(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706444
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】容器及びこれを備えた非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
C12M 1/22 20060101AFI20200601BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20200601BHJP
【FI】
C12M1/22
H02J50/12
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-189459(P2014-189459)
(22)【出願日】2014年9月17日
(65)【公開番号】特開2016-59323(P2016-59323A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年9月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598084390
【氏名又は名称】光電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】宮浦 正夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 霊泉
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 順
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文博
(72)【発明者】
【氏名】松木 英敏
(72)【発明者】
【氏名】太田 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】清水 一夫
(72)【発明者】
【氏名】相良 健一
【審査官】
鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−304968(JP,A)
【文献】
特開2011−187559(JP,A)
【文献】
特開2009−088178(JP,A)
【文献】
特開2009−284810(JP,A)
【文献】
特開2006−214644(JP,A)
【文献】
特開2007−252295(JP,A)
【文献】
特開2010−273603(JP,A)
【文献】
特開2012−050209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/22
H02J 50/00−50/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を透視可能な皿本体と、前記皿本体の上部を覆う内部を透視可能な蓋部とを備える容器であって、
前記蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は前記皿本体の側面に受電コイルが設けられ、
前記容器の外部において前記受電コイルと非接触に設けた給電コイルに通電することにより、前記受電コイルに給電する容器であって、
前記容器の前記蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は前記皿本体の側面には、前記受電コイル及び前記給電コイルとは電気的に接続されない、1個の負荷整合コイルが前記受電コイルと前記給電コイルの間に設けられており、
前記負荷整合コイルは、前記負荷整合コイルの自己インダクタンスと前記負荷整合コイルの内部抵抗と前記負荷整合コイルに直列に接続される静電容量と、で共振回路を構成しており、
前記共振回路の共振周波数は1MHz以下であり、
前記受電コイルは前記負荷整合コイルの上に前記容器の高さ方向に沿って積み重ねられ、
前記給電コイルが含まれる面と、前記受電コイルが含まれる面とは平行である容器。
【請求項2】
前記蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は前記皿本体の側面に制御回路が配置されており、
前記制御回路は、前記受電コイルに供給された電力によって動作し、
前記蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は前記皿本体の側面にアンテナが配置されており、
前記アンテナは、前記受電コイルに供給された電力によって、前記容器の外部に対して信号を送信し、
前記蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は前記皿本体の側面に環境センサが配置されており、
前記環境センサは、前記受電コイルに供給された電力によって動作する請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記環境センサは温湿度センサであり、前記容器は、培養を行うためのシャーレである請求項2に記載の容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の容器と、前記容器が載せられる載置面を備え、前記給電コイルが設けられた給電装置と、を備え、前記容器は、前記載置面に垂直な方向に複数積み重ねて配置されるか前記載置面に複数平置きされていることを特徴とする非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送が可能な容器、及び、これを備えた非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の保存庫は、貯蔵室内に設けられ、温度等の検知機能を持つ無線センサと、この無線センサと通信を行うアンテナと、無線センサによりセンシングされ、アンテナを介して受信した情報を読み取る情報読取装置と、この情報読取装置が読み取った情報を取得し貯蔵室制御を行う制御手段とを備える。この構成により、配線を考慮することなく、任意の箇所にセンサを配置することが可能となるため、貯蔵室内の任意の箇所の情報を取得することが可能となる。
【0003】
特許文献2に記載の非接触電力伝送システムは、送電コイルを有する送電装置と、受電コイル及び集磁束コイルを有する受電装置とを備え、送電コイルに電流を流して発生した磁束を媒介として受電コイルに電力を伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−214644号公報
【特許文献2】特開2012−50209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の保存庫では、冷蔵庫本体及び第一の冷蔵室のいずれも、その構造及び材質上、扉をあけることなく内部を観察することはできないため、観察のたびに保管物が外気に触れ、温湿度が変化してしまう問題があった。このため、培養等のように、容器をあけることなく内部を観察する必要がある用途で使用することは困難であった。
【0006】
特許文献2に記載の非接触電力伝送システムの受電装置では、受電コイル及び集磁束コイルの設置場所を限定しておらず、また、内部に物質を収容する空間は設けられていない。さらに、受電装置は光を透過する材質で構成されていない。このため、受電装置内に物質を収容する空間を形成したとしても、受電装置を開いて外気に触れさせる状態にしなければ内部を観察することは困難である。
【0007】
また、特許文献1に記載の保存庫では、貯蔵室の温度等は検知できるものの、貯蔵室内に収容する容器ごとの温度・湿度までは測定できなかった。このため、容器内の物品の性質上、容器ごとに温度・湿度を厳密に管理する必要がある用途には適しているとは言い難かった。
【0008】
また、複数の容器を貯蔵室内で積み上げた状態で収容する場合と、複数の容器を平置きにした場合とでは、貯蔵室内の環境に大きな差異が生じるため、特許文献1に記載の保存庫では、容器ごとの温度・湿度等を正確に測定することが困難であった。これに対して、温度・湿度等を正確に測定するために複数の容器を貯蔵室内に平置きすると、貯蔵室の床面積を大きくすることが必要となるため、保存庫が大型化してしまうという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、蓋部を取ることなく内部に収容した物質を観察することのできる、容器及び非接触電力伝送システムを提供することを目的としている。また、貯蔵庫内の任意の箇所に配置した容器ごとの温度・湿度等の環境を検知することのできる容器及び非接触電力伝送システムを提供することを目的としている。
【0010】
さらにまた、本発明は、貯蔵庫内での収容形態に拘わらずに容器ごとの環境を検知することのできる容器及び非接触電力伝送システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の容器は
、内部を透視可能な皿本体と、前記皿本体の上部を覆う
内部を透視可能な蓋部とを備える容器であって、
前記蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は前記皿本体の側面に受電コイルが設けられ、
前記容器の外部において前記受電コイルと非接触に設けた給電コイルに通電することにより、前記受電コイルに給電する容器であって、
前記容器の前記蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は前記皿本体の側面には、前記受電コイル及び前記給電コイルとは電気的に接続されない、1個の負荷整合コイルが
前記受電コイルと前記給電コイルの間に設けられて
おり、
前記負荷整合コイルは、前記負荷整合コイルの自己インダクタンスと前記負荷整合コイルの内部抵抗と前記負荷整合コイルに直列に接続される静電容量と、で共振回路を構成しており、
前記共振回路の共振周波数は1MHz以下であり、
前記受電コイルは前記負荷整合コイルの上に前記容器の高さ方向に沿って積み重ねられ、
前記給電コイルが含まれる面と、前記受電コイルが含まれる面とは平行であることを特徴としている。
【0012】
これにより、蓋部をとることなく内部を観察することができるため、観察のたびに容器内の環境を変化させることのない安定した空間を提供することができる。また、容器の配置の自由度を確保しつつ、容器ごとに、温度・湿度等の環境の検知・管理を正確かつ確実に行うことができる。
【0013】
本発明の容器において、受電コイルは、導電性インクの印刷パターン、フレキシブルプリント基板、又は、薄膜形成若しくは表面処理によって形成された導電性パターンであることが好ましい。
これにより、所望の位置に、所望の形状の受電コイルを安価に形成することできる。
【0014】
本発明の容器において、蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は皿本体の側面に制御回路が配置されており、制御回路は、受電コイルに供給された電力によって動作することが好ましい。
これにより、容器ごとに環境の管理を行うことが可能となる。
【0015】
本発明の容器において、蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は皿本体の側面にアンテナが配置されており、アンテナは、受電コイルに供給された電力によって、容器の外部に対して信号を送信することが好ましい。
【0016】
これにより、容器ごとに検知した温度・湿度等の環境データを外部へ送出することができる。
【0017】
本発明の容器において、蓋部の上面の周縁部若しくは側面、又は皿本体の側面に環境センサが配置されており、環境センサは、受電コイルに供給された電力によって動作することが好ましい。
これにより、容器ごとに環境の管理を行うことが可能となる。
【0018】
本発明の容器において、環境センサとしては温湿度センサが好ましい。本発明の容器において、容器は培養を行うためのシャーレであることが好ましい。
上述の構成により、厳しい環境管理が必要な培養にも適用することができる。
【0019】
本発明の非接触電力伝送システムは
、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の容器と、前記容器が載せられる載置面を備え、前記給電コイルが設けられた給電装置と、を備え、前記容器は、前記載置面に垂直な方向に複数積み重ねて配置されるか前記載置面に複数平置きされていることを特徴としている。これにより、容器ごとに電力を供給することができるようになる。
【0020】
本発明の非接触電力伝送システムにおいて、給電コイルは、載置面に形成された、導電性インクの印刷パターン、フレキシブルプリント基板、又は、薄膜形成若しくは表面処理によって形成された導電性パターンであることが好ましい。
これにより、所望の位置に、所望の形状の給電コイルを安価に形成することできる。
【0021】
本発明の非接触電力伝送システムにおいて、給電コイルが含まれる面と、受電コイルが含まれる面とは平行であることが好ましい。
これにより、給電コイルから受電コイルへの給電を効率良く行うことができる。
【0022】
本発明の非接触電力伝送システムにおいて、容器は、載置面に垂直な方向に複数積み重ねて配置されることが好ましい。
【0023】
上述の構成により容器の配置の制約が少ないため、配置空間を広げることなく積み重ねて配置することができる。
【0024】
本発明の非接触電力伝送システムにおいて、外部機器と通信可能な無線装置を備えることが好ましい。
【0025】
これにより、容器ごとの環境管理の経過や結果を外部のパソコン、タブレット等に取り込むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、蓋部をとることなく内部を観察することができる、容器及び非接触電力伝送システムを提供することができる。また、容器ごとにワイヤレス給電を行えるようにしたことにより、容器単位で温度・湿度等を正確に測定できる、容器及び非接触電力伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】(A)は本発明の実施形態に係る容器において皿本体と蓋部を分離した状態を示す側面図、(B)は本発明の実施形態に係る容器において皿本体に蓋部を載せた状態を示す側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る容器の構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態におけるコイルの構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態におけるコイルの関係を示す回路図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る容器を積み重ねた状態を示す側面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る容器を給電装置上に置いた状態を示す側面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る非接触電力伝送システムを保存庫内に配置した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る容器及び非接触電力伝送システムについて図面を参照しつつ詳しく説明する。
【0029】
図1は、本実施形態に係る容器10の構成を示す側面図であって、(A)は皿本体30と蓋部20を分離した状態を、(B)は皿本体30に蓋部20を載せた状態をそれぞれ示している。
図2は、容器10の構成を示す平面図である。
【0030】
容器10は、
図1に示すように、底面を有する内部を透視可能な円筒形の皿本体30と、皿本体30の上部を密閉して覆う天井面を有する内部を透視可能な円筒形の蓋部20とを備える。容器10は、例えば、内部で培養を行うためのシャーレであって、皿本体30及び蓋部20は内部を透視可能なガラスや合成樹脂材料で形成されることが好ましい。本明細書での「内部を透視可能な」とは、透明または半透明など、容器10の内部の状態を外部から目視などで観察可能な状態を意味している。
【0031】
蓋部20の上面21には、コイル部40が設けられている。コイル部40は、
図4に示すように、容器10の高さ方向Z1に沿って積み重ねられた、受電コイル41と負荷整合コイル42とからなる。コイル部40は、蓋部20の上面21の中央部22の周囲に配置される。コイル部40は、螺旋状に巻いた導線を蓋部20に接着して形成するほか、導電性インクの印刷パターン、フレキシブルプリント基板、又は、薄膜形成若しくは表面処理によって形成された導電性パターンとして形成することもできる。受電コイル41は、容器10の外部において受電コイル41と非接触に設けた給電コイル90(
図7)に通電することにより、給電される。
【0032】
図1に示すように、蓋部20の側面23には、導線70によって互いに電気的に接続された、制御モジュール50とアンテナ60が、接着により固定されている。制御モジュール50はコイル部40に電気的に接続されている。制御モジュール50、アンテナ60,及び導線70は、非導電性で非透光性のテープ80によって覆われている。
【0033】
図3は、本実施形態に係る非接触電力伝送システムの構成を示すブロック図である。
図4は、本実施形態におけるコイルの構成を示す斜視図である。
図5は、本実施形態におけるコイルの関係を示す回路図である。
【0034】
本実施形態に係る非接触電力伝送システムは、前記コイル部40ならびに制御モジュール50を備えた容器10と、この容器10に非接触で給電する給電装置100とを有している。
【0035】
図3に示すように、容器10に搭載された制御モジュール50は、制御回路51と、環境センサとしての温湿度センサ52とを備える。制御回路51、温湿度センサ52、及びアンテナ60は、受電コイル41に供給された電力によって動作する。温湿度センサ52は、容器10の温度及び湿度を検知して制御回路51へ出力する。制御回路51は、温湿度センサ52による検知結果と、容器10ごとに設定されたID情報とをアンテナ60から給電装置100のアンテナ93を通してIDリーダ92へ記録される。アンテナ60は、例えば高周波の搬送信号を、温湿度センサ52による検知結果とID情報に対応する信号で変調して送信する。アンテナ60からIDリーダ92へ信号を記録する時間間隔、及び、ID情報は、制御回路51の記憶部に予め保存されている。
【0036】
また、制御モジュール50に、給電装置100からの電力を受電している状態であることを示すインジケータを設けることが好ましい。このインジケータを設けると、制御モジュール50の故障などにより受電できていない容器10の交換等を行えるため好ましい。インジケータは、発光ダイオードなどを用いる。
【0037】
給電装置100では、IDリーダ92が受信した情報が制御部91の記憶部に保存される。制御部91に対して、外部機器から、記憶部に保存した情報の取り出し要求があった場合は、アンテナ93(無線装置)によって外部機器へ送信することができる。
【0038】
給電コイル90と、容器10側の負荷整合コイル42、及び受電コイル41の関係は、
図5に示すとおりである。
【0039】
給電装置100に設けられた制御部91では、外部の電源110から供給された電力を、所定の波形の交流電圧V
in(
図5)として給電コイル90に供給(通電)する。給電装置100では、給電コイル(L
1)90とコンデンサC
1ならびに巻線抵抗r
1で発振回路が構成されており、給電コイル(L)90に所定の周波数(1MHz以下)の交番電流が与えられる。コンデンサC
1及び巻線抵抗r
1は給電装置100内に配置されている。
【0040】
容器10側では、負荷整合コイル(L
2)42と共振コンデンサC
2ならびに巻線抵抗r
2により共振回路が構成されており、受電コイル(L
3)41は巻線抵抗r
2と、制御モジュール50などの負荷R
Lに接続されている。容器10側では、共振コンデンサC
2、巻線抵抗r
2、負荷R
L、及び、巻線抵抗r
3は制御モジュール50に配置されている。
【0041】
この構成では、給電コイル90に与えられる交流信号により電流磁界M
12が誘導される。この電流磁界M
12は、負荷整合コイル(L
2)42に与えられて共振が発生し、この共振による誘導磁界M
23が受電コイル41に与えられ、負荷R
Lに電力が供給される。
【0042】
給電コイル90、負荷整合コイル42でインピーダンスが整合されて受電コイル41に給電されるため、給電コイル90に供給した電力に応じた電力を効率良く受電コイル41に伝達することができる。すなわち、負荷整合コイル42を用いたことにより、負荷特性を最適なものにすることができ、特に、1つの給電コイル90で複数の受電コイル41に電力を供給する場合に、相互干渉を生じない程度のQ値に抑えつつ、複数の受電コイル41の全体のQ値を高めることができる。
【0043】
図6は、本実施形態に係る容器10を給電装置100の上に積み重ねた状態を示す側面図である。
図7は、本実施形態に係る容器10を給電装置100上に置いた状態を示す側面図である。
【0044】
容器10は、
図6に示すように、コイル部40を形成した蓋部20上に、別の容器10の皿本体30を載せることによって積み上げることができる。ここで、蓋部20の上部と皿本体30の下部に互いに嵌め合う嵌合部を設けると、積み上げた容器10の平面方向(高さ方向に直交する方向)の位置が決まり、平面方向における全ての容器10の中心位置が一致するため、電力の供給がより確実になり、また位置ずれによる落下の可能性が小さくなる。このように積み上げられた容器10は、
図7に示す給電装置100の載置面101上に配置される。これにより、容器10は、載置面101に垂直な方向D1に積み上げられる。
【0045】
平面視略四角形の載置面101には、容器10を配置する4つの領域102、103、104、105(
図6、
図7)が設けられ、これらの領域を囲むように、周縁部に給電コイル90が形成されている。給電コイル90は略矩形状に巻いた導線を載置面101に接着して形成するほか、導電性インクの印刷パターン、フレキシブルプリント基板、又は、薄膜形成若しくは表面処理によって形成された導電性パターンとして形成することもできる。ここで、給電コイル90が含まれる面と、受電コイル41が含まれる面とは平行となる。なお、容器10は、積み上げずに平置きしてもよい。
【0046】
以上のような構成の、給電装置100と給電装置100上に配置された容器10は非接触電力伝送システムを構成する。本実施形態の非接触電力伝送システムにおいては、負荷整合コイル42を設けることにより、容器10を積み上げても、各容器について相互干渉が生じない程度のQ値に抑えることができるため、適切な大きさの電力をそれぞれの容器の受電コイル41に供給することができる。
【0047】
図8は、本実施形態に係る非接触電力伝送システムを保存庫120内に配置した状態を示す斜視図である。保存庫120の本体部122の上面122aには給電装置100が載置され、給電装置100の載置面101上には、載置面101に垂直な方向D1に容器10が積み上げられている。本体部122上には、容器10及び給電装置100を囲むように、蓋部121が載せられる。本体部122には、温度コントローラ(不図示)が設けられており、蓋部121と本体部122で囲まれる空間内の温度を調節可能である。
【0048】
保存庫120に保存されている容器10においては、温湿度センサ52によって温度・湿度が検知され、制御回路51の記憶部に保存されている。また、温湿度センサ52による検知結果は、容器10ごとのID情報とともに給電装置100に送信され、制御部91の記憶部に保存されるとともに、アンテナ93によって外部に送信される。アンテナ93から送信されたデータを受信した外部機器は、容器10ごとに温度・湿度をチェックすることが可能である。
【0049】
以上のように構成されたことから、上記実施形態によれば、次の効果を奏する。
(1)受電コイル41を、内部を透視可能な蓋部20の上面21の中央部22を避けた位置に配置しているため、蓋部20を皿本体30に載せた状態でも上方から容器10の内部を観察することができる。したがって、容器10を開けることによって内部の環境を変えることがないため、より好ましい培養環境を提供することができる。
【0050】
(2)それぞれの容器10に受電コイル41を設け、容器10の外部に給電コイル90を配置した構成により、給電コイル90と非接触で受電コイル41に電力を供給することが可能となるため、容器10の配置の自由度を確保しつつ、容器10ごとの温度・湿度管理を正確に行うことができる。
【0051】
(3)受電コイル41、負荷整合コイル42、及び給電コイル90を、導電性インクの印刷パターン、フレキシブルプリント基板、又は、薄膜形成若しくは表面処理によって形成された導電性パターンで形成することにより、所望の形状を正確かつ安価に形成することできる。
【0052】
(4)制御モジュール50、アンテナ60、及び導線70を蓋部20の側面に配置することにより、蓋部20を皿本体30に載せた状態でも上方から容器10の内部を観察することができる。
【0053】
(5)給電コイル90が含まれる面(載置面101に平行な面)と、受電コイル41が含まれる面とを平行にすることにより、給電コイル90から受電コイル41への給電を効率良く行うことができる。
さらに、蓋部20の上面21にコイル部40が配置された容器10を、載置面101に垂直な方向に積み上げることにより、給電コイル90からそれぞれの受電コイル41への給電を効率良く行うことができる。
【0054】
(6)負荷整合コイル42を用いることにより、それぞれの容器10の受電コイル41について、相互干渉を生じない程度のQ値に抑えつつ、複数の受電コイル41の全体のQ値を高めることができる。
【0055】
以下に変形例について説明する。
コイル部40は、蓋部20の上面21の周縁部のほか、蓋部20の側面、又は、皿本体30の側面に設けてもよい。また、制御モジュール50、アンテナ60、及び導線70は、蓋部20の側面のほか、蓋部20の上面21の周縁部、又は皿本体30の側面に配置してもよい。これらの構成により、蓋部20を皿本体30に載せた状態でも、上方又は下方から容器10の内部を観察することができる。
【0056】
図7においては、載置面101上に4つの領域102、103、104、105を配置したが、容器10を配置する領域の数や配置はこれに限定されない。
【0057】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係る容器及び非接触電力伝送システムは、厳密な環境管理が必要な用途や、容器の配置スペースに制約がある場合に有用である。
【符号の説明】
【0059】
10 容器
20 蓋部
22 中央部
30 皿本体
40 コイル部
41 受電コイル
42 負荷整合コイル
50 制御モジュール
51 制御回路
52 温湿度センサ
60 アンテナ
90 給電コイル
100 給電装置
101 載置面
120 保存庫