(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706483
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】ギアードモータおよびギアードモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 7/116 20060101AFI20200601BHJP
H02K 37/14 20060101ALI20200601BHJP
H02K 37/24 20060101ALI20200601BHJP
F16H 1/06 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
H02K7/116
H02K37/14 535X
H02K37/24 R
F16H1/06
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-219019(P2015-219019)
(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2017-93104(P2017-93104A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2018年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】山岡 守
(72)【発明者】
【氏名】相澤 公司
【審査官】
安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−124868(JP,A)
【文献】
特開2007−110817(JP,A)
【文献】
特開2012−062963(JP,A)
【文献】
特開平04−138052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/116
F16H 1/06
H02K 37/14
H02K 37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ本体と、
前記モータ本体のモータ軸線方向の一方側の端部に固定された第1板部、前記第1板部に前記一方側で対向する第2板部、および前記第1板部と前記第2板部とを連結する第3板部を備えたフレームと、
前記第1板部と前記第2板部との間に配置された第1固定軸と、
前記第1固定軸が貫通する軸穴が設けられ、外周部分にモータ軸線方向の他方側から前記一方側に向かって歯車部および螺旋溝が順に設けられている出力部材と、
前記第1板部に前記他方側の軸端部が保持された第2固定軸と、
前記第2固定軸に回転可能に支持され、前記モータ本体の回転軸に固定されたモータピニオンの回転を減速して前記歯車部に伝達する伝達歯車と、
前記第1板部と前記第2板部との間で前記歯車部および前記伝達歯車を覆うように前記フレームに固定され、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部を支持する歯車カバーと、
を有し、
前記第1固定軸は、前記第2板部に形成された貫通穴を通って前記第1板部と前記2板部との間に配置された前記出力部材の前記軸穴に挿入され、
前記第1固定軸の前記他方側の第1軸端部は、前記第1板部に設けられた第1固定軸支持穴に嵌り、前記第1固定軸の前記一方側の第2軸端部が前記貫通穴に嵌った状態で前記第2軸端部と前記第2板部とが固定され、
前記出力部材は、前記歯車部および前記伝達歯車が前記歯車カバーに覆われ、前記螺旋溝が前記歯車カバーから突出した状態で、前記第1板部と前記2板部との間で前記第1固定軸に回転可能に支持されていることを特徴とするギアードモータ。
【請求項2】
前記第1固定軸は、前記モータ本体に対してモータ軸線方向で重なる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のギアードモータ。
【請求項3】
前記第1軸端部は、前記第1固定軸支持穴内の凸部または前記第1固定軸支持穴の底部に当接していることを特徴とする請求項1または2に記載のギアードモータ。
【請求項4】
前記歯車カバーは、前記モータピニオン、前記伝達歯車および前記歯車部を前記一方側
で覆う端板部と、前記歯車部の外周部分を前記伝達歯車とは反対側で覆う側板部と、を備え、
前記端板部には、前記出力部材において前記螺旋溝が設けられている部分を前記一方側に突出させる開口部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のギアードモータ。
【請求項5】
前記端板部には、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部を支持する第2固定軸支持穴が設けられていることを特徴とする請求項4に記載のギアードモータ。
【請求項6】
前記端板部の前記他方側の面には、前記第2固定軸支持穴からモータ軸線に対して交差する方向に延在する凹部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のギアードモータ。
【請求項7】
前記歯車カバーには、モータ軸線方向と交差する方向から前記歯車カバーを前記第1板部と前記第2板部との間に配置したときに前記フレームと係合する係合部が設けられていることを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載のギアードモータ。
【請求項8】
前記出力部材は樹脂製であることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載のギアードモータ。
【請求項9】
前記第2軸端部は、溶接によって前記第2板部に固定されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載のギアードモータ。
【請求項10】
モータ本体と、
前記モータ本体のモータ軸線方向の一方側の端部に固定された第1板部、前記第1板部に前記一方側で対向する第2板部、および前記第1板部と前記第2板部とを連結する第3
板部を備えたフレームと、
前記第1板部と前記第2板部との間に配置された第1固定軸と、
前記第1固定軸が貫通する軸穴が設けられ、外周部分にモータ軸線方向の他方側から前記一方側に向かって歯車部および螺旋溝が順に設けられている出力部材と、
前記第1板部に前記他方側の軸端部が保持された第2固定軸と、
前記第2固定軸に回転可能に支持され、前記モータ本体の回転軸に固定されたモータピニオンの回転を減速して前記歯車部に伝達する伝達歯車と、
を有するギアードモータの製造方法であって、
前記第1板部には、前記第1固定軸の前記他方側の第1軸端部が嵌まる第1固定軸支持穴を設け、前記第2板部には、前記第1固定軸の前記一方側の第2軸端部が嵌まる貫通穴を設けておき、
前記モータ本体に前記フレームを固定するフレーム固定工程と、
前記フレーム固定工程の前あるいは後に、前記伝達歯車を前記第2固定軸を介して前記第1板部に取り付ける歯車取り付け工程と、
モータ軸線方向と交差する方向から前記第1板部と前記第2板部との間に前記出力部材を配置する配置工程と、
前記貫通穴から前記軸穴に前記第1固定軸を差し込んで前記第1軸端部を前記第1固定軸支持穴に嵌める第1固定軸挿入工程と、
前記第2軸端部と前記第2板部とを固定する第1固定軸固定工程と、を有することを特徴とするギアードモータの製造方法。
【請求項11】
前記配置工程では、前記モータピニオン、前記伝達歯車および前記歯車部を前記一方側で覆う端板部と、前記歯車部の外周部分を前記伝達歯車とは反対側から覆う側板部と、を備え、前記端板部には、前記出力部材において前記螺旋溝が設けられている部分を前記一方側に突出させる開口部が設けられた歯車カバーを、前記出力部材とともに、前記第1板部と前記第2板部との間に配置し、
前記歯車カバーについては前記フレームに固定することを特徴とする請求項10に記載のギアードモータの製造方法。
【請求項12】
前記端板部には、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部を支持する第2固定軸支持穴を設けておき、
前記配置工程では、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部を前記第2固定軸支持穴に嵌めて支持することを特徴とする請求項11に記載のギアードモータの製造方法。
【請求項13】
前記端板部の前記他方側の面には、前記第2固定軸支持穴からモータ軸線に対して交差する方向に延在する凹部を設けておき、
前記配置工程において、前記第1板部と前記第2板部との間に前記出力部材および前記歯車カバーを配置した際、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部が前記凹部内を通って前記第2固定軸支持穴に嵌まることを特徴とする請求項12に記載のギアードモータの製造方法。
【請求項14】
前記歯車カバーには、前記歯車カバーを前記第1板部と前記第2板部との間に配置したときに前記フレームと係合する係合部を設けておき、
前記配置工程において、前記歯車カバーを前記第1板部と前記第2板部との間に配置した際、前記第1板部と前記係合部とが係合して、前記歯車カバーが前記フレームに固定されることを特徴とする請求項11乃至13の何れか一項に記載のギアードモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータピニオンの回転が伝達歯車を介して出力部材に伝達されるギアードモータ、およびギアードモータの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータから大きなトルクを出力する技術として、外周部分に螺旋溝が形成された出力部材をフレームの第1板部と第2板部との間に設け、回転軸に固定されたモータピニオンを出力部材の歯車部に伝達するギアードモータが提案されている(特許文献1参照)。かかるギアードモータでは、第1板部に取り付けた軸受と第2板部との間で出力部材を回転可能に支持する。第1板部には大きな開口部が設けられており、ギアードモータを製造する際、出力部材を開口部から第1板部と第2板部との間に通す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−124867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のギアードモータでは、第1板部からモータ本体の側に軸受が突出しているため、第1板部を大型化し、モータ本体からモータ軸線と交差する方向にずれた位置に軸受を設ける必要ある。このため、ギアードモータが大型化するという問題点がある。また、特許文献1に記載のギアードモータでは、回転軸に固定されたモータピニオンの回転が出力部材の歯車部に直接伝達されるため、大きなトルクを得るには、出力部材の歯車部を大径化する必要がある。その結果、出力部材の歯車部は、第1板部からモータ軸線と交差する方向に張り出すため、ギアードモータが大型化するという問題点がある。
【0005】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、大型化しなくても、大きなトルクを得ることのできるギアードモータおよびギアードモータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るギアードモータは、モータ本体と、前記モータ本体のモータ軸線方向の一方側の端部に固定された第1板部、前記第1板部に前記一方側で対向する第2板部、および前記第1板部と前記第2板部とを連結する第3板部を備えたフレームと、前記第1板部と前記第2板部との間に配置された第1固定軸と、前記第1固定軸が貫通する軸穴が設けられ、外周部分にモータ軸線方向の他方側から前記一方側に向かって歯車部および螺旋溝が順に設けられている出力部材と、前記第1板部に前記他方側の軸端部が保持された第2固定軸と、前記第2固定軸に回転可能に支持され、前記モータ本体の回転軸に固定されたモータピニオンの回転を減速して前記歯車部に伝達する伝達歯車と、
前記第1板部と前記第2板部との間で前記歯車部および前記伝達歯車を覆うように
前記フレームに固定され、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部を支持する歯車カバーと、を有し、
前記第1固定軸は、前記第2板部に形成された貫通穴を通って前記第1板部と前記2板部との間に配置された前記出力部材の前記軸穴に挿入され、前記第1固定軸の前記他方側の第1軸端部は、前記第1板部に設けられた第1固定軸支持穴に嵌り、前記第1固定軸の前記一方側の第2軸端部が前記貫通穴に嵌った状態で前記第2軸端部と前記第2板部とが固定され、前記出力部材は、前記歯車部および前記伝達歯車が前記歯車カバーに覆われ、前記螺旋溝が前記歯車カバーから突出した状態で、前記第1板部と前記2板部との間で前記第1固定軸に回転可能に支持されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、モータ本体と、前記モータ本体のモータ軸線方向の一方側の端部に固定された第1板部、前記第1板部に前記一方側で対向する第2板部、および前記第1板部と前記第2板部とを連結する第3板部を備えたフレームと、前記第1板部と前記第2板部との間に配置された第1固定軸と、前記第1固定軸が貫通する軸穴が設けられ、外周部分
にモータ軸線方向の他方側から前記一方側に向かって歯車部および螺旋溝が順に設けられている出力部材と、前記第1板部に前記他方側の軸端部が保持された第2固定軸と、前記第2固定軸に回転可能に支持され、前記モータ本体の回転軸に固定されたモータピニオンの回転を減速して前記歯車部に伝達する伝達歯車と、を有するギアードモータの製造方法であって、前記第1板部には、前記第1固定軸の前記他方側の第1軸端部が嵌まる第1固定軸支持穴を設け、前記第2板部には、前記第1固定軸の前記一方側の第2軸端部が嵌まる貫通穴を設けておき、前記モータ本体に前記フレームを固定するフレーム固定工程と、前記フレーム固定工程の前あるいは後に、前記伝達歯車を前記第2固定軸を介して前記第1板部に取り付ける歯車取り付け工程と、モータ軸線方向と交差する方向から前記第1板部と前記第2板部との間に前記出力部材を配置する配置工程と、前記貫通穴から前記軸穴に前記第1固定軸を差し込んで前記第1軸端部を前記第1固定軸支持穴に嵌める第1固定軸挿入工程と、前記第2軸端部と前記第2板部とを固定する第1固定軸固定工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、外周部分に螺旋溝が設けられた出力部材をフレームの第1板部と第2板部との間に設け、回転軸に固定されたモータピニオンの回転を、伝達歯車を介して減速して出力部材に伝達する。このため、出力部材の歯車部を大径化しなくても、大きなトルクを出力することができる。また、第1板部と第2板部との間に第1固定軸を設け、第1固定軸によって出力部材を回転可能に支持する。このため、第1板部に軸受を設ける必要がないので、第1板部を大型化する必要がない。それ故、ギアードモータを小型化することができる。また、第1板部に第1固定軸の第1軸端部が嵌まる第1固定軸支持穴を設け、第2板部に第1固定軸の第2軸端部が嵌まる貫通穴を設けてある。このため、第1板部と第2板部との間に出力部材を配置した後、第2板部の貫通穴から出力部材の軸穴に第1固定軸を差し込んで第1軸端部を第1固定軸支持穴に嵌め、その後、第2軸端部と第2板部とを固定することができる。従って、出力部材を通す大きな開口部を第1板部に設けなくても、出力部材を第1板部と第2板部との間で回転可能に支持することができる。また、大きな開口部を第1板部に設けなくてもよいので、第1板部を大型化しなくても、伝達歯車を支持する第2固定軸を適正な位置に設けることができる。それ故、ギアードモータを小型化することができる。
【0009】
本発明において、前記第1固定軸は、前記モータ本体に対してモータ軸線方向で重なる位置に設けられていることが好ましい。かかる構成によれば、第1板部を小型化できるので、ギアードモータの小型化を図ることができる。
【0010】
本発明に係るギアードモータにおいて、前記第1軸端部は、前記第1固定軸支持穴内の凸部または前記第1固定軸支持穴の底部に当接していることが好ましい。かかる構成によれば、第1板部と第2板部との間に出力部材を配置した後、第2板部の貫通穴から出力部材の軸穴に第1固定軸を差し込んで第1軸端部を第1固定軸支持穴に嵌めた際、第1固定軸をモータ軸線方向で固定することができる。
【0011】
本発明に係るギアードモータにおいて、
前記歯車カバーは、前記モータピニオン、前記伝達歯車および前記歯車部を前記一方側で
覆う端板部と、前記歯車部の外周部分を前記伝達歯車とは反対側で覆う側板部と、を備え、前記端板部には、前記出力部材において前記螺旋溝が設けられている部分を前記一方側に突出させる開口部が設けられていることが好ましい。すなわち、本発明に係るギアードモータの製造方法において、前記配置工程では、前記モータピニオン、前記伝達歯車および前記歯車部を前記一方側で覆う端板部と、前記歯車部の外周部分を前記伝達歯車とは反対側から覆う側板部と、を備え、前記端板部には、前記出力部材において前記螺旋溝が設けられている部分を前記一方側に突出させる開口部が設けられた歯車カバーを、前記出力部材とともに、前記第1板部と前記第2板部との間に配置し、前記歯車カバーについては前記フレームに固定することが好ましい。かかる構成によれば、モータピニオン、伝達歯車および歯車部に異物が付着しにくい。また、モータピニオンと伝達歯車との間や、伝達歯車と歯車部との間にグリスを塗布した場合でも、グリスに異物が付着しにくい。
【0012】
本発明に係るギアードモータにおいて、前記端板部には、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部を支持する第2固定軸支持穴が設けられていることが好ましい。すなわち、本発明に係るギアードモータにおいて、前記端板部には、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部を支持する第2固定軸支持穴を設けておき、前記配置工程では、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部を前記第2固定軸支持穴に嵌めて支持することが好ましい。かかる構成によれば、第2固定軸を確実に支持することができる。
【0013】
本発明に係るギアードモータにおいて、前記端板部の前記他方側の面には、前記第2固定軸支持穴からモータ軸線に対して交差する方向に延在する凹部が設けられていることが好ましい。すなわち、本発明に係るギアードモータの製造方法において、前記端板部の前記他方側の面には、前記第2固定軸支持穴からモータ軸線に対して交差する方向に延在する凹部を設けておき、前記配置工程において、前記第1板部と前記第2板部との間に前記出力部材および前記歯車カバーを配置した際、前記第2固定軸の前記一方側の軸端部が前記凹部内を通って前記第2固定軸支持穴に嵌まることが好ましい。かかる構成によれば、モータ軸線に対して交差する方向から歯車カバーを配置する場合でも、第2固定軸のモータ軸線方向の一方側の軸端部を第2固定軸支持穴に容易に嵌めることができる。
【0014】
本発明は、前記出力部材が樹脂製である場合に適用すると効果的である。出力部材が樹脂製である場合、強度を確保するために、出力部材の外径を大きくする必要あるが、本発明によれば、出力部材を通す大きな開口部を第1板部に設ける必要がない。
【0015】
本発明に係るギアードモータにおいて、前記歯車カバーには、モータ軸線方向と交差する方向から前記歯車カバーを前記第1板部と前記第2板部との間に配置したときに前記フレームと係合する係合部が設けられていることが好ましい。すなわち、本発明に係るギアードモータの製造方法において、前記歯車カバーには、前記歯車カバーを前記第1板部と前記第2板部との間に配置したときに前記フレームと係合する係合部を設けておき、前記配置工程において、前記歯車カバーを前記第1板部と前記第2板部との間に配置した際、前記第1板部と前記係合部とが係合して、前記歯車カバーが前記フレームに固定されることが好ましい。かかる構成によれば、歯車カバーをフレームの所定位置に固定することができる。
【0016】
本発明に係るギアードモータにおいて、前記第2軸端部は、溶接によって前記第2板部に固定されていることが好ましい。かかる構成によれば、第1固定軸をフレームに確実に固定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、外周部分に螺旋溝が設けられた出力部材をフレームの第1板部と第2板部との間に設け、回転軸に固定されたモータピニオンの回転を、伝達歯車を介して減速して出力部材に伝達する。このため、出力部材の歯車部を大径化しなくても、大きなトルクを出力することができる。また、第1板部と第2板部との間に第1固定軸を設け、第1固定軸によって出力部材を回転可能に支持する。このため、第1板部に軸受を設ける必要がないので、第1板部を大型化する必要がない。それ故、モータを小型化することができる。また、第1板部に第1固定軸の第1軸端部が嵌まる第1固定軸支持穴を設け、第2板部に第1固定軸の第2軸端部が嵌まる貫通穴を設けてある。このため、第1板部と第2板部との間に出力部材を配置した後、第2板部の貫通穴から出力部材の軸穴に第1固定軸を差し
込んで第1軸端部を第1固定軸支持穴に嵌め、その後、第2軸端部と第2板部とを固定することができる。従って、出力部材を通す大きな開口部を第1板部に設けなくても、出力部材を第1板部と第2板部との間で回転可能に支持することができる。また、大きな開口部を第1板部に設けなくてもよいので、第1板部を大型化しなくても、伝達歯車を支持する第2固定軸を適正な位置に設けることができる。それ故、ギアードモータを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明を適用したギアードモータの説明図である。
【
図2】本発明を適用したギアードモータの断面図である。
【
図3】本発明を適用したギアードモータの内部を出力側からみた分解斜視図である。
【
図4】本発明を適用したギアードモータの減速歯車機構等の説明図である。
【
図5】本発明を適用したギアードモータの歯車カバーを反出力側からみた斜視図である。
【
図6】本発明を適用したギアードモータの製造工程のうち、出力部材および歯車カバーを組み込む際の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明を適用したギアードモータの一例を説明する。なお、以下の説明するギアードモータ1では、モータ本体10の回転軸50の回転中心軸線、および出力部材8の回転中心軸線は平行であり、いずれをもモータ軸線とみなすことができる。以下の説明では、出力部材8の回転中心軸線をモータ軸線Lとして説明する。また、以下の説明では、モータ軸線Lが延在している方向(モータ軸線L方向)のうち、回転軸50がステータ4から突出している一方側を出力側L1とし、回転軸50がステータ4から突出している側とは反対側(他方側)を反出力側L2として説明する。また、モータ軸線Lに交差する方向のうち、フレーム3において、第3板部33に直交する方向を第1方向Xとし、第1方向Xおよびモータ軸線Lと直交する方向を第2方向Yとする。また、第1方向Xのうち、第1板部31および第2板部32が第3板部33から突出している側を一方側X1とし、第3板部33が位置する側を他方側X2とする。また、以下に参照する図面において、螺旋溝83については、その形成範囲を一点鎖線で模式的に示してある。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明を適用したギアードモータ1の説明図であり、
図1(a)、(b)は、ギアードモータ1を出力側L1からみた斜視図、およびギアードモータ1から歯車カバー7を外した状態をモータ軸線Lに対して直交する方向(第2方向Y)からみた側面図である。
図2は、本発明を適用したギアードモータ1の断面図であり、
図2(a)、(b)、(c)、(d)は、ギアードモータ1をモータ軸線Lに沿って切断した断面図、モータ本体10を回転軸50の回転中心軸線に沿って切断した断面図、フレーム3の第2板部32を貫通穴37を通る位置で切断したときの断面図、およびフレーム3の第1板部31を第1固定軸支持穴36を通る位置で切断したときの断面図である。
図3は、本発明を適用したギアードモータ1の内部を出力側L1からみた分解斜視図であり、
図3(a)、(b)は、ギアードモータ1から出力部材8を外した状態の分解斜視図、およびギアードモータ1から歯車カバー7を外した状態の分解斜視図である。
図4は、本発明を適用したギアードモータ1の減速歯車機構9等の説明図であり、
図4(a)、(b)は、減速歯車機構9等の斜視図、および減速歯車機構9等の分解斜視図である。
【0021】
図1、
図2、
図3および
図4に示すように、ギアードモータ1は、モータ本体10と、モータ本体10のモータ軸線L方向の一方側(出力側L1)の端部11に固定されたフレーム3とを有している。フレーム3は、モータ本体10の出力側L1の端部11に溶接等の方法で固定された第1板部31と、第1板部31に出力側L1で対向する第2板部32
と、第1板部31と第2板部32とを連結する第3板部33とを備えている。従って、第1板部31および第2板部32は、第3板部33から第1方向Xの一方側X1に向けて屈曲した構造になっている。第1板部31は略矩形である。モータ本体10の側面には給電部2が設けられている。
【0022】
第1板部31には、段付の穴30が形成されており、モータ本体10の回転軸50は、穴30を介して第1板部31より出力側L1に突出している。回転軸50において、第1板部31より出力側L1に突出している部分にはモータピニオン55が固定されている。
【0023】
第1板部31と第2板部32との間には、減速歯車機構9が設けられており、モータピニオン55の回転(回転軸50の回転)は、減速歯車機構9を介して出力部材8に伝達される。第1板部31と第2板部32との間に、モータピニオン55や減速歯車機構9を出力側L1で覆う歯車カバー7が配置されており、歯車カバー7は、フレーム3に固定されている。
【0024】
(第1固定軸35の固定構造)
第1板部31と第2板部32との間には、第1固定軸35が設けられており、出力部材8をモータ軸線L回りに回転可能に支持している。第1固定軸35において、反出力側L2の第1軸端部351は、第1板部31に形成された第1固定軸支持穴36に嵌っている(
図2(d)参照)。第1固定軸35の出力側L1の第2軸端部352は、第2板部32に形成された貫通穴37に嵌った状態で第2板部32に固定されている(
図2(c)参照)。かかる固定には、溶接、カシメ、接着等の方法を採用することができる。本形態では、フレーム3はSUCC(低炭素ステンレス鋼)からなり、第1固定軸35はSUS(ステンレス鋼)からなる。従って、第2軸端部352と第2板部32とは、溶接により固定されている。それ故、第1固定軸35をフレーム3に確実に固定することができる。また、溶接であれば、カシメや接着等に比してバリ等が発生しにくいという利点がある。なお、フレーム3および第1固定軸35は同一の金属から形成されていてもよい。
【0025】
第1板部31において、第1固定軸支持穴36は貫通穴であるが、第1固定軸支持穴36を形成する際、第1固定軸支持穴36の内部には、反出力側L2の端部に円環状の凸部361が残されている(
図2(d)参照)。凸部361の内径は、第1軸端部351の外径より小さい。このため、第1軸端部351は、第1固定軸支持穴36の内部で凸部361に出力側L1から当接し、モータ軸線L方向の位置が規定されている。第1固定軸支持穴36については底部を残してもよく、この場合、第1軸端部351は、第1固定軸支持穴36の底部に当接し、モータ軸線L方向の位置が規定される。本形態において、第1固定軸35は、モータ本体10に対してモータ軸線L方向で重なる位置に設けられている。
【0026】
(出力部材8の構成)
出力部材8は、第1固定軸35が貫通する軸穴81が形成された軸状部材であり、外周部分には、反出力側L2から出力側L1に向かって歯車部85および螺旋溝83が順に形成されている。本形態において、出力部材8は、螺旋溝83によってウォームとして構成されている。出力部材8には、歯車部85と螺旋溝83との間に歯等が形成されていない軸部861が設けられ、歯車部85からモータ軸線L方向の反出力側L2に向けて歯等が形成されていない軸部862が設けられている。
【0027】
出力部材8は、螺旋溝83が設けられている部分84の外径が最も大きく、歯車部85および軸部861の外径は、螺旋溝83が設けられている部分84の外径より小さい。また、軸部862の外径は、歯車部85および軸部861の外径より小さい。
【0028】
出力部材8は、樹脂製であり、歯車部85および螺旋溝83が一体に形成されている。
従って、出力部材8を安価に製作することができる。ここで、出力部材8の内部には、出力部材8を樹脂成形する際のヒケを防止するための空洞82が設けられている。出力部材8の出力側L1の端部において、軸穴81が形成された筒部810には、出力部材8と第2板部32との間の摺動抵抗を低減するためのスラスト軸受用のワッシャ89が配置されている。
【0029】
(モータ本体10の構成)
図2(b)に示すように、モータ本体10は、ステッピングモータであり、円筒状のステータ4を有している。ステータ4では、A相用のステータとB相用のステータとがモータ軸線L方向に重ねて配置された構造を有している。このため、ステータ4では、コイル線46が巻回された2つのコイルボビン(第1コイルボビン42Aと第2コイルボビン42B)がモータ軸線L方向に重ねて配置されており、かかるコイルボビンには各々、以下に説明するステータコアが重ねて配置されている。第1コイルボビン42Aにおいてモータ軸線L方向の両側には、環状の内ステータコア43A、および断面U字形状の外ステータコア44Aが重ねて配置され、第2コイルボビン42Bにおいてモータ軸線L方向の両側には、環状の内ステータコア43B、および断面U字形状の外ステータコア44Bが重ねて配置されている。第1コイルボビン42Aおよび第2コイルボビン42Bの内周面では、内ステータコア43A、43Bおよび外ステータコア44A、44Bの複数の極歯45が周方向に並んだ構成となっている。このようにして、円筒状のステータ4が構成され、ステータ4の径方向内側にはロータ5が同軸状に配置されている。本形態では、外ステータコア44A、44Bが各々、第1コイルボビン42Aおよび第2コイルボビン42Bの径方向外側まで延在してモータケースを構成している。従って、モータ本体10の出力側L1の端部11は、外ステータコア44Aの環状部分47からなる。モータ本体10の外周面13は、外ステータコア44A、44Bの外側に形成された円筒部分49からなる。外ステータコア44Bの環状部分48には端板65が固定されており、モータ本体10の反出力側L2の端部12は、端板65からなる。
【0030】
ロータ5では回転軸50がモータ軸線Lに沿って延在し、回転軸50は、モータ本体10の出力側L1の端部11から突出している。回転軸50の反出力側L2寄りの位置には円筒状の永久磁石59が接着剤等によって固着されている。永久磁石59は、ステータ4の内側において、外周面が径方向の内側でステータ4の極歯45と所定の間隔を介して対向している。
【0031】
モータ本体10の出力側L1において、回転軸50は、フレーム3の第1板部31の穴30に配置された軸受62によって支持されている。軸受62と永久磁石59との間には、回転軸50が貫通するワッシャ66が配置されている。モータ本体10の反出力側L2において、端板65には、回転軸50の反出力側L2の端部を反出力側L2に突出させる穴650が形成されている。穴650には、回転軸50を反出力側L2で支持する軸受61が配置されており、軸受61によって、モータ本体10には、反出力側L2の端部12から反出力側L2に突出した凸部17が形成されている。
【0032】
軸受61と永久磁石59との間には、回転軸50が貫通するワッシャ67が配置されており、永久磁石59の凹部595の底部とワッシャ67との間には、ロータ5を出力側L1に付勢するコイルバネ63が回転軸50の周りに配置されている。永久磁石59の凹部595の底部とコイルバネ63との間には、回転軸50が貫通するワッシャ69が配置されている。
【0033】
(減速歯車機構9の構成)
減速歯車機構9は、複数の伝達歯車を有している。本形態において、減速歯車機構9は、3つの伝達歯車(第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93)を
有している。
図4に示すように、第1伝達歯車91は、複合歯車であり、モータピニオン55と噛み合う大径歯車911と、大径歯車911の出力側L1に大径歯車911と同軸状に一体に形成された小径歯車912と、小径歯車912の出力側L1に小径歯車912と同軸状に一体に形成された円筒部915とを備えている。第2伝達歯車92は、複合歯車であり、第1伝達歯車91の小径歯車912と噛み合う大径歯車921と、大径歯車921の出力側L1に大径歯車921と同軸状に一体に形成された小径歯車922とを備えている。第3伝達歯車93は、複合歯車であり、第2伝達歯車92の小径歯車922と噛み合う大径歯車931と、大径歯車931の出力側L1に大径歯車923と同軸状に一体に形成された小径歯車932とを備えている。小径歯車932は、出力部材8の歯車部85と噛み合っている。
【0034】
第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93は各々、第1板部31に支持された3本の第2固定軸96、97、98に回転可能に支持されている。より具体的には、第1伝達歯車91の軸穴910には第2固定軸96が嵌っており、第2固定軸96の反出力側L2の軸端部961は、第1板部31の穴317に圧入固定されている。第2伝達歯車92の軸穴920には第2固定軸97が嵌っており、第2固定軸97の反出力側L2の軸端部971は、第1板部31の穴318に圧入固定されている。第3伝達歯車93の軸穴930には第2固定軸98が嵌っており、第2固定軸98の反出力側L2の軸端部981は、第1板部31の穴319に圧入固定されている。本形態では、第2方向Yからみたとき、第2固定軸96、97、98は、第1固定軸35を支持する第1固定軸支持穴36と第3板部33との間に設けられ、穴30は、第1固定軸支持穴36より第3板部33の側に設けられている。このため、第2方向Yからみたとき、第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93は、出力部材8の歯車部85と第3板部33との間に設けられ、モータピニオン55は、出力部材8の歯車部85より第3板部33の側に設けられている。
【0035】
(歯車カバー7の構成)
図5は、本発明を適用したギアードモータ1の歯車カバー7を反出力側L2からみた斜視図である。
【0036】
図1、
図3および
図5に示すように、歯車カバー7は、モータピニオン55、第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、第3伝達歯車93、および出力部材8の歯車部85を出力側L1で覆う端板部71と、歯車部85の外周部分を第3板部33、第1伝達歯車91および第2伝達歯車92とは反対側(第1方向Xの一方側X1)で覆う側板部72とを備えている。側板部72は、第1板部31と重なっている。本形態において、側板部72は、歯車部85に対して第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93とは反対側から第3板部33の側(第1方向Xの他方側X2)に向けて延在し、第3板部33が位置する側が解放端720になっている。
【0037】
端板部71には、出力部材8において螺旋溝83が設けられている部分84を第1板部31の側(出力側L1)に突出させる開口部710が形成されている。また、端板部71には、第2固定軸96、97、98の
一方側(出力側L1)の軸端部962、972、982に各々、嵌って支持する第2固定軸支持穴77、78、79が形成されている。従って、第2固定軸96、97、98は、フレーム3の第1板部31と歯車カバー7の端板部71に両端が支持されている。このため、第2固定軸96、97、98を安定した姿勢に維持することができる。
【0038】
端板部71の反出力側L2の面には、第2固定軸支持穴77、78、79から第1方向Xの他方側X2(解放端720の側)に延在する凹部770、780、790が形成されている。本形態において、凹部780は、第2固定軸支持穴77の周りで第1伝達歯車9
1の円筒部915と重なる大きさに形成され、第2固定軸支持穴77の周りから解放端720の側(第1方向Xの他方側X2)に延在している。凹部780は、第2固定軸支持穴78の周りで第2伝達歯車92の小径歯車922と重なる大きさに形成され、第2固定軸支持穴78の周りから解放端720の側(第1方向Xの他方側X2)に延在している。凹部790は、第2固定軸支持穴79の周りで第3伝達歯車93の小径歯車932と重なる大きさに形成され、第2固定軸支持穴79の周りから解放端720の側(第1方向Xの他方側X2)に延在している。
【0039】
このように構成した歯車カバー7には、フレーム3と係合する係合部が形成されている。まず、第3板部33には、第1方向Xの一方側X1に向けて突出した係合凸部335が形成され、歯車カバー7の端板部71の解放端720側の端部には係合穴750(係合部)が形成されている。従って、解放端720を第3板部33の側に向けて歯車カバー7を第1板部31と第2板部32との間に第1方向Xの一方側X1から他方側X2に向けて差し込むと、係合凸部335が係合穴750に嵌って係合する。
【0040】
第1板部31の第1方向Xの
一方側X1の端部付近には係合穴314が形成され、側板部
72の反出力側L2の端部には係合凸部74(係合部)が形成されている。従って、解放端720を第3板部33の側に向けて歯車カバー7を第1板部31と第2板部32との間に第1方向Xの一方側X1から他方側X2に向けて差し込んだ後、歯車カバー7を反出力側L2に押圧すると、係合凸部74が係合穴314に嵌る。
【0041】
それ故、解放端720を第3板部33の側に向けて歯車カバー7を第1板部31と第2板部32との間に第1方向Xの一方側X1から他方側X2に向けて差し込んで、歯車カバー7をフレーム3に固定することができる。
【0042】
なお、第1板部31には係合穴314と隣り合う位置に穴313が形成されている。かかる穴313は、フレーム3をモータ本体10に固定する際の位置合わせ用の穴である。
【0043】
(製造方法)
図6は、本発明を適用したギアードモータ1の製造工程のうち、出力部材8および歯車カバー7を組み込む際の説明図である。本形態のギアードモータ1の製造工程では、
図6に示すように、フレーム固定工程において、モータ本体10にフレーム3を固定する、また、歯車取り付け工程では、フレーム固定工程の前あるいは後に、第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93を第2固定軸96、97、98を介して第1板部31に取り付ける。
【0044】
次に、配置工程では、第1板部31と第2板部32との間に向けて、モータ軸線L方向と交差する第1方向Xの一方側X1から出力部材8を差し込む。その際、出力部材8を歯車カバー7の開口部710に出力部材8を通し、第1板部31と第2板部32との間に向けて、モータ軸線L方向と交差する第1方向Xの一方側X1から出力部材8および歯車カバー7を一緒に差し込む。その際、解放端720を第3板部33の側に向けて歯車カバー7を第1板部31と第2板部32との間に差し込んだ後、歯車カバー7を反出力側L2に押圧する。その結果、フレーム3の係合凸部335が歯車カバー7の係合溝750に嵌って係合する。また、係合凸部74が第1板部31と係合する。それ故、歯車カバー7がフレーム3に固定されるので、歯車カバー7の固定が容易である。また、第2固定軸96、97、98の軸端部962、972、982が歯車カバー7の凹部770、780、790内を通って第2固定軸支持穴77、78、79に自動的に嵌まるので、歯車カバー7の取り付けが容易である。
【0045】
次に、第1固定軸挿入工程では、第2板部32の貫通穴37から出力部材8の軸穴81
に第1固定軸35を差し込んで第1軸端部351を第1板部31の第1固定軸支持穴36に嵌める。その際、第1軸端部351は、第1固定軸支持穴36内の凸部361に当接してモータ軸線L方向で位置決めされる。従って、第1軸端部351の端部が第1板部31から反出力側L2に突出することがない。それ故、第1固定軸35をモータ本体10に対してモータ軸線L方向で重なる位置に設けても、第1固定軸35とモータ本体10とが干渉しない。
【0046】
次に、第1固定軸固定工程では、第2軸端部352と第2板部32とを溶接により固定する。その結果、ギアードモータ1が完成する。
【0047】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態のギアードモータ1では、外周部分に螺旋溝83が形成された出力部材8をフレーム3の第1板部31と第2板部32との間に設け、回転軸50に固定されたモータピニオン55の回転を、減速歯車機構9の伝達歯車(第1伝達歯車91および第2伝達歯車92)を介して減速して出力部材8に伝達する。このため、出力部材8の歯車部85を大径化しなくても、出力部材8から大きなトルクを出力することができる。
【0048】
また、第1板部31と第2板部32との間に第1固定軸35を設け、第1固定軸35によって出力部材8を回転可能に支持する。このため、出力部材8の位置精度が高いので、螺旋溝83や歯車部85での噛み合いの位置精度が高い。このため、広い使用温度範囲で高いトルク伝達効率を維持し、高トルクを出力することができる。また、第1板部31に軸受を設ける必要がないので、第1板部31を大型化する必要がない。また、第1板部31に軸受を設ける必要がないので、第1板部31を大型化しなくても、第1固定軸35をモータ本体10に対してモータ軸線L方向で重なる位置に設けることができる。それ故、ギアードモータ1の小型化を図ることができる。
【0049】
また、第1板部31に第1固定軸35の第1軸端部351が嵌まる第1固定軸支持穴36を設け、第2板部32に第1固定軸35の第2軸端部352が嵌まる貫通穴37を設けてある。このため、第1板部31と第2板部32との間に出力部材8を配置した後、第2板部32の貫通穴37から出力部材8の軸穴81に第1固定軸35を差し込んで第1軸端部351を第1固定軸支持穴36に嵌め、その後、第2軸端部352と第2板部32とを固定することができる。従って、出力部材8を通す大きな開口部を第1板部31に設けなくても、出力部材8を第1板部31と第2板部32との間で回転可能に支持することができる。特に本形態では、出力部材8が樹脂製であるため、強度を確保するために、出力部材8の外径を大きくする必要あるが、出力部材8を通す大きな開口部を第1板部31に設けなくてもよい。従って、第1板部31を大型化する必要がない。それ故、ギアードモータ1を小型化することができる。
【0050】
また、大きな開口部を第1板部31に設けなくてもよいので、第1板部31を大型化しなくても、伝達歯車(第1伝達歯車91、第2伝達歯車92および第3伝達歯車93)を支持する第2固定軸96、97、98を適正な位置に設けることができる。それ故、ギアードモータ1を小型化することができる。また、大きな開口部を第1板部31に設けなくてもよいので、第2伝達歯車92の回転中心軸線と出力部材8の回転中心軸線Lとを大きく離間させる必要がない。それ故、最終歯車(第3伝達歯車93)の外径および出力部材8の歯車部85の外径を大きくしなくても、十分な減速比を得ることができる。従って、ギアードモータ1を小型化することができる。
【0051】
また、第1板部31において、出力部材8および伝達歯車(第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93)の座標位置を設定することができるので、減速歯
車機構9の噛み合いの位置精度が高い。従って、広い使用温度範囲で高いトルク伝達効率を維持し、高トルクを出力することができる。
【0052】
また、モータピニオン55、伝達歯車(第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93)および出力部材8の歯車部85が歯車カバー7で覆われている。従って、モータピニオン55、伝達歯車(第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93)および出力部材8の歯車部85に異物が付着しにくい。また、モータピニオンと伝達歯車との間や、モータピニオン55、伝達歯車(第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93)および出力部材8の歯車部85にグリスを塗布した場合でも、グリスに異物が付着しにくい。
【0053】
また、本形態では、モータピニオン55の回転を減速歯車機構9の伝達歯車(第1伝達歯車91、第2伝達歯車92、および第3伝達歯車93)を介して減速して出力部材8に伝達するため、出力部材8の歯車部85を螺旋溝83が設けられている部分84の外径より小さくしても、大きなトルクを出力することができる。従って、出力部材8の歯車部85の影響でギアードモータ1が大型化することを回避することができる。また、歯車カバー7を設けた場合でも、出力部材8の歯車部85の外周部分を覆う歯車カバー7の側板部72は、出力部材8の回転中心軸線から近い位置にある。このため、歯車カバー7によって、ギアードモータ1が大型化することを回避することができる。特に本形態では、側板部72が第1板部31にモータ軸線L方向で重なっているため、歯車カバー7の側板部72によって、ギアードモータが大型化することを回避することができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・ギアードモータ、3・・フレーム、8・・出力部材、9・・減速歯車機構、4・・ステータ、5・・ロータ、7・・歯車カバー、10・・モータ本体、31・・第1板部、32・・第2板部、33・・第3板部、35・・第1固定軸、36・・第1固定軸支持穴、37・・貫通穴、50・・回転軸、55・・モータピニオン、71・・端板部、72・・側板部、73・・フランジ部、74・・係合凸部(係合部)、77、78、79・・第2固定軸支持穴、81・・軸穴、83・・螺旋溝、84・・螺旋溝が設けられている部分、85・・歯車部、91・・第1伝達歯車、92・・第2伝達歯車、93・・第3伝達歯車、96、97、98・・第2固定軸、351・・第1軸端部、352・・第2軸端部、361・・凸部、710・・開口部、750・・係合穴(係合部)、770、780、790・・凹部、961、971、981・・他方側の軸端部、962、972、982・・一方側の軸端部、L・・モータ軸線方向、L1・・出力側(モータ軸線方向の一方側)、L2・・反出力側(モータ軸線方向の他方側)