特許第6706516号(P6706516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706516
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】炉蓋取付方法、および、仮設台車
(51)【国際特許分類】
   C10B 25/12 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   C10B25/12
【請求項の数】4
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-51948(P2016-51948)
(22)【出願日】2016年3月16日
(65)【公開番号】特開2017-165853(P2017-165853A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2019年1月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000132127
【氏名又は名称】株式会社スガテック
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(74)【代理人】
【識別番号】100106921
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 裕之
(72)【発明者】
【氏名】牛澤 英雄
(72)【発明者】
【氏名】福永 正起
(72)【発明者】
【氏名】江川 秀
【審査官】 三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−089889(JP,A)
【文献】 特開2000−053967(JP,A)
【文献】 特開2002−088369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 1/00−57/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉における炭化室の開口部の外側下方位置に設けられているレールに載置する車輪と、頂部側に搬送手段を備えた炉蓋の搬送路と、前記搬送路の両側部に前記搬送路の方向に沿って延びるレール部材を有するガイド機構とを備えてなる仮設台車を用意し、
前記開口部に取り付けられた炉枠の外側位置に前記仮設台車を配置し、
前記ガイド機構のレール部材を、前記炉枠に備えられたローラ受け部材に接近または接触させて配置し、
次に、前記炉蓋を前記仮設台車の搬送手段により搬送し、
前記炉蓋の支持ローラを前記ガイド機構のレール部材に沿わせた状態で前記炉蓋を炉枠に取り付けること
を特徴とする炉蓋取付方法。
【請求項2】
前記ガイド機構は、前記レール部材の上下方向の位置の調整と、搬送路の方向に沿う方向の位置の調整と、左右方向の位置の調整とを行って、前記レール部材の位置を、前記炉枠のローラ受け部材の位置に合わせる
請求項1記載の炉蓋取付方法。
【請求項3】
前記炉蓋の取り付けは、前記コークス炉における炉蓋取付対象となる前記炉枠を有する炭化室とは異なる他の炭化室の操業を継続しながら行う
請求項1または2記載の炉蓋取付方法。
【請求項4】
コークス炉における炭化室の開口部の外側下方位置に設けられているレールに載置する車輪と、
頂部側に搬送手段を備えた炉蓋の搬送路と、
前記搬送路の両側部に前記搬送路の方向に沿って延びるレール部材を有するガイド機構と
を備え
前記レール部材は、前記開口部に取り付けられた炉枠に備えられたローラ受け部材に近接または接触する、
ことを特徴とする仮設台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉の炉枠に炉蓋を取り付ける炉蓋取付方法、および、該方法に用いる仮設台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コークス炉は、炭化室と燃焼室とが一方向に交互配置で複数配列された構成を備えている。この炭化室と燃焼室が並ぶ方向は炉団方向という。
【0003】
各炭化室は、上端側に石炭の装入口を備え、炉団方向と直交する水平方向である炉長方向の一端側に押出口を備え、炉長方向の他端側に排出口を備えた構成とされている。
【0004】
押出口と排出口は、いずれも、レンガによって周囲が形成された開口部に、鋼製の炉枠が取り付けられ、この炉枠に、炉蓋が取り外し可能に取り付けられた構成を備えている。この炉蓋の炉枠からの取り外しにより、押出口や排出口は開放され、炉蓋の炉枠への取り付けにより、押出口や排出口は閉止される。
【0005】
このような炉蓋の炉枠に対する着脱操作は、通常は、コークス炉移動機である押出機やガイド車(コークス炉ガイド車)に装備された脱着装置によって行われている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−181640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、稼働中のコークス炉では、一部の炭化室の炉蓋について、故障や損傷や経年劣化などに起因して、炉蓋を取り外してメンテナンスや交換を行うことが必要とされる場合がある。
【0008】
この場合、押出機やガイド車に装備された脱着装置を使用すると、押出機やガイド車を、健全な他の炉の操業を継続するために使用することができなくなる。そのため、コークス生産の停止が、炉蓋のメンテナンスや交換が必要とされる一部の炭化室のみではなく、コークス炉全体に及ぶため、コークス減産の影響が大となる。
【0009】
そこで、本発明は、押出機やガイド車を用いることなく、炉蓋の取り付け作業を実施するための炉蓋取付方法、および、該方法に用いる仮設台車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために、コークス炉における炭化室の開口部の外側下方位置に設けられているレールに載置する車輪と、頂部側に搬送手段を備えた炉蓋の搬送路と、前記搬送路の両側部に前記搬送路の方向に沿って延びるレール部材を有するガイド機構とを備えてなる仮設台車を用意し、前記開口部に取り付けられた炉枠の外側位置に前記仮設台車を配置し、前記ガイド機構のレール部材を、前記炉枠に備えられたローラ受け部材に接近または接触させて配置し、次に、前記炉蓋を前記仮設台車の搬送手段により搬送し、前記炉蓋の支持ローラを前記ガイド機構のレール部材に沿わせた状態で前記炉蓋を炉枠に取り付ける炉蓋取付方法とする。
【0011】
前記ガイド機構は、前記レール部材の上下方向の位置の調整と、搬送路の方向に沿う方向の位置の調整と、左右方向の位置の調整とを行って、前記レール部材の位置を、前記炉枠のローラ受け部材の位置に合わせるようにする。
【0012】
前記炉蓋の取り付けは、前記コークス炉における炉蓋取付対象となる前記炉枠を有する炭化室とは異なる他の炭化室の操業を継続しながら行うようにする。
【0013】
また、コークス炉における炭化室の開口部の外側下方位置に設けられているレールに載置する車輪と、頂部側に搬送手段を備えた炉蓋の搬送路と、前記搬送路の両側部に前記搬送路の方向に沿って延びるレール部材を有するガイド機構とを備え、前記レール部材は、前記開口部に取り付けられた炉枠に備えられたローラ受け部材に近接または接触する構成を有する仮設台車とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の炉蓋取付方法および仮設台車によれば、押出機やガイド車を用いることなく、炉蓋の取り付け作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】コークス炉と炉蓋の概要を示す図である。
図2図1のコークス炉と炉蓋を別の方向から示す図である。
図3】炉蓋取付方法で用いる仮設台車を示す図である。
図4図3の仮設台車を別の方向から示す図である。
図5図3の仮設台車におけるガイド機構を拡大して示す図である。
図6図5のガイド機構を別の方向から示す図である。
図7図5のガイド機構を更に別の方向から示す図である。
図8】閂ばね押圧装置を示すものである。
図9】炉蓋取付方法の実施形態の手順を示す図である。
図10】炉蓋取付方法の図9に続く手順を示す図である。
図11】閂ばね押圧装置の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、炉蓋取付方法の実施形態の適用対象となるコークス炉とその炉蓋の概要を示すもので、コークス炉を開口部の外側から見た図である。図2は、図1のA−A方向矢視図である。図3は、炉蓋取付方法で用いる仮設台車の一例を示す概略側面図である。図4は、図3のB−B方向矢視図である。図5は、仮設台車におけるガイド機構を拡大して示す平面図、図6図5のC−C方向矢視図、図7図6のD−D方向矢視図である。図8は、閂ばね押圧装置の一例を示すもので、図8(a)は炉蓋の閂に装着した状態を示す一部切断概略側面図、図8(b)は閂押動用ペダルを押した状態を示す一部切断概略側面図、図8(c)は図8(a)のE−E方向矢視図である。図9は、炉蓋取付方法の実施形態の手順として、コークス炉に仮設台車を仮設し、炉蓋に閂ばね押圧装置を装着した状態を示す概要図である。図10は本実施形態の炉蓋取付方法の図9に続く手順として、炉蓋の支持ローラを、仮設台車のガイド機構に受けさせた状態を示す概要図である。
【0018】
先ず、本実施形態の炉蓋取付方法の適用対象となるコークス炉1と炉蓋2の構造について概説する。
【0019】
コークス炉1は、図1図2に示すもので、図1中に矢印xで示す炉団方向に、複数の炭化室3と図示しない複数の燃焼室が交互に配列して設けられている。また、コークス炉1は、外壁、および、炭化室3と燃焼室との隔壁等が、耐火材であるレンガによって形成されたレンガ構造体とされている。
【0020】
炭化室3は、図2中に矢印yで示す炉長方向の一端側と他端側に、外部に連通して押出口と排出口となる開口部4を備えている。開口部4は、上下方向に延びる矩形状とされ、周囲はレンガ(図示せず)によって構成されている。開口部4の炉外側端部の周縁部には、鋼製の炉枠5が取り付けられている。炉蓋2は、この炉枠5に対して取り外し可能に取り付けられる。
【0021】
説明の便宜上、炉枠5については、開口部4に取り付けられた状態の炉枠5を炉外側から見たときに、左手側に位置する側を炉枠5の左側、右手側に位置する側を炉枠5の右側という。また、炉蓋2については、炉枠5に取り付けられた状態の炉蓋2において炉枠5の左側と右側にそれぞれ対応する方向を、炉蓋2の左側と右側という。したがって、炉枠5および炉蓋2の左右方向は、炉団方向に沿う配置となっている。
【0022】
炉枠5は、開口部4に沿って上下方向に延びる矩形の枠体である。開口部4の外側に露出する炉枠5の表面には、上部寄り個所と下部寄り個所に、閂受金物6a,6bと閂受金物6c,6dが突設されている。炉枠5の左側に配置されている上下の各閂受金物6a,6cは、上方が開放された鉤型とされている。一方、炉枠5の右側に配置されている上下の各閂受金物6b,6dは、下方が開放された鉤型とされている。これにより、炉枠5の左右に配置された閂受金物6aと閂受金物6bによる対、および、閂受金物6cと閂受金物6dによる対は、後述する炉蓋2の上部寄りと下部寄りに設けられている旋回式(回転式)の閂7の両端側を、それぞれ掛けることができる。
【0023】
炉枠5の表面における上寄り位置には、左右一対のローラ受け部材8a,8bが突設されている。各ローラ受け部材8a,8bは、その上部に、突出端側から炉枠5の表面または表面近傍位置まで炉長方向に沿うローラ載置面9(図2参照)を備えている。各ローラ受け部材8a,8bは、炉蓋2が炉枠5に取り付けられたときに、炉蓋2の上寄り位置の左右両側に一対で備えられている支持ローラ10a,10bを、ローラ載置面9に載せて受ける。これにより、炉枠5に取り付けられた炉蓋2は、各支持ローラ10a,10bが各ローラ受け部材8a,8bによって下方から支持されて、炉蓋2の炉枠5に対する適正な取り付け位置からのずれが防止される。
【0024】
炉蓋2は、鋼製の炉蓋本体11と、炉蓋本体11の背面側に取り付けられた炉蓋耐火物(炉蓋内張りライニング)12(図2参照)と、炉蓋本体11の表面側の上部寄り個所と下部寄り個所に取り付けられた旋回式の閂7と、炉蓋本体11の左右両側に設けられた支持ローラ10a,10bとを備えた構成とされている。
【0025】
炉蓋本体11の上端側、及び、上側の閂7よりも上方となる上端寄り位置の左右両側には、炉蓋2を吊って搬送するための吊りピース13,13aが設けられている。なお、吊りピース13,13aは、炉蓋2をほぼ垂直な姿勢で吊ることができるように配置されている。
【0026】
炉蓋耐火物12は、炉蓋2を炉枠5に取り付けるときに、開口部4の炉枠5よりも炉内側に位置する個所まで挿入されるものであり、この状態で炉蓋耐火物12の上下左右の外面と、開口部4の周囲のレンガ(図示せず)とが接近した配置とされることで、炭化室3の内側から炉蓋本体11と炉枠5に作用する熱が抑えられている。
【0027】
閂7は、炉蓋本体11の表面に突設された軸14の突出端側に、旋回可能に取り付けられている。軸14の基端寄り部分の周りには、閂7を炉蓋本体11から離反する方向に付勢する閂ばね15が装備されている。更に、閂7には、閂ばね15を収縮させるための揺動式の閂押動用ペダル16が付設されている。閂押動用ペダル16は、軸14を跨ぐように二股形状(クレビス状)とされていて、この二股形状の先端側が揺動する構成とされている。これにより、閂押動用ペダル16の先端側を炉蓋本体11に接近する方向へ外部から押すことにより、閂ばね15を収縮させて、閂7を旋回可能とすることができる。
【0028】
炉蓋本体11の表面側には、閂押動用ペダル16の二股形状の先端側の間と対応する個所で且つ閂押動用ペダル16の先端側よりも炉蓋本体11の表面寄りとなる個所に、横向きピン17が配置され、その両端側が炉蓋本体11に取り付けられている。この固定式の横向きピン17は、図示しない押出機やガイド車を用いた通常の炉蓋2の取り付け作業や取り外し作業を行う際に、炉蓋2の荷重を押出機やガイド車に預けるために炉蓋2に装備されているものである。
【0029】
コークス炉1は、図1図2に示すように、隣接する炭化室3同士の間の位置の炉長方向の両側に、上下に延びるバックステー18が設けられている。
【0030】
また、各開口部4の外側の下方位置には、たとえば、コークス炉移動機であるガイド車(図示せず)を走行させるための2条のレール19が、炉団方向に延びる配置で設置されている。
【0031】
更に、各開口部4の外側の上方位置には、図示しないクレーン等の吊具を各開口部4の外側近傍の上方となる位置に配置する操作に対して障害となる集塵管などの障害物20が存在している。
【0032】
次に、図3乃至図7に基づいて、仮設台車21の構成を説明する。なお、仮設台車21の構成を説明する便宜上、仮設台車21について、仮設台車21の使用時に炉枠5に接近して配置される側を前側、その反対の炉枠5から離反する側を後側という。また、仮設台車21について、図4に示すように仮設台車21を後側から見たときに、左手側に位置する側を仮設台車21の左側、右手側に位置する側を仮設台車21の右側という。
【0033】
本実施形態の炉蓋取付方法で用いる仮設台車21は、図3図4に示すように、骨組構造によって形成された上下に延びる略門型の構造を備えており、中央部には、炉蓋2の前面投影形状よりも大きな開口形状で前後方向の全長に亘って延びる空間部を備えている。この空間部が炉蓋2を前後方向に移動させる搬送路22(図4参照)とされている。搬送路22には、炉蓋2を吊って前後方向に搬送するときに用いる搬送手段23と、炉蓋2を炉枠5に取り付けるときに左右の支持ローラ10a,10bの位置をガイドするガイド機構24が設けられている。
【0034】
仮設台車21の上下方向寸法は、仮設台車21をレール19と障害物20との間に配置できるように設定されている。
【0035】
仮設台車21の前後方向寸法は、仮設台車21の前端側をバックステー18に接近させて配置した状態で、仮設台車21の後端側が上方に障害物20が存在する領域よりも炉枠5から離れた位置に配置されるように設定されている。これにより、搬送路22の後端側には、図示しないクレーン等の吊具で吊った状態の炉蓋2を接近させることができ、その際、炉蓋2を吊っている吊具が障害物20と干渉する虞を回避することができる。
【0036】
仮設台車21は、下端側に、左右方向に連続する底部25を備え、底部25の前寄りの2個所と後寄りの2個所の下側に、左右方向に回転する車輪26が設けられている。各車輪26の配置と車輪形状は、各レール19の配置と走行面の形状に対応している。これにより、仮設台車21は、レール19に沿って炉団方向、すなわち、炉枠5の左右方向に移動させることができる。
【0037】
更に、仮設台車21は、上端側に図示しない吊りピースが設けられた構成とされている。これにより、仮設台車21は、クレーン等で吊ってレール19上への配置と、レール19上からの撤去を行うことができる。
【0038】
なお、仮設台車21は、使用時にコークス炉1に仮設し、不使用時には撤去するものであるため、重量は軽いことが望まれる。そのため、重量軽減の観点から考えると、仮設台車21は、図3図4に示したような骨組構造とすることが好ましいが、炉蓋2の搬送路22を形成可能な略門型あるいは門型の構造を備えていれば、図示した以外の骨組構造や、骨組構造以外の任意の形状や構造を採用してもよいことは勿論である。
【0039】
また、仮設台車21は、複数のユニットに分割可能な構成としてもよい。このような複数のユニットに分割可能な構成とすれば、レール19上でユニット同士の連結や分割を行うことで、仮設台車21の仮設時や撤去時に搬送するものの単体重量を軽減することが可能になる。
【0040】
更に、車輪26は、仮設台車21の底部25の形状や、車輪26の許容荷重等に応じて配置や数を適宜変更してもよいことは勿論である。
【0041】
搬送手段23は、搬送路22の全長に亘って前後方向に延び且つ搬送路22の頂部側に左右に間隔を隔てて平行に設けられた2本のビーム部材27と、各ビーム部材27に前後方向に移動可能に取り付けられたトロリー28と、トロリー28にチェーンブロック29を介して取り付けられた吊具30とを備えた構成とされている。なお、トロリー28の移動範囲の前後両側には、図示しないストッパが設けられていて、トロリー28の脱落防止や、吊具30の前後方向の移動範囲の規制が図られている。
【0042】
ガイド機構24は、図5乃至図7に示すように、搬送路22の左側部の後述する支柱部材34aと支柱部材34bに取り付けられたブラケット32aと、ブラケット32aに取り付けられた左側の架台31aと、搬送路22の右側部の後述する支柱部材34cと支柱部材34dに取り付けられたブラケット32bと、ブラケット32bに取り付けられた右側の架台31bと、各架台31a,31bにそれぞれ取り付けられる左右一対のレール部材33a,33bとを備えた構成とされている。
【0043】
本実施形態では、仮設台車21の骨組構造は、たとえば、図3図4に示すように、搬送路22の左側部に沿う位置の前端寄り個所と後端寄り個所に、上下に延びる支柱部材34aと支柱部材34bを備え、搬送路22の右側部に沿う位置の前端寄り個所と後端寄り個所に、上下に延びる支柱部材34cと支柱部材34dを備えた構成とされている。
【0044】
この場合、図5乃至図7に示すように、左側のブラケット32aは、搬送路22の左端寄り個所で前後方向に延びる梁部材35aを備え、梁部材35aの前端側と後端側に、支柱部材34aに沿って配置された取付部材36aの上端側と、支柱部材34bに沿って配置された取付部材36bの上端側とをそれぞれ接合した構成とされている。各取付部材36a,36bと梁部材35aとの接合部は、リブ部材37やその他の図示しない補強構造によって補強されていることが好ましい。
【0045】
各取付部材36a,36bには、図6図7に示すように、それぞれの支柱部材34a,34bに沿って配置される側面の複数個所(図7では6個所)に、上下方向に延びる長孔38aが設けられている。一方、各支柱部材34a,34bには、各取付部材36a,36bの取付個所に、各長孔38aと対応する配置でボルト挿通孔39aが設けられている。
【0046】
各取付部材36a,36bは、ボルト挿通孔39aと長孔38aに挿通させたボルト40に先端側から螺着したナット41を締めることで、各支柱部材34a,34bに固定される。これにより、ブラケット32aは、各支柱部材34a,34bに固定される。この際、各支柱部材34a,34bに固定されるブラケット32aの上下方向位置は、各取付部材36a,36bの長孔38aの上下方向に延びる寸法分、調整することができる。このブラケット32aの上下方向位置の調整は、ボルト40に締めたナット41を緩めることで、繰り返し実施することができる。なお、ボルト挿通孔39aと長孔38aを図示する便宜上、図7ではボルト40とナット41の記載を省略してある。
【0047】
左側の架台31aは、前後方向に延びる平らな矩形板状とされ、梁部材35aの前寄り個所の上面に載置された状態で、梁部材35aに接合されている。更に、架台31aの右端側は、梁部材35aよりも搬送路22の中央寄りに張り出すように配置され、この右端側の前後方向複数個所(図では3個所)に、左右方向に延びる長孔42aが設けられている。架台31aの右端部の下面側には、各長孔42aと干渉しない位置に、梁部材35aとの間をつなぐリブ部材43が設けられている。
【0048】
右側のブラケット32bは、搬送路22の右端寄り個所で前後方向に延びる梁部材35bを備え、梁部材35bの前端側と後端側に、支柱部材34cに沿って配置された取付部材36cの上端側と、支柱部材34dに沿って配置された取付部材36dの上端側とをそれぞれ接合した構成とされている。各取付部材36c,36dと梁部材35bとの接合部は、リブ部材37やその他の図示しない補強構造によって補強されていることが好ましい。
【0049】
各取付部材36c,36dには、それぞれの支柱部材34c,34dに沿って配置される側面の複数個所に、上下方向に延びる長孔38bが設けられている。一方、各支柱部材34c,34dには、各取付部材36c,36dの取付個所に、各長孔38bと対応する配置でボルト挿通孔39bが設けられている。
【0050】
各取付部材36c,36dは、ボルト挿通孔39bと長孔38bに挿通させたボルト40に先端側から螺着したナット41を締めることで、各支柱部材34c,34dに固定される。これにより、ブラケット32bは、各支柱部材34c,34dに固定される。この際、各支柱部材34c,34dに固定されるブラケット32bの上下方向位置は、各取付部材36c,36dの長孔38bの上下方向に延びる寸法分、調整することができる。このブラケット32bの上下方向位置の調整は、ボルト40に締めたナット41を緩めることで、繰り返し実施することができる。
【0051】
右側の架台31bは、前後方向に延びる平らな矩形板状とされ、梁部材35bの前寄り個所の上面に載置された状態で、梁部材35bに接合されている。更に、架台31bの左端側は、梁部材35bよりも搬送路22の中央寄りに張り出すように配置され、この右端側の前後方向複数個所(図では3個所)に、左右方向に延びる長孔42bが設けられている。架台31bの左端部の下面側には、各長孔42bと干渉しない位置に、梁部材35bとの間をつなぐリブ部材43が設けられている。
【0052】
なお、各梁部材35a,35bと各架台31a,31bについては、各レール部材33a,33bの前後方向のできるだけ長い範囲を下方から支持するという観点から考えると、各梁部材35a,35bの前端部および各架台31a,31bの前端部は、仮設台車21をレール19上で移動させるときにバックステー18と干渉しないという条件の下で、バックステー18に対してできるだけ接近した配置とされていることが好ましい。この考えに基づき、本実施形態では、各梁部材35a,35bの前端部および各架台31a,31bの前端部は、支柱部材34a,34cよりも前方に突出した配置とされている。
【0053】
また、ボルト40とナット41とを用いて各ブラケット32a,32bを各支柱部材34a,34b,34c,34dに固定する際、ボルト挿通孔が穿設された当て板やワッシャ等を適宜使用してよいことは勿論である。
【0054】
これにより、ガイド機構24では、左側のブラケット32aの各支柱部材34a,34bに対する固定位置の上下方向の調整に伴って、架台31a上に取り付けられる左側のレール部材33aのレール本体44aの上面の高さ位置を、炉枠5の左側のローラ受け部材8aのローラ載置面9の高さ位置に合わせることができる。また、ガイド機構24では、右側のブラケット32bの各支柱部材34c,34dに対する固定位置の上下方向の調整に伴って、架台31b上に取り付けられる右側のレール部材33bのレール本体44bの上面の高さ位置を、炉枠5の右側のローラ受け部材8bのローラ載置面9の高さ位置に合わせることができる。
【0055】
したがって、炭化室3から受ける熱による歪みなどによって炉枠5において左右のローラ受け部材8a,8bのローラ載置面9の高さ位置に差が生じているとしても、ガイド機構24では、左右のレール部材33a,33bのレール本体44a,44bの上面の高さ位置を、各ローラ受け部材8a,8bのローラ載置面9の高さ位置に個別に合わせることができる。
【0056】
左側のレール部材33aは、前後方向に延びる平板状のベース板45aと、ベース板45aの右端側の上側に取り付けられた前後方向に延びるレール本体44aと、前後方向の複数個所でベース板45aの上面と、レール本体44aの左側面とを繋ぐリブ部材46とを備えた構成とされている。
【0057】
レール本体44aの後端側には、上向きに突出するストッパ47が設けられている。このストッパ47は、後述するようにレール本体44aの上側に載置される炉蓋2の支持ローラ10a(図1図7参照)がレール本体44aの後方へ脱落することを防ぐためのものである。
【0058】
ベース板45aには、架台31aの各長孔42aの配置と対応する前後方向の複数個所に、前後方向に延びる長孔48aが設けられている。
【0059】
これにより、レール部材33aは、長孔48aおよび長孔42aに通したボルト49と、ボルト49に先端側から螺着して締めるナット50とを用いて、架台31aの右端側に取り外し可能に固定することができる。なお、図5では、長孔48aおよび長孔42aを図示する便宜上、レール部材33aの固定に使用するボルト49とナット50の記載は省略してある。このようにレール部材33aを架台31aに固定する際、レール部材33aは、架台31aに対する左右方向の取り付け位置を、各長孔42aが左右方向に延びる寸法分、調整することができる。また、レール部材33aは、架台31aに対する前後方向の取り付け位置を、各長孔48aが前後方向に延びる寸法分、調整することができる。
【0060】
このため、ガイド機構24では、レール部材33aの架台31aに対する取り付け位置を左右方向に調整することにより、レール本体44aの左右方向位置を、炉枠5の左側のローラ受け部材8aの位置に合わせることができる。
【0061】
また、ガイド機構24では、レール部材33aの架台31aに対する取り付け位置を前後方向に調整することにより、レール本体44aの前端部を、前記ローラ受け部材8aの突出端部に接近あるいは接触させて配置することができる。
【0062】
右側のレール部材33bは、前後方向に延びる平板状のベース板45bと、ベース板45bの左端側の上側に取り付けられた前後方向に延びるレール本体44bと、前後方向の複数個所でベース板45bの上面と、レール本体44bの右側面とを繋ぐリブ部材46とを備えた構成とされている。
【0063】
レール本体44bの後端側には、レール本体44aと同様に、上向きに突出するストッパ47が設けられている。このストッパ47は、後述するようにレール本体44bの上側に載置される炉蓋2の支持ローラ10b(図1参照)がレール本体44bの後方へ脱落することを防ぐためのものである。
【0064】
ベース板45bには、架台31bの各長孔42bの配置と対応する前後方向の複数個所に、前後方向に延びる長孔48bが設けられている。
【0065】
これにより、レール部材33bは、長孔48bおよび長孔42bに通したボルト49と、ボルト49に先端側から螺着して締めるナット50とを用いて、架台31bの左端側に取り外し可能に固定することができる。なお、図5では、長孔48bおよび長孔42bを図示する便宜上、レール部材33bの固定に使用するボルト49とナット50の記載は省略してある。このようにレール部材33bを架台31bに固定する際、レール部材33bは、架台31bに対する左右方向の取り付け位置を、各長孔42bが左右方向に延びる寸法分、調整することができる。また、レール部材33bは、架台31bに対する前後方向の取り付け位置を、各長孔48bが前後方向に延びる寸法分、調整することができる。
【0066】
このため、ガイド機構24では、レール部材33bの架台31bに対する取り付け位置を左右方向に調整することにより、レール本体44bの左右方向位置を、炉枠5の右側のローラ受け部材8bの位置に合わせることができる。
【0067】
また、ガイド機構24では、レール部材33bの架台31bに対する取り付け位置を前後方向に調整することにより、レール本体44bの前端部を、前記ローラ受け部材8bの突出端部に接近あるいは接触させて配置することができる。
【0068】
なお、ボルト49とナット50とを用いて各レール部材33a,33bを架台31a,31bに固定する際、ボルト挿通孔が穿設された当て板やワッシャ等を適宜使用してよいことは勿論である。
【0069】
次いで、図8(a)(b)(c)に基づいて閂ばね押圧装置51の構成を説明する。なお、閂ばね押圧装置51の構成を説明する便宜上、閂ばね押圧装置51を炉蓋2の閂7に装着して使用するときの状態で、炉蓋2の上下、左右の各方向に対応する方向を、閂ばね押圧装置51の上下、左右方向という。更に、炉蓋に接近して配置される側を、閂ばね押圧装置51の前側といい、その反対側を閂ばね押圧装置51の後側という。
【0070】
閂ばね押圧装置51は、閂押動用ペダル16の双方の先端側に接触可能となるように左右方向に延びるペダル押し部材52と、ペダル押し部材52の左右方向の中間部に前後方向に貫通するように設けられた挿通孔53と、挿通孔53に挿通配置された前後方向に延びるシャフト54と、ペダル押し部材52の後側に取り付けられてシャフト54の後端側が接続されたセンターホールジャッキ55と、シャフト54の前端側に取り付けられたフック部材56とを備えた構成とされている。
【0071】
更に、センターホールジャッキ55には、可搬型の油圧ポンプ57が接続されている。この油圧ポンプ57は、ペダル押し部材52の後側に取り付けられた略門型のフレーム58に支持されている。なお、油圧ポンプ57は、単独でセンターホールジャッキ55に油圧を供給できるものであれば、手動や電動など駆動方式は任意の方式でよい。
【0072】
以上の構成としてある閂ばね押圧装置51を使用する場合は、図8(a)のように、油圧ポンプ57を非作動状態とし、シャフト54をペダル押し部材52から、フック部材56側に引き出した状態で、フック部材56を炉蓋本体11に取り付けられている横向きピン17に引っ掛けると共に、ペダル押し部材52を閂押動用ペダル16の先端側に当てて配置する。
【0073】
次に、油圧ポンプ57を作動させてセンターホールジャッキ55に油圧を供給し、センターホールジャッキ55により、シャフト54を図8(b)に示すように押し出す。このとき、シャフト54の前端側に取り付けられているフック部材56は、横向きピン17に掛けられていて、シャフト54の位置は変化しないため、ペダル押し部材52が相対的に前方に移動する。よって、このペダル押し部材52の前方への移動に伴い、閂押動用ペダル16の先端側が炉蓋本体11に接近する方向へ押されるため、閂ばね15が収縮して、閂7が旋回可能な状態になる。
【0074】
以上の構成としてある仮設台車21と閂ばね押圧装置51を用いて、炉枠5へ炉蓋2の取り付けを行う炉蓋取付方法について説明する。
【0075】
炉蓋取付方法を実施する場合は、図9に示すように、仮設台車21をレール19上に載置する。この際、仮設台車21は、操業中の炭化室3に応じて配置される図示しないガイド車と干渉する虞のない位置に配置するようにする。また、ガイド機構24については、左右のレール部材33a,33bを予め各架台31a,31bから取り外した状態としておく。
【0076】
次に、仮設台車21は、レール19に沿って移動させて、搬送路22が炉蓋2の取付対象となる炉枠5の炉外側に配置されるように左右方向(炉団方向)の位置決めを行う。このように位置決めされた仮設台車21は、図示しないクランプや、チェーンブロックと索状物などの取り外し可能な連結手段(図示せず)を用いて、レール19やバックステー18などのコークス炉1における固定物に対し連結して、仮設台車21の位置の固定と転倒防止とを図り、仮設を行う。
【0077】
仮設台車21の仮設が行われた後は、ガイド機構24において、左右のブラケット32a,32bの支柱部材34a,34b,34c,34dに対する上下方向の固定位置の調整を行うと共に、左右のレール部材33a,33bの架台31a,31bへの取り付けを行う。この作業により、左側のレール部材33aのレール本体44aは、上下方向位置および左右方向位置を、炉枠5の左側のローラ受け部材8aのローラ載置面9の位置に合わせ、レール本体44aの前端側は、ローラ受け部材8aの突出端部に接近あるいは接触させて配置する。また、右側のレール部材33bのレール本体44bは、上下方向位置および左右方向位置を、炉枠5の右側のローラ受け部材8bのローラ載置面9の位置に合わせ、レール本体44bの前端側は、ローラ受け部材8bの突出端部に接近あるいは接触させて配置する。
【0078】
一方、炉蓋2は、上下の各閂7に個別の閂ばね押圧装置51を装着して、各閂7を旋回可能な状態とする。更に、各閂7は、左右方向に傾斜させて、炉枠5の閂受金物6a,6b,6c,6dと干渉しない姿勢としておく。
【0079】
次に、炉蓋2は、吊りピース13を図示しないクレーン等の吊具で吊って、図9に二点鎖線で示すように、仮設台車21の搬送路22(図4参照)の後端側近傍位置まで移動させる。
【0080】
次いで、炉蓋2は、図示しないクレーン等の吊具から、仮設台車21にてトロリー28と一緒にビーム部材27の後端側まで移動させておいた吊具30に受け替える。このとき、吊具30の位置が炉蓋本体11の上端側の吊りピース13の上方に配置できない場合は、炉蓋本体の上端寄りの左右両側に設けられている別の吊りピース13aを吊具30で吊るようにすればよい。このようにして吊具30に吊られた炉蓋2は、左右の支持ローラ10a,10bが、ガイド機構24の各レール本体44a,44bに設けられているストッパ47よりも高い位置に配置されるように、上下方向位置を調整する。
【0081】
その後、吊具30に吊られている炉蓋2は、トロリー28をビーム部材27の前端側へ移動させることで、左右の支持ローラ10a,10bが、ストッパ47よりも前側の各レール本体44a,44bの真上に配置される位置まで搬送する。
【0082】
その状態で、図10に示すように、吊具30に吊られている炉蓋2の位置を、左右の支持ローラ10a,10bが左右のレール本体44a,44bにそれぞれ載置される位置まで降ろす。このとき、炉蓋2の重量の大部分は吊具30で支持するようにして、各レール部材33a,33bには、左右の支持ローラ10a,10bから過大な荷重が作用しないようにする。
【0083】
次いで、炉蓋2は、吊具30で吊った状態のまま、各支持ローラ10a,10bを各レール本体44a,44bに沿わせながら、炉枠5側に移動させる。その後、炉蓋2は、図10に二点鎖線で示すように、各支持ローラ10a,10bが、各レール本体44a,44bの前端側から炉枠5の各ローラ受け部材8a,8bに受けられるようになる位置まで移動させる。なお、ガイド機構24が各レール部材33a,33bで炉蓋2の全重量を支持可能な強度を備えている場合は、各支持ローラ10a,10bをレール本体44a,44bに載置したとき以降は、吊具30による炉蓋2の支持を解除してもよい。
【0084】
これにより、炉蓋2は、炉蓋本体11が炉枠5の表面に沿って配置されると共に、炉蓋耐火物12が炉枠5を通して開口部4まで挿入された状態となる。
【0085】
よって、この状態で、炉蓋2の各閂7を水平姿勢となるように旋回させて、各閂7の先端側を、炉枠5の閂受金物6aと閂受金物6bによる対、および、閂受金物6cと閂受金物6dによる対にそれぞれ掛ける。
【0086】
その後は、炉蓋2を吊具30から外し、閂ばね押圧装置51は各閂7からを取り外して撤去して、炉蓋2の炉枠5への取り付け作業を完了する。
【0087】
仮設台車21は、位置の固定と転倒防止のための連結手段による固定物への連結を解除し、他の炉枠5に対する炉蓋2の取り付け作業を続けて行う場合は、各レール部材33a,33bを各架台31a,31bから取り外して、作業対象となる炉枠5の位置までレール19に沿って移動させる。また、炉蓋取付作業を終了する場合は、必要に応じて分解してから、レール19上から撤去するようにすればよい。
【0088】
このように、本実施形態の炉蓋取付方法によれば、押出機やガイド車を用いることなく炉蓋2を炉枠5に取り付ける作業を実施することができる。
【0089】
このため、押出機やガイド車は、他の炭化室3の操業を行うために使用することができ、他の炭化室3では操業を継続することが可能になるので、コークス炉1におけるコークス減産の影響を抑えることが可能になる。
【0090】
更に、炉蓋2を炉枠5に取り付けるときには、開口部4に挿入する炉蓋耐火物12と、開口部4の周囲のレンガ(図示せず)との接触を防いで、両者の損傷を防ぐことが重要である。
【0091】
この点に関し、本実施形態の炉蓋取付方法では、炉枠5のローラ受け部材8a,8bにガイド機構24のレール本体44a,44bの位置を合わせ、このレール本体44a,44bに支持ローラ10a,10bを載置して炉蓋2の移動をガイドするようにしてある。そのため、炉枠5に取り付ける直前の炉蓋2の上下方向位置及び左右方向位置は、支持ローラ10a,10bがローラ受け部材8a,8bに受けられて炉枠5に取り付けられた状態の炉蓋2の位置に合わせることができる。したがって、本実施形態の炉蓋取付方法では、開口部4に挿入する炉蓋耐火物12と、開口部4の周囲のレンガ(図示せず)との接触を防いで、両者の損傷を防ぐことができる。
【0092】
また、本実施形態の炉蓋取付方法によれば、作業対象となる炉枠5の炉外側に仮設台車21を仮設し、この仮設台車21で炉枠5に取り付ける炉蓋2を一旦受けるようにしてある。そのため、炉枠5を有する開口部4の外側の上方位置に、クレーン等の吊具の配置に関して障害となる障害物20が存在する場合であっても、炉蓋2を炉枠5に取り付ける作業を実施することができる。
【0093】
なお、前記実施形態では、炉蓋取付方法の適用対象となる炉蓋2は、閂押動用ペダル16の操作により閂ばね15を収縮させる形式の閂7を備えるものとして説明したが、図11に示すように、炉蓋2の閂7は、閂7自体を炉蓋本体11に接近する方向へ押す操作によって閂ばね15を収縮させる形式のものであってもよい。この場合は、図8(a)(b)(c)に示した閂ばね押圧装置51に代えて、図11に示す如き構成の閂ばね押圧装置59を用いるようにすればよい。なお、図11において、図8(a)(b)(c)及び図9に示したものと同一のものには、同一符号を付してその説明を省略する。
【0094】
図11に示した閂ばね押圧装置59は、炉蓋2の上部寄りの閂7から下部寄りの閂7までの寸法よりも長い寸法で上下方向に延びる支持部材60と、支持部材60の上端側と下端側に側方に突出するように取り付けられたフック部材61a,61bと、支持部材60の上端側と下端側に各フック部材61a,61bの突出する方向に沿う姿勢で取り付けられたジャッキ62a,62bとを備えた構成とされている。
【0095】
各フック部材61a,61bは、支持部材60に対する取付位置および取付姿勢が、炉蓋2の上部寄りと下部寄りの各閂7近傍に設けられている各横向きピン17に対して各フック部材61a,61bを同時に引っ掛けることができるように定められている。なお、図11では、各フック部材61a,61bは支持部材60に固定された構成を示したが、各フック部材61a,61bは、支持部材60の所定の個所に揺動可能に取り付けられた構成としてもよい。この構成によれば、各フック部材61a,61bは、それぞれ対応する横向きピン17に引っ掛けるときの位置を個別に調整することができる。
【0096】
各ジャッキ62a,62bは、支持部材60に対する取付位置および取付姿勢が、前記のように各フック部材61a,61bを各横向きピン17に引っ掛けた状態のときに、収縮状態の各ジャッキ62a,62bの突出端部(先端部)が炉蓋本体11の表面から突出している各閂7の突出端部に対向して配置されるように定められている。
【0097】
各ジャッキ62a,62bには、可搬型の油圧ポンプ63a,63bがそれぞれ接続されている。各油圧ポンプ63a,63bは、支持部材60に支持されている。なお、油圧ポンプ63a,63bは、対応するジャッキ62a,62bに単独で油圧を供給できるものであれば、手動や電動など駆動方式は任意の方式でよい。
【0098】
更に、支持部材60は、上端側と下端側に、たとえば、図11に示すような配置で吊りピース64a,64b,64c,64dが設けられている。これにより、閂ばね押圧装置59は、各吊りピース64a,64b,64c,64dのうちの1つあるいは複数を適宜選択して図示しないクレーン等の吊具で吊ることにより、支持部材60を上下方向に立てて配置した姿勢のほか、支持部材60を横倒しした姿勢など、様々な姿勢を取らせることができる。したがって、閂ばね押圧装置59は、種々の姿勢の炉蓋2に対して適用することができる。
【0099】
以上の構成としてある閂ばね押圧装置59を使用する場合は、図11のように、油圧ポンプ63a,63bを非作動状態とし、各ジャッキ62a,62bを収縮させた状態で、各フック部材61a,61bを炉蓋2におけるそれぞれ対応する配置の横向きピン17に引っ掛ける。これにより、各ジャッキ62a,62bは、各閂7の突出端部に対向して配置される。
【0100】
次に、各油圧ポンプ63a,63bを作動させて各ジャッキ62a,62bに油圧を供給して、各ジャッキ62a,62bを伸長させる。このとき、各フック部材61a,61bが各横向きピン17に引っ掛けられているので、支持部材60は、炉蓋本体11から離反する方向への変位が拘束される。このため、伸長するジャッキ62a,62bにより、各閂7が炉蓋本体11に接近する方向へ押されるため、閂ばね15が収縮して、閂7が旋回可能な状態になる。
【0101】
なお、本発明は前記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の炉蓋取付方法は、開口部4の外側の下方位置に仮設台車21を配置可能なレール19が備えられていれば、ガイド車が配置される側の開口部4の炉枠5のみならず、押出機が配置される側の開口部4の炉枠5に炉蓋2を取り付ける場合に適用してもよいことは勿論である。
【0102】
更に、本発明の炉蓋取付方法は、開口部4の外側の上方位置に障害物20が存在しているという条件の下で、その開口部4の炉枠5に炉蓋2を取り付ける場合に非常に有効な方法であるが、開口部4の外側の上方位置に障害物20が存在していない条件の下で、その開口部4の炉枠5に炉蓋2を取り付ける場合に適用してもよい。
【0103】
本発明の炉蓋取付方法は、既存のコークス炉1で炉蓋2を交換するときのみならず、新設のコークス炉1において炭化室3の開口部4に設けた炉枠5に炉蓋2を初めて取り付ける際に適用してもよい。
【0104】
炉蓋2を炉枠5に取り付ける際は、開口部4の周囲のレンガ(図示せず)の損傷を防ぐことが重要であるが、炉蓋2を取り外した後は、開口部4の周囲のレンガがたとえ損傷していても、その補修は容易に実施できる。そのため、コークス炉1にて、既設の炉蓋2を炉枠5から取り外す作業は、前記実施形態の炉蓋取付方法の手順の逆の手順で行うようにしてもよく、あるいは、その他任意の方法で実施するようにしてもよい。
【0105】
また、炉蓋2や、仮設台車21とそのガイド機構24の前後上下左右の各寸法や寸法比は、図示するための便宜上のものであり、実際の装置の寸法や寸法比を反映したものではない。
【0106】
各架台31a,31bに取り付ける各レール部材33a,33bの左右方向位置および前後方向位置を調整できるようにするための構成としては、架台31a,31bの左右両端側に設ける長孔42a,42bを前後方向に延びる形状とし、各レール部材33a,33bのベース板45a,45bに設ける長孔48a,48bを左右方向に延びる形状としてもよい。
【0107】
各架台31a,31bに取り付ける各レール部材33a,33bの前後方向位置を調整する手段の調整量を拡大して、各レール部材33a,33bを各架台31a,31bに取り付けた状態で、仮設台車21をレール19上で移動させるときにバックステー18と干渉しない位置までスライドさせることができる構成としてもよい。この場合は、仮設台車21をレール19に沿って移動させて炉蓋2の取付対象となる炉枠5の位置に合わせて配置するときに、各架台31a,31bに各レール部材33a,33bを予め取り付けておくことができる。
【0108】
各架台31a,31bに、各架台31a,31bに取り付ける各レール部材33a,33bの高さ位置を変更する手段を備えるようにしてもよい。たとえば、各架台31a,31bと各レール部材33a,33bとの間にシムプレートを介装するようにしてもよい。この構成によれば、架台31a,31bの上下方向位置を固定したままで、左右の各レール部材33a,33bのレール本体44a,44bの上下方向位置を、炉枠5の各ローラ受け部材8a,8bに合わせて配置することができる。したがって、この構成によれば、ブラケット32a,32bを各支柱部材34a,34b,34c,34dに取り付けるときの上下方向の位置調整手段を省略することが可能になる。
【0109】
ブラケット32a,32bは、仮設台車21の搬送路22の左右の両側部に架台31a,31bを取り付けることができるようにしてあれば、搬送路22の両側部の形状や構造に応じて、図5乃至図7に示した以外の任意の形状や構造を採用してもよい。
【0110】
前記実施形態の炉蓋取付方法による炉枠5への炉蓋2の取付作業を行うときに、別の炭化室3の操業は行われていない状態であってもよい。
【0111】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0112】
1 コークス炉
2 炉蓋
3 炭化室
4 開口部
5 炉枠
8a,8b ローラ受け部材
10a,10b 支持ローラ
19 レール
21 仮設台車
22 搬送路
23 搬送手段
24 ガイド機構
26 車輪
33a,33b レール部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11