(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内部に流体を収容可能であって内部に収容した前記流体を反転時に外部へ流出可能とさせる開口部を有する容器を鉛直方向及び水平方向の双方と交差する一方向に移動させる移動機構部と、
前記容器を水平方向に沿う軸線を中心にして反転させる反転機構部と、
前記容器が前記一方向に移動し且つ前記軸線を中心にして反転するように前記移動機構部及び前記反転機構部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記容器が移動及び反転の少なくとも一方を開始してから双方を完了するまでの期間のうち、少なくとも前記容器の反転に伴い前記開口部からの前記流体の流出が始まる投入開始時から前記流体の流出が終わる投入完了時までの投入期間中における、前記移動機構部及び前記反転機構部による前記容器を前記一方向に移動させつつ前記軸線を中心にして反転させる制御内容を、前記容器に収容される前記流体に応じて変更可能であり、
前記制御部は、前記投入期間中における前記容器の前記開口部からの前記流体の流出位置が、水平方向には変位する一方で、鉛直方向には前記投入開始時における前記流出位置から変位しないように、前記移動機構部及び前記反転機構部を制御することを特徴とする流体投入装置。
前記制御部は、前記投入期間中における前記容器の移動速度と反転速度が前記流体ごとに設定される速度となるように、前記移動機構部及び前記反転機構部を制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体投入装置。
前記移動機構部は、前記一方向に沿って移動自在な移動体を有し、前記反転機構部は、前記移動体に対して前記軸線を中心にして回転自在に支持される回転体を有し、前記容器は、前記回転体に対して一体回転可能に保持されることを特徴とする請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の流体投入装置。
前記制御部は、複数の前記流体ごとに予め設定された投入時の前記容器の移動速度及び反転速度に関する情報を含む投入態様情報を記憶する記憶部から、その投入時に前記容器に収容されている前記流体についての投入態様情報を読み出し、その読み出した投入態様情報に基づき前記移動機構部及び前記反転機構部を制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のうち何れか一項に記載の流体投入装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液体容器に収容される液体の種類は様々であり、その液体の種類によっては反転する液体容器から別容器等に投入された場合に生じる飛沫の発生状況が大きく異なることもある。したがって、液体容器の反転時における移動支点部の移動軌跡がいつも同じ一定の移動軌跡であると、すなわち液体容器を移動させつつ反転させる液体の投入態様がワンパターンであると、投入される液体の種類によっては、液体の投入時に多くの飛沫が周辺に飛散する等して、装置の周辺環境を汚染してしまう虞があった。
【0006】
なお、こうした虞は、液体を収容した容器を反転させて液体を投入する場合に限らず、液体と同じ様に流体の一種である粉体や石灰等の微粉を含む粒体等を収容した容器を反転させて粉体や粒体等を投入する場合においても、概ね共通するものとなっていた。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、流体を収容した容器を反転させて流体を投入する装置の周辺環境の汚染を抑制できる流体投入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する流体投入装置は、内部に流体を収容可能であって内部に収容した前記流体を反転時に外部へ流出可能とさせる開口部を有する容器を鉛直方向及び水平方向の双方と交差する一方向に移動させる移動機構部と、前記容器を水平方向に沿う軸線を中心にして反転させる反転機構部と、前記容器が前記一方向に移動し且つ前記軸線を中心にして反転するように前記移動機構部及び前記反転機構部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記容器が移動及び反転の少なくとも一方を開始してから双方を完了するまでの期間のうち、少なくとも前記容器の反転に伴い前記開口部からの前記流体の流出が始まる投入開始時から前記流体の流出が終わる投入完了時までの投入期間中における、前記移動機構部及び前記反転機構部による前記容器を前記一方向に移動させつつ前記軸線を中心にして反転させる制御内容を、前記容器に収容される前記流体に応じて変更可能である。
【0009】
この構成によれば、容器の反転により投入される流体に応じて(例えば、容器内に収容されている流体の種類や量等に応じて)、その流体を別容器等の投入先に投入することによって発生する汚染要因(飛沫や粉塵等)が抑制されるように、移動機構部及び反転機構部の制御内容を変更可能である。そのため、カム溝等がワンパターンの態様で容器を移動及び反転させるのではなく、移動機構部及び反転機構部が自在に容器を移動させつつ反転させて容器内から流体を投入する場合において、容器に収容されている流体の特性を考慮した最適な投入態様での投入が可能となり、容易に周辺環境の汚染を抑制できる。
【0010】
上記流体投入装置において、前記制御部は、前記投入期間中における前記容器の移動速度と反転速度が前記流体ごとに設定される速度となるように、前記移動機構部及び前記反転機構部を制御することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、例えば、流体が液体であって、その液体の特性上、その液体を収容した容器を投入時に所定の反転速度で反転させると、飛沫が周辺に勢い良く飛散してしまうような場合には、その容器の移動速度及び反転速度が遅くなるように設定すれば、投入時の飛沫の発生を好適に抑制できる。その一方、その液体の特性上、その液体を収容した容器を投入時に所定の反転速度で反転させると、容器の外側面に開口部から液だれが生じるような場合には、その容器の移動速度及び反転速度が速くなるように設定すれば、投入時の液だれの発生を好適に抑制できる。このように容器の移動速度と反転速度を調整するだけで、カム機構等のメカ的構成を用いずとも容易に周辺環境の汚染を抑制できる。
【0012】
上記流体投入装置において、前記移動機構部は、前記一方向に沿って移動自在な移動体を有し、前記反転機構部は、前記移動体に対して前記軸線を中心にして回転自在に支持される回転体を有し、前記容器は、前記回転体に対して一体回転可能に保持されることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、移動体の移動速度及び回転体の回転速度をそれぞれ制御することにより、容器の移動速度、容器の反転速度、容器の反転開始タイミング及び反転完了タイミング等を自由自在に設定することが可能となるので、容器の反転により投入される流体に応じて、所望する様々な投入態様を実現できる。
【0014】
上記流体投入装置において、前記制御部は、前記投入期間中における前記容器の前記開口部からの前記流体の流出位置が、水平方向には変位する一方で、鉛直方向には前記投入開始時における前記流出位置から変位しないように、前記移動機構部及び前記反転機構部を制御することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、投入期間中における容器の開口部からの流体の流出位置が鉛直方向において高くなりすぎることがないので、高い位置からの流体の投入によって発生する汚染要因(飛沫や粉塵等)を抑制でき、この点で周辺環境の汚染抑制に貢献できる。
【0016】
上記流体投入装置において、前記制御部は、前記投入期間中における前記容器の前記開口部からの前記流体の流出位置が、鉛直方向には変位する一方で、水平方向には前記投入開始時における前記流出位置から変位しないように、前記移動機構部及び前記反転機構部を制御することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、投入期間中における容器の開口部からの流体の流出位置が水平方向においては大きく変動することがない。そのため、例えば流体が投入される別の容器等において流体を受け入れる開放口が小さい場合でも、その小さな開放口を介して別の容器等に、反転させた容器から流体を周辺にこぼすことなく投入できる。
【0018】
上記流体投入装置において、前記制御部は、複数の前記流体ごとに予め設定された投入時の前記容器の移動速度及び反転速度に関する情報を含む投入態様情報を記憶する記憶部から、その投入時に前記容器に収容されている前記流体についての投入態様情報を読み出し、その読み出した投入態様情報に基づき前記移動機構部及び前記反転機構部を制御することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、容器の移動と反転を伴う流体の投入態様において、収容される流体の種類等に応じて最適と思われる投入態様に関する投入態様情報が予め記憶部に記憶されている。そのため、投入される流体の種類などに関する情報を制御指令情報として入力するようにすれば、その制御指令情報と記憶部に記憶されている投入態様情報とに基づく制御部の制御により、最適な投入態様で容器を移動及び反転させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、流体を収容した容器を反転させて流体を投入する装置の周辺環境の汚染を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下、流体投入装置の第1実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、流体投入装置11は、フロアFに一部を埋設させた投入先の一例である有底筒状の受入器12と、その受入器12に投入する流体13を内部に収容した有底筒状の容器14を受入器12の手前位置まで搬送する搬送部15と、の間に配置されている。受入器12は、相対的に大容量の器であり、その上端部には上向きに開放した開放口16が形成されている。なお、受入器12の上端部において開放口16以外の部分は天板12aで覆われており、その天板12aには開放口16を閉塞可能な蓋体28がヒンジ部29を介して開閉可能に取り付けられている。
【0023】
一方、容器14は、相対的に小容量の器であり、その上端部は容器14の反転時に流体13を外部へ放出可能とさせる円形の開口部17に形成されている。また、搬送部15は、受入器12の上端部よりも高さが低い搬送台18を有し、その搬送台18の上面には複数の回転自在なローラ19が容器14の搬送方向(
図1では左右方向)に並ぶように設けられている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、流体投入装置11は、容器14を鉛直方向及び水平方向の双方と交差する一方向(
図1では右斜め上方)に移動させる移動機構部20と、容器14を水平方向に沿う軸線(
図1では紙面と直交する軸線)を中心にして反転させる反転機構部21とを備えている。そして、受入器12に対する流体13の投入時、流体13を収容した容器14は、
図1に実線で示す初期位置から二点鎖線で示す投入完了位置まで、移動機構部20により移動させられつつ、反転機構部21により反転させられる。
【0025】
移動機構部20は、長尺のケーシング22と、そのケーシング22に内装されたボールねじ機構及びサーボモーター等からなる駆動部(図示略)と、その駆動部の駆動に伴いケーシング22の長手方向に沿って移動する移動体23とを含む、所謂電動スライダにより構成されている。ケーシング22は、その長手方向の一端(
図1では左端)が搬送部15における容器14の搬送方向の下流端(
図1では搬送台18の右端付近)に位置する一方、その長手方向の他端(
図1では右端)が受入器12の開放口16の直上付近に位置するように、斜状に配置されている。したがって、ケーシング22の長手方向に沿って移動する移動体23は、
図1に白抜き矢印で示す斜め方向に沿って昇降移動する。
【0026】
反転機構部21は、移動機構部20の移動体23に対して軸方向がケーシング22の長手方向と直交する水平方向に沿うように支持された回転軸24と、その回転軸24を駆動回転させるサーボモーター等からなる駆動部(図示略)と、その駆動部の駆動に伴い回転軸24と一体回転するように回転軸24に基端を支持されたアーム状の回転体25を含んで構成されている。なお、アーム状の回転体25の先端には、容器14を吸着して保持可能な吸着パッド26が設けられ、その吸着パッド26に吸着力を生じさせるときに駆動される吸引ファン等の駆動部(図示略)と共に、容器14を投入動作(移動及び反転)させるときに保持する保持機構部27を構成している。
【0027】
次に、この流体投入装置11の電気的構成について説明する。
図2に示すように、流体投入装置11は、流体13を収容した容器14を移動及び反転させて容器14内から流体13を受入器12に自動投入させるために装置全体の稼動状態を制御するコントローラー30を備えている。このコントローラー30は、中央処理装置としての論理演算機能を有するCPU等からなる制御部31、所定の情報を読み出し可能に記憶するROM及び各種の情報を書き込み/読み出し可能に記憶するRAM等からなる記憶部32を備えたデジタルコンピュータとして構成されている。
【0028】
制御部31は、インターフェース(図示略)を介して各種の情報が入力された場合に、容器14を移動させる移動機構部20及び容器14を反転させる反転機構部21を制御するために必要とされる各種の論理演算を行うと共に、その論理演算において使用される各種情報の読み出し及び書き込みを行う。また、記憶部32には、流体投入装置11の稼動状態を制御するために用いられる制御プログラム、及び、容器14から受入器12に流体13を投入させる際における容器14の移動及び反転について最適と想定される速度及び動作タイミング等を含む投入態様情報が記憶されている。
【0029】
因みに、投入態様情報については、反転する容器14から受入器12に投入された場合における流体13の跳ね返りや飛び散り(液体の場合は飛沫、粉体の場合は粉塵など)を抑制するのに最適と想定される速度及び動作タイミング等を含む投入態様情報が複数種類の流体13ごとに予め設定されて記憶されている。例えば、流体13の種類としては液体や粉体及び粒体等があり、それらの流体(液体、粉体、粒体)13ごとに、その流体13の特性を考慮した異なる投入態様情報が記憶されている。さらに、それらの流体(液体、粉体、粒体)13が容器14内に当該容器14の反転前状態において収容されている量の多寡(例えば、容量の半分よりも多く収容されているか否か)により、同種類の流体(液体、粉体、粒体)13であっても異なる投入態様情報が記憶されている。例えば、容器14に収容されている流体13の量が多い場合には、その量が少ない場合よりも、少なくとも移動及び回転の開始当初は相対的に容器14の移動及び反転の速度が遅くなるように、流体(液体、粉体、粒体)13ごとの投入態様情報が設定される。
【0030】
また、流体13が液体である場合には、その液体が高粘度の液体(例えば、油)の場合と低粘度の液体(例えば、水)の場合に区別して異なる投入態様情報が記憶されている。すなわち、反転前の容器14に収容されている流体13が液体であって且つ低粘度の液体である場合には、投入時における容器14の反転速度が遅いと、傾いた容器14の開口部17から流出した液体が容器14の外側面を伝って液だれを生じる虞がある。そのため、流体13が低粘度の液体である場合には、高粘度の液体である場合に比して、容器14の反転による流体(この場合、低粘度の液体)13の投入開始から投入完了に至る迄の時間が短くなるように、その投入期間中の容器14の移動及び反転の速度を速く設定した投入態様情報が記憶部32に記憶されている。
【0031】
一方、流体13が粉体や粒体(以下、これらを総称して「粉粒体」ともいう。)である場合には、その粉粒体が反転した容器14内から下方に位置する受入器12に投入されたときに粉塵(粉煙)を生じ易いものであるか否かにより異なる投入態様情報が記憶されている。すなわち、粉粒体のうち、例えば塩などの粒体は、投入されたときに粉塵(粉煙)を生じることは殆どないが、例えば小麦粉などの粉体は、勢いよく投入されると粉塵(粉煙)を生じ易い。
【0032】
そのため、流体13が、投入時に粉塵(粉煙)を生じ易い粉粒体である場合には、粉塵(粉煙)を生じ難い粉粒体である場合に比して、容器14の反転による流体(この場合、小麦粉等の粉体)13の投入態様が穏やかなものとなるように、その投入期間中の容器14の移動及び反転の速度を遅めに設定した投入態様情報が記憶部32に記憶されている。なお、粉粒体のうち、例えば石灰等は、粉体というよりは粒体に近いが、微粉を含む粒体であり、受入器12に投入されたときには石灰の粒が崩れて粉煙を生じるので、小麦粉等の粉体の場合と同様の投入態様情報が記憶部32に記憶されている。
【0033】
また、
図2に示すように、コントローラー30の制御部31における入力側には、搬送部15の搬送台18上を搬送方向の上流側から下流側に搬送されてきた容器14が下流端(搬送台18の右端部)に到達したときに、その容器14の存在を検出して容器検出信号を出力する光学的センサ等からなる容器センサ33が接続されている。また同様に、コントローラー30の制御部31には、流体投入装置11を使用するユーザーが各種の操作情報を入力する際に使用するタッチパネル方式の表示パネル34が制御部31と双方向通信可能に接続されている。すなわち、表示パネル34には、流体13を収容した容器14を移動及び反転させて受入器12に投入するときの投入態様を決定するための必要情報(制御指令情報)の入力画面や、その入力された情報に基づく制御部31の制御内容が表示される。
【0034】
一方、コントローラー30の制御部31における出力側には、移動機構部20と反転機構部21と保持機構部27が各々の駆動ドライバー(図示略)を介して接続されている。そして、制御部31は、容器センサ33及び表示パネル34からの入力情報(すなわち、制御指令信号)に基づき移動機構部20と反転機構部21と保持機構部27を制御する機能部として、移動制御部35と反転制御部36と保持制御部37を有している。また、制御部31は、表示パネル34の表示内容を制御する表示制御部38を有すると共に、容器センサ33及び表示パネル34からの入力情報(制御指令信号)に基づき容器14に収容されている流体13の受入器12に対する投入態様を決定する投入態様決定部39を有している。
【0035】
そこで次に、上記のように構成された第1実施形態の流体投入装置11の作用について
図3〜
図8を参照しながら説明する。なお、前提として、投入される流体13は低粘度の液体(例えば水)であり、その流体13が容器14内には
図1に示すように八分目くらい収容されているものとする。
【0036】
さて、
図3に示すように、流体投入装置11が投入態様の初期状態にある場合、移動機構部20の移動体23はケーシング22の下端に近い初期位置で待機し、反転機構部21のアーム状の回転体25は先端の吸着パッド26を容器14の搬送方向の上流側に向けた水平な初期位置で待機する。この状態において、流体(水)13を収容した容器14が、搬送台18上を搬送方向の上流側から下流側に搬送されて搬送台18の右端部に到達すると、容器センサ33が容器14を検出して容器検出信号を出力する。
【0037】
すると、コントローラー30の制御部31は、保持制御部37が保持機構部27に駆動信号を出力し、保持機構部27の駆動部(吸引ファン)が駆動されると、吸着パッド26が容器14を吸着するため、容器14は吸着パッド26を介して回転体25に対して一体回転可能に保持される。そして、ユーザーが表示パネル34を介して入力した流体13に関する入力情報(この場合は、流体13が低粘度の液体(例えば水)であり、その流体13が容器14内に容量の半分以上収容されていることを示す情報)に基づき、投入態様決定部39がその流体13の投入態様を決定する。
【0038】
すなわち、記憶部32に記憶されている複数種類の流体13ごとの投入態様情報のうちから、今回の投入対象の流体13に合致する投入態様情報を読み出し、その読み出した投入態様情報に基づき移動機構部20及び反転機構部21に対する制御内容を決定する。具体的には、移動機構部20の移動体23の移動速度と移動の開始及び終了のタイミング、並びに、反転機構部21の回転軸24に支持された回転体25の回転速度と回転の開始及び終了のタイミングが、投入対象の流体(低粘度で容量半分以上の水)13の投入時に汚染要因(飛沫等)を抑制するのに最適と想定される速度及びタイミングに決定される。
【0039】
そして、移動制御部35と反転制御部36が、決定された制御内容に基づき移動機構部20と反転機構部21を制御する。すると、移動体23が、決定された移動速度での初期位置から斜め上方に向けた移動を決定された開始タイミングで開始する。そして、移動体23が
図3に示す初期位置から
図4に示す位置まで移動すると、決定された回転の開始タイミングになるため、次には、回転体25が回転軸24と共に、その時点から決定された回転速度での反転方向(
図3等において時計方向)への回転を開始する。なお、容器14は、この時点から反転し始めるが、まだ暫くの間は反転角度も小さいため、容器14の開口部17から流体13が外部に流出することはない。
【0040】
そして、
図4に示す状態から
図5に示す状態になると、反転する容器14の開口部17の周縁のうち最も下端に位置する下端縁が受入器12の開放口16の上方まで至り、その時点での反転角度から更に反転方向(時計方向)へ反転すると、その下端縁から下方の受入器12内への流体13の投入を開始する。この点で、
図5は反転する容器14からの流体13の投入開始時の状態を示しており、その時点での容器14の開口部17の下端縁は容器14内から流体13を流出させる流出位置Sとなる。以下、反転した容器14の開口部17の周縁のうち最も下端に位置する下端縁は、容器14内から流体13を流出させる流出位置Sを示すものとする。
【0041】
また、
図5に示す投入開始時において、反転した容器14の開口部17における下端縁(流出位置S)の鉛直方向の高さ位置は、受入器12への流体(水)13の投入時に発生する飛沫等の抑制に最適な高さ位置として決定された一定高さ位置Hに設定されている。すなわち、この一定高さ位置Hにおいて、反転した容器14の開口部17の下端縁(流出位置S)が受入器12の開放口16の上方で投入開始の直前状態となるように、制御部31の投入態様決定部39は、移動機構部20及び反転機構部21に対する制御内容(移動速度、回転速度など)を決定する。
【0042】
そして、
図5に示す状態から移動体23が更に移動すると共に回転体25が更に回転して
図6に示す状態になると、容器14は開口部17が横向きの状態となり、容器14内の流体13はその大半が受入器12に投入される。因みに、流体13が高粘度の液体(例えば油)である場合は、このような
図6に示す状態になっても、容器14内からの流体(この場合は油)の流出量は、流体13が低粘度の液体(例えば水)である場合ほどは進まない。
【0043】
この
図6に示す状態は、容器14が反転途中(反転開始と反転完了の中間)の状態であることを示しており、この時点においても、反転した容器14の開口部17における下端縁(流出位置S)の鉛直方向の高さ位置は、
図5に示した投入開始時の位置と同様に、飛沫等の抑制に最適な高さ位置として決定された一定高さ位置Hに位置している。つまり、移動体23の移動により容器14は
図5に示す位置よりも全体として水平方向に変位するが、回転体25が更に回転して容器14を反転させるので、流体13の流出位置Sは、鉛直方向において
図5に示す投入開始時の位置を維持することになり、投入期間中に最適な一定高さ位置Hよりも高くなる方向へ変位することはない。
【0044】
そして、
図6に示す状態から移動体23が更に移動すると共に回転体25が更に回転して
図7に示す状態になると、容器14は開口部17がほぼ下向きの状態となり、容器14内の流体13はその殆ど全てが受入器12に投入される。この
図7に示す状態は、容器14が反転を完了し流体13の投入を完了させた状態であることを示しており、この時点においても、反転した容器14の開口部17における下端縁(流出位置S)の鉛直方向の高さ位置は、
図5及び
図6における位置、すなわち、飛沫等の抑制に最適な高さ位置として決定された一定高さ位置Hに位置している。つまり、移動体23の移動により容器14は
図6に示す位置よりも全体として水平方向に変位するが、回転体25が更に回転して容器14を反転させるので、流体13の流出位置Sは、鉛直方向において
図5及び
図6に示す位置を維持することになり、投入期間中に最適な一定高さ位置Hよりも高くなる方向へ変位することはない。
【0045】
以上をまとめると、
図8に示すように、この第1実施形態では、容器14が
図3の初期位置から
図4の反転開始位置までは反転することなく斜め上方に移動させられ、その後、
図5に示す投入開始位置まで反転しつつ移動させられると、飛沫等の抑制に最適な一定高さ位置Hから下方の受入器12に向けて流体13の投入が開始される。なお、この場合の一定高さ位置Hについては、流体13が低粘度の液体(水)であると、上方から投入したときに受入器12内からの跳ね返りも想定されるため、可能な限り低い位置となるように制御部31の投入態様決定部39により決定される。
【0046】
また、
図5に示す投入開始位置での容器14の開口部17における下端縁の位置を流出位置S1とすると、その後更に移動体23が移動すると共に回転体25が回転して
図6に示す反転途中状態になったときの開口部17における下端縁の位置は、流出位置S1よりは水平方向に変位しているが鉛直方向には変位していない流出位置S2となる。そして、その状態から更に移動体23が移動すると共に回転体25が回転して
図7に示す反転完了状態になったときの容器14の開口部17における下端縁の位置は、再び流出位置S1に戻る。なお、このとき容器14の開口部17における下端縁の位置は、流出位置S2から流出位置S1まで戻るのではなく、容器14の寸法の都合で流出位置S2と流出位置S1との間となる位置など他の位置に戻ることもあり得る。
【0047】
上記説明した第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)容器14の反転により投入される流体13の種類や容器14内に収容されている流体13の量等に応じて、その流体13を受入器12に投入することで発生する汚染要因(飛沫や粉塵等)が抑制されるように、移動機構部20及び反転機構部21の制御内容を制御部31の投入態様決定部39において変更可能である。そのため、カム溝等がワンパターンの態様で容器14を移動及び反転させるのではなく、移動機構部20及び反転機構部21が自在に容器14を移動させつつ反転させて容器14内から流体13を投入する場合において、容器14に収容されている流体13の特性を考慮した最適な投入態様での投入が可能となる。したがって、容易に流体投入装置11の周辺環境の汚染を抑制できる。
【0048】
(2)流体13が液体であって、その液体の特性上、その液体を収容した容器14を投入時に所定の反転速度で反転させると、飛沫が周辺に勢い良く飛散してしまう虞がある低粘度の液体(例えば水)である場合には、その容器14の移動速度及び反転速度が遅くなるように設定することで、投入時の飛沫の発生を好適に抑制できる。
【0049】
(3)また、流体13が、容器14を投入時に遅い反転速度で反転させると、容器14の外側面に開口部17から液だれが生じる虞のある低粘度の液体(例えば水)である場合には、その容器14の移動速度及び反転速度が速くなるように設定することで、投入時の液だれの発生を好適に抑制できる。
【0050】
(4)制御部31による移動機構部20と反転機構部21の制御内容を変更して、投入時に移動させられつつ反転させられる容器14の移動速度と反転速度を調整するだけで、投入時の飛沫等の発生を抑制できるので、カム機構等のメカ的構成を用いずとも容易に周辺環境の汚染を抑制できる。
【0051】
(5)移動体23の移動速度及び回転体25の回転速度をそれぞれ制御することにより、容器14の移動速度、容器14の反転速度、容器14の反転開始タイミング及び反転完了タイミング等を自由自在に設定することが可能となるので、容器14の反転により投入される流体13に応じて、所望する様々な投入態様を実現できる。
【0052】
(6)投入期間中における容器14の開口部17からの流体13の流出位置Sが鉛直方向において高くなりすぎることがないので、高い位置からの流体13の投入によって発生する汚染要因(飛沫や粉塵等)を抑制でき、この点で流体投入装置11の周辺環境の汚染抑制に貢献できる。
【0053】
(7)容器14の移動と反転を伴う流体13の投入態様において、収容される流体13の種類等に応じて最適と想定される投入態様に関する投入態様情報が予め記憶部32に記憶されている。そのため、投入される流体13の種類などに関する情報を制御指令情報として表示パネル34から入力するようにすれば、その制御指令情報と記憶部32に記憶されている投入態様情報とに基づく制御部31の制御により、最適な投入態様で容器14を移動及び反転させることができる。
【0054】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の流体投入装置11について説明する。
なお、第2実施形態は、容器14から流体13を投入される受入器12の形態、投入対象とされる流体13の種類、及び制御部31による制御内容において、第1実施形態とは構成が相違しており、その他は同様の構成である。したがって、以下では第1実施形態と相違する点について主に説明し、同様の構成は同一符号を付すことにして重複説明は省略する。
【0055】
図9に示すように、第2実施形態における受入器12は、有底の筒状をなしているが、その上端部は天板12aにより閉塞され、その天板12aの一部に小さな開放口16aが形成されている。また、反転する容器14から受入器12に投入される流体13は石灰等の粉粒体、つまり、投入時に粉塵(粉煙)を発生する虞のある微粉を含む粉粒体である。すなわち、このような粉粒体の流体13が投入される受入器12の上端部が第1実施形態の受入器12のような大きな開放口16であると、その大きな開放口16を介して受入器12の内部から粉塵(粉煙)が飛散して周辺環境を汚染する虞がある。そのため、本実施形態の受入器12の開放口16aは第1実施形態の受入器12の開放口16よりも小さく形成されているのである。
【0056】
以下、反転する容器14から小さな開放口16aを有する受入器12内に上方から微粉を含む粉粒体の流体13を投入する際の作用について、図面を参照しながら説明する。
さて、微粉を含んだ粉粒体の流体13を収容した容器14は、吸着パッド26を介してアーム状の回転体25に保持された状態において
図1に示す初期位置から移動機構部20及び反転機構部21により移動及び反転させられて
図9に示す状態になると、反転する容器14の開口部17の下端縁が受入器12の開放口16aの上方まで至る。そして、その時点での反転角度から更に反転方向(時計方向)へ反転すると、その下端縁から下方の受入器12内への開放口16aを介した流体13の投入を開始する。すなわち、この時点以降における容器14の開口部17の周縁のうち最も下端に位置する下端縁は、容器14内から流体13を流出させる流出位置Sとなる。
【0057】
また、
図9に示す投入開始時において、反転した容器14の開口部17における下端縁(流出位置S)の水平方向の位置は、小さな開放口16aを介した受入器12内への流体13の投入に最適な水平方向の位置として決定された一定位置Pに設定されている。すなわち、この一定位置Pにおいて、反転した容器14の開口部17の下端縁(流出位置S)が受入器12の小さな開放口16aの上方で投入開始の直前状態となるように、制御部31の投入態様決定部39は、移動機構部20及び反転機構部21に対する制御内容(移動速度、回転速度など)を決定する。そして、
図9に示す状態から移動体23が更に移動すると共に回転体25が更に回転して
図10に示す状態になると、容器14は開口部17が横向きの状態となり、受入器12内への小さな開放口16aを介した流体13の投入を継続して行う。
【0058】
図10に示すように、容器14が反転の途中状態の時にも、反転した容器14の開口部17における下端縁(流出位置S)の水平方向の位置は、
図9に示した投入開始時の位置と同様に、受入器12の小さな開放口16aに対する流体13の投入に最適な水平方向の位置として決定された一定位置Pに位置している。つまり、移動体23の移動により容器14は
図9に示す位置よりも全体として鉛直上方に変位するが、回転体25が更に回転して容器14を反転させるので、流体13の流出位置Sは、鉛直下方に下がり、水平方向には
図9に示す投入開始時の位置を維持することになり、投入期間中に最適な一定位置Pから水平方向において位置ずれすることはない。
【0059】
そして、
図10に示す状態から移動体23が更に移動すると共に回転体25が更に回転して
図11に示す状態になると、容器14は開口部17がほぼ下向きの状態となり、容器14内の流体13はその殆ど全てが受入器12に投入される。この
図11に示す状態は、容器14が反転を完了し流体13の投入を完了させた状態であることを示しており、この時点においても、反転した容器14の開口部17における下端縁(流出位置S)の水平方向の位置は、
図9及び
図10における位置、すなわち、受入器12の小さな開放口16aに流体13を投入するのに最適な水平方向の位置として決定された一定位置Pに位置している。つまり、移動体23の移動により容器14は
図10に示す位置よりも全体として鉛直上方に変位するが、回転体25が更に回転して容器14を反転させるので、流体13の流出位置Sは、水平方向において
図9及び
図10に示す位置を維持することになり、投入期間中に最適な一定位置Pから水平方向において位置ずれすることはない。
【0060】
以上をまとめると、
図12に示すように、この第2実施形態では、容器14が初期位置から反転開始位置までは反転することなく斜め上方に移動させられ、その後、
図9に示す投入開始位置まで反転しつつ移動させられると、小さな開放口16aに対する流体13の投入に最適な一定位置Pから下方の受入器12に向けて流体13の投入が開始される。
【0061】
また、
図9に示す投入開始位置での容器14の開口部17における下端縁の位置を流出位置S1とすると、その後更に移動体23が移動すると共に回転体25が回転して
図10に示す反転途中状態になったときの開口部17における下端縁の位置は、流出位置S1よりは鉛直下方に変位しているが水平方向には変位していない流出位置S2となる。そして、その状態から更に移動体23が移動すると共に回転体25が回転して
図11に示す反転完了状態になったときの容器14の開口部17における下端縁の位置は、流出位置S2から再び流出位置S1の方向に少し戻った流出位置S3となる。
【0062】
このように、第2実施形態で反転する容器14の開口部17の下端縁で構成される流体13の流出位置S(S1,S2,S3)は、投入開始時の流出位置S1が鉛直方向で最も高く、その後の反転途中の流出位置S2が最も低く、最後の反転完了時の流出位置S3が中間の高さとなる。したがって、流体13が微粉を含む石灰等の粉粒体や小麦粉等の粉体である場合は、上方から投入したときに受入器12内から粉塵(粉煙)の飛散等も想定されるため、投入開始時の流出位置S1が可能な限り低い位置となるように、制御部31の投入態様決定部39により投入態様情報が決定される。
【0063】
上記説明した第2実施形態によれば、第1実施形態における上記(1)、(4)〜(7)に示す効果に加えて更に以下のような効果を得ることができる。
(8)投入期間中における容器14の開口部17からの流体13の流出位置S(S1,S2,S3)が水平方向においては大きく変動することがない。そのため、流体13が投入される受入器12において流体13を受け入れる開放口16aが小さい場合でも、その小さな開放口16aを介して受入器12に、反転させた容器14から流体13を周辺にこぼすことなく投入できる。
【0064】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・流体13ごとの投入態様情報は、予め記憶部32に記憶させるのではなく、投入作業を行う毎に、表示パネル34等の操作部からユーザーが、そのときに投入する流体13に適した容器14の移動速度や回転速度等に関する情報を制御指令情報として入力するようにしてもよい。また、投入態様情報には、流体13ごとに設定される少なくとも移動速度と反転速度に関する情報が含まれていればよい。
【0065】
・容器14を移動させる移動機構部20は、ボールねじ機構を利用した電動スライダに限らず、往復移動するベルト機構やチェーン機構を利用した電動スライダでもよく、あるいは、移動体23を支持したロッドが伸縮動作する電動シリンダや、移動体23を支持して往復移動するチェーン機構で代替してもよい。要するに、反転させる容器14を斜め方向に直線的に移動させる機能を有するものであればよい。
【0066】
・容器14は、移動機構部20及び反転機構部21によって斜め上方に移動しつつ反転させられる構成に限らず、斜め下方に移動しつつ反転させられる構成でもよい。
・反転機構部21は、先端に吸着パッド26が設けられたアーム状の回転体25を揺動するように回転させる構成に限らず、容器14を両側から挟んで保持するクランプ機構を反転方向に回転させる構成でもよい。
【0067】
・反転機構部21は、容器14を反転開始から反転完了まで連続状態で反転させる構成に限らず、一定角度反転させてから逆方向に少し反転戻しさせ、再び同様の反転及び少しの反転戻しを繰り返す投入態様(つまり、少しずつ流体13を注ぎ足す投入態様)でもよい。
【0068】
・容器14は上側が開口部17とされた有底筒状の容器14に限らず、反転時に内部から流体13を流出させて外部の受入器12に投入可能とさせる開口部17を有する容器14であれば、例えば徳利のように細い首の先に小さな開口部17を有する形状の容器14等でもよい。
【0069】
・制御部31は、反転する容器14の開口部17から流体13が流出し始める投入開始時までは流体13の種類が違っても一律の制御内容で、投入開始時から投入完了までの投入期間中だけを流体13に応じた制御内容に変更して移動機構部20や反転機構部21を制御してもよい。
【0070】
・移動機構部20及び反転機構部21による容器14の移動と反転は、移動開始が先で移動途中から反転開始する構成に限らず、反転開始が先で反転途中から移動開始してもよく、又は移動と反転を同時に開始させてもよい。要するに、投入開始時から投入完了時までの間の容器14が移動しつつ反転することによる流体13の投入態様が制御されればよい。