(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ナノバブルオゾン処理工程は、前記合成樹脂材の被塗装面と前記ナノバブルオゾン含有水溶液とを3分間〜15分間接触させる請求項1〜請求項4のいずれかに記載の合成樹脂材塗装の前処理方法。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂材は、加工性や曲げ疲労性に優れることから自動車部品等の幅広い用途に用いられている。特に、ポリプロピレン(PP)樹脂材は、安価であり、物性にも優れるため、自動車部品(バンパー、インパネ、ドアパネル等)や家電部品等に広く使用されている。しかしながら、合成樹脂材は、塗装した塗料との密着性が低いため、塗膜を形成するに際してはその表面の油脂等を除去する処理等を行い、塗料との密着性を十分に高める必要がある。特に、ポリプロピレン樹脂は非極性であるため、塗料との密着性が悪いという問題がある。
【0003】
このような問題を解消すべく、従来においては合成樹脂材に塗装を施すに際して、トリクロルエタンの蒸気で洗浄を行った後に塩素化ポリオレフィンプライマーを塗布した表面処理が主になされてきた。ところが、トリクロルエタンは、人体に有害であり、大気のオゾン層破壊の原因となり得るものであるため、モントリオール議定書の規制物質となり、1995年末以降はその使用が全面的に禁止されることになった。このような背景により、その後合成樹脂材に塗膜を形成するに際しては、合成樹脂材と塗料との密着性を高める技術が種々提案されてきた。この提案技術の一例としては、アルカリ水系洗剤処理、プライマー処理、プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理等が挙げられる。しかしながら、これらの処理は、どれも生産性に劣りコスト高で、且つ時間経過に伴い塗膜が剥れやすい問題も多いことから、未だ普及するに至っていない。
【0004】
そこで、近年においては、合成樹脂材に塗膜を形成するに際し、予め温水高圧洗浄を行い乾燥させた後に当該合成樹脂材の表面に下地塗布剤(プライマー)を塗布した表面処理が主になされている。また、特許文献1には、塗装前処理時間の短縮及び低コスト化を達成するために、下地塗布剤(プライマー)として水と塗料とに親和性があり且つ導電性を有するものを使用し、温水高圧洗浄処理を廃止して当該下地塗布剤を塗布する旨が開示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本件発明の実施の形態を説明するが、本件発明はこれらに限定されるものではない。
【0016】
本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法は、表面に塗料により塗膜を形成する合成樹脂材塗装の前処理方法であって、塗膜形成前の当該合成樹脂材の被塗膜形成面にナノバブルオゾン含有水溶液を接触させるナノバブルオゾン処理工程
と、当該ナノバブルオゾン処理工程の前段又は後段に、当該合成樹脂材の被塗装表面に対してUV照射を行うUV処理工程とを有することを特徴とする。
【0017】
本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法では、塗膜形成前の合成樹脂材の被塗膜形成面にナノバブルオゾン含有水溶液を接触させることで当該被塗膜形成面の効果的な洗浄と改質(極性基の導入)が同時になされ、当該被塗膜形成面に耐剥離性及び耐候性に優れた塗膜を形成することが可能となる。ここで、ナノバブルは、基本的にマイナスの電荷を持つため、プラスの電荷を有する汚れ等を吸着することが出来る。なお、ナノバブルオゾン含有水溶液の原料となる水については特に限定はなく、例えば水道水や地下水等を用いることが出来る。
【0018】
本件発明におけるナノバブルオゾン含有水溶液は、オゾンがナノレベルの微細気泡(平均粒径が1000nm未満)の状態で存在する水溶液をいう。仮に、ナノバブルオゾン含有水溶液に含まれるオゾン気泡の平均粒径が1000nm以上となる場合には、当該ナノバブルオゾン含有水溶液中にオゾン気泡が長期間滞留し難くなり、容易に大気中に拡散してしまう。その結果、合成樹脂材の被塗膜形成面の効果的な洗浄と改質(極性基の導入)が安定且つ十分に行えず、当該被塗膜形成面に耐剥離性及び耐候性に優れた塗膜を形成することが困難となる。更に、ナノバブルオゾン含有水溶液に含まれるオゾン気泡の平均粒径が1000nm以上となり、オゾンの大気中への拡散が促進されることになれば、人体や環境に悪影響が及ぼされる恐れがある。
【0019】
また、本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法において、上述したナノバブルオゾン含有水溶液は、オゾン濃度が1ppm〜5ppmであることが好ましい。ナノバブルオゾン含有水溶液中のオゾン濃度は、1ppm〜5ppmであることで合成樹脂材の被塗膜形成面の効果的な洗浄と改質(極性基の導入)を十分に行うことが出来る。ここで、オゾン濃度が1ppm未満である場合には、当該被塗膜形成面のナノバブルオゾン含有水溶液との接触時間を調整したとしても、当該被塗膜形成面の効果的な洗浄と改質(極性基の導入)を十分に行うことが困難となる。一方、オゾン濃度が5ppmを超える場合には、ナノレベルのオゾン気泡が水溶液中に長期間滞留し難くなり、大気中へのオゾンの拡散量の増大が促進されるため好ましくない。
【0020】
そして、本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法において、上述した合成樹脂材の被塗装面と上述したナノバブルオゾン含有水溶液とを3分間〜15分間接触させることが好ましい。上述した合成樹脂材の被塗装面と上述したナノバブルオゾン含有水溶液とを3分間〜15分間接触させることで、ポリプロピレン樹脂材の表面に着いた油分等の汚れ、及び低分子成分や添加剤が集まったWBL(Weak Boundary Layer)層を除去する洗浄効果や、その後、さらにポリプロピレン樹脂材の表面に水酸基やカルボニル基等の極性基を導入する表面改質(ぬれ性、塗装性の向上)の効果を得ることが出来る。ここで、上述した合成樹脂材の被塗装面と上述したオゾンナノバブル含有水溶液との接触時間が3分間未満の場合には、上述した洗浄効果と表面改質の効果が不十分となり好ましくない。また、上述した合成樹脂材の被塗装面と上述したオゾンナノバブル含有水溶液との接触時間が15分間を超える場合には、ポリプロピレン樹脂材の表面に形成した極性基が除去されてしまい、さらに生産性とコストからみても好ましくない。
【0021】
更に、本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法において、上述したナノバブルオゾン処理工程の前段又は後段に
、上述した合成樹脂材の被塗装表面に対してUV照射を行うUV処理工程を有することが好ましい。上述したナノバブルオゾン処理工程の前段又は後段に、さらに上述した合成樹脂材の被塗装表面に対してUV照射を行うUV処理工程を有することで、当該被塗装表面に水酸基をより多く導入して塗装密着性の更なる向上を図ることが可能となる。
【0022】
また、本件発明における合成樹脂材としては、特に限定されるものではない。例えば、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂(ユリア樹脂(UF))、不飽和ポリエステル樹脂(UP)等の熱硬化性樹脂や、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性樹脂を挙げることが出来る。また、ガラス繊維材に合成樹脂を含有したガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維材に合成樹脂を含有した炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等の複合材料も挙げることが出来る。
【0023】
ここで、本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法において、上述した合成樹脂材は、ポリプロピレンであることが好ましい。上述したように、合成樹脂材の中でも特にポリプロピレンは、その表面に塗料を塗装しても、密着性の優れた塗膜を得ることは困難である。しかし、本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法によれば、ポリプロピレン表面に塗料を塗装した場合であっても、密着性に優れた塗膜を形成することが出来る。
【0024】
また、本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法において、上述した塗料は、ウレタン系樹脂であることが好ましい。従来より、合成樹脂材塗装の塗料としてウレタン系樹脂が多く用いられている。このウレタン系樹脂は、意匠性及び耐候性に優れた特性があるものの、ポリプロピレン等の結晶性の合成樹脂材塗装の塗料として用いた場合には塗膜が密着しない等の問題があるため、高価なプライマーを用いる必要がある。しかし、本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法によれば、上述したような問題が生じない。
【0025】
以上に、本件発明に係る合成樹脂材塗装の前処理方法について述べたが、ナノバブルオゾンを発生させる方法は、公知の方法を利用することができる。例えば、水中に含まれるマイクロバブルオゾンを高速旋回装置等を用いて剪断処理してナノバブルを生成することが出来る。また、本件発明において、合成樹脂材の表面にナノバブルオゾン含有水溶液を接触させる方法に関しても特に限定されるものではなく、例えば、当該合成樹脂材を当該ナノバブルオゾン含有水溶液に浸漬したり、当該合成樹脂材の被塗膜形成面に当該ナノバブルオゾン含有水溶液を噴き当てる等の方法を採用することが出来る。
【0026】
以下に本件発明の実施例を示し、本件発明をより詳細に説明する。なお、本件発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
実施例1では、ポリプロピレン樹脂材の塗装前処理としてナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施したときの塗装密着性の確認を行った。
【0028】
この実施例1では、ポリプロピレン樹脂材(自動車用バンパー材)を射出成形により大きさ200×100×3mmの試験体とし、この試験体に対してナノバブルオゾン含有水溶液(濃度3.5ppm、温度15℃)による処理を6分間施した。次いで、当該試験体を乾燥させた後に、乾燥塗膜の膜厚が1.0mmになるようにエアレススプレーを用いてウレタン系塗装(自動車バンパー材用の上塗り塗料、白色)を行った。
【0029】
図1は、本件発明の一実施形態に係るナノバブルオゾン含有水溶液処理装置を示す。実施例1では、
図1に示すナノバブルオゾン含有水溶液処理装置を用いて、試験体の洗浄及び改質(極性基の導入)を行った。ここで、簡単に本件発明の一実施形態に係るナノバブルオゾン含有水溶液処理装置について説明する。
図1に示すように、本件発明の一実施形態に係るナノバブルオゾン含有水溶液処理装置1は、液槽2、ナノバブルオゾン含有水溶液導出管3、ポンプ4、オゾン発生装置6、及び、ループ型反応塔7を備えている。そして、液槽2にはナノバブルオゾン含有水溶液8が収容されており、ナノバブルオゾン含有水溶液8は、ポンプ4を介してループ型反応塔7を経由してノズル5より再び液槽2に戻される。これにより、液槽2内には、ナノバブルオゾンを含む水が多量に貯留された状態となる。ここで、ループ型反応塔7より上流側でオゾン発生装置6により生成されたオゾンが供給され、当該オゾンがループ型反応塔7で平均粒径200nm以下のナノバブルオゾンとなる。そして、オゾン発生装置6の作動を調整することで、液槽2に収容されるナノバブルオゾン含有水溶液8のオゾン濃度を所定範囲内にして、試験体Tの洗浄及び改質(極性基の導入)を行うことが出来る。なお、実施例1では、
図1に示すオゾン発生装置6として、株式会社RSテクノロジー製を用いた。また、
図1に示すループ型反応塔7として、株式会社RSテクノロジー製を用いた。
【0030】
そして、乾燥後の塗膜の剥離性を、JIS K5600 の付着性(クロスカット法)に準じて評価した。実施例1で行う塗装密着性の確認は、試験体表面に2mm間隔で100マス目形成し、粘着テープ(ニチバン株式会社製「品番:CT24」)による剥離試験を行い、マス目の残存率より評価した。その結果、実施例1の条件では、塗膜に剥がれが生じなかった。
【0031】
図2は、ナノバブルオゾン含有水溶液の処理時間と塗膜密着性との関係を示すグラフである。実施例1の条件で塗膜密着性の確認をクロスカット法に準じて行った結果、試験体の塗膜に全く剥がれは見受けられなかった。
図2において、塗装密着性は相対値により示され、実施例1を基準の「10」とした。
【実施例2】
【0032】
実施例2では、実施例1と同様に、ポリプロピレン樹脂材の塗装前処理としてナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施したときの塗装密着性の確認を行った。
【0033】
実施例2では、実施例1と同じ試験体を用い、この試験体に対してナノバブルオゾン含有水溶液(濃度3.5ppm、温度15℃)による処理を5分間施した。ナノバブルオゾン含有水溶液の製造条件は、実施例1と同じであるため、ここでの説明は省略する。次いで、実施例1と同じ条件でウレタン系塗装を行った。
【0034】
実施例2の試験体に対し、実施例1と同じ条件で乾燥後の塗膜の剥離性を評価した結果、実施例1のマス目の残存率を「10」としたときの相対値で「8」となった。
【実施例3】
【0035】
実施例3では、実施例1と同様に、ポリプロピレン樹脂材の塗装前処理としてナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施したときの塗装密着性の確認を行った。
【0036】
実施例3では、実施例1と同じ試験体を用い、この試験体に対してナノバブルオゾン含有水溶液(濃度3.5ppm温度15℃)による処理を2分間施した。ナノバブルオゾン含有水溶液の製造条件は、実施例1と同じであるため、ここでの説明は省略する。次いで、実施例1と同じ条件でウレタン系塗装を行った。
【0037】
実施例3の試験体に対し、実施例1と同じ条件で乾燥後の塗膜の剥離性を評価した結果、実施例1のマス目の残存率を「10」としたときの相対値で「6」となった。
【0038】
[比較例1]
比較例1では、実施例1〜3との対比を行うため、ポリプロピレン樹脂材の塗装前処理としてナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施さないときの塗装密着性の確認を行った。
【0039】
比較例1では、実施例1と同じ試験体を用い、この試験体に対して水と塗料とに親和性があり且つ導電性を有するプライマー(自動車バンパー材塗装用プライマー)を塗布した。次いで、実施例1と同じ条件でウレタン系塗装を行った。
【0040】
比較例1の試験体に対し、実施例1と同じ条件で乾燥後の塗膜の剥離性を評価した結果、試験体の塗膜が全て剥がれ、実施例1のマス目の残存率を「10」としたときの相対値で「0」となった。
【0041】
[実施例と比較例との対比]
以下に、本件発明の実施例と比較例とを対比しつつ、本件発明を詳細に説明する。
【0042】
以上の実施例1〜3と比較例1とを対比した結果より、ポリプロピレン樹脂材の塗装前処理としてナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施すことで、塗装密着性が著しく向上することが確認出来た。また、
図2に示す結果より、合成樹脂材の塗装前処理としてナノバブルオゾン含有水溶液による処理を短時間(5、6分程度)施すことで、合成樹脂材表面の効果的な洗浄と改質(極性基の導入)が同時になされ、塗装性が著しく向上することが分かった。
【0043】
<ポリプロピレン樹脂材の塗装前処理とぬれ性との関係についての確認>
以上をふまえ、以下に、ポリプロピレン樹脂材の塗装前処理とぬれ性との関係について確認を行う。
【0044】
本確認では、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理に関しては、実施例1と同様に
図1に示す装置を用い、ナノバブルオゾン含有水溶液の製造条件を実施例1と同じ条件とした。そして、
図3に示す如く、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施した試験体Tの被塗膜形成面Taを、θが45℃となるように斜めに傾け、そこに純水Wを20μL垂らし、水滴がXの距離で5cm流れ落ちるまでにかかる時間を計測した。
【0045】
そして、本確認では、実施例1と同じ試験体に対し、(a)何らの処理も施さない、(b)UV照射処理(照射時間:10分)を施す、(c)ナノバブルオゾン含有水溶液による処理(濃度:3.5ppm、処理時間:5分)を施す、(d)ナノバブルオゾン含有水溶液による処理(濃度:3.5ppm、処理時間:3分)を施した後にUV照射処理(照射時間:5分)を施す、の各処理毎のぬれ性の度合いを確認した。ここで、UV照射処理に関しては、高出力低圧水銀灯(主波長:253.7nm)を備えたセン特殊光源株式会社製UVE−200Jを用い、試験体表面とUVランプ表面との距離は3.5mmとして、紫外線照射強度は約10mW/cm
2に制御した。
【0046】
図4は、ポリプロピレン樹脂材の各塗装前処理とぬれ性との関係について示すグラフである。
図4に示す結果より、水滴の落下時間は、未処理が0.3sec/cmであるのに対し、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施した後にUV照射処理を施したものが15.8sec/cmとなり、最もぬれ性の度合いが高くなることが分かった。このことから、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施した後にUV照射処理を施すことで、より塗装密着性を向上させることが出来るものと考えられる。これは、強度が弱く接着を阻害する合成樹脂表層のウィークバウンダリーレイヤーが、ナノバブルオゾン含有水溶液と接触することによって脱離し、その下の強固の合成樹脂表面がUV照射処理されることにより当該合成樹脂表面に多くの水酸基が導入されたものと推測出来る。
【0047】
<ナノバブルオゾン含有水溶液処理の時間とぬれ性の度合いの関係についての確認>
以上の結果をふまえ、次に、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施した後にUV照射処理を施した場合におけるぬれ性の変化を、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理の時間毎に確認した。
【0048】
本確認では、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理に関しては、実施例1と同様に
図1に示す装置を用い、ナノバブルオゾン含有水溶液の製造条件を実施例1と同じ条件とした。そして、
図3に示す如く、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理を施した試験体Tの被塗膜形成面Taを、θが45℃となるように斜めに傾け、そこに純水Wを20μL垂らし、水滴がXの距離で5cm流れ落ちるまでにかかる時間を計測した。
【0049】
そして、本確認では、実施例1と同じ試験体に対し、ナノバブルオゾン含有水溶液(濃度:3.5ppm)による処理を0分、3分、5分、6分の各時間について行った。また、ナノバブルオゾン含有水溶液の処理の後に行うUV照射処理は、高出力低圧水銀灯(主波長:253.7nm)を備えたセン特殊光源株式会社製UVE−200Jを用い、試験体表面とUVランプ表面との距離を3.5mmとし、紫外線照射強度を約10mW/cm
2に制御して5分間照射した。
【0050】
図5は、ナノバブルオゾン含有水溶液処理の時間と水滴の落下時間との関係を示すグラフである。
図5に示されるように、ぬれ性の度合いは、3分の短時間処理で急激に上昇し、それ以降は緩やかに減少する結果となった。ここで、水滴の落下時間は、処理時間が3分のときに16sec/cmであるのに対し、処理時間が5分のときに8.6sec/cm、処理時間が6分のときに6.7sec/cmとなった。このことから、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理の後にUV照射処理を施す場合、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理は、3分程度の短い時間で行うことが最も塗装密着性を向上させることが出来るものと考えられる。これは、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理において、最初の3分で水酸基が合成樹脂表層に導入されるが、さらに処理を続けると生成された水酸基が脱離してしまうことに起因するものと推測出来る。
【0051】
[確認のまとめ]
以上より、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理は、UV照射処理と組み合わせて行うことで被塗膜形成面に多くの水酸基が導入され、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理のみを施すよりも塗装密着性の向上を図ることが分かった。また、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理とUV照射処理とを組み合わせて行う場合には、ナノバブルオゾン含有水溶液による処理の時間は、3分程度の短い時間とすることが塗装密着性の向上を図る上でより好ましいことが分かった。