特許第6706447号(P6706447)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706447リチウムシートをリチウム薄膜に薄化するための揮発性メチルシロキサン潤滑剤
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  • 特許6706447-リチウムシートをリチウム薄膜に薄化するための揮発性メチルシロキサン潤滑剤 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706447
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】リチウムシートをリチウム薄膜に薄化するための揮発性メチルシロキサン潤滑剤
(51)【国際特許分類】
   B21B 3/00 20060101AFI20200601BHJP
   B21B 1/40 20060101ALI20200601BHJP
   B21B 45/02 20060101ALI20200601BHJP
   C10M 105/76 20060101ALI20200601BHJP
   C10M 107/50 20060101ALI20200601BHJP
   C10N 40/24 20060101ALN20200601BHJP
【FI】
   B21B3/00 L
   B21B1/40
   B21B45/02
   C10M105/76
   C10M107/50
   C10N40:24 Z
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-532851(P2017-532851)
(86)(22)【出願日】2015年12月18日
(65)【公表番号】特表2018-503716(P2018-503716A)
(43)【公表日】2018年2月8日
(86)【国際出願番号】CA2015051351
(87)【国際公開番号】WO2016095055
(87)【国際公開日】20160623
【審査請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】14/576,429
(32)【優先日】2014年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】309005766
【氏名又は名称】ブルー・ソリューションズ・カナダ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・ルブラン
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・コットン
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・シロワ
【審査官】 三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−140907(JP,A)
【文献】 特開2011−008997(JP,A)
【文献】 特開平07−299504(JP,A)
【文献】 特開平10−316597(JP,A)
【文献】 特開昭61−230734(JP,A)
【文献】 特表2005−538850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00− 80/00
B21B 3/00
B21B 1/40
B21B 45/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムまたはリチウム合金シートをリチウムまたはリチウム合金膜へと薄化する方法であって、
リチウムまたはリチウム合金シートを一対の作業ローラの間に供給する段階と、前記作業ローラ上に液体形態の揮発性メチルシロキサン潤滑剤を塗布する段階とを含み、前記作業ローラの間で圧縮されると、前記作業ローラを通過する間にリチウムまたはリチウム合金シート上に加わる圧縮力によって、前記リチウムまたはリチウム合金シートの厚さが低減して100μm未満のリチウムまたはリチウム合金膜が得られ
前記揮発性メチルシロキサン潤滑剤が、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンおよびドデカメチルヘキサシロキサンの群から選択され、
前記揮発性メチルシロキサン潤滑剤が、その他の溶媒と混合または配合する必要がない純粋な形態である単一溶媒として使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、リチウムシートを薄化するプロセスに関し、より具体的には、リチウム金属または合金のシートを、電気化学セルにおけるアノードとして使用され得る薄膜へと薄化するプロセスにおいて使用するための潤滑剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
固体ポリマー電解質および薄膜カソードおよび薄膜リチウム金属アノードの積層から作製された充電式リチウムポリマー電池は、液体電解質を使用する従来のリチウムイオン電池に対して多くの利点を有する。これらの利点は、より低い電池総重量、高い電力密度、高い比エネルギー、より長い耐用年数、および有毒液体を環境に排出する危険性が排除されているために環境親和性を有することを含む。リチウム金属ポリマー電池は、電気またはハイブリッド自動車、およびバックアップ電力システム、ソーラーパネルまたは風力エネルギー製品用エネルギー蓄積器、ならびに住宅および産業用途におけるピークカット電力消費などの据付応用において使用するための最も有望なエネルギー貯蔵デバイスとなった。
【0003】
高速かつ信頼性の高いプロセスを利用した100マイクロメートル(μm)未満の厚さを有し、例えば10センチメートル(cm)またはそれ以上の広幅、および数百メートルの長さの形態を有するリチウムの薄膜の製造は、その化学反応性、展性、低い機械強度、単純な接触による自己融着、ならびに例えば鋼、アルミニウムおよびそれらの一般的な合金などの一般的な金属であるほとんどの固体材料に対する強い接着性などのリチウム金属の物理的および化学的特性に起因する重要な技術課題に直面している。
【0004】
現在、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,854,312号に記載されているように、150から250μmのリチウムまたはリチウム合金シートの連続製造には、リチウム金属の展性を利用して、冷間押出が使用されている。より薄くするために、押出によって得られた膜は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,513,136号に記載されるように、リチウムまたはリチウム合金膜の形状およびプロファイルをリチウムポリマー電池に使用することができる100μm以下の厚さまで薄化するように制御するように適合された調節可能な薄化ローラを備えた薄化装置を通してさらに薄化される。
【0005】
薄化プロセスにおいて、米国特許第5,837,401号に記載されるように、薄いリチウム膜の破損を防止するために圧力の下で薄化ローラと接触する薄いリチウム膜の接着を防止するために、溶媒と混合された特定の添加剤を含む潤滑剤が使用される。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,837,401号に開示された特定の添加剤および溶媒は、電気化学セルに使用するためのリチウム膜と化学的に適合する特定の特性を有する。米国特許第5,837,401号に記載された潤滑剤は、薄化されたリチウム膜が薄化ローラに接着することを防止し、リチウム膜の表面上の酸化を通してリチウムと反応しないため、電気化学セルが組立てられ、作動するときに、電気化学セルのリチウム薄膜アノードとポリマー電解質との界面での電気化学的交換を害しない。この潤滑剤の化学配合の主な利点は、薄化後にリチウム膜の表面に特定の添加剤が保持され得、電気化学セルにおいて使用されるときにリチウムアノードの優れた動作を損なわないことである。同様に、リチウムに対するこの潤滑剤の化学適合性は、電気化学セルにおける組立ておよび使用の前に薄化リチウム膜を洗浄するステップを排除する。リチウムシートを電気化学セル用のリチウム膜へと薄化するために使用される有機酸およびアルコールなどの反応性有機官能基を含む以前の薄化潤滑剤は、電気化学セルの良好な動作に有害であったため、薄化リチウム膜の表面から取り除かなければならなかった。
【0006】
しかしながら、米国特許第5,837,401号に記載された潤滑剤の調製は煩雑である。潤滑剤の組成は、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサンまたはこれらの溶媒の混合物の中から選択された溶媒と混合された厳密に0.2重量%のポリオキシエチレンジステアレートを含まなければならない。混合物は、全ての成分が混合されるように数時間撹拌しなければならず、リチウムシートをリチウム膜へと薄化するときの潤滑剤として使用する場合には、絶えず撹拌しなければならない。
【0007】
さらに、リチウム膜の表面上に残留する潤滑剤は、電気化学セルにおいて使用される場合にリチウムアノードの良好な作動を妨げるわけではないが、良好な作動に寄与することもない。残留する潤滑剤は電気化学セルの重量を増加させ、作製される電気化学セルの比エネルギー密度をわずかに減少させる。
【0008】
上述の潤滑剤の混合および配合作業ならびに潤滑剤の成分:添加剤(ポリオキシエチレンジステアレート)および溶媒(ヘプタン、ベンゼン、トルエン、およびシクロヘキサン)の直接コストは、リチウム薄膜とともに製造される電気化学セルの全体コストを上昇させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,854,312号明細書
【特許文献2】米国特許第7,513,136号明細書
【特許文献3】米国特許第5,837,401号明細書
【0010】
したがって、薄化後にリチウム膜の表面上に残留せず、調製のために必要な操作が少ない、リチウムシートを電気化学セル用のリチウム膜へと薄化するための新規の潤滑剤が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術に存在する課題の少なくともある程度を改良することである。
本発明の目的はまた、リチウムシートを100μmまたはそれ未満のリチウム膜へと薄化するプロセスにおいて使用する潤滑剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様において、本発明は、リチウムまたはリチウム合金シートをリチウムまたはリチウム合金膜へと薄化するプロセスにおいて使用する潤滑剤であって、前記潤滑剤が、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンおよびドデカメチルヘキサシロキサンの群から選択された揮発性メチルシロキサンである、潤滑剤を提供する。
【0013】
1つの態様において、本発明は、リチウムまたはリチウム合金シートをリチウムまたはリチウム合金膜へと薄化する方法であって、リチウムまたはリチウム合金シートを一対の作業ローラの間に供給する段階と、前記作業ローラ上に液体形態の揮発性メチルシロキサン潤滑剤を塗布する段階とを含み、前記作業ローラの間で圧縮されると、前記作業ローラを通過する間にリチウムまたはリチウム合金シート上に加わる圧縮力によって、前記リチウムまたはリチウム合金シートの厚さが低減して100μm未満のリチウムまたはリチウム合金膜が得られる、方法を提供する。
【0014】
本発明の実施形態の各々は、上記目的および/または態様の少なくとも1つを有するが、それらの全てを必ずしも有する必要はない。上記目的を達成しようとした結果得られた本発明のいくつかの態様は、これらの目的を満たさず、かつ/または本明細書に記載されたその他の目的を満たさない場合もあることを理解すべきである。
本発明の実施形態の追加および/または代替の特徴、態様および利点は、以下の詳細な説明、添付の図面および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
本発明ならびにその他の態様およびさらなる特徴に対する理解を深めるために、添付の図面とあわせて使用される以下の説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】潤滑剤分注ユニットを備えた、リチウムまたはリチウム合金シートを薄膜へと薄化するための装置の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照すると、事前に押し出された略150から250μmのリチウムまたはリチウム合金シート14から100μm未満、好ましくは75μm未満、より好ましくは略50μmのリチウムまたはリチウム合金薄膜12を生成するように適合された薄化装置10の概略図が示されている。薄化装置10は、主枠16と、一対の薄化ローラ18aおよび18bと、薄化ローラ18aに隣接して接する第1のバックアップローラ20aと、薄化ローラ18bに隣接して接する第2のバックアップローラ20bと、2つの薄化潤滑剤分注ユニット22aおよび22bとを備える。巻かれた押出リチウムまたはリチウム合金シート14のロール24は、薄化ローラ18aおよび18bに到達する前にリチウムシート14の張力を制御するように適合された駆動モータ制御ユニット(図示せず)を備えた供給ローラ26上に配置される。
【0017】
略150から250μmのリチウムシート14は、移動するリチウムシート14の速度を測定する第1のエンコーダローラ41および薄化装置10へと進入するリチウムシート14の張力を測定するように適合されたロードセルが設けられた第1の張力ローラ43へとつながる一連のフリーローラ28を通って蛇行する。張力ローラ43のロードセルは、リチウムシート14にかかる張力を自動で調節するために、ロール24の駆動モータの制御ユニットに電子的に連結され得る。リチウムシート14は、次いで、リチウムシート14の横方向のずれを取り除き、リチウムシート14のジグザグ移動を防止する効果を有し、それによりリチウムシート14が薄化プロセスに悪影響を及ぼし得る横方向のウィービング動作をすることなく薄化ローラ18aおよび18bの中央部へと真っ直ぐに供給されるようになる、密接して配置された一連のローラ32を通してリチウムシート14を高速で送るストレートナ30へと供給される。したがって、リチウムシート14は、ローラ間の固定位置で薄化ローラ18aおよび18bへと供給される。
【0018】
薄化装置10の入口で、潤滑剤分注ユニット22aおよび22bは、リチウムシート14が十分に潤滑された作業ローラ18aおよび18bで薄化され、作業ローラのいずれかの上に薄化された膜12が不要に接着することのないように、薄化領域より上流で、作業ローラ18aおよび18bの各々の作業面上に、リチウムと適合性を有する十分な量の薄化潤滑剤を放出する。
【0019】
先に記載したように、作業ローラ18aおよび18bの表面にこれまで使用されてきた潤滑剤は、米国特許第5,837,401号および第6,019,801号に記載されており、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサンまたはこれらの混合物ならびにポリオキシエチレンジステアレートから選択された溶媒をベースとするものである。この特定の潤滑剤の欠点は複数ある。第1に、先に記載したように、いくらかの潤滑剤が薄化された膜の表面上に残留し、それにより電気化学セルへと導入される。第2に、潤滑剤の成分の混合および配合に数時間を要し、均一な混合物を得るのが困難である。第3に、潤滑剤に使用される溶媒は、注意深く取扱い、制御されなければならない汚染物質である。最後に、押出リチウムシート14のロール24の各々が薄化装置10を通して薄化された後、作業ローラ上に残留する潤滑剤を取り除かなければならない。
【0020】
薄化されたリチウム膜12は、薄化されたリチウム膜12の表面の平坦性を測定し、膜上の穴および膜の縁部に沿った亀裂を検出する光学リフラクトリシステム36を通って引き出される。光学システムはまた、リチウム膜12の厚さを測定するために使用することができる。薄化されたリチウム膜12が適正に巻き取られるように、駆動巻取ローラ38によってリチウム膜12上に制御された張力が印加される。薄化されたリチウム膜12は、制御された張力の下で一連のローラを通って蛇行する。最初のローラは、薄化装置10から出る薄化されたリチウム膜12の張力を測定するように適合されたロードセルが設けられた第2の張力ローラ45である。張力ローラ45のロードセルは、リチウムシート12上にかかる張力を自動で調節するために巻取ローラ38の駆動モータの制御ユニットに電子的に連結され得る。リチウム膜は、次いで、移動するリチウム膜12の速度を測定する第2のエンコーダローラ47通って巻き取られる。薄化されたリチウム膜12は、次いで、巻取ローラ38へと続く一連のフリーローラ34を通って巻き取られる。
【0021】
リチウム膜12の層が互いに接着しないように分離するために、ポリプロピレン膜90などの絶縁材料の薄膜もまた巻取ローラ38に巻き取られる。絶縁膜90は、ロール92から巻取ローラ38によって引き出されるが、まず初めに絶縁膜90上の張力を測定するように適合されたロードセルが設けられた張力ローラ94を通して巻き取られる。巻取ローラ38によって印加される張力はリチウム膜12と絶縁膜90に分割されるため、この張力測定は、巻取ローラ38によってリチウム膜12に印加される張力を制御するために必要である。
【0022】
第1および第2のエンコーダローラ41および47はそれぞれ、薄化装置10に進入するリチウムシート14の速度および薄化装置10から出る薄化されたリチウム膜12の速度を測定する。リチウムシート14の入口速度と薄化されたリチウム膜12の出口速度との間の関係は、当初のリチウムシート14の厚さが認識されている場合に、薄化されたリチウム膜12の厚さが単純な方程式を通して差し引かれ得るように、当初のリチウムシート14からリチウム膜12への厚さの低減に正比例する。薄化されたリチウム膜12の厚さは、好ましくは制御されかつ第1および第2のエンコーダローラ41および47の間の速度差を通して実証される。
【0023】
トルエン、ヘキサンおよびポリオキシエチレンジステアレート系の潤滑剤と替える様々な実験を通して、発明者らは、シリコーンオイルとして一般的に知られているポリジメチルシロキサンオリゴマーの群の揮発性メチルシロキサンが、100μm未満のリチウム膜へとリチウムシートを薄化する潤滑剤の理想的な代替となることを発見した。シリコーンオイルは、典型的に、成形ゴムの離型剤ならびにプラスチックおよびゴム表面の潤滑剤として使用される。シリコーンオイルの低い粘度指数、熱および化学安定性、シア破壊耐性、圧縮性、ならびに揮発性により、シリコーンオイルはリチウムシートをリチウム膜へと薄化するための潤滑剤として優れたものとなる。シリコーンオイルは、身体のケア製品に典型的に使用されるため環境親和性を有し、再資源化が容易であり、その揮発性により薄化されたリチウム膜上に潤滑剤が残留せず、薄化後に作業ローラを洗浄する必要がない。さらに、シリコーンオイルは、その他の溶媒と混合または配合する必要のない純粋な形態で単一溶媒として使用することができる。最後に、そのきわめて低い粘度により、従来のポリオキシエチレンジステアレート系潤滑剤と比較して、1/3から1/4.5少ない潤滑剤の使用が可能となる。
【0024】
メチルシロキサンは、(CHSiOの形態のユニットから構成される化合物である。メチルシロキサンは、交互のケイ素および酸素原子(例えば‐Si‐0‐Si‐0‐)から構成される分岐または非分岐骨格と、ケイ素原子に付加された側鎖メチル基を有し得る。好ましい揮発性メチルシロキサンは、ヘキサメチルジシロキサン(C18OSi)、オクタメチルトリシロキサン(C24Si)、デカメチルテトラシロキサン(C1030Si)およびドデカメチルヘキサシロキサン(C1236Si)などの直鎖ポリジメチルシロキサン(COSi)nを含む。
【0025】
試験は、初めに、25℃で0.65センチストークの粘度を有するヘキサメチルジシロキサン(C18OSi)を用いて実施した。ヘキサメチルジシロキサンは、無色透明であり、基本的に無臭の流体である。また、スキンクリームローション、バスオイル、日焼け用ローション、デオドラント、ヘアスプレーならびにその他の美容およびヘアケア製品など多くのパーソナルケア製品におけるベース流体として典型的に使用されている。このように、ヘキサメチルジシロキサンは、取扱いが安全である。ヘキサメチルジシロキサンは、あらゆるシリコーン流体の中で最も速い揮発速度、最も低い表面張力、最も高い圧縮性、および高い展延性を有する。これらの特徴により、ヘキサメチルジシロキサンは、リチウムシートをリチウム膜へと薄化するための潤滑剤としての優れた候補となる。
【0026】
最初に、ヘキサメチルジシロキサン流体の層を、リチウム箔のサンプルの表面上に広げ、リチウムがヘキサメチルジシロキサン流体と反応するか否かを判断し、また、ヘキサメチルジシロキサン流体の蒸発速度を評価し、ヘキサメチルジシロキサンが完全に蒸発して潤滑剤の残らないリチウム箔表面となるか否かを判断した。
【0027】
ヘキサメチルジシロキサン流体の層で覆われた15cm×15cmのリチウム箔サンプルを、21℃で1%未満の比湿度、無水雰囲気を有するグローブボックス内に配置し、5分間乾燥させた。5分後、リチウム箔サンプルを視覚的に検査した。リチウム箔の表面の外観は良好であり、つまりリチウムは着色がなく光沢があり、ヘキサメチルジシロキサン流体と反応しなかったことを示唆している。また、リチウム箔の表面は完全に乾燥しており、ヘキサメチルジシロキサンが完全に蒸発してリチウム箔の表面に潤滑剤が残留していないことを示唆している。
【0028】
次いで、ヘキサメチルジシロキサン流体に対して、図1に示す薄化装置10によって生成されるせん断力および圧縮強度の下での潤滑品質を試験した。潤滑剤分注ユニット22aおよび22bに連結された貯蔵器にヘキサメチルジシロキサン流体を充填した。厚さ200μmを有する事前に押出されたリチウムシート14のロール24を供給ローラ26に装着し、ローラ28、41および43、ならびにストレートナ30を通して巻出し、作業ローラ18aおよび18bへと供給した。光学リフラクトリシステム36、ローラ45、47および34を通してリチウムシート14を巻取り、リチウムシートの端部を巻取ローラ38に固定し、ポロプロピレン膜90を装着することによってセットアップが完了する。
【0029】
作業ローラ18aおよび18bは、押出リチウムシート14の厚さが200μmから100μm未満まで低減されるように調節される。リチウムシート14の薄化試験運転は、1%未満の比湿度を含有する無水雰囲気で、潤滑剤分注ユニット22aおよび22bを介して各々の作業ローラ18aおよび18bの作業表面上にヘキサメチルジシロキサン潤滑剤流体を従来技術の潤滑剤の1/4.5少ない割合で吐出して実施する。
【0030】
最初の薄化試験は、作業ローラ18aおよび18bの温度が30秒後に上昇するとすぐにヘキサメチルジシロキサン潤滑剤流体が極めて高速に蒸発し、この高速蒸発が作業ローラ18aおよび18bの表面に潤滑されていない部分を残し、薄化された膜12が部分的に作業ローラ18aおよび18bに接着したことを示した。この高速蒸発を緩和するために、分注ユニット22aおよび22bの潤滑剤を、従来技術の潤滑剤の1/4.5少ない量から、作業ローラ18aおよび18bの表面全体が潤滑され、薄化された膜12が作業ローラ18aおよび18bに部分的に接着しない点である従来技術の潤滑剤の1/3.25少ない量まで徐々に増加させた。
【0031】
薄化試験運転は、従来技術の潤滑剤の1/3.25少ない潤滑剤が与えられた作業ローラ18aおよび18b上に薄化された膜12が不要に接着することはなく、薄化リチウム膜12の表面の平坦性を測定する光学リフラクトリシステム36が穴や亀裂のない滑らかで平坦な表面を示したという結果となった。ヘキサメチルジシロキサンが薄化リチウム膜12の表面上に残留しているか否かを判断するために巻き取られた薄化リチウム膜12を分析すると、完全に乾燥したことがわかり、薄化リチウム膜12がローラ45、47および34を通って蛇行し、巻取ローラ38に巻き取られる前にヘキサメチルジシロキサンが完全に蒸発したことを示唆する。
【0032】
薄化試験運転は、ヘキサメチルジシロキサン潤滑剤流体が、押出リチウムシートをリチウム薄膜へと薄化するために十分な潤滑性を提供するために必要な物理的品質を有し、さらに必要とされるヘキサメチルジシロキサン潤滑剤流体の量が従来の潤滑剤の1/3.25少ない量であったことを実証した。また、グローブボックス内での静試験は、ヘキサメチルジシロキサン潤滑剤流体がリチウム膜の表面と反応しないことを示し、リチウムとともに使用するために必要な化学的品質を有することを実証した。
【0033】
25℃で1.0センチストロークの粘度(水の粘度)を有するオクタメチルトリシロキサン(C24Si)を用いて別の試験を実施した。オクタメチルトリシロキサンもまた無色透明であり、基本的に無臭の流体である。また、その優れた展延および高い揮発特性のため、数多くのパーソナルケア製品におけるベース流体として典型的に使用されている。このように、オクタメチルトリシロキサンは、取扱いが安全である。オクタメチルトリシロキサンは、速い揮発速度、低いVTC(温度による粘度変化)、低い表面張力、高い圧縮性および高い展延性を有する。これらの特徴により、オクタメチルトリシロキサンもまた、リチウムシートをリチウム膜へと薄化するための潤滑剤としての優れた候補となる。
【0034】
最初に、オクタメチルトリシロキサン流体の層を、リチウム箔のサンプルの表面上に広げ、リチウムがオクタメチルトリシロキサン流体と反応するか否かを判断し、また、オクタメチルトリシロキサン流体の蒸発速度を評価し、オクタメチルトリシロキサンが完全に蒸発してリチウム箔表面に潤滑剤が残らないか否かを判断した。
【0035】
オクタメチルトリシロキサン流体の層で覆われた15cm×15cmのリチウム箔サンプルを、21℃で1%未満の比湿度、無水雰囲気を有するグローブボックス内に配置し、5分間乾燥させた。5分後、リチウム箔サンプルを視覚的に検査した。リチウム箔の表面の外観は良好であり、つまりリチウムは着色がなく光沢があり、オクタメチルトリシロキサン流体と反応しなかったことを示唆している。また、リチウム箔の表面は完全に乾燥しており、オクタメチルトリシロキサンが完全に蒸発してリチウム箔の表面に潤滑剤が残留していないことを示唆している。
【0036】
次いで、ヘキサメチルジシロキサン流体に関して先に記載したものと同様の方法で、オクタメチルトリシロキサン流体に対して、図1に示す薄化装置10によって生成されるせん断力および圧縮強度の下での潤滑品質を試験した。潤滑剤分注ユニット22aおよび22bに連結された貯蔵器にオクタメチルトリシロキサン流体を充填した。厚さ200μmを有する事前に押出されたリチウムシート14のロール24を供給ローラ26に装着し、ローラ28、41および43、ならびにストレートナ30を通して巻出し、作業ローラ18aおよび18bへと供給した。光学リフラクトリシステム36、ローラ45、47および34を通してリチウムシート14を巻取り、リチウムシートの端部を巻取ローラ38に固定し、ポロプロピレン膜90を装着することによってセットアップが完了する。
【0037】
作業ローラ18aおよび18bは、押出リチウムシート14の厚さが200μmから100μm未満まで低減されるように調節される。リチウムシート14の薄化試験運転は、1%未満の比湿度を含有する無水雰囲気で、潤滑剤分注ユニット22aおよび22bを介して各々の作業ローラ18aおよび18bの作業表面上にオクタメチルトリシロキサン潤滑剤流体を従来技術の潤滑剤の1/4.5少ない割合で吐出して実施する。
【0038】
最初の薄化試験は、作業ローラ18aおよび18bの温度が30秒後に上昇するとすぐにヘキサメチルジシロキサン潤滑剤流体もまた極めて高速に蒸発し、この高速蒸発が作業ローラ18aおよび18bの表面に潤滑されていない部分を残し、薄化された膜12が部分的に作業ローラ18aおよび18bに接着したことを示した。この高速蒸発を緩和するために、分注ユニット22aおよび22bの潤滑剤を、従来技術の潤滑剤の1/4.5少ない量から、作業ローラ18aおよび18bの表面全体が潤滑され、薄化された膜12が作業ローラ18aおよび18bに部分的に接着しない点である従来技術の潤滑剤の1/3.5少ない量まで徐々に増加させた。
【0039】
薄化試験運転は、従来技術の潤滑剤の1/3.5少ない潤滑剤が与えられた作業ローラ18aおよび18b上に薄化された膜12が不要に接着することはなく、薄化リチウム膜12の表面の平坦性を測定する光学リフラクトリシステム36が穴や亀裂のない滑らかで平坦な表面を示したという結果となった。オクタメチルトリシロキサンが薄化リチウム膜12の表面上に残留しているか否かを判断するために巻き取られた薄化リチウム膜12を分析すると、完全に乾燥したことがわかり、薄化リチウム膜12がローラ45、47および34を通って蛇行し、巻取ローラ38に巻き取られる前にオクタメチルトリシロキサンが完全に蒸発したことを示唆する。
【0040】
薄化試験運転は、オクタメチルトリシロキサン潤滑剤流体が、押出リチウムシートをリチウム薄膜へと薄化するために十分な潤滑性を提供するために必要な物理的品質を有し、さらに必要とされるオクタメチルトリシロキサン潤滑剤流体の量が従来の潤滑剤の1/3.5少ない量であったことを実証した。また、グローブボックス内での静試験は、オクタメチルトリシロキサン潤滑剤流体がリチウム膜の表面と反応しないことを示し、リチウムとともに使用するために必要な化学的品質を有することを実証した。
【0041】
25℃で1.5センチストロークの粘度を有するデカメチルテトラシロキサン(C1030Si)を用いて新たな試験を実施した。デカメチルテトラシロキサンもまた無色透明であり、基本的に無臭の流体である。また、その優れた展延および高い揮発特性のため、制汗剤、デオドラント、スキンケアローション、日焼け用ローションおよび一般的な化粧品など、数多くのパーソナルケア製品におけるベース流体として典型的に使用されている。このように、デカメチルテトラシロキサンは、取扱いが安全である。デカメチルテトラシロキサンは、速い揮発速度、優れた低温安定性、低いVTC(温度による粘度変化)、低い表面張力、高い圧縮性および高い展延性を有する。これらの特徴により、デカメチルテトラシロキサンもまた、リチウムシートをリチウム膜へと薄化するための潤滑剤としての優れた候補となる。
【0042】
最初に、デカメチルテトラシロキサン流体の層を、リチウム箔のサンプルの表面上に広げ、リチウムがデカメチルテトラシロキサン流体と反応するか否かを判断し、また、デカメチルテトラシロキサン流体の蒸発速度を評価し、デカメチルテトラシロキサンが完全に蒸発してリチウム箔表面に潤滑剤が残らないか否かを判断した。
【0043】
デカメチルテトラシロキサン流体の層で覆われた15cm×15cmのリチウム箔サンプルを、21℃で1%未満の比湿度、無水雰囲気を有するグローブボックス内に配置し、5分間乾燥させた。5分後、リチウム箔サンプルを視覚的に検査した。リチウム箔の表面の外観は良好であり、つまりリチウムは着色がなく光沢があり、デカメチルテトラシロキサン流体と反応しなかったことを示唆している。また、リチウム箔の表面は完全に乾燥しており、デカメチルテトラシロキサンが完全に蒸発してリチウム箔の表面に潤滑剤が残留していないことを示唆している。
【0044】
次いで、ヘキサメチルジシロキサンおよびオクタメチルトリシロキサン流体に関して先に記載したものと同様の方法で、デカメチルテトラシロキサン流体に対して、図1に示す薄化装置10によって生成されるせん断力および圧縮強度の下での潤滑品質を試験した。潤滑剤分注ユニット22aおよび22bに連結された貯蔵器にデカメチルテトラシロキサン流体を充填した。厚さ200μmを有する事前に押出されたリチウムシート14のロール24を供給ローラ26に装着し、ローラ28、41および43、ならびにストレートナ30を通して巻出し、作業ローラ18aおよび18bへと供給した。光学リフラクトリシステム36、ローラ45、47および34を通してリチウムシート14を巻取り、リチウムシートの端部を巻取ローラ38に固定し、ポロプロピレン膜90を装着することによってセットアップが完了する。
【0045】
作業ローラ18aおよび18bは、押出リチウムシート14の厚さが200μmから100μm未満まで低減されるように調節される。リチウムシート14の薄化試験運転は、1%未満の比湿度を含有する無水雰囲気で、潤滑剤分注ユニット22aおよび22bを介して各々の作業ローラ18aおよび18bの作業表面上にデカメチルテトラシロキサン潤滑剤流体を従来技術の潤滑剤の1/4.5少ない割合で吐出して実施する。
【0046】
薄化試験運転は、従来技術の潤滑剤の1/4.5少ない潤滑剤が与えられた作業ローラ18aおよび18b上に薄化された膜12が不要に接着することはなく、薄化リチウム膜12の表面の平坦性を測定する光学リフラクトリシステム36が穴や亀裂のない滑らかで平坦な表面を示したという結果となった。デカメチルテトラシロキサンが薄化リチウム膜12の表面上に残留しているか否かを判断するために巻き取られた薄化リチウム膜12を分析すると、完全に乾燥したことがわかり、薄化リチウム膜12がローラ45、47および34を通って蛇行し、巻取ローラ38に巻き取られる前にデカメチルテトラシロキサンが完全に蒸発したことを示唆する。
【0047】
薄化試験運転は、デカメチルテトラシロキサン潤滑剤流体が、押出リチウムシートをリチウム薄膜へと薄化するために十分な潤滑性を提供するために必要な物理的品質を有し、さらに必要とされるデカメチルテトラシロキサン潤滑剤流体の量が従来の潤滑剤の1/4.5少ない量であったことを実証した。また、グローブボックス内での静試験は、デカメチルテトラシロキサン潤滑剤流体がリチウム膜の表面と反応しないことを示し、リチウムとともに使用するために必要な化学的品質を有することを実証した。
【0048】
25℃で2.0センチストロークの粘度を有するドデカメチルヘキサシロキサン(C1236Si)を用いてさらなる試験を実施した。ドデカメチルヘキサシロキサンもまた無色透明であり、基本的に無臭の流体である。また、その優れた展延および高い揮発特性のため、制汗剤、デオドラント、スキンケアローション、日焼け用ローションおよび一般的な化粧品など、数多くのパーソナルケア製品におけるベース流体として典型的に使用されている。このように、ドデカメチルヘキサシロキサンは、取扱いが安全である。ドデカメチルヘキサシロキサンは、速い揮発速度、低いVTC(温度による粘度変化)、低い表面張力、高い圧縮性および高い展延性を有する。これらの特徴により、ドデカメチルヘキサシロキサンもまた、リチウムシートをリチウム膜へと薄化するための潤滑剤としての優れた候補となる。
【0049】
最初に、ドデカメチルヘキサシロキサン流体の層を、リチウム箔のサンプルの表面上に広げ、リチウムがドデカメチルヘキサシロキサン流体と反応するか否かを判断し、また、ドデカメチルヘキサシロキサン流体の蒸発速度を評価し、ドデカメチルヘキサシロキサンが完全に蒸発してリチウム箔表面に潤滑剤が残らないか否かを判断した。
【0050】
ドデカメチルヘキサシロキサン流体の層で覆われた15cm×15cmのリチウム箔サンプルを、21℃で1%未満の比湿度、無水雰囲気を有するグローブボックス内に配置し、5分間乾燥させた。5分後、リチウム箔サンプルを視覚的に検査した。リチウム箔の表面の外観は良好であり、つまりリチウムは着色がなく光沢があり、ドデカメチルヘキサシロキサン流体と反応しなかったことを示唆している。また、リチウム箔の表面は完全に乾燥しており、ドデカメチルヘキサシロキサンが完全に蒸発してリチウム箔の表面に潤滑剤が残留していないことを示唆している。
【0051】
次いで、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンおよびデカメチルテトラシロキサン流体に関して先に記載したものと同様の方法で、ドデカメチルヘキサシロキサン流体に対して、図1に示す薄化装置10によって生成されるせん断力および圧縮強度の下での潤滑品質を試験した。潤滑剤分注ユニット22aおよび22bに連結された貯蔵器にドデカメチルヘキサシロキサン流体を充填した。厚さ200μmを有する事前に押出されたリチウムシート14のロール24を供給ローラ26に装着し、ローラ28、41および43、ならびにストレートナ30を通して巻出し、作業ローラ18aおよび18bへと供給した。光学リフラクトリシステム36、ローラ45、47および34を通してリチウムシート14を巻取り、リチウムシートの端部を巻取ローラ38に固定し、ポロプロピレン膜90を装着することによってセットアップが完了する。
【0052】
作業ローラ18aおよび18bは、押出リチウムシート14の厚さが200μmから100μm未満まで低減されるように調節される。リチウムシート14の薄化試験運転は、1%未満の比湿度を含有する無水雰囲気で、潤滑剤分注ユニット22aおよび22bを介して各々の作業ローラ18aおよび18bの作業表面上にドデカメチルヘキサシロキサン潤滑剤流体を従来技術の潤滑剤の1/4.5少ない割合で吐出して実施する。
【0053】
薄化試験運転は、従来技術の潤滑剤の1/4.5少ない潤滑剤が与えられた作業ローラ18aおよび18b上に薄化された膜12が不要に接着することはなく、薄化リチウム膜12の表面の平坦性を測定する光学リフラクトリシステム36が穴や亀裂のない滑らかで平坦な表面を示したという結果となった。ドデカメチルヘキサシロキサンが薄化リチウム膜12の表面上に残留しているか否かを判断するために巻き取られた薄化リチウム膜12を分析すると、完全に乾燥したことがわかり、薄化リチウム膜12がローラ45、47および34を通って蛇行し、巻取ローラ38に巻き取られる前にドデカメチルヘキサシロキサンが完全に蒸発したことを示唆する。
【0054】
薄化試験運転は、ドデカメチルヘキサシロキサン潤滑剤流体が、押出リチウムシートをリチウム薄膜へと薄化するために十分な潤滑性を提供するために必要な物理的品質を有し、さらに必要とされるドデカメチルヘキサシロキサン潤滑剤流体の量が従来の潤滑剤の4.5倍少ない量であったことを実証した。また、グローブボックス内での静試験は、ドデカメチルヘキサシロキサン潤滑剤流体がリチウム膜の表面と反応しないことを示し、リチウムとともに使用するために必要な化学的品質を有することを実証した。
【0055】
上述のように薄化されたリチウム膜の各々のサンプルをラボセルのアノードとして使用してラボセルを調製した。ラボセルの各々は、揮発性メチルシロキサン潤滑剤の1つを使用して薄化された100μm未満の厚さを有するリチウム膜と、エチレンオキシドおよびメチルグリシジルエーテルのコポリマーならびにリチウム塩から成るポリマー電解質と、炭素化リン酸鉄リチウム(C−LiFePO)および同一のポリマー電解質からなる複合カソードとで調製した。ラボセルの60℃での初期インピーダンスは、溶媒およびポリオキシエチレンジステアレートの混合物から成る従来技術の潤滑剤を使用して薄化された100μm未満の厚さを有するリチウムアノードを備えたラボセルと同等である。
【0056】
先に説明した揮発性メチルシロキサン潤滑剤を使用して薄化したリチウム膜をアノードとして利用したこれらのラボセルのサイクル特性は100サイクル後に良好であり、ラボセルの利用率は従来技術の潤滑剤を使用した薄化したリチウム膜で調製した同様のラボセルと同等であった。ラボセル試験は、潤滑剤として上述の揮発性メチルシロキサンの1つを使用して薄化したリチウム膜が、従来技術の潤滑剤を使用して薄化したリチウム膜と同様に機能することを確認した。
【0057】
リチウム薄膜または薄箔は、電池の分野において主に使用されているが、エレクトロニクス、医療用ペースメーカー、宇宙航空業界および中性子検出器などの特別な科学装置の分野においても応用が見出される。
【0058】
上記の本発明の実施形態の修正および改良もまた当業者に明らかである。前述の記載は、限定ではなく例示目的とするものである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
10 薄化装置
12 リチウムまたはリチウム合金薄膜
14 リチウムまたはリチウム合金シート
18a、18b 作業ローラ
22a、22b 潤滑剤分注ユニット
図1