特許第6706424号(P6706424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6706424-耐圧入力本安出力伝送器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706424
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】耐圧入力本安出力伝送器
(51)【国際特許分類】
   G08C 19/00 20060101AFI20200601BHJP
   G08C 19/02 20060101ALI20200601BHJP
   G08C 17/02 20060101ALI20200601BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   G08C19/00 M
   G08C19/02 A
   G08C17/02
   H04Q9/00 311H
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-22206(P2017-22206)
(22)【出願日】2017年2月9日
(65)【公開番号】特開2018-128911(P2018-128911A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 等
(72)【発明者】
【氏名】田中 康寛
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−33001(JP,U)
【文献】 特開2016−14648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 19/00−19/48
G08C 17/00−17/06
H04Q 9/00− 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器に覆われた耐圧入力本安出力伝送器であって、
本質安全防爆方式の電源内蔵無線装置と接続する本安側端子と、
ループ電気信号を入力する耐圧側電気信号端子と、
前記ループ電気信号を測定し、測定結果に応じた信号を前記本安側端子に伝送する電気入力信号伝送器回路と、
を備えることを特徴とする耐圧入力本安出力伝送器。
【請求項2】
耐圧容器に覆われた耐圧入力本安出力伝送器であって、
本質安全防爆方式の電源内蔵無線装置と接続する本安側端子と、
接点情報を入力する耐圧側接点端子と、
前記接点情報に応じた信号を前記本安側端子に伝送する電気入力信号伝送器回路と、
を備えることを特徴とする耐圧入力本安出力伝送器。
【請求項3】
前記電気入力信号伝送器回路は、前記本安側端子を介して供給される電源を利用して動作を行なうことを特徴とする請求項1または2に記載の耐圧入力本安出力伝送器。
【請求項4】
前記本安側端子のマイナス側に接続された接地端子をさらに備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐圧入力本安出力伝送器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐圧防爆方式の機器から得られるループ電気信号測定値あるいは接点入力情報を、危険場所に設置された本質安全防爆方式の機器から無線送信するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
2線式伝送器は、一般に、ループ信号線を介して電源電圧の供給を受け、測定値等に応じた4−20mAのアナログ直流電流信号を出力する。近年、HART(Highway Addressable Remote Transducer)通信方式に代表されるような、アナログ直流信号にデジタル信号を重畳して伝送するハイブリッド通信方式が広く使用されるようになっている。デジタル信号は双方向通信が行なわれ、伝送器のステータス情報を取得したり、伝送器のパラメータ設定等を行なうことができる。
【0003】
図3に示すように、このようなハイブリッド通信方式を採用した2線式伝送器210では、無線装置220と接続し、アナログ信号はループ信号線を介して送信し、デジタル信号は無線装置220を介して無線で送受信することも行なわれている。これにより、無線通信機能を備えない2線式伝送器210であっても、デジタル信号の無線通信を行なうことができるようになる。
【0004】
本図の例では、無線装置220は通信動作用の電池を内蔵している。電池を内蔵した無線装置220では、内蔵電池による電力を2線式伝送器210に供給する機能を備えるものも実用化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−65441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、2線式伝送器の4−20mAループ電流を測定し、得られた測定値を無線信号で送信する発信器が実用化されている。このような発信器を、ループ電流測定発信器と称する。また、リミットスイッチ等からの接点入力を持ち、取得した接点の状態を無線信号で送信する発信が実用化されている。このような発信器を接点入力発信器と称する。
【0007】
2線式伝送器あるいはリミットスイッチを危険場所に設置する場合を考える。
【0008】
4−20mAループ電流測定の場合、日本国内では、本質安全防爆4−20mAループにおいて、途中に機器を挿入することが認められない。したがって、ループ電流測定を行なうことができるのは、耐圧防爆の4−20mAループに限られる。このため、ループ電流測定発信器が耐圧防爆に対応していない場合は、図4(a)に示すように、ループ電流測定発信器240を安全場所に設置する必要がある。
【0009】
なお、本図において、耐圧防爆方式2線式伝送器230が危険場所に設置されており、4−20mAループは耐圧防爆用厚鋼電線管270に収められている。耐圧防爆用厚鋼電線管270と耐圧防爆方式2線式伝送器230との接続部分には耐圧パッキン金具272が設けられ、耐圧防爆用厚鋼電線管270内には爆発性雰囲気の流動防止材274が用いられている。
【0010】
接点入力送信の場合、一般に使用されているリミットスイッチは、ほとんどが耐圧防爆仕様となっている。このため、接点入力発信器が耐圧防爆に対応していない場合は、図4(b)に示すように、接点入力発信器260を安全場所に設置する必要がある。
【0011】
なお、本図において、耐圧防爆方式リミットスイッチ250が危険場所に設置されており、4−20mAループは耐圧防爆用厚鋼電線管270に収められている。耐圧防爆用厚鋼電線管270と耐圧防爆方式リミットスイッチ250との接続部分には耐圧パッキン金具272が設けられ、耐圧防爆用厚鋼電線管270内には爆発性雰囲気の流動防止材274が用いられている。
【0012】
このように、本質安全防爆に対応していても耐圧防爆に対応していないループ電流測定発信器、接点入力発信器は、危険場所に設置することができず、設置場所に制約が生じる。このため、ループ電流測定値、接点情報を無線で伝送できるという利点を十分生かすことができない。この問題は、4−20mAのループ電流に代え、1−5Vのループ電圧を測定する場合(4−20mAのループ電流と1−5Vのループ電圧とをループ電気信号と総称する)や、接点情報の入力間隔に基づいて周波数を測定する場合等でも同様である。
【0013】
そこで、本発明は、耐圧防爆方式の機器から得られるループ電気信号測定値あるいは接点入力情報を、危険場所に設置された本質安全防爆方式の機器から無線送信できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、耐圧容器に覆われた耐圧入力本安出力伝送器であって、本質安全防爆方式の電源内蔵無線装置と接続する本安側端子と、ループ電気信号を入力する耐圧側電気信号端子と、前記ループ電気信号を測定し、測定結果に応じた信号を前記本安側端子に伝送する電気入力信号伝送器回路と、を備えることを特徴とする。
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様は、耐圧容器に覆われた耐圧入力本安出力伝送器であって、本質安全防爆方式の電源内蔵無線装置と接続する本安側端子と、接点情報を入力する耐圧側接点端子と、前記接点情報に応じた信号を前記本安側端子に伝送する電気入力信号伝送器回路と、を備えることを特徴とする。
いずれの態様においても、前記電気入力信号伝送器回路は、前記本安側端子を介して供給される電源を利用して動作を行なうことができる。
また、前記本安側端子のマイナス側に接続された接地端子をさらに備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、耐圧防爆方式の機器から得られるループ電気信号測定値あるいは接点入力情報を、危険場所に設置された本質安全防爆方式の機器から無線送信できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る耐圧入力本安出力伝送器を用いた伝送器システムの構成を示すブロック図である。
図2】電気入力信号伝送器回路の構成例を示すブロック図である。
図3】ハイブリッド通信方式を採用した2線式伝送器を説明する図である。
図4】2線式伝送器あるいはリミットスイッチを危険場所に設置する場合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る耐圧入力本安出力伝送器100を用いた伝送器システム10の構成を示すブロック図である。従来と同様のブロックについては同じ符号を用いている。耐圧入力本安出力伝送器100は、耐圧防爆方式側から入力したループ電気信号あるいは接点情報を本質安全防爆方式側に出力する伝送器である。
【0018】
本図に示すように、伝送器システム10は、耐圧防爆方式2線式伝送器230、耐圧防爆方式リミットスイッチ250、本質安全防爆方式の電池内蔵無線装置220、耐圧防爆方式の耐圧入力本安出力伝送器100を備えている。これらは、危険場所に設置されている。
【0019】
耐圧防爆方式2線式伝送器230は、ループ信号線を介して電源電圧の供給を受け、測定値等に応じた4−20mAのアナログ直流電流信号を出力する。耐圧防爆方式リミットスイッチ250は、監視対象装置の動作限界状態をマイクロスイッチ等で検出する装置であり、接点情報を出力する。
【0020】
本質安全防爆方式の電池内蔵無線装置220は、内蔵電池による電力を接続相手の2線式伝送器に供給する機能を備えている。この機能を使用する場合には、接続相手の2線式伝送器と通信を行なう際に、まず2線式伝送器に対して18V前後の動作電圧を印加する。これにより、接続相手の2線式伝送器は、4mAの定電流吸い込み動作を開始する。
【0021】
そして、所定時間後に電池内蔵無線装置220は、2線式伝送器に対してデジタル信号によるコマンドを送信し、2線式伝送器からのレスポンスを受信する動作を行なう。受信したレスポンスは、上位システム等に無線送信する。ただし、本実施形態では、2線式伝送器ではなく、耐圧入力本安出力伝送器100と接続している。耐圧入力本安出力伝送器100は2線式伝送器と同様の手順により電池内蔵無線装置220との通信を行なう。
【0022】
耐圧入力本安出力伝送器100は、電気入力信号伝送器回路110、耐圧側電流端子121、耐圧側接点端子122、本安側端子123、接地端子124を備えている(図2参照)。ただし、耐圧側端子として、耐圧側電流端子121、耐圧側接点端子122のいずれか一方であってもよい。また、耐圧側電流端子121、耐圧側接点端子122は複数組設けてもよい。
【0023】
耐圧側電流端子121は、耐圧防爆方式2線式伝送器230のループ信号線と接続し、電流値計測のために4−20mAのアナログ直流電流信号を入出力する。耐圧側接点端子122は、耐圧防爆方式リミットスイッチ250と接続し、接点情報を入力する。
【0024】
耐圧側電流端子121のアナログ直流電流信号の入出力は、耐圧防爆用中継端子箱280を利用して、ループ信号線の一方の極の電線を引き込むことにより行なっている。
【0025】
本安側端子123は、本質安全防爆方式の電池内蔵無線装置220と接続し、ハイブリッド通信を行なう。
【0026】
危険場所における信号配線は、耐圧防爆用厚鋼電線管270に覆われており、耐圧防爆用厚鋼電線管270と機器との接続箇所においては耐圧パッキン金具272が用いられている。また、耐圧防爆用厚鋼電線管270では、防爆性雰囲気の流動防止材274により危険場所と非危険場所とが区分けられている。
【0027】
図2は、電気入力信号伝送器回路110の構成例を示すブロック図である。電気入力信号伝送器回路110は、耐圧防爆の爆発試験に耐える耐圧容器に覆われている。本安側端子123のマイナス側は、接地端子124に直接接続してもよい。
【0028】
電気入力信号伝送器回路110は、電気信号入力回路111、演算回路112、電流制御回路113、電流電圧制限回路114、重畳通信送受信回路115、電源回路116を備えている。
【0029】
電気入力信号伝送器回路110は、本安側端子123に接続された電池内蔵無線装置220が供給する電力を利用して電源回路116を動作させ、動作用電源を作り出す。
【0030】
動作時には、電気信号入力回路111により、耐圧側電流端子121に入力される4−20mAのアナログ直流電流信号の測定と、耐圧側接点端子122に入力される接点情報の測定を行なう。
【0031】
また、演算回路112があらかじめ定められた関係式に従った演算を行ない、耐圧側入力の電気信号に応じた電流を、電流制御回路113により本安側端子123から引き込む処理等を行なう。
【0032】
さらに、演算回路112は、電池内蔵無線装置220からハイブリッド通信によるコマンドを受信すると、コマンドを解釈し、重畳通信送受信回路115を制御して、耐圧入力側の測定結果を、電流制御回路113を介してハイブリッド通信によるレスポンスとして電池内蔵無線装置220に送信する。
【0033】
具体的には、電池内蔵無線装置220が、上位システム等から無線受信した耐圧入力本安出力伝送器100に対するコマンドに応じた信号を耐圧入力本安出力伝送器100に伝送する。コマンドは、例えば、アナログ電直流電流信号値の取得や、接点情報の取得である。
【0034】
これらのコマンドのレスポンスとして、耐圧入力本安出力伝送器100は、4−20mAのアナログ直流電流信号の測定結果、耐圧側接点端子122に入力される接点情報のデジタル信号を電池内蔵無線装置220に送信する。そして、電池内蔵無線装置220が、上位システム等に無線送信する。
【0035】
これにより、電池内蔵無線装置220は、耐圧入力本安出力伝送器100の耐圧入力側の電気信号の状態を把握し、無線信号で上位システム等に伝達することができる。
【0036】
電流電圧制限回路114は、耐圧側端子(耐圧側電流端子121、耐圧側接点端子122)に250VAC、1500Aの電圧源が接続されたとしても、本安側端子123には規定以上の電気的出力を行なわないようにするための回路であり、ヒューズ、ダイオード、ツェナーダイオード等を用いて構成することができる。さらに、本安側端子123のマイナス側は、接地端子124を介して、A種接地、もしくは、等電位ボンディングシステムに接続することにより、本安側端子123のマイナス側から電池内蔵無線装置220への電流流れ出しを防ぐようにしてもよい。
【0037】
このように本実施形態の耐圧入力本安出力伝送器100は、耐圧側端子を持ち、耐圧側の電気信号の状態を本安側端子に、4−20mA電気信号およびデジタル信号のハイブリッド通信により伝達する。そして、本安側端子に本質安全防爆方式の無線装置を接続することで、危険場所において、耐圧防爆4−20mAの電流信号値、耐圧防爆対応のリミットスイッチの電気信号の値を無線信号に変換して送信することが可能となる。
【0038】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、耐圧側端子から入力する信号は、4−20mAのアナログ直流電流信号、接点情報に限られない。例えば、4−20mA電流信号に代え、DC1−5V等の電圧信号や抵抗値等を示す信号であってもよい。また、接点情報は、周波数測定のための周期を示す情報等であってもよい。DC1−5V等の電圧信号を入力する場合には、耐圧入力本安出力伝送器100を2線式伝送器と並列に接続する。
【0039】
また、耐圧側と本安側との間を電気的に絶縁してもよい。耐圧側と本安側とでハイブリッド通信を行なえるようにしてもよい。
【0040】
また、耐圧側、本安側の各端子は、端子台を介しての金具接続ではなく、ケーブル引き出し方式としてもよい。この場合、耐圧パッキン金具相当の爆発性雰囲気の流動防止を講じるものとする。
【符号の説明】
【0041】
10…伝送器システム、100…耐圧入力本安出力伝送器、110…電気入力信号伝送器回路、111…電気信号入力回路、112…演算回路、113…電流制御回路、114…電流電圧制限回路、115…重畳通信送受信回路、116…電源回路、121…耐圧側電流端子、122…耐圧側接点端子、123…本安側端子、124…接地端子、210…2線式伝送器、220…電池内蔵無線装置、230…耐圧防爆方式2線式伝送器、240…ループ電流測定発信器、250…耐圧防爆方式リミットスイッチ、260…接点入力発信器、270…耐圧防爆用厚鋼電線管、272…耐圧パッキン金具、274…爆発性雰囲気の流動防止材、280…耐圧防爆用中継端子箱
図1
図2
図3
図4