(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)(本明細書では有機LED(OLED)も包含する)は、電気エネルギーを可視光(波長:約400〜750nm)を含む電磁放射に変換する固体半導体デバイスである。LEDは、一般に、pn接合を形成するために不純物を添加した半導体材料のチップ(ダイ)を含む。LEDチップはアノード及びカソードと電気的に接続され、多くの場合、アノード及びカソードはともにLEDパッケージの内部に実装される。LEDが放出する可視光は、白熱電球や蛍光灯等の他のランプに比べて指向性が高く、ビーム幅が狭い。
【0003】
OLEDは、一般に、電極間(1以上の電極は透明である)に設けられる1以上のエレクトロルミネセンス発光層(有機半導体の膜)を含む。エレクトロルミネセンス発光層は、電極間を流れる電流に応答して光を放射する。
【0004】
LED/OLED光源(ランプ)は、従来の白熱電球及び蛍光灯よりも多様な利点をもたらす。かかる利点の例として、期待寿命がより長い、エネルギー効率がより高い、最終輝度に達するのに安定化時間を必要としない、等が挙げられる。ただし、これらには限定されない。
【0005】
LED/OLED照明は効率、長寿命、柔軟性その他の好ましい側面に関して魅力的であるが、一般照明及びディスプレイ用途の両方での利用に関して、LED照明の(特に、白色LED/OLEDデバイスにおける)色特性を絶えず改善することが依然として必要とされている。
【0006】
図1は、エリア照明用途に好適な従来のLED系照明装置10の斜視図である。照明装置(「照明ユニット」又は「ランプ」ともいいうる)10は、透明又は半透明のカバーもしくは外囲器12と、ねじ込み式口金14と、外囲器12と口金14との間のハウジングもしくは基部16とを備えている。
【0007】
LED光源(図示せず)は、複数のLEDデバイスを含むLEDアレイとすることができ、LEDアレイは外囲器12の下端及び隣接する基部16に設けられうる。LEDデバイスは狭い帯域の波長(例えば、緑、青、赤等)で可視光を放射することから、白色光を含む様々な色の光を発生させるために、様々なLEDデバイスをLEDランプ内で組合せて用いることがよく行われる。或いは、実質的に白色に見える光は、青色LEDからの光と、青色LEDの青色光の少なくとも一部を異なる色に変換する蛍光体(例えば、イットリウムアルミニウムガーネット:セリウム、YAG:Ceと略す)からの光とを組合せることによって生成し得る。変換された光と青色光とを組合せることで、白色又は実質的に白色に見える光を発生させることができる。LEDデバイスは基部16内部の搭載部に実装することができ、保護カバーによって搭載部上に封入することができる。LEDデバイスからの可視光抽出効率を高めるために、保護カバーは屈折率整合材料を含む。
【0008】
照明装置10が可視光をほぼ全方向に放射する能力を高めるため、
図1に示す外囲器12は、実質的に回転楕円形又は楕円形であってもよい。ほぼ全方向に向けて照射する能力をさらに高めるため、外囲器12は、外囲器12をディフューザーとして機能させることのできる材料を含んでいてもよい。ディフューザーとするために使用される材料は、ポリアミド(例えば、ナイロン)、ポリカーボネート(PC)、又はポリプロピレン(PP)等を含んでいてもよい。光の屈折を強め、それによって反射性の白色外観を得るために、これらのポリマー材料はSiO
2を含んでいてもよい。外囲器12の内面に、蛍光体組成物を含む皮膜(図示せず)を設けてもよい。
【0009】
異なるLEDデバイス及び/又は蛍光体の組合せを用いることにより、白色光効果を生成するLEDランプの能力を高めることができる。しかし、その代替方法として、又は追加的方法として、LEDデバイスによって生成される白色光の色特性を向上させる他のアプローチが望ましい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
照明装置等の新規の装置が本明細書において示される。装置は、白色光等の可視光を発生するように構成された1以上のLED(又はOLED)モジュールと、ネオジム(Nd)及びフッ素(F)の元素を含有し、さらに1種以上の他の元素を適宜含む化合物、を含む1以上の構成要素(例えば、光学素子)とを備える。照明装置は、発生した可視光を化合物を用いてフィルタリングすることによって所望の光スペクトルを与えるように構成される。これについては本明細書に記載するとおりである。一般に、化合物はNd
3+イオン及び
F-イオンを含む。本発明では、「Nd・F化合物」は、ネオジムとフッ化物、並びに任意選択において他の元素、を含む化合物を含むものとして広義に解釈するべきである。
【0024】
一実施形態によると、構成要素は、LED(OLED)チップの表面上に複合材/封止層を含んでいてもよく、NdF
3等のNd・F化合物及び/又は本明細書に開示される他の材料を(例えば、蛍光体とともに)封止層に混合(拡散)でき、それによって好ましい可視光吸収プロファイルが実現するようにする。複合材/封止層は、低温ガラス、ポリマー、ポリマー前駆体、シリコーンもしくはシリコーンエポキシ樹脂もしくは前駆体等を用いて形成されうる。
【0025】
別の実施形態によると、光学素子は、透明、半透明、反射性、又は半透過性(部分的に反射性かつ透過性)の基材であってもよい。LEDモジュールによって生成される可視光がこの光学素子を通過する間、基材の表面上に備わる皮膜が、可視光に対してカラーフィルタリング効果を及ぼすことができ、それにより、例えば、黄色光の波長域にある可視光を例えば約560nm〜約600nmの波長に対してフィルタリングすることができる。
【0026】
また、光学素子の透明又は半透明の基材は、電球、レンズ及び1以上のLEDチップを封入する外囲容器等のディフューザーであってもよい。さらに、基材は反射性基材であってもよく、ときLEDチップは基材の外側に配置することができる。Nd・F及び/又はNd・X・F化合物の皮膜は基材の表面上に配置しえ、皮膜の厚さはカラーフィルタリング効果を実現するのに十分なものであるとする。厚さは一般に約50nmから1000μmであってもよく、好ましい厚さは100nm〜500μmであってもよい。
【0027】
得られるデバイスは、Nd・F化合物/材料によるフィルタリングを用いて光パラメータの改善を示すことができる。化合物/材料は約530nm〜600nmの可視領域に固有吸収を有し、それによって、CSI(彩度指数:color saturation index)、CRI(演色評価数)、R9(ある特定のカラーチップに対する演色値)、「顕現度(revealness)」(当業者がLPI(照明選好指数)を指すと解する演色指標)等の少なくとも1種類を改善する。R9は、CRIの計算に用いられない6つの飽和試験色の1つと定義される。「顕現度」はLPIの一形態に基づく放射光のパラメータである。これについては、2014年9月9日に出願された、同時係属、共同所有の国際出願PCT/US2014/054868号明細書(2015年3月12日にWO2015/035425として公開された)に記載されている。同特許出願は関連部分において本明細書に援用される。
【0028】
一実施形態では、LEDパッケージ及びCOBアレイにおける散乱損失を低減するために、屈折率(RI)が比較的低いNd・F材料(例えば、屈折率が1.6前後のNdF
3)を用いて封止材料の屈折率と整合させると好都合である。また、Nd・X・F材料中に電気的に陰性の「X」原子(ただし、Xは例えばO、N、S、又はCl等とすることができる)を含めることによって吸収スペクトルを微調整し、それによって、580nm前後における吸収幅を広げ、R9カラーチップの演色性を高めることが可能になればさらに好都合である。色調整にあたってはのうちの任意のものを封止材料に混合し得る。適切なNd・F又はNd・X・F材料(詳しい定義は下で行う)の選択においては屈折率の不一致による散乱損失が最小となるように行うとよい。Nd・F化合物の使用は、短いUV波長を含むLED照明用途に用いるのにも好都合であってもよい。これは、Nd・F化合物が一般に約380から450nmの波長域で活性化されないことによる。
【0029】
別の実施形態によると、Nd・F化合物は、フッ化ネオジム(NdF
3)、又はオキシフッ化ネオジム(例えば、NdO
xF
y(式中、2x+y=3)、例えばNd
4O
3F
6)、又は外来的な水及び/又は酸素を含むフッ化ネオジム、又は水酸化フッ化ネオジム(例えば、Nd(OH)
aF
b。ただし、a+b=3)、又は、ネオジム及びフッ化物を含む多くの他の化合物であって、以下の説明から容易に明らかになるもの、を含んでいてもよい。いくつかの用途では、低損失混合物を提供するために、Nd・F化合物は、比較的低い屈折率(例えば、選択したポリマー材料と整合する屈折率)を有し得る。かかるNd・F材料の1つは、フッ化ネオジム(NdF
3)だと考えられる。その屈折率は1.6前後であり、散乱損失を最小化するにあたり、ある種のポリマーマトリックス材料との屈折率整合にとって好適に低い屈折率を実現する。
【0030】
さらに別の実施形態によると、本明細書に記載する利点をもたらすために他のNd・F化合物/材料が使用できる。例えば、Nd・Fを含む他の化合物の非限定的な例として、Nd・X・F化合物が挙げられうる。XがO、N、S、又はCl等とすることができるというの説明に加え、Xは、フッ素と化合物を形成できる(Nd以外の)少なくとも1種類の金属元素とすることができる。例として次のものが挙げられる:Na、K、Al、Mg、Li、Ca、Sr、Ba、又はY等の金属元素、又はかかる元素の組合せ。例えば、Nd・X・F化合物はNaNdF
4を含んでいてもよい。Nd・X・F化合物のさらなる例として、XがMg及びCaである、或いはMg、Ca及びOである化合物、さらにはNd・Fを含む他の化合物(ネオジムをドープしたペロブスカイト構造体を含む)が挙げられうる。一部のNd・X・F化合物は、好都合にも、約580nmの波長においてより幅広い吸収を可能にし得る。オキシフッ化ネオジム化合物は様々な量のO及びFを含有し得る(これは、オキシフッ化ネオジム化合物が一般に様々な量の酸化ネオジム(ネオジミア)Nd
2O
3及びフッ化ネオジムNdF
3から誘導されることによる)ため、オキシフッ化ネオジム化合物は、Nd・O化合物の屈折率(例えば、ネオジミアは1.8)とNd・F化合物の屈折率(例えば、NdF
3は1.60)との間で選択した屈折率を有し得る。ネオジムをドープしたペロブスカイト構造体材料の非限定的な例として、ネオジム化合物(例えば、NdF
3)よりも屈折率が低い少なくとも1種類の成分(例えば、Na、K、Al、Mg、Li、Ca、Sr、Ba及びYの金属フッ化物)を含むもの、を挙げることができる。かかる「ホスト」化合物は可視光スペクトルにおいてNdF
3より低い屈折率を有し得る。その非限定的な例として、589nmの波長におけるNaF(n=1.32)、KF(n=1.36)、AlF
3(n=1.36)、MgF
2(n=1.38)、LiF(n=1.39)、CaF
2(n=1.44)、SrF
2(n=1.44)、BaF
2(n=1.48)及びYF
3(n=1.50)が挙げられうる。高屈折率のNd・F化合物(例えば、NdF
3)をドープする結果、ドープして得られるペロブスカイト構造体化合物の屈折率をホストの屈折率(例えば、MgF
2の1.38)とNdF
3の屈折率(1.60)との間の値にすることができる。NdF
3をドープした金属フッ化物化合物の屈折率は、Ndイオンと金属イオンの比に依存することになる。
【0031】
NdF
3の屈折率は約1.60である。したがって、NdF
3は、比較的良好な屈折率整合を与える、シリコーン(1.51前後の屈折率を有し得る)との混合物を実現すると時々見なされうる。NdF
3を別の材料と混合することによってさらに優れた屈折率整合が得られうる。その材料はNdを含有してもいいし、しなくてもよい。例えば、NaNdF
4の屈折率は1.46前後である。したがって、NdF
3を別の材料(例えば、NaF又はNaNdF
4)と適切に混合することで、混合物の屈折率をシリコーンの屈折率とさらによく整合させることができる。
【0032】
図2は、シリコーン中に分散するフッ化ネオジムの可視スペクトルにおける吸収(曲線22)と、標準的なネオジムガラス(例えば、Ndガラスの組成としてNa
2O・Nd
2O
3・CaO・MgO・Al
2O
3・K
2O・B
2O
3・SiO
2を使用)のそれ(曲線20)とを、波長の関数として比較するグラフである。それぞれの材料が(特に黄色の領域(例えば、約570nm〜約590nm)において)同じ吸収特徴の多くを共有することが重要である。実用時には、LEDチップ/ダイを封止材(例えば、シリコーン、エポキシ、アクリル樹脂等)で封止し得る。封止材は、LEDチップ上、又はLEDチップのアレイ(例えば、チップオンボードアレイ、COBアレイ)上、に直接堆積したシリコーン中に、Nd・F又はNd・F・Oベースの材料(例えば、NdF
3)を含んでいてもよい。これについては本明細書中でさらに詳細に説明している。
【0033】
図3は、シリコーン中にNdF
3を添加して市販のLEDパッケージ(日亜757)上に直接堆積した(すなわち、LEDパッケージをさらに封止した)素子の発光スペクトル(曲線32)を比較するグラフである。
図3からわかるように、スペクトルにはかなりの違いがある。具体的には、ベースとなる日亜757LEDの発光スペクトル(曲線30)と比べ、約570nm〜約590nmの領域に大きく落ち込む領域が1以上、見られる。
【0034】
図4は、シリコーン中にNdF
3を添加してCOBアレイ(TG66)上に直接堆積した素子の発光スペクトル(曲線42)と、ベースとなるTG66 COBアレイのそれ(曲線40)とを波長の関数として比較するグラフである。曲線42のスペクトルは
図3の曲線32に類似している。
【0035】
の例は、Nd・F材料(例えば、NdF
3)を封止材料の一部としてLEDパッケージ又はアレイに使用したときに、それが次に示す照明指標の少なくとも1つを高めるうえでカラーフィルタリング吸光材料として有用であることを証明している:CSI、CRI、R9、又は白色度(すなわち、白体放射軌跡との近さ)等。下の表1は、
図3及び
図4に挙げた例に対して得られる性能を、Ndガラスを含む従来のLEDと比較して示したものである。
【0036】
【表1】
表1.
図3及び
図4に示す性能結果とNdガラスを有する従来のLEDとの比較
上の表1からわかるように、日亜757のLEDデバイスは概して236のルーメン/ワット値を有する。シリコーン中の封止材としてNdF
3を使用すると、CRI(演色/彩度評価数)は92、R9(赤色チップの演色値)は60の値、色域指数(GAI)は49、放射光のLPIに基づく顕現度(本発明で定義するもの)は110である。LEDチップのTG66アレイ(COBアレイ)をNdF
3含有のシリコーン中に封止する場合、CRIは90、R9値は39、GAIは50、「顕現度」は同じく110である。これらの値は、表1の最下行に示す、白色LEDをNdガラスと組合せたときのカラーフィルタリング効果よりも好ましい。3つのケースすべてについて、色度座標(CCXとCCY)及びCCT(相関色温度)の値を参考として示している。
【0037】
Nd・F材料は、
図3及び
図4の例のように単にフッ化ネオジム(NdF
3)である必要はない。Nd・F材料は任意のNd・X・F化合物であってもよい(ここに、Xは上述した他の元素もしくは元素の組合せを表し、化学的にFと結合している)。ように、かかるNd・X・F材料は、次に示す照明指標の少なくとも1つを高めうる:CSI、CRI、R9、白色度(すなわち、白体放射軌跡との近さ)等。
【0038】
例えば、
図5は、シリコーン中にNd・F・Oを添加して市販のLEDパッケージ(CCTが4000Kの日亜757)上に直接堆積し、LEDパッケージをさらに封止した素子の発光スペクトル(曲線52)を波長の関数として比較するグラフである。
図3及び
図4の例と同様、ベースとなる日亜757LEDの発光スペクトル(曲線50)と比べ、スペクトル52には、約570nmと約590nmとの間の区間において大きく落ち込む領域が1以上、見られる。
【0039】
下の表2は、
図5に挙げた例に対して得られる性能を、シリコーンにNd・F・Oを添加して市販のLEDパッケージ(CCTが4000Kの日亜757)上に直接堆積した素子について示したものである。シリコーン封止材を有する従来のLED(CCTが4000Kの日亜757)、並びにネオジミア(Nd
2O
3)及びフッ化ネオジム(NdF
3)をドープした他種類のシリコーン封止材を有する素子についても、比較のために示してある。表2は、表1と同様のパラメータに加え、CSI(彩度指数)パラメータも材料について示している。
【0040】
【表2】
表2.各種Ndベース材料をドープしたシリコーン封止材とドーピングのないシリコーン封止材とを有するLEDの性能結果の比較
Nd
2O
3は他より屈折率が高いため、散乱損失もNdFOとNdF
3のいずれか一方より大きくなるだろうことが留意される。しかし、CSIとLPIのバランスの面ではNdFOのほうが性能が優れている。NdF
3等のNd・F化合物は、単独であれNdFO材料との混合物であれ、Nd
2O
3に比べて屈折率が低く、散乱損失が最小限に抑えられる。さらに、NdF
3等のNd・F化合物は、単独であれNdFO材料との混合物であれ、Nd
2O
3に比べて、LED光のスペクトルに対して望ましい黄色吸収ピークを実現でき、(ルーメン数が低下する欠点があるものの)CSI値が向上する。色度座標(CCXとCCY)、CCT及びCRIの値も4つのすべてのケースについて示している。
【0041】
一部の実施形態では、屈折率を封止材料と整合させて散乱損失を最小化するように、Nd・F材料又はNd・F・O材料又はNd・X・F材料を選択し得る。また、あるNd・F材料(例えば、フッ化ネオジム)を別のNd・X・F材料(例えば、オキシフッ化ネオジム)と混合し得る。Nd・X・F化合物中の元素「X」は、スペクトルを「R9曲線」とよりよく一致させるために、580nm前後の領域における吸収を微調整するように選択し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、Nd・F材料(本明細書に記載するすべてのNd・X・F材料を広く包含する)は、1種類以上のルミネセンス材料(例えば、蛍光体)とともに封止材料に混合し得る。例えば、Nd・Fカラーフィルタリング材料は、黄緑色蛍光体及び/又は赤色蛍光体とともに混合し得る。例えば、Nd・F材料は、CeをドープしたYAG蛍光体及び/又は従来の赤色窒化物蛍光体(例えば、Eu
2+をドープしたCaAlSiN赤色蛍光体)とともに混合し得る。別の例において、Nd・F・O材料をYAG:Ce蛍光体及び赤色窒化物蛍光体とともにシリコーンに混合し、それを用いて日亜757の青色発光LEDを封止することができる。理論に限定されることなく、YAG:Ce蛍光体及び赤色窒化物蛍光体からの発光は、ミー散乱理論により、Nd・F・Oの添加によって向上させうる。
【0043】
図6a〜
図6dは、好ましい可視光吸収・生成特性を実現するために蛍光体とともにNd・F化合物(又は、より一般的には本明細書に記載するようなNd・X・F化合物)をそれぞれ添加した、本発明の様々な実施形態に係る異なるLED照明装置60a、60b、60c及び60dの非限定的な例を示したものである。
図6a〜
図6dにおいて、LED照明装置60a、60b、60c、又は60dはドーム62を備える。ドーム62は、プリント回路基材(PCB)66に実装されるLEDチップ65を封止する、光学的に透明又は半透明の基材とすることができる。リード線は電流をLEDチップ65に供給し、それによって発光を行わせる。LEDチップは任意の半導体光源であってもよく、特に、放出された放射線が蛍光体に当たると白色光を発生できる青色又は紫外光源であってもよい。特に、半導体光源は、約200nm超かつ約550nm未満の発光波長を有し、かつIn
iGa
jAl
kN(ただし、0≦i、0≦j、0≦k、かつi+j+k=1)の形で一般化される窒化物化合物半導体、に基づく青色/紫外線発光LEDであってもよい。より具体的には、LEDチップは、約400〜約500nmのピーク発光波長を有する近紫外又は青色発光LEDであってもよい。さらにより具体的には、LEDチップは、約440から460nmの範囲内のピーク発光波長を有する青色発光LEDであってもよい。かかるLED半導体は当技術分野で公知である。
【0044】
図6aに示す一実施形態によると、ポリマー複合材(封止材化合物)層64aは、好ましい可視光吸収・生成特性を与えるために蛍光体とともに混合される、本明細書に記載する様々な実施形態に係るNd・F化合物(及び/又は、一般にNd・X・F化合物)を含むことができる。化合物層64aは、LEDチップ65の表面上に直接配置し、かつLEDチップに対して放射的に結合することができる。「放射的に結合する」とは、LEDチップからの放射が蛍光体まで透過し、かつ蛍光体が異なる波長の放射を放出することを意味する。ある特定の実施形態では、LEDチップ65は青色LEDであってもよく、ポリマー複合材層はNd・Fと黄緑色蛍光体(例えば、セリウムをドープしたイットリウムアルミニウムガーネット、Ce:YAG)との混合物を含むことができる。LEDチップによって放出された青色光は、ポリマー複合材層の蛍光体によって放出された黄緑色光と混合し、さらにNd・Fによってフィルタリングされ、正味の発光は白色光に見える。ように、LEDチップ65は封止材層64aによって封入されうる。封止材料は低温ガラス、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー又は樹脂、又はシリコーンもしくはエポキシ樹脂であってもよい。LEDチップ65と封止材層64aとは、シェル(ドーム62によって限定される)の内部に封止されうる。或いは、LED照明装置60aは封止材層64aのみを備え、外殻/ドーム62を備えなくてもよい。また、封止材料の中に散乱粒子を埋め込みうる。散乱粒子は、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)、又はチタニア(TiO
2)であってもよい。散乱粒子は、LEDチップから放出された指向性の光を(好ましくは無視できる吸収量で)効果的に散乱させることができる。
【0045】
Nd・F(Nd・X・F)を含むポリマー複合材層をLEDチップの表面に形成するために、ポリマー又はポリマー前駆体(特に、シリコーンもしくはシリコーンエポキシ樹脂、又はその前駆体)中に散乱粒子が分散されうる。かかる材料はLEDパッケージングの分野で周知である。分散混合物は任意の好適な処理によってLEDチップ上に被覆されるが、密度又は粒径が大きい、或いは密度と粒径とがともに大きい粒子ほどLEDチップに近い位置に優先的に定着し、組成が段階的に変化する層が形成される。定着は、ポリマー又は前駆体のコーティング中或いは硬化中に起こりえ、また当技術分野で知られるように、遠心処理によって促進し得る。蛍光体成分によって生成される光がNd・F/Nd・X・F化合物によって適切にフィルタリングされるよう、蛍光体及びNd・F(Nd・X・F)の分散に関するパラメータ(例えば、粒子の密度や粒径及びプロセスパラメータを含む)は、Nd・F(Nd・X・F)化合物よりも蛍光体材料のほうがLEDチップ65に近い位置に来るように選択すればよいことがさらに留意される。
【0046】
図6bに示す代替的な例示的実施形態では、蛍光体層64bが従来のやり方で製造される封止材層であってもよく、Nd・F(Nd・X・F)化合物を有する別個の封止材層68bが、例えば、適切な従来の堆積/粒子分散手法を用いてポリマーもしくはポリマー前駆体内で、蛍光体層64bの上に堆積されうる。
【0047】
図6cに示すさらに別の例示的な実施形態では、ドーム(シェル)62の外面にNd・F/Nd・X・F複合材層68cをコーティングすることができる。被覆した層68bの性能は、
図6bにおける、Nd・F(Nd・X・F)化合物を有する封止材層68bの性能と同様である。或いは、
図6cにおける皮膜68cは、ドーム62の内面上に堆積することができる。ドーム/基材のコーティングに関する実装のさらなる詳細については
図7〜
図10を参照して別途説明する。ドーム62そのものは透明又は半透明にできることが留意される。
【0048】
さらに別の例示的な実施形態では、
図6dに示すように、ドーム62の外面にNd・F/Nd・X・F複合材層/皮膜68dを、またドーム62の内面に蛍光体皮膜層64dをそれぞれ堆積するように、ドーム(シェル)62を用いることができる。アプローチには異なる変形がありうることがさらに留意される。例えば、両皮膜64d及び68dは、蛍光体皮膜64dが皮膜68dよりLEDチップ65に近くなるようにしてドーム62の片面(外面又は内面)に堆積してもよい。また、皮膜64d及び68dは(ドーム62の片面に堆積する場合)、
図6aの封止材化合物層64aと同様のある層と組合せることもできる。
図6dに示す例に対して様々な変形を実現するため、ドーム62そのものを透明、半透明、又は半透過性にできることが留意される。
【0049】
Nd・F及び/又はNd・X・F化合物を含む皮膜を用いて所望のカラーフィルタリング効果を生み出すLED照明装置の非限定的な例を以下にいくつか提示する。
【0050】
図7は、本発明の一実施形態に係る、エリア照明用途に好適なLED照明装置である。LED照明装置(「照明ユニット」又は「ランプ」ともいいうる)は、ほぼ全方向性の照明能力を与えるように構成されうるLEDランプ70である。
図7に示すように、LEDランプ70は、電球72と、口金74と、電球72と口金74との間の基部76と、電球72の外面上の皮膜78とを備えている。皮膜78は、本明細書に記載するNd・F及び/又はNd・X・F化合物を含む。他の実施形態では、電球72の代わりに他の透明又は半透明の基材を用いることができる。或いは、皮膜78は、電球72(透明又は半透明とすることができる)の内面に被覆しうる。
【0051】
図8は、本発明のさらに別の実施形態に係るLED照明装置である。
図8に示すように、LED照明装置はシーリングライト80である(LEDチップは図示せず)。シーリングライト80は、半球型の基材82と、Nd・F及び/又はNd・X・F化合物を含む皮膜88とを備えている。皮膜88は、半球型の基材82の内面上にある。或いは、皮膜88は、半球型の基材82(透明又は半透明とすることができる)の外面にコーティングしてもよい。
【0052】
図9は、本発明のさらに別の実施形態に係るLED照明装置である。
図9に示すようにこのLED照明装置はレンズ90であり、レンズ90は基材92(例えば、平らな基材)を備えている。実施形態では、基材92はその内面及び/又は外面にNd・F及び/又はNd・X・F化合物皮膜(図示せず)を備えている。
【0053】
図10は、本発明のさらに別の一実施形態に係るLED照明装置100である。LED照明装置100は、電球(ドーム)102と、1以上のLEDチップ105と、反射性基材106とを備えている。反射性基材106はLEDチップ105によって発生した可視光を反射するように構成されている。本明細書に記載する一実施形態では、反射性基材106は、所望のフィルタリングを行うためにその外面にNd・F及び/又はNd・X・F化合物皮膜(図示せず)を備えている。
図10において、ドーム(102)は拡散材料で製造することができる。その場合、LEDからの光のうちのある量が透過し、ある量が反射して空洞部に戻される(それらの量はドーム材料の拡散性に左右される)。反射光はドーム102の拡散率に応じて鏡面反射又は拡散反射される。ドーム102からの拡散及び/又は鏡面反射光は、本明細書に記載する実施形態の1つによって被覆した反射性基材106に入射する。或いは、ドーム102は、半反射性材料で製造することによって同じ機能を提供することもできる。
【0054】
Nd
3+イオン及びF・イオンを含む化合物を含む、本明細書に記載する皮膜材料は、光学的散乱(拡散)効果をほとんど有しなくてもいいし、或いは皮膜材料を通過する光に大きな光学的散乱をもたらしてもよい。散乱角を増やすために皮膜は有機又は無機材料の離散粒子を含んでいてもよい。或いは、有機又は無機材料を、Nd・F及び/又はNd・X・F化合物の離散粒子(例えば、一部又は全部がNd・F及び/又はNd・X・F化合物で形成される)でのみ構成する及び/又はNd・F及び/又はNd・X・F化合物の離散粒子(例えば、一部又は全部がNd・F及び/又はNd・X・F化合物で形成される)と少なくとも1種類の他の材料で形成される粒子との混合物で構成する、ことができる。
【0055】
一実施形態では、有機又は無機材料に好適な粒径は約1nm〜約10μmであってもよい。
図7に示すLEDランプ70の場合、LEDランプ70が全方向照明を行えるように散乱角を最大化するために、粒径が300nmよりかなり小さくなるように選択してレイリー散乱の効率を最大化してもよい。
【0056】
限定の意図はないが、Nd・F及び/又はNd・X・F化合物皮膜は、例えば、スプレー塗装、ローラ塗装、メニスカスもしくは浸漬塗装、スタンピング、スクリーン印刷、ディスペンシング、ローリング、はけ塗り、接着、静電塗装、又は均一な厚さの皮膜を実現できる任意の他の方法によって施工し得る。以下に、Nd・F及び/又はNd・X・F化合物皮膜を基材上に形成する方法について3つの非限定的な例を挙げて説明する。
【0057】
一実施形態では、
図7に示すように、皮膜78は接着法を用いて電球72に被覆しうる。LEDランプ70は電球72と皮膜78との間に接合層(図示せず)を含むことができ、接合層は有機接着剤又は無機接着剤を含んでいてもよい。有機接着剤は、エポキシ樹脂、有機シリコーン接着剤、アクリル樹脂等を含むことができる。無機接着剤は、ケイ酸塩無機接着剤、硫酸塩接着剤、リン酸塩接着剤、酸化物接着剤、ホウ酸塩接着剤等を含むことができる。
【0058】
別の実施形態では、
図7に示すように、皮膜78は、スプレー塗装法によって電球72の外面に被覆しうる。初めに、例えば、NdFO及び/又はNdF
3化合物、二酸化ケイ素、分散剤(例えば、Dispex A40)、水及び適宜TiO
2又はAl
2O
3を含む液体混合物を製造する。次に、製造した液体混合物を電球72に吹き付ける。最後に液体混合物を硬化すると、皮膜を備えたLEDランプ70が得られる。
【0059】
一実施形態では、
図7に示すように、皮膜78は、静電塗装法によって電球72の外面に被覆しうる。初めに、例えば、NdFO及び/又はNdF
3化合物、SiO
2及びAl
2O
3で構成される帯電粉末を製造する。次に、粉末を、逆電荷に帯電させた電球72にコーティングする。
【0060】
本発明の他の実施形態では、スプレー塗装法及び静電塗装法は、有機溶媒又は有機化合物を含まない材料を使用し得る。それにより、LED照明装置の耐用年数を延ばし、スルホン化によって一般に生じる変退色を回避することができる。
【0061】
さらに別の実施形態では、皮膜におけるNdF
3又は別のNd
3+イオン源(例えば、Nd・F化合物及びNd・X・F化合物の使用による)の重量百分率は約1%〜約20%の間であってもよい。特定の一実施形態では、皮膜におけるNdF
3又は別のNd
3+イオン源の重量百分率は、約1%〜約10%であってもよい。他の実施形態では、光の屈折を促進して反射性の白色外観を得るために、皮膜は、Nd・F及び/又はNd・X・F化合物よりも屈折率の大きい添加剤をさらに含んでいてもよい。添加剤は、金属酸化物及び非金属酸化物(例えば、TiO
2、SiO
2及びAl
2O
3)から選択することができる。
【0062】
別途定義のないかぎり、本書に使用する科学技術用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。本書に使用する「第1の」「第2の」等の語は、順序、数量、又は重要性のいずれをも示すものではなく、ある要素を別の要素から区別するために用いるものである。また、「a」及び「an」の語は数量の限定を示すものではなく、対象の事物が少なくとも1つ存在することを示している。本書において「含む」、「備える」、又は「有する」の語及びその変形を用いることは、その後に列挙する事物及びその等価物、並びに追加的な事物を包含することを意味する。「接続される」及び「結合される」の語は物理的又は機械的な接続又は結合に限定されず、直接であれ間接であれ、電気的及び光学的な接続又は結合を含むことが可能である。
【0063】
さらに、当業者には、異なる実施形態の様々な特徴を相互に交換できることは明らかであろう。記載した様々な特徴、並びにそれぞれの特徴に対応する他の公知の均等物は、当業者によって混合及び整合されて、本開示の原理に従う追加的なシステム及び方法を構築することが可能である。
【0064】
特許請求の範囲に規定する装置の代替的な実施形態を記載するにあたっては、明確化のために具体的な文言を用いているが、本発明は説明に用いた具体的文言に限定されない。したがって、個々の具体的要素は、同様に動作することによって同様の機能を実現する、すべての技術的等価物を含むことを理解するべきである。
【0065】
のこれまでの記載は説明が目的であり、本発明の範囲を限定するものでないことを理解するべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の範囲によって規定される。以外の実施形態も下記の特許請求の範囲の範囲に含まれる。
【0066】
本書に記載及び規定される様々な非限定的実施形態は、具体的な用途のために別個に、組合せて、又は選択的に組合せて使用されうることが留意される。
【0067】
さらに、の非限定的実施形態の様々な特徴のいくつかを使用すれば、記載される他の特徴をそれに対応して使用しなくても、本発明の利点が得られうる。したがって、のこれまでの記載はあくまでも本発明の原理、教示及び例示的実施形態の説明と見なすべきであり、本発明を限定するものと見なすべきではない。