特許第6706338号(P6706338)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706338
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】棟制御機およびインターホンシステム
(51)【国際特許分類】
   H04M 9/00 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   H04M9/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-547049(P2018-547049)
(86)(22)【出願日】2016年10月28日
(86)【国際出願番号】JP2016082156
(87)【国際公開番号】WO2018078819
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100908
【氏名又は名称】アイホン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安川 健治
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 修
【審査官】 山田 倍司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−238201(JP,A)
【文献】 特開2010−178072(JP,A)
【文献】 特開2007−034657(JP,A)
【文献】 特開2002−133562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 9/00−9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住居棟と、前記各住居棟と通信可能な集中棟とで構成される集合住宅に用いられるインターホンシステムであって、
前記住居棟の各々には、
各居室に設置される居室親機と、
前記居室親機と通信可能な複数の端末機器と、
自棟内の前記各居室の居室親機と前記複数の端末機器とを通信可能に接続する棟制御機と、
が備えられ、
前記棟制御機は、
前記居室親機から前記棟制御機を介して前記集中棟を呼び出す際に、前記集中棟が前記棟制御機を認識するのに用いられる第一識別情報と、
前記居室親機から前記棟制御機を介して前記集中棟を呼び出す際に、前記居室親機が前記棟制御機を前記複数の端末機器とは異なる仮想の端末機器として認識するのに用いられる第二識別情報と、を有している、
インターホンシステム。
【請求項2】
前記棟制御機は、インターホン回線を介して自棟内の前記各居室の居室親機と前記複数の端末機器とを通信可能に接続するように構成されており、
前記複数の住居棟及び前記集中棟は、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている、
請求項1に記載のインターホンシステム。
【請求項3】
前記複数の住居棟の各々の前記棟制御機は、
自棟内の前記インターホン回線を通信可能な信号を、前記汎用プロトコルに従って前記ネットワークで通信可能な信号に変換処理する第一変換部と、
前記汎用プロトコルに従って前記ネットワークで通信可能な信号を、自棟内の前記インターホン回線で通信可能な信号に変換処理する第二変換部と、
を有する、
請求項2に記載のインターホンシステム。
【請求項4】
前記複数の端末機器は、集合玄関機を含み、
前記第二識別情報は、前記居室親機から前記棟制御機を介して前記集中棟を呼び出す際に、前記居室親機が前記棟制御機を前記集合玄関機とは異なる仮想の集合玄関機として認識するのに用いられる、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のインターホンシステム。
【請求項5】
前記複数の端末機器は、管理室親機を含み、
前記棟制御機は、前記管理室親機から前記棟制御機を介して前記集中棟を呼び出す際に、前記管理室親機が前記棟制御機を前記管理室親機とは異なる仮想の管理室親機として認識するのに用いられる第三識別情報を有している、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のインターホンシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の前記第一識別情報および前記第二識別情報を有する、棟制御機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅に用いられるインターホンシステムおよびインターホンシステムに搭載される棟制御機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の住居棟と集中棟とで構成される集合住宅向けのインターホンシステムがある。例えば、特許文献1のインターホンシステムでは、各住居棟と接続されるとともに集中棟に設置された棟制御機が、各住居棟からの呼出信号等を集中して管理する集中型のシステム構成となっている。この構成では、住居棟の数が増えると、その増加数に連動させて、制御機の処理能力を高めなければならず、コストが増えてしまう。そこで、呼出信号を管理する集中棟の棟制御機の機能を、各住居棟の棟制御機や、集合玄関機、管理室親機などに分散させた分散型のインターホンシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2004−260679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
居室親機は、住居棟を構成する各居室に設置されるため、インターホンシステムを構成する端末機器の中で最も台数が多い。このため、居室親機を、集中型のインターホンシステムと分散型のインターホンシステムとで兼用することができると、コスト的に望ましく、また、居室親機の商品種別数が増えることを抑制することができる。
しかし、集中型のインターホンシステム用に設計された従来の居室親機は、分散型のインターホンシステム用に設計された棟制御機を認識することができない。このため、従来の居室親機は、分散型のインターホンシステムで兼用することができないものであった。
【0005】
そこで、本発明は、従来の居室親機を分散型のインターホンシステムでも兼用することが可能な棟制御機およびインターホンシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のインターホンシステムは、
複数の住居棟と、前記各住居棟と通信可能な集中棟とで構成される集合住宅に用いられるインターホンシステムであって、
前記住居棟の各々には、
各居室に設置される居室親機と、
前記居室親機と通信可能な複数の端末機器と、
自棟内の前記各居室の居室親機と前記複数の端末機器とを通信可能に接続する棟制御機と、
が備えられ、
前記棟制御機は、
前記居室親機から前記棟制御機を介して前記集中棟を呼び出す際に、前記集中棟が前記棟制御機を認識するのに用いられる第一識別情報と、
前記居室親機から前記棟制御機を介して前記集中棟を呼び出す際に、前記居室親機が前記棟制御機を前記複数の端末機器とは異なる仮想の端末機器として認識するのに用いられる第二識別情報と、を有している。
【0007】
この構成によれば、居室親機から棟制御機を介して集中棟を呼び出す際、居室親機は、棟制御機の第二識別情報を用いて、その棟制御機を仮想の端末機器として認識することができるため、棟制御機と居室親機との間でも通信は成立する。また、この際、集中棟は、住居棟の棟制御機の第一識別情報を用いて、通信対象機器として棟制御機を認識して通信することができる。このように、上記構成によれば、居室親機は、分散型のインターホンシステムに用いられる棟制御機とも通信することができるため、分散型のインターホンシステムでも兼用することができる。
【0008】
また、本発明のインターホンシステムにおいて、
前記棟制御機は、インターホン回線を介して自棟内の前記各居室の居室親機と前記複数の端末機器とを通信可能に接続するように構成されており、
前記複数の住居棟及び前記集中棟は、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークを介して互いに接続されていてもよい。
【0009】
この構成によれば、居室親機から棟制御機を介して集中棟を呼び出す際、居室親機と住居棟の棟制御機とは、インターホン回線を介して、第二識別情報を用いて互いに接続されて通信することができる。また、この際、住居棟の棟制御機と集中棟とは、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークを介して、第一識別情報を用いて互いに接続されて通信することができる。
【0010】
また、本発明のインターホンシステムにおいて、
前記複数の住居棟の各々の前記棟制御機は、
自棟内の前記インターホン回線を通信可能な信号を、前記汎用プロトコルに従って前記ネットワークで通信可能な信号に変換処理する第一変換部と、
前記汎用プロトコルに従って前記ネットワークで通信可能な信号を、自棟内の前記インターホン回線で通信可能な信号に変換処理する第二変換部と、
を有していてもよい。
【0011】
この構成によれば、各住居棟のインターホン回線で異なる信号方式が使用されていたとしても、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークを介して一つのシステムとして構成することができる。
【0012】
また、本発明のインターホンシステムにおいて、
前記複数の端末機器は、集合玄関機を含み、
前記第二識別情報は、前記居室親機から前記棟制御機を介して前記集中棟を呼び出す際に、前記居室親機が前記棟制御機を前記集合玄関機とは異なる仮想の集合玄関機として認識するのに用いられてもよい。
【0013】
この構成によれば、居室親機から住居棟の棟制御機を介して集中棟を呼び出す際に、棟制御機は、仮想の集合玄関機として居室親機と通信することができる。
【0014】
また、本発明のインターホンシステムにおいて、
前記複数の端末機器は、管理室親機を含み、
前記棟制御機は、前記管理室親機から前記棟制御機を介して前記集中棟を呼び出す際に、前記管理室親機が前記棟制御機を前記管理室親機とは異なる仮想の管理室親機として認識するのに用いられる第三識別情報を有していてもよい。
【0015】
この構成によれば、管理室親機から住居棟の棟制御機を介して集中棟を呼び出す際、棟制御機は、仮想の管理室親機として現実の管理室親機と通信することができる。
【0016】
また、本発明の棟制御機は、
前記インターホンシステムにおける前記第一識別情報および前記第二識別情報を有する。
【0017】
この構成によれば、居室親機を、集中型のインターホンシステムと分散型のインターホンシステムとで兼用することができるため、インターホン導入時だけでなくリニューアル時にもコスト的に望ましく、また、居室親機の商品種別数が増えることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の棟制御機およびインターホンシステムによれば、従来の居室親機を分散型のインターホンシステムでも兼用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るインターホンシステムの構成図である。
図2】集合玄関機の機能ブロック図である。
図3】棟制御部の機能ブロック図である。
図4】棟制御機の機能ブロック図である。
図5】集中制御部の機能ブロック図である。
図6】住居A棟〜住居E棟の棟制御部に記憶されている集中集合玄関機の棟外テーブルを示す図である。
図7】住居A棟〜住居E棟の棟制御部に記憶されている集中管理室親機の棟外テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
図1に示すように、インターホンシステム1は、複数の住居棟(本例では住居A棟〜住居E棟)と、これらの住居棟に入る前に通過する集中棟5とで構成される例えばマンション等の集合住宅に用いられるシステムである。住居A棟〜住居E棟の各々の棟は、集合玄関機10A〜10D(端末機器の一例)と、管理室親機20(端末機器の一例)と、居室親機30と、棟制御部40とを備えている。集中棟5は、集中集合玄関機50A〜50Eと、集中管理室親機60A,60Bと、集中制御部70とを備えている。なお、本例の図1では、住居A棟のみに上記各構成を示している。各住居棟同士および各住居棟と集中棟5とは、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークN(本例では、LAN:Local Area Network)を介して互いに接続されている。
【0021】
集合玄関機10A〜10Dは、住居棟の玄関や共用スペース等に設置されている。各集合玄関機10A〜10Dには、その玄関機を特定する情報(例えば集合玄関機ID:identification)が記憶されている。集合玄関機10A〜10Dは、インターホン回線(専用線)L1を介して棟制御部40と通信可能に接続されている。なお、本例の図1では、4台の集合玄関機(集合玄関機10A〜10D)が棟制御部40に接続されているが、接続される台数はこの台数に限定されない。
【0022】
集合玄関機10A〜10Dは、例えば自棟内の居室親機30や自棟内の管理室親機20を呼び出すことができるように構成されている。また、集合玄関機10A〜10Dは、例えば訪問者の映像を撮像することができるように構成されている。
集合玄関機としては、例えば集合玄関機10Aに示されるように、部屋番号をテンキーで入力する方式のもの、集合玄関機10Bに示されるように、名称と対応づけられている専用ボタンを押下する方式のもの、集合玄関機10C,10Dに示されるように、テンキーと専用ボタンの両方式を可能とするもの等がある。
【0023】
管理室親機20は、住居棟の管理室に設置されている。管理室親機20は、操作部201、通話部202、表示部203等を備えている。管理室親機20には、その管理機を特定する情報(例えば管理室親機ID)が記憶されている。管理室親機20は、インターホン回線L2を介して棟制御部40と通信可能に接続されている。なお、棟制御部40に接続される管理室親機の台数は、複数台となりうる。
【0024】
管理室親機20は、例えば自棟内の居室親機30を呼び出すことができるように構成されている。また、管理室親機20は、自棟内の集合玄関機10A〜10Dや自棟内の居室親機30からの呼び出しに応答することができるように構成されている。また、管理室親機20は、集中棟5の集中集合玄関機50A〜50Eや集中管理室親機60A,60Bを呼び出すことができるように構成されている。さらに、管理室親機20は、集中棟5の集中集合玄関機50A〜50Eや集中管理室親機60A,60Bからの呼び出しに応答することができるように構成されている。
【0025】
居室親機30は、集合住宅の各住戸内に設置されている。居室親機30は、表示部301、操作部302、通話部303等を備えている。各居室親機30には、その居室機を特定する情報(例えば居室親機ID)が記憶されている。居室親機30は、インターホン回線L3を介して棟制御部40と通信可能に接続されている。
【0026】
居室親機30は、例えば自棟内の集合玄関機10A〜10Dや自棟内の管理室親機20を呼び出すことができるように構成されている。また、居室親機30は、自棟内の集合玄関機10A〜10Dや自棟内の管理室親機20からの呼び出しに応答することができるように構成されている。また、居室親機30は、集中棟5の集中集合玄関機50A〜50Eや集中管理室親機60A,60Bを呼び出すことができるように構成されている。また、居室親機30は、集中棟5の集中集合玄関機50A〜50Eや集中管理室親機60A,60Bからの呼び出しに応答することができるように構成されている。さらに、居室親機30は、他棟の居室親機30を呼び出すことができるように構成されている。
【0027】
棟制御部40は、インターホン回線を介して接続されている自棟内の集合玄関機10A〜10D、管理室親機20、及び居室親機30との間の通信等を制御している。また、棟制御部40は、ネットワークNを介して接続されている他の住居棟(本例では住居B棟〜住居E棟)の棟制御部40、及び集中棟5の集中制御部70との間の通信等を制御している。棟制御部40の棟制御機は、その制御機を特定する情報(例えば棟制御機ID(第一識別情報の一例))を有している。また、棟制御部40の棟制御機は、棟制御機が自棟内の集合玄関機10A〜10Dとは異なる自棟内の仮想の集合玄関機(本例の図1では第5番目の集合玄関機)に成りすますための情報(例えば集合玄関機ID(第二識別情報の一例))を有している。さらに、棟制御機は、棟制御機が自棟内の管理室親機20とは異なる自棟内の仮想の管理室親機(本例の図1では第2番目の管理室親機)に成りすますための情報(例えば管理室親機ID(第三識別情報の一例))を有している。
【0028】
集中集合玄関機50A〜50Eは、集中棟5の玄関や共用スペース等に設置されている。集中集合玄関機50A〜50Eは、呼出部501、表示部502、カメラ503、通話部504等を備えている。各集中集合玄関機50A〜50Eには、その玄関機を特定する情報(例えば集中集合玄関機ID)が記憶されている。集中集合玄関機50A〜50Eは、インターホン回線L4を介して集中制御部70と通信可能に接続されている。なお、本例では、5台の集中集合玄関機が集中制御部70に接続されているが、接続される台数はこの台数に限定されない。
【0029】
集中集合玄関機50A〜50Eは、例えば各住居棟の居室親機30や管理室親機20を呼び出すことができるように構成されている。また、集中集合玄関機50A〜50Eは、集中管理室親機60A,60Bを呼び出すことができるように構成されている。また、集中集合玄関機50A〜50Eは、住居棟の居室親機30や管理室親機20からの呼び出しに応答することができるように構成されている。また、集中集合玄関機50A〜50Eは、例えば訪問者の映像を撮像することができるように構成されている。
【0030】
集中管理室親機60A,60Bは、集中棟5の管理室に設置されている。集中管理室親機60A,60Bは、操作部601、通話部602、表示部603等を有している。各集中管理室親機60A,60Bには、その管理機を特定する情報(例えば集中管理室親機ID)が記憶されている。集中管理室親機60A,60Bは、インターホン回線L5を介して集中制御部70と通信可能に接続されている。なお、本例では、2台の集中管理室親機が集中制御部70に接続されているが、接続される台数はこの台数に限定されない。
【0031】
集中管理室親機60A,60Bは、例えば各住居棟の居室親機30や管理室親機20を呼び出すことができるように構成されている。また、集中管理室親機60A,60Bは、集中集合玄関機50A〜50Eからの呼び出しに応答することができるように構成されている。また、集中管理室親機60A,60Bは、住居棟の管理室親機20や居室親機30からの呼び出しに応答することができるように構成されている。
【0032】
集中制御部70は、インターホン回線を介して接続されている集中集合玄関機50A〜50E、及び集中管理室親機60A,60Bとの間の通信等を制御している。また、集中制御部70は、ネットワークNを介して接続されている各住居棟の棟制御部40との間の通信等を制御している。
【0033】
図2に示すように、集合玄関機10A〜10Dは、呼出部101と、記憶部102と、カメラ103と、集合玄関表示部104と、通話部105と、集合玄関機CPU106と、集合玄関機インターフェース(以下、インターフェースをI/Fと称する)107とを備えている。
【0034】
呼出部101は、訪問者等が訪問先の居室親機30や管理室の管理室親機20を呼び出す際に操作される。呼出部101は、呼出先を入力するための入力ボタン(テンキーや専用ボタン等)111や、入力ボタンを操作した後に操作される呼出ボタン112等を有する。記憶部102には、自棟内における各居室の部屋番号と、各居室の居住者の氏名や各居室の名称(例えばテナント名等)と、各居室の居室親機30を特定する居室親機IDとが対応づけられた呼出テーブルが記憶されている。カメラ103は、集合玄関機10A〜10Dを操作する訪問者等を撮像する。集合玄関表示部104は、呼出部101から入力される部屋番号や、訪問者に対するメッセージや、カメラ103が撮像している訪問者の映像等が表示される。通話部105は、居住者や管理人と通話するためのマイク及びスピーカで構成されている。
【0035】
集合玄関機CPU106は、集合玄関機10A〜10Dを構成する各部の動作を制御するための処理を行う。例えば、集合玄関機CPU106は、部屋番号や名称が入力されると、呼出テーブルに基づいて、入力された信号を呼出先の居室親機30の居室親機IDに変換する。集合玄関機I/F107は、集合玄関機CPU106とインターホン回線L1間における双方向の信号伝送路を形成する。
【0036】
なお、図示は省略するが、管理室親機20も集合玄関機10A〜10Dと同様に、呼出テーブルが記憶された記憶部を有しており、操作部201に部屋番号等の信号が入力されると、呼出テーブルに基づいて変換された居室親機IDを自棟内の各居室親機に向けて送信するように構成されている。
【0037】
図3に示すように、棟制御部40は、棟制御機410と、映像制御機420と、オーディオ制御機430と、棟制御部I/F440とを備えている。また、図4に示すように、棟制御機410は、棟記憶部411と、棟制御機CPU412と、信号変換部413とを備えている。
【0038】
棟制御機410の棟記憶部411には、居室親機30から集中棟5の集中集合玄関機50A〜50Eが呼び出される場合における、呼出元の居室親機30と呼出先の集中集合玄関機50A〜50Eとが対応づけられた棟外テーブル411aが記憶されている。各居室親機30から呼び出される集中集合玄関機は、設定により居室毎に予め決められている。例えば住居A棟の101号室の居室親機30から集中集合玄関機を呼び出す呼出操作がされた場合、集中集合玄関機50A〜50Eの中の集中集合玄関機50Bが呼び出されるように設定されている。呼び出される集中集合玄関機の設定は、居住者の希望により変更することが可能である。
【0039】
また、棟記憶部411には、管理室親機20から集中棟5の集中管理室親機60A,60Bが呼び出される場合における、呼出元の管理室親機20と呼出先の集中管理室親機60A,60Bとが対応づけられた棟外テーブル411bが記憶されている。この場合も上記と同様に、管理室親機20から呼び出される集中管理室親機は、設定により予め決められている。本例の図1では、集中管理室親機60Aまたは60Bのいずれか一方に決められている。
【0040】
また、棟記憶部411には、各住居棟の棟制御機410を特定する棟制御機ID411cと、棟制御機410が自棟内の集合玄関機10A〜10Dとは異なる仮想の集合玄関機に成りすますための集合玄関機ID411dと、棟制御機410が自棟内の管理室親機20とは異なる仮想の管理室親機に成りすますための管理室親機ID411eとが記憶されている。また、棟記憶部411には、集中棟5の集中集合玄関機50A〜50Eを特定する集中集合玄関機IDと、集中管理室親機60A,60Bを特定する集中管理室親機IDとが記憶されている。
【0041】
棟制御機CPU412は、棟制御機410を構成する各部の動作を制御するための処理を行う。例えば、棟制御機CPU412は、集中集合玄関機を呼び出す信号が居室親機30から送信されてくると、棟外テーブル411aに基づいて、送信されてきた信号を呼出先の集中集合玄関機50A〜50Eの集中集合玄関機IDに変換する。また、棟制御機CPU412は、集中管理室親機を呼び出す信号が管理室親機20から送信されてくると、棟外テーブル411bに基づいて、送信されてきた信号を呼出先の集中管理室親機60A,60Bの集中管理室親機IDに変換する。
【0042】
信号変換部413は、インターホン回線L1〜L3で使用される信号とネットワークNで使用される信号とを相互に変換処理するための回路である。信号変換部413は、アナログデジタル変換部413A(第一変換部の一例)と、デジタルアナログ変換部413B(第二変換部の一例)とを有する。アナログデジタル変換部413A(以下、アナログデジタルをA/Dと称する)は、各々の住宅棟内におけるインターホン回線L1〜L3で通信可能なアナログ信号を、各住居棟間及び住居棟と集中棟間におけるネットワークNで通信可能なデジタル信号に変換する。一方、デジタルアナログ変換部413B(以下、デジタルアナログをD/Aと称する)は、各住居棟間及び住居棟と集中棟間におけるネットワークNで通信可能なデジタル信号を、各々の住宅棟内におけるインターホン回線で通信可能なアナログ信号に変換する。
【0043】
映像制御機420は、集合玄関機10A〜10Dのカメラ103で撮像された映像信号や、集中棟5から送信されてきた映像信号を信号処理するとともに、処理した映像信号を自棟内の各居室親機30、あるいは管理室親機20に向けて送信する。オーディオ制御機430は、集合玄関機10A〜10Dの通話部105からの音声信号や、管理室親機20の通話部202からの音声信号や、集中棟5から送信されてきた音声信号を音声処理するとともに、処理した音声信号を自棟内の各居室親機30、あるいは管理室親機20に向けて送信する。棟制御部I/F440は、棟制御機410、映像制御機420、及びオーディオ制御機430とインターホン回線L1〜L3間における双方向の信号伝送路を形成する。
【0044】
図5に示すように、集中制御部70は、集中制御機710と、映像制御機720と、オーディオ制御機730と、集中制御部I/F740とを備えている。また、集中制御機710は、A/D変換部711と、D/A変換部712とを備えている。
【0045】
集中制御機710のA/D変換部711は、集中棟5内におけるインターホン回線L4,L5で通信可能なアナログ信号を、集中棟5と各住居棟間におけるネットワークNで通信可能なデジタル信号に変換する。一方、D/A変換部712は、集中棟5と各住居棟間におけるネットワークNで通信可能なデジタル信号を、集中棟5内におけるインターホン回線L4,L5で通信可能なアナログ信号に変換する。
【0046】
映像制御機720は、集中集合玄関機50A〜50Eのカメラ503で撮像された映像信号を信号処理するとともに、処理した映像信号を各住居棟の棟制御機410に向けて送信する。オーディオ制御機730は、集中集合玄関機50A〜50Eの通話部504からの音声信号や、集中管理室親機60A,60Bの通話部602からの音声信号を音声処理するとともに、処理した音声信号を各住居棟の棟制御機410に向けて送信する。集中制御部I/F740は、集中制御機710、映像制御機720、及びオーディオ制御機730とインターホン回線L4,L5間における双方向の信号伝送路を形成する。
【0047】
次に、インターホンシステム1の動作について図6図7を参照しつつ説明する。
<動作例1>
本例では、住居A棟の101号室の居室親機30から集中棟5の集中集合玄関機50Bが呼び出される場合の動作例について、以下に説明する。
【0048】
居室親機30の操作部302を介して、集中棟5の集中集合玄関機50Bを呼び出す信号が入力され、呼出ボタンが押下される。入力された呼出信号、例えば「50B」は、インターホン回線L3を介して棟制御部40の棟制御機410へ送信される。この際、棟制御機410は、居室親機30とインターホン回線を介して通信を行うために、自棟内の集合玄関機10A〜10Dとは異なる仮想の集合玄関機として、自棟内の集合玄関機10A〜10Dと通信する場合と同じように通信する。なお、送信される呼出信号「50B」には、送信元である住居A棟の101号室の居室親機30を特定する居室親機IDが付加される。
【0049】
棟制御部40の棟制御機410における棟制御機CPU412は、呼出信号「50B」に付加されている居室親機IDを検出し、棟記憶部411に記憶されている棟外テーブル411a(図6参照)に基づいて、呼出信号「50B」を呼出先の集中集合玄関機50Bの集中集合玄関機IDである例えば「Y2」という呼出信号に変換する。なお、図6に示されるように、本例では、住居A棟の101号室の居室親機30から集中集合玄関機が呼び出されると集中集合玄関機50Bが呼び出され、102号室の居室親機30から集中集合玄関機が呼び出されると集中集合玄関機50Cが呼び出されるように予め設定されている。
【0050】
続いて、棟制御機410は、A/D変換部413Aにより、インターホン回線で通信可能なアナログ信号である呼出信号「Y2」を、ネットワークNで通信可能なデジタル信号の呼出信号「Y2」に変換する。棟制御機410は、変換された呼出信号「Y2」をネットワークNを経由して集中棟5に向けて送信する。なお、送信される呼出信号「Y2」には、住居A棟の棟制御機410を特定する棟制御機ID411cが付加される。
【0051】
集中棟5の集中制御部70は、棟制御機410から送信されてきた呼出信号「Y2」を、集中制御機710のD/A変換部712により、アナログ信号に変換する。集中制御機710は、呼出信号「Y2」に付加されている棟制御機ID411cを検出して、送信元の棟制御機が住居A棟の棟制御機410であることを認識する。集中制御機710は、インターホン回線L4を介して、呼出信号「Y2」を集中集合玄関機50Bへ送信する。
【0052】
呼出信号「Y2」を受信した集中集合玄関機50Bは、「Y2」が自機に記憶されている集中集合玄関機IDと一致するか否か判別する。一致していると判別した集中集合玄関機50Bでは、カメラ503が起動されて、集中集合玄関機50Bの周囲の撮影(モニター)が開始される。撮影された映像信号は、集中集合玄関機50Bの集中集合玄関機IDが付加され、インターホン回線L4を介して集中制御部70へ送信される。さらに映像信号は、集中制御部70でデジタル信号に変換され、ネットワークNを介して住居A棟の棟制御部40に向けて送信される。
【0053】
住居A棟の棟制御機410は、受信した映像信号をD/A変換部413Bでアナログ信号に変換する。続いて、棟制御機410の棟制御機CPU412は、映像信号に付加されている集中集合玄関機IDを検出し、映像信号の送信元が集中集合玄関機50Bであることを認識する。そして、棟制御機CPU412は、呼出元である101号室の居室親機30とインターホン回線を介して通信を行うために、自棟内の集合玄関機10A〜10Dとは異なる仮想の集合玄関機に成りすますことを決定する。
棟制御機CPU412は、仮想の集合玄関機に成りすますための集合玄関機ID411dを付加した映像信号を、インターホン回線L3を介して101号室の居室親機30に向けて送信する。
【0054】
101号室の居室親機30は、集合玄関機ID411dを検出し、現在接続されている相手が自棟内の集合玄関機10A〜10Dとは異なる仮想の集合玄関機であると認識する。居室親機30は、自棟内の集合玄関機10A〜10Dと通信する場合と同じように、インターホン回線を介して仮想の集合玄関機である棟制御機410と通信を行う。これにより、棟制御部40を介して、住居A棟の101号室の居室親機30と集中棟5の集中集合玄関機50Bとの間の通信が成立する。居室親機30の表示部301には、集中集合玄関機50Bのカメラ503で撮影(モニター)される映像が表示される。
【0055】
なお、住居棟の居室親機30から集中棟5の集中管理室親機60A,60Bが呼び出される場合も上記集中集合玄関機50A〜50Eが呼び出される場合と同様に、棟制御機CPU412は仮想の集合玄関機に成りすまして動作する。
【0056】
<動作例2>
次に、住居A棟の管理室親機20から集中棟5の集中管理室親機60Aが呼び出される場合、インターホンシステム1は以下のように動作する。
【0057】
管理室親機20の操作部201を介して、集中棟5の集中管理室親機60Aを呼び出す信号が入力され、呼出ボタンが押下される。入力された呼出信号、例えば「60A」は、インターホン回線L2を介して棟制御部40へ送信される。この際、管理室親機20は、管理室親機ID411eを検出し、現在接続されている相手が自棟内の管理室親機20とは異なる仮想の管理室親機であると認識する。管理室親機20は、自棟内の管理室親機同士で通信する場合と同じように、インターホン回線を介して仮想の管理室親機である棟制御機410と通信を行う。なお、送信される呼出信号「60A」には、送信元である住居A棟の管理室親機20を特定する管理室親機IDが付加される。
【0058】
棟制御部40の棟制御機410における棟制御機CPU412は、呼出信号「60A」に付加されている管理室親機IDを検出し、棟記憶部411に記憶されている棟外テーブル411b(図7参照)に基づいて、呼出信号「60A」を呼出先の集中管理室親機60Aの集中管理室親機IDである例えば「Z1」という呼出信号に変換する。
【0059】
続いて、棟制御機410は、A/D変換部413Aにより、アナログ信号の呼出信号「Z1」を、デジタル信号の呼出信号「Z1」に変換する。棟制御機410は、変換された呼出信号「Z1」をネットワークNを経由して集中棟5に向けて送信する。なお、送信される呼出信号「Z1」には、住居A棟の棟制御機410を特定する棟制御機ID411cが付加される。
【0060】
集中棟5の集中制御部70は、棟制御機410から送信されてきた呼出信号「Z1」を、集中制御機710のD/A変換部712により、アナログ信号に変換する。集中制御機710は、呼出信号「Z1」に付加されている棟制御機ID411cを検出して、送信元の棟制御機が住居A棟の棟制御機410であることを認識する。集中制御機710は、インターホン回線L5を介して、呼出信号「Z1」を集中管理室親機60A,60Bへ送信する。
【0061】
呼出信号「Z1」を受信した各集中管理室親機60A,Bは、「Z1」が自機に記憶されている集中管理室親機IDと一致するか否か判別する。一致していると判別された集中管理室親機60Aでは、呼出音の出力、呼出ランプの点灯、および表示部603への文字表示により、住居A棟の管理室親機20からの呼び出しであることが報知される。
【0062】
集中管理室親機60Aにおいて、上記呼出音等の報知に対し通話許可ボタンが押下されると、管理室親機20と集中管理室親機60Aとの間の信号通信が可能となり、例えば通話可能となる。
【0063】
なお、住居棟の管理室親機20から集中棟5の集中集合玄関機50A〜50Eが呼び出される場合も上記集中管理室親機60A,60Bが呼び出される場合と同様に、棟制御機CPU412は仮想の管理室親機に成りすまして動作する。
【0064】
<その他>
ある住居棟の居室親機30(本例では、住居B棟の103号室の居室親機30)から他の住居棟の居室親機30(本例では、住居A棟の101号室居室親機30)が呼び出される場合も同様に、棟制御機410は、居室親機30に対して仮想の集合玄関機として動作する。
【0065】
ところで、多棟で構成される集合住宅において、集中型のインターホンシステムに用いられている居室親機は、自棟内の集合玄関機や管理室親機とは相互に通信を行うことができるように構成されている。しかしながら、この居室親機を分散型のインターホンシステムに用いようとすると、居室親機は、各棟に設けられている棟制御機を認識することができないため棟制御機との間の通信を行うことができなかった。
【0066】
これに対して、上記のような構成のインターホンシステム1によれば、居室親機30から棟制御機410を介して集中集合玄関機50A〜50Eが呼び出される際、居室親機30は、棟制御機410の集合玄関機ID411dを用いて、その棟制御機410を仮想の集合玄関機として認識することができるため、棟制御機410と居室親機30との間でも通信は成立する。一方、この際、集中棟5は、住居棟の棟制御機410の棟制御機ID411cを用いて、通信対象機器として棟制御機を認識して通信することができる。同様に、管理室親機20から棟制御機40を介して集中管理室親機60A,60Bが呼び出される際、管理室親機20は、棟制御機40の管理室親機ID411eを用いて、その棟制御機410を仮想の管理室親機として認識することができるため、棟制御機410と管理室親機20との間でも通信は成立する。さらに、居室親機30から棟制御機410を介して他棟の居室親機30が呼び出される際も同様である。このように、従来と同じ構成の居室親機30を分散型のインターホンシステムに用いられる棟制御機410とも通信できるようにすることができる。
【0067】
また、居室親機30(管理室親機20)から棟制御機410を介して集中棟5が呼び出される際、居室親機30(管理室親機20)と住居棟の棟制御機410とは、インターホン回線L3(L2)を介して、集合玄関機ID(管理室親機ID)を用いて互いに接続されて通信することができる。また、この際、住居棟の棟制御機410と集中棟5とは、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークNを介して、棟制御機IDを用いて互いに接続されて通信することができる。
【0068】
また、各住居棟の棟制御機410には、インターホン回線で通信可能なアナログ信号とネットワークで通信可能なデジタル信号とを相互に変換可能なA/D変換部413AとD/A変換部413Bとが設けられている。このため、例えば各住居棟で異なる信号方式のインターホン回線が使用されていたとしても、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークNを介して一つのシステムとして構成することができる。
【0069】
このように、インターホンシステム1によれば、従来と同じ構成の居室親機30を集中型のインターホンシステムと分散型のインターホンシステムとで兼用させることができる。また、上記棟制御部40の棟制御機410によれば、居室親機30を、集中型のインターホンシステムと分散型のインターホンシステムとで兼用することができるため、インターホン導入時だけでなくリニューアル時にもコスト的に望ましく、また、居室親機30の商品種別数が増えることを抑制することができる。
【0070】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0071】
例えば、動作例1で居室親機30から集中集合玄関機50A〜50Eが呼び出される場合、棟制御機410は、例えば仮想の管理室親機に成りすましてもよい。同様に、上記動作例2で管理室親機20から集中管理室親機60A,60Bが呼び出される場合、棟制御機410は、例えば仮想の集合玄関機に成りすましてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1:インターホンシステム、5:集中棟、10A〜10D:集合玄関機(端末機器の一例)、20:管理室親機(端末機器の一例)、30:居室親機、40:棟制御部、50A〜50E:集中集合玄関機、60A,60B:集中管理室親機、70:集中制御部、410:棟制御機、411c:棟制御機ID(第一識別情報の一例))、411d:集合玄関機ID(第二識別情報の一例))、411e:管理室親機ID(第三識別情報の一例))、413A:A/D変換部(第一変換部の一例)、413B:D/A変換部(第二変換部の一例)、L1〜L5:インターホン回線、N:ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7