特許第6706425号(P6706425)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706425
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】死角補助装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/04 20060101AFI20200601BHJP
   B60R 1/10 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   B60R1/04 H
   B60R1/10
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-557872(P2017-557872)
(86)(22)【出願日】2016年12月9日
(86)【国際出願番号】JP2016086706
(87)【国際公開番号】WO2017110519
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年10月11日
(31)【優先権主張番号】特願2015-249659(P2015-249659)
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小幡 雅人
(72)【発明者】
【氏名】春山 加苗
(72)【発明者】
【氏名】竹部 実
(72)【発明者】
【氏名】廣江 謙一郎
【審査官】 高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−147496(JP,A)
【文献】 特開2002−370577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/04
1/08
1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のピラーによって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置であって、
前記像を表す光を入射し、視認者側に設けられ光の一部を反射し一部を透過する半透過ミラーと、光を前記半透過ミラーへ反射するミラーとが互いに対向するように配置される一対のミラーと、
前記一対のミラーを収納するケース体と、
前記ピラーを構成するピラー本体を前記車両の内側から覆い、また、前記ケース体が配置される開口部を有するカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、基部と、前記基部から前記視認者側に隆起し、前記基部から前記ケース体の前面のうち前記基部よりも前記視認者側に突出する部分に至る曲面を有する隆起部と、を有してなることを特徴とする死角補助装置。
【請求項2】
前記曲面は、前記基部の面方向から前記視認者側に向かって曲がる凹曲面と前記視認者側から前記ケース体の前面の面方向に向かって曲がる凸曲面とが連続した曲面からなることを特徴とする請求項1に記載の死角補助装置。
【請求項3】
前記ケース体は、その入射側側面が前記基部から入射側に迫り出すように配置され、
前記隆起部は、前記基部から入射側に突出する部分を有し、この突出する部分の外形は、前記視認者の視点から見たときに前記基部から前記ケース体の入射側側面に至る曲線を有することを特徴とする請求項1に記載の死角補助装置。
【請求項4】
前記曲線は、前記基部の面方向から入射側に向かって曲がる凹曲線と入射側から前記ケース体の入射側側面の面方向に向かって曲がる凸曲線とが連続した曲線からなることを特徴とする請求項3に記載の死角補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内のピラーによって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両内のピラー(例えばフロントピラー)によって生じる死角を映す死角補助装置として、例えば、特許文献1に開示されたものが知られている。係る死角補助装置は、死角領域の像を表す光を入射し、視認者側に設けられ光の一部を反射し一部を透過する半透過ミラーと、光を半透過ミラーへ反射するミラーとが互いに対向するように配置される一対のミラーと、半透過ミラーの視認者側に設けられ、視認者側から所定の角度で入射する光を遮る複数の遮光部と、を備えてなるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−120477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように一対のミラーによって死角の像を視認させる装置では、無論、死角を生じさせるピラーに装置を設置することとなる。装置の設置方法としては、ピラーの車室側を覆うピラーカバー(ピラーガーニッシュ)を利用する方法が考えられるが、装置を設置したことによる視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制する工夫が求められている。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、ピラーに設置した際の視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制することが可能な死角補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る死角補助装置は、車両のピラーによって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置であって、
前記像を表す光を入射し、視認者側に設けられ光の一部を反射し一部を透過する半透過ミラーと、光を前記半透過ミラーへ反射するミラーとが互いに対向するように配置される一対のミラーと、
前記一対のミラーを収納するケース体と、
前記ピラーを構成するピラー本体を前記車両の内側から覆い、また、前記ケース体が配置される開口部を有するカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、基部と、前記基部から前記視認者側に隆起し、前記基部から前記ケース体の前面のうち前記基部よりも前記視認者側に突出する部分に至る曲面を有する隆起部と、を有してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ピラーに設置した際の視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る死角補助装置が配置される車両の運転席付近の概観を示す図である。
図2】同上死角補助装置の機能を説明するための概略図である。
図3】同上死角補助装置の一対の平行平面ミラーを示す斜視図である。
図4】同上死角補助装置のケース体を示す(a)斜視図及び(b)断面図である。
図5】同上死角補助装置を示す斜視図である。
図6】同上死角補助装置を示す斜視図である。
図7】同上死角補助装置を示す斜視図である。
図8】同上死角補助装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係る死角補助装置を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本実施形態に係る死角補助装置100が配置される車両1の運転席付近の概観を示す図である。車両1は、図1に示すように、ステアリング10と、ウインドシールドガラス20と、サイドガラス30,40と、フロントピラー50,60と、を備える。また、黒セラ(黒セラミック)部21,22は、ウインドシールドガラス20の周辺部に印刷形成される遮光性の部材である。
【0011】
車両1において、座席に着座した視認者(主にステアリング10が配置された運転席に着座する運転者)は、ウインドシールドガラス20(黒セラ部21の部分を除く)とサイドガラス30,40が配置される領域では風景を直接視認する一方、フロントピラー50,60と黒セラ部21,22が配置される領域ではフロントピラー50,60と黒セラ部21,22とによって視認者の視界が遮られ、風景を直接視認することができない死角領域が生じる。
【0012】
次に、図1図3に基づいて本実施形態に係る死角補助装置100の基本構成について説明する。なお、図2は、死角補助装置100の機能を説明するための概略平面図である。図3は、一対の平行平面ミラー110を示す斜視図である。
死角補助装置100は、図1及び図2に示すように、座席に着座した視認者から見て右側(運転席側)のフロントピラー50に配置され、フロントピラー50及び黒セラ部21によって遮られる死角領域の像を映すものである。なお、死角補助装置100は、視認者から見てフロントピラー50及び黒セラ部21と対向するように配置される。
死角補助装置100が配置されるフロントピラー50は、概ね板状(略角柱状、略直方体状)である。そこで、各部材の機能の理解を容易にするため、フロントピラー50が延びる方向に沿う軸をY軸とし、フロントピラー50の車両1内に向く面(概ね視認者に向く面)の法線方向に沿う軸をZ軸とし、Y軸及びZ軸に直行する軸をX軸としたXYZ平面を適宜用いて、説明を行う。また、XYZの各軸を示す矢印が向く方向を、各軸の+(プラス)方向とする。このようにした場合、図1及び図2からわかるように、+Y方向は車両1の底側から概ね天井に向かう方向を示し、+Z方向はフロントピラー50から概ね視認者に向かう方向を示し、+X方向はフロントピラー50から概ね車両1の後方に向かう方向を示すこととなる。なお、このXYZ平面は厳密なものではなく、あくまで、各部材の位置関係等の構成の理解を容易にするために導入したものである。
【0013】
死角補助装置100は、図2及び図3に示すように、一対の平行平面ミラー(一対のミラー)110を備える。
【0014】
一対の平行平面ミラー110は、入射した光の一部を反射し一部を透過する半透過平面ミラー(半透過ミラー)111と、平面ミラー(ミラー)112とが互いに平行に対向するように配置されることによって構成される。なお、半透過平面ミラー111と平面ミラー112はケース体120に収納されることで平行な位置関係で固定される。なお、本発明の一対のミラーは、互いに対向するように配置されるものであれば完全な平行に配置されなくともよく、また、平面ミラーでなく曲面ミラーであってもよい。
【0015】
半透過平面ミラー111は、視認者側に配置され、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、アクリル等の透光性樹脂材料からなる基材の表面にアルミなどの金属を蒸着させることにより、所望の反射率を有するように反射率調整層を形成してなる。反射率調整層の厚さや種類などにより、反射率(透過率)が調整される。本実施形態の半透過平面ミラー111における透過光と反射光の光量比は、透過光:反射光=1:4(反射率80%)である。なお、半透過平面ミラー111は、基材の表面に誘電体多層膜をコーティングして形成してもよい。半透過平面ミラー111は、その概ね−X方向における端部である入射側端部(入射側の側辺)E10が平面ミラー112の入射側端部(入射側の側辺)E11から迫り出すように配置され、半透過平面ミラー111と平面ミラー112とが水平方向に段違い状に配置されている。
【0016】
平面ミラー112は、その平面(反射面)が半透過平面ミラー111の平面(半透過反射面)と平行となるように配置されるものであり、例えば上述の透光性樹脂材料からなる基材の表面にアルミなどの金属を蒸着させてなる平面アルミ蒸着ミラーである。
【0017】
半透過平面ミラー111と平面ミラー112とは、それぞれの平面(半透過反射面及び反射面)が、一対の平行平面ミラー110における光MLの進行方向(図3の矢印方向)に対して垂直方向の幅が一対の平行平面ミラー110における光MLの進行方向に向かって徐々に小さくなるように、略楔状に形成されている。視認者の視野範囲から外れる不要個所を除去して小型化及び軽量化するためである。また、半透過平面ミラー111と平面ミラー112とは互いの平面形状が相似である(ほぼ相似である場合を含む)。また、半透過平面ミラー111の入射側端部E10と、平面ミラー112の入射側端部E11とは、ウインドシールドガラス20のガラス面に沿って傾斜している。ウインドシールドガラス20のガラス面に近接して配置可能とするためである。
【0018】
次に、図2を用いて、一対の平行平面ミラー110の作用について説明する。なお、図2は、視認者が運転席に着座した状態を示しており、視点Oは視認者の視点(アイポイント)を示している。
【0019】
図2において、視認者(視点O)の前方視界には、フロントピラー50(図示しないが黒セラ部21も含む)によって遮られる死角領域Dが生じる。したがって、視点Oからは死角領域Dに存在する物体Mを直接視認することができない。
一方、物体Mからの光MLは、一対の平行平面ミラー110に入射し、まず半透過平面ミラー111で一部が透過され一部が反射され、その後一対の平行平面ミラー110の間で反射を繰り返しつつ概ね+X方向を進み、一部の光MLは一対の平行平面ミラー110から概ね+Z方向に出射する(半透過平面ミラー111を透過する、あるいは半透過平面ミラー111と平面ミラー112との隙間から直接出射する)。なお、一対の平行平面ミラー110に入射し、一対の平行平面ミラー110の間で反射を繰り返すのは一対の平行平面ミラー110の平行な平面に対して傾きを有する光である。一対の平行平面ミラー110から出射する光MLの一部は、視点Oに達する。したがって、視点Oからは直接視認できる風景と連続して平面ミラー112に映る物体Mの像を半透過平面ミラー111越しに視認することができ、フロントピラー50を透過したような見え方となる。なお、死角領域Dのうちフロントピラー50の背面側の僅かな領域(ハッチングで示す部分)は、この領域からの光が一対の平行平面ミラー110に入射できず、その像を一対の平行平面ミラー110によって映すことができないが、それ以外の殆どの領域において死角領域Dの像を一対の平行平面ミラー110によって映すことができる。
なお、死角領域Dの像を一対の平行平面ミラー110によって映すに当たって、視認者は、死角補助装置100をフロントピラー50の任意の高さ(視点Oに合った高さ)に、一対の平行平面ミラー110に死角領域Dの像が映るように、すなわち、死角領域Dからの光MLが視点Oに達するように一対の平行平面ミラー110の角度を調整して配置する。半透過平面ミラー111と平面ミラー112とは互いの位置関係が平行に固定されるため、一度の配置作業で一対の平行平面ミラー110を同時に配置することができ、また、一度の調整作業で一対の平行平面ミラー110の角度を同時に調整することができる。
【0020】
ところで、光MLは一対の平行平面ミラー110の間で反射を繰り返すので、光MLが半透過平面ミラー111にn回入射した場合、物体Mの像を示すn個の光MLが1つの平行平面ミラー110から出射される。すなわち、一対の平行平面ミラー110からは視点Oの左右方向に沿って、n個の物体Mの像を示す光MLが出射することとなる。したがって、視認者は左右方向の広い範囲で物体Mの像を視認することができる。なお、一対の平行平面ミラー110から出射される光MLは半透過平面ミラー111での反射回数が増加するのに伴って輝度が低下する。
【0021】
次に、死角補助装置100の外装構造について図4図8を用いて説明する。
【0022】
図4図8に示すように、死角補助装置100は、一対の平行平面ミラー110と、ケース体120と、カバー部材130と、を備える。図4(a)はケース体120を示す斜視図であり、図4(b)は図4(a)のA−A線断面図である。図5は死角補助装置100を視認者の視点Oから見た斜視図であり、図6は死角補助装置100を視認者の視点Oと反対側(ウインドシールドガラス20側)から見た斜視図である。図7は、死角補助装置100を概ね+Z方向から見た斜視図である。図8は、図5のB−B線断面図である。以下、図4図8においては、視認者から見て手前側(概ね+Z方向)を「前」、奥行き側(概ね−Z方向)を「後」として説明する。
【0023】
図4に示すように、ケース体120は、一対の平行平面ミラー110を収納するものであって、後ケース121と、前ケース122と、を備える。
【0024】
後ケース121は、ABS樹脂やポリウレタン樹脂などの遮光性の樹脂材料からなり、後壁部121aと内側天壁部121bと内側底壁部121cとを一体的に形成してなる出射側の側方(概ね+X方向)から見て略コの字状(逆Cの字状)の部材である。後壁部121aには、内側天壁部121b及び内側底壁部121cの間に位置するように平面ミラー112が配置される。内側天壁部121b及び内側底壁部121cは、その解放端部121d及び121eに半透過平面ミラー111が平面ミラー112と平行となるように載置される。また、後壁部121aの上端及び下端には、概ね+Y方向及び−Y方向に突出するように固定片121f及び121gが形成されている。
【0025】
前ケース122は、後ケース121と同様の遮光性の樹脂材料からなり、複数のルーバー122aと外側天壁部122bと外側底壁部122cとを一体的に形成してなる枠状部材である。複数のルーバー122aは、外側天壁部122bと外側底壁部122cとの間に所定間隔で設けられる板状部であり、半透過平面ミラー111の視認者側に位置し視認者側から所定の角度で(主として半透過平面ミラー111あるいは平面ミラー112で反射されて視点Oに至る入射角度で)一対の平行平面ミラー110に入射する外光を遮る遮光部として機能する。また、複数のルーバー122aは、その先端部が視認者側を向くように半透過平面ミラー111の視認者側の平面に対して所定の角度傾いて配置される。外側天壁部122b及び外側底壁部122cは、それぞれ内側天壁部121b及び内側底壁部121cの外側を覆うように設けられる。また、外側天壁部122b及び外側底壁部122cには、内側天壁部121b及び内側底壁部121cの解放端部121d及び121eと対向するように段差部122d及び122eが設けられている。段差部122d及び122eは、前ケース122を後ケース121に組み付けた際に半透過平面ミラー111の周縁部と当接する位置に形成される。また、外側天壁部122b及び外側底壁部122cには、概ね+Y方向及び−Y方向に突出するように固定片122f及び122gが形成されている。固定片122f及び122gは、固定片121f及び122gと重なる位置に設けられ、固定片121f及び121gとともにケース体120をカバー部材130に保持するための固定部として機能する。
【0026】
ケース体120は、入射側側面に設けられ死角領域Dからの光MLを入射する第1の開口部120aと、出射側側面に設けられ平面ミラー112で反射した光MLを出射する第2の開口部120bと、前面に設けられ半透過平面ミラー111を露出させる第3の開口部120cと、を有する。第3の開口部120cは、ルーバー122aによって複数の領域に分割されている。
【0027】
図5図8に示すように、カバー部材130は、例えばポリプロピレン樹脂などの遮光性の樹脂材料からなり、基部131と隆起部132とが一体的に形成された部材である。カバー部材130は、フロントピラー50を構成するピラー本体51を車両1の内側から覆い、また、一対の平行平面ミラー110が収納されたケース体120が配置される開口部130aを有する。カバー部材130は、開口部130a及び隆起部132が形成されるほかは、その外形(表面形状)が元々ピラー本体51に取り付けられていたピラーカバー(ピラーガーニッシュ)の外形形状と同じ形状に設けられる。例えば、カバー部材130は、前記ピラーカバーと同様の材質で表面仕上げが施され、同様の色で形成される。
【0028】
ここで、ピラー本体51は、フロントピラー50から車両1に予め設けられている前記ピラーカバーを外すことで露出するものである。ピラー本体51は、車両1の車体フレームの一部であり、鋼等から構成されている。ピラー本体51には、前記ピラーカバーを取り付けるための取付孔51aが予め設けられている。
【0029】
基部131は、開口部130aの一部が形成されるほかは、その外形が元々ピラー本体51に取り付けられていた前記ピラーカバーの外形形状と同じ形状に設けられる。基部131の裏側であって開口部130aが形成される以外の個所には、ピラー本体51の取付孔51aに対応する、凸状の取付部131aが設けられている。取付部131aは、元々取り付けられていた前記ピラーカバーに設けられる取付部と同様の形状に形成される。カバー部材130は、取付部131aを取付孔51aに挿入することでピラー本体51に固定される。また、基部131は、開口部130aの出射側(概ね+X方向)の縁部からケース体120のうち基部131の裏側に沈み込む部分に至る平面部131bが設けられている。
【0030】
隆起部132は、基部131から視認者側(概ね+Z方向)に隆起するように設けられるものであり、本実施形態においては開口部130aの上側及び下側にそれぞれ基部131と一体的に形成される。隆起部132には基部131から連続して開口部130aの一部が形成される。隆起部132は、後述するように、ケース体120の前面のうち基部131よりも視認者側に突出する部分に至る曲面132a,132bを有する。曲面132a,132bは、ケース体120の前面の縁(外側天壁部122b及び外側底壁部122cの前端)を覆っている。また、隆起部132は、基部131から入射側(概ね−X方向)に突出する部分を有し、この突出部分の外形(輪郭線)は、視認者の視点O(図5参照)及びカバー部材130を基準として視点Oと反対側(図6参照)から見たときに基部131からケース体120の入射側側面に至る曲線132c,132dを有する。曲線132c,132dは、ケース体120の入射側側面の縁(外側天壁部122b及び外側底壁部122cの入射側端部)を覆っている。
【0031】
前述のように、本実施形態においてカバー部材130の開口部130aは基部131及び隆起部132に形成され、ケース体120が配置される。開口部130aは、ケース体120の前面の上下辺及び出射側の側辺の3辺に応じた形状で、かつ、視認者の視点Oから見てケース体120の第3の開口部120c及び第2の開口部120bが基部131で遮られないような大きさで設けられる。開口部130aのうち、ケース体120の前面の入射側の側辺に対応する部分は開放されている。ケース体120は、基部131の裏側から死角領域Dの像を映す視認領域である前面の第3の開口部120c及び入射側側面の第2の開口部120bのみが開口部130aから露出するように取り付けられ、固定片121f,122fと固定片121g,122gとを例えばビス等によって基部131及び隆起部132の裏面に設けられる凸状の被固定部131cに対して固定することで、カバー部材130に保持される。そして前述のようにカバー部材130をピラー本体に固定することで、死角補助装置100はフロントピラー50に配置される。このように、ケース体120のうち死角領域Dの視認領域以外の部分をカバー部材130で覆うことで、ケース体120の存在を目立たなくすることができる。なお、開口部130aから露出するケース体120の前面の色調は、カバー部材130の色調と同じ色調とすることが死角補助装置100としての統一感を高めるという観点から望ましい。
【0032】
本実施形態における死角補助装置100は、一対の平行平面ミラー110をピラー本体51に近接させた状態を基準に最適な光学設計がなされており、その結果、図7に示すように、ケース体120が出射側(概ね+X方向)では基部131の裏側(概ね−Z方向)に沈み込み、入射側では基部131よりも視認者側に突出するように配置されている。そのため開口部130aも基部131に対して傾斜して設けられる。これに対し、カバー部材130は、出射側においては開口部130aの縁から裏側に向かって平面部131bを設けることで、カバー部材130の内部が露出しないようにしている。また、カバー部材130は、入射側においては隆起部132を設けることで、基部131とケース体120の前面のうち基部131から視認者側に突出する部分を曲面132a,132bで繋いでケース体120のエッジ部分がカバー部材130から露出することを防止している。これにより、ケース体120が視認者側に突出している印象を和らげることができ、死角補助装置100が配置されることによる視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制することができる。より視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制する観点から、曲面132a,132bは、連続的な滑らかな曲面であることが望ましい。具体的には、図8に示すように、曲面132a,132bは、基部131の面方向から視認者側に向かって曲がる基部131側の凹曲面131a1,131b1と視認者側からケース体120の前面の面方向に曲がるケース体120側の凸曲面131a2,131b2とが連続した、変曲点を有する曲面からなる。すなわち、曲面132a,132bは、カバー部材130の長手方向に沿って切断したときの断面形状が、概ねS字状あるいは逆S字状となるように形成される。
【0033】
また、死角補助装置100は、その原理上、死角領域Dからの光MLを入射するために半透過平面ミラー111をその入射側端部E10がフロントピラー50(元々ピラー本体51に取り付けられていた前記ピラーカバー)の外形から入射側、すなわちウインドシールドガラス20に向かって迫り出すように配置する必要がある。そのため、特に図6に示すように、ケース体120は、その入射側側面の第1の開口部120aが基部131から入射側に迫り出すように配置されている。これに対し、カバー部材130は、基部131とケース体120のうち基部131よりも入射側に突出する部分を隆起部132の入射側への突出部分の曲線132c,132dで繋いでケース体120のエッジ部分がカバー部材130から露出することを防止している。これにより、ケース体120が入射側に突出している印象を和らげることができ、死角補助装置100が配置されることによる視認者の違和感や外観の見栄えの低下を抑制することができる。また、隆起部132の突出部分により、突出部分を設けない場合に対してカバー部材130の強度を向上することができる。より視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制する観点から、曲線132c,132dは、連続した滑らかな曲線であることが望ましい。具体的には、曲線132c,132dは、基部131の面方向から入射側に向かって曲がる基部131側の凹曲線132c1,132d1と入射側からケース体120の入射側側面の面方向に向かって曲がるケース体120側の凸曲線132c2,132d2とが連続した、変曲点を有する曲線からなる。すなわち、曲線132c,132dは、概ねS字状あるいは逆S字状となっている。
【0034】
このほか、死角補助装置100は、ケース体120の印象を和らげるために、ルーバー122aの前側端部や第2の開口部120bの縁など大小問わずにエッジ部分となる個所に曲面形状を設けている。
【0035】
以上の構成からなる死角補助装置100は、車両1のフロントピラー50によって遮られる死角領域Dの像を映す死角補助装置であって、
前記像を表す光MLを入射し、視認者側に設けられ光MLの一部を反射し一部を透過する半透過平面ミラー111と、光MLを半透過平面ミラー111へ反射する平面ミラー112とが互いに対向するように配置される一対の平行平面ミラー110と、
一対の平行平面ミラー110を収納するケース体120と、
フロントピラー50を構成するピラー本体51を車両1の内側から覆い、また、ケース体120が配置される開口部130aを有するカバー部材130と、を備え、
カバー部材130は、基部131と、基部131から前記視認者側に隆起し、基部131からケース体120の前面のうち基部131よりも前記視認者側に突出する部分に至る曲面132a,132bを有する隆起部132と、を有してなる。
これによれば、ケース体120が視認者側に突出している印象を和らげ、フロントピラー50に設置した際の視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制することが可能となる。
【0036】
また、曲面132a,132bは、基部131の面方向から前記視認者側に向かって曲がる凹曲面132a1,132b1と前記視認者側からケース体120の前面の面方向に向かって曲がる凸曲面132a2,132b2とが連続した曲面からなる。
これによれば、基部131とケース体120の前面とを滑らかな曲面で繋ぐことができ、より視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制することが可能となる。
【0037】
また、ケース体120はその入射側側面が基部131よりも入射側に迫り出すように配置され、隆起部132は、基部131から入射側に突出する部分を有し、この突出する部分の外形は、視認者の視点Oから見たときに基部131からケース体120の入射側側面に至る曲線132c,132dを有する。
これによれば、ケース体120が入射側に突出している印象を和らげ、フロントピラー50に設置した際の視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制することが可能となる。
【0038】
また、曲線132c,132dは、基部131の面方向から入射側に向かって曲がる凹曲線132c1,132d1と入射側からケース体120の入射側側面の面方向に向かって曲がる凸曲線132c2,132d2とが連続した曲線からなる。
これによれば、基部131とケース体120の入射側側面とを滑らかな曲線で繋ぐことができ、より視認者の違和感を軽減し、また、外観の見栄えの低下を抑制することが可能となる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態及び図面によって限定されるものではない。上記実施形態及び図面に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。本実施形態において、隆起部132は、基部131と一体的に形成されるものであったが、ケース体120に一体に設けられてもよく、基部131及びケース体120と別体に設けられてもよい。また、カバー部材130の開口部130aはケース体120の前面の入射側の側辺に対応する部分が開放され、ケース体120の他の三辺を囲む形状であったが、例えば、ケース体120の四辺を囲む形状であってもよい。また、隆起部132の曲面132a,132b及び曲線132c,132dはケース体120の前面あるいは入射側側面の縁を覆うように設けられるものであったが、その一端がケース体120の前面あるいは入射側側面の縁と同じ高さで隣り合うように設けられてもよい。この場合、隆起部132の曲面132a,132b及び曲線132c,132dは、ケース体120の前面あるいは入射側側面と接する(一体に形成される場合を含む)ほか、ケース体120の前面あるいは入射側側面との間に若干の隙間を開けて近接するものであってもよい。
【0040】
さらに、ケース体120の複数のルーバー122aは、前ケース122と一体に形成される必要はなく、別体に設けられてもよい。この場合、複数のルーバー122aが一体に設けられてもよいし、複数のルーバー122aの各々が別体に設けられて前ケース122に組み付けられるものであってもよい。また、複数のルーバー122aは、軸部を介して前ケース122に配置するなどして各々の角度を手動などで調整可能に配設してもよい。この場合、全てのルーバー122aを半透過平面ミラー111の平面に対して近づけて傾けた状態でルーバー122aによって半透過平面ミラー111の平面が覆われるようにすれば、不使用時に半透過平面ミラー111にゴミや埃が付着することを防止し、また、傷や破損を防止することができる。また、ルーバー122aを含む前ケース122をシリコーンなどの柔軟性を有する材料によって構成してもよい。これによれば、容易に前ケース122を着脱することができ、前ケース122を外して半透過平面ミラー111の汚れを除去しやすく、また、色やデザインにバリエーションを持たせて視認者が好みに応じて交換する際にも利便性が高い。さらに、視認者等が誤って死角補助装置100に接触する際に緩衝部材としての機能を果たすことができる。また、本実施形態では、一対の平行平面ミラー110の間は中空であったが、一対の平行平面ミラー110の間に透明な樹脂材料(透光性部材)を充填する、透明な基材(透光性部材)の対向する一対の面に一対の平行平面ミラー110を設けるなどして中実構造としてもよい。これによって、埃や汚れなどが一対の平行平面ミラー110の内面に付着することを防止することができる。
【0041】
本実施形態の死角補助装置100は、車両1の運転席側(右側)のフロントピラー50に配置されるものであったが、本発明の死角補助装置は、車両1のピラーとして、助手席側(左側)のフロントピラー60や、センターピラーあるいはリアピラーに配置され、これらによって遮られる死角領域の像を映すものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車両のピラーによって遮られる死角領域の像を映す死角補助装置に好適である。
【符号の説明】
【0043】
1 車両
100 死角補助装置
110 一対の平行平面ミラー(一対のミラー)
111 半透過平面ミラー(半透過ミラー)
112 平面ミラー(ミラー)
120 ケース体
121 後ケース
122 前ケース
130 カバー部材
130a 開口部
131 基部
132 隆起部
132a 曲面
132b 曲面
132c 曲線
132d 曲線
O 視点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8