(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
先ず、本発明に係る親水化カーボンブラックについて説明する。
本発明に係る親水化カーボンブラックは、水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2が500ms以下であり、水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa
50%が70nm〜200nmであることを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る親水化カーボンブラックとしては、表面に酸性基を有する酸化カーボンブラック等を挙げることができる。
【0019】
本発明者は、水性媒体中における分散性に優れた親水化カーボンブラックを開発すべく鋭意検討したところ、酸化カーボンブラックの水性媒体中での分子運動性に着目するに至り、さらに、驚くべきことに、水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2により上記分子運動性を尺度化することができ、水性媒体中における分散性と相関することを見出して、本発明を完成するに至った。
【0020】
パルス法NMRは、高分解能NMRとは異なり化学シフト情報は与えないが、代わりに分子運動性と密接な関係のある
1H核の緩和時間(スピン−格子緩和時間T1、及びスピン−スピン緩和時間T2)を迅速に測定できる手法である。
パルス法NMRは、近年その使用が急速に広がっており、パルス法NMRにおける測定法としては、ハーンエコー法、ソリッドエコー法、CPMG法あるいは90°パルス法などが挙げられ、いずれも好適に用いることができるが、本発明における緩和時間T2はCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2を意味する。
【0021】
本発明に係る親水化カーボンブラックにおいて、水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2は、親水化カーボンブラック粒子表面に束縛された水分子の状態に関与する特性と考えられ、この値が小さい程粒子表面に束縛された水分子が多いため(水和層が厚いため)、親水化カーボンブラックの水分散性が向上して、濾過性能が向上し易くなると考えられる。
【0022】
本発明に係る親水化カーボンブラックは、水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2が500ms以下であり、450ms以下であることが好ましく、400ms以下であることがより好ましい。
上記緩和時間T2の下限値は特に制限されないが、緩和時間T2は、通常、0.01ms以上である。
【0023】
上記スピンースピン緩和時間T2が500ms以下である場合、親水化カーボンブラックが水性媒体中で特に優れた分散性を発揮することができ、上記スピン−スピン緩和時間T2が500ms超である場合、粒子表面に束縛された水分子数は少ないため(水和層が薄いため)、凝集しやすい表面となり親水化カーボンブラックの分散性が低下して濾過性能が低下し易くなる。
【0024】
本出願書類において、
1H核のスピンースピン緩和時間T2は、水中に分散した状態で、XiGo Nanotools社製「Acron Area」を用いたパルスNMRのCPMG(Carr−Purcell−Meiboom−Gill)法により測定される値を意味する。
【0025】
本発明に係る親水化カーボンブラックは、水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa
50%が、70nm〜200nmであり、90nm〜160nmであることが好ましく、100nm〜150nmであることがより好ましい。
【0026】
なお、本出願書類において、上記親水化カーボンブラックのアグロメレートの平均粒径Dupa
50%は、水分散液の状態でレーザー回折・散乱方式粒子径分布測定装置を用いてレーザー光を照射し、散乱光の周波数変調度合から得られるアグロメレート粒径の累積度数分布曲線において、累積度数50%の値を意味する。
【0027】
上述したアグロメレートの平均粒径Dupa
50%が上記範囲内であれば、水性媒体中で好適に分散して、水性インクジェットプリンターインク等の水性黒色インクに好適に使用することができる。
上記アグロメレートの平均粒径Dupa
50%は水性媒体に分散した状態における親水化カーボンブラック粒子の凝集体の大きさに関連する特性と考えられる。上記親水化カーボンブラックのアグロメレートの平均粒径Dupa
50%が70nm未満であると、インクジェットプリンターインク等の水性黒色インクに用いた場合に、粒径が小さく、紙の繊維間に沈降して印字濃度が低くなり易くなり、カーボンブラックのアグロメレートの平均粒径Dupa
50%が200nmを超えると、水性媒体中で親水化カーボンブラックのアグロメレートが接触する確率が高くなり、水性分散体中で親水化カーボンブラックが凝集し易くなることから、インクジェットプリンターインク等の水性黒色インクに用いた場合に、印刷時にインクジェットプリンターのヘッド等から吐出することが困難になり易く、ノズル閉塞等のインク詰まりを生じ易くなる。
【0028】
本発明によれば、水性媒体中で優れた分散性を発揮して、インクジェットプリンターインクに好適に使用することができる親水化カーボンブラックを提供することができる。
【0029】
次に、本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体について説明する。
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、本発明に係る親水化カーボンブラックを含むことを特徴とするものである。
【0030】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、その固形分濃度が、3質量%〜25質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、6〜15質量%であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、その固形分濃度が上記範囲内にあることにより、インクジェットプリンターインク等の水性インクに用いたときに、好適な分散性を容易に発揮することができる。
【0032】
なお、本出願書類において、水性媒体中における親水化カーボンブラックの固形分濃度は、吸光光度計を用い、最大吸収波長500nmで測定した値を意味する。
【0033】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体において、水性媒体としては、水や、水を主成分としさらに水溶性有機溶剤を含むものを挙げることができ、水のみからなるものが好ましい。
水性媒体を構成する水としては、イオン交換水(脱イオン水)や蒸留水等の精製水が挙げられる。
【0034】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、そのpHが、6.0〜9.0であるものが好ましく、6.5〜8.5であるものがより好ましく、7.0〜8.0であるものがさらに好ましい。
【0035】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、そのpHが上記範囲内にあることにより、インクジェットプリンターインク等の水性インクに好適に使用することができる。
親水化カーボンブラック水性分散体のpHが6.0未満であると、親水化カーボンブラック表面に付与した酸性官能基の解離が妨げられ、粒子表面の電気的な反発作用が失われ凝集しやすくなるとともに、インクジェットプリンターインク等の水性インクに使用した場合に酸性度が高いために、印刷機のヘッド等が損耗し易くなる。
また、親水化カーボンブラック水性分散体のpHが9.0を超えると、分散体中のイオン濃度が過剰となり、塩析により凝集しやすくなるとともに、空気中の炭酸ガスを吸引し易くなって、分散体のpHが不安定になり易くなる。
【0036】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、固形分濃度15質量%における電気伝導度が、3mS/cm以下であるものが好ましく、2mS/cm以下であるものがより好ましく、1mS/cm以下であるものがさらに好ましい。
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体において、固形分濃度15質量%における電気伝導度の下限は特に制限されないが、通常、0.5mS/cm以上である。
【0037】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、固形分濃度15質量%における電気伝導度が上記範囲内であることによっても、好適な分散性を発揮することができる。
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体において、上記電気伝導度は、水性媒体中に分散した状態における分散液中のイオン濃度に関連する特性であると考えられ、本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、固形分濃度15質量%における電気伝導度が3mS/cmを超えると、分散液中のイオン濃度が過剰となり、分散体中に共存する雑塩の影響で、塩析によるフロック(凝集体)を形成し易くなる。
【0038】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体は、インクジェットプリンターインク用途に好適に使用することができる。
【0039】
本発明によれば、水性媒体中で優れた分散性を発揮して、インクジェットプリンターインクに好適に使用することができる親水化カーボンブラックの水性分散体を提供することができる。
【0040】
次に、本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法について説明する。
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法は、水性媒体中で、カーボンブラック100質量部に対し、30〜500質量部の親水化剤を少量ずつ順次添加することにより親水化処理して親水化処理物を得た後、得られた親水化処理物を遠心分離して、水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2が500ms以下であり、水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa
50%が70nm〜200nmである親水化カーボンブラックの水性分散体を得ることを特徴とするものである。
【0041】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法において、親水化処理されるカーボンブラックは、特に制限されない。
例えば、東海カーボン(株)製シースト5H、3H、NH、116HM、116、トーカブラック#5500、#4500、#4400や、旭カーボン(株)製F−200、SUNBLACK 270や、三菱化学(株)製ダイヤブラックSA、N234、II(IISAF)、N(N339)、SH(HAF)、MA600、#20、#3050、#3230や、キャボット社製ショウブラック N234、N339、MAF、VULCAN XC 72、BLACK PEARLS 480や、新日化カーボン(株)製ニテロン#200IS、#10や、デンカ(株)製デンカブラックFX−35、HS−100や、エボニックデグサ社製Colour Black FW200、FW2、FW285、FW1、FW18、S170、S160、Special Black 6、5、4、4A、Printex U、V、140U、140V、L6、3、HIBLACK 40B1、40B2、420B、150B、Corax HP1107、HP130、N234、N339、N351、MAF、N550、Purex HS55、HS45や、コロンビアン社製Raven 820、Conductex 7055ULTRA等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0042】
カーボンブラックの親水化処理方法も、特に制限されず、親水化剤として、酸化剤、アゾ化剤、界面活性剤またはマイクロカプセルを用いた方法を挙げることができる。
【0043】
例えば、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過硫酸塩、過硼酸塩、過炭酸塩等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の酸化剤の水溶液中にカーボンブラックを添加して酸化する方法を挙げることができる。
また、カーボンブラックの親水化処理方法としては、過酸化水素、オゾン、オゾン水あるいはM
2O
2(Mはアルカリ金属)、重クロム酸塩、過マンガン酸塩等の酸化剤で処理する方法を挙げることができる。
さらに、カーボンブラックの親水化処理方法としては、ジアゾカップリング処理を実行する方法等を挙げることができ、例えば、p−ニトロ安息香酸を亜硝酸でアゾ化し、それをカーボンブラックの表面にアゾ化して結合させるアゾ化剤を用いた方法を挙げることができる。
その他、カーボンブラックの親水化処理方法としては、カーボンブラックを界面活性剤で処理する界面活性剤を用いた方法や、カーボンブラックの表面に高分子をマイクロカプセル化して水中に分散させるマイクロカプセルを用いた方法等を挙げることができる。
カーボンブラックの親水化処理方法は、得られる親水化処理物を水性媒体中に良好に分散させ得るものであればいずれの親水化方法であってもよく、酸化剤で酸化する方法が好ましい。
【0044】
水性媒体としては、水や、水を主成分としさらに水溶性有機溶剤を含むものを挙げることができ、水のみからなるものが好ましい。
水性媒体を構成する水としては、イオン交換水(脱イオン水)や蒸留水等の精製水が挙げられる。
【0045】
また、分散性を向上させるため、必要に応じて水性媒体に界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤としては、アニオン系、ノニオン系、カチオン系いずれのものも使用することができる。
【0046】
カーボンブラックの親水化処理は、親水化剤と水性媒体とを攪拌混合してなる親水化溶液とカーボンブラックとを分散機で攪拌混合し、スラリー化することにより行うことが好ましい。
【0047】
分散機としては、高圧ホモジナイザー、サンドミル、ダイノーミル、ボールミル、ペイントシェーカー、超音波分散機、高圧の室内にてキャビテーション効果で分散する分散機等を挙げることができる。また、通常の撹拌羽を用いた攪拌機や、高速の分散機、乳化機等によって分散処理を施してもよい。
【0048】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、水性媒体中で、カーボンブラック100質量部に対し、30〜500質量部の親水化剤を少量ずつ順次添加しつつ酸化処理して酸化処理物を得ることが好ましい。
カーボンブラック100質量部に対する親水化剤の添加量は、30〜500質量部であり、100〜500質量部であることが好ましく、150〜500質量部であることがより好ましい。
【0049】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法において、カーボンブラック100質量部に対する親水化剤の添加量が上記範囲内にあることにより、カーボンブラックの表面を好適に親水化することができる。
【0050】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、カーボンブラック100質量部に対し、上記親水化剤を少量ずつ順次添加する。
親水化剤は、カーボンブラックに対し、少量ずつ連続して加えてもよいし、少量ずつ時間間隔を空けて(断続的に)添加してもよい。
親水化剤は、上述したように少量ずつ連続して加えてもよいが、少量ずつ断続的に添加する場合は、添加する総量の1/10〜1/2ずつ加えることが好ましく、添加する総量の1/10〜1/3ずつ加えることがより好ましく、添加する総量の1/10〜1/5ずつ加えることがさらに好ましい。
【0051】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、カーボンブラック100質量部に対し、上述したように親水化剤を少量ずつ連続して(回数に依らずに)添加してもよいが、少量ずつ断続的に添加する場合は、上記親水化剤を2〜10回に分けて添加することが好ましく、3〜10回に分けて添加することがより好ましく、5〜10回に分けて添加することがさらに好ましい。
【0052】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、カーボンブラック100質量部に対し、上記親水化剤を少量ずつ順次添加する。
上記親水化剤は、上述したように少量ずつ連続して添加してもよいが、少量ずつ断続的に添加する場合は、5〜90分間毎に1回添加することが好ましく、5〜60分間毎に1回添加することがより好ましく、5〜30分間毎に1回添加することがさらに好ましい。
【0053】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、上記のとおりカーボンブラック100質量部に対し、上記親水化剤の全量を一度に加えることなく少量ずつ順次加えることにより、酸化剤等の親水化剤の添加に伴う発熱暴走を抑制し、親水化剤を有効に使用して効果的に親水化することができる。また、親水化剤の濃度を低く保つことが出来るため酸化反応速度等の親水化反応速度を遅くすることが可能となり、親水化剤がカーボンブラック表面と接触する前に分解したり、局所的に親水化反応が進むことを抑制することができる。
【0054】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法において、酸化処理時の温度は、50〜100℃が好ましく、60〜90℃がより好ましく、60〜80℃がさらに好ましい。
【0055】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法において、酸化処理時間は、2〜24時間が好ましく、3〜12時間がより好ましく、4〜10時間がさらに好ましい。
【0056】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、上記酸化処理後に、さらに限外濾過膜を用いて残塩を分離処理してもよい。
【0057】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、上記処理によって得られた親水化処理物を、3kg/分間〜8kg/分間の流量で送液して遠心分離することが好ましく、3.5kg/分間〜7.5kg/分間の流量で送液して遠心分離することがより好ましく、4.0kg/分間〜7.0kg/分間の流量で送液して遠心分離することがさらに好ましい。
【0058】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、親水化処理物を上記流量で送液して遠心分離することにより、カーボンブラックに含まれるグリットと呼ばれるカーボンブラック以外の粒子を除去することができる。
【0059】
上記遠心分離処理により得られた上澄み液をそのまま目的とする親水化カーボンブラック水性分散体としてもよいし、さらに限外濾過膜によって処理することにより、上澄み液中の余剰の塩類を除去するとともに、水性媒体を除去して所望濃度まで濃縮処理を施してもよい。
なお、さらに濃縮処理を施すことにより、本発明に係る親水化カーボンブラックを単離することもできる。
【0060】
従来、親水化カーボンブラック水性分散体は、一旦調製した後に濾過試験等を行い、適度な分散性を有する親水化カーボンブラック水性分散体が得られるまで一定程度繰り返し調製して好適な製造条件を決定する必要があったが、濾過試験に所定の時間を要することから、製造条件の決定までに一定程度の時間を要し、例えば小ロットの製品を製造する場合等において、製造時間全体の増大を招き易かった。
これに対して本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体の製造方法においては、製造後にパルスNMRおよびレーザー回折・散乱方式粒子径分布測定装置等の光学的手段を用いた装置により、分散性に影響する因子である
1H核のスピンースピン緩和時間T2やアグロメレートの平均粒径Dupa
50%を迅速かつ的確に測定することができる。
このため、本発明によれば、水性媒体中で優れた分散性を発揮して、インクジェットプリンターインクに好適に使用することができる酸化カーボンブラック水性分散体を簡便かつ迅速に製造する方法を提供することができる。
【0061】
本発明に係る親水化カーボンブラック水性分散体を用いてインクジェットプリンターインクを調製する場合、親水化カーボンブラック水性分散体に加える添加剤としては、湿潤剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、浸透剤、定着剤、消泡剤等を挙げることができる。
【0062】
湿潤剤としては、各種水溶性有機溶剤を挙げることができ、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオ−ル、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコ−ル類、エチレングリコールモノエチルエ−テル、エチレングリコ−ルモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル類、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
これらの水溶性有機溶剤は、水とともに単独もしくは複数混合して用いることができる。
【0063】
防腐剤、防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、プロキセルXL−2等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0064】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾール等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0065】
pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0066】
浸透剤としては、低臭気性かつ低蒸気圧の多価アルコールアルキルエーテルを使用することが好ましく、多価アルコールアルキルエーテルの中でも、紙などの被記録材へのインク浸透速度を効果的に速めることにより、被記録材上でインクの速乾性を向上させ、遅乾性に起因するブリーディングを防止し、かつ浸透にともなう滲みを起こしにくいものを選択して使用することが好ましい。このような多価アルコールアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールブチルエーテル等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0067】
インクジェットプリンター用インクを調製する場合、例えば、攪拌容器中に、攪拌しながら、親水化カーボンブラック水性分散体を加えつつ、さらに湿潤剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、pH調整剤、浸透剤、定着剤、消泡剤等の添加剤や、公知任意の水溶性樹脂、水に分散したワックス、樹脂エマルション等を添加して、攪拌し、必要に応じて水、水溶性有機溶媒で粘度を調整して、公知任意の濾過方法により濾過することにより製造することができる。
【0068】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0069】
(実施例1)
純水660Lに対し、東海カーボン(株)製カーボンブラック(窒素吸着比表面積135m
2/g、DBP吸収量140cm
3/100g)を50kg投入し、攪拌速度100rpmで攪拌混合したのち、過硫酸ナトリウムを10kg投入して65℃まで加温し、65℃に到達した後、温度を保持しながら30分毎に過硫酸ナトリウムを10kgずつ計10回投入して、合計で100kgの過硫酸ナトリウムを投入した後、65℃で6時間保持することにより酸化処理を施した。
上記酸化処理を施した処理液を、限外濾過膜(旭化成(株)製、AHP−1010、分画分子量 50000)にて残塩分離処理を施し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH10に調整した。
上記pH10に調整した処理液において、処理液中の凝集体の平均粒径の調整を行うため、遠心分離機(三菱化工機(株)製、SJ−30F)へ3.0kg/分間の流量で送液して遠心分離し、上澄み液を回収した。
得られた上澄み液中の余剰の塩類の除去精製と水分除去による濃縮を行うため、再度上記限外濾過膜による処理を行い、固形分濃度(酸化カーボンブラック濃度)21質量%の分散液を得た。得られた分散液に精製水を添加して固形分濃度を20質量%に調整することにより目的とする酸化カーボンブラック水分散体を得た。
【0070】
(実施例2)
遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から5.0kg/分間に変更した以外は、実施例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
【0071】
(実施例3)
過硫酸ナトリウムを10kgずつ計10回投入することに代えて、過硫酸ナトリウムを15kgずつ計10回投入して、合計で150kgの過硫酸ナトリウムを投入した以外は、実施例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
【0072】
(実施例4)
遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から5.0kg/分間に変更した以外は実施例3と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
【0073】
(実施例5)
過硫酸ナトリウムを10kgずつ計10回投入することに代えて、過硫酸ナトリウムを12.5kgずつ計10回投入して、合計で125kgの過硫酸ナトリウムを投入するとともに、遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から4.0kg/分間に変更した以外は実施例1と同様の方法でカーボンブラック水分散体を得た。
【0074】
実施例1〜実施例5における製造条件を表1に示す。
【0076】
(比較例1)
純水660Lに対し、東海カーボン(株)製カーボンブラック(窒素吸着比表面積135m
2/g、DBP吸収量140cm
3/100g)を50kg投入し、攪拌速度100rpmで攪拌混合したのち、酸化剤として過硫酸ナトリウムを100kg投入して65℃まで加温し、65℃で6時間保持することにより酸化処理を施した。
上記酸化処理を施した処理液を、限外濾過膜(旭化成(株)製、AHP−1010、分画分子量 50000)にて残塩分離処理を施し、次いで水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH10に調整した。
上記pH10に調整した処理液において、処理液中の凝集体の平均粒径の調整を行うため、遠心分離機(三菱化工機(株)製、SJ−30F)へ3.0kg/分の流量で送液して遠心分離し、上澄み液を回収した。
得られた上澄み液中の余剰の塩類の除去精製と水分除去による濃縮を行うため、再度上記限外濾過膜による処理を行い、固形分濃度(酸化カーボンブラック濃度)21質量%の分散液を得た。得られた分散液に精製水を添加して固形分濃度を20質量%に調整することにより目的とする酸化カーボンブラック水分散体を得た。
【0077】
(比較例2)
遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から5.0kg/分間に変更した以外は、比較例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
【0078】
(比較例3)
遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から5.5kg/分間に変更した以外は、比較例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
【0079】
(比較例4)
過硫酸ナトリウムの投入量を100kgから50kgに変更し、遠心分離機への送液量を3.0kg/分間から2.0kg/分間に変更した以外は、比較例1と同様の方法で酸化カーボンブラック水分散体を得た。
【0080】
比較例1〜比較例4における製造条件を表2に示す。
【0082】
実施例1〜実施例5および比較例1〜比較例4で各々得られた酸化カーボンブラック水性分散液を用い、以下の方法で、水中に分散した状態でパルスNMRのCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2、アグロメレートの平均粒径Dupa
50%、電気伝導度、pH、濾過性、印字濃度を測定した。結果を表4および表5に示す。
【0083】
<パルスNMRのCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2>
得られた各酸化カーボンブラック水分散体から所定量を測定試料として採取し、XiGo Nanotools社製「Acron Area」を用いて、測定核を水素核とし、測定温度30℃、周波数13MHzの測定条件で、CPMG法からスピン−スピン緩和時間T2を求めた。
【0084】
<酸化カーボンブラック粒子のアグロメレートの平均粒径Dupa
50%>
各酸化カーボンブラック水分散体において、ヘテロダインレーザードップラー方式粒度分布測定装置「マイクロトラック社製、UPA model 9340」を用いてカーボンブラック粒子凝集体の粒径を測定して累積度数分布曲線を作成し、この累積度数分布曲線から50%累積度数の値をカーボンブラック粒子凝集体の平均粒径(D50)として求めた。
【0085】
<電気伝導度>
各酸化カーボンブラック水分散体の液温を25℃に保ち、東亜ディーケーケー(株)製「電気伝導率計 CM−30G」を用いて電気伝導度を測定した。
【0086】
<pH>
各酸化カーボンブラック水分散体の液温を25℃に保ち、東亜ディーケーケー(株)製「pH Meter HM−30G」を用いてpHを測定した。
【0087】
<濾過性>
各酸化カーボンブラック水分散体100gを測定試料とし、直径25mmのセルロース混合エステルメンブレンフィルター(膜孔径1μm)を用いて、2666.4Paの減圧下でろ過試験を行い、濾過通過量を測定した。
【0088】
<印字濃度>
表3に示す含有割合になるように、各酸化カーボンブラックに対し、さらに、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、アセチルグリコール、ベンゾトリアゾール、防腐剤(アビシア(株)製プロキセルXL−2)、トリエタノールアミンを加えることにより、インクジェットプリンター用水性インクを各々調製し、インクジェットプリンターエプソン社製「EM−930C」用カートリッジに充填し、印字試験を行った。印字メディアは普通紙(Xerox4024)を用いた。
印字後、各印字濃度をマクベス濃度計「コールモーゲン社製、RD-927」を用いて反射光学濃度(O.D.値)を測定した。
【0092】
表4より、実施例1〜実施例5においては、酸化カーボンブラックのパルスNMRのCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2が500ms以下であり、水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa
50%が70nm〜200nmであることにより、各酸化カーボンブラック水分散体100gの全量が、膜孔径1μmのフィルターを通過し得る濾過性(分散性)に優れたものであるとともに、係る酸化カーボンブラックを用いて調製されたインクジェットプリンターインクが優れた印字濃度を発揮し得ることが分かる。
【0093】
一方、表5より、酸化カーボンブラックのパルスNMRのCPMG法により測定される
1H核のスピンースピン緩和時間T2が500ms超である場合(比較例1〜比較例4)、各酸化カーボンブラック水分散体100gのうち一部しか膜孔径1μmのフィルターを通過し得ず、濾過性(分散性)に劣るものであることが分かる。
また、表5より、水中に分散した状態におけるアグロメレートの平均粒径Dupa
50%が70nm〜200nmの範囲外である場合(比較例3および比較例4)、印字自体不可能なものであったり(比較例3)、印字濃度が非常に低い(比較例4)ことが分かる。
表2および表5より、比較例1〜比較例4では、カーボンブラックに対し酸化剤を一回で投入したため、反応温度が急激に上昇し、カーボンブラックを酸化する前に自己分解する量が大半を占めてしまい、カーボンブラック表面に酸性官能基を均一に付与し得ず、緩和時間が500ms超になったと考えられる。
また、表2および表5より、比較例3および比較例4においては、分級条件を厳しくしたためにDupa
50%が70〜200nmの範囲外になったと考えられる。