特許第6706346号(P6706346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706346
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ガス状流体の圧縮装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   F04C18/02 311E
   F04C18/02 311K
   F04C18/02 311B
【請求項の数】13
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-558242(P2018-558242)
(86)(22)【出願日】2017年8月17日
(65)【公表番号】特表2019-515184(P2019-515184A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】KR2017008956
(87)【国際公開番号】WO2018062684
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2018年11月5日
(31)【優先権主張番号】102016118525.6
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516011246
【氏名又は名称】ハンオン システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クロッテン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】クッカー デニス
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−229650(JP,A)
【文献】 特開2015−034506(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/016028(WO,A1)
【文献】 特開2016−156297(JP,A)
【文献】 特開平09−151864(JP,A)
【文献】 特公平06−068276(JP,B2)
【文献】 特開2001−132670(JP,A)
【文献】 特開2012−167605(JP,A)
【文献】 特開2004−124735(JP,A)
【文献】 特開平09−228967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状流体の圧縮装置(1a、1b)であって、前記圧縮装置(1a、1b)は、
壁(12)を有するハウジング(2)と、
ベースプレート(3a)、及び該ベースプレート(3a)の1つの側面から延びて螺旋状に形成された壁(3b)を有する非運動固定子(3)と、
ベースプレート(4a)、及び前記ベースプレート(4a)から延びて螺旋状に形成された壁(4b)を有する運動オービタ(4)と、
前記運動オービタ(4)と前記壁(12)との間に配置される逆圧領域(13)と、
前記運動オービタ(4)の前記ベースプレート(4a)内に形成された少なくとも1つの開口(11a)、及び前記ハウジングと固定結合されて突出した少なくとも1つのピン(11b)を有するガイド装置(11)と、
前記ハウジング(2)の前記壁(12)と前記運動オービタ(4)との間に配置され、前記壁(12)と固定結合された摺動素子(17a、17b)と、を含み、
前記ベースプレート(3a、4a)は、前記非運動固定子(3)の前記壁(3b)と前記運動オービタ(4)の前記壁(4b)とが互いに噛み合って閉鎖された作業室(5)が形成されるように配置されて、前記運動オービタ(4)の運動に応じて、前記作業室(5)の体積及び位置が変わり、
前記少なくとも1つのピン(11b)は、前記少なくとも1つの開口(11a)内に噛み合っており、
前記少なくとも1つのピン(11b)は、前記摺動素子(17a、17b)内に形成された開口内に圧入されて前記壁(12)に対して動かないように固定され、
前記少なくとも1つのピン(11b)の一側端部は前記逆圧領域(13)内に配置されることを特徴とするガス状流体の圧縮装置。
【請求項2】
前記摺動素子(17a、17b)は、内径(d)、外径(D)、厚さ(b)、外部ジャケット面、及び2つの円形環面を有する円形環のディスク状を有することを特徴とする請求項1に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのピン(1b)及び前記摺動素子(17a、17b)は類似した強度及び類似した熱膨張効率を有することを特徴とする請求項1に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項4】
前記摺動素子(17a、17b)が鋼で形成されることを特徴とする請求項1に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのピン(11b)が鋼で形成されることを特徴とする請求項1に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項6】
前記摺動素子(17a、17b)が、前記ハウジング(2)内に圧入されてプレス嵌めされることを特徴とする請求項1に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項7】
前記摺動素子17bが、前記ハウジング(2)内に統合されて中間嵌めされることを特徴とする、請求項1に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項8】
前記ハウジング(2)は、側面及びベース面を有するリセスを含み、前記摺動素子(17a、17b)の1つの円形環面は、前記リセスのベース面上に接し、前記リセスの前記側面と前記摺動素子(17a、17b)の外部ジャケット面との嵌合が形成されることを特徴とする請求項6に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項9】
前記摺動素子(17b)は、Oリングで形成されたシール素子を収容するための環状溝(18)を含むことを特徴とする請求項1に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項10】
前記環状溝(18)が、前記摺動素子(17b)の外部ジャケット面上に形成されることを特徴とする請求項9に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項11】
前記摺動素子(17a、17b)内に形成される、前記少なくとも1つのピン(11b)を収容するための前記少なくとも1つの開口(11a)が貫通ボアとして形成されることを特徴とする請求項1に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項12】
前記ガイド装置(11)の前記少なくとも1つのピン(11b)は、前記貫通ボア内に、前記ガイド装置(11)の前記少なくとも1つの開口(11a)内に噛み合った端部から遠く形成された前記少なくとも1つのピン(11b)の端部が、前記摺動素子(17a)によって前記ハウジング(2)の前記壁(12)内に形成される開口内に噛み合うように配置されることを特徴とする請求項11に記載のガス状流体の圧縮装置。
【請求項13】
前記摺動素子(17b)内に形成された開口内に配置され、前記ハウジング(2)の前記壁(12)内に形成された開口内まで突出するピン素子(19)が形成されることを特徴とする請求項1に記載のガス状流体の圧縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス状流体の圧縮装置に係り、より詳しくは、壁を有するハウジングと、ベースプレート、及びベースプレートの第1側面から延びて螺旋状に形成された壁を有する非運動固定子と、ベースプレート、及びベースプレートから延びて螺旋状に形成された壁を有する運動するオービタと、を含み、ベースプレートは、固定子の壁とオービタの壁とが互いに噛み合って閉鎖された作業室が形成されるように配置され、オービタの運動に応じて、作業室の体積及び位置が変わる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒圧縮機ともいう従来技術による既知の圧縮機は、冷媒流路を介して冷媒を提供するための、移動耐、特に、車両の空気調和システムに適用される。圧縮機は、冷媒の種類にかかわらず、可変的なストローク体積を有するピストン圧縮機またはスクロール圧縮機として形成される。圧縮機は、プーリによりまたは電気的に駆動される。
【0003】
図1及び図2には、従来技術によつ既知のスクロール圧縮機1´の断面図を示した。従来のスクロール圧縮機1´は、ハウジング2と、ディスク状のベースプレート3a、及びベースプレート3aから延びて螺旋状に形成された壁3bを有する非運動固定子3と、ディスク状のベースプレート4a、及びベースプレートから延びて螺旋状に形成された壁4bを有する運動オービタ4と、を含む。簡略には、非運動または固定スパイラル3または運動スパイラル4ともいう固定子3とオービタ4が協動する。ベースプレート3a、4aは、固定子3の壁3bとオービタ4の壁4bとが互いに噛み合うように配置される。運動スパイラル4は、偏心駆動機によって円形軌道上を運動する。スパイラル4の運動時に、壁3b、4bは多数の点上で互いに接触し、壁3b、4bの内部に、多数の連続した閉鎖された作業室5が形成される。隣接して配置される作業室5の体積は異なって制限される。オービタ4の運動に応じて、作業室5の体積及び位置が変わる。作業室5の体積は、スパイラル壁ともいう螺旋状の壁3b、4bを中心に次第に小さくなる。偏心駆動機は、回転軸7を中心に回転する駆動シャフト6及び中間素子8で形成される。駆動シャフト6は、第1軸受9によってハウジング2上に支持される。オービタ4は、中間素子8によって駆動シャフト6と偏心して連結され、すなわち、オービタ4及び駆動シャフト6の軸は、互いにオフセットされるように配置される。オービタ4は、第2軸受10によって中間素子8上に支持される。
【0004】
従来技術に属するスクロール圧縮機1´は、さらに、ガイド装置11を含み、ガイド装置は、運動スパイラル4の回転を防止し、運動スパイラル4の旋回を達成させる。ガイド装置11は、特定間隔で隣接して配置された多数の略円形の開口11aを含む。好ましくは、ブラインドホールとして形成される開口11aが運動スパイラル4のベースプレート4a内に形成される。また、ガイド装置11はピン11bを含み、ピンはハウジング2の壁12上に突出して形成され、運動スパイラル4のベースプレート4a内に形成された開口11a内にそれぞれ噛み合う。ピン11bの第1端部は壁12から突出し、第2端部はハウジング2の壁12内に配置される。
【0005】
特許文献1には、運動スパイラルの回転を防止し、旋回を達成するためのガイド装置を含むスクロール圧縮機が開示されている。ガイド装置は、運動スパイラルのベースプレート内に形成される開口を含み、開口内にピンが噛み合う。ピンは、ハウジング内にー、特に、ハウジング内に形成されたボア内に圧入されるように配置される。
特許文献2には、運動スパイラルの回転位置調節メカニズムの冷却によるスクロール圧縮機が開示されている。ハウジングのセンタープレートとして形成される構成部品は、運動スパイラルのための位置設定用ガイドピンのための貫通ボアを含む。ガイドピンは貫通ボアの1つ内に圧入されるように配置される。ガイドピンは、一方では、センタープレートと運動スパイラルとの間で流れる冷媒により、他方では、運動スパイラルから遠いセンタープレートの側面から貫通ボア内に流入される冷媒により冷却される。
【0006】
図1及び図2に示したとおり、公知のスクロール圧縮機1´は、ハウジング2内に配置されてハウジング2上に固定された、対向壁12ともいう壁12を含んで形成される。対向壁12と運動スパイラル4との間に逆圧領域13が形成される。逆圧領域13内に生じる逆圧により、運動スパイラル4は、対向壁12のハウジング2上に固定された固定スパイラル3を加圧する。逆圧領域13及び吸入領域14のシールのために、運動スパイラル4と対向壁12との間に環状のシール素子15が配置される。運動スパイラル4は、1つの端部上に対向壁12に向かって整列される表面16を含む。スクロール圧縮機1´のシールコンセプトは、シール素子15とともにプレート状に形成される固定摺動素子17´を含み、固定摺動素子は、ハウジング、特に、対向壁12と固定されて運動しないように結合される。
【0007】
対向壁12とスパイラル4との間に配置されるプレート状の固定摺動素子17´は、シール素子15とともに運動スパイラル4の表面の支持面として、且つ対向壁12と運動スパイラル4との相対運動により生成される摩擦の補償のために提供される。シール素子15との組み合わせにより、固定摺動素子17´は、2つの異なる圧力が加えられる圧力チャンバーである吸入領域14及び逆圧領域13を互いにシールする。また、固定摺動素子17´は、ハウジング2の対向壁12上に気密方式により接しなければならない。気密結合は、接着及び潤滑剤、特に、冷媒油混合剤によって保障される。固定摺動素子17´は、非常に良好な摩擦特性を有する材料で形成され、耐腐食性及び耐熱性を有する。従来技術による既知のスクロール圧縮機1´は、非常に薄い壁厚を有してハウジング2上に配置された固定摺動素子17´を含んで形成される。対向壁12内に配置され、ガイド素子として提供されるピン11b、及び運動スパイラル4のベースプレート4a内のポケットとして形成される開口11aは、循環する運動スパイラル4を案内するために提供される。ハウジング2の材料と係り、特に、シール及び耐腐食性と係り、ピン11bはアルミニウムで製造されなければならない。しかし、アルミニウムは、摩擦特性及び強度の点から好適ではない。
【0008】
冷却技術的標識R744を有する冷媒である二酸化炭素による冷媒流路において、スクロール圧縮機1´内に生じる吸入圧及び排出圧の圧力レベルは、従来の冷媒流路でより実質的に高く、すなわち、作業室5内の冷媒の圧力差は、例えば、冷媒であるR134aによる冷媒流路内に用いられるスクロール圧縮機1´でより実質的に高い。より大きい圧力差は、オービタ4からピン11b上に作用する力を、実質的にさらに大きくする。従来に鋼で形成されたピン11bは、位置ピンまたはガイドピンとしてアルミニウムで製造され、ハウジング2内に別に圧入され、ハウジング2のアルミニウムとは非常に異なる膨張効率を有する。実質的にさらに大きく作用する力、鋼とアルミニウムの異なる膨張効率、及びアルミニウムの低い強度により、従来技術に公知のスクロール圧縮機1´は、ハウジング2の壁12内でピン11bを誤整列させる高い危険性を有する。
【0009】
他の改良点は、最適化すべき設置空間に関連する。特に、第2軸受10の領域内の実質的により大きい力の収容に対する変化された要求に関連する軸受9、10の配置及び形成により与えられる。設置空間は、アルミニウムの比較的低い強度によって制限され、その理由は、ピン11bと軸受10を挿入するためのリセスの間で、ハウジング2の所定の最小材料厚または壁厚が要求されるためである。また、運動スパイラル4は、さらに高い作用力に対する要求によってさらに重く設計され、オービタ4の不均衡を補償するためのウェイトとして提供されるより大きいバランスウェイトを有する中間素子8も形成される。中間素子8、特に、バランスウェイトは、第2軸受10が挿入されるリセス内に配置される。中間素子8のための設置空間は非常に制限的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際特許公報WO2015/060038A1号
【特許文献2】日本特許公開特願2009‐281280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ガス状流体の圧縮装置を提供することにある。特に、異なる圧力レベルで流体が加えられる逆圧領域及び吸入領域を有するスクロール圧縮機を改善することにある。
逆圧領域は、吸入領域に対して気密方式によりシールされることができ、ハウジング上のオービタの摩擦を補償することができる。運動スパイラルの回転を防止し、旋回を達成するためのガイド装置の位置ピンまたはガイドピンが確実且つ持続的に配置されることで、装置の最大寿命が保障される。装置は、流体の高い圧力レベルのために形成されることができる。装置は、製造及びメンテナンス時のコストを最小化するために、構造的に容易に実現可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題は、独立請求項の特徴を有する対象によって解決される。実施例は、従属特許請求項に提示されている。
本発明は、ガス状流体の圧縮装置であって、装置は、壁を有するハウジングと、ベースプレート、及びベースプレートの1つの側面から延びて螺旋状に形成された壁を有する非運動固定子と、ベースプレート、及びベースプレートから延びて螺旋状に形成された壁を有する運動オービタと、オービタのベースプレート内に形成された少なくとも1つの開口、及びハウジングと固定結合されて突出した少なくとも1つのピンを有するガイド装置と、ハウジングの壁とオービタとの間に配置され、壁と固定結合された固定摺動素子と、を含む装置であって、ベースプレートは、固定子の壁とオービタの壁とが互いに噛み合って閉鎖された作業室が形成されるように配置されており、オービタの運動に応じて、前記作業室の体積及び位置が変わり、ピンは、開口内に噛み合っており、少なくとも1つのピンは、摺動素子内に形成された開口内に圧入されたことを特徴とする、
【0013】
摺動素子は、内径、外径、厚さ、外部ジャケット面、及び2つの円形環面を有することができ、好ましくは円形環のディスク状を有することがよい。
本発明の好ましい実施例によると、摺動素子及び少なくとも1つのピンは、材料特性としての強度及び熱膨張効率の値が同一の範囲にある材料で形成されることが好ましい。
同一の範囲にあるということは、強度及び熱膨張などのような材料特性が、特定圧力及び温度などのような作動条件で、無視してもよい程度の少ない偏差を有することを意味する。
摺動素子は好ましくは鋼で形成されることがよい。
【0014】
本発明の実施例において、少なくとも1つのピンも鋼で製造されることが好ましい。
本発明の第1代案的な実施例によると、固定摺動素子が、ハウジング内に圧入されてプレス嵌めされることがよい。
第2代案的な実施例によると、摺動素子が、ハウジング内に統合されて中間嵌め(transition fit)されることができる。
好ましくは、ハウジングは、側面及びベース面を有するリセスを含み、摺動素子の1つの円形環面は、ハウジングのリセスのベース面上に接することができる。より好ましくは、リセスの側面と固定摺動素子の外部ジャケット面との嵌合が形成される。
【0015】
発明の他の好ましい実施例によると、摺動素子は、Oリングで形成されたシール素子を収容するための環状溝を含み、より好ましくは、環状溝が摺動素子の外部ジャケット面上に形成される。
摺動素子及びシール素子は、ハウジングの壁によって互いに分離された、特に、スクロール圧縮機として形成された装置の吸入領域及び逆圧領域のシールのために提供される。
本発明の実施例によると、摺動素子内に形成されるピンを収容するための、少なくとも1つの開口が貫通ボアとして形成されることが好ましい。
【0016】
ガイド装置の少なくとも1つのピンは、貫通ボア内に、ガイド装置の開口内に噛み合った端部から遠く形成されたピンの端部が、摺動素子によって、摺動素子が接するハウジングの壁内に形成される開口内に噛み合うように配置されることができる。
本発明の代案的な実施例によると、摺動素子内に形成された開口内に配置され、ハウジングの壁内に形成された開口内まで突出するピン素子が形成される。
貫通ボア内に配置され、摺動素子によってハウジングの壁内に形成された開口内に噛み合うガイド装置のピン、及びハウジングの壁内に形成される開口内に突出するピン素子は、ハウジングの壁に対する摺動素子の回転を防止する。
【0017】
まとめると、本発明による装置は様々な下記の特徴を有する:
‐ピンの傾斜が防止されるため、例えば、圧縮されるべき流体としての二酸化炭素の使用時に作用する圧力及び力に対するさらに高い要求に対しても、ガイド装置のピンが最適に整列され、
‐逆圧領域におけるハウジングの内径と、対向壁内におけるガイド装置のピンの収容開口との間の壁厚が最小化され、
‐従来のスクロール圧縮機に比べて、逆圧領域内にさらに大きい設置空間が提供されることで、中間素子及び駆動シャフト上にオービタの支持のためのさらに大きい軸受、及びさらに大きい中間素子、特にさらに大きいバランスウェイトの配置が図れるとともに、
‐流体の高い圧力レベルのために形成される装置の最大寿命が保障される。
本発明の実施例の他の個別事項、特徴、及び利点は、関連図面の参照下、実施例についての下記説明に提示される。図面には、互いに噛み合う螺旋状の壁によって作業室を形成する固定子及びオービタ、オービタとハウジングとの間に形成される逆圧領域、及び運動スパイラルの回転を防止し、旋回を達成するためのガイド装置を含むスクロール圧縮機の圧縮メカニズムをそれぞれ断面図で示している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によるガス状流体の圧縮装置は、
‐ピンの傾斜が防止されるため、例えば、圧縮されるべき流体としての二酸化炭素の使用時に作用する圧力及び力に対するさらに高い要求に対しても、ガイド装置のピンが最適に整列され、
‐逆圧領域におけるハウジングの内径と対向壁内におけるガイド装置のピンの収容開口との間の壁厚が最小化され、
‐従来のスクロール圧縮機に比べて、逆圧領域内にさらに大きい設置空間が提供されることで、中間素子及び駆動シャフト上にオービタの支持のためのさらに大きい軸受、及びさらに大きい中間素子、特にさらに大きいバランスウェイトの配置が図れるとともに、
‐流体の高い圧力レベルのために形成される装置の最大寿命が保障される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来技術のスクロール圧縮機の断面図である。
図2】従来技術のスクロール圧縮機の断面図である。
図3】プレス嵌めによってハウジング内に圧入されてハウジングと結合された、ガイド装置のピンの収容のためのプレート状の摺動素子を有するスクロール圧縮機の断面図である。
図4】プレス嵌めによってハウジング内に圧入されるか、または中間嵌めによってハウジングと結合された、ガイド装置のピンの収容のためのプレート状の摺動素子を有するスクロール圧縮機の断面図である。
図5図4の摺動素子の個別図である。
図6図4の摺動素子の個別図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図3は、プレス嵌めによってハウジング内に圧入されてハウジングと結合された、ガイド装置のピンの収容のためのプレート状の摺動素子を有するスクロール圧縮機の断面図である。
図3には、固定子3及びオービタ4からなる、ハウジング2内に配置される圧縮メカニズムを有するガス状流体の圧縮装置1a、特に、スクロール圧縮機の断面図を示した。ベースプレート3a、4a上にそれぞれ配置されて互いに噛み合う螺旋状壁3b、4bが作業室5を形成する。
オービタ4は、偏心駆動機によって円形軌道上で運動するため、螺旋状壁4bは、停止螺旋状壁3bを中心に旋回する。螺旋状壁3b、4bの相対運動時に、壁3b、4bが互いに多数回接触され、ワインディング内に多数の小さくなる作業室5を形成する。2つの互いに絡み合う螺旋状壁3b、4bの相対運動により作業室5が小さくなり、流体が圧縮される。圧縮されるガス状流体、特に冷媒は吸入され、装置1a内で圧縮され、図示していない排出口を介して吐出される。
【0021】
オービタ4を駆動させる駆動シャフト6は、第1軸受9、特に、玉軸受によってハウジング2上に支持されて保持される。駆動シャフト6及び第1軸受9は、駆動シャフト6の回転軸7を中心に回転する。第1軸受9は、駆動シャフト6の周りに配置され、その外部面及び側面の領域がハウジング2の壁12上に接する。駆動シャフト6は、中間素子8及び第2軸受10によって偏心してオービタ4と機械的に連結される。壁12は、オービタ4とハウジング2との間に形成された逆圧領域13を制限し、逆圧領域13と吸入領域14との間の分離壁を成す。逆圧領域13は、螺旋状壁4bに対して運動スパイラル4のベースプレート4aの後面上に形成され、固定スパイラル3に対する運動スパイラル4の加圧のために提供される。逆圧チャンバーともいう逆圧領域13には、実質的にガス状の流体の吸入圧と排出圧との中間圧力が加えられる。
【0022】
逆圧領域13及び吸入領域14を互いにシールするために、対向壁12と、対向壁12に向かって整列される運動スパイラル4の表面16との間に環状のシール素子15が配置される。シール素子15とともに、シールコンセプトはプレート状に形成された摺動素子17aを含み、摺動素子は対向壁12と運動スパイラル4との間に配置される。プレート状の摺動素子17aは、シール素子15とともに、運動スパイラル4の表面に対する接触面を提供し、且つ対向壁12と運動スパイラル4との相対運動時に生じる摩擦を補償するために提供される。摺動素子17a及びシール素子15により、吸入領域14及び逆圧領域13が互いにシールされる。また、摺動素子17aは、ハウジング2の対向壁12上に気密方式により接し、接着及び潤滑剤、特に、冷媒油混合剤による気密結合が保障される。螺旋状壁3b、4bの運動時、そして対向壁12に対するオービタ4の螺旋状壁4bの運動時に生じる摩擦熱を減少させ、且つ作業室5の制限面の間、及び逆圧領域13と吸入領域14との間のシールを改善するために、流体に潤滑剤が供給される。
【0023】
装置1aは、運動スパイラル4の回転を防止し、旋回を達成するためのガイド装置11を含んで構成される。ガイド装置11は、オービタ4のベースプレート4a内に逆圧領域13の方向に形成された多数の円形開口11a及びピン11bを含む。ピン11bの第1端部は開口11a内に突出して形成され、第2端部はハウジング2と結合される。位置素子及びガイド素子として形成されたピン11b、及びリセスとして運動スパイラル4のベースプレート4a内に形成された開口11aは、運動スパイラル4の案内のために提供される。
【0024】
鋼のような非常に良好な摩擦特性を有する耐腐食性及び耐熱性の材料で形成された摺動素子17aは、ハウジング2、特に対向壁12と固定され、運動しないように結合される。
また鋼で形成されたピン11bは、摺動素子17a内に形成された開口、特に、貫通ボア内にそれぞれ配置される。ピン11bは、開口内で摺動素子17aによって加圧される。鋼で製造されたピン11bのそれぞれ及び摺動素子17aが非常に高い強度及び類似の熱膨張効率を有するため、ピン11bと摺動素子17aとの熱膨張差が生じることが防止される。これにより、装置1aの作動中に発生するハウジング2の壁12及び運動スパイラル4の開口11aに対するピン11bの傾斜が防止される。ピン11bは、その位置に互いに平行に持続的に配置されることで、運動スパイラル4のための最適の案内条件を保障する。
【0025】
摺動素子17aは、ハウジング2と外部プレス嵌めにより結合される。プレート状または円形環のディスク状に形成される摺動素子17aは、外部ジャケットの領域でハウジング2内に圧入され、これは、ハウジング内における摺動素子17aの最適の案内を保障する。ハウジング2は対向壁12の領域に側面及びベース面を有するリセスを含む。組み立てられた状態で、摺動素子17aの1つの円形環面はハウジング2のリセスのベース面上に接し、リセスの側面と摺動素子17の外部ジャケット面とのプレス嵌めが形成される。外部プレス嵌めに加えて、または外部プレス嵌めの代わりに、摺動素子17aが図示していない少なくとも1つのピン素子によってハウジング2内に支持され、ピン素子はハウジング2に対する摺動素子17aの回転を防止する。回転防止ピンともいう、好ましくは1つまたは2つのピン素子が用いられる。
【0026】
特に、図3に示したとおり、ガイド装置11のピン11bは、回転防止ピンとしての機能を果たすために配置される。ピン11bは、対向壁12上に接する摺動素子17aによって対向壁12内に突出するように配置される。摺動素子17a内にピン11bの収容のために提供された開口は、貫通開口として形成される。対向壁12内に、ピン11bの収容のために、好ましくは開口またはリセスが形成される。摺動素子17aにより、壁12内に形成された開口にピン11bが配置される場合、摺動素子17aがハウジング2上に固定される。
【0027】
大きい内径を有する鋼からなる円形環のディスク状に摺動素子17aが形成されることで、材料の大きい強度により、円形環ディスクの内径が大きく形成される。これにより、対向壁12によって制限され、中間素子8の軸受9、10の収容のために提供された、ハウジング2の実質的に中空シリンダー状の領域の内径も大きく形成される。したがって、逆圧領域13が大きい内径を有する。逆圧チャンバー13の領域で、ハウジング2の大きい内径及び摺動素子17aの大きい内径は、軸受9、10、特に、中間素子8上にオービタを支持するための第2軸受10のための大きい設置空間を生成させる。摺動素子17a及びピン11bの材料である鋼の非常に高い強度によって、摺動素子17a内のピンボアと、場合によって対向壁12及び軸受10用ボアとの間の壁厚が最小化される。軸受10のための設置空間は大きくなる。逆圧領域13内の設置空間の拡張は、中間素子8の体積をより大きくし、これによってさらに重いバランスウェイトの使用を保障する。
【0028】
図4は、プレス嵌めによってハウジング内に圧入されるか、または中間嵌めによってハウジングと結合された、ガイド装置のピンの収容のためのプレート状の摺動素子を有するスクロール圧縮機の断面図である。
図4には、ガイド装置11のピン11bを収容するためのプレート状の摺動素子17bを有するガス状流体の圧縮装置1b、特に、スクロール圧縮機を示した。図3に示した装置1aとは、摺動素子17bがOリングを収容するための溝18、特に、環状溝18を含んで形成されるという点で異なる。溝18及び溝内に配置されるシール素子であるOリングは、円形環ディスクの外部ジャケット面上で延び、シール素子15を対向壁12、すなわちハウジング2に対してシールする。
【0029】
代案的に、摺動素子17bは、外部プレス嵌めまたは中間嵌めによりハウジング2と結合される。円形環のディスク状に形成される摺動素子17bは、外部ジャケットの領域でハウジング2内に圧入または載置される。個別嵌合のために、さらに摺動素子17bが少なくとも1つのピン素子19によってハウジング2内で支持されるように配置されることができ、ピン素子19は、ハウジング2に対する摺動素子17bの回転を防止する。回転防止ピンともいう、好ましくは1つまたは2つのピン素子19が用いられる。ピン素子19は、摺動素子17b内に形成された開口内に配置され、ハウジング壁12内に形成された開口内まで突出する。
【0030】
環状溝18及びOリングを有する摺動素子17bを含んで形成された装置1bの場合、プレス嵌めによって配置された摺動素子17aを含む図3に示した装置1aと異なって、多数回及び繰り返して組み立て及び分解することが可能である。吸入領域14に対する逆圧領域のシールは常に回復可能である。
また、装置1aよりも大きい体積を有し、これによってさらに重いバランスウェイトを有する中間素子8が提供されることができる。中間素子8、特に、バランスウェイトがアンダーカット形態を有することができるため、提供される設置空間がさらに柔軟に用いられることができる。
【0031】
図5及び図6には、図4に示した装置1bの摺動素子17bの個別図を示した。円形環ディスク状の摺動素子17bは、内径d及び外径D、そして厚さbを有する。厚さbは4mm〜8mmの範囲、特に、約6mmで形成されることがよい。内径は50mm〜55mmの範囲、特に、約53mmを有する。外径は90mm〜100mmの範囲、特に、約96mmであることがよい。
ピン11bは、内径dの領域に形成された開口内で摺動素子17b内に案内または挿入され、開口は、一定に分配されて互いに同一の間隔を有するように配置される。これと異なり、ピン素子19は、回転防止ピンとして外径Dの領域に形成された開口内で摺動素子17b内に挿入される。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、ガス状流体、特に、冷媒の圧縮装置に関する。装置は、壁を有するハウジングと、ベースプレート、及びベースプレートの第1側面から延びて螺旋状に形成された壁を有する非運動固定子と、ベースプレート、及びベースプレートから延びて螺旋状に形成された壁を有する、運動するオービタと、を含む。ベースプレートは、固定子の壁とオービタの壁とが互いに噛み合って閉鎖された作業室が形成されるように配置される。オービタの運動に応じて、作業室の体積及び位置が変わる。
【符号の説明】
【0033】
1´ スクロール圧縮機
1a、1b (ガス状流体の)圧縮装置
2 ハウジング
3 (非運動)固定子、固定スパイラル
3a、4a ベースプレート
3b、4b (スパイラル)壁、螺旋状壁
4 (運動)オービタ、運動スパイラル
5 作業室
6 駆動シャフト
7 回転軸
8 中間素子
9 第1軸受
10 第2軸受
11 ガイド装置
11a 開口
11b ピン
12 (ハウジングの)壁、対向壁
13 逆圧領域
14 吸入領域
15 シール素子
16 表面
17´、17a、17b (固定)摺動素子
18 環状溝
19 ピン素子、回転防止ピン
b 厚さ
d 内径
D 外径
図1
図2
図3
図4
図5
図6