(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加工ツールを把持するスピンドルと、被加工物を保持し、前記スピンドルに対して相対的に移動可能な保持部とを備え、複数の加工工程が記録された加工プログラムに基づいて、前記加工ツールを使用して前記被加工物を切削する切削加工機において、前記被加工物を切削加工する残りの加工時間を予測する加工時間予測装置であって、
表示画面と、
前記表示画面に接続された制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記加工プログラムが記憶された記憶部と、
前記加工プログラムに従って、前記切削加工機が前記被加工物を切削するシミュレーションを行い、前記スピンドルおよび前記保持部の制御情報が記録された制御パターンを作成するシミュレーション部と、
前記制御パターンに基づいて、前記加工プログラムの各工程における残りの加工時間を計算し、前記加工プログラムの各工程に対する残りの加工時間が記録された加工時間テーブルを作成する加工時間計算部と、
前記切削加工機によって現時点で切削加工が行われている前記加工プログラムの工程を取得し、取得した前記加工プログラムの工程に対する残りの加工時間を前記加工時間テーブルから取得する加工時間取得部と、
前記加工時間取得部によって取得された残りの加工時間を前記表示画面に表示させる表示部と、
を備え、
前記加工時間計算部は、前記加工プログラムの各工程に対する処理済みの加工プログラムのデータサイズをそれぞれ計算し、前記処理済みの加工プログラムのデータサイズに対する残りの加工時間を前記加工時間テーブルに記録し、
前記加工時間取得部は、前記切削加工機によって切削開始から現在行われている工程までにおける前記加工プログラムのデータサイズを取得し、前記取得したデータサイズに対する残りの加工時間を前記加工時間テーブルから取得する、加工時間予測装置。
加工ツールを把持するスピンドルと、被加工物を保持し、前記スピンドルに対して相対的に移動可能な保持部とを備え、複数の加工工程が記録された加工プログラムに基づいて、前記加工ツールを使用して前記被加工物を切削する切削加工機において、前記被加工物を切削加工する残りの加工時間を予測する加工時間予測方法であって、
前記加工プログラムに従って、前記切削加工機が前記被加工物を切削するシミュレーションを行い、前記スピンドルおよび前記保持部の制御情報が記録された制御パターンを作成するシミュレーション工程と、
前記制御パターンに基づいて、前記加工プログラムの各工程における残りの加工時間を計算し、前記加工プログラムの各工程に対する残りの加工時間が記録された加工時間テーブルを作成する加工時間計算工程と、
前記切削加工機によって現時点で切削加工が行われている前記加工プログラムの工程を取得し、取得した前記加工プログラムの工程に対する残りの加工時間を前記加工時間テーブルから取得する加工時間取得工程と、
前記加工時間取得工程で取得した残りの加工時間を表示画面に表示する表示工程と、
を包含し、
前記加工時間計算工程では、前記加工プログラムの各工程に対する処理済みの加工プログラムのデータサイズをそれぞれ計算し、前記処理済みの加工プログラムのデータサイズに対する残りの加工時間を前記加工時間テーブルに記録し、
前記加工時間取得工程では、前記切削加工機によって切削開始から現在行われている工程までにおける前記加工プログラムのデータサイズを取得し、前記取得したデータサイズに対する残りの加工時間を前記加工時間テーブルから取得する、加工時間予測方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る切削加工システムについて説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る切削加工システム100を示すブロック図である。
図1に示すように、本実施形態に係る切削加工システム100は、切削加工機1と、加工時間予測装置70とを備えている。ここでは、まず、切削加工機1について説明し、その後、加工時間予測装置70について説明する。
【0014】
図2は、切削加工機1の斜視図である。
図2に示すように、相互に直交する軸をX軸、Y軸およびZ軸とする。本実施形態に係る切削加工機1は、X軸とY軸とで構成されるXY平面に置かれるものとする。以下、左方および右方とは、
図2のフロントカバー7に向かって切削加工機1を見た場合の左方および右方である。また、
図2のフロントカバー7に向かって切削加工機1を見た場合に、切削加工機1に近付く方を後方、遠ざかる方を前方とする。以下の図面において、左方をL、右方をRとし、前方をF、後方をReとし、上方をU、下方をDとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、切削加工機1の設置態様を何ら限定するものではない。
【0015】
切削加工機1は、被加工物15(
図3参照)を切削加工するものである。被加工物15は、例えば、人工歯の材料である。ここでは、被加工物15は、セラミックス、または、樹脂などの材料によって形成されたものである。しかしながら、被加工物15の材料は特に限定されない。
【0016】
図2に示すように、切削加工機1は、箱状に形成されている。詳しくは、切削加工機1は、ベース部2、左外壁部3、右外壁部4、天面部5および後面部6を有するケース10と、フロントカバー7とを備えている。ケース10の前方は開口されている。左外壁部3は、ベース部2の左端において上方に延びている。右外壁部4は、ベース部2の右端において上方に延びている。後面部6は、ベース部2の後端において上方に延びている。後面部6は、左外壁部3の後端、および、右外壁部4の後端に接続されている。天面部5は、ベース部2の上方に配置されている。天面部5は、左外壁部3の上端、右外壁部4の上端、および、後面部6の上端に接続されている。本実施形態では、ベース部2、左外壁部3、右外壁部4、天面部5および後面部6によって、内部空間8が形成されている。この内部空間8は、被加工物15(
図3参照)に対して切削加工が行われる加工エリアである。
【0017】
図2に示すように、フロントカバー7は、左外壁部3の前端および右外壁部4の前端において上下方向に移動することによって開閉自在に構成されている。フロントカバー7には窓部7aが設けられている。作業者は、窓部7aから内部空間8を視認することができる。
【0018】
次に、被加工物15を保持する保持部25、および、複数の加工ツール23を収容するツールマガジン32について説明する。
図3は、保持部25およびツールマガジン32を示す斜視図である。
図3に示すように、切削加工機1は、被加工物15を保持する保持部25と、保持部25に連結された支持部31と、箱状に形成され、複数の加工ツール23を収容するツールマガジン32とを備えている。保持部25、支持部31およびツールマガジン32は、内部空間8(
図2参照)に設けられている。本実施形態では、上述のように、被加工物15の形状は、円板状である。保持部25は、被加工物15を保持可能な形状、ここでは、半円弧状に形成されている。図示は省略するが、保持部25の前部には、第1回転軸が接続されており、保持部25の後部には第2回転軸が接続されている。上記第1回転軸は、保持部25の前部に設けられた第1駆動部41に接続されている。第1駆動部41は、例えばモータである。第1駆動部41は、上記第1回転軸をX軸周りの方向T1に回転させる。このような構成において、第1駆動部41によって上記第1回転軸が方向T1に回転すると、保持部25は方向T1に回転する。これによって、被加工物15を方向T1に回転させることができる。また、図示は省略するが、支持部31は、第2駆動部42(
図5参照)に接続されており、第2駆動部42によって前後方向に移動する。これにより、被加工物15および保持部25は、支持部31を介して第2駆動部42に接続され、支持部31を介して前後方向に移動される。さらに、支持部31は、第3駆動部43(
図5参照)に接続されており、第3駆動部43によってY軸周りの方向T2に回転する。これによって、被加工物15は、保持部25を介して方向T2に回転する。なお、第2駆動部42および第3駆動部43は、例えばモータである。
【0019】
本実施形態では、支持部31はL字状に形成されている。支持部31は、X軸方向に延びて形成された第1板部31aと、第1板部31aの後端からY軸方向に延びて形成された第2板部31bとを備えている。支持部31の第2板部31bは、上記第2回転軸を支持している。支持部31の第1板部31aには、ツールマガジン32が固定されている。ツールマガジン32の上面には、複数の孔部32aが形成されており、加工ツール23の上部23a(
図4参照)が露出された状態で、加工ツール23が孔部32aに挿通されている。なお、加工ツール23を交換する際に、後述のスピンドル33(
図4参照)によって加工ツール23の上部23aが把持されるようになっている。
【0020】
次に、スピンドル33について説明する。
図4は、スピンドル33を示す正面図である。
図4に示すように、切削加工機1は、スピンドル33を備えている。内部空間8(
図2参照)には、スピンドル33が上下方向に延びるように設けられている。スピンドル33は、加工ツール23を把持する。スピンドル33は、加工ツール23を回転させる。スピンドル33は、被加工物15に対する3次元方向への相対的な移動が可能なものである。ここでは、スピンドル33が3次元方向に移動することで、スピンドル33が被加工物15に対して相対的に移動する。ただし、スピンドル33が固定され、被加工物15が移動することで、スピンドル33が被加工物15に対して相対的に移動するような構成であってもよい。
【0021】
スピンドル33は、第4駆動部44に接続されている。スピンドル33は、第4駆動部44によって前後方向、左右方向および上下方向に移動する。第4駆動部44は、特に限定されないが、例えば、モータである。スピンドル33は、ハウジング60と、加工ツール23の上部23aを把持する把持部61とを備えている。加工ツール23の交換の際には、スピンドル33は現在把持している加工ツール23をツールマガジン32の所定位置に戻す。その後、スピンドル33は、新たに把持すべき加工ツール23の上部23aの真上に把持部61が位置するように移動する。そして、スピンドル33は、把持部61を開いた状態で、加工ツール23の上部23aに向かって下方に移動し、当該把持部61を閉じることにより加工ツール23の上部23aを把持する。その後、スピンドル33は、切削加工を開始するため、被加工物15(
図3参照)に向かって移動する。図示は省略するが、スピンドル33は、スピンドル33が加工ツール23を把持した状態で加工ツール23を回転させる駆動部に接続されている。
【0022】
次に、制御装置50について説明する。
図5は、切削加工機1のブロック図である。本実施形態に係る切削加工機は、制御装置50を備えている。制御装置50は、切削加工機1に内蔵されている。しかし、制御装置50の配置位置は特に限定されない。制御装置50は、コンピュータであり、中央処理装置(CPU)と、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。なお、ROMに格納されたプログラムとは、所謂ファームウェアのことである。
【0023】
図5に示すように、制御装置50は、第1〜第4駆動部41〜44およびスピンドル33に接続されている。制御装置50は、第1駆動部41を制御することによって、保持部25におけるX軸周りの方向T1(
図3参照)の回転を制御する。制御装置50は、第2駆動部42を制御することによって、保持部25における前後方向の移動を制御する。制御装置50は、第3駆動部43を制御することによって、保持部25におけるY軸周りの方向T2(
図3参照)の回転を制御する。また、制御装置50は、第4駆動部44を制御することによって、スピンドル33の前後方向および左右方向への移動を制御する。制御装置50は、スピンドル33を制御することによって、スピンドル33の回転に関する制御、および、スピンドル33における加工ツール23の把持に関する制御を行う。
【0024】
本実施形態では、
図3に示すように、切削加工機1は、加工プログラムに基づいて、複数の加工ツール23を使用して被加工物15を切削することで、所望の加工物を作製する。この加工プログラムとは、所謂NCデータ(NCプログラム)のことである。加工プログラムとは、スピンドル33の動作、および、被加工物15を保持する保持部25の動作を座標値によって定義した加工工程が複数記録されたものである。すなわち、加工プログラムは、複数の加工工程を有している。これら複数の工程に従って、制御装置50がスピンドル33および保持部25の動作を制御することで、被加工物15が加工ツール23によって切削され、所望の加工物が作製される。
【0025】
本実施形態では、
図5に示すように、制御装置50は、記憶部52と、加工制御部53と、制御信号送信部58とを備えている。そして、加工制御部53は、加工プログラム解釈部54と、加減速計算部56とを備えている。これら各部は、ROMに格納されたプログラムによって実現されている。このプログラムは、例えば、他のパーソナルコンピュータによって作成される。そして、制御装置50と他のパーソナルコンピュータを、USBなどのケーブルによって接続し、作成されたプログラムを制御装置50に転送する。転送されたプログラムは、例えば、制御装置50のCPU内蔵のROMに記憶される。ただし、このプログラムは、例えばCD(コンパクトディスク)やDVD(デジタルバーサタイルディスク)などの記録媒体から読み込まれるものであってもよい。なお、このプログラムをインターネットを通じてダウンロードするようにしてもよい。また、これら各部は、プロセッサ、および、回路などによって実現可能なものであってもよい。
【0026】
記憶部52には、例えば、上記加工プログラム、後述する加速度パラメータ、S字加速度パラメータ、および、スムージングパラメータなどが予め記憶されている。
【0027】
加工制御部53は、被加工物15の切削加工に関する制御を行う。本実施形態では、加工制御部53は、加工プログラムに従って、スピンドル33および保持部25の制御情報が記録された制御パターンを作成する。ここでは、加工制御部53による切削加工に関する制御は、加工プログラム解釈部54と、加減速計算部56によって実現される。加工プログラム解釈部54は、記憶部52に記憶された加工プログラムを解釈する。詳しくは、加工プログラム解釈部54は、記憶部52に記憶された加工プログラムを読み込む。そして、加工プログラム解釈部54は、読み込んだ加工プログラムの各工程における座標値から、各工程におけるスピンドル33および保持部25の位置情報を計算する。この位置情報とは、時系列に沿って得られるものである。
【0028】
加減速計算部56は、加工プログラム解釈部54によって計算された位置情報であって、スピンドル33および保持部25の位置情報から、第1〜第4駆動部41〜44によって制御されるスピンドル33および保持部25の制御情報が記録された制御パターンを計算する。この制御パターンとは、第1〜第4駆動部41〜44に関する制御パターンであって、スピンドル33および保持部25の位置を制御する制御情報が記録された制御パターンのことである。ここでは、例えば、加減速計算部56は、所定の間隔(例えば、250μs)ごとに割り込みを発生させ、一の割り込みと、一の割り込みの次に発生する割り込みとの間に移動する第1〜第4駆動部41〜44のそれぞれのモータの移動角度を計算する。なお、本実施形態では、制御パターンを作成する際には、記憶部52に記憶された加速度パラメータが使用される。さらに、この制御パターンは、S字加速度制御およびスムージング制御が行われた後の制御パターンである。
【0029】
S字加速度制御とは、連続する加速度において、スピンドル33および保持部25が滑らかに加速および減速するように各加速度を補正することである。
図6(a)は、S字加速度制御が行われる前における、スピンドル33が内部空間8内を移動する際の経過時間とスピンドル33の移動速度との関係の一例を示した図である。
図6(b)は、
図6(a)において、経過時間におけるスピンドル33の移動速度に対して、S字加速度制御が行われた後の状態を示す図である。
図6(a)および
図6(b)において、横軸は経過時間を示し、縦軸は速度を示している。制御パターンにおいて、
図6(a)のように、スピンドル33の移動における経過時間と、スピンドル33の移動速度との関係が得られているとする。このとき、時間T11〜T14において、急な加速度変化が発生する。急な加速度変化が発生した場合、第1〜第4駆動部41〜44にかかる負荷が増大する。そこで、S字加速度制御を行うことで、急な加速度変化が発生しないように補正する。S字加速度制御を行うことによって、
図6(b)に示すように、滑らかな速度変化になる。なお、S字加速度制御は、記憶部52に予め記憶されたS字加速度パラメータを利用して行われる。このS字加速度パラメータには、機種によって異なる値が設定される。
【0030】
スムージング制御とは、制御パターンのうち連続する2つのパス(位置を示すパス)を滑らかな曲線状の1つのパスにする制御のことである。
図7(a)は、スムージング制御が行われる前における、スピンドル33の位置の移り変わりの一例を示した図である。
図7(b)は、
図7(a)に示したスピンドル33の位置の移り変わりの図に対して、スムージング制御が行われた後における、スピンドル33の位置の移り変わりを示した図である。
図7(a)および
図7(b)において、横軸はX軸方向のスピンドル33の位置を示し、縦軸はY軸方向のスピンドル33の位置を示している。例えば、制御パターンに沿ってスピンドル33の位置が
図7(a)に示すように移り変わるとする。この場合、パスa1とパスa2とが点P1において滑らかに繋がっていないため、スピンドル33にかかる負荷が増大する。そこで、
図7(b)に示すように、スムージング制御を行うことで、パスa1とパスa2の位置を補正し、滑らかな曲線状のパスa3が得られる。このようなパスa3のような移動をスピンドル33が行うことによって、スピンドル33にかかる負荷を減らすことができる。なお、スムージング制御は、記憶部52に予め記憶されたスムージングパラメータを利用して行われる。このスムージングパラメータには、機種によって異なる値が設定される。以上のように、加減速計算部56によって、S字加速度制御およびスムージング制御を行った制御パターンを得ることができる。
【0031】
図5に示すように、制御信号送信部58は、加減速計算部56によって得られた制御パターンに従って、制御信号を第1〜第4駆動部41〜44へ適宜送信する。なお、制御信号を受信した第1〜第4駆動部41〜44は、制御信号に従って、モータの角度が制御される。そして、加減速計算部56によって得られた制御パターンに従って、スピンドル33および保持部25を移動させることで、被加工物15の切削加工が行われ、所望の加工物が作製される。
【0032】
以上、本実施形態に係る切削加工機1について説明した。次に、
図1に示す加工時間予測装置70について説明する。本実施形態に係る加工時間予測装置70は、切削加工機1が被加工物15を切削するのに要する残りの加工時間(以下、単に「残りの加工時間」という。)を予測する装置である。
図1に示すように、加工時間予測装置70は、有線通信が可能にラインL1によって切削加工機1と接続している。なお、切削加工機1と加工時間予測装置70とは無線による通信が可能に接続されていてもよい。
【0033】
図8は、加工時間予測装置70を示すブロック図である。
図8に示すように、加工時間予測装置70は、表示画面72と、制御装置74とを備えている。
図1に示すように、表示画面72は、例えば、ディスプレイであり、切削加工の残り時間が表示されるものである。なお、表示画面72は、切削加工機1に設けられ、作業者が切削加工機1を操作する操作画面(図示せず)であってもよい。
【0034】
制御装置74は、コンピュータであり、CPUと、CPUが実行するプログラムなどを格納したROMと、RAMなどを備えている。本実施形態では、制御装置74は、記憶部82と、シミュレーション部83と、加工時間計算部88と、加工時間取得部89と、表示部90と、終了判定部92を備えている。シミュレーション部83は、加工プログラム解釈部84と、加減速計算部86とを備えている。これら各部は、ROMに格納されたプログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムをインターネットを通じてダウンロードするようにしてもよい。また、これら各部は、プロセッサ、および、回路などによって実現可能なものであってもよい。
【0035】
記憶部82には、加工プログラム、加速度パラメータ、S字加速度パラメータ、および、スムージングパラメータが記憶されている。記憶部82に記憶された加工プログラム、加速度パラメータ、S字加速度パラメータ、および、スムージングパラメータは、それぞれ切削加工機1の記憶部52に記憶された加工プログラム、加速度パラメータ、S字加速度パラメータ、および、スムージングパラメータと同様のものである。なお、加工時間予測装置70の制御装置74の記憶部82と、切削加工機1の制御装置50の記憶部52とは、別々の記憶部であってもよいし、共通する1つの記憶部であってもよい。
【0036】
シミュレーション部83は、切削加工機1が行う被加工物15(
図3参照)の切削加工をシミュレーションする。ここでは、シミュレーション部83は、記憶部82に記憶された加工プログラムに従って、切削加工機1が被加工物15を切削するシミュレーションを行い、スピンドル33(
図4参照)および保持部25(
図3参照)の制御情報が記録された制御パターンを作成する。ここでは、シミュレーション部83は、仮想空間内において、切削加工機1の加工制御部53と同様の制御を疑似的に行う。本実施形態では、シミュレーション部83は、加工プログラム解釈部84と、加減速計算部86によって実現される。
【0037】
図8に示すように、加工時間予測装置70のシミュレーション部83の加工プログラム解釈部84は、切削加工機1の加工制御部53の加工プログラム解釈部54(
図5参照)と同じ制御を疑似的に行う。すなわち、加工プログラム解釈部84は、加工プログラムを解釈して、加工プログラムの各工程におけるスピンドル33および保持部25の位置情報を計算する。ここでは、加工プログラム解釈部84のソースコードには、切削加工機1の加工プログラム解釈部54と同じソースコードが用いられている。同様に、シミュレーション部83の加減速計算部86は、切削加工機1の加工制御部53の加減速計算部56と同じ制御を疑似的に行う。すなわち、加減速計算部86は、加工プログラム解釈部84によって計算された上記位置情報から、スピンドル33および保持部25が移動する際の加速度を計算することで制御パターンを作成する。ここでは、シミュレーション部83の加減速計算部86のソースコードは、加工制御部53の加減速計算部56と同じソースコードである。すなわち、シミュレーション部83の加減速計算部86によって、上述したS字加速度制御、および、上述したスムージング制御が行われた制御パターンを得ることができる。
【0038】
図8に示すように、加工時間計算部88は、シミュレーション部83の加減速計算部56によって作成された制御パターンに基づいて、加工プログラムの各工程における残りの加工時間を計算する。そして、加工時間計算部88は、加工プログラムの各工程に対する残りの加工時間が記録された加工時間テーブルを作成する。
図9は、処理済みの加工プログラムのデータサイズと、経過時間との関係を示した図である。なお、
図9では、横軸は処理済みの加工プログラムのデータサイズ(バイト数)を示し、縦軸は、経過時間を示している。また、
図9において、符号K1は、荒削り工程を示し、符号K2は、仕上げ工程を示している。加工時間計算部88は、
図9に示したようなグラフに基づいて加工時間テーブルを作成する。
図9では、加工プログラムの総データサイズ(加工プログラムの全体のデータサイズ)は、サイズS21であり、切削加工に要する総加工時間(切削加工に要する全体の加工時間)は時間T21である。ここで、例えば、切削加工中における加工プログラムの所定の工程までに処理した処理済み加工プログラムのデータサイズがサイズS22であり、所定の工程までに要した加工時間が時間T22とする。このとき、処理済み加工プログラムのデータサイズがサイズS22における残りの加工時間T23は、T23=T21−T22と推定することができる。
【0039】
本実施形態では、加工時間計算部88は、加工プログラムの各工程に対する処理済みの加工プログラムのデータサイズをそれぞれ計算し、それぞれのデータサイズに対する残りの加工時間を計算する。そして、加工時間計算部88は、処理済みのデータサイズと残りの加工時間との関係を加工テーブルに記録する。加工時間計算部88は、このような加工テーブルを作成する。
【0040】
図8に示すように、加工時間取得部89は、切削加工機1によって現時点で切削加工が行われている加工プログラムの工程を取得する。そして、加工時間取得部89は、取得した加工プログラムの工程に対する残りの加工時間を加工時間テーブルから取得する。なお、この残りの加工時間を取得する詳細な手順は後述する。
【0041】
表示部90は、加工時間取得部89によって取得された残りの加工時間を表示画面72に表示する。終了判定部92は、切削加工機1による被加工物15の切削加工が終了したか否かを判定する。言い換えると、終了判定部92は、残りの加工時間を表示する工程を終了するか否かを判定する。なお、終了判定部92において、被加工物15の切削加工が終了したか否かを判定する詳しい手順については後述する。
【0042】
次に、加工時間予測装置70が残りの加工時間を表示する手順について説明する。
図10は、残りの加工時間を表示する手順について示したフローチャートである。ここでは、残りの加工時間を表示する手順について、
図10のフローチャートを用いて説明する。なお、
図10のフローチャートに示された手順を行うに先立って、加工時間予測装置70のシミュレーション部83によって、加工時間テーブルが作成されている。この加工時間テーブルは、加工時間予測装置70の記憶部82に記憶されているものとする。
【0043】
まず、ステップS100では、切削加工機1の制御装置50は、記憶部52に記憶された加工プログラムに従って、被加工物15の切削加工を開始する。ここでは、切削加工機1の加工制御部53の加減速計算部56によって、S字加速度制御およびスムージング制御が行われた後の制御パターンが作成される。そして、この制御パターンに基づいて、第1〜第4駆動部41〜44を制御することで、スピンドル33および保持部25の移動位置および移動速度を制御する。
【0044】
ステップS100において、切削加工機1による切削加工が開始された後、ステップS102では、加工時間予測装置70の加工時間取得部89は、切削加工機1から、現時点における、処理済みの加工プログラムのデータサイズを取得する。ここでは、例えば、加工時間取得部89は、切削加工機1の制御装置50に対して、データサイズ取得信号を送信する。そして、データサイズ取得信号を受信した制御装置50は、現在行われている加工プログラムの工程を取得し、加工プログラムのうち処理済みの加工プログラムの工程に対応した加工プログラムのデータサイズを算出する。その後、切削加工機1の制御装置50は、処理済みの加工プログラムのデータサイズを、加工時間予測装置70の加工時間取得部89に送信する。そして、加工時間取得部89は、処理済みの加工プログラムのデータサイズを受信することで、処理済みの加工プログラムのデータサイズを取得する。
【0045】
次に、ステップS104では、加工時間取得部89は、残りの加工時間を取得する。加工時間取得部89は、ステップS102において取得した処理済みの加工プログラムのデータサイズに従って、残りの加工時間を取得する。具体的には、上述のように、記憶部82には、加工時間計算部88によって作成された加工時間テーブルが記憶されている。加工時間取得部89は、加工時間計算部88よって作成された加工時間テーブルから、該当する処理済みの加工プログラムのデータサイズに対応した残りの加工時間を取得する。
【0046】
次に、ステップS106では、表示部90は、加工時間取得部89によって取得された残りの加工時間を表示画面72に表示させる。そして、ステップS108では、終了判定部92は、切削加工が終了したか否かを判定する。例えば、加工時間予測装置70の記憶部82には、加工プログラムの総データサイズが予め記憶されている。本実施形態では、終了判定部92は、記憶部82に記憶された加工プログラムの総データサイズと、ステップS102において加工時間取得部89が取得した処理済みの加工プログラムのデータサイズとを比較する。このとき、処理済みの加工プログラムのデータサイズが、加工プログラムの総データサイズと一致した場合、終了判定部92は、切削加工機1による切削加工が終了したと判定する。切削加工が終了したと判定された場合、残りの加工時間の表示は終了する。一方、処理済みの加工プログラムのデータサイズが、加工プログラムの総データサイズと一致せずに、加工プログラムの総データサイズよりも小さい場合、終了判定部92は、切削加工機1による切削加工は継続していると判定する。この場合、ステップS102に戻り、再度、処理済みの加工プログラムのデータサイズを取得するステップが行われる。
【0047】
以上のように、本実施形態では、
図8に示すように、シミュレーション部83によって、切削加工機1が実際に使用する加工プログラムに従って、切削加工機1が被加工物15(
図3参照)を切削する各工程であって、切削加工機1が実際に行う各工程が疑似的に行われることで、制御パターンが作成される。シミュレーション部83によって作成された制御パターンは、切削加工機1の加工制御部53(
図5参照)によって作成され、切削加工機1が切削加工する際に作成された制御パターンと同じである。そのため、シミュレーション部83によって作成された制御パターンに基づいて作成された加工時間テーブル内の各工程における残りの加工時間は、切削加工機1が行う各工程において、実際に要した残りの加工時間とほぼ同じになる。よって、荒削り工程K1(
図9参照)に含まれる加工プログラム内の工程であっても、加工時間予測装置70が予測した残りの加工時間と、実際に要した残りの加工時間とにおいて誤差をより小さくすることができる。したがって、精度が高い残りの加工時間を予測することができる。
【0048】
本実施形態では、シミュレーション部83は、加工プログラム解釈部84と、加減速計算部86とを備えている。加工プログラム解釈部84は、記憶部82に記憶された加工プログラムの各工程におけるスピンドル33および保持部25の位置情報を計算する。加減速計算部86は、加工プログラム解釈部84によって計算された位置情報から、スピンドル33および保持部25が移動する際の加速度を計算することで制御パターンを作成する。加工時間予測装置70の加工プログラム解釈部84は、切削加工機1の加工プログラム解釈部54(
図5参照)と同様の制御を疑似的に行い、加工時間予測装置70の加減速計算部86は、切削加工機1の加減速計算部56(
図5参照)と同様の制御を疑似的に行っている。本実施形態では、加工時間予測装置70のシミュレーション部83は、切削加工機1の加工制御部53(
図5参照)と同じ制御を疑似的に行っているため、切削加工機1の加減速計算部56によって作成された制御パターンと同じ制御パターンを、加工時間予測装置70の加減速計算部86が作成することができる。したがって、加工時間計算部88によって作成された加工時間テーブル内の各工程における残りの加工時間は、切削加工機1が行う各工程において、実際に要した残りの加工時間とほぼ同じになる。
【0049】
本実施形態では、切削加工機1の加工制御部53の加減速計算部56は、制御パターンを作成する際、
図6(b)に示すようなS字加速度制御を行う。シミュレーション部83の加減速計算部86は、切削加工機1の加減速計算部56が行うS字加速度制御を行うことで制御パターンを作成する。このように、切削加工機1で行われるS字加速度制御と同じ制御を、加工時間予測装置70でも行うことで、加工時間予測装置70によって予測された残りの加工時間と、切削加工機1が要した実際の残りの加工時間との誤差をより小さくすることができる。
【0050】
本実施形態では、切削加工機1の加工制御部53の加減速計算部56は、制御パターンを作成する際、
図7(b)に示すようなスムージング制御を行う。シミュレーション部83の加減速計算部86は、切削加工機1の加減速計算部56が行うスムージング制御を行うことで制御パターンを作成する。このように、切削加工機1で行われるスムージング制御と同じ制御を、加工時間予測装置70でも行うことで、加工時間予測装置70によって予測された残りの加工時間と、切削加工機1が要した実際の残りの加工時間との誤差をより小さくすることができる。
【0051】
本実施形態では、加工時間予測装置70の加工時間計算部88は、加工プログラムの各工程に対する処理済みの加工プログラムのデータサイズをそれぞれ計算し、各処理済みの加工プログラムのデータサイズに対する残りの加工時間を加工時間テーブルに記録している。加工時間取得部89は、切削開始から現在行われている工程までにおける加工プログラムのデータサイズを取得し、取得した加工プログラムのデータサイズに対する残りの加工時間を加工時間テーブルから取得する。このことによって、処理済みの加工プログラムのデータサイズによって、現在、切削加工機1が加工プログラムのどの工程を行っているかを加工時間予測装置70が判断することができる。
【0052】
本実施形態では、加工時間予測装置70の記憶部82には、加工プログラムの総データサイズが予め記憶されている。加工時間予測装置70の終了判定部92は、加工時間取得部89によって取得された処理済みの加工プログラムのデータサイズと、加工プログラムの総データサイズとを比較する。そして、終了判定部92は、加工時間取得部89によって取得された処理済みの加工プログラムのデータサイズと、加工プログラムの総データサイズとが一致した場合、表示部90による表示画面72に残りの加工時間を表示する制御を終了する。このことによって、処理済みの加工プログラムのデータサイズと、加工プログラムの総データサイズとを比較するという簡単な手順で、切削加工機1が被加工物15(
図3参照)の切削加工が終了したか否かを判定することができる。
【0053】
前述したように、切削加工機1の制御装置50の記憶部52、加工制御部53(加工プログラム解釈部54および加減速計算部56)と、制御信号送信部58、および、加工時間予測装置70の制御装置74の記憶部82、シミュレーション部83(加工プログラム解釈部84および加減速計算部86)と、加工時間計算部88と、加工時間取得部89と、表示部90と、終了判定部92とは、ソフトウェアによって構成されていてもよい。すなわち、上記各部は、コンピュータプログラムがコンピュータに読み込まれることにより、当該コンピュータによって実現されるようになっていてもよい。本発明には、コンピュータを上記各部として機能させるためのコンピュータプログラムが含まれる。また、本発明には、当該コンピュータプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体が含まれる。また、上記各部は、切削加工システム100に構成された回路によって実現されるものであってもよい。