特許第6706501号(P6706501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706501
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】造形材料
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20200601BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20200601BHJP
【FI】
   B29C64/118
   B33Y70/00
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-6174(P2016-6174)
(22)【出願日】2016年1月15日
(65)【公開番号】特開2016-165884(P2016-165884A)
(43)【公開日】2016年9月15日
【審査請求日】2019年1月8日
(31)【優先権主張番号】特願2015-41355(P2015-41355)
(32)【優先日】2015年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】迫部 唯行
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】田代 こゆ
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−502862(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/130401(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0291886(US,A1)
【文献】 特開2010−236117(JP,A)
【文献】 特開2014−084549(JP,A)
【文献】 特開2015−000827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の形態の造形材料を、熱溶解積層法3Dプリンターに供給して、造形ヘッドにて、造形材料を構成する複数本の熱可塑性合成繊維を構成する熱可塑性樹脂を加熱により溶融させ、ノズルから射出・積層して所望の形状の三次元造形物を作成することを特徴とする造形方法であり、
造形材料の形態が、複数本の熱可塑性合成繊維が集束されて1本の連続した糸状の形態を呈しており、複数本の熱可塑性合成繊維のうちの少なくとも一部の繊維が機能性添加剤を含有し、造形材料を構成する複数本の熱可塑性合成繊維は、熱溶解積層法3Dプリンターにおける造形ヘッドにて溶融するものであることを特徴とする造形方法。
【請求項2】
熱可塑性合成繊維を構成する熱可塑性樹脂の融点が180℃以下であることを特徴とする請求項1記載の造形方法
【請求項3】
機能性添加剤が、着色剤であることを特徴とする請求項1または2記載の造形方法
【請求項4】
複数本からなる熱可塑性合成繊維の束を2本以上製紐することにより集束させて1本の連続した糸状の形態を呈していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の造形
方法
【請求項5】
複数本からなる熱可塑性合成繊維の束を2束以上撚り合わせることにより集束させて1本
の連続した糸状の形態を呈していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の
造形方法。
【請求項6】
複数本の熱可塑性合成繊維の束は、撚りを有することを特徴とする請求項1〜5のいずれ
か1項記載の造形方法
【請求項7】
熱可塑性合成繊維同士が熱融着により集束していることを特徴とする請求項1〜6のいず
れか1項記載の造形方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱溶解積層法3Dプリンターを用いて三次元造形物を得る造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ上の設計図をもとに三次元のものを作り出す3Dプリンターは、金型や溶融装置を用いなくとも、プラスチック製の部品、治具、製品を容易に作ることができ、企業を中心に急速に普及している。特に、熱可塑性樹脂を造形材料に用いる熱溶解積層方式の3Dプリンターは廉価版も販売され、個人にも普及し始めている。
【0003】
このような熱溶解積層法3Dプリンターに用いる造形材料としては、熱可塑性樹脂を直径数mmで長手方向に連続してなる線状の樹脂成型物(モノフィラメント状物)が市販され、使用されている。例えば、特許文献1には、高精度の造形用材料として、平均直径が0.069〜0.074インチ(約1.75〜1.90mm)、長さ20フィート(約6.1m)以上、0.0004インチ(0.01mm)以下の直径の標準偏差を有する造形材料(供給材料)が開示されている。また、このような造形材料を構成する熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ乳酸などの熱可塑性樹脂が用いられている。
【0004】
また、このような材料を使用して造形物を作成する際、造形物に所望の色を着色させたい場合には、その色に着色された市販の造形用材料を用いればよいが、市場にて、所望の色の造形材料を入手することができない場合がよく発生する。特許文献2には、多色の造形物を得るための装置を開示している。特許文献2によれば、3Dプリンター装置内の溶融押出ノズル手前に、貯蔵された顔料等の添加剤をコーティングするプリントヘッドを設けることにより、所望の色に表面が着色された造形物を得ることができる。
【0005】
所望の色に着色された市販の造形用材料が入手できない場合は、特許文献2のごとき3Dプリンター装置を使用することにより、所望の色の顔料を用いて着色された造形物を得ればよいが、特許文献2のごとき装置は複雑で高価であるため、一般に市販されるプリンターに適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005−523391号公報
【特許文献2】特表2014−516829号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した連続線状の樹脂成型物(モノフィラメント状物)からなる造形材料は、硬く、取扱い性が良いとはいえず、なかでもポリ乳酸からなる造形材料は特に硬く、このような硬い造形材料は、ボビンなどに捲かれている状態から、捲き張力を少し緩めた途端に捲かれた状態が解除されボビンから外れて散らばってバラけた状態となってしまう(このような状態を「クラッシュ発生」とも呼ぶ。)。また、市場にて販売されているポリ乳酸製の造形材料において、結晶化が進んでいないものは、使用中に折れやすいという問題を抱えていた。
【0008】
本発明者は、このような状況に鑑みて、取扱い性が良好な熱溶解積層法3Dプリンター用の造形材料を用いる造形方法を提供することを検討した。熱溶解積層法3Dプリンター用材料の形態は、いわゆるモノフィラメント状物を用いることが常識であったが、その常識に捉われずに他の形態を適用できるのではないかと検討していたなかで、複数本の合成繊維を集束して1本の連続した糸状形態の造形材料を発明した(特願2015−24247号)。そして、この発明を利用して、種々の検討を行うなかで、顔料等の添加剤を容易に添加することができ、汎用の3Dプリンターに適用しうる造形材料を容易に提供することができないかと検討した結果、本発明に到達するに至った。本発明は、汎用の3Dプリンターに適用できる造形材料であり、種々の顔料等の添加剤を容易に添加しうる造形材料を用いる造形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記の形態の造形材料を、熱溶解積層法3Dプリンターに供給して、造形ヘッドにて、造形材料を構成する複数本の熱可塑性合成繊維を構成する熱可塑性樹脂を加熱により溶融させ、ノズルから射出・積層して所望の形状の三次元造形物を作成することを特徴とする造形方法であり、
造形材料の形態が、複数本の熱可塑性合成繊維が集束されて1本の連続した糸状の形態を呈しており、複数本の熱可塑性合成繊維のうちの少なくとも一部の繊維が機能性添加剤を含有し、造形材料を構成する複数本の熱可塑性合成繊維は、熱溶解積層法3Dプリンターにおける造形ヘッドにて溶融するものであることを特徴とする造形方法を要旨とするものである。
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明において、熱溶解積層法3Dプリンターに用いる造形材料とは、熱溶解積層法3Dプリンターに供給して三次元造形物を得る際の材料であって、熱可塑性樹脂によって構成される。この造形材料を使用し、コンピュータ上の設計図に基づき、造形ヘッドにて、造形材料を構成する熱可塑性樹脂を加熱により溶融させ、ノズルから射出・積層して所望の形状の三次元造形物を作成するのである。
【0012】
本発明における造形材料は、熱可塑性合成繊維によって構成される。合成繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、熱溶解積層法3Dプリンターにおける造形ヘッドの溶融温度で溶融しうるものであれば用いることができ、融点が180℃以下のものがよく、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族系ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体系樹脂、フッ素樹脂系樹脂が挙げられる。これらの樹脂を混合したものを用いてもよい。なかでも、ポリ乳酸は、反りが発生しにくいため好ましく、D体含有量が低いポリL乳酸は黄色味が帯びにくいため、さらに好ましい。D体含有量を調整することにより、プリンターの温度制御に応じてポリ乳酸の融点を調整することができるが、黄色味を帯びにくくするためには、D体含有量が1.5%未満のものがよい。また、上記した樹脂を用いて合成繊維を製造する方法においても、特に限定するものではないが、結晶性を有する熱可塑性樹脂を用いて繊維を製造する場合は、延伸工程や熱収縮を制御するためのリラックス工程を製造工程中に適用するとよい。
【0013】
本発明における造形材料は、複数本の熱可塑性合成繊維が集束されて1本の連続した糸状の形態を呈している。複数本の合成繊維を集束させる方法としては、撚りをかける方法、製紐する方法、熱処理により熱接着する方法等が挙げられる。より具体的には、複数本の合成繊維に撚りをかけて集束する方法、複数本の合成繊維を引き揃えあるいは撚りをかけた束を2本以上用いて製紐することによって組紐とし集束する方法、複数本の合成繊維を引き揃えたものに熱処理を施すことにより合成繊維を構成する熱可塑性樹脂の一部を溶融または軟化させて繊維同士を熱接着させることにより集束する方法、あるいは、これら(撚り、製紐、熱接着)を組合せた方法が挙げられる。
【0014】
本発明における造形材料は、上記したように複数本の熱可塑性合成繊維が集束されて構成したものであり、複数本の熱可塑性合成繊維のうちの少なくとも一部の繊維が機能性添加剤を含有する。機能性添加剤としては、作成する三次元造形物に所望の機能を付与するために、その材料である造形材料に添加するものであって、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、分散剤、滑剤、難燃剤、着色剤、抗菌剤、熱伝導性材料、導電性材料、香料、水溶性材料、平滑剤、可塑剤、X線不透過剤、充填剤、耐衝撃改良剤、結晶促進剤、相溶化剤等が挙げられる。
【0015】
添加剤として、より具体的には、酸化防止剤としては、フェノール系、有機ホスファイト系、ナスナイトなどの有機リン系およびチオエーテル系のものが挙げられる。
耐候剤としては、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系やベンゾエート系のものが挙げられる。
帯電防止剤としては、ノニオン系、カチオン系、アニオン系などが挙げられる。
分散剤としては、ビスアミド系、ワックス系や有機金属塩系などのものが挙げられる。
滑剤としては、アミド系、ワックス系、有機金属塩系やエステル系などが挙げられる。
難燃剤としては、含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン系、水酸化マグネシウム系、リン酸アンモニウム系や赤燐などが挙げられる。
着色剤としては、カーボンブラックや酸化チタン、ペリレン系、キナクリドン系、フタロシアニン系などの顔料や、アゾ系、インディゴ系、キノン系、キサンテン系、ピリドン系ベンゾジフラノン系などの染料などが挙げられる。また、キノリン系、ピリジノン系、有機金属系などの蛍光・燐光色素や、酸化バナジウム、ポリジアセチレン系、ビオロゲン系などのクロミック色素なども使用できる。
抗菌剤としては、銀系、銅系、銀−ゼオライト系、光触媒性酸化チタン系、有機窒素硫黄化合物系、イソチアゾロン系、カルボン酸系、有機金属系などが挙げられる。
熱伝導性材料としては、金属系、カーボン系、セラミック系、ケイ酸塩鉱物系などが挙げられる。
導電性材料としては、金属系、カーボン系、セラミック系、導電性ポリマー系、界面活性剤などが挙げられる。
香料としては、天然香料や合成香料、香気を発生する化合物等が挙げられ、より具体的には、植物性精油やムスク等の動物性香料、リモネン、ネロリドールなどの合成香料等が挙げられる。
水溶性材料としては、ポリビニルアルコール系、デンプン系、アクリル酸系などが挙げられる。
平滑剤としては、シリコーン系、フッ素系、ワックス系などが挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸系、アジピン酸系、リン酸系、ワックス系などが挙げられる。
X線不透過剤としては、硫酸バリウム、鉛系、タングステン系などが挙げられる。
充填剤としては、金属系、カーボン系、ガラス系、セルロース系などが挙げられる。
耐衝撃改良剤としては、他種ポリマー、エラストマー類、コアシェル型耐衝撃改良剤などが挙げられる。
結晶化促進剤としては、金属酸化物系、ケイ酸塩系、脂肪酸エステル系、有機スルホン酸塩系、リン酸エステル金属塩系、グリセリン系、ポリアルキレングリコール系などが挙げられる。
相溶化剤としては、エチレンビニルアルコール系、スチレン系、エステル系、アミド系などが挙げられる。
【0016】
機能性を有するこれらの添加剤は、造形材料を構成する熱可塑性合成繊維に含有している。含有させる方法としては、例えば、上記した添加剤の一種もしくは二種以上を適宜組み合わせて合成繊維の材料となる熱可塑性重合体組成物を製造する工程等で配合すればよい。これらの添加剤の配合は従来公知の1軸もしくは2軸スクリュー押出機バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの混練装置を用いて所定の割合で混合して、これを溶融混練して調整してもよいし、高濃度のいわゆるマスターバッチを作製し、これを希釈して使用してもよい。
【0017】
また、合成繊維または複数本の合成繊維の集束体に、後工程にて添加剤を浸漬または吸尽させることで配合することにより含有させることもできる。例えば、色素であれば、バット染色やワッシャー染色などの従来既知の方法により合成繊維の表面および内部に担持させることができる。染色の際には必要に応じてキャリアー、均染剤、pH調整剤などの助剤も用いることができ、精錬やソーピング、フィックス工程を加えることもできる。
【0018】
なお、機能性添加剤の含有量は、所望の機能を発揮しうる量とすればよく、添加剤の種類等に応じて、適宜設計すればよい。
【0019】
造形材料を構成する複数本の熱可塑性合成繊維のうち、すべての合成繊維が機能性添加剤を含むものであってもよい。また、一部の合成繊維のみが特定の機能性添加剤を含むものであってもよい。さらには、造形材料を構成する複数の合成繊維が異なる添加剤をそれぞれ含むものとし、異なる添加剤を含む合成繊維が複数集束して、造形材料として、複数種の添加剤を含むものであってもよい。このように添加剤を含む合成繊維と含まない合成繊維とを適宜組み合わせることにより、造形材料が含有する機能性添加剤の量を容易に所望の量に調整することができる。また、特定の添加剤を含む合成繊維同士を組み合わせて集束させることにより、種々の機能性を付与しうる造形材料が得られ、容易に種々の機能を発揮しうる三次元造形物を得ることができる。
【0020】
本発明において、複数本の合成繊維を集束させる具体的な方法としては、本件出願人が提案した発明(特願2015−24247号)に記載された方法を適用すればよいが、以下にも詳述する。
【0021】
複数本の合成繊維を引き揃えて撚りをかけて集束する方法においては、片撚りの場合は、端部から解けやすいため、熱処理を施すことにより撚り形態を固定させることが好ましい。熱処理の際に、繊維を構成する熱可塑性樹脂の一部を溶融または軟化する温度で処理を施し、繊維同士を熱接着させて形態を固定させることも好ましい。なお、片撚り以外の撚糸であっても、熱処理によって風合いの調整や、繊維間の集束密度の向上を行うことが可能である。
【0022】
また、片撚りしてなる繊維束2本以上を片撚りの方向とは反対の方向に撚り合わせて集束させ、いわゆる諸撚りを施すことにより、解けにくくすることも好ましい。さらに、諸撚りした後に、熱処理を施し、熱固定あるいは熱接着により形態を固定させることも好ましい。諸撚り前の片撚りしてなる繊維束の撚り方向(下撚りの方向)としては、同一方向に撚られた繊維束を選択するものとし、下撚り回数は、繊度に応じて適宜調整すればよいが50〜1000回/m程度が好ましい。諸撚り(上撚り)の回数は、用いる繊維束の太さや本数に応じて適宜設計するとよい。
【0023】
繊維束を2本以上用いて製紐することによって集束させる方法においては、平打ち、角打ちおよび丸打ちのいずれを適用してよい。なかでも、現在、熱溶解積層法3Dプリンターへの供給材料として使用されている連続線状物の横断面が円形のものが多く使用されていることから、丸打ちによる組紐がよい。丸打ちの場合、より真円形状とするために、4本打ち以上とすることが好ましく、より好ましくは8本打ち以上であり、さらに好ましくは16本打ちである。また、丸打ち紐の形態として、組紐の長手方向(軸方向)の中心部に芯糸が挿入され、芯糸を中心としてその周囲に側糸として複数本の糸が配されてなる形態の組紐を採用することが好ましい。得られる造形材料の横断面において中心部の密度も密となって、空隙部分が生じにくいためである。
【0024】
組紐についても、上述した撚糸と同様で、熱処理を行うことにより風合いの調整や、繊維間の集束密度の向上を行うことも可能である。
【0025】
本発明において、複数本の熱可塑性合成繊維が集束されてなる造形材料を、3Dプリンターにセットして使用するにおいては、端面は溶融切断されるため、集束状態が解けてバラけてしまうことはない。しかしながら、集束させる熱可塑性合成繊維として低融点の熱可塑性合成樹脂からなる繊維を混合させ、撚りや製紐により集束させた後に、低融点の熱可塑性合成樹脂が溶融する温度で熱処理を施して、低融点の熱可塑性合成樹脂を熱接着剤として機能させ、構成繊維同士を熱接着させることによって、集束性を向上させることも好ましい。また、低融点熱可塑性合成繊維を混合させて熱接着させることによって、造形材料の密度が密になり、保形性も向上する。
【0026】
本発明において、熱可塑性合成繊維の形態は、全て連続繊維を選択してよいが、特定の繊維長を有する短繊維を用いてもよい。短繊維を用いる場合は、短繊維群を紡績した紡績糸や、連続繊維と短繊維との混繊による混合紡績糸の形態としたものを集束してなる連続した糸状の造形材料としてもよい。このような紡績糸を、組紐や諸撚り糸を得るための熱可塑性合成繊維の束として用いてもよい。また、連続繊維からなる加工糸を用いてもよい。加工糸としてはエアー交絡糸、仮撚り糸、BCF(Bulked Continuous Filament)が挙げられる。
【0027】
造形材料を構成する複数の繊維として、全て連続繊維を選択した場合でも、繊度の異なる連続繊維を混繊させてもよい。また、繊度の異なる連続繊維を用いる場合、繊度の大きいフィラメントの周囲をマルチフィラメントで編組した複合糸や、繊度の大きいフィラメントの周囲をマルチフィラメントで巻き付けた複合糸を、本発明の連続した糸状の造形材料の一形態とすることもできる。繊度の大きいフィラメントとしては、モノフィラメント糸を用いることもできる。例えば、モノフィラメント糸を、造形材料の中心部に配置させることにより中心部の密度が均一になる。また、造形材料の中心部に、低融点の熱接着成分を繊維表面に有するモノフィラメント糸を配置すると、熱処理を施すことにより、周囲に配した繊維と熱接着して良好に一体化して集束するため好ましい。
【0028】
熱可塑性合成繊維の単繊維繊度は、集束する際の糸本数や造形材料の直径、集束した際の密度、耐久性を考慮して適宜設計すればよい。例えば、単繊維繊度が大きい場合は摩擦などへの耐久性が高いが、繊維間の隙間が大きくなり造形時にボイドが生じる可能性がある。また単繊維の断面形状についても取扱い性や集束した際の密度などを考慮して適宜設計すればよい。例えば丸形、楕円形、多角形(三角、四角など)、多葉形(十字形、星形など)などが挙げられ、また断面形状の異なる繊維を組み合わせて使用してもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、柔軟であり、取扱い性が良好な熱溶解積層法3Dプリンター用の造形材料を提供することができ、また、造形材料が含有する機能性添加剤の量を容易に所望の量に調整することや、添加剤を含む合成繊維同士を組み合わせて集束させることにより、種々の機能性を付与しうる造形材料が得られ、容易に種々の機能を発揮しうる三次元造形物を得ることができる。
【実施例】
【0030】
次に本発明について、実施例によって具体的に説明する。
繊維の物性についてはJIS−L−1013に準じて試験を行った。取扱い性については内径100mmのボビンに1kgを巻き取り評価とした。また3Dプリンターの評価試験についてはアビー社製のSCOOVO C170を用いて、造形温度230℃、積層ピッチ0.1mm、密度100%で1辺が3cmの立方体を作製してその外観を確認した。
【0031】
実施例1
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)に、カーボンブラック10質量%、ヨウ化銅1質量%を混合してマスターチップを製造し、このマスターチップ4質量部と上記ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D))96質量部とを混合し、エクストルダー型紡糸機を用いて溶融紡糸し延伸し、強度が4.0cN/dtex、伸度が30%の1900dtex/210fの原着ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントを得た。該ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントを16本丸打ち製紐機にて製紐し、その後100℃2分で熱セットを行い、実施例1の造形材料を得た。
【0032】
実施例2
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いて、エクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、強度が4.0cN/dtex、伸度が30%の1900dtex/210fのポリ乳酸繊維からなる無色のマルチフィラメントを得た。
該ポリ乳酸繊維からなる無色のマルチフィラメント8本と、実施例1で用いた原着ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメント8本とを16本丸打ち製紐機にて製紐し、その後100℃2分で熱セットを行い、実施例2の造形材料を得た。
【0033】
実施例3
実施例2で用いたポリ乳酸からなる無色のマルチフィラメント12本と、実施例1で用いた原着ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメント4本とを16本丸打ち製紐機にて製紐し、その後100℃2分で熱セットを行い、実施例3の造形材料を得た。
【0034】
比較例
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いてエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸して、強度が3.5cN/dtex、伸度が28%の30000dtex(直径約1.75mm)のポリ乳酸モノフィラメントを得た。
【0035】
実施例1〜3および比較例の評価結果を表1に示す。本発明の造形方法によれば、熱溶解積層法3Dプリンターに適用して良好な三次元立体成型物が得られるとともに、本発明における造形材料は、比較例のモノフィラメントに比べて、柔軟で、取扱い性が良好であった。また、造形材料を構成するマルチフィラメントの組合せとして、着色されたマルチフィラメントの本数を適宜調整することによって、造形材料として含有する着色剤の量を調整することができ、濃淡の有する三次元造形物を容易に提供することが可能であることを確認できた。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例4
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いて、エクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、560dtex/96フィラメントのポリ乳酸繊維からなる無色のマルチフィラメントを得た。
一方、機能性添加剤を含有してなる繊維として、以下の繊維を得た。すなわち、前記したポリ乳酸チップと着色剤としてカーボンブラックとを2軸型押出機にて溶融混練し混練チップを得た。このとき、カーボンブラックの配合量は、混練チップ中に0.5質量%とした。この混練チップをエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、560dtex/1fの着色剤を含有してなるモノフィラメントを得た。
【0038】
得られたマルチフィラメント3本とモノフィラメント2本とを引き揃えた繊維束を、リング撚糸機を用いてZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけて撚糸とし、得られた撚糸を7本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例4の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮により固化していた。
【0039】
実施例5
実施例4において、機能性添加剤を含有してなる繊維として以下の繊維を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5の造形材料を得た。なお、得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
機能性添加剤を含有してなる繊維は、以下により得た。すなわち、実施例4で用いたポリ乳酸チップと、抗菌剤として銀−ゼオライトとを2軸型押出機にて溶融混練し混練チップを得た。このとき、銀−ゼオライトの配合量は、混練チップ中に5質量%とした。この混練チップをエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、560dtex/1fの抗菌剤を含有してなるモノフィラメントを得た。
【0040】
実施例6
実施例4において、機能性の添加剤を含有してなる繊維として以下の繊維を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例6の造形材料を得た。なお、得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
機能性添加剤を含有してなる繊維は、以下により得た。すなわち、実施例4で用いたポリ乳酸チップと、導電性材料として導電カーボンブラックとを2軸型押出機にて溶融混練し混練チップを得た。このとき、導電カーボンブラックの配合量は、混練チップ中に10質量%とした。この混練チップをエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、560dtex/1fの導電性材料を含有してなるモノフィラメントを得た。
【0041】
実施例7
実施例4において、機能性の添加剤を含有してなる繊維として以下の繊維を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例7の造形材料を得た。なお、得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
機能性添加剤を含有してなる繊維は、以下により得た。すなわち、実施例4で用いたポリ乳酸チップと、X線不透過剤として硫酸バリウムとを2軸型押出機にて溶融混練し混練チップを得た。このとき、硫酸バリウムの配合量は、混練チップ中に10質量%とした。この混練チップをエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、560dtex/1fのX線不透過剤を含有してなるモノフィラメントを得た。
【0042】
実施例8
実施例4で用いたポリ乳酸チップを用いて、エクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、得られたフィラメントに機械捲縮を付与した後にカットして、単糸繊度2.2dtex、繊維長51mmの無色のステープルファイバーを得た。このステープルファイバーを紡績して20番手の無色の紡績糸を得た。
上記により得られた無色の紡績糸を、加圧高温染色機を用いて分散染料により染色し、ピンク色に染まった染色糸を得た。
無色の紡績糸8本を引き揃えた繊維束を、リング撚糸機を用いてZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけて無色の撚糸とした。また、一方、染色糸8本を引き揃えた繊維束を、リング撚糸機を用いてZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけて染色された撚糸とした。無色の撚糸7本と、染色された撚糸1本とを束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例8の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維同士が熱処理による熱接着によって溶融固着していた。
【0043】
実施例4〜8で得られた造形材料を用いて巻き取り評価(ボビン巻き取り性)と、3Dプリンターの評価試験(3Dプリンター出力)を行ったところ、いずれの材料においても、巻き取り評価においては、柔軟で綺麗に巻き取ることが可能であり、3Dプリンター出力においては、綺麗に出力でき光沢感のあり、種々の機能を有する造形物が得られた。また、3Dプリンター内に造形材料を送り込む動作においても、送り込み装置において問題なく良好に送り動作がなされていた。