプライアンスデバイスが挙げられる。
【0031】
[032]前述のように、第1のポリマーと第2のポリマーは共に、90°より大きい水接触角によって決定される疎水性を示し、第1の層および第2の層は内部の構成部品の最上部に多層疎水性コーティングを形成する。一実施形態において、第1および第2のポリマーは、少なくとも110°の水接触角、例えば115°以上、または100〜120°の接触角を有する。
【0032】
[033]本明細書に記載されるように保護される電子装置は、水中に浸漬させたときの誤作動までの時間により測定した場合、少なくとも10倍高い耐水性を有することが判明している。特に、本願発明者らは、電子装置の非常に汚染されやすい重要部品上にバリア層として多層疎水性コーティングを形成することにより、装置の耐水性は、保護されていない装置と比較して、少なくとも10倍、例えば25倍超、または50倍超に増加し得ることを見出した。さらに、本明細書に記載の多層疎水性コーティングは導電性に対して不活性であるので、耐水性を改善させる一方で、得られた電子装置の機能と干渉することもない。
【0033】
[034]本明細書に開示されたコーティング溶液の低い表面張力は、特に薄型の構成部品の場合、表面の濡れを増大させる。本明細書に記載されたポリマーはまた、限定されないが水、炭化水素、シリコーンおよびフォトレジストを含む流体に対する、優れた撥水性、耐濡れ性および耐粘着性をも実現する。その結果、乾燥フィルムは表面エネルギーが低くなり、水性液体を数珠状にして排出することを自由に行うことができる。
【0034】
[035]さらに、本明細書に記載されたポリマー(コーティングとして適用される場合、高分子フィルム)は、ヘプタン、トルエンおよび水などの溶剤に不溶性である。本明細書に記載されたポリマーに関連した追加的利点はそれらのポリマーの柔軟性である。これらの層は熱処理または刺激の強い化学薬品を必要としないので、ガラス、アルミニウムなどの金属、ステンレス鋼、およびポリマーを含む、種々の支持体に適用することができる。
【0035】
[036]本発明の特徴および利点は、例示の目的で記載された以下の実施例によって、より完全に示されるが、いかなる意味でも本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0036】
[037]以下の実施例は、装置の最終組み立ての前に、スマートフォンの異なる構成部品に2種の異なるポリマーを適用することにより、スマートフォンを汚染物から保護することの段階的プロセスを示す。
【0037】
[038]本プロセスは、本明細書中で参照される図2に記載されており、分解されたスマートフォンに対して開始される。まず、印刷回路板の裏側200を処理した。フレキシブルプリント回路(FPC)を基部とするメスコネクターの外辺部周囲にフッ素化アクリルポリマーを適用した(210)。次いで、PCBの裏側200に配置された各種内部の構成部品にこの同じポリマーを適用した(220)。
【0038】
[039]周囲条件に24時間曝露することにより、フッ素化アクリルポリマーを硬化させた(225)。フッ素化アクリルポリマーが完全に硬化した後、PCBの裏側200に配置された各種内部の構成部品に脂肪族シロキサンを適用した(230)。
【0039】
[040]次に、回路板の表側240を処理した。この方法は、フレキシブルプリント回路(FPC)を基部とするメスコネクターの外辺部周囲にフッ素化アクリルポリマーを適用すること(250)を含んでいた。次に、後続の工程において、回路板の表側240に配置された接続されたカメラの外辺部周囲にフッ素化アクリルを適用し(260)、そして、および同じく配置された各種内部の構成部品にフッ素化アクリルを適用した(270)。
【0040】
[041]周囲条件に24時間曝露することにより、フッ素化アクリルポリマーを硬化させた(280)。フッ素化アクリルポリマーが完全に硬化した後、PCBの表側240に配置された各種内部の構成部品に脂肪族シロキサンを適用した(285)。
【0041】
[042]本方法は次に、電子装置を組み立てること(290)を含む。電子装置を組み立てることは、印刷回路板およびバッテリーを適切なハウジング内に設置すること、および印刷回路板の裏側に取り付けられた基部メスコネクターに、装置のオスコネクターを接続することを含む。最後に、外辺部周囲に十分な吸上防止が生じるまで、各コネクターの側面にフッ素化アクリルポリマーを適用した(295)。
【0042】
[043]次に、この実施例のプロセスにより保護されたスマートフォンを試験して、本発明のプロセスの有効性を決定した。上記のように異なるポリマーで保護されたスマートフォンデバイスは、開示されたポリマーで保護されていない同じデバイスと比較して、少なくとも10倍長い保護時間を示すことが判明した。
【0043】
[044]特に指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲において用いられた成分、反応条件などの量を表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」により修飾されていると理解されるべきである。したがって、別段の指示がない限り、以下の明細書および添付された特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、近似値であり、本開示により得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。
【0044】
[045]本発明の他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書に開示された本発明の実施から、当業者にとって明らかであろう。本明細書および実施例は単なる例示と考えられ、本発明の真の範囲は以下の特許請求の範囲により示されることが意図されている。
図1
図2