(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706341
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20200525BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20200525BHJP
H02H 7/18 20060101ALI20200525BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/02 H
H02H7/18
H01M10/48 301
H01M10/48 P
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2018-551568(P2018-551568)
(86)(22)【出願日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2017039715
(87)【国際公開番号】WO2018092599
(87)【国際公開日】20180524
【審査請求日】2019年2月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-222277(P2016-222277)
(32)【優先日】2016年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 誠二
【審査官】
宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−138278(JP,A)
【文献】
特開2006−344611(JP,A)
【文献】
特開平07−078639(JP,A)
【文献】
特開2013−243881(JP,A)
【文献】
特開2014−236652(JP,A)
【文献】
特開2011−135657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00−7/12
H02J7/34−7/36
H01M10/42−10/48
H02H7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを有する組電池と、前記電池セルの電圧を検出する電圧検出装置とを備える電源装置であって、
前記組電池には、前記電池セルの内圧の上昇により通電経路を遮断する遮断装置を内蔵し且つ他の電池セルに対して容量が低く設定された電池セルが1つのみ設けられており、
前記遮断装置が内蔵されていない前記電池セルは、前記遮断装置が内蔵された前記電池セルと同一の外形形状とされている
ことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
複数の電池セルを有する組電池と、前記電池セルの電圧を検出する電圧検出装置とを備える電源装置であって、
複数の前記電池セルが直列接続されてなる電池モジュールを複数有する組電池の少なくとも1つの前記電池モジュールには、前記電池セルの内圧の上昇により通電経路を遮断する遮断装置を内蔵し且つ前記電池モジュール内の他の電池セルに対して容量が低く設定された電池セルが1つのみ設けられており、
前記遮断装置が内蔵されていない前記電池セルは、前記遮断装置が内蔵された前記電池セルと同一の外形形状とされている
ことを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
本願は、2016年11月15日に出願された日本国特願2016−222277号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両等に搭載される電源装置は、直列接続された複数の電池セルを有する組電池と、各々の電池セルの電圧を検出する電圧検出装置とを備えている。電池セルには、例えば特許文献1に開示されているように、CID(Current Interrupt Device)が内蔵されている。
このCIDは、過充電等により電池セルの内圧が上昇した場合に電池セル内部の通電経路を遮断することにより、異常が発生した電池セルによる充放電を停止するための機構である。例えば、特許文献1に開示されているように、このようなCIDは、バッテリが備える複数の電池セルの全てに対して各々内蔵されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特許第5556902号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電池セルにCIDを内蔵すると、CIDの設置スペースを電池セルの内部に確保する必要があることから電池セルが大型化することになる。逆に、電池セルの外形の大きさを変化させずにCIDを内蔵させるためには、電解液等の収納スペースが減少し、電池セルの電池容量が減少することなる。EV(Electric Vehicle)やPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)では、限られた収納スペースにバッテリを設置する必要があることから、可能な限り電池セルの1つ1つの電池容量を増加させ、組電池小型化あるいは組電池全体のとしての電池容量を増加させる必要がある。
【0005】
本発明に係る態様は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、複数の電池セルを有する組電池と、電池セルの電圧を検出する電圧検出装置とを備える電源装置において、組電池の小型化あるいは組電池全体のとしての電池容量の増加を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
【0007】
(1)本発明に係る一態様の電源装置は、複数の電池セルと、上記電池セルの電圧を検出する電圧検出装置とを備える電源装置であって、複数の上記電池セルが直列接続されてなる電池モジュールを複数有する組電池の少なくとも1つの上記電池モジュールには、上記電池セルの内圧の上昇により通電経路を遮断する遮断装置を内蔵する電池セルが1つのみ設けられている。
【0008】
(2)上記(1)の態様において、上記遮断装置が内蔵された上記電池セルは、前記組電池に対して1つのみ設けられてもよい。
【0009】
(3)上記(1)の態様において、上記遮断装置が内蔵された上記電池セルは、各前記電池モジュールに対して1つずつ設けられてもよい。
【0010】
(4)本発明に係る一態様の電源装置は、複数の電池セルを有する組電池と、上記電池セルの電圧を検出する電圧検出装置とを備える電源装置であって、1つのグループに属する複数の上記電池セルのうち、電池容量が最も小さい上記電池セルのみに対して、上記電池セルの内圧の上昇により通電経路を遮断する遮断装置が内蔵されている。
【0011】
(5)本発明に係る一態様の電源装置は、複数の電池セルを有する組電池と、上記電池セルの電圧を検出する電圧検出装置とを備える電源装置であって、上記電池セルの内圧の上昇により通電経路を遮断する遮断装置が内蔵されていない上記電池セルを少なくとも1つ有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る態様によれば、組電池が備える複数の電池セルのうち、少なくとも1つはCIDを内蔵していない。CIDが内蔵されていない電池セルは、小型化あるいは電池容量の増加を図ることができる。したがって、本発明に係る態様によれば、複数の電池セルを有する組電池と、電池セルの電圧を検出する電圧検出装置とを備える電源装置において、組電池の小型化あるいは組電池全体のとしての電池容量の増加を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態における電源装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】本発明の第2実施形態における電源装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る電源装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、本実施形態の電源装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。この図に示すように、本実施形態の電源装置1は、組電池2と、電圧検出装置3と、第1絶縁素子4と、第2絶縁素子5と、マイコン6とを備えている。
【0016】
組電池2は、複数の電池モジュール2aが直列接続されることにより形成されている。
なお、本実施形態においては、組電池2が複数の電池モジュール2aを備える構成となっているが、組電池2を単体の電池モジュール2aで構成するようにしても良い。このような組電池2は、一対の出力端子(つまり、プラス端子2bとマイナス端子2c)を備えており、不図示のコンタクタを介してインバータに接続され、インバータを介して走行用モータに接続されている。
【0017】
各々の電池モジュール2aは、
図1に示すように、直列接続された複数の電池セル2a1を備えている。このように、本実施形態の電源装置1において組電池2は、直列接続された複数の電池セル2a1を有する電池モジュール2aが複数直列接続された構成を有している。つまり、組電池2は、多数の電池セル2a1が直列接続された構成を有している。
【0018】
本実施形態の電源装置1では、組電池2に含まれる多数の電池セル2a1のうち、1つの電池セル2a1のみにCID2a2(遮断装置)が内蔵されている。つまり、組電池2を構成する1つのグループに属する複数の電池セル2a1のうち、1つの電池セル2a1のみにCID2a2が内蔵されている。
【0019】
CID2a2は、過充電等により電池セル2a1の内圧が上昇した場合には、電池セル2a1の内部の通電経路を機械的に遮断する機構である。例えば、CID2a2は、電池セル2a1の内圧が異常な高圧になると、電池セル2a1の出力端(プラス端及びマイナス端)の一方を機械的に開放する。このようなCID2a2が作動して電池セル2a1の内部の通電回路が遮断されると、組電池2は外部に直流電力を供給し得ない状態となる。
【0020】
CID2a2が内蔵された電池セル2a1(以下、CID内蔵電池セル10と称する)は、本実施形態においては、組電池2に含まれる全ての電池セル2a1のうち、電池容量が最も小さい。なお、CID内蔵電池セル10は、CID2a1が内蔵されていない他の電池セル2a1と外形形状が同一とされており、CID2a2を内蔵する分だけ電解液の収納スペースが減少されたことで低容量化されている。つまり、本実施形態においては、意図的にCID内蔵電池セル10の電池容量が他の電池セル2a1に対して小さく設定されている。このように、CID内蔵電池セル10の外形形状を他の電池セル2a1と同一とすることによって、CID内蔵電池セル10を含む電池モジュール2aと、CID内蔵電池セル10を含まない電池モジュール2aとの形状を一致させることができ、電池モジュール2aの取付構造等を共通化することができる。
【0021】
なお、CID内蔵電池セル10は、全ての電池セル2a1のうち、最も低電位の位置に配置されることが好ましい。つまり、本実施形態においては、
図1に示す組電池2のうち、最もマイナス端子2c側に配置された電池セル2a1をCID内蔵電池セル10とすることが好ましい。このように、CID内蔵電池セル10を最も低電位の位置に配置することによって、CID2a2が作動した場合の異常電圧を検出する際の信号のレベル調整等が容易となり、簡単な回路構成で異常電圧を検出することが可能となる。
【0022】
また、CID内蔵電池セル10は、全ての電池セル2a1のうち、最も冷却効率が低い位置に配置されることが好ましい。例えば、全ての電池セル2a1は、冷却空気の流路に配置される場合には、電池セル2a1の冷却により冷却空気の温度が徐々に上昇していくことから、冷却空気の流れの最も下流側が最も冷却効率が低い位置となる。したがって、CID内蔵電池セル10は、冷却空気の流れの最も下流側に配置されることが好ましい。
一般的に、最も冷却効率が低い位置に設置された電池セル2a1は、他の電池セル2a1よりも劣化の進行速度が速く、内圧の上昇が発生し易い。このため、最も内圧の上昇が生じる可能性が高い位置にCID内蔵電池セル10を配置することによって、CID内蔵電池セル10が他の電池セル2a1よりも早く異常を示すことなり、組電池2の異常をより確実に把握することが可能となる。
【0023】
電圧検出装置3は、組電池2の出力電圧を検出する回路であり、本実施形態においては、電池モジュール2aごとに設けられている。各々の電圧検出装置3は、電池モジュール2aの電池セル2a1の出力端子と接続されており、各々の電池セル2a1の出力電圧を検出する。なお、電圧検出装置3は、電池モジュール2aごとに複数設けるようにしたり、複数の電池モジュール2aを跨ぐように設けたりすることも可能である。これらの電圧検出装置3は、いわゆるデイジチェーン方式で第1絶縁素子4及び第2絶縁素子5を介してマイコン6と接続されている。これらの電圧検出装置3は、接続された各々の電池セル2a1の出力電圧を示す信号をマイコン6に向けて出力する。
【0024】
第1絶縁素子4は、マイコン6の出力端と、複数の電圧検出装置3のうち信号の伝達方向においてマイコン6から見て最も上流側の電圧検出装置3との間に配置されている。第2絶縁素子5は、マイコン6の入力端と、複数の電圧検出装置3のうち信号の伝達方向においてマイコン6から見て最も下流側の電圧検出装置3との間に配置されている。これらの第1絶縁素子4及び第2絶縁素子5は、電圧検出装置3とマイコン6とが電気的に直接接続されることを防止することで、電気的に絶縁するための素子である。これらの第1絶縁素子4及び第2絶縁素子5としては、電気信号を一端光信号に変換した後に再度電気信号に変換するフォトカプラが用いられる。
【0025】
マイコン6は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ、入出力インターフェイス等が一体的に組み込まれており、いわゆるワンチップマイコンからなる。このマイコン6は、内部メモリに記憶された電圧検知プログラムを実行することにより組電池2に関する電圧検知機能を発揮する。より具体的には、このマイコン6は、電圧検出装置3から入力される各電池セル2a1の出力電圧をデジタル値に変換し、所定の演算をした上でバッテリECUに向けて出力する。
【0026】
このような構成の本実施形態の電源装置1では、マイコン6から指令信号が出力され、当該指令信号が第1絶縁素子4を介して電圧検出装置3に入力される。電圧検出装置3は、指令信号に基づいて電池セル2a1の電圧を検出し、その検出結果を示す検出信号を出力する。電圧検出装置3から出力された検出信号は、第2絶縁素子5を介してマイコン6に入力される。マイコン6は、入力された検出信号に所定の演算をしてバッテリECUに向けて出力する。一方、CID2a2が作動した場合には、組電池2から過電圧が出力され、電圧検出装置3を通じてマイコン6にそれを示す信号が入力される。
【0027】
以上のような本実施形態の電源装置1によれば、組電池2が備える複数の電池セル2a1のうち、1つ(CID内蔵電池セル10)を除いた多数の電池セル2a1がCID2a2を内蔵していない。CID2a2が内蔵されていない電池セル2a1は、CID内蔵電池セル10と同一の外形形状とすることにより電池容量の増加を図ることができる。したがって、本実施形態の電源装置1によれば、組電池2の全体のとしての電池容量の増加を図ることが可能となる。
【0028】
なお、本実施形態の電源装置1においては、CID2a2が内蔵されていない電池セル2a1は、CID内蔵電池セル10と同一の外形形状とすることにより電池容量の増加を図る構成としたが、CID2a2が内蔵されていない電池セル2a1の電池容量をCID内蔵電池セル10と同一とし、CID2a2が内蔵されていない電池セル2a1をCID2a2が削減された分小型化することもできる。このような場合には、小型の組電池2を実現することができる。
【0029】
また、本実施形態の電源装置1においては、複数の電池モジュール2aにより構成される組電池2の全体に対して、CID内蔵電池セル10を1つのみ設けている。このため、組電池2において、CID2a2を内蔵しない電池セル2a1の数を最大化することができ、組電池2の電池容量を最大化することが可能となる。
【0030】
また、本実施形態の電源装置1においては、組電池2に含まれる電池セル2a1のうち、最も電池容量が小さい電池セル2a1に対してCID2a2が内蔵されている。電池容量が最も小さい電池セル2a1は他の電池セル2a1よりも早く過充電となり、他の電池セル2a1よりも早く内圧が上昇する。つまり、本実施形態の電源装置1においては、最も異常が発生する確率が高い電池セル2a1に対してCID2a2が内蔵されている。このため、組電池2の異常を確実に把握することが可能とある。
【0031】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について、
図2を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0032】
図2は、本実施形態の電源装置1Aの概略構成を示す機能ブロック図である。この図に示すように、本実施形態の電源装置1Aにおいては、組電池2を構成する複数の電池モジュール2aの1つ1つに対して、CID内蔵電池セル10が設けられている。つまり、本発明は、組電池2に対してCID内蔵電池セル10を1つのみしか設けない構造に限定されない。本発明は、本実施形態のように組電池2に複数のCID内蔵電池セル10を備える構成を採用しても良い。
【0033】
なお、本実施形態の電源装置1においては、全ての電池モジュール2aにおいて、同じ位置にCID内蔵電池セル10を設けるようにすることが好ましい。このような構成を採用することにより、全ての電池モジュール2aを同一の構成とすることができ、電池モジュール2aの製造性、及び、組電池2の組立作業性が向上することになる。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態においては、組電池2あるいは電池モジュール2aに対して、CID内蔵電池セル10が1つ設けられた構成を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、1つの電池モジュール2aに対して複数のCID内蔵電池セル10を備える構成を採用することも可能である。例えば、本発明においては、1つの電池セル2a1を除いた他の全ての電池セル2a1をCID内蔵電池セル10とすることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1……電源装置、1A……電源装置、2……組電池、2a……電池モジュール、2a1……電池セル、2a2……CID(遮断装置)、3……電圧検出装置、10……内蔵電池セル