(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリ塩化ビニル系樹脂を溶解可能な有機溶剤(A)と、上記有機溶剤に溶解可能な重合体(B)と、乾燥塗膜の表面張力を調整する表面調整剤(C)とを含有し、上記有機溶剤(A)は、ケトン及び/又はエーテルを含むと共に、上記重合体(B)は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含むことを特徴とするプライマー組成物。
有機溶剤(A)が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びテトラヒドロフランよりなる群から選ばれた少なくとも一種の有機溶剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のプライマー組成物。
表面調整剤(C)が、フッ素系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤及びアクリル系表面調整剤よりなる群から選ばれた少なくとも一種の調整剤を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のプライマー組成物。
【背景技術】
【0002】
従来から、家具、外装材及び内装材などの基材表面に化粧シートを接着剤を用いて貼り合わせることによって意匠性を付与することが行われている。
【0003】
化粧シートを基材表面に接着させるために用いられる接着剤としては、従来から、有機溶剤を含む接着剤及び湿気硬化型ホットメルト接着剤が用いられている。湿気硬化型ホットメルト接着剤は、シックハウス症候群の原因とされる揮発性有機化合物(VOC)を含まず、作業衛生に優れ、環境汚染を抑制できることから多く用いられている。
【0004】
又、基材は、断熱効果に優れ、省エネルギー効果を奏することから、ポリ塩化ビニル系樹脂などの合成樹脂化が進んでいる。
【0005】
しかしながら、合成樹脂製の基材は接着性に劣る傾向があり、基材表面に化粧シートを接着させる場合には、基材の表面にプライマー組成物を塗布するなどの前処理が行われることが多い。
【0006】
このようなプライマー組成物としては、特許文献1に、シリコーン変性アクリル樹脂1重量部に対して、ポリイソシアネート化合物0.5〜10重量部、および1,4−ブタンジオール0.01〜1.0重量部を添加したプライマー組成物が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のプライマー組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂を溶解可能な有機溶剤(A)と、上記有機溶剤に溶解可能な重合体(B)と、乾燥塗膜の表面張力を調整する表面調整剤(C)とを含有する。
【0016】
〔ポリ塩化ビニル系樹脂を溶解可能な有機溶剤(A)〕
プライマー組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂を溶解可能な有機溶剤(A)を含有している。これは、プライマー組成物が、ポリ塩化ビニル系樹脂を含む基材にドープセメントとして接着性を発現するためである。従って、プライマー組成物を基材表面に塗工したとき、プライマー組成物中の有機溶剤(A)が、基材の表面を構成しているポリ塩化ビニル系樹脂を溶解させ、有機溶剤(A)に溶解している後述する重合体(B)が形成する乾燥塗膜と、基材表面とを一体化させる。
【0017】
ポリ塩化ビニル系樹脂を溶解可能な有機溶剤(A)としては、ポリ塩化ビニル系樹脂を溶解可能であれば、特に限定されないが、ケトン又はエーテルが好ましい。ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセトフェノン、ベンゾフェノンなどが挙げられ、メチルエチルケトン、アセトンが好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどが挙げられ、テトラヒドロフランが好ましい。なお、有機溶剤(A)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。有機溶剤が複数種類の有機溶剤の混合物である場合、複数種類の有機溶剤のうち、一の有機溶剤がポリ塩化ビニル系樹脂を溶解できればよい。
【0018】
なお、ポリ塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルを単量体成分として含有している合成樹脂をいう。ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有する単量体との共重合体、塩化ビニルを単量体成分として含有しない重合体(例えば、ポリオレフィン系樹脂など)に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体などが挙げられる。
【0019】
塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのα―オレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸エステル類、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのN−置換マレイミド類などが挙げられる。
【0020】
(有機溶剤に溶解可能な重合体)
プライマー組成物は、上記有機溶剤(A)に溶解可能な重合体(B)を含有している。重合体(B)が有機溶剤(A)に溶解可能か否かは下記方法により判断される。有機溶剤(A)13.5質量部及び重合体(B)1.5質量部をガラス製ビーカーに供給して25℃にて150rpmの回転速度で6時間攪拌した後、25℃にて30分間静置する。有機溶媒(A)中に沈殿物が存在するか否かを目視観察し、沈殿物が存在しない場合には、重合体(B)は有機溶媒(A)に溶解可能であると判断する。
【0021】
重合体(B)としては、プライマー組成物を構成した状態において、有機溶剤(A)の中に溶け込んで均一な相を形成すると共に、有機溶媒(A)の除去後の乾燥塗膜が、基材表面及び接着剤と一体化可能であればよく、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂(アクリル酸−スチレン共重合体など)、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂などが挙げられ、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂が好ましく、プライマー組成物の再剥離性が向上するので、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及びアクリル系樹脂を併用することが好ましい。なお、重合体(B)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。重合体(B)が複数種類の重合体の混合物である場合、重合体のうち、少なくとも一の重合体が有機溶剤(A)に溶解可能であればよい。
【0022】
重合体(B)としては、プライマー組成物の再剥離性及び接着性に優れていることから、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体及びアクリル系樹脂からなる群から選ばれた少なくとも一種の重合体を含有していることが好ましく、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体がより好ましく、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。また、重合体(B)は、プライマー組成物の再剥離性が向上することから、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル系樹脂を含有していることが好ましい。
【0023】
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、例えば、日進化学工業社から商品名「ソルバインCN」「ソルバインCH」にて市販されている。
【0024】
アクリル系樹脂とは、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸などのアクリル系単量体を主成分(50質量%以上)とし、必要に応じて、アクリル系単量体と共重合可能な単量体を含む単量体組成物の重合体である。(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アクリル系単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、スチレンなどが挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0025】
プライマー組成物中における重合体(B)の含有量(重合体(B)が二種以上の重合体を含有している場合は、重合体の総含有量)は、有機溶剤(A)(有機溶媒(A)が二種以上の有機溶媒を含有している場合は、有機溶媒の総含有量)100質量部に対して0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。重合体(B)の含有量が0.1質量部以上であると、プライマー組成物の接着性が向上する。重合体(B)の含有量が20質量部以下であると、プライマー組成物が適度な粘度となり、プライマー組成物は優れた塗工性を有する。
【0026】
〔乾燥塗膜の表面張力を調整する表面調整剤(C)〕
プライマー組成物は、有機溶剤(A)の除去後に形成された乾燥塗膜の表面張力を調整するために、表面調整剤(C)が含有されている。
【0027】
表面調整剤(C)は、プライマー組成物から有機溶剤(A)を除去した後に形成される乾燥塗膜の表面張力(ぬれ性)を調整することによって、乾燥塗膜と接着剤との間の初期接着性と、接着剤の養生硬化後の硬化物と乾燥塗膜との間の接着性のバランスを図り、プライマー組成物の再剥離性及び接着性の両立を図っている。
【0028】
表面調整剤(C)としては、プライマー組成物の乾燥塗膜の表面張力を調整することができれば、特に限定されず、例えば、フッ素系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤、アクリル系表面調整剤などが挙げられ、少量の添加で表面張力を調整可能であることから、フッ素系表面調整剤、シリコーン系表面調整剤が好ましく、フッ素系表面調整剤がより好ましい。なお、表面調整剤(C)は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0029】
フッ素系表面調整剤としては、例えば、パーフルオロアルキル基含有オリゴマーが挙げられる。フッ素系表面調整剤としては、例えば、ビックケミー社から商品名「BYK−340」、大日本インキ工業社から商品名「F−474」及び「F−479」、AGCセイミケミカル社から商品名「サーフロンS−111N」、「サーフロンS−113」、「サーフロンS−121」、「サーフロンS−131」、「サーフロンS−132」、「サーフロンS−141」、「サーフロンS−381」、「サーフロンS−383」、「サーフロンS−651」及び「サーフロンS−243」にて市販されているものを用いることができる。
【0030】
シリコーン系表面調整剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンを変性した変性シリコーンなどが挙げられる。変性シリコーンとしては、具体的には、アルキル変性ポリシロキサン、フェニル変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサンなどが挙げられる。
【0031】
具体的には、シリコーン系表面調整剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエステル変性ジメチルポリシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン、アラルキル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ジメチルポリシロキサン、ポリエステル変性(メタ)アクリロイル基含有ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0032】
シリコーン系表面調整剤は、例えば、東レ・ダウコーニング社から商品名「DC11PA」、「ST80PA」、「DC3074」、「DC3037」及び「SR2402」、信越化学工業社から商品名「KP−321」、「KP−324」、「KP−327」、「KR−9218」及び「X−40−9220」にて市販されているものを用いることができる。
【0033】
アクリル系表面調整剤としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステルモノマーを原料として得られた重量平均分子量が300〜50,000のアクリル重合体が挙げられる。また、シリコン変性されたアクリル重合体なども含まれる。シリコン変性したアクリル樹脂は、例えば、ケイ素(Si)を含有するアクリレートモノマーとアルキル(メタ)アクレートとを共重合することにより得られる。
【0034】
アクリル系表面調整剤としては、例えば、ビックケミー・ジャパン社から商品名「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−358N」、「BYK−361N」及び「BYK−392」、楠本化成社から商品名「DISPARLON LF−1980」、「DISPARLON LF−1982」、「DISPARLON LF−1983」、「DISPARLON LF−1984」、「DISPARLON LF−1985」及び「DISPARLON NSH−8430HF」にて市販されているものを用いることができる。
【0035】
プライマー組成物中における表面調整剤(C)(表面調整剤(C)が二種以上の表面調整剤を含有している場合は、表面調整剤の総含有量)の含有量は、有機溶剤(A)100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。表面調整剤(C)の含有量が上記範囲内であると、プライマー組成物は、再剥離性及び接着性を両立することができる。
【0036】
〔他の成分〕
プライマー組成物は、その物性を損なわない範囲内において、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤などの添加剤が含有されていてもよい。
【0037】
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤としては、特に限定されず、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンなどのヒンダードフェノール系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)などのイオウ系酸化防止剤、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。なお、酸化防止剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0038】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、一種単独で用いられてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0039】
(充填剤)
充填剤としては、例えば、雲母、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、ケイソウ土、尿素系樹脂、スチレンビーズ、焼成クレー及び澱粉などが挙げられる。
【0040】
プライマー組成物の使用要領について説明する。プライマー組成物は、ポリ塩化ビニル系樹脂を含む基材の表面に接着剤を介して表面シートを接着一体化させるときに用いられることが好ましい。
【0041】
具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂を含む基材の表面に汎用の要領でプライマー組成物を塗工して室温又は加熱することによって乾燥させて有機溶媒(A)を除去して基材表面に乾燥塗膜を一体化させる。基材の表面にプライマー組成物の乾燥塗膜が強固に一体化した状態にて形成される。
【0042】
しかる後、表面シートの裏面に接着剤を塗布した後、ラッピングマシンなどを用いて表面シートを基材の表面に貼り合わせる。このとき、プライマー組成物の乾燥塗膜は、適度な表面張力(濡れ性)を有していることから、表面シートを基材の表面に貼り合わせた直後であれば、接着剤の糊残りを殆ど生じさせることなく、表面シートを基材の表面から円滑に剥離した上で、基材の表面に表面シートを再度貼り合わせることができ、不良率の低減及びリードタイムの低下を図ることができる。
【0043】
そして、接着剤の養生硬化後は、プライマー組成物の乾燥塗膜は接着剤と強固に一体化し、表面シートは、基材の表面に強固に貼り合わせられており、長期間に亘って優れた加飾効果を維持する。
【0044】
表面シートとしては、従来公知の化粧シートなどが用いられ、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂シート、ポリオレフィン系樹脂シートなどが挙げられる。
【0045】
接着剤としては、表面シートを基材の表面に接着一体化させることができればよく、例えば、湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤、溶剤型接着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0047】
(実施例1〜4、比較例1、2)
テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(日進化学工業社製 商品名「ソルバインCN」、ガラス転移温度:75℃)、アクリル系樹脂(楠本化成社製 商品名「Neocryl B−811」、ガラス転移温度:110℃)、フッ素系表面調整剤(AGCセイミケミカル社製 商品名「サーフロンS−651」)及びシリコーン系表面調整剤(ビックケミ−・ジャパン社製 商品名「BYK−325」)を表1に示した量ずつガラス瓶に供給し、シェイカーを用いて均一に混合してプライマー組成物を作製した。
【0048】
得られたプライマー組成物の再剥離性、常態接着強度及び耐熱クリープを下記に示した要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0049】
(再剥離性)
ポリ塩化ビニル製の板状の平面長方形の板状の基材(縦150cm×横50cm)の表面全面にプライマー組成物を厚み50μmにて塗工した後、20℃にて一週間乾燥させてプライマー組成物中のテトラヒドロフランを蒸発除去して、基材の表面に乾燥塗膜を形成した。
【0050】
一方、湿気硬化型ホットメルト接着剤(積水フーラー社製 商品名「エスダイン9627」)を用意した。湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃に加熱して溶融させた。溶融状態の湿気硬化型ホットメルト接着剤を平面長方形状(縦150cm×横50cm)で且つ厚みが160μmのポリオレフィン系樹脂シートの一面全面に塗工厚み50μmで塗工した。
【0051】
次に、表面温度を40℃に保持したポリ塩化ビニル製の板状の基材の表面上に形成された乾燥塗膜上に、ポリオレフィン系樹脂シートを湿気硬化型ホットメルト接着剤が基材側となるように重ね合わせた後、ポリオレフィン系樹脂シート上にゴムロールを転動させて、試験片を作製した。試験片を20℃の雰囲気下にて10分間放置した後、ポリオレフィン系樹脂シートを基材表面から手で勢いよく剥がした。ポリオレフィン系樹脂シートを基材表面から剥離した後の基材表面に残った湿気硬化型ホットメルト接着剤の総面積S
1を測定した。湿気硬化型ホットメルト接着剤の総面積をS
0として下記式に基づいて残存率(%)を算出した。
残存率(%)=100×S
1/S
0
【0052】
(常態接着強度)
ポリ塩化ビニル製の平面長方形の板状の基材(縦150cm×横50cm)の表面全面にプライマー組成物を厚み50μmにて塗工した後、20℃にて一週間乾燥させてプライマー組成物中のテトラヒドロフランを蒸発除去して、基材の表面に乾燥塗膜を形成した。
【0053】
一方、湿気硬化型ホットメルト接着剤(積水フーラー社製 商品名「エスダイン9627」)を用意した。湿気硬化型ホットメルト接着剤を120℃に加熱して溶融させた。溶融状態の湿気硬化型ホットメルト接着剤を平面長方形状(縦150cm×横50cm)で且つ厚みが180μmのポリオレフィン系樹脂シートの一面全面に塗工厚み50μmで塗工した。
【0054】
次に、表面温度を40℃に保持したポリ塩化ビニル製の板状の基材の表面上に形成された乾燥塗膜上に、ポリオレフィン系樹脂シートを湿気硬化型ホットメルト接着剤が基材側となるように重ね合わせた後、ポリオレフィン系樹脂シート上にゴムロールを転動させて、試験片を作製した。
【0055】
試験片を、温度23℃、相対湿度55%環境下に1時間放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を冷却固化させた。その後、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に1週間に亘って放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を湿気硬化させた。そして、基材表面からポリオレフィン系樹脂シートを、剥離角度180°、剥離速度200mm/分で剥離し、この時の平均の剥離強度を常態接着強度(N/25mm)として測定した。
【0056】
(耐熱クリープ)
常態接着強度と同様の要領で試験片を作製した。次に、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に1時間放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を冷却固化させた。次に、試験片を温度23℃、相対湿度55%環境下に1週間放置することにより、湿気硬化型ホットメルト接着剤を湿気硬化させた。
【0057】
60℃の温度環境下において、ポリオレフィン系樹脂シートが下面となるようにして試験片を水平に設置した後、ポリオレフィン系樹脂シートの長さ方向における一方の端部に、垂直方向に500g/25mmの加重をかけた。この状態のまま24時間経過後、ポリオレフィン系樹脂シートが基材表面から剥離した長さ(mm)を測定した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1において、実施例と比較例との対比より、本発明のプライマー組成物は、再剥離性と接着性に優れていることがわかる。具体的には、実施例1、2及び比較例1の対比により、有機溶剤(A)として、ポリ塩化ビニル系樹脂を溶解可能な有機溶媒ではない、酢酸エチルを用いた場合には、接着性が不十分であるが、ポリ塩化ビニル系樹脂を溶解可能な有機溶剤である、テトラヒドロフラン及びメチルエチルケトンを使用した場合には、接着性に優れることがわかる。実施例3と比較例2との対比により、特定の表面調整剤を使用することにより、プライマー組成物は再剥離性に優れていることがわかる。実施例1と実施例3との対比により、重合体(B)として、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体とアクリル系重合体とを併用することにより、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体のみを用いた場合よりも、プライマー組成物は再剥離性に優れていることがわかる。又、実施例1と実施例4との対比により、表面調整剤(C)として、フッ素系表面調整剤を用いた場合の方が、シリコーン系表面調整剤を使用した場合よりも、プライマー組成物が接着性に優れていることがわかる。