(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を各実施形態に基づいて詳細に説明する。以下の説明は本発明の一態様を示すものであって、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更可能である。
【0015】
(実施形態1)
[1.加圧ロール及びその製造方法]
本発明にかかる定着部材は、電子写真方式の複写機やプリンター等の画像形成装置の定着部(定着装置)に用いて好適なものであり、かかる定着装置において、未定着トナー像を熱と圧力で紙等の記録媒体に定着するために用いられるものである。実施形態1では、定着部材として、加圧ロールを例示している。
【0016】
図2は実施形態1にかかる定着部材の模式図である。図示するように、定着部材である加圧ロール10は、芯体11と、芯体11の外周面に形成された弾性層12とを具備するものである。加圧ロール10における弾性層12は、軸方向両端部(以下、当該部分を「グリップ部13,14」という。)と、グリップ部13,14以外の部分(以下、当該部分を「フリー部15」という。)とが、連続して一体成型されてなる成型品(「一体成型体」ともいう。)である。
【0017】
芯体11は、熱伝導性及び機械的強度に優れた金属又は樹脂材料からなる。芯体11の材料に何ら制限はなく、例えば、SUS合金、ニッケル(Ni)、ニッケル合金、鉄(Fe)、磁性ステンレス、コバルト−ニッケル(Co−Ni)合金等の金属材料や、PI(ポリイミド樹脂)等の樹脂材料を用いることができる。また、芯体11の形状についても特に制限はなく、中空であっても、中空でなくてもよい。本実施形態においては、芯体11として芯金を用いた。
【0018】
芯体11の外周面には接着剤層(不図示)を介して弾性層12が設けられている。弾性層12は、低熱容量及び低熱伝導性を有する発泡弾性体からなるものであれば特に限定されず、公知のエラストマー又はゴムに化学発泡剤等の添加剤を細かく分散させた発泡材料が、発泡状(フォーム)又は多孔質形状に成形されたものを使用することができる。発泡弾性体を作製する際に用いるエラストマー又はゴムとしては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。弾性層12を構成する発泡弾性体は、例えば、ストレート型、クラウン型(グリップ部13,14の外径よりフリー部15の外径の方が大きく形成されたもの)、逆クラウン型(グリップ部13,14の外径よりフリー部15の外径の方が小さく形成されたもの)等の形状に成形することができ、何れの形状であっても適用することができる。また、弾性層12の外径D1は、適用する定着装置1(
図5参照)等に応じて適宜変更され得る。本実施形態においては、グリップ部13,14の外径D1がφ34.0であるストレート型のシリコーンゴムで構成された弾性層12を用いた。
【0019】
弾性層12を構成する発泡弾性体は、グリップ部13,14の発泡倍率とフリー部15の発泡倍率とが異なって形成されている。即ち、上述のエラストマー又はゴムを発泡させる際に、グリップ部13,14の発泡を規制する一方で、フリー部15を自由に発泡させることで、グリップ部13,14の発泡倍率よりフリー部15の発泡倍率の方が大きくなり、軸方向の発泡倍率が異なる発泡弾性体が形成される。本実施形態では、このような発泡弾性体を用いて弾性層12が形成されるので、グリップ部13,14とフリー部15の比重や硬度等が異なっている。弾性層12のグリップ部13,14の比重とフリー部15の比重との差は、0.02以上とすることが好ましく、0.05以上0.2以下とすることが更に好ましい。即ち、本実施形態では、フリー部15の比重が0.7以下、好ましくは0.3以上0.7以下であるとき、フリー部15の比重に対して、グリップ部13,14の比重とフリー部15の比重との差が10%以上70%以下、好ましくは10%以上50%以下、更に好ましくは20%以上50%以下、最も好ましくは30%以上50%以下となる。また、グリップ部13,14の硬度とフリー部15の硬度との差(準拠規格:JIS K 7312、JIS S 6050)は、従来の定着部材と同様の耐久性を確保する観点から、3°以上10°以下とすることが好ましい。
【0020】
弾性層12のフリー部15の比重が所定範囲内のときに、フリー部15に対するグリップ部13,14とフリー部15の比重の差が上記範囲内にあれば、後述する定着装置1(
図5参照)において、加圧ロール10が発熱スリーブ40(ベルト状)を駆動させるグリップ力(摩擦力)を向上させることができると共に、トナー定着時の面圧を確保することができる。そして、加圧ロール10の回転駆動により、発熱スリーブ40を挟持しながら定着ロール43をスムーズに従動回転させることができる。
【0021】
なお、本実施形態では、弾性層12のフリー部15の外周面に、必要に応じてフッ素樹脂やシリコーンゴム等からなるチューブやコーティング層(離型層)を、接着剤層を介して設けてもよい。例えば、フッ素樹脂チューブを構成するフッ素樹脂としては、耐熱性に優れたテトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA樹脂)が好適に用いられる。また、PFA樹脂以外のフッ素樹脂チューブを構成するフッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)が挙げられる。また、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。また、これらのフッ素樹脂を1種又は複数種組み合わせて用いることもできる。
【0022】
また、弾性層12や離型層の形成時に設ける接着剤層は、付加硬化型シリコーンゴム接着剤の硬化物からなっている。付加硬化型シリコーンゴム接着剤は、自己接着成分が配合された付加硬化型シリコーンゴムを含む。具体的には、付加硬化型シリコーンゴム接着剤は、ビニル基に代表される不飽和炭化水素基を有するオルガノポリシロキサンと、ハイドロジェンオルガノポリシロキサン及び架橋触媒としての白金化合物とを含有し、付加反応により硬化する。このような接着剤としては、公知のものを使用することができる。
【0023】
次に、加圧ロール10の製造方法について説明する。加圧ロール10の製造方法は、弾性層12の形成工程に特徴を有しており、それ以外の工程については公知の製法、例えば、特開2011−026617号公報や特開2013−231875号公報等に記載の方法を適用することができる。従って、ここでは、弾性層12の形成工程について
図3を参照して説明し、他の工程については説明を適宜省略する。
【0024】
図3は、実施形態1にかかる定着部材の構成要素の製造工程の一例を示す図である。図示するように、弾性層12の形成工程は、発泡材料20を押し出し成形する成形工程(a)と、押し出し成形した発泡材料20を発泡させる発泡工程(b)と、発泡させた発泡材料20(発泡弾性体23)を研磨して弾性層12とする研磨工程(c)とを具備する。
【0025】
発泡工程(b)では、発泡抑制部材(後述するフランジ30)を用いる。
図4は、実施形態1にかかる発泡抑制部材の模式図である。
図4に示すように、フランジ30は、上面31に芯体11の端部を挿通させる挿通部32が形成され、底面33に開口部34が形成されている。また、フランジ30の内部には、成形工程(a)で芯体11に押し出し成形した発泡材料20の両端部21,22の何れかに装着する装着部35が凹設されている。
【0026】
フランジ30のサイズは、形成する弾性層12のグリップ部13,14とフリー部15における比重の差や芯体11のサイズ、或いは適用する画像形成装置の種別等に応じて適宜変更され得る。本実施形態では、外径D2がφ40、内径D3(装着部35の内径)がφ34、挿通部32の口径D4がφ10、軸方向長さL1が47.4mm、及び装着部35の軸方向長さL2が42.4mmであるフランジ30を用いた。
【0027】
まず、成形工程(a)では、化学発泡剤、加硫剤、触媒、着色剤等の添加剤をエラストマー又はゴムに配合して発泡材料20を作製する。次いで、芯体11を準備し、押し出し機(不図示)を用いて芯体11の外周面に、発泡材料20を外径φ30.4に押し出し成形する。
【0028】
化学発泡剤は特に限定されないが、例えば、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)等を用いることができる。また、化学発泡剤の配合量は特に限定されないが、例えば、100質量部のエラストマー又はゴムに対して、3質量部〜8質量部の化学発泡剤を配合すればよい。なお、加硫剤、触媒、着色剤等の添加剤の種別及び添加量については、使用するエラストマー又はゴムや化学発泡剤に応じて適宜選択することができる。
【0029】
次に、発泡工程(b)では、成形工程(a)で押し出し成形した発泡材料20の両端部21,22に、フランジ30(発泡抑制部材)をそれぞれ装着する。次いで、両端部21,22の発泡材料20をフランジ30で規制しながら発泡させる一方で、両端部21,22以外の発泡材料20を自由に発泡させ、その状態で所定時間放置することにより、両端部21,22における発泡材料20の発泡倍率が抑制されフランジ30の形状に形成された発泡弾性体23を得る。次いで、得られた発泡弾性体23の両端部24,25から、フランジ30をそれぞれ外す。
【0030】
発泡工程(b)では、成形工程(a)で芯体11に押し出し成形した発泡材料20の両端部21,22に、フランジ30を装着した状態で発泡させて発泡弾性体23を得る。即ち、発泡弾性体23におけるフランジ30の装着部分では、発泡材料20の発泡が適度に抑制され、最終的に発泡倍率が抑制された弾性層12のグリップ部13,14となる。一方、発泡弾性体23におけるフランジ30の未装着部分では、発泡材料20が自由に発泡し、最終的に弾性層12のフリー部15となる。そして、弾性層12のフリー部15の発泡倍率よりグリップ部13,14の発泡倍率の方が小さくなることで、フリー部15と比較してグリップ部13,14の比重及び硬度の方が大きくなる。
【0031】
次に、研磨工程(c)では、発泡工程(b)で得られた発泡弾性体23の両端部24,25を、所定の長さとなるように切断機構により切断し、その後、発泡弾性体23の切断面及び表面を研磨機構により研磨し、弾性層12とする。これにより、グリップ部13,14とフリー部15とからなり、グリップ部13,14とフリー部15の外径が同一であるストレート型の弾性層12が形成された加圧ロール10を得る。
【0032】
以上の工程(a)〜(c)を経て得られた加圧ロール10は、弾性層12の形成時にフランジ30を用いるだけで、弾性層12のグリップ部13,14の比重とフリー部15の比重との差を0.02以上とすることができる。更に、弾性層12は、芯体11に押し出し成形した発泡材料20の両端部21,22に、フランジ30を装着した状態で発泡させているので、連続して一体成型されてなる一体成型体として得られる。即ち、弾性層12のグリップ部13,14とフリー部15とが同一素材からなるので、例えばグリップ部13,14を異材質で形成するためのコストが発生しない。従って、当該方法は、コスト面においても優れており、トナー定着時の面圧を確保することができると共に、弾性層12のグリップ力の向上とコスト性とを両立した加圧ロール10を得ることができる。
【0033】
なお、工程(a)〜(c)を経て得られた加圧ロール10の外周面に、フッ素樹脂やシリコーンゴム等からなるチューブやコーティング層(離型層)を、接着剤層を介して設ける場合には、研磨工程(c)の後に離型層を形成する工程を加えてもよい。当該工程では、離型層は加圧ロール10のフリー部15の外周面に、公知の方法(例えば、特許文献2参照)を適用して形成すればよい。
【0034】
また、本実施形態では、発泡工程(b)で得られた発泡弾性体23を、更に硬化させるために、発泡工程(b)と研磨工程(c)の間に発泡弾性体23を硬化させる工程を加えてもよい。当該工程では、発泡材料20に応じた条件で発泡弾性体23を硬化させるが、必要に応じて発泡工程(b)で前硬化(プレ硬化)を行った後に本硬化を行ってもよい。
【0035】
[2.定着装置]
次に、本実施形態にかかる定着装置について説明する。当該定着装置は、画像形成装置に搭載されるものであり、未定着トナー像を熱と圧力で記録媒体に定着させるものである。
【0036】
図5は、実施形態1にかかる定着装置の構成例を示す模式的断面図である。
図5に示すように、定着装置1は、発熱回転体としての発熱スリーブ40、磁場生成手段としての電磁誘導加熱装置41(加熱手段)、電磁誘導加熱装置41により生成された磁場を吸収する磁場吸収手段としての磁場吸収部材42、発熱スリーブ40を挟持回転する一対の加圧部材としての定着ロール43及び加圧ロール10とを具備するものである。
【0037】
発熱スリーブ40は、その上部が後述するコイルガイド44に沿って円弧状に湾曲するように、定着ロール43に懸架されている。このように、発熱スリーブ40の上部をコイルガイド44に沿って円弧状に湾曲させることで、発熱スリーブ40の走行性を安定させることができる。
【0038】
定着ロール43は、定着装置1の上部側に回転自在に軸支されており、加圧ロール10は、定着装置1の下部側に回転自在に軸支されている。加圧ロール10は、駆動源(不図示)により矢印A方向に回転駆動される。定着ロール43は、加圧ロール10の回転により発熱スリーブ40を挟持しながら従動回転する。これにより、発熱スリーブ40が、定着ロール43と加圧ロール10とに挟持されて矢印B方向に回転される。この発熱スリーブ40の挟持回転により、発熱スリーブ40と加圧ロール10との間に未定着トナー像45を記録媒体46上に加熱定着するためのニップ部(不図示)が形成される。
【0039】
電磁誘導加熱装置41は、電磁誘導加熱(IH:induction heating)方式の磁場生成手段からなり、発熱スリーブ40上のコイルガイド44に沿って円弧状に湾曲された部位の外周面に沿って配設した励磁コイル47と、励磁コイル47を覆うフェライトで構成したコア48とを備えている。励磁コイル47は、細い線を束ねたリッツ線を用いて形成されており、電磁誘導加熱装置41は、発熱スリーブ40の外周面を覆うように、断面形状が半円形に形成されている。
【0040】
磁場吸収部材42は、発熱スリーブ40を挟んで励磁コイル47と対向する部位に配設されており、電磁誘導加熱装置41により生成された磁場を吸収する。
【0041】
電磁誘導加熱装置41の励磁コイル47には、励磁回路(不図示)から所定周波数(例えば20kHz〜60kHz程度)の励磁電流が印加される。これより、コア48と磁場吸収部材42との間に交流磁界が生成され、発熱スリーブ40の表面に渦電流が発生して発熱スリーブ40が発熱する。
【0042】
コア48は、整列した励磁コイル47の中心と背面の一部に設けられている。コア48及び磁場吸収部材42の材料としては、フェライトの他にパーマロイ等の高透磁率の材料を用いることができる。
【0043】
定着装置1は、未定着トナー像45が転写された記録媒体46を、未定着トナー像45の担持面を発熱スリーブ40に接触させるように矢印C方向へ搬送することにより、記録媒体46上に未定着トナー像45を加熱定着することができる。
【0044】
また、定着装置1は、上述したグリップ部13,14(
図2参照)の比重を上昇させた弾性層12を設けた加圧ロール10を用いている。これにより、発熱スリーブ40を駆動させる加圧ロール10のグリップ力を向上させることができ、未定着トナー像45の記録媒体46への定着性を向上させ、画像の高画質化を図ることができる。また、簡易な方法で上記の優れた特性を有する加圧ロール10を作製することができ、画像形成装置のコストを低下させることができる。
【0045】
(実施形態2)
実施形態2の定着部材は、その両端部の形状が実施形態1とは異なるものである。従って、実施形態2では、実施形態1との相違点についてのみ説明し、それ以外については説明を適宜省略する。
【0046】
図6は、実施形態2にかかる発泡抑制部材の模式図である。本実施形態では、実施形態1の発泡抑制部材(フランジ30)とは異なる発泡抑制部材として、
図6に示すテーパー状フランジ50を用いた。テーパー状フランジ50は、フランジ30と同様にして、上面51に芯体11(
図2参照)の端部を挿通させる挿通部52が形成され、底面53に開口部54が形成されている。また、テーパー状フランジ50の内部には、実施形態1と同様にして、成形工程(a)で芯体11に押し出し成形した発泡材料20の両端部21,22の何れか(
図3参照)に装着する装着部55が凹設されている。
【0047】
テーパー状フランジ50は、底面53側から上面51側に向かって先細るテーパー構造を有しているため、装着部55も同様の構造である。即ち、
図3に示す弾性層12の形成工程において、フランジ30に換えてテーパー状フランジ50を適用した場合には、詳細は後述するが、両端部が軸方向両先端部に向かってそれぞれ先細るテーパー構造を有する弾性層61(
図7参照)が得られる。
【0048】
図3に示す発泡工程(b)において、成形工程(a)で得られた発泡材料20の両端部21,22にテーパー状フランジ50をそれぞれ装着すると、両端部21,22の発泡材料20はテーパー状フランジ50によって発泡が規制されるが、軸方向両先端部に向かって発泡の規制が強くなるため、軸方向両先端部に向かって発泡倍率が小さく変化していく。本実施形態では、発泡材料20の発泡倍率を段階的に減少させることにより、装着部55の両側壁部56,57の傾斜に応じて密度が変化していき、テーパー状フランジ50の形状に形成された発泡弾性体(不図示)を得る。その後、実施形態1と同様にして、研磨工程(c)を経て後述する加圧ロール60(
図7参照)が得られる。
【0049】
図7は、実施形態2にかかる定着部材の模式図である。
図7に示すように、加圧ロール60は、弾性層61のグリップ部62,63が軸方向両先端部に向かってそれぞれ先細るテーパー構造を有している以外は、実施形態1の加圧ロール10と同様の構成を有している。このグリップ部62,63の形状は、上述した通りテーパー状フランジ50の装着部55の形状に対応したものである。即ち、グリップ部62,63における発泡倍率は、軸方向両先端部に向かって徐々に小さくなっており、グリップ部62,63の比重及び硬度は、その先端に向かって徐々に大きくなっている。
【0050】
このため、本実施形態では、少なくとも弾性層61のグリップ部62,63の軸方向両先端部付近の比重とフリー部64の比重との差が0.02以上であり、また、フリー部64の比重が0.7以下であるとき、フリー部64の比重に対して、グリップ部62,63の軸方向両先端部付近の比重とフリー部64の比重との差が10%以上70%以下であり、更に、グリップ部62,63の軸方向両先端部付近の硬度とフリー部64の硬度との差が3°以上10°以下である。従って、実施形態1と同様にして、定着装置1(
図5参照)に加圧ロール60を適用した場合において、発熱スリーブ40(ベルト状)を駆動させるグリップ力を向上させることができると共に、トナー定着時の面圧を確保することができる。
【0051】
また、本実施形態では、底面53側から上面51側に向かって徐々に内径を小さくしたテーパー状フランジ50、即ち、比重や硬度の上昇が必要な部分(本実施形態の場合はグリップ部62,63の先端部付近)に応じた形状の発泡抑制部材を用いることで、加圧ロールの比重や硬度分布を容易に制御することができる。また、本実施形態によれば、新たな設備の導入や工程数の増加等を伴わずに、加圧ロールの比重や硬度分布を制御することができるので、コスト性に優れた加圧ロール及びその製造方法を提供することができる。
【0052】
(実施形態3)
実施形態3の発泡抑制部材は、発泡部と発泡抑制部とを有する部材である。従って、実施形態3では、実施形態1との相違点についてのみ説明し、それ以外については説明を適宜省略する。
【0053】
図8は、実施形態3にかかる発泡抑制部材の模式図である。本実施形態では、実施形態1の発泡抑制部材(フランジ30)とは異なる発泡抑制部材として、
図8に示す発泡部材70を用いた。発泡部材70は、大径の内径D5を有する発泡部71と、内径D5より小径の内径D6を有する発泡抑制部72,73とから構成されている。発泡抑制部72,73の両端部74,75には、フランジ30と同様にして、それぞれ芯体11の端部を挿通させる挿通部76,77が形成されている。また、発泡部71と発泡抑制部72,73の内部には、成形工程(a)で芯体11に押し出し成形した発泡材料20(
図3参照)が保持される中空部78,79,80が凹設されている。中空部78,79,80は、発泡部材70の内部に連続して凹設された空間であり、中空部78の径方向の幅(発泡部材70の内径D5)と中空部79,80の径方向の幅(発泡部材70の内径D6)がそれぞれ異なっている。
【0054】
次に、発泡部材70を用いて弾性層12(
図2参照)を形成する方法について説明する。弾性層12は、実施形態1と同様にして、成形工程(a)と発泡工程(b)と研磨工程(c)とを経て形成される(
図3参照)。発泡工程(b)では、上述した発泡部材70を用い、成形工程(a)で芯体11に押し出し成形した発泡材料20に、発泡部材70を装着した状態で発泡させて発泡弾性体23を得る。即ち、発泡弾性体23における発泡部71の装着部分では、大径の内径D5を有する中空部78で発泡材料20が自由に発泡し、最終的に弾性層12のフリー部15となる。一方、発泡弾性体23における発泡抑制部72,73の装着部分では、内径D5より小径の内径D6を有する中空部79,80で発泡材料20の発泡が適度に抑制され、最終的に発泡倍率が規制された弾性層12のグリップ部13,14となる。なお、発泡工程(b)の後は、実施形態1と同様にして、研磨工程(c)において発泡弾性体23を研磨し、弾性層12とする(
図3参照)。
【0055】
発泡部材70を用いて作製された加圧ロール10(
図2参照)は、実施形態1と同様にして、弾性層12のグリップ部13,14の先端部付近の比重とフリー部15の比重との差が0.02以上であり、また、フリー部15の比重が0.7以下であるとき、フリー部15の比重に対して、グリップ部13,14の軸方向両先端部付近の比重とフリー部15の比重との差が10%以上70%以下であり、更に、グリップ部13,14の先端部付近の硬度とフリー部15の硬度との差が3°以上10°以下である。従って、実施形態1と同様にして、定着装置1(
図5参照)に加圧ロール10を適用した場合において、発熱スリーブ40(ベルト状)を駆動させるグリップ力を向上させることができると共に、トナー定着時の面圧を確保することができる。
【0056】
また、本実施形態では、発泡部材70の中空部78における発泡材料20の発泡を自由発泡としたが、中空部78の内径D5を適宜変更することで、弾性層12のグリップ部13,14だけでなく、フリー部15の比重や硬度分布を容易に制御することができる。従って、本実施形態の発泡部材70を用いることで、実施形態2と比較して加圧ロールの比重や硬度分布を自由に制御することができる。
【0057】
(定着部材の変形例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明にかかる定着部材は、弾性層のグリップ部及びフリー部における比重の差を上記所定範囲内とすることができれば、上述した発泡抑制部材に限定されない。つまり、本発明では、発泡抑制部材を用いて弾性層の所定箇所の発泡倍率を所定値に抑制することができればよく、必要に応じて発泡抑制部材の形状等を適宜変更すればよい。
【0058】
本発明にかかる定着部材は、上述したような加圧ロールに好適に用いられるものであるが、定着ロール等にも用いることができる。このように、本発明にかかる定着部材の使用態様は特に限定されるものではない。
【0059】
本発明にかかる定着部材を具備する定着装置は、複写機、ファクシミリ、レーザビームプリンター、その他のプリンター及びこれらの複合機等の各種の画像形成装置(特に電子写真方式)に搭載可能である。更に、定着装置における加熱手段は電磁誘導加熱装置に限定されず、例えばハロゲンヒーター、電熱線ヒーター、赤外線ヒーター、カーボンヒーター、マイクロ波等を用いてもよい。
【0060】
本発明にかかる定着部材は、紙等の記録媒体を搬送する搬送装置(搬送部)の搬送部材に適用することができる。搬送部材としては、例えば送紙ロールや給紙ロール等の送紙ロール類等が挙げられる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0062】
(実施例1)
実施例1では、Siゴム(信越化学工業社製、X−30−4037U)に、加硫剤、触媒、発泡剤及び着色剤を配合し、これらを練りローラを用いて練ることによりSiゴム原料を得た。一方、プライマーを塗布乾燥した芯金を準備した。その後、押出し機を用いて芯金の外周面に、Siゴム原料を外径φ30.4のロール状に押し出し、押し出したロールの両端部に、内径φ34.0のフランジ(
図4参照)をそれぞれ装着して発泡硬化した。次いで、発泡硬化後のロールの表面を円筒研磨機で研磨して、端部に対して中央部の外径を小さくした逆クラウン形状のロールAを得た。得られたロールAの発泡倍率を測定したところ、フランジの非装着部分(フリー部)の発泡倍率は2.15倍であるのに対し、フランジの装着部分(グリップ部)の発泡倍率は1.48倍であった。その後、ロールAの表面に接着剤を塗布して膜厚30μmのフッ素樹脂チューブを被覆してロールBを得た。
【0063】
(比較例1)
比較例1では、実施例1のフランジを用いずに発泡硬化したこと以外は実施例1と同様にしてロールを得た。なお、発泡硬化後のロールの表面を研磨して得られたものを「ロールC」、ロールCにフッ素樹脂チューブを被覆したものを「ロールD」とした。
【0064】
(外径の測定)
レーザー測長器(東京光電子工業社製、RSV15100−3C)を用いて、実施例1で得られたロールA,B及び比較例1で得られたロールC,Dの外径の測定(21P回転外径測定)をそれぞれ行い、その結果を
図9に示した。当該測定は、レーザー測長器の軸受けに載置した芯金の一方の先端部(長ボス側:芯金の一方軸方向に長い方の側)を出発点(測定位置0mm)、芯金の他方の先端部(短ボス側:芯金の他方軸方向に短い方の側)を終点とし、各ロールの長手方向に3.8mmから323.2mmまでの21箇所の測定位置について、各ロールを一回転させて行った。なお、
図9の外径値は、ロールを一回転させて測定した際の平均値である。
【0065】
当該測定の結果、
図9に示した通り、ロールAとロールCの外径は、ほぼ均一であることが確認できた。同様にして、ロールBとロールDの外径も、ほぼ均一であることが確認できた。
【0066】
(硬度の測定)
ゴム硬度計(高分子計器社製、ASKER C)を用いて、実施例1で得られたロールA,B及び比較例1で得られたロールC,Dの硬度の測定をそれぞれ行い、その結果を表1に示した。当該測定は、ロールA,Cでは各ロールの円周方向に1箇所(0°)及び長手方向に5箇所について、また、B,Dでは各ロールの円周方向に4箇所(90°等配)及び長手方向に5箇所の測定位置について、荷重9.8Nでそれぞれ行った。
【0067】
(比重の測定)
電子比重計(東京硝子器械社製、MD−200S)を用いて、実施例1で得られたロールAについて比重の測定を行い、その結果を表1に示した。当該測定は、長手方向に5箇所の測定位置について行った。
【0068】
【表1】
【0069】
当該測定の結果、表1に示した通り、ロールAの硬度及び比重は、フリー部よりもグリップ部の方が共に大きく、フリー部の比重の平均値が0.425であるとき、両グリップ部の比重の平均値(0.600)とフリー部の比重の平均値(0.425)の差は0.175であることが確認できた。一方、ロールCの硬度は、フリー部と両グリップ部で差異は無くほぼ均一であることが確認できた。また、ロールBの硬度についてはロールAの硬度と、ロールDの硬度についてはロールCの硬度と、それぞれ同様の傾向が見られた。なお、ロールCの比重については測定を行っていないが、硬度と同様に、フリー部と両グリップ部で差異は無くほぼ均一であると考えられる。
【0070】
(面圧の測定)
シミュレーター評価機(自社製)を用いて、実施例1で得られたロールB及び比較例1で得られたロールDの面圧の測定をそれぞれ行い、その結果を
図10に示した。当該測定は、各ロールをシミュレーター評価機にセットし、シミュレーター評価機の金属ロールと各ロールとの間に圧力測定用センサー(ニッタ社製、I−SCAN)を挟み込み、長手方向に3箇所の測定位置について行った。また、測定条件は、金属ロールに各ロールを押し当てる際の圧縮率を25%(各ロールのゴム肉厚に対し25%押し潰す)とした。
【0071】
当該測定の結果、
図10に示した通り、ロールBの面圧は、画像形成装置の動作環境下であっても、フリー部よりも両グリップ部の方が高く、ロールDの面圧は、フリー部と両グリップ部で差異は無くほぼ均一であることが確認できた。
【0072】
(まとめ)
以上の結果より、フランジ(発泡抑制部材)を用いて弾性層(発泡シリコーンゴム)を形成した加圧ロール(定着部材)では、弾性層のフリー部の比重が0.7以下のときに、両グリップ部の比重とフリー部の比重との差が0.02以上となることが明らかとなった。また、画像形成装置の動作環境下であっても、加圧ロールの両端部(両グリップ部)の面圧を所定値以上に保つことが明らかとなった。なお、上述の実施例においては、シリコーンゴムで構成された弾性層を用いているが、フッ素ゴム、ウレタンゴム等の弾性層となり得る材料を用いても、同等の結果が出ると推察される。
【0073】
従って、フランジを用いて作製された加圧ロールは、トナーの定着に必要な面圧を確保することができると共に、弾性層のグリップ力の向上とコスト性を両立することができる。