特許第6706327号(P6706327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706327
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】三次元(3D)印刷
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/264 20170101AFI20200525BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20200525BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20200525BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20200525BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20200525BHJP
   B29C 64/30 20170101ALI20200525BHJP
【FI】
   B29C64/264
   B33Y10/00
   B33Y30/00
   B29C64/112
   B33Y50/02
   B29C64/30
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2018-535809(P2018-535809)
(86)(22)【出願日】2015年10月23日
(65)【公表番号】特表2018-531170(P2018-531170A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】US2015057185
(87)【国際公開番号】WO2017069778
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2018年3月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】ルディシル,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】カバルノフ,アレクセイ,エス
(72)【発明者】
【氏名】プラサド,ケシャヴァ,エイ
(72)【発明者】
【氏名】ガナパシアパン,シヴァパキア
(72)【発明者】
【氏名】ライト,ジェイク
(72)【発明者】
【氏名】カスパーチク,ヴラデク
【審査官】 田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−534524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/264
B29C 64/112
B29C 64/30
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元(3D)印刷の方法であって:
高分子構築材料または高分子複合構築材料を適用し;
高分子構築材料または高分子複合構築材料の少なくとも一部に融合剤を選択的に適用し、この融合剤が:
水性または非水性ビヒクル;および
六ホウ化ランタン、タングステンブロンズ、酸化インジウムスズ、アルミニウム酸化亜鉛、酸化ルテニウム、銀、金、白金、鉄輝石、変性リン酸鉄(AFePO)、変性ピロリン酸銅(ACu)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される無機顔料を含み;
無機顔料は、0nmより大きく220nm未満の範囲の平均粒径を有し;
融合剤は、1重量%から20重量%の無機顔料を含み;
そして
高分子構築材料または高分子複合構築材料を電磁放射線に曝露し、それにより融合剤と接触している高分子構築材料または高分子複合構築材料の部分を融合して層を形成することを含む、方法。
【請求項2】
無機顔料をミルベースに添加して混合物を形成し;
混合物を粉砕して無機顔料の平均粒径を220nm未満に低減させて分散物を形成し;そして
分散物を水性または非水性ビヒクルに取り入れることによって融合剤を調製することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性ビヒクルが、水、共溶媒、抗コゲーション剤、界面活性剤、分散用添加剤、キレート剤、殺生物剤、およびシランカップリング剤を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
セシウム酸化タングステン分散物を2−ピロリドンで1:1のw/w比で希釈して希釈分散物を形成し;
希釈分散物を約60℃の温度および約20mmHgの圧力で希釈して無機顔料を含む貯蔵分散液を形成し;そして
貯蔵分散液を水性または非水性ビヒクルに取り入れることによって融合剤を調製することをさらに含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
水性ビヒクルが、水、共溶媒、抗コゲーション剤、界面活性剤、分散用添加剤、キレート剤、および殺生物剤を含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
着色剤を水性または非水性ビヒクルに取り入れることをさらに含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
方法が、融合剤を選択的に適用するに先立って、高分子構築材料または高分子複合構築材料を約50℃から約350℃の範囲の温度に加熱することをさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
三次元(3D)印刷システムであって:
ある供給量の高分子構築材料または高分子複合構築材料;
構築材料分配器;
ある供給量の融合剤であって:
水性または非水性ビヒクル;および
六ホウ化ランタン、タングステンブロンズ、酸化インジウムスズ、アルミニウム酸化亜鉛、酸化ルテニウム、銀、金、白金、鉄輝石、変性リン酸鉄(AFePO)、変性ピロリン酸銅(ACu)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される0nmより大きく220nm未満の範囲の平均粒径を有する無機顔料1重量%から20重量%含む融合剤;
融合剤を選択的に分配するためのインクジェットアプリケータ;
コントローラ;および
コントローラに:
構築材料分配器を用いて構築材料を分配させ;そして
インクジェットアプリケータを用いて融合剤を選択的に分配させて三次元部品を形成させる、コンピュータにより実行可能な命令を格納している非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体を含む、3D印刷システム。
【請求項9】
水性ビヒクルが:
融合剤の合計重量%に基づいて約10重量%から約80重量%の範囲の量で存在する共溶媒;
融合剤の合計重量%に基づいて約0.1重量%から約2重量%の範囲の量で存在する抗コゲーション剤;
融合剤の合計重量%に基づいて約0.1重量%から約3重量%の範囲の量で存在する界面活性剤;
無機顔料の約10重量%から約200重量%の範囲の量で存在する分散用添加剤;
融合剤の合計重量%に基づいて0重量%から約1重量%の範囲の量で存在するキレート剤;
融合剤の合計重量%に基づいて約0.1重量%から約1重量%の範囲の量で存在する殺生物剤;
無機顔料の約0.1重量%から約50重量%の範囲の量で存在するシランカップリング剤;および
残部の水を含む、請求項8に記載の3D印刷システム。
【請求項10】
融合剤が約1重量%から約10重量%の無機顔料を含む、請求項8または9に記載の3D印刷システム。
【請求項11】
水性ビヒクルが:
融合剤の合計重量%に基づいて約10重量%から約80重量%の範囲の量で存在する共溶媒;
融合剤の合計重量%に基づいて約0.1重量%から約2重量%の範囲の量で存在する抗コゲーション剤;
融合剤の合計重量%に基づいて約0.1重量%から約3重量%の範囲の量で存在する界面活性剤;
無機顔料の約10重量%から約200重量%の範囲の量で存在する分散用添加剤;
融合剤の合計重量%に基づいて0重量%から約1重量%の範囲の量で存在するキレート剤;
融合剤の合計重量%に基づいて約0.1重量%から約1重量%の範囲の量で存在する殺生物剤;および
残部の水を含む、請求項8から10のいずれかに記載の3D印刷システム。
【請求項12】
融合剤が無機顔料を含む約25重量%から約50重量%の貯蔵分散物を含む、請求項8から11のいずれかに記載の3D印刷システム。
【請求項13】
融合剤がさらに着色剤を含む、請求項8から12のいずれかに記載の3D印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
三次元(3D)印刷は、デジタルモデルから三次元の固体部品を作成するために使用される、付加的印刷プロセスでありうる。3D印刷はしばしば、製品のラピッドプロトタイピング、金型の作成、および金型マスターの作成に用いられている。幾つかの3D印刷技術は付加的プロセスであると考えられるが、それはそれらが、連続する材料層の適用を伴うためである。これは、多くの場合に材料の除去に依拠して最終的な部品を作成する、伝統的な機械加工プロセスとは異なっている。3D印刷で用いられる材料はしばしば、硬化または融合を必要とするが、これは一部の材料については、熱補助式の押し出しまたは焼成を使用して達成されてよく、また他の材料については、デジタル光投影技術を使用して達成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0002】
本開示の実施例の特徴は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって明らかとなるが、そこでは同様の参照番号は、同一ではないとしても類似している部品に対応している。簡潔にするために、先に説明された機能を有する参照番号または特徴は、それらが現れる他の図面に関しては、記載される場合も記載されない場合もある。
【0003】
図1図1は本願で開示される3D印刷方法の一例を説明する流れ図である。
【0004】
図2図2は本願で開示される3D印刷システムの一例の単純化された等角図である。
【0005】
図3図3は本願で開示される3D印刷方法の一例により形成された3D印刷部品の写真画像である。
【0006】
図4図4は本願で開示される3D印刷方法の別の例により形成された他の3D印刷部品の写真画像である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本願で開示される三次元(3D)印刷方法および3D印刷システムの例は、マルチジェットフュージョン(Multi Jet Fusion(MJP))を使用する。マルチジェットフュージョンに際しては、構築材料(構築材料粒子とも称される)の層全体が放射線に曝露されるが、構築材料の選択領域(幾つかの場合には層全体より小さい)が融合され硬化されて、3D部品の層となる。本願に開示される例においては、融合剤が選択的に配置されて、構築材料の選択領域と接触される。融合剤(単数または複数)は、構築材料の層内へと貫通し、また構築材料の外側表面上に拡がることができる。この融合剤は放射線を吸収し、吸収した放射線を熱エネルギーに変換することが可能であり、次いで熱エネルギーは、融合剤と接触している構築材料を溶融または焼結させる。これは構築材料の融着、結合、硬化などを生じさせ、3D部品の層が形成される。
【0008】
マルチジェットフュージョンで使用される融合剤は、可視領域(400nm〜780nm)において著しい吸収(例えば80%)を有する傾向がある。この吸収の結果、強く着色された、例えばブラックの、または強く着色された3D部品が得られる。本願で開示される方法およびシステムの例は、水性または非水性ビヒクル中に分散されたプラズモン共振吸収剤を含有する融合剤を用いる。プラズモン共振吸収剤を含有するこの融合剤は、800nmから4000nmの範囲の波長において吸収を有し、400nmから780nmの範囲の波長においては透明性を有する。本願で使用するところでは、「吸収」とは、800nmから4000nmの範囲の波長を有する放射線の少なくとも80%が吸収されることを意味する。本願で使用するところでは、「透明性」とは、400nmから780nmの範囲の波長を有する放射線の20%またはそれ未満が吸収されることを意味する。この吸収性および透明性は、融合剤がそれと接触している構築材料を融合させるのに十分な放射線を吸収する一方で、3D部材が白色または僅かに着色となることを許容する。
【0009】
本願で使用するところでは、「3D印刷部品」、「3D部品」、または「部品」という用語は、完成された3D印刷された部品または3D印刷された部品の層を示すものでありうる。
【0010】
3D印刷方法100の一例が図1に描かれている。例として、この方法100は、僅かに着色されたまたは白色の3D部品を作成するために使用されてよい。
【0011】
参照番号102で示すように、この方法100は、高分子構築材料または高分子複合構築材料12を適用することを含む。構築材料12の一つの層14が既に適用されている。
【0012】
構築材料12は、粉末、液体、ペースト、またはゲルであってよい。構築材料12は、高分子(ポリマー)材料、またはポリマーとセラミックスの複合材料であってよい。高分子構築材料12の例には、5℃を超える幅広い処理ウィンドウ(すなわち融点と再結晶温度の間の温度範囲)を有する半結晶性熱可塑性材料が含まれる。高分子構築材料12の幾つかの特定的な例には、ポリアミド(PA)(例えばPA11/ナイロン11、PA12/ナイロン12、PA6/ナイロン6、PA8/ナイロン8、PA9/ナイロン9、PA66/ナイロン66、PA612/ナイロン612、PA812/ナイロン812、PA912/ナイロン912その他)が含まれる。高分子構築材料12の他の特定的な例には、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびこれらの材料のアモルファス形態が含まれる。適切な高分子構築材料12のさらに他の例には、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、他のエンジニアリングプラスチック、および本願で列挙したポリマーのうち任意の二つまたはより多くのブレンドが含まれる。これらの材料のコアシェル型ポリマー粒子もまた使用してよい。
【0013】
先に列挙した任意の高分子構築材料12はセラミックス粒子と組み合わせて、複合構築材料12を形成してよい。適切なセラミックス粒子の例には、金属酸化物、無機ガラス、炭化物、窒化物、およびホウ化物が含まれる。幾つかの特定的な例には、アルミナ(Al)、ガラス、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)、ジルコニア(ZrO)、二酸化チタン(TiO)、またはこれらの組み合わせが含まれる。高分子構築材料12と組み合わせてよいセラミックス粒子の量は、使用される高分子構築材料12、使用されるセラミックス粒子、および形成される3D部品38に依存してよい。一つの例では、セラミックス粒子は構築材料12の合計の重量%に基づいて、約1重量%から約20重量%の範囲の量で存在してよい。
【0014】
構築材料12は、50℃から約400℃の範囲の融点を有するものであってよい。例を挙げると、構築材料12は180℃の融点を有するポリアミド、または約100℃から約165℃の範囲の融点を有する熱可塑性ポリウレタンでありうる。
【0015】
構築材料12は、同様の粒径の粒子または異なる粒径の粒子から構成されてよい。本願で示される例においては、構築材料12は同様の粒径の粒子を含む。「粒径」という用語は、構築材料12に関して本願で使用するところでは、球形粒子の直径、または非球形粒子の平均径(すなわち粒子の多数の径の平均)を参照している。一例では、構築材料12の平均粒径は5μmから約100μmの範囲にある。
【0016】
構築材料12は、ポリマーまたは複合粒子に加えて、帯電剤、流動助剤、またはこれらの組み合わせを含んでよいことが理解されよう。帯電剤(単数または複数)は、摩擦帯電を抑制するために添加されてよい。適切な帯電剤(単数または複数)の例には、脂肪族アミン(エトキシル化されていてよい)、脂肪族アミド、四級アンモニウム塩(例えばベヘントリモニウムクロリドまたはコカミドプロピルベタイン)、リン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル、またはポリオールが含まれる。幾つかの適切な商業的に入手可能な帯電剤には、HOSTASTAT登録商標FA38(天然系エトキシル化アルキルアミン)、HOSTASTAT登録商標FE2(脂肪酸エステル)、およびHOSTASTAT登録商標HS1(アルカンスルホネート)が含まれ、これらはそれぞれClariant Int. Ltd.から入手可能である。一つの例では、帯電剤は構築材料12の合計の重量%に基づいて、0重量%を超える量から5重量%未満の量の範囲で添加される。
【0017】
流動助剤(単数または複数)は、構築材料12の被覆流動性を改善するために添加されてよい。流動助剤(単数または複数)は、構築材料12の粒子が25μm未満の大きさである場合に、特に有用であり得る。流動助剤は、摩擦、横方向の抗力、および摩擦帯電の蓄積を低減させる(粒子の導電性を増大させることにより)ことにより、構築材料12の流動性を改善する。適切な流動助剤の例には、トリカルシウムホスフェート(E341)、粉末セルロース(E460(ii))、マグネシウムステアレート(E470b)、重炭酸ナトリウム(E500)、フェロシアン化ナトリウム(E535)、フェロシアン化カリウム(E536)、フェロシアン化カルシウム(E538)、骨質ホスフェート(E542)、ケイ酸ナトリウム(E550)、二酸化ケイ素(E551)、ケイ酸カルシウム(E552)、三ケイ酸マグネシウム(E553a)、タルカムパウダー(E553b)、アルミノケイ酸ナトリウム(E554)、ケイ酸アルミニウムカリウム(E555)、アルミノケイ酸カルシウム(E556)、ベントナイト(E558)、ケイ酸アルミニウム(E559)、ステアリン酸(E570)、またはポリジメチルシロキサン(E900)が含まれる。一つの例では、流動助剤は構築材料12の合計の重量%に基づいて、0重量%を超える量から5重量%未満の量の範囲で添加される。
【0018】
参照番号102で示されている例において、構築材料を適用することは、印刷システム10を使用することを含んでいる。印刷システム10は、供給床16(供給用構築材料12を含む)、配送ピストン18、ローラー20、製造床22(接触表面23を有する)、および製造ピストン24を含んでよい。これらの物理的要素のそれぞれは動作可能なように、印刷システムの中央処理ユニット(図示せず)に対して接続されていてよい。中央処理ユニット(例えば一時的でない有形のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された、実行中のコンピュータで読み取り可能な命令)は、プリンタのレジスタおよびメモリ内の物理的(電子的)な量として表されたデータを操作し変換し、 これらの物理的要素を制御して、3D部品38を作成する。構築材料12、融合剤26、その他の選択的な配送のためのデータは、形成される3D部品のモデルから導かれるものでありうる。
【0019】
配送ピストン18および製造ピストン24は同じ種類のピストンであってよいが、反対方向に移動するようにプログラムされている。一つの例では、3D部品38の層を形成する場合、配送ピストン18は所定量の構築材料12を供給床16にある開口から押し出すようにプログラムされてよく、そして製造ピストン24は製造床22の深さを増大させるために、配送ピストン18と反対方向に動くようにプログラムされてよい。配送ピストン18は十分に押し上げられ、かくしてローラー20が構築材料12を製造床22内かつ接触表面23上へと押し出した場合に、製造床22の深さは十分にあって、構築材料12の層14が製造床22に形成されうる。ローラー20は構築材料12を製造床22の中に拡げて層14を形成することができ、この層は厚みが比較的均一である。一つの例では、層14の厚さは約90μmから約110μmの範囲にあるが、より薄いまたはより厚い層を使用してもよい。例えば層14の厚さは、約50μmから約200μmの範囲にあってよい。
【0020】
理解されるように、ローラー20は、異なる種類の粉末を拡げるのに有用でありうるブレードのような他の工具、またはローラーとブレードの組み合わせで置き換えてもよい。
【0021】
図1において参照番号104で示されているように、構築材料12の層14は、層14が製造床22に堆積された後に(そして融合剤26を選択的に適用する前に)、加熱を受けるようにしてよい。加熱は構築材料12を予備加熱するために行われ、したがって加熱温度は構築材料12の融点未満であってよい。かくして選択される温度は、使用される構築材料12に依存することになる。例として、加熱温度は構築材料12の融点より約5℃から約50℃下であってよい。一つの例では、加熱温度は約50℃から約350℃の範囲にわたる。別の例では、加熱温度は約150℃から約170℃の範囲にわたる。
【0022】
構築材料12の層14の予備加熱は、製造床22にある構築材料12のすべてを熱に対して曝露する、任意の適切な熱源を用いて達成されてよい。熱源の例には、加熱熱源(例えば製造床22のヒーター(図示せず))または電磁放射源(例えば赤外線(IR)、マイクロ波その他)が含まれる。
【0023】
参照番号102において構築材料12が堆積された後、および/または参照番号104において構築材料12が予備加熱された後、参照番号106で示されているように、層14中の構築材料12の少なくとも一部30に対して、融合剤26が選択的に適用される。
【0024】
図1において参照番号106で示されているように、融合剤26は、インクジェットプリントヘッド28のようなインクジェットアプリケータから分配してよい。図1においては参照番号106の個所で、単一のプリントヘッドが示されているが、製造床22の幅全体にわたる多数のプリントヘッドを使用してもよいことが理解されよう。プリントヘッド28は可動式のXYステージまたは平行移動するキャリッジ(そのどちらも示されていない)に取り付けられてよく、これらはプリントヘッド28を製造床22に隣接して移動させて、融合剤26を所望の領域(単数または複数)30に配置させる。
【0025】
プリントヘッド28は中央処理ユニットから命令を受信し、形成する3Dオブジェクト(物品)の層についての断面のパターンにしたがって、融合剤26を配置するようにプログラムされてよい。本願で使用するところでは、形成するオブジェクトの層についての断面とは、接触表面23に平行な断面を参照するものである。図1において参照番号106で示す例において、プリントヘッド28は融合剤26を選択的に、3D部品38の最初の層となるように融合される層14の部分(単数または複数)30上へと適用する。一つの例として、最初の層が立方体または円筒形のように成形される場合には、融合剤26は構築材料12の層14の少なくとも一部の上に、それぞれ正方形パターンまたは円形パターン(上から見て)で配置される。図1において参照番号106で示す例において、融合剤26は層14の一部30の上に正方形パターンで配置され、部分32には配置されない。
【0026】
融合剤26はプラズモン共振吸収剤を含んでいる。プラズモン共振吸収剤は、融合剤26が放射線を800nmから4000nmの範囲の波長で吸収することを許容し、それによって融合剤26が、構築材料12が融合するのに十分な放射線を熱エネルギーに変換することを可能ならしめる。プラズモン共振吸収剤はまた、融合剤26が400nmから780nmの範囲の波長で透明性を有することを許容し、それによって3D部品38が白色となり、または僅かに着色されることを可能にする。
【0027】
プラズモン共振吸収剤の吸収は、プラズモン共振効果の結果として生ずる。プラズモン共振吸収剤の原子に関連する電子は、電磁放射線によって集団で励起されうるものであり、その結果、電子は集団で振動する。これらの電子を集団で励起し振動させるのに必要な波長は、プラズモン共振吸収剤粒子中に存在する電子の数に依存しており、電子数はプラズモン共振吸収剤粒子の大きさに依存している。粒子の電子を集団で振動させるのに必要なエネルギーの量は十分に低く、非常に小さな粒子(例えば1〜100nm)が粒子の大きさの数倍(例えば8から800倍またはそれ以上)の波長の電磁放射線を吸収しうる。これらの粒子を使用すると、融合剤26をインクジェット可能とすることができると同時に、電磁的に選択性を有する(例えば800nmから4000nmの範囲の波長において吸収性を有し、400nmから780nmの範囲の波長において透明性を有する)ようにすることができる。
【0028】
一つの例において、プラズモン共振吸収剤は、0nmより大きく220nm未満の範囲の平均粒径を有する。別の例において、プラズモン共振吸収剤は、0nmより大きく120nmまでの範囲の平均粒径を有する。さらに別の例において、プラズモン共振吸収剤は、約10nmから約200nmの範囲の平均粒径を有する。
【0029】
一つの例において、プラズモン共振吸収剤は無機顔料である。適切な無機顔料の例には、六ホウ化ランタン(LaB)、タングステンブロンズ(AWO)、酸化インジウムスズ(In:SnO,ITO)、アルミニウム酸化亜鉛(AZO)、酸化ルテニウム(RuO)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、鉄輝石(AFeSiここでAはCaまたはMg、x=1.5〜1.9、そしてy=0.1〜0.5)、変性リン酸鉄(AFePO)、および変性ピロリン酸銅(ACu)が含まれる。タングステンブロンズは、アルカリドープした酸化タングステンであってよい。適切なアルカリドーパントの例(すなわちAWOにおけるA)は、セシウム、ナトリウム、カリウム、またはルビジウムでありうる。一つの例において、アルカリドープした酸化タングステンは、アルカリドープした酸化タングステンの全モル%に基づいて、0モル%を超える量から約0.33モル%の量でドープしてよい。適切な変性リン酸鉄(AFePO)には、銅リン酸鉄(A=Cu,x=0.1〜0.5およびy=0.5〜0.9)、マグネシウムリン酸鉄(A=Mg,x=0.1〜0.5およびy=0.5〜0.9)、および亜鉛リン酸鉄(A=Zn,x=0.1〜0.5およびy=0.5〜0.9)を含んでよい。変性リン酸鉄については、理解されるように、リン酸の数は陽イオンとの電荷のバランスに基づいて変化してよい。適切な変性ピロリン酸銅(ACu)には、鉄ピロリン酸銅(A=Fe,x=0〜2およびy=0〜2)、マグネシウムピロリン酸銅(A=Mg,x=0〜2およびy=0〜2)、および亜鉛ピロリン酸銅(A=Zn,x=0〜2およびy=0〜2)が含まれる。これらの無機顔料の組み合わせもまた使用してよい。
【0030】
融合剤26中に存在するプラズモン共振吸収剤の量は、融合剤26の合計重量%に基づいて、約1.0重量%から約20.0重量%の範囲にある。幾つかの例では、融合剤26中に存在するプラズモン共振吸収剤の量は、約1.0重量%から約10.0重量%までである。他の例では、融合剤26中に存在するプラズモン共振吸収剤の量は、4.0重量%を超える量から約15.0重量%までの範囲にある。プラズモン共振吸収剤のこれらの装荷量は、融合剤26の噴射安定性と電磁放射線吸収効率の間にバランスをもたらすものと考えられる。
【0031】
本願で使用するところでは、「ビヒクル」は液状流体を参照してよく、その中にプラズモン共振吸収剤が入れられて融合剤26が形成される。水性ビヒクルおよび非水性ビヒクルを含む多様なビヒクルを、プラズモン共振吸収剤と共に使用してよい。幾つかの場合には、ビヒクルを水のみを含み、または非水性溶媒(例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノールなど)のみを含む。他の場合には、ビヒクルはさらに分散用添加剤、界面活性剤、共溶媒、殺生物剤、抗コゲーション剤、シランカップリング剤、キレート剤、およびこれらの組み合わせを含んでよい。
【0032】
ビヒクルが水系である場合、融合剤26が水性であるという性質は、融合剤26が少なくとも部分的に、構築材料12の層14中へと浸透することを可能にする。構築材料12は疎水性であってよく、融合剤26中における共溶媒、界面活性剤、および/または分散用添加剤の存在は、融合剤26が水系または非水性である場合に、特定の湿潤挙動を得るのを支援しうる。
【0033】
融合剤26中のプラズモン共振吸収剤は、幾つかの場合においては、分散用添加剤で分散させてよい。こうして分散用添加剤は、プラズモン共振吸収剤を融合剤26全体に一様に分散させるのを助ける。上記したように、分散用添加剤はまた、構築材料12上への融合剤26の濡れを補助してよい。分散用添加剤の幾つかの例には、水溶性アクリル酸ポリマー(例えばLubrizol社から入手可能なCARBOSPERSE登録商標K7028)、スチレン−アクリル顔料分散樹脂(例えばBASF社から入手可能なJONCRYL登録商標671)、顔料親和性基を有する高分子量ブロックコポリマー(例えばBYK Additives and Instruments社から入手可能なDISPERBYK登録商標190)、およびこれらの組み合わせが含まれる。単独の分散用添加剤を使用するか、分散用添加剤の組み合わせを使用するかを問わず、融合剤26中の分散用添加剤(単数または複数)の合計量は、融合剤26中のプラズモン共振吸収剤の重量%に基づいて、約10重量%から約200重量%の範囲であってよい。
【0034】
ビヒクル中ではまた界面活性剤(単数または複数)を使用して、融合剤26の湿潤特性を改善してよい。適切な界面活性剤の例には、アセチレンジオールの化学的性質に基づいた自己乳化性のノニオン湿潤剤(例えばAir Products and Chemicals社からのSURFYNOL登録商標SEF)、ノニオン性フルオロ界面活性剤(例えばDuPont社からのCAPSTONE登録商標フルオロ界面活性剤、これは以前はZONYL FSOとして知られていた)、およびこれらの組み合わせが含まれる。他の例においては、界面活性剤はエトキシル化された低発泡性湿潤剤(例えばAir Products and Chemical社からのSURFYNOL登録商標440またはSURFYNOL登録商標CT−111)またはエトキシル化湿潤剤および分子消泡剤(例えばAir Products and Chemical社からのSURFYNOL登録商標420)である。さらに他の適切な界面活性剤には、ノニオン性湿潤剤および分子消泡剤(例えばAir Products and Chemical社からのSURFYNOL登録商標04E)または水溶性ノニオン性界面活性剤(例えばThe Dow Chemical社のTERGITOLTMTMN−6)が含まれる。幾つかの例では、親水性親油性バランス(HLB)が10未満の界面活性剤を用いることが望ましいであろう。
【0035】
単独の界面活性剤を使用するか、界面活性剤の組み合わせを使用するかを問わず、融合剤26中の界面活性剤(単数または複数)の合計量は、融合剤26の合計重量%に基づいて、約0.1重量%から約3重量%の範囲にあってよい。
【0036】
添加することができる共溶媒の幾つかの例には、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、2−ピロリジノン、1,5−ペンタンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリプロピレングリコールメチルエーテル、N−メチルピロリドン、エトキシル化グリセロール−1(LEG−1)、およびこれらの組み合わせが含まれる。単独の共溶媒を使用するか、共溶媒の組み合わせを使用するかを問わず、融合剤26中の共溶媒(単数または複数)の合計量は、融合剤26の合計重量%に関して、約10重量%から約80重量%の範囲にあってよい。
【0037】
殺生物剤または抗菌剤を融合剤26に添加することができる。適切な殺生物剤の例には、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(例えばArch Chemicals社からのPROXEL登録商標GXL)、四級アンモニウム塩化合物(例えば、すべてLonza社からのBARDAC登録商標2250および2280、BARQUAT登録商標50−65BおよびCARBOQUAT登録商標250−T)、およびメチルイソチアゾリン水溶液(例えばThe Dow Chemical社からのKORDEK登録商標MLX)が含まれる。単独の殺生物剤を使用するか、殺生物剤の組み合わせを使用するかを問わず、融合剤26中の殺生物剤(単数または複数)の合計量は、融合剤26の合計重量%に基づいて、約0.1重量%から約1重量%の範囲にあってよい。
【0038】
抗コゲーション剤を融合剤26に含めることができる。コゲーションとは、サーマルインクジェットプリントヘッドの加熱素子上への、乾燥したインク(例えば融合剤26)の堆積を参照したものである。抗コゲーション剤(単数または複数)は、コゲーションの蓄積を防止するのを補助するために含有される。適切な抗コゲーション剤の例には、オレス−3−リン酸(例えばCroda社から商業的に入手可能なCRODAFOSTMO3AまたはCRODAFOSTMN−3酸)、またはオレス−3−リン酸と低分子量(例えば<5,000)のポリアクリル酸ポリマー(例えばLubrizol社からCARBOSPERSETMK−7028ポリアクリレートとして商業的に入手可能)の組み合わせが含まれる。単独の抗コゲーション剤を使用するか、抗コゲーション剤の組み合わせを使用するかを問わず、融合剤26中の抗コゲーション剤(単数または複数)の合計量は、融合剤26の合計重量%に基づいて、約0.1重量%から約0.2重量%の範囲にあってよい。
【0039】
シランカップリング剤を融合剤26に添加して、有機材料と無機材料が結合するのを助けてよい。適切なシランカップリング剤の例には、Momentive社により製造されているSILQUEST登録商標Aシリーズが含まれる。
【0040】
単独のシランカップリング剤を使用するか、シランカップリング剤の組み合わせを使用するかを問わず、融合剤26中におけるシランカップリング剤(単数または複数)の合計量は、融合剤26中のプラズモン共振吸収剤の重量%に基づいて、約0.1重量%から約50重量%の範囲にあってよい。一つの例においては、融合剤26中におけるシランカップリング剤(単数または複数)の合計量は、融合剤26中のプラズモン共振吸収剤の重量%に基づいて、約1重量%から約30重量%の範囲にある。別の例においては、融合剤26中におけるシランカップリング剤(単数または複数)の合計量は、融合剤26中のプラズモン共振吸収剤の重量%に基づいて、約2.5重量%から約25重量%の範囲にある。
【0041】
融合剤26はまた、キレート剤のような他の添加剤を含んでよい。適切なキレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA−Na)およびメチルグリシン二酢酸(例えばBASF社からのTRILON登録商標M)が含まれる。単独のキレート剤を使用するか、キレート剤の組み合わせを使用するかを問わず、融合剤26中のキレート剤(単数または複数)の合計量は、融合剤26の合計重量%に基づいて、0重量%から約1重量%の範囲にあってよい。
【0042】
融合剤26はまた、プラズモン共振吸収剤に加えて、着色剤を含んでよい。プラズモン共振吸収剤は主として電磁放射線吸収剤として機能するが、追加の着色剤は融合剤に対して、そして得られる3D部品38に対して、色を付与することができる。融合剤26中に存在してよい着色剤の量は、融合剤26の合計重量%に基づいて、顔料(単数または複数)で約1重量%から約10重量%の範囲にわたる。着色剤は、任意の適切な色を有する顔料および/または染料であってよい。色の例には、シアン、マゼンタ、イエロー、その他が含まれる。着色剤の例には、アシッドイエロー23(AY23)、アシッドイエロー17(AY17)、アシッドレッド52(AR52)、アシッドレッド289(AR289)、リアクティブレッド180(RR180)、ダイレクトブルー199(DB199)のような染料、またはピグメントブルー15:3(PB15:3)、ピグメントレッド122(PR122)、ピグメントイエロー155(PY155)、およびピグメントイエロー74(PY74)のような顔料が含まれる。
【0043】
着色剤を含む融合剤26の幾つかの例が、以下の表1に示されている。
【表1】
【0044】
図1に示されてはいないが、方法100はさらに、融合剤26の調製を含むことができる。一つの例において、融合剤26は、プラズモン共振吸収剤をミルベースに添加して混合物を形成することによって調製してよい。ミルベースは、水、シランカップリング剤(例えばMomentive社により製造されているSILQUEST登録商標Aなど)、クエン酸、共溶媒(例えば2−ピロリドン)、湿潤剤(例えばイソプロピルアルコール)、またはこれらの組み合わせを含むものであってよい。この混合物は粉砕されてプラズモン共振吸収剤の平均粒径を220nm未満に低減させ、分散物を形成するようにしてよい。任意の適切な粉砕技術を使用してよい。一つの例においては、ウルトラアペックスビーズミル(寿工業社)を50μmのジルコニアビーズと共に使用してよい。ウルトラアペックスビーズミルのローター速度は、約8m/秒から約10m/秒の範囲にあってよい。別の例においては、実験室用シェイカーを650μmのジルコニウムビーズと共に使用することができる。さらに別の例においては、Fritsch社のミルを200μmのジルコニアビーズと共に用いることができる。Fritsch社のミルのローター速度は、毎分400回転であってよい。これらの例のいずれにおいても、混合物は約1時間から約10時間にわたって粉砕することができる。代替的には、上記の例のいずれにおいても混合物は、約1分間から約3分間にわたって粉砕し約3分間から約10分間にわたって休止することを交互に、約100回から約140回繰り返すようにしてよい。分散物は水を加えることによってビーズから回収することができ、約5重量%から約10重量%の非揮発性固体(NVS)(分散物の合計重量%に基づき)が得られる。一つの例において、プラズモン共振吸収剤の量は、分散物の合計重量%の約3重量%から約5重量%であってよい。分散物は次いで、水性または非水性ビヒクルに取り入れられて、融合剤26を形成してよい。着色剤を融合剤26中に含める場合には、着色剤はプラズモン共振吸収剤と共に粉砕することができ、または水性または非水性ビヒクルに添加することができる。
【0045】
別の例において融合剤26は、最初にプラズモン共振吸収剤を別の分散物から抽出しまたは取り出すことによって調製される。このプロセスは、分散物を希釈し、希釈された分散物を遠心分離して、プラズモン共振吸収剤を分散物の他の成分から分離することを含むことができる。プラズモン共振吸収剤は次いで粉砕され、水性または非水性ビヒクルに添加されて、融合剤26が形成される。着色剤を融合剤26中に含める場合には、着色剤はプラズモン共振吸収剤と共に粉砕することができ、または水性または非水性ビヒクルに添加することができる。
【0046】
さらに別の例においては、融合剤26は、タングステンブロンズ分散物(セシウム酸化タングステン分散物の如き)を2−ピロリドンにより1:1のw/w比で希釈し、希釈された分散物を形成することによって調製してよい。一つの例において、セシウム酸化タングステン分散物は希釈に先立って、約25重量%のセシウム酸化タングステンおよび75重量%の溶媒(例えばブチルアセテート、2−メトキシ−1−メチルエチルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)その他)を含んでいてよい(セシウム酸化タングステン分散物の合計重量%に基づく)。希釈された分散物は約60℃の温度および約20mmHgの圧力で蒸留して、プラズモン共振吸収剤を含む貯蔵分散液を形成することができる。貯蔵分散液は次いで水性または非水性ビヒクルに取り入れられて、融合剤26を形成することができる。着色剤を含める場合には、水性または非水性ビヒクルに添加してよい。一つの例においては、融合剤26は約25重量%から約50重量%の、プラズモン共振吸収剤を含む貯蔵分散液(融合剤26の合計重量%を基準とする)を含む。
【0047】
単一の融合剤26を選択的に適用して3D部品38の層を形成してもよく、または多数の融合剤26を選択的に適用して3D部品38の層を形成してもよいことが理解されよう。
【0048】
融合剤26が所望の部分(単数または複数)30に対して選択的に適用された後、構築材料12の層14の全体(その少なくとも一部に対して適用された融合剤26を含む)が電磁放射線36に曝露される。これが図1の参照番号108で示されている。
【0049】
電磁放射線36は、IRまたは近IR硬化ランプ、IRまたは近IR発光ダイオード(LED)、マイクロ波を放出するマグネトロン、または所望の電磁波長を有するレーザーといった、放射源34から発せられる。一つの例として、放射源34は、約800nmから約2μmの範囲の波長を有する近赤外線光源である。
【0050】
一つの例において、電磁放射線36は、約100nm(UV)から約10μmの範囲の波長を含むことができる。さらに別の例において、光源の電磁波長は約400nmから約3μmまたは4μm(近赤外放射線および中赤外放射線を含む)の範囲にわたる。一つの例として、電磁放射線36は黒体放射線であり、約1100nmの波長において最大強度を有する。
【0051】
電磁放射線を放出する任意の放射源34を使用することができる。放射源34は例えば、インクジェットプリントヘッド(単数または複数)28をも保持するキャリッジに取り付けることができる。このキャリッジは放射源34を、製造床22に隣接する位置へと移動させることができる。放射源34は、中央処理ユニットからコマンドを受け取り、融合剤26および構築材料12を含めて、層14を電磁放射線36に曝露するようにプログラムすることができる。
【0052】
放射線36が照射される時間の長さ、すなわちエネルギー曝露時間の長さは、例えば:放射源34の特性;構築材料12の特性;および/または融合剤26の特性の一つまたはより多くに依存してよい。
【0053】
融合剤26は、放射線36の吸収を増大させ、吸収した放射線を熱エネルギーに変換し、それと接触している(すなわち部分30において)構築材料12に対する熱の伝達を促進する。一つの例において、融合剤26は構築材料12の温度を融点(単数または複数)を十分に超えて上昇させ、融合剤26と接触している構築材料12の粒子の硬化(例えば焼結、結合、融着その他)が行われることを許容する。一つの例においては、温度は構築材料12の溶融温度の約50℃上まで上昇される。融合剤26はまた例えば、構築材料12の融点未満であるが軟化および結合を生じさせるのに適した温度への、構築材料12の加熱を生じさせることができる。適用された融合剤26を有していない構築材料12の部分32は、融合するために十分なエネルギーを吸収しないことが理解されよう。放射線36に対する曝露は、図1において参照番号108で示すように、3D層または部品38を形成せしめる。
【0054】
3D部品38は単層として示されているが、3D部品38は幾つもの層を含むことができることが理解されよう。3D部品38の付加的な層の各々は、参照番号102〜108を繰り返すことによって形成されてよい。例えば、3D部品38の一つの追加的な層を形成するためには、参照番号108で示す3D部品38に対して構築材料12の一つの追加的な層を適用し、そしてこの追加的な層を予備加熱し、これに対して融合剤26を選択的に適用し、そして放射線36に対して曝露を行って、当該追加的な層を形成することができる。任意の数の追加的な層を形成してよい。3Dオブジェクト38が完成した時点で、それは製造床22から取り出され、未硬化の構築材料12は洗浄し、次いで再使用することができる。
【0055】
さて図2を参照すると、印刷システム10’の別の例が描かれている。このシステム10’は中央処理ユニット46を含み、これは付加的印刷システム10’の全般的な動作を制御する。例として、中央処理ユニット46はマイクロプロセッサに基づくコントローラであってよく、これは例えば通信バス(図示せず)を介してメモリ50に結合されている。メモリ50は、コンピュータで読み取り可能な命令48を格納している。中央処理ユニット46は命令48を実行することができ、かくして命令48にしたがって、システム10’の動作を制御することができる。例えばその命令はコントローラに、構築材料分配器56を用いて構築材料12を分配させ、そして融合剤分配器28(例えばインクジェットアプリケータ28)を用いて融合剤26を選択的に分配させて、三次元部品を形成させることができる。
【0056】
この例において印刷システム10’は、融合剤分配器28を含み、支持部材58上に提供された構築材料12の層(この図面には示されていない)の部分(単数または複数)30に対して融合剤26を選択的に分配する。
【0057】
中央処理ユニット46は分配制御データ52にしたがって、構築材料12の層に対する融合剤26の選択的な分配を制御する。
【0058】
図2に示された例において、分配器28はプリントヘッド(単数または複数)、サーマルプリントヘッド(単数または複数)またはピエゾ電子インクジェットプリントヘッド(単数または複数)であることが理解されよう。プリントヘッド28(単数または複数)は、ドロップオンデマンド式のプリントヘッド(単数または複数)または連続ドロップ式のプリントヘッド(単数または複数)であることができる。
【0059】
プリントヘッド28(単数または複数)は、適切な流体形態である場合に、融合剤26を選択的に分配するように使用することができる。上述したように、融合剤26は、それをプリントヘッド28(単数または複数)を介して分配可能とするように、水、共溶媒(単数または複数)、界面活性剤(単数または複数)その他のような、水性または非水性のビヒクルを含んでいる。
【0060】
一つの例において、プリントヘッド28(単数または複数)は、融合剤26の液滴をインチ当たり約300ドット(DPI)から約1200DPIの範囲の解像度において分配するように選択することができる。他の例においては、プリントヘッド(単数または複数)28は、融合剤26の液滴をより高い、またはより低い解像度において分配可能なように選択することができる。液滴速度は約5m/秒から約24m/秒の範囲にわたることができ、そして発射頻度は約1kHzから約100kHzの範囲にわたることができる。
【0061】
プリントヘッド28(単数または複数)はノズルのアレイ(列)を含んでよく、それを介してプリントヘッド28(単数または複数)は、流体の液滴を選択的に吐出することが可能である。一つの例において、液滴の各々は液滴当たり約10ピコリットル(pl)のオーダーであることができるが、より大きいまたはより小さい液滴サイズを使用してもよいことが考慮されている。幾つかの例においては、プリントヘッド28(単数または複数)は、可変サイズの液滴を分配することができる。
【0062】
プリントヘッド28(単数または複数)は、印刷システム10’と一体の部分であってよく、またはユーザーにより交換可能であってよい。プリントヘッド28(単数または複数)がユーザーにより交換可能である場合、それは適合する分配器レシーバまたはインタフェースモジュール(図示せず)へと着脱可能に挿入可能であってよい。
【0063】
図2に示されているように、分配器28はページ幅アレイ構成でもって、支持部材58の幅全体に広がることを可能にするだけの長さを有してよい。一つの例において、ページ幅アレイ構成は、多数のプリントヘッドの適切な配置を通じて達成される。別の例において、ページ幅アレイ構成は、支持部材58の全幅に広がることを可能にする長さを有するノズルアレイを備えた、単一のプリントヘッドを通じて達成される。印刷システム10’の他の例においては、分配器28は、支持部材58の幅全部に広がることのできない、より短い長さを有してよい。
【0064】
図2には示されていないが、分配器28は、図示のY軸に沿ってそれを支持部材58の長さ方向に双方向に移動することを可能にする、可動キャリッジ上に設けてよいことが理解されよう。このことは、支持部材58の全幅および全長にわたり、融合剤26を一回のパス(通過)で選択的に分配することを可能にする。他の例においては、分配器28を固定してよく、他方支持部材58は、それに対して相対的に移動するように構成される。
【0065】
本願で使用するところでは、用語「幅」は、図2に示されたX軸およびY軸に対して平行な平面における最も短い寸法を一般的に示しており、用語「長さ」は、その平面における最も長い寸法を示している。しかしながら理解されるように、他の例において、用語「幅」は用語「長さ」と交換可能であってよい。一つの例として、分配器28はそれが支持部材58の全長に広がることを可能にするだけの長さを有してよく、これに対して可動キャリッジは、支持部材58の幅方向に双方向に移動するものであってよい。
【0066】
分配器28が短い長さを有し、支持部材58の全幅にわたって広がることができない例においては、分配器28もまた図示のX軸に沿って、支持部材58の全幅にわたり双方向に移動可能であってよい。この構成は、多数回のパスを用いて、支持部材58の全幅および全長にわたり、融合剤26を選択的に分配することを可能にする。
【0067】
分配器28はその中に、ある供給量の融合剤26を含んでいてもよく、または別体の融合剤26の供給元に対し、関連動作するように接続されていてもよい。
【0068】
図2に示されているように、印刷システム10’はまた、構築材料分配器56を含んでいる。この分配器56は支持部材58上に、構築材料12の層(例えば層14)を提供するように用いられる。適切な構築材料分配器56は、例えば、ワイパーブレード、ローラー、またはこれらの組み合わせを含むものであってよい。
【0069】
構築材料12は、ホッパーまたは他の適切な分配システムから、構築材料分配器56に供給することができる。図示の例においては、構築材料分配器56は支持部材58の長さ(Y軸)方向に移動して、構築材料12の層を配置する。先に記載したように、構築材料12の第一の層は支持部材58上に堆積されるが、これに対して後続の構築材料12の層は、先に堆積された(そして固化された)層(例えば層38)の上に堆積される。
【0070】
また理解されるように、支持部材58はZ軸に沿っても可動であってよい。一つの例においては、支持部材58はZ方向に移動されて、構築材料12の新たな層が堆積されるに際し、一番最後に形成された層の表面と分配器28の下側表面との間に所定のギャップが維持されるようにされる。しかしながら他の例においては、支持部材58はZ軸に沿って固定されていてよく、そして分配器28がZ軸に沿って可動であってよい。
【0071】
システム10(図1に示す)と同様に、システム10’もまた放射源34を含んでおり、堆積された構築材料12の層および融合剤26に対してエネルギーを適用して、構築材料12の部分(単数または複数)30の固化を生じさせる。前述した放射源34の任意のものを使用してよい。一つの例では、放射線34は堆積された材料に対してエネルギーを均一に適用することが可能な単独のエネルギー源であり、そして別の例では、放射源34は堆積された材料に対してエネルギーを均一に適用するエネルギー源のアレイを含む。
【0072】
本願に開示の例においては、放射源34は、堆積された構築材料12の全表面に対してエネルギーを実質的に均一な仕方で適用するように構成される。この種の放射源34は、非集束エネルギー源と称することができる。層全体をエネルギーに対して同時に曝露することは、三次元オブジェクトを作成することのできる速度を増大させるのに役立ちうる。
【0073】
図示されてはいないが、放射源34は可動キャリッジ上に設けてもよく、または固定した位置にあってもよいことが理解されよう。
【0074】
中央処理ユニット46が放射源34を制御することができる。適用されるエネルギーの量は、分配制御データ52にしたがうものであってよい。
【0075】
システム10’はまた、堆積された構築材料12を予備加熱する(図1に関して参照番号104で図示し記載したように)ために使用される、予備ヒーター60を含むこともできる。予備ヒーター60の使用は、放射源34によって適用しなければならないエネルギーの量を低減させるのに役立つものでありうる。
【0076】
本開示をさらに説明するために、以下で実施例を記載する。これらの実施例は説明の目的で提供されるものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきでないことが理解されよう。
【実施例】
【0077】
実施例1
【0078】
プラズモン共振吸収剤の三つの例を調製した。これらの例で使用したプラズモン共振吸収剤は、六ホウ化ランタン(LaB)であった。六ホウ化ランタンの試料は、Aldrich社またはSkySpring Nanosystems社によって製造されたものである。プラズモン共振吸収剤の例のそれぞれはミルベースに添加され、粉砕されて粒径が低減された。ミルのそれぞれについて使用したミルベース組成物の一般処方を、使用したそれぞれの成分の重量%と共に表2に示す。
【表2】
【0079】
ミル1で使用した六ホウ化ランタンは、約1μmの初期平均粒径を有していた。六ホウ化ランタンおよびミル1で使用したミルベースから形成されたスラリーは、8.0のpHを有していた。ミル1のスラリーは、ウルトラアペックスビーズミル(寿工業社製造のUAM−015)中で50μmのジルコニアビーズを用いて、約8m/秒から約10m/秒のローター速度において5時間にわたり粉砕された。粉砕後の六ホウ化ランタンの粒径は127nmであった。
【0080】
ミル2で使用した六ホウ化ランタンは、約1μmの初期平均粒径を有していた。六ホウ化ランタンおよびミル2で使用したミルベースから形成されたスラリーは、8.5のpHを有していた。ミル2のスラリーは、ウルトラアペックスビーズミル(寿工業社製造のUAM−015)中で50μmのジルコニアビーズを用いて、約8m/秒から約10m/秒のローター速度において2時間にわたり粉砕された。粉砕後の六ホウ化ランタンの粒径は8nmであった。
【0081】
ミル3で使用した六ホウ化ランタンは、約1μmの初期平均粒径を有していた。六ホウ化ランタンおよびミル3で使用したミルベースから形成されたスラリーは、実験室用シェイカーで650μmのジルコニウムビーズを用いて、9時間にわたり粉砕された。粉砕後の六ホウ化ランタンの粒径は210nmであった。
【0082】
この例は、種々の形態の六ホウ化ランタンを処理して、インクジェット印刷に適した、そして融合剤において使用するのに適した粒径を得ることができることを示している。
【0083】
実施例2
【0084】
融合剤の三つの例を調製した。これらの融合剤組成物の例において使用したプラズモン共振吸収剤は、セシウム酸化タングステン(貯蔵分散液中)または六ホウ化ランタン(LaB)のいずれかであった。融合剤組成物の例の一般処方を、使用したそれぞれの成分の重量%と共に表3に示す。
【表3】
【0085】
融合剤1および2で使用したセシウム酸化タングステン貯蔵分散液は、商業的に入手可能なセシウム酸化タングステン分散物、すなわちYMS−01A−2(住友金属社製造)を用いて調製した。製造者により化学物質等安全データシートに記載された、YMS−01A−2の一般処方が、各成分の重量%と共に表4に示されている。
【表4】
【0086】
セシウム酸化タングステン分散物YMS−01A−2は、2−ピロリドンで1:1のw/w比において希釈した。希釈した分散物は、60℃の温度および20mmHgの圧力において蒸留した。得られた分散物は濃青色の不透明でない流体であって25重量%の固形分を含有しており(分散物の合計重量%に基づき)、融合剤1および2においてセシウム酸化タングステン貯蔵分散液として使用された。
【0087】
融合剤1および2は、セシウム酸化タングステン貯蔵分散液を除く、融合剤の全ての成分(すなわち2−ピロリドン、CRODAFOS登録商標O3A、SURFYNOL登録商標SEF、CAPSTONE登録商標FS−35、CARBOSPERSE登録商標K7028、TRILON登録商標M、PROXEL登録商標GXL、KORDEK登録商標MLX、および水)を一緒に混合することによって調製された。この混合物をマグネチックスターラー上に置き、一定に混合しながらセシウム酸化タングステン貯蔵分散液を滴下により添加した。得られたセシウム酸化タングステン融合剤(すなわち融合剤1および2)は薄青色で、僅かに不透明な流体であった。
【0088】
融合剤3に使用した六ホウ化ランタンは、実施例1のミル3によって作成した。ミル3から得られた分散溶液中の成分を除き、融合剤3のための他の全ての融合剤成分(すなわち18.4重量%の2−ピロリドン、CRODAFOS登録商標O3A、SURFYNOL登録商標SEF、CAPSTONE登録商標FS−35、CARBOSPERSE登録商標K7028、TRILON登録商標M、PROXEL登録商標GXL、KORDEK登録商標MLX、および71.93重量%の水(融合剤の合計重量%に基づく))を一緒に混合し、スターラーバーを置いた。一定に混合しながら、ミル3から得られた分散溶液(すなわち六ホウ化ランタン(Aldrich社)、JONCRYL登録商標671、イソプロピルアルコール、1.6重量%の2−ピロリドン、および4.64重量%の水(融合剤の合計重量%に基づく))を滴下により添加した。得られた六ホウ化ランタン融合剤(すなわち融合剤3)は緑色で、僅かに不透明な流体であった。
【0089】
この例は、本願に開示されたプラズモン共振吸収剤の例を使用して、種々の融合剤を処方可能であることを示している。
【0090】
実施例3
【0091】
引張テスト用の試験片(「ドッグボーン(亜鈴形)」)の二つの実施例および一つの比較例を印刷した。実施例および比較例のドッグボーンを印刷するのに使用した構築材料はポリアミド−12(PA−12)であった。実施例のドッグボーンを印刷するのに使用した融合剤は、実施例2の融合剤1または実施例2の融合剤3であった。比較例のドッグボーンを印刷するのに使用した融合剤は、カーボンブラック系の融合剤であった。カーボンブラック系の融合剤は、HP88プリントヘッドのブラックインクに類似の処方を有していた。
【0092】
実施例および比較例のドッグボーンのそれぞれについて、融合剤はHP761プリントヘッド(Hewlett-Packard社製造)を用いて、連続する層のPA−12の一部の上に、あるパターンでサーマルインクジェット印刷された。層の各々は約100μmの厚さであった。新たな層は製造床上に、ローラーを用いて供給領域から広げられた。供給領域の温度は130℃に設定された。印刷領域の温度は160℃に設定され、その下側のプラテンは165℃に加熱された。実施例および比較例のドッグボーンは、ピクセル当たり1.25滴のインク密度で、600dpiの解像度において印刷された。実施例および比較例のドッグボーンは次いで、製造床上を通過される二つの500ワットのハロゲン電球の二組からの、高輝度光に曝露された。融合剤が適用された後、製造床は層当たり三回の露光を受けた。全ての層が印刷された後、実施例および比較例のドッグボーンは製造床から取り出し、サンドブラストによって過剰の粉末を除去した。
【0093】
比較例1については、12個のドッグボーンを印刷した(CLB_#、CRF_#、CRB_#、CLF_#と表示、ここで#は使用した融合速度に対応する)。ハロゲン電球が製造床上を通過する速度(すなわち融合速度)は、20インチ毎秒(ips)、23ips、または28ipsのいずれかであった。密度は、カーボンブラック系融合剤で印刷したドッグボーンのそれぞれについて測定した。密度の測定結果を以下の表5において示す。
【表5】
【0094】
融合剤1で印刷された実施例については、7個のドッグボーンを印刷した(LB_#、RF_#、RB_#、LF_#と表示、ここで#は使用した融合速度に対応する)。融合速度は20ipsまたは16ipsのいずれかであった。融合剤1で印刷されたドッグボーンの各々について、強度、パーセント(%)伸び、ヤング率、および質量を測定した。これらの引張試験は、INSTRON登録商標引張試験機上で実施した。これらの測定の結果を以下の表6において示す。
【表6】
【0095】
融合剤1で印刷されたドッグボーンについて得られた質量は、セシウム酸化タングステンで融合された部品についての1.8gという理論(完全に融合した)質量の10%(+/−)以内であった。融合剤1を用いて20ipsで作成されたドッグボーンは、カーボンブラック系融合剤を用いて同じ融合速度で作成した黒色のドッグボーンと、密度が非常に近接している。融合剤1の光学濃度はカーボンブラック系融合剤の光学濃度よりも実質的に低い(以下を参照)ため、そのような高い密度が融合剤1を用いて得られることは、予測されていなかった。融合剤1で印刷されたドッグボーンの質量と、カーボンブラック系融合剤で印刷されたドッグボーンの質量を全体的に比較すると、より遅い融合速度が高い密度を得るのに役立つことが示される。
【0096】
融合剤1で印刷されたドッグボーンの伸びは、カーボンブラック系融合剤で印刷されたドッグボーンの典型的な伸び(すなわち14%)と比較して優れていた。融合剤1で印刷されたドッグボーンの強度およびヤング率は、許容範囲内にあり(すなわちそれぞれ≧36MPaおよび≧900MPa)、カーボンブラック系融合剤で印刷されたドッグボーンに典型的な強度(すなわち〜43MPa)およびヤング率(すなわち1650MPa)よりも僅かに低いだけであった。弾性挙動および/または塑性挙動の増大(伸びの測定によって示される)並びに許容可能な強度およびヤング率の測定値は、融合剤1が融合剤として十分に働くことを例証している。
【0097】
これらの結果は、セシウム酸化タングステン系の融合剤が、許容可能な融合速度、強度、パーセント(%)伸び、ヤング率、および質量でもって、部品を印刷するための融合剤として十分に機能しうることを示している。
【0098】
融合剤3で印刷された実施例については、4個のドッグボーンを印刷した。融合速度は16ipsであった。融合剤3で印刷されたドッグボーンの各々について質量を測定した。これらの測定結果を以下の表7において示す。
【表7】
【0099】
融合剤3で印刷されたドッグボーンについて得られた質量は、六ホウ化ランタンで融合された部品についての1.8gという理論(完全に融合した)質量の39%であった。融合剤3で印刷されたドッグボーンの質量が低いことは恐らく、少なくとも部分的には、融合剤3中のプラズモン吸収剤の量が少ないことに起因している。
【0100】
これらの結果は、六ホウ化ランタン系の融合剤が、固体部品を印刷するための融合剤として機能しうることを示している。融合剤3で形成された部品の質量は、融合剤中により多くのプラズモン吸収剤を取り入れることによって、増大することができるであろう。
【0101】
融合剤1、融合剤3、およびカーボンブラック系融合剤の光学濃度は、X-rite社のeXactTM濃度計を使用して測定した。光学濃度の測定結果を以下の表8において示す。
【表8】
【0102】
表8に示されているように、融合剤1の光学濃度は、カーボンブラック系融合剤よりも0.31低い。融合剤1で印刷されたドッグボーンは、薄青がかった色相を有していた。融合剤1で印刷された試験片RB_20、LB_20、LF_20、およびRF_20の白黒写真のイメージが図3に示されている(右から左へ)。また表8には、融合剤3の光学濃度がカーボンブラック系融合剤の光学濃度よりも0.71低いことも示されている。融合剤3で印刷されたドッグボーンは、薄緑がかった色相を有していた。融合剤3で印刷された試験片RB、LB、LF、およびRFの白黒写真のイメージが図4に示されている(右から左へ)。これらの結果は、セシウム酸化タングステン系の融合剤または六ホウ化ランタン系の融合剤のいずれも、(例えばカーボンブラック系融合剤で印刷された部品よりも)低い光学濃度および/または薄い色相でもって、部品を印刷するのに使用可能であることを示している。
【0103】
明細書全体を通じての「一つの例」、「別の例」、「一例」などに対する参照は、例に関して記述した特定の要素(例えば特徴、構造、および/または特性)が、本願に記載される少なくとも一つの例に含まれており、他の例においても存在してよく、または存在しなくてもよいことを意味している。加えて、いずれかの例について記載した要素は、文脈が明らかに別のことを示すのでない限り、任意の適切な仕方で種々の例と組み合わせてよいことが理解されよう。
【0104】
本願で提示された範囲は、記載した範囲、および記載した範囲内の任意の値または部分範囲を含むことが理解されよう。例えば約50℃から約350℃の範囲は、約50℃から約350℃という明示的に挙げられた境界を含むだけでなく、57℃、95℃、225℃、300℃その他といった個別の値、および約70℃から約325℃、約60℃から約170℃その他といった部分範囲をも含むように解釈されるべきである。さらにまた、値を表現するのに「約」が用いられる場合には、それは示された値からの僅かな変動(+/−10%まで)を包含することを意味している。
【0105】
本願に開示した例を記載し特許請求するに当たっては、「ある」、「あの」、「その」といった単数形は、文脈が明らかに別のことを示すのでない限り、複数の対象を含んでいる。
【0106】
幾つかの例について詳細に説明してきたが、開示した例は修正してよいことが理解されよう。したがって、以上の記載は非限定的なものと考えられるべきである。

図1
図2
図3
図4