(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献2に記載されたモータ装置は、
図9に示すように、一対の円弧部aおよび一対の平坦部bを有する断面が小判形状のヨークcを備えている。円弧部aと平坦部bとの接続部(合計4箇所)には、マグネットdがそれぞれ近接配置されている。4つのマグネットdは、ヨークcの周方向に沿って90度間隔で配置され、これによりヨークcの周方向で隣り合うマグネットdの間には、それぞれ同じ間隔寸法eの隙間p1,p2,p3,p4が形成されている。
【0007】
4つのマグネットdの径方向内側には、アーマチュアfが回転自在に設けられ、アーマチュアfには、コイルgが巻装された10個のスロットhが設けられている。すなわち、特許文献2に記載されたモータ装置は、4極10スロット型のモータ装置となっている。これにより、モータ装置を扁平形状にしつつ、大きな出力が可能となり、車両への搭載性を向上させている。
【0008】
しかしながら、隙間p1および隙間p3に対応する部分(図中破線楕円)では、円弧部aとマグネットdとの間のギャップが大きく、隙間p2および隙間p4に対応する部分(図中実線楕円)では、平坦部bとマグネットdとの間のギャップが小さくなっている。したがって、円弧部aに対応した隙間p1および隙間p3の部分(ギャップ大)では、界磁が弱くなる(磁気抵抗が高くなる)。これに対し、平坦部bに対応した隙間p2および隙間p4の部分(ギャップ小)では、界磁が強くなる(磁気抵抗が低くなる)。よって、上述の特許文献2に記載されたモータ装置では、アーマチュアfの回転に伴う界磁の変化(界磁のムラ)が大きかった。
【0009】
この界磁の変化に起因して、アーマチュアfが1回転する間に10回の電流リプル(脈流)が発生する。つまり、上述の特許文献2に記載されたモータ装置では、10次成分の電流リプルが大きかった。なお、4極10スロット型のモータ装置では、通常、電流リプルの基本成分は20次であり、この20次成分の電流リプルの大きさと、10次成分の電流リプルの大きさとが近いと、10次成分の電流リプルがノイズとして作用してS/N比を悪化させてしまう。よって、上述の特許文献2に記載されたモータ装置では、制御装置により駆動電流の大きさを検出させて、アーマチュアfの回転状態を精密に制御するのが難しかった。
【0010】
本発明の目的は、10次成分の電流リプルを減少させてS/N比を良好にでき、ひいてはアーマチュアの回転状態を精密に制御できるようにしたモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様では、一対の円弧部および一対の平坦部を有し、断面が小判形状とされたヨークと、前記ヨークの内側に互いに間隔を開けて設けられ、前記円弧部と前記平坦部との接続部にそれぞれ近接配置された4つのマグネットと、コイルが巻装された10個のスロットを備え、前記4つのマグネットの内側に所定の隙間を介して回転自在に設けられたアーマチュアと、前記アーマチュアの回転中心に設けられたアーマチュア軸と、10個の整流子片を有し、前記アーマチュア軸を中心に対向配置された整流子片同士が同電圧となるように均圧線で接続されたコンミテータと、前記アーマチュア軸を中心に互いの離間角度が90度となるように設けられ、前記コンミテータにそれぞれ摺接される一対のブラシと、を備えたモータ装置であって、
前記マグネットは、前記円弧部に固定される肉の厚い肉厚部と、前記ヨークの周方向に沿う前記肉厚部の両側に設けられ、前記肉厚部よりも肉の薄い肉薄部とを有し、前記肉薄部と前記円弧部との間隔の方が、前記肉薄部と前記平坦部との間隔よりも広くなっており、かつ前記アーマチュアの回転方向に沿う前記円弧部の両側に配置された一対の前記マグネットの間隔の方が、前記アーマチュアの回転方向に沿う前記平坦部の両側に配置された一対の前記マグネットの間隔よりも狭くなっており、前記モータ装置は、一対の前記ブラシが10個の前記整流子片にそれぞれ摺接したときに、一対の前記ブラシのうちの一方が隣り合う前記整流子片を跨ぐ場合に、有効導体数が8となり、一対の前記ブラシの双方が隣り合う前記整流子片を跨がない場合に、有効導体数が10となるように動作し、さらに、前記モータ装置は、前記アーマチュアの回転状態を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記アーマチュアの回転により発生する
有効導体数の変化に伴う20次成分の電流リプルの値に基づいて、前記アーマチュアの回転状態を制御する。
【0013】
本発明の他の態様では、前記円弧部の両側に配置された一対の前記マグネットの前記アーマチュアを中心とした互いの離間角度が88度とされている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、断面が小判形状のヨークと4つのマグネットとを有し、アーマチュアの回転方向に沿う円弧部の両側に配置された一対のマグネットの間隔の方を、アーマチュアの回転方向に沿う平坦部の両側に配置された一対の前記マグネットの間隔よりも狭くしている。したがって、円弧部の部分で隣り合うマグネットを互いに近付けつつ、平坦部の部分で隣り合うマグネットを互いに離すことができ、ひいてはヨークの周方向に沿って隣り合うマグネットの間(合計4箇所)における界磁を均等化することができる。よって、界磁の変化に起因した10次成分の電流リプルを小さくしてS/N比を向上させることができ、ひいてはアーマチュアの回転状態を精密に制御できるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明のモータ装置を示す平面図を、
図2は
図1のA矢視図を、
図3は
図1のB−B線に沿う断面図を、
図4は
図1のC−C線に沿う断面図を、
図5は20次成分の電流リプルの発生を説明する図を、
図6は10次成分の電流リプルの発生を説明する図を、
図7(a),(b)は10次成分の電流リプルが減少されたことを説明する図を、
図8は円弧部にある一対のマグネットの離間角度の最適値を説明する図をそれぞれ示している。
【0019】
図1および
図2に示すモータ装置10は、自動車等の車両に搭載されるパワーウィンド装置(図示せず)の駆動源として用いられ、ウィンドガラスを昇降させるウィンドレギュレータ(図示せず)を駆動するものである。モータ装置10は、小型でありながら大きな出力が得られる減速機構付きのモータ装置であり、車両のドア内に形成された幅狭のスペース(図示せず)に設置される。モータ装置10は、モータ部20とギヤ部40とを備え、これらは互いに3つの締結ネジ11(
図2参照)により連結され、ユニット化されている。
【0020】
図1ないし
図4に示すように、モータ部20は、一対の第1,第2円弧部21a,21bと、一対の第1,第2平坦部22a,22bとを有し、断面が小判形状に形成されたヨーク23を備えている。具体的には、
図3に示すように、時計回り方向に、第1円弧部21a,第1平坦部22a,第2円弧部21b,第2平坦部22bをこの順番で接続することで、ヨーク23の断面は小判形状となっている。これにより、ヨーク23は、断面が円形形状のヨーク(図示せず)に比して扁平形状とされ、車両への搭載性が向上している。
【0021】
ヨーク23は、導電性を有する金属板を深絞り加工(プレス加工)等することで、有底筒状に形成されている。そして、
図1に示すように、ヨーク23の開口部分に近接する部位には、ブラシホルダ組付部24が形成され、当該ブラシホルダ組付部24とヨーク23の底面部分との間には、マグネット組付部25が形成されている。
【0022】
ヨーク23のマグネット組付部25の径方向内側には、
図3および
図4に示すように、断面が略円弧形状に形成された第1マグネット26a,第2マグネット26b,第3マグネット26c,第4マグネット26d(合計4つ)が、互いに間隔を開けて設けられている。第1〜第4マグネット26a〜26dは、ヨーク23における第1円弧部21aと第1平坦部22aとの間,第1平坦部22aと第2円弧部21bとの間,第2円弧部21bと第2平坦部22bとの間,第2平坦部22bと第1円弧部21aとの間の接続部CNに、それぞれ近接配置されている。
【0023】
ここで、第1〜第4マグネット26a〜26dが発生する磁束(図示せず)は、ヨーク23の4箇所に分散されるため、例えば、2極のモータ装置に比してヨーク23には磁束が集中しない。これにより、ヨーク23を薄肉化して、モータ装置10の小型軽量化を図ることができる。
【0024】
第1〜第4マグネット26a〜26dは、何れも同じ形状に形成されている。4つあるうちの第1マグネット26aおよび第2マグネット26bは、アーマチュア27の回転方向に沿う第1円弧部21aの両側に配置され、これらの第1,第2マグネット26a,26bの背面側は、接着剤等(図示せず)により、第1円弧部21aの径方向内側に強固に固定されている。また、4つあるうちの第3マグネット26cおよび第4マグネット26dは、アーマチュア27の回転方向に沿う第2円弧部21bの両側に配置され、これらの第3,第4マグネット26c,26dの背面側は、接着剤等により、第2円弧部21bの径方向内側に強固に固定されている。
【0025】
さらに、4つあるうちの第2マグネット26bおよび第3マグネット26cは、アーマチュア27の回転方向に沿う第1平坦部22aの両側に配置され、4つあるうちの第4マグネット26dおよび第1マグネット26aは、アーマチュア27の回転方向に沿う第2平坦部22bの両側に配置されている。
【0026】
アーマチュア27の回転方向に沿う第1マグネット26aと第2マグネット26bとの間には、間隔寸法G1の隙間P1が形成されている。なお、アーマチュア27を挟んで第1,第2マグネット26a,26bと対向する第3,第4マグネット26c,26d間の隙間P3についても、間隔寸法G1となっている。また、アーマチュア27の回転方向に沿う第2マグネット26bと第3マグネット26cとの間には、間隔寸法G2の隙間P2が形成されている。なお、アーマチュア27を挟んで第2,第3マグネット26b,26cと対向する第4,第1マグネット26d,26a間の隙間P4についても、間隔寸法G2となっている。
【0027】
そして、間隔寸法G1の方が間隔寸法G2よりも狭くなっている(G1<G2)。すなわち、モータ部20は、従前のように4つのマグネットをヨークの周方向に90度間隔で配置(
図9参照)せずに、第1マグネット26aと第2マグネット26bとを、ヨーク23の周方向に互いに近付けて配置するとともに、第3マグネット26cと第4マグネット26dとを、ヨーク23の周方向に互いに近付けて配置している。換言すれば、第2マグネット26bと第3マグネット26cとが、従前(
図9参照)に比してヨーク23の周方向に互いに離れて配置され、第4マグネット26dと第1マグネット26aとが、従前に比してヨーク23の周方向に互いに離れて配置される。
【0028】
より具体的には、アーマチュア27を中心とした第1マグネット26aと第2マグネット26bとの離間角度および第3マグネット26cと第4マグネット26dとの離間角度は、それぞれ「88度(deg)」となっている。したがって、アーマチュア27を中心とした第2マグネット26bと第3マグネット26cとの離間角度および第4マグネット26dと第1マグネット26aとの離間角度は、それぞれ「92度(deg)」とされる。
【0029】
これにより、隙間P1および隙間P3に対応する部分(図中一点鎖線楕円)において、第1,第2円弧部21a,21bと、第1〜第4マグネット26a〜26dとの間のギャップ(エアギャップ)が、従前よりも小さくなる。一方、隙間P2および隙間P4に対応する部分(図中二点鎖線楕円)において、第1,第2平坦部22a,22bと、第1〜第4マグネット26a〜26dとの間のギャップが、従前よりも大きくなる。
【0030】
したがって、隙間P1〜P4に対応する部分のギャップが、それぞれ略同じ大きさのギャップにバランスされて、隙間P1〜P4に対応する部分における界磁の強さが均等化される。よって、アーマチュア27の回転に伴う界磁の変化(界磁のムラ)を、従前に比して小さくすることができる。この界磁の変化が減少されたことについては、後で詳述する。
【0031】
図1,
図3および
図4に示すように、第1〜第4マグネット26a〜26dの径方向内側には、所定の隙間Sを介してアーマチュア27が回転自在に設けられている。アーマチュア27は、合計10個のスロット27aを備えており、これらのスロット27aには、コイル28が重ね巻き等の巻き方で巻装されている。つまり、本実施の形態に係るモータ装置10は、4極10スロット型のモータ装置であり、小型軽量化に優れた構造を採用している。
【0032】
アーマチュア27の回転中心には、アーマチュア軸29が貫通して固定されている。アーマチュア軸29の軸方向一側(
図1中左側)は、ヨーク23の底部に設けられた軸受部材(図示せず)により回転自在に支持されている。また、アーマチュア軸29の軸方向他側(
図1中右側)は、ギヤケース41の内部に設けられた軸受部材(図示せず)により回転自在に支持されている。
【0033】
図1に示すように、アーマチュア軸29の長手方向に沿う中央寄りの部分で、かつアーマチュア27に近接する部位には、コンミテータ(整流子)30が一体に設けられている。コンミテータ30は、
図4に示すように、合計10個の整流子片31(No.1〜No.10)をモールド成形することで、略円柱形状に形成されている。これらの整流子片31は、10個のスロット27a(
図3参照)に対応して設けられ、各整流子片31には、コイル28が電気的に接続されている。
【0034】
また、10個の整流子片31のうち、アーマチュア軸29を中心に対向配置された一対の整流子片31同士は、互いに同電位となるべき整流子片31であり、コイル28と同じ導線よりなる均圧線(図示せず)により互いに電気的に接続されている。具体的には、No.1とNo.6,No.2とNo.7,No.3とNo.8,No.4とNo.9,No.5とNo.10の整流子片31同士が、均圧線により互いに電気的に接続されている。これにより、4極10スロット型のモータ装置10を、2個のブラシ32で回転可能となっており、ひいてはモータ騒音を低減することができる。
【0035】
なお、2個のブラシ32からコンミテータ30を介してコイル28に駆動電流を供給することで、アーマチュア27には電磁力が発生する。これにより、アーマチュア軸29が正方向または逆方向に回転するようになっている。
【0036】
ヨーク23の開口側に形成されたブラシホルダ組付部24には、プラスチック等の樹脂材料よりなるブラシホルダ(図示せず)が装着されている。ここで、ブラシホルダ組付部24においても、一対の円弧部24aおよび一対の平坦部24bを備えており、
図4に示すように断面が小判形状に形成されている。これによっても、
図2に示すように、モータ装置10を扁平形状として、車両への搭載性が向上している。
【0037】
ブラシホルダには、
図4に示すように、一対のブラシ32が径方向に移動自在に設けられ、各ブラシ32は一対のスプリング33の弾性力によりそれぞれコンミテータ30に向けて押圧されている。これにより、各ブラシ32は確実にコンミテータ30上を摺接して、ひいてはコイル28に安定して駆動電流を供給できるようになっている。
【0038】
図4に示すように、各ブラシ32をアーマチュア27(アーマチュア軸29)の軸方向から見たときに、一方のブラシ32は第1マグネット26aに対応する箇所に配置され、他方のブラシ32は第2マグネット26bに対応する箇所に配置されている。そして、アーマチュア27を中心とした各ブラシ32の離間角度は、「90度(deg)」となっている。
【0039】
このように、本実施の形態においては、アーマチュア27を中心とした第1マグネット26aと第2マグネット26bとの離間角度および第3マグネット26cと第4マグネット26dとの離間角度を、それぞれ「88度」とする一方で、アーマチュア27を中心とした各ブラシ32の離間角度を、「90度」として、それぞれ「2度(deg)」のズレを設けている。
【0040】
図1に示すように、ギヤ部40は、プラスチック等の樹脂材料により所定形状に形成されたギヤケース41を備えている。ギヤケース41の内部には、ウォーム減速機よりなる減速機構SDが回転自在に収容されている。減速機構SDは、アーマチュア軸29の軸方向他側(図中右側)に一体に設けられたウォーム29a(詳細図示せず)と、当該ウォーム29aに噛み合わされる歯部(図示せず)を備えたウォームホイール42とから形成されている。
【0041】
また、ウォームホイール42の回転中心には、セレーション部42aを備えた出力部42bが一体に設けられている。この出力部42bは、ウィンドレギュレータの入力部(図示せず)に動力伝達可能に接続される。そして、減速機構SDは、アーマチュア軸29の回転を所定の速度にまで減速して高トルク化し、この高トルク化した回転力を、ギヤケース41の外部に設けられたウィンドレギュレータに出力するようになっている。
【0042】
さらに、ギヤケース41には、車両側の外部コネクタ(図示せず)に接続されるコネクタ接続部43が設けられている。コネクタ接続部43には、
図2に示すように、第1端子43aと第2端子43bとが埋設されている。そして、各端子43a,43bの一端部は、各ブラシ32(
図4参照)にそれぞれ電気的に接続され、各端子43a,43bの他端部は、外部コネクタを介して車載コントローラ(制御装置)CTに電気的に接続される。
【0043】
ここで、車載コントローラCTは、モータ装置10に所定の大きさの駆動電流を供給するとともに、モータ装置10のアーマチュア27の回転により周期的に発生する電流リプル(脈流)を検出し、この検出された電流リプルの値に基づいて、アーマチュア27(アーマチュア軸29)の回転状態を制御するようになっている。なお、車載コントローラCTにより極性(プラス/マイナス)を切り替えることで、アーマチュア27の回転方向が切り替えられる。
【0044】
次に、以上のように形成したモータ装置10の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0045】
図5に示すように、各ブラシ32を介してコイル28(
図3参照)に駆動電流を供給すると、各ブラシ32に対してコンミテータ30が時計方向に回転する。すると、駆動電流が有効に流れる有効導体数が、図中左側から8→10→8→10・・・のように変化する。これは、ブラシ32が隣り合う整流子片31を跨ぐ場合には、有効導体数が一時的に「8」となり、ブラシ32が隣り合う整流子片31を跨がない場合には、全ての整流子片31(10個)が有効となり有効導体数が「10」になることに起因する。
【0046】
具体的には、有効導体数が「8」の場合には、ブラシ32が跨いだ隣り合う整流子片31が同電位となり実質的に1つの整流子片となる(図中網掛け部)。したがって、
図5の対向した網掛け部の2箇所と、その他の白抜き部の6箇所とで、有効導体数の合計は「8」となる。これにより、各ブラシ32に対してコンミテータ30が回転すると、
図5の下段に示すように、周期的に電流リプルが発生することになる。
【0047】
ここで、有効導体数の変化に起因する電流リプルの発生周期は、90度間隔で配置した2つのブラシ32と、10個の整流子片31との関係から、「18[deg]周期」となる。したがって、電流リプルの発生回数は、アーマチュア27が1回転する毎に「20回」となり、これが「20次成分の電流リプル」として車載コントローラCTに送出される。これにより、車載コントローラCTは、アーマチュア27の回転状態(回転数や回転位置等)を検出することができ、かつ検出された電流リプルの値に基づいて、アーマチュア27の回転状態を制御することができる。
【0048】
モータ装置10では、上述した「20次成分の電流リプル」に加えて、
図6に示すような逆起電力(電位[V])の変化も発生する。これは、第1〜第4マグネット26a〜26dに対するアーマチュア27(
図3参照)の回転に伴って、アーマチュア27の電磁石となった部分(ティースの部分)が、隙間P1〜P4(
図3参照)に対応する部分を通過することで発生する。ここで、逆起電力の変化は「10次成分の電流リプル」を発生させ、この「10次成分の電流リプル」は、上述した「20次成分の電流リプル」と大きさが近く、ノイズとして作用することになる。したがって、これがS/N比の悪化を招いて、車載コントローラCTの誤検知を招くと言った問題を発生させる。換言すれば、「10次成分の電流リプル」は、車載コントローラCTの誤検知を無くすためにも、できる限り低くしたい(小さくしたい)要素となっている。
【0049】
本実施の形態では、上述したように、隙間P1〜P4に対応する部分のギャップが、それぞれ略同じ大きさのギャップにバランスされているので、隙間P1〜P4に対応する部分における界磁の強さが均等化されている。よって、
図6の実線に示すような逆起電力の変化となる。すなわち、本実施の形態(本発明)では界磁のムラが小さいので、
図6の破線に示す比較例(従来技術)に比して、逆起電力の変化のピーク値が、低い側で略一定の値で推移するようになっている。
【0050】
ここで、本実施の形態に係るモータ装置10は、10個のスロット27aを有し、かつ第1〜第4マグネット26a〜26dを有する(
図3参照)ので、その関係から、隙間P1〜P4における界磁の強さに起因する電流リプルの発生周期は、「36[deg]周期」となる。よって、これが「10次成分の電流リプル」として車載コントローラCTに送出される。
【0051】
図6の破線に示すように、比較例(従来技術)においては、逆起電力の変化のピーク値が、36[deg]周期毎に大きい値を示している。したがって、
図7(a)に示すように、10次成分の電流パワースペクトル[Arms
2]は、20次成分の電流パワースペクトル[Arms
2]に近い値となり、両者の間隔は狭かった。そのため、S/N比が悪化して、車載コントローラの制御精度の低下を招いていた。特に、モータ装置10を通常の状態で駆動する場合(障害物が無くウィンドガラスをスムーズに昇降させる場合)の駆動電流ポイントAPにおいて、両者の間隔はより狭く、S/N比の悪化が顕著であった。
【0052】
これに対し、本発明においては、
図6に示すように、逆起電力の変化のピーク値が比較例(従来技術)の略半分となり、
図7(b)に示すように、10次成分の電流パワースペクトル[Arms
2]を大幅に下げることができた。すなわち、10次成分の電流パワースペクトル[Arms
2]を、20次成分の電流パワースペクトル[Arms
2]から引き離して、両者の間隔を広くすることができた。特に、モータ装置10を通常の状態で駆動する場合の駆動電流ポイントAPにおいて、両者の間隔がより広くなり、S/N比が良好であることが判る。これにより、車載コントローラCTは、「20次成分の電流リプル」のみを精度良くピックアップすることが可能となり、制御精度が大幅に向上した。
【0053】
ここで、
図3に示すように、アーマチュア27を中心とした第1マグネット26aと第2マグネット26bとの離間角度および第3マグネット26cと第4マグネット26dとの離間角度の最適値について検証した。
【0054】
図9に示すように、4つのマグネットdを、ヨークcの周方向に沿って90度間隔で配置した場合(従来技術)には、そのときの10次成分の電流パワースペクトル[Arms
2]は比較的大きい値を示している。また、アーマチュア27を中心とした第1マグネット26aと第2マグネット26bとの離間角度および第3マグネット26cと第4マグネット26dとの離間角度を「86度」とした場合においても、
図9に示す従来技術と同様の10次成分の電流パワースペクトル[Arms
2]となった。
【0055】
したがって、10次成分の電流パワースペクトル[Arms
2]を、最も効率良く下げることが可能な離間角度は、本実施の形態のような「88度」であることが判る。すなわち、離間角度として最も望ましい角度は「88度」となる。
【0056】
以上詳述したように、本実施の形態に係るモータ装置10によれば、断面が小判形状のヨーク23と、第1〜第4マグネット26a〜26dとを有し、アーマチュア27の回転方向に沿う第1円弧部21a(第2円弧部21b)の両側に配置された第1マグネット26a(第3マグネット26c)および第2マグネット26b(第4マグネット26d)の間隔の方を、アーマチュア27の回転方向に沿う第1平坦部22a(第2平坦部22b)の両側に配置された第2マグネット26b(第4マグネット26d)および第3マグネット26c(第1マグネット26a)の間隔よりも狭くした。
【0057】
したがって、第1円弧部21a(第2円弧部21b)の部分で隣り合う第1マグネット26a(第3マグネット26c)および第2マグネット26b(第4マグネット26d)を互いに近付けつつ、第1平坦部22a(第2平坦部22b)の部分で隣り合う第2マグネット26b(第4マグネット26d)および第3マグネット26c(第1マグネット26a)を互いに離すことができ、ひいてはヨーク23の周方向に沿って隣り合う第1〜第4マグネット26a〜26dの間(合計4箇所)における界磁を均等化することができる。よって、界磁の変化に起因した10次成分の電流リプルを小さくしてS/N比を向上させることができ、ひいてはアーマチュア27の回転状態を精密に制御できるようになる。
【0058】
また、本実施の形態に係るモータ装置10によれば、アーマチュア27は、コイル28が巻装される10個のスロット27aを備えているので、モータ装置10を、小型軽量化に優れた4極10スロット型のモータ装置にできる。よって、車両への搭載性を向上させることが可能となる。
【0059】
さらに、本実施の形態に係るモータ装置10によれば、第1円弧部21a(第2円弧部21b)の両側に配置された第1マグネット26a(第3マグネット26c)および第2マグネット26b(第4マグネット26d)のアーマチュア27を中心とした互いの離間角度を「88度」とした。したがって、10次成分の電流パワースペクトル[Arms
2]を、最も効率良く下げることができる。よって、車載コントローラCTは、「20次成分の電流リプル」のみを精度良くピックアップできるようになり、制御精度を大幅に向上させることが可能となる。
【0060】
また、本実施の形態に係るモータ装置10によれば、アーマチュア27の回転状態を制御する車載コントローラCTが設けられ、車載コントローラCTは、アーマチュア27の回転により発生する「20次成分の電流リプル」の値に基づいて、アーマチュア27の回転状態を制御する。よって、アーマチュア27の回転状態を検出するためにホールセンサ等を別途設ける必要が無く、モータ装置10の小型軽量化を図ることができ、かつ制御ロジックを簡素化して車載コントローラCTへの負荷を軽減することができる。
【0061】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、モータ装置10を、パワーウィンド装置の駆動源に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、小型軽量化が望まれる他の車載装置、例えばパワースライドドア装置,シートスライド装置,ワイパ装置等の駆動源にも適用することができる。
【0062】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。