(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706325
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ハイブリッド懸架アーム
(51)【国際特許分類】
B60G 7/00 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
B60G7/00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-534584(P2018-534584)
(86)(22)【出願日】2016年12月29日
(65)【公表番号】特表2019-500274(P2019-500274A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】KR2016015513
(87)【国際公開番号】WO2017116183
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2018年8月16日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0189881
(32)【優先日】2015年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0145447
(32)【優先日】2016年11月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517378083
【氏名又は名称】イルジン・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソン・グン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウ・キム
(72)【発明者】
【氏名】テ・ソン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ソク・ユ
(72)【発明者】
【氏名】セ・ウン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョク・クォン
(72)【発明者】
【氏名】イク・ジン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・イン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・グク・パク
(72)【発明者】
【氏名】スン・チャン・クォン
(72)【発明者】
【氏名】デ・ジュ・イ
【審査官】
宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0084834(US,A1)
【文献】
特開平08−318722(JP,A)
【文献】
特開2011−116340(JP,A)
【文献】
特開2011−116336(JP,A)
【文献】
特開2011−116342(JP,A)
【文献】
特表2018−514463(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0175786(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材質のアッパーアームボディーと、
前記アッパーアームボディーの内部に挿入される形態で前記アッパーアームボディーと一体に射出成形されるインサートと、を含み、
前記アッパーアームボディーは、全重量に対して50%以上90%以下の重量比を有し、
前記アッパーアームボディーは、上部壁と前記上部壁から下方に延びる2つの側壁とを含み、
前記インサートは、前記アッパーアームボディーを支持し、プラスチック材質からなり、
前記インサートは、上部壁と前記インサートの上部壁から下方に延びる2つの側壁とを含み、
前記インサートの上部壁と側壁とは、それぞれ前記アッパーアームボディーの上部壁と側壁とに結合され、
前記インサートは、前記インサートの上部壁及び側壁により囲まれた空間内に配置され前記インサートの上部壁及び側壁を支持する補強リブを含み、
前記補強リブの両端のそれぞれが、前記インサートの側壁のそれぞれに結合されて前記インサートの側壁を互いに連結し、
前記補強リブの垂直方向の長さは、前記インサートの側壁の垂直方向の長さより短く、
前記補強リブは、一定の垂直方向の長さを有する第1部分と、前記第1部分と前記インサートの側壁との間に配置され、前記第1部分から前記インサートの側壁に行くほど増加する垂直方向の長さを有する第2部分とを含む、ハイブリッドアッパーアーム。
【請求項2】
前記アッパーアームボディーには、前記アッパーアームボディーの幅方向内側に結合フランジが折り曲げられるように形成され、
前記結合フランジは、前記インサートに挿入されて結合される、請求項1に記載のハイブリッドアッパーアーム。
【請求項3】
前記アッパーアームボディーは、2つのレッグ部と前記2つのレッグ部を一体に連結するジョイント部とを含み、
前記2つのレッグ部の各先端部には、ブッシュパイプが溶接で結合され、
前記ジョイント部の先端部には、ボールジョイントパイプが溶接で結合され、
前記ブッシュパイプにはそれぞれ、ブッシュが押し込まれて結合され、
前記ボールジョイントパイプには、ボールジョイントが押し込まれて結合される、請求項1に記載のハイブリッドアッパーアーム。
【請求項4】
前記ボールジョイントパイプは、前記ブッシュパイプ間の中央部位に位置し、
前記ブッシュパイプは、水平方向に開口されるように配置され、
前記ボールジョイントパイプは、垂直方向に開口されるように配置される、請求項3に記載のハイブリッドアッパーアーム。
【請求項5】
前記アッパーアームボディーには、少なくとも1つのホールが貫通して形成され、
前記インサートには、前記ホールに挿入されて充填され前記ホールの周辺縁部まで拡張される少なくとも1つの結合突起が形成される、請求項1に記載のハイブリッドアッパーアーム。
【請求項6】
前記アッパーアームボディーは、2つのレッグ部と前記2つのレッグ部を一体に連結するジョイント部とを含み、
前記インサートは、2つのレッグ部と前記2つのレッグ部を一体に連結するジョイント部とを含み、
前記少なくとも1つのホールは、前記2つのレッグ部のそれぞれに長手方向に沿って所定間隔を開けて配置された少なくとも1つの小径ホールを含み、
前記少なくとも1つの結合突起は、前記少なくとも1つの小径ホールに挿入されて充填されると共に、前記少なくとも1つの小径ホールの周辺縁部まで半径方向に拡張された大きさに形成される、請求項5に記載のハイブリッドアッパーアーム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの小径ホールは、互いに隣接するように配置された2つ以上の小径ホールを含み、
前記2つ以上の小径ホールの間には、前記小径ホールより直径が相対的に大きい少なくとも1つの中径ホールが形成され、
前記中径ホールには前記インサートの一部が挿入されて前記中径ホールの周辺縁部まで半径方向に拡張された中径結合枠が前記インサートに形成される、請求項6に記載のハイブリッドアッパーアーム。
【請求項8】
前記少なくとも1つのホールは、前記アッパーアームボディーの前記ジョイント部に形成された大径ホールを含み、
前記大径ホールには前記インサートの一部が挿入されて前記大径ホールの周辺縁部まで半径方向に拡張された大径結合枠が前記インサートに形成される、請求項7に記載のハイブリッドアッパーアーム。
【請求項9】
前記インサートには、少なくとも1つの格子柄模様の補強リブが一体に突出して形成される、請求項1に記載のハイブリッドアッパーアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用懸架装置の懸架アームに関するものであって、具体的には、ロアコントロールアームまたはアッパーコントロールアームのような車両用懸架アームをプラスチックとスチールの複合材質で作った車両用ハイブリッド懸架アームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に車両の懸架装置は、車体と車輪を連結する装置である。車両の懸架装置は、路面から車体に伝達される振動や衝撃を吸収するスプリング、このスプリングの作動を調節するショックアブソーバ、車輪の作動を制御する懸架アームや懸架リンクを含む。
【0003】
一方、車輪の作動を制御する方式としては、スイングアーム式、ウィッシュボーン式及びマクファーソンストラット式などがあり、ウィッシュボーン式制御方式を用いる懸架装置は、車輪と締結されたナックルを車体に連結する懸架アーム(ロアコントロールアーム)を備えている。即ち、懸架アームは、車体を構成するクロスメンバーやサブフレームにその一端が連結され、その他端は、ナックルにボールジョイントを介して連結される。懸架アームは、このような構成を通じて車輪を車体に支持させ、車両の走行状況に応じて車輪のトーインを適宜制御し、車両の直進走行性と操向安定性を向上させるなどの役割をする。
【0004】
前記のような従来の懸架アームは、鋳物タイプとプレスタイプ方式で製造されてきた。具体的には、鋳物タイプ方式によると、スチールまたはアルミニウム溶湯を金型に注入して凝固させて成形することにより懸架アームが製造される。また、プレスタイプ方式によると、スチール素材の鋼板を、上板と下板をプレスで製作し、両板を溶接して懸架アームを製作する。
【0005】
ところで、前記のような従来の懸架アームの製造方式では、スチールを鋳物に製作したり、またはスチール素材を用いて上板と下板をそれぞれプレス工法で製作した後に溶接で結合する方式を用いる。この場合、スチール素材の特性上、重量が重く、製作工程が多く要され、鋼板の溶接結合による変形及び剛性脆弱が憂慮される問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の多様な実施例は、このようなスチールまたはアルミニウム素材の懸架アームが有する問題を解決して、軽量化を図るために、複合材質のハイブリッド懸架アームを提供するものである。
【0007】
また、本開示の多様な実施例は、剛性の増大及び重量低減を同時に追求できる車両用ハイブリッド懸架アームを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施例によるハイブリッドロアアームは、金属材質で形成されるロアアームボディーと、ロアアームボディーの内部に挿入される形態でロアアームボディーと一体に射出成形されるインサートと、を含み、ロアアームボディーは、全重量に対して50%以上90%以下の重量比を有することができる。
【0009】
ロアアームボディーは、スチール材質またはアルミニウム材質で形成されることができる。
【0010】
ロアアームボディーの一端には、ボールジョイントが結合され、ロアアームボディーの他端には、第1ブッシュが結合され、ボールジョイントと第1ブッシュとの間のロアアームボディーの角部部位には、第2ブッシュが結合され得る。
【0011】
ロアアームボディーは、平板形状のロアアームボディープレートと、ロアアームボディープレートの縁部に沿って連続するように形成され、ロアアームボディープレートに対して垂直に折り曲げられた第1及び第2壁フランジとを含むことができる。
【0012】
第1壁フランジの一端と第2壁フランジの一端は、互いに分離されて第1結合溝を形成し、第1結合溝には、ボールジョイントのボールジョイントパイプが挿入されて一体に結合され、第1壁フランジの他端と第2壁フランジの他端は、互いに分離されて第2結合溝を形成し、第2結合溝には、第2ブッシュの第2ブッシュパイプが挿入されて一体に結合され得る。
【0013】
ロアアームボディープレートには、第1ブッシュを装着するための第1ブッシュパイプフランジが一体に形成され得る。
【0014】
第1及び第2壁フランジの各上端には、ロアアームボディーの内側に折り曲げられた折曲フランジが一体に形成され得る。
【0015】
ロアアームボディープレートには、少なくとも1つの貫通ホールが形成され、貫通ホールには、インサートの結合突起が満たされて突出することができる。
【0016】
インサートは、ロアアームボディープレートの形状と対応する形状をしたインサートボディーと、インサートボディーの枠に沿って垂直に延びて形成され、第1及び第2壁フランジにそれぞれ対応する形状を有する第1及び第2枠フランジと、第1及び第2枠フランジとインサートボディーを互いに連結して補強する多数個の補強リブとを含むことができる。
【0017】
第1及び第2枠フランジの一端は、ボールジョイントのボールジョイントパイプの一部を取り囲むことができる。
【0018】
第1及び第2枠フランジの他端は、互いに一体に連結されて第2ブッシュの第2ブッシュパイプの一部と結合することができる。
【0019】
第1枠フランジは、第1ブッシュパイプフランジを取り囲む形態で形成され得る。
【0020】
多数個の補強リブは、第1及び第2枠フランジとインサートボディーを連結することができる。
【0021】
多数個の補強リブは、格子柄形態で形成され得る。
【0022】
本開示の他の実施例によるハイブリッドアッパーアームは、金属材質のアッパーアームボディーと、アッパーアームボディーの内部に挿入されて結合されるインサートとを含み、アッパーアームボディーは、全重量に対して50%以上90%以下の重量比を有することができる。
【0023】
アッパーアームボディーには、その幅方向内側に結合フランジが折り曲げられるように形成され得る。
【0024】
結合フランジは、インサートに挿入されて結合され得る。
【0025】
アッパーアームボディーは、2つのレッグ部と2つのレッグ部を一体に連結するジョイント部とを含むことができる。
【0026】
2つのレッグ部の各先端部には、ブッシュパイプが溶接で結合され、ジョイント部の先端部にもボールジョイントパイプが溶接で結合され得る。
【0027】
ボールジョイントパイプは、ブッシュパイプ間の中央部位に位置し、ブッシュパイプは、水平方向に開口されるように配置され、ボールジョイントパイプは、垂直方向に開口されるように配置され得る。
【0028】
ブッシュパイプにはそれぞれ、ブッシュが押し込まれて結合され、ボールジョイントパイプには、ボールジョイントが押し込まれて結合され得る。
【0029】
アッパーアームボディーには、少なくとも1つのホールが貫通して形成され、インサートには、1つ以上のホールに挿入されて充填されると共に、少なくとも1つのホールの周辺縁部まで拡張される少なくとも1つの結合突起が形成され得る。
【0030】
アッパーアームボディーは、2つのレッグ部と2つのレッグ部を一体に連結するジョイント部とを含み、インサートも、2つのレッグ部と2つのレッグ部を一体に連結するジョイント部とを含み、少なくとも1つのホールは、2つのレッグ部のそれぞれに長手方向に沿って所定間隔を開けて配置された少なくとも1つの小径ホールを含み、少なくとも1つの結合突起は、少なくとも1つの小径ホールに挿入されて充填されると共に、少なくとも1つの小径ホールの周辺縁部まで半径方向に拡張された大きさに形成され得る。
【0031】
少なくとも1つの小径ホールは、互いに隣接するように配置された2つ以上の小径ホールを含み、2つ以上の小径ホールの間には、直径が相対的に大きい少なくとも1つの中径ホールが形成され、中径ホールにはインサートの一部が挿入されて中径ホールの周辺縁部まで半径方向に拡張された中径結合枠がインサートに形成され得る。
【0032】
少なくとも1つのホールは、アッパーアームボディーのジョイント部に形成された大径ホールを含み、大径ホールにはインサートの一部が挿入されて大径ホールの周辺縁部まで半径方向に拡張された大径結合枠がインサートに形成され得る。
【0033】
インサートには、少なくとも1つの格子柄模様の補強リブが一体に突出して形成され得る。
【発明の効果】
【0034】
本開示の実施例によるハイブリッド懸架アームによると、金属材質の懸架アームボディーに軽量のプラスチック材質からなるインサートが一体に結合され、従来のスチールまたはアルミニウム素材で製作された懸架アームに比べて、相対的に重量は軽いながらも全体的な剛性は効果的に増大させることができる。
【0035】
このような懸架アームを車両に適用する場合に、剛性の増大により車両の走行安定性を向上させることができ、耐久性も増大でき、重量削減により車両の燃費向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本開示の一実施例によるハイブリッドロアアームを示す斜視図である。
【
図2】本開示の一実施例によるハイブリッドロアアームの下部を示す斜視図である。
【
図3】本開示の一実施例によるハイブリッドロアアームの金属材質のロアアームボディーの斜視図である。
【
図4】本開示の一実施例によるハイブリッドロアアームのプラスチック素材で射出されたインサートの斜視図である。
【
図5】本開示の他の実施例による車両用ハイブリッドアッパーアームの斜視図である。
【
図6】本開示の他の実施例による車両用ハイブリッドアッパーアームの分解斜視図である。
【
図7】本開示の他の実施例による車両用ハイブリッドアッパーアームの下部を示す斜視図である。
【
図9】本開示の多様な実施例によるハイブリッド懸架アームにおける重量に対する最大荷重を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示の実施例は、本開示の技術的思想を説明する目的で例示されたものである。本開示による権利範囲が、以下に提示される実施例やこれらの実施例に関する具体的説明で限定されるものではない。
【0038】
本開示に用いられる全ての技術的用語及び科学的用語は、異なって定義されない限り、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有する。本開示に用いられる全ての用語は、本開示をさらに明確に説明する目的で選択されたものであり、本開示による権利範囲を制限するために選択されたものではない。
【0039】
本開示で用いられる「含む」、「備える」、「有する」等のような表現は、当該表現が含まれる語句または文章で異なって言及されない限り、他の実施例を含む可能性を内包する開放型用語(open−ended terms)と理解されるべきである。
【0040】
本開示で記述された単数型の表現は、異なって言及されない限り、複数型の意味を含むことができ、これは請求の範囲に記載された単数型の表現にも同様に適用される。
【0041】
本開示で、ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるとか「接続されて」いると言及された場合、前記ある構成要素が前記他の構成要素に直接的に連結され得たり接続され得るものとして、または新たな他の構成要素を介して連結され得たり接続され得るものとして理解されるべきである。
【0042】
以下、添付した図面を参照して、本開示の実施例を説明する。添付の図面において、同一または対応する構成要素には、同一の参照番号が付与されている。また、以下の実施例の説明において、同一または対応する構成要素を重複して記述することが省略され得る。しかし、構成要素に関する記述が省略されても、そのような構成要素がある実施例に含まれないものとして意図されはしない。
【0043】
説明の便宜上、図面で左側は「一側」、「一端」、「一端部」及びこれと類似の名称で指し、図面で右側は「他側」、「他端」、「他端部」及びこれと類似の名称で指すことにする。
【0044】
下記で説明されるハイブリッド懸架アームは、ハイブリッドロアアーム10及びハイブリッドアッパーアーム100を含むことができる。
【0045】
図1は、一実施例によるハイブリッドロアアーム10を示す斜視図であり、
図2は、一実施例によるハイブリッドロアアーム10の下部を示す斜視図である。
【0046】
ハイブリッドロアアーム10は、スチールやアルミニウムのような金属材質からなるロアアームボディー20と、プラスチック材質で射出成形され、ロアアームボディー20と射出成形により一体に結合されるインサート30とを含むことができる。
【0047】
ハイブリッドロアアーム10は、全体的な形状が概ね「L」字状を有することができる。ハイブリッドロアアーム10の一端には、ボールジョイント40が装着され得、他端には、第1ブッシュ50が結合され得、ボールジョイント40と第1ブッシュ50との間の角部部位には、第2ブッシュ60が結合され得る。
【0048】
ボールジョイント40は、円筒状のボールジョイントパイプ42と、このボールジョイントパイプ42に収容されて回転自在に支持されるボールスタッド44とを含むことができる。ボールジョイント40は、ハイブリッドロアアーム10を、示されていないナックルと相対回転自在に連結する機能をし、第1及び第2ブッシュ50、60は、ハイブリッドロアアーム10を車体に弾力的に連結するようにする機能をすることができる。
【0049】
図3は、一実施例によるハイブリッドロアアーム10の金属材質のロアアームボディー20の斜視図である。
【0050】
ロアアームボディー20は、例えば、スチール素材で製作する場合に、車両用高張力鋼板をプレス工法を用いて成形されることができる。
【0051】
ロアアームボディー20は、概ね平板形状をしたロアアームボディープレート22と、このロアアームボディープレート22の縁部に沿って概ね垂直に折り曲げられた壁フランジ24、26とを含むことができる。
【0052】
図1を参照すると、ロアアームボディープレート22には、少なくとも1つの貫く貫通ホール222が形成され、後述するインサート30の結合突起33が各貫通ホール222を満たしてロアアームボディープレート22の縁部外側及び半径方向にさらに突出することができる。貫通ホール222と結合突起33は、ロアアームボディー20とインサート30の結合剛性を向上させることができる。
【0053】
壁フランジ24、26は、ロアアームボディープレート22の一端から他端を経由して角部部位まで一体に連結された第1壁フランジ24と、角部部位から他端まで一体に連結された第2壁フランジ26とを含むことができる。第1壁フランジ24と第2壁フランジ26は、互いに連結されない構造を有することができる。
【0054】
図2を参照すると、ロアアームボディー20の一端には、ボールジョイントパイプ42が、例えば、溶接で一体に結合され得る。ロアアームボディープレート22の一端には、ボールジョイントパイプ42を挿入するための円弧状をした結合溝224が形成され得る。このような結合溝224にボールジョイントパイプ42が挿入された状態でロアアームボディープレート22と第1及び第2壁フランジ24、26の一端242、262とに溶接で結合され得る。
【0055】
ロアアームボディープレート22の他端には、第1ブッシュパイプフランジ226が形成されて、第1ブッシュ50が第1ブッシュパイプフランジ226に、例えば、押し込みで結合され得る。
【0056】
角部部位には、第1壁フランジ24の他端244と第2壁フランジ26の他端264がそれぞれ概ね円弧状で形成されて第2結合溝228を形成することができる。第2ブッシュ60の第2ブッシュパイプ62が第2結合溝228に挿入された状態で第1壁フランジ24の他端244と第2壁フランジ26の他端264及びロアアームボディープレート22に溶接で結合され得る。
【0057】
第1壁フランジ24と第2壁フランジ26の各上端には、ロアアームボディー20の内側に折り曲げられた折曲フランジ246、266が一体に形成され得る。各折曲フランジ246、266は、ロアアームボディー20とインサート30の結合力を向上させることができる。
【0058】
図4は、一実施例によるハイブリッドロアアーム10のプラスチック素材で射出されたインサート30の斜視図である。
【0059】
インサート30は、ロアアームボディー20の内部に挿入され、インサート30の射出成形時にロアアームボディー20と一体に結合され得る。
【0060】
ロアアームボディー20の重量は、ハイブリッドロアアーム10の全重量に対して最小50%以上で、最大90%以内の重量比で形成され得る。
【0061】
インサート30は、全体的に概ね「L」字状をなしてロアアームボディー20の形状と対応する形状をしたインサートボディー32と、このインサートボディー32の枠に沿って概ね垂直に延びて形成され、第1及び第2
壁フランジ24、26にそれぞれ対応する形状を有する第1及び第2枠フランジ34、36、及び第1及び第2枠フランジ34、36とインサートボディー32を互いに連結して補強する多数個の補強リブ38とを含むことができる。
【0062】
第1枠フランジ34の一端と第2枠フランジ
36の一端は、ボールジョイントパイプ42の一部を取り囲む形態で形成され得る。第1枠フランジ34は、第1ブッシュパイプフランジ226を取り囲む形態で形成され得る。第1枠フランジ34の他端と第2枠フランジ
36の他端は、互いに一体に連結された状態で第2ブッシュパイプ62の一部に結合する形態で形成され得る。
【0063】
多数個の補強リブ38は、第1及び第2枠フランジ34、36とインサートボディー32を互いに連結して補強するために互いに交差する方式で、例えば、格子柄形態で形成され得る。このようにインサート30は、多数個の補強リブ38を備えることにより、構造的な剛性が増大し、補強リブ38の間には空き空間が多数個で存在してインサート30の重量を減らすことができる。
【0064】
図5は、他の実施例による車両用ハイブリッドアッパーアーム100の斜視図である。
図6は、他の実施例による車両用ハイブリッドアッパーアーム100の分解斜視図である。
【0065】
他の実施例による車両用ハイブリッドアッパーアーム100は、スチールやアルミニウムのような金属材質を一般的なプレス工法で製作できるアッパーアームボディー110を含むことができる。アッパーアームボディー110は、2つのレッグ部102と、この2つのレッグ部102を一体に連結するジョイント部104とを含むことができる。
【0066】
2つのレッグ部102の各先端部には、ブッシュパイプ116が溶接で結合され得、ジョイント部104の先端部にもボールジョイントパイプ118が溶接で結合され得る。2つの各レッグ部102の先端部とジョイント部104の先端部には、概ね半円筒状の結合ホールが形成され、各パイプ116、118が結合ホールに形合して溶接で結合され得る。
【0067】
ボールジョイントパイプ118は、ブッシュパイプ116間の中央部位に位置することができ、また、ブッシュパイプ116は、水平方向に開口されるように配置される一方、ボールジョイントパイプ118は、垂直方向に開口されるように配置され得る。2つのブッシュパイプ116にはそれぞれ、ブッシュ130が押し込まれて結合され得、各ブッシュ130は、例えば、車体にボルトなどで締結されることができる。
【0068】
ボールジョイントパイプ118には、ボールジョイント140が押し込まれて結合され得る。ボールジョイント140は、ボールスタッド142、これを取り囲んで回転自在に支持するベアリング141、ボールスタッド142を取り囲んで外部異物の侵入を防止するダストカバー143、このダストカバー143をボールスタッド142に組み立てるためのリングクリップ144、及びボールスタッド142の上部に被せられるプロテクタ145等を含むことができる。
【0069】
ジョイント部104には、直径が相対的に大きい大径ホール107が貫通して形成され得、各レッグ部102には、その長手方向に沿って相対的に小さい大きさの中径ホール106と小径ホール105が所定間隔を開けて多数個で配置され得る。中径ホール106は、小径ホール105の間に配置され得、中径ホール106と小径ホール105の個数は、必要に応じて適宜調節することができる。
【0070】
アッパーアームボディー110の内部には、プラスチック材質で射出成形され、アッパーアームボディー110と射出成形により一体に結合されるインサート120が備えられる。アッパーアームボディー110の重量は、ハイブリッドアッパーアーム100の全重量に対して最小50%以上で、最大90%以内の重量比で形成され得る。
【0071】
インサート120は、概ねアッパーアームボディー110と類似の形状を有することができる。即ち、2つのレッグ部122及びそのジョイント部124を含むことができ、ジョイント部124には、大径ホール125が貫通して形成され得る。
【0072】
ジョイント部124の大径ホール125の縁部は、厚さ方向及び半径方向に拡張された大径結合枠126が形成され、この大径結合枠126は、プラスチックインサート120の射出時にアッパーアームボディー
110の大径ホール107の周辺縁部に沿って配置されるように形成され、アッパーアームボディー110の内部に結合されたインサート120がアッパーアームボディー110から抜けないように、アッパーアームボディー110とインサート120との間の結合力を向上させることができる。
【0073】
インサート120の各レッグ部122には、長手方向に沿って多数個の結合突起127が所定間隔を開けて形成され得る。各結合突起127は、インサート120の射出時にアッパーアームボディー110の各レッグ部102に形成された小径ホール105に挿入されて小径ホール105を満たし、小径ホール105の周辺縁部まで半径方向に拡張された大きさに形成され得る。各結合突起127もアッパーアームボディー110とインサート120との間の結合力を向上させることができる。
【0074】
2つの結合突起127間に形成された中径結合枠123は、インサート120の射出時にアッパーアームボディー110の各レッグ部102に形成された中径ホール106の周辺縁部まで半径方向に拡張されるように形成され、アッパーアームボディー110とインサート120との間の結合力を向上させることができる。
【0075】
図7は、他の実施例による車両用ハイブリッドアッパーアーム100の下部を示す斜視図である。
図7を参照すると、インサート120には、概ね格子柄模様の少なくとも1つの補強リブ128が一体に突出して形成され得る。
【0076】
図8は、
図5のA−A線断面図である。
図8を参照すると、アッパーアームボディー110は、その縁部に沿ってその幅方向内側に折り曲げられた2つの結合フランジ103を備えることができる。
【0077】
2つの結合フランジ103は、互いに対向するように形成され、インサート120の射出時にインサート120の内部に挿入され、アッパーアームボディー110とインサート120との間の結合力を向上させることができる。
【0078】
図9は、多様な実施例によるハイブリッド懸架アームにおける重量に対する最大荷重を示すグラフである。X軸は、ハイブリッド懸架アームの重量(単位、kg)を示し、Y軸は、当該材料がバックリングされずに耐えられる最大荷重(単位、N)を示す。
【0079】
「Steel」と表示された線は、懸架アーム全体をスチール材質にした場合を示し、「Hybrid」と表示された線は、実施例によってスチールとプラスチックインサートの2種類で構成されたハイブリッド懸架アームの場合を示す。
【0080】
金属とプラスチックの複合材質で構成されたハイブリッド懸架アームを用いる場合、同一の最大荷重を耐えられるスチールで構成された懸架アームに比べて重量を減少させることができる。プラスチックインサートの比率が一定の水準を越える場合、即ち、スチールの比率が低くなる場合には、ハイブリッド懸架アーム全体の重量が高くなっても、一般スチールで構成された懸架アームより耐えられる最大荷重が低くなることがある。
【0081】
図9のグラフを参照すると、ハイブリッド懸架アームのスチールの比率が全荷重に対して50%以上90%(ボックス内範囲)において、X軸における同一の重量である時に、ハイブリッド懸架アームがスチール懸架アームに比べて最大荷重が高いことが確認できる。
【0082】
従って、先に説明した一実施例において、ロアアームボディー20またはアッパーアームボディー110は、好ましくは、ハイブリッド懸架アームの全重量に対して50%以上90%以下の重量比を有することができ、さらに好ましくは、ハイブリッド懸架アームの全重量に対して55%以上78%以下の重量比を有することができる。
【0083】
以上、一部実施例と添付の図面に示す例により本開示の技術的思想が説明されたものの、本開示が属する技術分野で通常の知識を有する者が理解できる本開示の技術的思想及び範囲を逸脱しない範囲で多様な置換、変形及び変更がなされ得るという点を知っているべきである。また、そのような置換、変形及び変更は、添付の請求の範囲内に属するものと考えられるべきである。