特許第6706506号(P6706506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706506
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】造形材料
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20200601BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20200601BHJP
【FI】
   B29C64/118
   B33Y70/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-22749(P2016-22749)
(22)【出願日】2016年2月9日
(65)【公開番号】特開2016-147486(P2016-147486A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2019年1月31日
(31)【優先権主張番号】特願2015-24247(P2015-24247)
(32)【優先日】2015年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】迫部 唯行
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】田代 こゆ
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−502862(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/130401(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0291886(US,A1)
【文献】 特開2010−236117(JP,A)
【文献】 特開2014−084549(JP,A)
【文献】 特開2015−000827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の形態の造形材料を、熱溶解積層法3Dプリンターに供給して、造形ヘッドにて、造形材料を構成する複数本の熱可塑性合成繊維を構成する熱可塑性樹脂を加熱により溶融させ、ノズルから射出・積層して所望の形状の三次元造形物を作成することを特徴とする造形方法であり、
造形材料の形態が、複数本の熱可塑性合成繊維が集束されて1本の連続した糸状の形態を呈しており、造形材料を構成する複数本の熱可塑性合成繊維は、熱溶解積層法3Dプリンターにおける造形ヘッドにて溶融するものであることを特徴とする造形方法。
【請求項2】
熱可塑性合成繊維を構成する熱可塑性樹脂の融点が180℃以下であることを特徴とする
請求項1記載の造形方法
【請求項3】
複数本からなる熱可塑性合成繊維の束を2本以上製紐することにより集束させて1本の連
続した糸状の形態を呈していることを特徴とする請求項1または2記載の造形方法
【請求項4】
複数本からなる熱可塑性合成繊維の束を2束以上撚り合わせることにより集束させて1本
の連続した糸状の形態を呈していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の
造形方法
【請求項5】
複数本の熱可塑性合成繊維の束は、撚りを有することを特徴とする請求項1〜4のいずれ
か1項記載の造形方法
【請求項6】
熱可塑性合成繊維同士が熱融着により集束していることを特徴とする請求項1〜5のいず
れか1項記載の造形方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱溶解積層法3Dプリンターを用いて三次元造形物を得る造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ上の設計図をもとに三次元のものを作り出す3Dプリンターは、金型や溶融装置を用いなくとも、プラスチック製の部品、治具、製品を容易に作ることができ、企業を中心に急速に普及している。特に、熱可塑性樹脂を造形材料に用いる熱溶解積層方式の3Dプリンターは廉価版も販売され、個人にも普及し始めている。
【0003】
このような熱溶解積層法3Dプリンターに用いる造形材料としては、熱可塑性樹脂を直径数mmで長手方向に連続してなる線状の樹脂成型物(モノフィラメント状物)が使用されている。例えば、特許文献1には、高精度の造形用材料として、平均直径が0・069〜0.074インチ(約1.75〜1.90mm)、長さ20フィート(約6.1m)以上、0.0004インチ(0.01mm)以下の直径の標準偏差を有する造形材料(供給材料)が開示されている。また、このような造形材料を構成する熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ乳酸などの熱可塑性樹脂が用いられている。熱溶解積層方式は、材料押出方式ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−523391
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような連続線状の樹脂成型物(モノフィラメント状物)からなる造形材料は、硬く、取扱い性が良くない。なかでもポリ乳酸からなる造形材料は特に硬く、このような硬い造形材料は、ボビンなどに捲かれている状態から、捲き張力を少し緩めた途端に捲かれた状態が解除されボビンから外れて散らばってバラけた状態となってしまう(このような状態を「クラッシュ発生」とも呼ぶ。)。また、市場にて販売されているポリ乳酸製の造形材料において、結晶化が進んでいないものは、使用中に折れやすいという問題を抱えている。
【0006】
本発明は、この様な現状に鑑みて行われたもので、取扱い性が良好な熱溶解積層法3Dプリンター用の造形材料を用いた造形方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討した。熱溶解積層法3Dプリンター用の材料の形態としては、いわゆるモノフィラメント状物を用いることが常識であったが、その常識に捉われずに他の形態を適用できるのではないかと検討していたなかで、複数本の合成繊維を集束した紐状物を適用したとところ、柔軟であり、折れることはなく、取扱い性が良好な熱溶解積層法3Dプリンター用造形材料を提供できるということを見出し、本発明に到達した。
【0008】
本発明は、下記の形態の造形材料を、熱溶解積層法3Dプリンターに供給して、造形ヘッドにて、造形材料を構成する複数本の熱可塑性合成繊維を構成する熱可塑性樹脂を加熱により溶融させ、ノズルから射出・積層して所望の形状の三次元造形物を作成することを特徴とする造形方法であり、
造形材料の形態が、複数本の熱可塑性合成繊維が集束されて1本の連続した糸状の形態を呈しており、造形材料を構成する複数本の熱可塑性合成繊維は、熱溶解積層法3Dプリンターにおける造形ヘッドにて溶融するものであることを特徴とする造形方法を要旨とするものである。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明において、熱溶解積層法3Dプリンターに用いる造形材料とは、熱溶解積層法3Dプリンターに供給して三次元造形物を得る際の材料であって、熱可塑性樹脂によって構成される。この造形材料を使用し、コンピュータ上の設計図に基づき、造形ヘッドにて、造形材料を構成する熱可塑性樹脂を加熱により溶融させ、ノズルから射出・積層して所望の形状の三次元造形物を作成するのである。
【0011】
本発明における造形材料は、熱可塑性合成繊維によって構成される。合成繊維を構成する熱可塑性樹脂としては、熱溶解積層法3Dプリンターにおける造形ヘッドの溶融温度で溶融しうるものであれば用いることができ、融点が180℃以下のものがよく、例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体系樹脂、フッ素樹脂系樹脂が挙げられる。これらの樹脂を混合したものを用いてもよい。なかでも、ポリ乳酸は、反りが発生しにくいため好ましく、D体含有量が低いポリL乳酸は黄色味が帯びにくいため、さらに好ましい。D体含有量を調整することにより、プリンターの温度制御に応じてポリ乳酸の融点を調整することができるが、黄色味を帯びにくくするためには、D体含有量が1.5%未満のものがよい。また、上記した樹脂を用いて合成繊維を製造する方法においても、特に限定するものではないが、結晶性を有する熱可塑性樹脂を用いて繊維を製造する場合は、延伸工程や熱収縮を制御するためのリラックス工程を製造工程中に適用するとよい。
【0012】
本発明における造形材料は、複数本の熱可塑性合成繊維が集束されて1本の連続した糸状の形態を呈している。複数本の合成繊維を集束させる方法としては、撚りをかける方法、製紐する方法、熱処理により熱接着する方法等が挙げられる。より具体的には、複数本の合成繊維に撚りをかけて集束する方法、複数本の合成繊維を引き揃えあるいは撚りをかけた束を2本以上用いて製紐することによって組紐とし集束する方法、複数本の合成繊維を引き揃えたものに熱処理を施すことにより合成繊維を構成する熱可塑性樹脂の一部を溶融または軟化させて繊維同士を熱接着させることにより集束する方法、あるいは、これら(撚り、製紐、熱接着)を組合せた方法が挙げられる。
【0013】
複数本の合成繊維を引き揃えて撚りをかけて集束する方法においては、片撚りの場合は、端部から解けやすいため、熱処理を施すことにより撚り形態を固定させることが好ましい。熱処理の際に、繊維を構成する熱可塑性樹脂の一部を溶融または軟化する温度で処理を施し、繊維同士を熱接着させて形態を固定させることも好ましい。なお、片撚り以外の撚糸であっても、熱処理によって風合いの調整や、繊維間の集束密度の向上を行うことが可能である。
【0014】
また、片撚りしてなる繊維束2本以上を片撚りの方向とは反対の方向に撚り合わせて集束させ、いわゆる諸撚りを施すことにより、解けにくくすることも好ましい。さらに、諸撚りした後に、熱処理を施し、熱固定あるいは熱接着により形態を固定させることも好ましい。諸撚り前の片撚りしてなる繊維束の撚り方向(下撚りの方向)としては、同一方向に撚られた繊維束を選択するものとし、下撚り回数は、繊度に応じて適宜調整すればよいが50〜1000回/m程度が好ましい。諸撚り(上撚り)の回数は、用いる繊維束の太さや本数に応じて適宜設計するとよい。
【0015】
繊維束を2本以上用いて製紐することによって集束させる方法においては、平打ち、角打ちおよび丸打ちのいずれを適用してよい。なかでも、現在、熱溶解積層法3Dプリンターへの供給材料として使用されている連続線状物の横断面が円形のものが多く使用されていることから、丸打ちによる組紐がよい。丸打ちの場合、より真円形状とするために、4本打ち以上とすることが好ましく、より好ましくは8本打ち以上であり、さらに好ましくは16本打ちである。また、丸打ち紐の形態として、組紐の長手方向(軸方向)の中心部に芯糸が挿入され、芯糸を中心としてその周囲に側糸として複数本の糸が配されてなる形態の組紐を採用することが好ましい。得られる造形材料の横断面において中心部の密度も密となって、空隙部分が生じにくいためである。
【0016】
組紐についても、上述した撚糸と同様で、熱処理を行うことで風合いの調整や、繊維間の集束密度の向上を行うことも可能である。
【0017】
集束性を向上させることや集束密度を向上させることを目的として、あるいは、硬さの調整を目的として、集束させる熱可塑性合成繊維として低融点の熱可塑性合成樹脂からなる繊維を混合させ、撚りや製紐により集束させた後に、低融点の熱可塑性合成樹脂が溶融する温度で熱処理を施して、低融点の熱可塑性合成樹脂を熱接着剤として機能させ、構成繊維同士を熱接着させることも好ましい。また、低融点熱可塑性合成繊維を混合させて熱接着させることによって、造形材料の密度が密になり、保形性も向上する。
【0018】
本発明において、熱可塑性合成繊維の形態は、全て連続繊維を選択してよいが、特定の繊維長を有する短繊維を用いてもよい。短繊維を用いる場合は、短繊維群を紡績した紡績糸や、連続繊維と短繊維との混繊による混合紡績糸の形態としたものを集束してなる連続した糸状の造形材料としてもよい。このような紡績糸を、組紐や諸撚り糸を得るための熱可塑性合成繊維の束として用いてもよい。また、連続繊維からなる加工糸を用いてもよい。加工糸としてはエアー交絡糸、仮撚り糸、BCF(Bulked Continuou
s Filament)が挙げられる。
【0019】
造形材料を構成する複数の繊維として、全て連続繊維を選択した場合でも、繊度の異なる連続繊維を混繊させてもよい。また、繊度の異なる連続繊維を用いる場合、繊度の大きいフィラメントの周囲をマルチフィラメントで編組した複合糸や、繊度の大きいフィラメントの周囲をマルチフィラメントで巻き付けた複合糸を、本発明の連続した糸状の造形材料の一形態とすることもできる。繊度の大きいフィラメントとしては、モノフィラメント糸を用いることもできる。例えば、モノフィラメント糸を、造形材料の中心部に配置させることにより中心部の密度が均一になる。また、造形材料の中心部に、低融点の熱接着成分を繊維表面に有するモノフィラメント糸を配置すると、熱処理を施すことにより、周囲に配した繊維と熱接着して良好に一体化して集束するため好ましい。
【0020】
熱可塑性合成繊維の単繊維繊度は、集束する際の糸本数や造形材料の直径、集束した際の密度、耐久性を考慮して適宜設計すればよい。例えば、単繊維繊度が大きい場合は摩擦などへの耐久性が高いが、繊維間の隙間が大きくなり造形時にボイドが生じる可能性がある。また単繊維の断面形状についても取扱い性や集束した際の密度などを考慮して適宜設計すればよい。例えば丸形、楕円形、多角形(三角、四角など)、多葉形(十字形、星形など)などが挙げられ、また断面形状の異なる繊維を組み合わせて使用してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、柔軟であり取扱い性が良好な熱溶解積層法3Dプリンター用の造形材料を用いた造形方法を提供することができる。
【実施例】
【0022】
次に本発明について、実施例によって具体的に説明する。
繊維の物性についてはJIS−L−1013に準じて試験を行った。取扱い性については内径100mmのボビンに1kgを巻き取り評価とした。また3Dプリンターの評価試験についてはアビー社製のSCOOVO C170を用いて、造形温度230℃、積層ピッチ0.1mm、密度100%で1辺が3cmの立方体を作製してその外観を確認した。
【0023】
実施例1
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いてエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸して、強度が4.0cN/dtex、伸度が30%の1900dtex/210fのポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントを得た。該ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントを16本丸打ち製紐機にて製紐し、その後100℃2分で熱セットを行い、実施例1の造形材料を得た。
【0024】
実施例2
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6400D):D体含有量1.9%)を用いてエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸して、強度が5.6cN/dtex、伸度が27%の1900dtex/210fのポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントを得た。該ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントを16本丸打ち製紐機にて製紐し、その後100℃2分で熱セットを行い、実施例2の造形材料を得た。
【0025】
実施例3
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いてエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸して、強度が4.0cN/dtex、伸度が30%の1900dtex/210fのポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントを得た。該ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメントをリング撚糸機にてS撚り120回/mで2本合撚し、次いで該撚糸を同様にZ撚り100回/mで8本合撚し、その後100℃2分で熱セットを行い、実施例3の造形材料を得た。
【0026】
実施例4
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いてエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸して、強度が4.0cN/dtex、伸度が30%、乾熱収縮が15%の800dtex/96fのポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメント(A)を得た。次いで複合紡糸機を用いて芯にポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%、融点170℃)、鞘にポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6302D):D体含有量9.9%、融点130℃)を芯鞘比率1:1で溶融紡糸し延伸して、強度が3.0cN/dtex、伸度が35%の900dtex/96fのポリ乳酸バインダー繊維からなるマルチフィラメント(B)を得た。ポリ乳酸繊維からなるマルチフィラメント(A)とポリ乳酸バインダー繊維からなるマルチフィラメント(B)をリング撚糸機にてS撚り120回/mで2本合撚し16本丸打ち製紐機にて製紐し、その後、140℃2分で熱セットを行い、実施例4の造形材料を得た。
【0027】
比較例
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いてエクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸して、強度が3.5cN/dtex、伸度が28%の30000dtex(直径約1.75mm)のポリ乳酸モノフィラメントを得た
実施例1〜4および比較例の評価結果を表1に示す。本発明の造形方法によれば、熱溶解積層法3Dプリンターに適用して良好な三次元立体成型物が得られるとともに、本発明における造形材料は、比較例のモノフィラメントに比べて、柔軟で、取扱い性が良好であることが確認できた。
【0028】
【表1】
【0029】
実施例5
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いて、エクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、560dtex/96フィラメントのポリ乳酸繊維からなる無色のマルチフィラメントを得た。
得られたマルチフィラメント5本を引き揃えた繊維束を、さらに7本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で撚りをかけて集束させた。集束させた撚糸に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例5の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0030】
実施例6
実施例5で用いたマルチフィラメント5本を引き揃えた繊維束を、リング撚糸機を用いてZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけて撚糸とし、得られた撚糸(Z−60)を7本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例6の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0031】
実施例7
実施例6において、下撚り回数をZ撚り180回/m(Z−180)としたこと以外は、実施例6と同様にして、線径1.75mmの実施例7の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0032】
実施例8
実施例6において、下撚り回数をZ撚り300回/m(Z−300)としたこと以外は、実施例6と同様にして、線径1.75mmの実施例8の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0033】
実施例9
ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いて、エクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、得られたフィラメントに機械捲縮を付与した後にカットして、単糸繊度1.7dtex、繊維長51mmのポリ乳酸からなる無色のステープルファイバーを得た。このステープルファイバーを用いた紡績し20番手の紡績糸を得た。
得られた紡績糸8本をリング撚糸機を用いてZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけて撚糸とし、得られた撚糸(Z−60)を8本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例9の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0034】
実施例10
実施例9で用いた紡績糸10本をリング撚糸機によりZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけて紡績糸の撚糸とした。
一方、実施例5で用いたマルチフィラマント4本をリング撚糸機によりZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけてマルチフィラメントの撚糸とした。
紡績糸の撚糸4本とマルチフィラメントの撚糸3本を束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例10の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0035】
実施例11
実施例9で用いた紡績糸2本と実施例5で用いたマルチフィラメント3本を束ねて、リング撚糸機によりZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけ、得られた撚糸(Z−60)を7本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例11の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0036】
実施例12
実施例5で用いたマルチフィラメント5本をエアジェットノズルに導通し、8MPaの圧縮空気によりフィラメント間を交絡させてエアー交絡糸を得た。得られたエアー交絡糸を6本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で撚りをかけて集束させた。集束させた撚糸に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例12の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0037】
実施例13
芯鞘複合繊維が得られるエクストルーダー型紡糸機を用いて、芯にポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4% 融点170℃)、鞘にポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6302D):D体含有量9.9% 融点130℃)を配して溶融紡糸し延伸し、560dtex/96フィラメントの2種のポリ乳酸からなり無色の芯鞘複合マルチフィラメント(芯鞘質量比が芯/鞘=3/1)を得た。
得られたマルチフィラメント5本を引き揃えた繊維束を、リング撚糸機を用いてZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけて撚糸とし、得られた撚糸(Z−60)を7本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、150℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例13の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維同士が熱処理による熱接着によって溶融固着していた。
【0038】
実施例14
実施例5で用いたマルチフィラメント2本と実施例13で用いた芯鞘複合マルチフィラメント3本とを束ねて、リング撚糸機によりZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけ、得られた撚糸(Z−60)を7本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、150℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例14の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維同士が熱処理によって熱接着して部分的に溶融固着していた。
【0039】
実施例15
芯鞘複合繊維が得られるエクストルーダー型紡糸機を用いて、芯にポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4% 融点170℃)、鞘にポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6302D):D体含有量9.9% 融点130℃)を配して溶融紡糸し延伸し、得られた芯鞘複合型フィラメントに機械捲縮を付与した後にカットして、単糸繊度2.2dtex、繊維長51mmの2種のポリ乳酸からなる無色の芯鞘複合ステープルファイバー(芯鞘質量比が芯/鞘=1/1)を得た。この芯鞘複合ステープルファイバーを用いて紡績し10番手の紡績糸を得た。
得られた紡績糸4本を引き揃えた繊維束を、リング撚糸機を用いてZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけて撚糸とし、得られた撚糸(Z−60)を8本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、150℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例15の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維同士が熱処理による熱接着によって溶融固着していた。
【0040】
実施例16
実施例15で用いた芯鞘複合ステープルファイバーからなる紡績糸2本と、実施例5で得られたマルチフィラメント2本とを束ねて、リング撚糸機を用いてZ撚り60回/m(Z−60)で下撚りをかけて撚糸とし、得られた撚糸(Z−60)を8本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り150回/m(S−150)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸に、150℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例16の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維同士が熱処理によって熱接着して部分的に溶融固着していた。
【0041】
実施例17
16本丸打ち製紐機を用いて、実施例5で用いたマルチフィラメント20本を引き揃えた繊維束を芯糸に配し、側糸として該マルチフィラメントを1本ずつ配して製紐により組紐を得た。得られた組紐に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例17の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0042】
実施例18
8本丸打ち製紐機を用いて、実施例5で用いたマルチフィラメント20本を引き揃えた繊維束を芯糸に配し、側糸として該マルチフィラメント2本引き揃えた繊維束をそれぞれ配して製紐により組紐を得た。得られた組紐に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例18の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
【0043】
実施例19
実施例17において、芯糸として、下記の諸撚糸を用いたこと以外は、実施例17と同様にして実施例19の造形材料を得た。なお、得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
諸撚糸であるが、実施例5で用いたマルチフィラメント3本を束ねて、リング撚糸機を用いてZ撚り200回/m(Z−200)で下撚りをかけて撚糸とし、得られた撚糸(Z−200)を6本束ねて、リング撚糸機を用いてS撚り120回/m(S−120)で上撚りをかけて諸撚糸とした。得られた諸撚糸を芯糸として用いた。
【0044】
実施例20
実施例17において、芯糸として、下記のモノフィラメント糸を用いたこと以外は、実施例17と同様にして実施例20の造形材料を得た。なお、得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
モノフィラメント糸であるが、ポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4%)を用いて、エクストルダー型紡糸機にて溶融紡糸し延伸し、13000dtex/1フィラメントのポリ乳酸からなるモノフィラメント糸を得た。
【0045】
実施例21
実施例17において、芯糸として、下記の芯鞘複合モノフィラメント糸を用いたこと以外は、実施例17と同様にして実施例21の造形材料を得た。なお、得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
芯鞘複合モノフィラメント糸であるが、芯鞘複合繊維が得られるエクストルーダー型紡糸機を用いて、芯にポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6201D):D体含有量1.4% 融点170℃)、鞘にポリ乳酸チップ(ネイチャーワークス製(6302D):D体含有量9.9% 融点130℃)を配して溶融紡糸し延伸し、13000dtex/1フィラメントの2種のポリ乳酸からなる芯鞘複合モノフィラメント糸を得た。
【0046】
実施例22
16本丸打ち製紐機を用いて、実施例9で用いた紡績糸18本を引き揃えた繊維束を芯糸に配し、側糸として該紡績糸を1本ずつ配して製紐により組紐を得た。得られた組紐に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例22の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮により固化していた。
【0047】
実施例23
16本丸打ち製紐機を用いて、下記のエアー交絡糸を16本引き揃えた繊維束を芯糸に配し、側糸として下記のエアー交絡糸を1本ずつ配して製紐により組紐を得た。得られた組紐に、165℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例23の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理時の軟化と収縮によって固化していた。
エアー交絡糸であるが、実施例5で用いたマルチフィラメント1本をエアジェットノズルに導通し、8MPaの圧縮空気によりフィラメント間を交絡させてエアー交絡糸を得た。
【0048】
実施例24
実施例17において、マルチフィラメントに替えて、実施例13で用いた芯鞘複合マルチフィラメントを用いたこと、得られた組紐に熱処理する際の熱処理温度を150℃としたこと以外は、実施例17と同様にして、実施例24の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維同士が熱処理により熱接着して溶融固着していた。
【0049】
実施例25
16本丸打ち製紐機を用いて、実施例15で用いた紡績糸18本を引き揃えた繊維束を芯糸に配し、側糸として該紡績糸を1本ずつ配して製紐により組紐を得た。得られた組紐に、150℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例25の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維同士が熱処理により熱接着して溶融固着していた。
【0050】
実施例26
8本丸打ち製紐機を用いて、実施例5で用いたマルチフィラメント20本を引き揃えた繊維束を芯糸に配し、側糸として実施例15で用いた紡績糸2本引き揃えた繊維束をそれぞれ配して製紐により組紐を得た。得られた組紐に、150℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例26の造形材料を得た。得られた造形材料は、その表面は、構成繊維同士が熱接着して溶融固着していた。
【0051】
実施例27
8本丸打ち製紐機を用いて、実施例15で用いた紡績糸18本を引き揃えた繊維束を芯糸に配し、側糸として実施例5で用いたマルチフィラメント2本引き揃えた繊維束をそれぞれ配して製紐により組紐を得た。得られた組紐に、150℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例27の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維が熱処理による熱収縮および溶融軟化によって固化していた。
【0052】
実施例28
8本丸打ち製紐機を用いて、実施例5で用いたマルチフィラメント10本と実施例15で用いた紡績糸9本を引き揃えた繊維束を芯糸に配し、側糸として該マルチフィラメント1本と該紡績糸1本とを引き揃えた繊維束をそれぞれ配して製紐により組紐を得た。得られた組紐に、150℃×1分の熱処理を行い、線径1.75mmの実施例28の造形材料を得た。得られた造形材料は、構成繊維同士が部分的に熱接着により溶融固着していた。
【0053】
実施例5〜28で得られた造形材料を用いて巻き取り評価(ボビン巻き取り性)と、3Dプリンターの評価試験(3Dプリンター出力)を行ったところ、いずれの材料においても、巻き取り評価においては、柔軟で綺麗に巻き取ることが可能であり、3Dプリンター出力においては、綺麗に出力でき光沢感のある造形物が得られた。また、3Dプリンター内に造形材料を送り込む動作においても、送り込み装置において問題なく良好に送り動作がなされていた。