(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
商用電源からの交流電圧を調整する整流回路と、該整流回路で整流された電圧を直流電圧に調整してLED素子へ電力供給するとともに前記商用電源とLED素子との絶縁性を確保する電力供給絶縁回路と、該電力供給絶縁回路へ適正な制御信号を送る制御回路と、を備えたLED電源装置であって、
前記電力供給絶縁回路は、入力側スイッチと出力側スイッチと、を備え、該入力側スイッチの高電位側には第1入力側スイッチが配置されるとともに低電位側には第2入力側スイッチが配置され、前記出力側スイッチの高電位側には第1出力側スイッチが配置されるとともに低電位側には第2出力側スイッチが配置され、
さらに前記電力供給絶縁回路は、前記入力側スイッチの二次側であって出力側スイッチの一次側にはインダクタと、一方が高電位側に接続され他方が低電位側に接続される第1充電コンデンサを備え、前記出力側スイッチの二次側には一方が高電位側に接続され他方が低電位側に接続される第2充電コンデンサを備え、
前記第1入力側スイッチおよび第2入力側スイッチは同時にオンオフ動作し、
前記第1出力側スイッチおよび第2出力側スイッチは同時にオンオフ動作し、
前記制御回路は、前記入力側スイッチをオンさせるとともに前記出力側スイッチをオフさせることで前記第1充電コンデンサに電力を充電し、その後に前記入力側スイッチと出力側スイッチの両方をオフさせる休止期間を設け、その後に前記入力側スイッチをオフさせるとともに前記出力側スイッチをオンさせることで前記インダクタによる電磁エネルギーおよび前記第1充電コンデンサに充電された電力によって前記第2充電コンデンサを充電し、該第2充電コンデンサに充電された電力によって前記LED素子へ電力供給し、
前記制御回路には、前記LED素子へ供給された電流が絶縁アンプを介してフィードバック制御信号として送られることを特徴とするLED電源装置。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体技術の発達に伴い、スイッチング電源装置はさまざまな分野で利用されるようになった。特に一昔前までは安定した電源供給が困難であったLED素子への電源供給も、昨今の半導体技術を利用したスイッチング装置を使用することで実現できるようになった。そして、スイッチング電源装置の技術向上や、LED素子の発光効率向上等により、従来の光源からの置き換えが急速に進みつつある。ところで、本来は1個当たりの光出力が小さいというのがLED素子の欠点であったが、スイッチング電源装置を利用して安定的な電力供給をするとともに、多数のLED素子を直並列により組み合わせて光出力を増大させたことで、従来のHIDランプからLEDランプへの置き換えが行われるようになった。
【0003】
一般的にはLEDランプを多数配置したLEDモジュールは、良好な放熱性を得るために放熱器を兼ねるケースと接触させることで、熱的な問題を解決する構造をとることが多い。このような場合、放熱器(またはケース)を接地させていることが多く、短絡や地絡が起こった際の何らかの保護機能が必要となる。そこで、昨今では電源装置を保護するために高周波で動作する絶縁トランスを使用し、少ない部品数で、良好な直流電力が得られるフライバック型のスイッチング電源装置(LED電源装置)などを使用することでこのような問題を解決している(特許文献1)。また、特許文献2には、従来の電源装置(フライバックトランスを利用していない電源装置)において、高電圧のアーク放電から電源装置を守るため、アーク放電の有無に関わらず、周期的に、またはランダムにLEDモジュールへの直流電流を供給停止動作させる技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように商用交流電源を用いてLEDモジュールを点灯するフライバック方式のLED電源装置では、トランスの制作がネックになり大電力化することが困難である。実際にはフライバックトランスを利用した電源装置は、およそ100W前後が限界であると言われている。その主な理由としては、大電力化によるトランスの大型化に伴い、トランス自体の表面積が大型化に比例して増えないとともに、トランス内部で発生した熱の移動距離が長くなり、熱が蓄積しやすくなってしまうことが考えられる。
【0006】
そこで、電源装置の大電力化を実現するためには従来の電源装置(フライバックトランスを利用しない電源装置)を使用すれば良いが、前述のとおり、LEDモジュールは放熱を良くするため、接地している放熱器に接続されており、従来の電源装置では電気的な絶縁がされていないため、そのまま利用することが出来ない。そして特許文献2の電源回路では、LEDモジュールへの直流電流を周期的に供給停止するために、スイッチ機能を果たすスイッチング素子を備えているが、これでは絶縁型の電源回路構成とは言えず、大電力化した際の十分な回路保護を達成することができない。また、別の問題として、一般的にはLED電源装置は放熱器が接地されているため、LEDモジュールと大地間の静電容量(大地容量や浮遊容量)が非常に大きくなり、LED電源装置設置後においては、実際のLED電源装置のスペックよりもノイズレベルが大きくなるという問題が発生してしまう。
【0007】
ここで、電源回路(電源装置)におけるノイズについて説明する。一般的にノイズは、伝導の方法により、2つの種類に分けることができる。
図6に示すように、信号ライン間や電源ライン間に発生するノイズのことを、一般的にノーマルモードノイズと呼ぶ。このノーマルモードノイズは、ノイズ電流の方向がそれぞれ逆向きになる特徴がある。そして
図7に示すように、信号ラインや電源ラインとアース間に発生するノイズのことを一般的にコモンモードノイズと呼ぶ。このコモンモードノイズは、
図7に示すようにノイズ電流の方向が同じ向きになる特徴がある。そして、LED電源装置においては、放熱器を接地させていることから、
図7のようなコモンモードノイズが大きな問題となる。具体的には、前述のとおりコモンモードノイズはノイズ電流の向きが同じであり、且つ、浮遊容量等の影響による高周波電流であると言える。そのため、LED電源装置は、外部からのコモンモードノイズ、あるいはLED電源装置内部の高速スイッチング等によるコモンモードノイズが原因で、
図8に示すようなLED電源装置全体として疑似的なアンテナとしての作用を持ってしまい、結果的に放射ノイズの受信、発信を促してしまうのである。ここで、放射ノイズとは、マクスウェルの電磁方程式(へヴィサイトによるベクトル表記)による電場と磁場が交互に絡み合って空間を伝わっていく電波ノイズ、および他の原因による電波ノイズに類似するノイズのことを言う。なお、一般的なアンテナ技術としては
図9に示す平行板コンデンサを基本として、
図10に示すようにコンデンサを開き、電束電流を空間に開放したもの(2枚のキャパシター・プレートをロッドに変えたもの)がアンテナの基本形(ダイポール・アンテナ)である。この2つのロッド(棒)のうち1つを大地(アース)で代用する方式があり、放熱器が接地されているLED電源装置はこの方式によるアンテナ作用(
図8)により、放射ノイズの受信、発信を促してしまうのである。
【0008】
つまり、LED電源装置を従来型の電源回路にすることで、大電力化は実現出来る可能性はあるが、従来型の電源装置では放熱器の接地に対する十分な絶縁が実現出来ていないことが根本的な問題となる(もともとは絶縁を実現するためにフライバック方式のLED電源装置が主流となっている)。そして、仮に何らかの方法でLEDモジュールを放熱するための放熱器の接地に対する十分な絶縁が実現出来たとしても、放熱器を接地することで、浮遊容量や大地容量の影響で
図8に示すようにLED電源装置全体がアンテナ作用を持ってしまい放射ノイズが増加してしまうため、従来型の電源装置をそのままLED電源装置として利用することは極めて困難である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記従来技術の課題に鑑みて行われたものであって、その目的は、LEDモジュール等の点灯に利用可能なスイッチング電源装置の大電力化を実現するとともに、十分な絶縁が保たれ、且つ、放射ノイズの少ない安定的な電力供給が可能なスイッチング電源装置を実現することである。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかるLED電源装置は、
商用電源からの交流電圧を調整する整流回路と、該整流回路で整流された電圧を直流電圧に調整してLED素子へ電力供給するとともに前記商用電源とLED素子との絶縁性を確保する電力供給絶縁回路と、該電力供給絶縁回路へ適正な制御信号を送る制御回路と、を備えたLED電源装置であって、
前記電力供給絶縁回路は、入力側スイッチと出力側スイッチと、を備え、該入力側スイッチの高電位側には第1入力側スイッチが配置されるとともに低電位側には第2入力側スイッチが配置され、前記出力側スイッチの高電位側には第1出力側スイッチが配置されるとともに低電位側には第2出力側スイッチが配置され、
さらに前記電力供給絶縁回路は、前記入力側スイッチの二次側であって出力側スイッチの一次側にはインダクタと、一方が高電位側に接続され他方が低電位側に接続される第1充電コンデンサを備え、前記出力側スイッチの二次側には一方が高電位側に接続され他方が低電位側に接続される第2充電コンデンサを備え、
前記第1入力側スイッチおよび第2入力側スイッチは同時にオンオフ動作し、
前記第1出力側スイッチおよび第2出力側スイッチは同時にオンオフ動作し、
前記制御回路は、前記入力側スイッチをオンさせるとともに前記出力スイッチをオフさせることで前記第1充電コンデンサに電力を充電し、前記入力側スイッチをオフさせるとともに前記出力側スイッチをオンさせることで前記インダクタによる電磁エネルギーおよび前記第1充電コンデンサに充電された電力によって前記第2充電コンデンサを充電し、該第2充電コンデンサに充電された電力によって前記LED素子へ電力供給することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るLED電源装置は、
前記制御回路は、前記入力側スイッチと前記出力側スイッチの両方をオフさせる休止期間を設けることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るLED電源装置は、
前記入力側スイッチおよび出力側スイッチは半導体素子を含み、該半導体素子の順方向にダイオードが直列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電力供給絶縁回路が入力側スイッチと出力側スイッチを備え、入力側スイッチがオン時には出力側スイッチをオフさせるとともに第1充電コンデンサを充電し、入力側スイッチをオフさせるとともに出力側スイッチをオンさせることで、インダクタの電磁エネルギーにより第2充電コンデンサを充電させるとともに第1充電コンデンサで充電された電荷も放出して同時に第2充電コンデンサを充電させることで、LED電源装置の大電力が実現でき、且つ、十分な絶縁が保たれるLED電源装置が実現出来る。
さらに、制御回路によって入力側スイッチと出力側スイッチが同時に休止する休止期間を設ける制御をする事により、確実な絶縁性を保ちながらLED素子への電力供給が実現出来る。そして、入力側スイッチと出力側スイッチを同時にオンさせない制御をすることで、より確実な絶縁性を保ちながら電源装置全体のアンテナ作用による放射ノイズの低減を実現出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るLED電源装置の簡略化した概略原理図を示す。
【
図2】本発明に係るLED電源装置の第2の簡略化した概略原理図を示す。
【
図3】本発明の実施形態に係るLED電源装置の概略構成図を示す。
【
図4】本発明の実施形態に係るLED電源装置が備える各スイッチに利用する半導体素子例を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係るLED電源装置が備える制御回路からの制御信号による各スイッチのタイムチャートを示す。
【
図6】一般的なノーマルモードノイズの概略説明図を示す。
【
図7】一般的なコモンモードノイズの概略説明図を示す。
【
図8】コモンモードノイズによる電源回路のアンテナ作用についての概略説明図を示す。
【
図9】平行板コンデンサに交流電源をつないだ時の変位電流の概略図を示す。
【
図10】アンテナの基本形であるダイポール・アンテナの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のLED電源装置について図面を用いて説明するが、本発明の趣旨を超えない限り何ら以下の例に限定されるものではない。
【0016】
はじめに、本発明の実施形態に係るLED電源装置の特徴的な構成について、簡略化した原理図を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態に係るLED電源装置の簡略化した概略原理図である。同図に示すLED電源装置110は、直流電圧(および直流電流)を供給する電源112と、該電源112側と負荷側(LED素子122側)との絶縁を保ちながら適正な電圧を供給するための電力供給絶縁回路116と、を備えている。また、電力供給絶縁回路116は、入力側スイッチS10と、還流ダイオードD1と、第1コイルL1と、第1充電コンデンサC1と、出力側スイッチS20と、電流のピーク値をおさえるための第2コイルL2と、LED素子122へ安定した直流電力を供給するための第2充電コンデンサC2と、を備えている。
【0017】
本発明について特徴的なことは、電力供給絶縁回路116が入力側スイッチS10と、出力側スイッチS20と、を備えており、入力側スイッチS10と出力側スイッチS20が同時にオンしている期間がないように制御していることである。また、入力側スイッチS10は高電位側に配置されるハイ入力側スイッチS11と低電位側に配置されるロー入力側スイッチS12から構成されており、出力側スイッチS20は高電位側に配置されるハイ出力側スイッチS21と低電位側に配置されるロー出力側スイッチS22から構成されている。基本的にはハイ入力側スイッチS11とロー入力側スイッチS12は同時にオンオフ動作し、ハイ出力側スイッチS21とロー出力側スイッチS22は同時にオンオフ動作する。
【0018】
電源112がオンすると、該電源112から直流電圧が電力供給絶縁回路116が備える入力側スイッチS10に到達する。この時、図示を省略している制御回路からの制御信号によって、入力側スイッチS10(入力側高圧スイッチS11、入力側低圧S12)はオン動作されており、電源112からの直流電力が、電源112→ハイ入力側スイッチS11→第1コイルL1→第1充電コンデンサC1→ロー入力側スイッチS12→電源112へと流れることで第1充電コンデンサC1を充電する。この時の出力側スイッチS20(出力側高圧スイッチS21、出力側低圧スイッチS22)は制御回路からの制御信号によってオフしている。そのため、入力側の電源112と出力側の第2充電コンデンサC2およびLED素子122は絶縁されている状態である。次に入力側スイッチS10(ハイ入力側スイッチS11、ロー入力側S12)をオフさせると共に、出力側スイッチS20(ハイ出力側スイッチS21、ロー出力側S22)をオン動作させる。すると、第1コイルL1に蓄えられていた磁場エネルギーとしての電流は、第1コイルL1→ハイ出力側スイッチS21→第2コイルL2→第2充電コンデンサC2→ロー出力側スイッチS22→ダイオードD1→第1コイルL1と流れて第2充電コンデンサC2を充電する。また、第1充電コンデンサC1に蓄えられていた電荷は、第1充電コンデンサC1→ハイ出力側スイッチS21→第2コイルL2→第2充電コンデンサC2→ロー出力側スイッチS22→第1充電コンデンサC1と流れることで第2充電コンデンサC2を充電し、該第2充電コンデンサC2に充電された電力によってLED素子122を点灯させる。このように、第1コイルL1と第1充電コンデンサC1の両方からのエネルギーが第2充電コンデンサC2に蓄えられることで、大電力化された直流電力を供給可能なLED電源装置110が実現出来るのである。
【0019】
そして、前述のとおり、入力側スイッチS10がオンされている時は出力側スイッチS20はオフされており、逆に出力側スイッチS20がオンされている時には入力側スイッチS10がオフされている動作を繰り返すことから、電源112とLED素子122は常に絶縁された状態が保たれるのである。
【0020】
図2に、本発明の実施形態に係るLED電源装置の第2の簡略化した概略原理図を示す。
図2のLED電源装置210が
図1のLED電源装置110と異なる構成としては、
図2では、第1コイルL1を高電位側ではなく低電位側に配置しているところである。
図2に示すように、第1コイルL1を低電位側に配置しても
図1に示す電源回路と同様に、絶縁を保ちながら、且つ、大電力化された直流電力を供給可能なLED電源装置が実現出来る。電源212から直流電圧が電力供給絶縁回路216に到達するタイミングで、入力側スイッチS10(ハイ入力側スイッチS11、ロー入力側スイッチS12)はオン動作されており、電源212からの直流電力が、電源212→ハイ入力側スイッチS11→第1充電コンデンサC1→第1コイルL1→ロー入力側スイッチS12→電源212へと流れることで第1充電コンデンサC1を充電する。この時の出力側スイッチS20(ハイ出力側スイッチS21、ロー出力側スイッチS22)はオフされている。そして、入力側スイッチS10(ハイ入力側スイッチS11、ロー入力側スイッチS12)をオフさせると共に、出力側スイッチS20(ハイ出力側スイッチS21、ロー出力側スイッチS22)をオン動作させることで、第1コイルL1に蓄えられていた磁場エネルギーとしての電流は、第1コイルL1→ダイオードD1→ハイ出力側スイッチS21→第2コイルL2→第2充電コンデンサC2→ロー出力側スイッチS22→第1コイルL1と流れて第2充電コンデンサC2を充電する。また、第1充電コンデンサC1に蓄えられていた電荷は第1充電コンデンサC1→ハイ出力側スイッチS21→第2コイルL2→第2充電コンデンサC2→ロー出力側スイッチS22→第1充電コンデンサC1と流れることで第2充電コンデンサC2を充電し、LED素子222を点灯させる。
【0021】
以上のように、
図2のLED電源装置210も
図1のLED電源装置110と同様に、入力側の電源212と出力側のLED素子222との絶縁を保ちながら、且つ、大電力な直流電力を供給可能なLED電源装置が実現出来る。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係るLED電源装置について説明する。
図3に本発明の実施形態に係るLED電源装置の概略図を示す。ここで、本明細書におけるLED電源装置とは、LED素子へ安定した電力供給を行うためのスイッチング電源装置のことである。同図に示すLED電源装置10は、商用の交流電圧を供給する電源12と、交流電圧を整流するための整流平滑回路14と、該整流平滑回路14からの電力を調整してLED素子22へ直流電力を供給する電力供給絶縁回路16と、該電力供給絶縁回路16を制御する制御回路18と、LED素子22に流れる電流を検出し、検出信号として制御回路18に送る検出回路20と、を備えている。
【0023】
はじめに整流平滑回路14について説明する。
整流平滑回路14は、フィルター回路24とダイオード・ブリッジ回路DBと平滑用コンデンサCaと力率改善回路26と電解コンデンサCbと、を備えている。電源12により交流の商用電圧(AC100VやAC200Vなど)を印加すると、商用電圧はフィルター回路24を介してダイオード・ブリッジ回路DBに到達する。ダイオード・ブリッジ回路DBは、ダイオード素子などで構成されているが、同じ機能を果たせれば他の半導体素子で構成しても良い。ダイオード・ブリッジ回路DBによって全波整流された電圧(脈流電圧とも呼ぶ)は、平滑用コンデンサCaによって大まかな直流電圧に平滑される。そして、平滑された電圧は力率改善回路26へと到達する。力率改善回路26は、スイッチング素子をオンオフ動作さえることによりインダクタに電流を流した後、電解コンデンサCbを充電することで昇圧された電圧を生成する。このように、昇圧されるとともに力率が改善された電圧は、電力供給絶縁回路16へと到達する。
【0024】
次に電力供給絶縁回路16について説明する。電力供給絶縁回路16は基本的には
図1(および
図2)で説明した原理で動作するものである。電力供給絶縁回路16は、入力側スイッチS10と、還流ダイオードD1と、第1コイルL1と、第1充電コンデンサC1と出力側スイッチS20と、電流のピーク値をおさえるための第2コイルL2と、LED素子22へ安定した直流電力を供給するための第2コンデンサC2と、を備えている。そして、入力側スイッチS10は高電位側に配置されたハイ入力側スイッチS11と低電位側に配置されたロー入力側スイッチS12を備えており、出力側スイッチS20は高電位側に配置されたハイ出力側スイッチS21と低電位側に配置されたロー出力側スイッチS22を備えている。この4つのスイッチは、高速スイッチングが出来ればどのようなものでも構わないが、例えばMOSFETやIGBT等の半導体素子であることが好適である(
図4を参照)。また、例えば
図4に示すようにMOSFETの寄生ダイオードやIGBTのCE間の追加ダイオード対策のために、順方向に直列にダイオードを接続させることが好ましい。
【0025】
整流平滑回路14からの電圧が入力側スイッチS10に到達すると、制御回路18は入力側スイッチS10をオン動作させる(制御信号ds1)とともに出力側スイッチS20をオフさせる(制御信号ds2)。この時、整流平滑回路14からの電力が、ハイ入力側スイッチS11→コイルL1→第1充電コンデンサC1→ロー入力側スイッチS12→整流平滑回路14(電解コンデンサCb)へと流れることで第1充電コンデンサC1を充電する。この時の出力側スイッチS20(ハイ出力側スイッチS21およびロー出力側スイッチS22)は、前述のとおり制御回路18からの制御信号ds2によってオフしている状態である。そのため、入力側の電源12(および整流平滑回路14)と出力側のLED素子16(および第2充電コンデンサC2)は絶縁されている状態である。次に制御回路18によって、入力側スイッチS10(ハイ入力側スイッチS11およびロー入力側S12)をオフさせると共に、出力側スイッチS20(ハイ出力側スイッチS21およびロー出力側S22)をオン動作させる。すると、第1コイルL1に蓄えられていた磁場エネルギーとしての電流は、第1コイルL1→ハイ出力側スイッチS21→第2コイルL2→第2充電コンデンサC2→ロー出力側スイッチS22→ダイオードD1→第1コイルL1と流れて第2充電コンデンサC2を充電する。また、第1充電コンデンサC1に蓄えられていた電荷は第1充電コンデンサC1→ハイ出力側スイッチS21→第2コイルL2→第2充電コンデンサC2→ロー出力側スイッチS22→第1充電コンデンサC1と流れることで第2充電コンデンサC2を充電し、該第2充電コンデンサC2に充電された直流電力によってLED素子22を点灯させる。
【0026】
ここで、制御回路18の制御動作について説明する。
図5には、制御回路18からの制御信号を受けた各スイッチ(入力側スイッチS10および出力側スイッチS20)のオンオフについてのタイムチャートを示す。
図3に示す制御信号ds1は入力側スイッチS10(S11およびS12)に対する制御信号を表しており、制御信号ds2は出力側スイッチS20(S21およびS22)に対する制御信号を表している。
図5のa点においては、制御信号ds1を送ることで入力側スイッチS10(S11およびS12)をオンさせ、制御信号ds2によって出力側スイッチS20(S21およびS22)をオフさせている。つまり、この期間(a点)においては、第1充電コンデンサC1を充電していることとなる。そして、
図5のb点においては、制御回路18は制御信号ds1を送ることで入力側スイッチS10をオフさせ、制御信号ds2を送ることにより出力側スイッチS20をオンさせている。つまり、この期間(b点)には第2充電コンデンサC2を充電させており、この第2充電コンデンサC2に充電された電力によってLED素子22を点灯させているのである。ここで、
図5ではa点とb点との間に休止期間Tが設けられている。つまり、実際のLED電源装置10の制御動作では、入力側スイッチS10と出力側スイッチS20の両方のスイッチ(4つのスイッチ)が動作を停止する休止期間Tを設けることにより、確実な絶縁を実現しているのである。
【0027】
そして、LED素子22へ供給された電流は、検出回路20が備える電流検出抵抗R1によってフィードバック制御信号として検出され、絶縁アンプOPを介して制御回路18へ送られる。このフィードバック制御信号により、LED素子22が適正に点灯動作が出来るように、制御回路18でスイッチング動作信号を算出し、該算出された動作信号(ds1およびds2の信号)により、入力側スイッチS10および出力側スイッチS20を繰り返しオンオフ動作させているのである。
【0028】
このように、入力側スイッチS10がオン時には出力側スイッチS20はオフし、入力側スイッチS10と出力側スイッチS20の両方がオフする休止期間Tを設け、入力側スイッチS10をオフするとともに出力側スイッチS20をオンさせる動作を繰り返すことによって、LED電源装置10の十分な絶縁を確保しつつ、且つ、大電力化した電力供給を実現しているのである。
【0029】
放射ノイズの低減について
ここで、本発明のLED電源装置10における放射ノイズの低減について説明する。前述したとおり、LED電源装置10はLED素子22を接地された放熱器に接続することにより、良好な放熱を保っている。この放熱器の接地により、コモンモードノイズが発生し、結果的にLED電源装置全体としてアンテナ作用が発生し、放射ノイズが発生してしまうのである(
図7および
図8を参照)。このコモンモードノイズは、外部のノイズ源により発生している場合、またはLED電源装置内の各スイッチ(入力側スイッチS10および出力側スイッチS20)による高速スイッチング動作により発生している場合などが考えられる。どちらが原因であっても、放熱器の接地による浮遊容量や大地容量などの増加によって、LED電源装置10とグラウンド間で高周波ノイズ電流のループが出来てしまい、コモンモードノイズが発生しているものと考えられる(
図7を参照)。
【0030】
そこで本発明におけるLED電源装置10では、電源装置の絶縁性を確保するため
図4に示すタイムチャートのように、入力側スイッチS10および出力側スイッチS20を制御回路18によりオンオフ動作させることによって、入力側(電源12側)と出力側(LED素子22側)の回路を高周波的に断続することによりコモンモードノイズが除去され、結果的にアンテナ作用が断続されるのである。つまり、本発明におけるスイッチング動作は、大電力化を実現し、且つ、LED電源装置の絶縁性を確保するとともに、同時にアンテナ作用による放射ノイズの低減も実現しているのである。
【0031】
以上のように本発明のLED電源装置10によれば、入力側スイッチS10と出力側スイッチS20を備え、入力側スイッチS10がオン時には出力側スイッチS20をオフさせるとともに第1充電コンデンサを充電し、出力側スイッチS20をオンさせるとともに入力側スイッチS10をオフさせることで、第1コイルL1の電磁エネルギーにより第2充電コンデンサC2を充電させるとともに第1充電コンデンサC1で充電された電荷も放出して同時に第2充電コンデンサC2を充電させることで、LED電源装置10の大電力化が実現でき、且つ、十分な絶縁が保たれるLED電源装置が実現出来る。
さらに、入力側スイッチS10(S11およびS12)と出力側スイッチS20(S21およびS22)が同時に休止する休止期間Tを設けた制御を行う事により、確実な絶縁性を保ちながらの電力供給が実現出来る。そして、入力側スイッチS10と出力側スイッチS20を同時にオンさせない制御をすることで、LED電源装置全体のアンテナ効果による放射ノイズの低減を実現出来る。