(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
庫内熱交換器及び庫外熱交換器を含む冷媒回路を備え、前記庫内熱交換器が配設された庫室を冷却する冷却運転と前記庫室を加温する加温運転とを選択的に行える冷凍装置であって、
前記庫外熱交換器は、
第1の庫外熱交換器及び第2の庫外熱交換器と、前記第1の庫外熱交換器と前記第2の庫外熱交換器とを接続し前記第1の庫外熱交換器から前記第2の庫外熱交換器に向かう流れのみを許容する第1の配管経路と、前記第1の配管経路に配設された第1の減圧器と、を有し、
前記庫内熱交換器と前記第1の庫外熱交換器とを接続する第2の配管経路と、
前記第2の配管経路と前記第1の配管経路における前記第1の減圧器と前記第2の庫外熱交換器との間とを接続し、開閉弁と第2の減圧器とが配設されたバイパス経路と、
前記加温運転の際に、前記第1の庫外熱交換器に液冷媒が流入し沸騰蒸発して負圧運転が生じている場合又は負圧運転が生じる可能性がある場合に、前記開閉弁を開いて前記バイパス経路より前記第2の庫外熱交換器に冷媒を流入させる制御部と、
を備えたことを特徴とする冷凍装置。
庫内熱交換器及び庫外熱交換器を含む冷媒回路を備え、前記庫内熱交換器が配設された庫室を冷却する冷却運転と前記庫室を加温する加温運転とを選択的に行える冷凍装置であって、
前記庫内熱交換器は、第1の庫内熱交換器及び第2の庫内熱交換器を有し、
前記庫外熱交換器は、第1の庫外熱交換器及び第2の庫外熱交換器と、前記第1の庫外熱交換器と前記第2の庫外熱交換器とを接続し前記第1の庫外熱交換器から前記第2の庫外熱交換器に向かう流れのみを許容する第1の配管経路と、前記第1の配管経路に配設された第1の減圧器と、を有し、
一端が前記第1の庫外熱交換器に接続し、他端側が分岐部において分岐して前記第1の庫内熱交換器と前記第2の庫内熱交換器とに接続した第2の配管経路と、
前記第2の配管経路における前記第2の配管経路の前記分岐部と前記第1の庫外熱交換器との間と、前記第1の配管経路における前記第1の減圧器と前記第2の庫外熱交換器との間と、を接続し、開閉弁と第2の減圧器とが配設されたバイパス経路と、
前記加温運転の際に、前記第1の庫外熱交換器に液冷媒が流入し沸騰蒸発して負圧運転が生じている場合又は負圧運転が生じる可能性がある場合に、前記開閉弁を開いて前記バイパス経路より前記第2の庫外熱交換器に冷媒を流入させる制御部と、
を備えたことを特徴とする冷凍装置。
前記第2の配管経路における、前記第1の庫内熱交換器と前記分岐部との間を流れる冷媒の温度を測定する第1の温度センサ及び前記第2の庫内熱交換器と前記分岐部との間を流れる冷媒の温度を測定する第2の温度センサと、
前記第1の配管経路における前記第1の庫外熱交換器と前記第1の減圧器との間を流れる冷媒の温度を測定する第3の温度センサと、
を備え、
前記制御部は、
前記開閉弁の開閉動作を前記第1〜第3の温度センサそれぞれで測定した第1〜第3の温度に基づいて制御することを特徴とする請求項3記載の冷凍装置。
前記庫外熱交換器は、前記第1の庫外熱交換器と前記第2の庫外熱交換器とに跨って連結されたフィンを備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷凍装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る冷凍装置を、実施例1の冷凍装置51及び実施例2の冷凍装置52などにより、
図1〜
図31を参照して説明する。
【0014】
<実施例1>
冷凍装置51の構成は、その冷媒回路図である
図1及び制御系の図である
図2に示される。
すなわち、冷凍装置51の冷媒回路51Rは、圧縮機1,四方弁2,モータで駆動する送風機であるファンFM1を含む庫外熱交換器3,受液器4,モータで駆動する送風機であるファンFM2を含む庫内熱交換器5,アキュムレータ6,電磁弁11,及び電磁弁13を有して構成されている。
【0015】
冷媒回路における、圧縮機1,四方弁2,ファンFM1,ファンFM2,電磁弁11,及び電磁弁13の動作は、制御部31によって制御される。
制御部31には、使用者からの運転に関する指示が入力部32を介して伝達される。
【0016】
庫外熱交換器3及び庫内熱交換器5は、いわゆるフィンアンドチューブ式とされている。また、庫外熱交換器3は、第1庫外熱交換器3A及び第2庫外熱交換器3Bと、第1庫外熱交換器3Aと第2庫外熱交換器3Bとを冷媒回路上で直列に接続する回路(並列回路LP1)と、を有して構成されている。
【0017】
図3は、庫外熱交換器3を説明するための構成図である。
第1庫外熱交換器3Aは、ポート3Aaとポート3Abとを繋ぐ冷媒配管経路3LAを有している。また、第2庫外熱交換器3Bは、ポート3Baとポート3Bbとを繋ぐ冷媒配管経路3LBを有している。
【0018】
第1庫外熱交換器3Aは、並列の二つのパスとしてパスP1及びパスP2を有する。
第2庫外熱交換器3Bは、並列の三つのパスとしてパスP3〜パスP5を有する。
このように、第1庫外熱交換器3Aは、そのパス数Naが、2以上の整数、かつ第2庫外熱交換器のパス数Nb(Nb:2以上の整数)以下とされる。すなわち、2≦Na≦Nbである。
【0019】
庫外熱交換器3Aは、送風方向(
図3の紙面左右方向)に対し、パスP1とパスP2とが互いに重なることなく吸い込み面において実質的に独立した領域となるように配置されている
庫外熱交換器3Bも、同様に、パスP3〜P5が、送風方向に対して互いに概ね重なることなく吸い込み面において実質的に独立した領域となるように配置されている。
【0020】
第1庫外熱交換器3Aと第2庫外熱交換器3Bとは、ファンFM1の駆動により生じる風の流れ方向に並設されている。
詳しくは、第1庫外熱交換器3Aが、ファンFM1の駆動により生じる風の流れ方向に対し風上側となるように配置されている。
すなわち、第1庫外熱交換器3Aは上流側熱交換器であり、第2庫外熱交換器3Bは下流側熱交換器である。
【0021】
冷凍装置51の冷媒回路51Rについて詳述する。
圧縮機1と四方弁2のポート2aとは、配管経路L1で接続されている。
四方弁2のポート2bと庫外熱交換器3における第2庫外熱交換器3Bのポート3Baとは、配管経路L2で接続されている。
第2庫外熱交換器3Bのポート3Bbと第1庫外熱交換器3Aのポート3Abとは、並列回路LP1を介して接続されている。
【0022】
並列回路LP1は、並列接続された配管経路L3及び配管経路L4を有して構成されている。
配管経路L3には、膨張弁7と、膨張弁7に対して第1庫外熱交換器3A側に直列接続され第1庫外熱交換器3Aから第2庫外熱交換器3Bへ向かう流れのみを許容する逆止弁8と、が配設されている。
配管経路L4には、第2庫外熱交換器3Bから第1庫外熱交換器3Aへ向かう流れのみを許容する逆止弁9が配設されている。
【0023】
並列回路LP1には、第2庫外熱交換器のポート3Bbと、配管経路L3及び配管経路L4と、の間に分岐部D62が設けられている。
並列回路LP1には、第1庫外熱交換器3Aのポート3Abと、配管経路L3及び配管経路L4と、の間の区間を流れる冷媒の温度を測定する温度センサTS2が配設されている。
温度センサTS2は、ポート3Abに近い位置に配設されていることが好ましい。
【0024】
第1庫外熱交換器3Aのポート3Aaと受液器4とは、配管経路L5で接続されている。
配管経路L5には、途中に分岐部D1及び分岐部D2が設けられている。分岐部D1と分岐部D2との間には、第1庫外熱交換器3Aから受液器4へ向かう流れのみを許容する逆止弁10が配設されている。
【0025】
受液器4と庫内熱交換器5のポート5bとは、並列回路LP2を介して接続されている。並列回路LP2は、並列接続された配管経路L6及び配管経路L7を有して構成されている。
配管経路L6には、電磁弁11と、電磁弁11に対して庫内熱交換器5側に直列接続された膨張弁12と、が配設されている。
配管経路L7には、電磁弁13が配設されている。
【0026】
庫内熱交換器5のポート5aと四方弁2のポート2dとは、配管経路L8で接続されている。配管経路L8には、途中に分岐部D3及び分岐部D4が設けられている。分岐部D3と分岐部D4との間には、庫内熱交換器5から四方弁2へ向かう流れのみを許容する逆止弁14が配設されている。
【0027】
配管経路L8には、庫内熱交換器5と分岐部D3との間の区間を流れる冷媒の温度を測定する温度センサTS1が配設されている。
温度センサTS1は、庫内熱交換器5のポート5aに近い位置に配設されていることが好ましい。
【0028】
配管経路L8における分岐部D3と、配管経路L5における分岐部D1と、は、配管経路L9で接続されている。配管経路L9には、分岐部D3から分岐部D1へ向かう流れのみを許容する逆止弁15が配設されている。
【0029】
配管経路L9には、第1庫外熱交換器3Aのポート3Aaと分岐部D1との間に分岐部D61が設けられている。
分岐部D61と並列回路LP1の分岐部D62とは、配管経路L61で接続されている。以下、配管経路L61をバイパスL61とも称する。
バイパスL61には、開閉弁としての電磁弁61V,キャピラリーチューブ62,及び分岐部D61から分岐部D62に向かう流れのみを許容する逆止弁63が配設されている。
電磁弁61Vの開閉動作は、制御部31によって制御される(
図2参照)。
キャピラリーチューブ62は、以下、単にキャピラリ62とも称する。
キャピラリ62は、膨張弁7と同様に減圧器として作用する。また、キャピラリ62は、膨張弁7よりも通過させる冷媒の量が多い減圧器として用いられる。
【0030】
配管経路L8における分岐部D4と、配管経路L5における分岐部D2と、は、配管経路L10で接続されている。配管経路L10には、分岐部D4から分岐部D2へ向かう流れのみを許容する逆止弁16が配設されている。
四つの分岐部と四つの逆止弁、すなわち、分岐部D1〜D4、並びに、逆止弁10及び逆止弁14〜16は、流れ方向規制部RKを構成している。
流れ方向規制部RKは、四方弁2の切り替えに伴う流路選択に応じて、庫外熱交換器3のポート3Aaに出入りする冷媒の流れ方向を規制する。詳細は後述する。
【0031】
四方弁2のポート2cと圧縮機1とは、アキュムレータ6を介して配管経路L11で接続されている。
【0032】
この冷媒回路51Rに対し、制御部31は、四方弁2及び電磁弁11,13,61Vを、モードA,モードB,及びモードB2のいずれかの動作モードになるよう選択的に制御する。
図4は、制御部31が制御する動作モードを説明するための図である。
【0033】
モードAは、四方弁2において、ポート2aとポート2bとを接続すると共にポート2cとポート2dとを接続し、電磁弁13,61Vを閉とし、電磁弁11を開とする動作モードである。
モードBは、四方弁2において、ポート2aとポート2dとを接続すると共にポート2bとポート2cとを接続し、電磁弁13を開とし、電磁弁11,61Vを閉とする動作モードである。
モードB2は、モードBに対し、電磁弁61Vを開とする動作モードである。
【0034】
モードA,B,B2について、それぞれ
図5〜
図7を参照して説明する。
図5〜
図7は、
図1に示される冷媒回路51Rにおいて、冷媒が流れる配管経路を太線とし、流れの方向を矢印で示した図である。
【0035】
四方弁2により、モードAでは冷媒が流れる経路は、流路RAとされる(
図5の太線経路参照)。
また、モードB,B2では、冷媒が流れる経路は、流路RBとされる。(
図6の太線経路参照)。
すなわち、四方弁2は、冷媒回路において冷媒が流れる経路を、選択的に流路RAと流路RBのいずれか一方にする流路選択部として機能する。
【0036】
また、
図4に示されるように、制御部31は、開閉弁としての、電磁弁11,電磁弁13,及び電磁弁61Vの開閉動作を、四方弁2の動作と連動して実行する。
【0037】
モードB2は、モードBで閉状態とされた電磁弁61Vを開状態としたモードである。
これにより、モードB2で冷媒が流れる経路は、流路RBにバイパスL61の流路RB2が付加されたものとなる。
詳しくは、モードB2は、モードBにおける流路RBの一部を、流路RB2と並列にしたモードである。
モードA,B,B2の詳細動作については後述する。
【0038】
以上の構成を有する冷凍装置51は、種々の設備や装置等に適用することができる。例えば、冷凍車Cに搭載される。
図8は、冷凍車Cへの搭載例を示す側面図であり、一部を切断面としている。
【0039】
庫内熱交換器5は、冷凍車Cにおいて恒温維持すべき庫であるコンテナC1(以下、単に庫C1とも称する)の内部空間CV内に配置され、内部空間CVの空気と熱交換を行う。
コンテナC1の外部(例えば運転席の上方)には、庫外熱交換器3が配置され、外気と熱交換を行う。
他の部材はコンテナC1の外側に設置され、設置位置は限定されない。
例えば、圧縮機1やアキュムレータ6などは、収容体Sに納められて車体下部に設置される。制御部31及び入力部32は、運転席まわりに設置される。特に入力部32は、運転者が操作し易い場所に配設される。
圧縮機1の動力源は、例えば、冷凍車Cのバッテリ又はエンジン(いずれも図示せず)である。
【0040】
次に、冷凍装置51の運転動作について、冷凍車Cに搭載された状態を基に、既出の
図5〜
図7及び
図9を主に参照して説明する。
【0041】
冷凍装置51は、入力部32を介した使用者からの指示に基づいて、庫C1内の温度を一定とするために、複数の動作モード(モードA,B,B2)の運転を選択的に実行する。
【0042】
モードAは、冷却運転モードである。
モードBは、加温運転モードである。また、庫内熱交換器5のデフロスト運転もモードBとして実行する。
モードB2は、バイパス運転モードである。バイパス運転モードは、冷却運転モードでの運転(以下、単に冷却運転と称する)後、加温運転モードでの運転(以下、単に加温運転と称する)を実行した際に、状況に応じ制御部31の判断で実行するモードである。バイパス運転モードでの運転を、単にバイパス運転と称する。
【0043】
まず、冷却運転及び加温運転について説明する。ここで説明するのは、負圧運転とならない一般的な環境条件(外気が極端な高温でない条件)の下における基本的な運転内容である。
【0044】
図5は、冷却運転時の冷媒回路を説明するための図である。
図6は、加温運転時の冷媒回路を説明するための図である。
図7は、バイパス運転時の冷媒回路を説明するための図である。
図9は、各運転時の制御部31の制御を説明するための表である。
図5〜
図7において、冷媒回路51Rにおいて冷媒が流動する配管部位を太線で示し、冷媒の流動方向を太矢印で示している。
【0045】
(冷却運転:モードA)
図9に示されるように、モードAの冷却運転において、制御部31は、四方弁2をモードA、電磁弁11を開状態、電磁弁13及び電磁弁61Vを閉状態、ファンFM1及びファンFM2を運転状態、とする。
この冷却運転におけるファンFM1及びファンFM2による送風方向は、
図5にそれぞれ矢印DR1及び矢印DR2で示される。
【0046】
図5に示されるように、圧縮機1の吐出口から吐出した高圧のガス冷媒は、制御部31の制御によってモードAとされた四方弁2のポート2aからポート2bを通って配管経路L2に流入する。
配管経路L2に流入したガス冷媒は、庫外熱交換器3における第2庫外熱交換器3Bに対しポート3Baから供給され、パスP3〜P5のいずれかを経てポート3Bbから気液混合冷媒として流出する。
ポート3Bbから流出した気液混合冷媒は、電磁弁61Vが閉状態となっていることから、バイパスL61には流入せず、配管経路L4に流入する。
そして、逆止弁9を経て第1庫外熱交換器3Aに対しポート3Abから供給され、パスP1及びパスP2のいずれかを経てポート3Aaから流出する。
【0047】
庫外熱交換器3において、ファンFM1は、制御部31の制御により運転状態にあり、外気は、
図5の矢印DR1方向に流動している。
この状態で、庫外熱交換器3では、第2庫外熱交換器3Bと第1庫外熱交換器3Aとが一体的に凝縮器として機能する。
すなわち、ガス冷媒は外気に対し放熱して凝縮し、高圧の液冷媒としてポート3Aaから配管経路L5に流入する。
詳しくは、冷媒は、第2庫外熱交換器3Bの入口となるポート3Baにおいて、全て気相である。気相の冷媒は、第2庫外熱交換器3B内を流れるに伴い、外気と熱交換されて一部が凝縮(液化)し、ガス冷媒に対する液冷媒の比率が増加する。
これにより、第2庫外熱交換器3Bの出口となるポート3Bbにおいて、冷媒の大半が液冷媒の気液混合冷媒となる。ここで、液冷媒の比率は、運転条件により異なる。
【0048】
次に、ポート3Bbから流出した気液混合冷媒は、ポート3Abから第1庫外熱交換器3Aに流入する。第1庫外熱交換器3Aで、引き続き冷媒と外気との熱交換が行われ、出口となるポート3Aaにおいて、冷媒は、高圧でほぼ全てが液相となっている。
【0049】
冷媒の、庫外熱交換器3での気相から液相への相変化で、冷媒の体積は減少する。
庫外熱交換器3では、体積減少により液相の比率が高くなった冷媒が流れる第1庫外熱交換器3Aのパス数Naを、気相の比率が高い冷媒が流れる第2庫外熱交換器3Bのパス数Nbよりも少なくしている。これにより、第1庫外熱交換器3A内を流れる冷媒は、第2庫外熱交換器3Bを液冷媒として流れるときよりも、流速が大きくなり、冷媒の過冷却度も大きくなる。
【0050】
配管経路L5に流入した高圧の液冷媒は、逆止弁10を通り受液器4に入る。
受液器4では、運転環境に応じた余剰量の液冷媒が滞留する。
例えば、庫C1内の熱負荷が小さい場合は、循環する冷媒の量は少なくて済み、受液器4内に多くの液冷媒が溜まる。一方、庫C1内の熱負荷が大きい場合は、循環する冷媒の量が多く必要となるので、受液器4内に溜まる液冷媒の量は少なくなる。
受液器4は、液冷媒が溜まっている場合に、液冷媒を流出する構造になっている。
【0051】
受液器4から流出した液冷媒は、制御部31の制御によって電磁弁13が閉状態、電磁弁11が開状態になっていることから、配管経路L6に流入する。
すなわち、配管経路L6に流入した液冷媒は、電磁弁11を通り膨張弁12に入る。
膨張弁12において、液冷媒は膨張させられる。これにより、液冷媒は、圧力及び温度が低下して気化が促進され、気相と液相とが混合した気液混合冷媒となる。
膨張弁12から流出した気液混合冷媒は、庫内熱交換器5に流入する。
【0052】
庫内熱交換器5において、ファンFM2は、制御部31の制御により運転状態にあり、庫C1内の空気を、
図5の矢印DR2の方向に流動させている。
この状態で、気液混合冷媒は、庫C1内の空気と熱交換し、庫C1内の空気から熱を奪って完全に気化してガス冷媒となる。
すなわち、庫内熱交換器5は蒸発器として機能して庫C1内は冷却される。
【0053】
庫内熱交換器5から流出したガス冷媒は、配管経路L8に流入する。
配管経路L8において、ガス冷媒の分岐部D3での圧力は、配管経路L5における分岐部D1の圧力よりも低いことから、配管経路L9には流入せず、逆止弁14を通って四方弁2に達する。
四方弁2は、制御部31の制御によりモードAとなっているので、ガス冷媒は、ポート2dからポート2c、さらにはアキュムレータ6を経て圧縮機1の吸い込み口に戻る。
【0054】
(加温運転:モードB)
図6に示されるように、加温運転において、制御部31は、四方弁2をモードB、電磁弁11及び電磁弁61Vを閉状態、電磁弁13を開状態、ファンFM1及びファンFM2を運転状態、とする。
この加温運転におけるファンFM1及びファンFM2による送風方向は、冷却運転と同じ一定方向であり、
図6にそれぞれ矢印DR3及び矢印DR4で示される。
【0055】
図6に示されるように、圧縮機1の吐出口から吐出した高圧のガス冷媒は、制御部31の制御によってモードBとされた四方弁2のポート2aからポート2dを通って配管経路L8に流入する。次いで、ガス冷媒は、分岐部D4から配管経路L10に流入して受液器4に入る。
【0056】
受液器4において、ガス冷媒は、前の冷却運転で溜まっていた液冷媒を押し出し、ほどなく受液器4内に満たされる。
従って、受液器4からは、貯留分の液冷媒に次いでガス冷媒が流出する。受液器4から流出したガス冷媒は、制御部31の制御により電磁弁13が開状態、電磁弁11が閉状態になっていることから、配管経路L7に流入し、次いで庫内熱交換器5に流入する。
【0057】
庫内熱交換器5において、ファンFM2は、上述のように制御部31の制御により運転状態にあり、庫C1内の空気は
図6の矢印DR4方向に流動している。
この状態で、ガス冷媒は、庫C1内の空気と熱交換し、庫C1内の空気に熱を放出して凝縮し、概ね高圧の液冷媒となる。従って、庫C1内は加温される。
【0058】
庫内熱交換器5から流出する冷媒には、液冷媒と共に、庫C1内の熱負荷等の運転環境に応じた量のガス冷媒が含まれている。
この液冷媒とガス冷媒とを含む気液混合冷媒は、分岐部D3において、分岐部D4よりも低圧になっていることから配管経路L9に流入する。
そして、逆止弁15を通過後、分岐部D61において、電磁弁61Vが閉状態になっていることからバイパスL61には流入せず、全てが庫外熱交換器3の第1庫外熱交換器3Aに、ポート3Aaから流入する。
【0059】
庫外熱交換器3において、ファンFM1は、制御部31の制御により運転状態にあり、外気は、
図6の矢印DR3方向に流動している。従って、第1庫外熱交換器3Aは、第2庫外熱交換器3Bに対して外気の流れの上流側に位置する。
この状態で、第1庫外熱交換器3A内で、液冷媒は冷却され温度が下がる。
すなわち、第1庫外熱交換器3Aは、液冷媒に対し過冷却熱交換器として機能する。
第1庫外熱交換器3Aに、液冷媒と共に流入したガス冷媒も、この冷却によりほぼ全部が液冷媒となる。
【0060】
過冷却された液冷媒は、第1庫外熱交換器3Aのポート3Abから流出して配管経路L3に流入する。
配管経路L3において、液冷媒は、逆止弁8を通り膨張弁7に入る。
膨張弁7において、液冷媒は膨張させられる。これにより、液冷媒は、圧力及び温度が低下して気化が促進され、気相と液相とが混合した気液混合冷媒となる。
膨張弁7から流出した気液混合冷媒は、第2庫外熱交換器3Bにポート3Bbから流入する。
【0061】
第2庫外熱交換器3Bにおいて、ポート3Bbから流入した気液混合冷媒は、外気との熱交換で外気から熱を奪って蒸発し、ガス冷媒となってポート3Baから配管経路L2に流入する。
【0062】
すなわち、第2庫外熱交換器3Bは、蒸発器として機能する。
配管経路L2に流入したガス冷媒は、モードBとなっている四方弁2のポート2bからポート2cを通り、アキュムレータ6を経て圧縮機1の吸い込み口に戻る。
【0063】
冷凍装置51は、この加温運転において以下の効果が得られる。
【0064】
冷却運転と加温運転との切り替えを、四方弁を用いて行い、加温運転においては、圧縮機の動作で得られる熱エネルギのみならず、庫外熱交換器による外気から得る熱エネルギによっても、加温が行われる。従って、高い加温能力が得られる。
【0065】
冷却運転と加温運転との切り替えは、基本的に四方弁と電磁弁の切り替えのみで実行され、圧力センサ等の測定結果に基づく制御は必ずしも必要ではない。従って、運転動作の制御が簡単である。
【0066】
第2庫外熱交換器3Bにおいて、気液混合冷媒は、外気から熱を奪う熱交換をして低圧のガス冷媒となる。
庫外熱交換器3には、複数のフィン(図示せず)が、第1庫外熱交換器3Aと第2庫外熱交換器3Bとに跨るように設けられ、共有されている。そのため、第1庫外熱交換器3Aにおいて液冷媒から放出された熱の一部は、フィンを伝達して第2庫外熱交換器に移動し、第2庫外熱交換器における相変化における蒸発熱として利用される。
これにより、第2庫外熱交換器における液冷媒の蒸発が促進されるので、液冷媒が圧縮機に吸入される、いわゆる液バック現象の発生が防止できる。
【0067】
この加温運転において、受液器4には液冷媒が滞留しない。一方、庫C1内の熱負荷を含む運転環境に応じて、冷媒回路51Rに必要な冷媒循環量は変化する。
そこで、冷凍装置51では、第1庫外熱交換器3Aにおいて、液冷媒と共に運転環境に応じた量のガス冷媒が存在するようになっている。
換言するならば、第1庫外熱交換器3Aは、加温運転において、受液器4の替わりに、冷媒回路51R内に運転環境に最適な冷媒量が循環するよう余剰の液冷媒を調整確保するようになっている。
これにより、冷媒回路51Rの高圧側の圧力を、高い値で維持できる。
従って、庫内熱交換器5における冷媒凝縮温度が高くなり、加温能力が向上する。
【0068】
冷凍装置51は、流れ方向規制部RKを用いることなどにより、冷却運転と加温運転とにおいて、庫内熱交換器5を流れる冷媒の方向が同じになっている。また、冷却運転と加温運転とにおいて、ファンFM2の運転で生じる気流方向も同じとしている。
【0069】
(庫内熱交換器5のデフロスト運転:モードB)
冷却運転を長時間行うと、庫内熱交換器5のフィンに、庫C1内の空気に含まれる水分が凍結して霜として付着する場合がある。フィンへの着霜は、熱交換を阻害するので、庫内熱交換器5のデフロスト運転を実行して除霜する。
このデフロスト運転は、
図9に示されるように、加温運転に対し、ファンFM2を停止させることのみが異なる運転である。
【0070】
(バイパス運転:モードB2)
冷凍装置51は、例えば日本の酷暑期を除く一般的な環境条件の下では、上述の冷却運転後、加温運転を実行して、冷却されて低温となっている庫内温度を直ちに上昇させることができる。
一方、既述のように、外気が極端な高温の場合、冷却運転後、直ちに加温運転を実行した際に、冷却されて低温になっている庫内熱交換器5で凝縮した低温で低沸点の液冷媒が、外気で暖められて高温になっている第1庫外熱交換器3Aに流入した際に沸騰蒸発する可能性がある。
【0071】
この状態の流路RBにおける各部位での温度例が、
図10のグラフに、負圧運転時(黒丸で示される温度)として示されている。
温度センサTS1で測定される庫内熱交換器5のポート5aから流出した冷媒の温度t1は、0℃を大きく下回る低温である。一方、温度センサTS2で測定される第1庫外熱交換器3Aで暖められポート3Abから流出した冷媒の温度はt2で、0℃を大きく上回る高温となっている(t1≪t2)。
【0072】
沸騰蒸発によって気化した冷媒は、配管経路L3の膨張弁7を十分に通過できないため、冷媒回路51Rの流路RBを循環する冷媒の量が減少して負圧運転状態となり加温能力が低下する。
【0073】
冷凍装置51では、冷却運転から切り換えた加温運転で、負圧運転状態が生じた場合及び負圧運転状態を生じさせないための予防措置として、バイパス運転を実行するようになっている。
詳しくは、制御部31は、後述する手順例でバイパス運転を実行するか否かを判定し、バイパス運転と加温運転との切り換えを制御する。
【0074】
まず、負圧運転状態となり得る環境条件(以下、負圧運転化条件Aと称する)の下でバイパス運転を実行させたときの冷媒の流れ及び作用を説明する。
バイパス運転の基本動作は加温運転と同じである。従って、ここでは、主に加温運転と異なる冷媒の流れについて説明する。
【0075】
まず、
図4及び
図9に示されるように、バイパス運転は、加温運転において電磁弁61Vを閉状態から開状態にすることで実行される。
庫内の空気は、冷却運転で既に低温になっているため、庫内熱交換器5での熱交換で冷媒は実質的に液冷媒となって配管経路L8に流出する。
【0076】
電磁弁61Vが開状態とされたことにより、庫内熱交換器5から流出した低温高圧の液冷媒は、
図7に示されるように、配管経路L9における分岐部D61において分流する。
詳しくは、冷媒の流れは、加温運転の場合と同様に、ポート3Aaから第1庫外熱交換器3Aに流入する流れ(以下、本流と称する)と、バイパス運転のみで発生させる流れであるバイパスL61を流れる流れ(以下、バイパス流と称する)と、に分かれる。
【0077】
本流として第1庫外熱交換器3Aに流入した液冷媒は、第1庫外熱交換器3Aが外気で暖められて高温になっているため加温される。
負圧運転化条件Aの下では、外気に暖められた第1庫外熱交換器3Aの温度が、流入した液冷媒の沸点よりも高くなっている。
従って、液冷媒は、第1庫外熱交換器3Aで加温されると沸騰蒸発してガス冷媒となり、膨張弁7に流入する。
【0078】
ここで、ガス冷媒は膨張弁7を十分に通過できないので、膨張弁7以降の配管経路には、本流からの冷媒は実質的に流れない、或いは、僅かな量しか流れない。
【0079】
一方、バイパス流としてバイパスL61に流入した液冷媒は、キャピラリ62で減圧され、逆止弁63を通り、分岐部D62を経て第2庫外熱交換器3Bにポート3Bbから流入する。
第2庫外熱交換器3Bに流入したバイパス流由来の液冷媒は、外気との熱交換により蒸発する。この熱交換は、液冷媒と第2庫外熱交換器3B自体との間でも行われるので、第2庫外熱交換器3Bは冷却される。
この状態の流路RBにおける各部位の温度例が、
図10のグラフに、バイパス運転開始時(白ヌキ四角で示される温度)として示されている。
温度センサTS1で測定される庫内熱交換器5のポート5aから流出した冷媒の温度はt1′である。一方、温度センサTS2で測定される第1庫外熱交換器3Aのポート3Abから流出した冷媒の温度はt2′であり、依然ポート3Abから流出した冷媒の温度の方が高温となっている(t1′<t2′)。
【0080】
第2庫外熱交換器3Bが冷却されるに伴い、フィンを共有している第1庫外熱交換器3Aの温度も低下する。
この第1庫外熱交換器3Aの温度低下によって、第1庫外熱交換器3Aに流入した本流の沸騰蒸発が早期に停止する。
そのため、第1庫外熱交換器3Aから流出する液冷媒の量、すなわち膨張弁7を通過する冷媒の量が急増する。
従って、冷媒回路51Rを循環する冷媒量が極端に減少することはなく、冷媒量が減少しても急速に回復する。
【0081】
このように、冷凍装置51は、電磁弁61V,キャピラリ62,及び逆止弁63を含むバイパスL61からなるバイパス経路BP(
図1参照)を有することで、バイパス運転の実行が可能となっている。
バイパス運転では、電磁弁61Vを開状態にしてバイパスL61を通るパイパス流を発生させることで、第2庫外熱交換器3Bに冷媒を供給できる。
従って、冷媒回路51R内を循環する冷媒の量が極端に減少することなく一定量以上確保されて負圧運転が生じにくい。また、負圧運転が生じても、早期に通常の加温運転に復帰する。
パイパス運転が終了した時の流路RBにおける各部位の温度例が、
図10のグラフに、バイパス運転終了時(黒菱形で示される温度)として示されている。
温度センサTS1で測定される庫内熱交換器5のポート5aから流出した冷媒の温度はt1″である。一方、温度センサTS2で測定される第1庫外熱交換器3Aのポート3Abから流出した冷媒の温度の温度はt2″であってt1″より低くなっている。このように、庫内熱交換器5のポート5aから流出した冷媒の温度と庫内熱交換器5のポート5aから流出した冷媒の温度の高低は、バイパス運転開始時から逆転している。(t1″>t2″)
この例では、逆転した温度の差(t1″−t2″)が、所定の値α(deg)以上あったことから、制御部31により、負圧運転が解消したなどとしてバイパス運転が終了された。所定の値α及び判定手順については、次に説明する。
【0082】
冷却運転後の加温運転において、上述のバイパス運転を実施するか否か、の判定方法について説明する。判定は、制御部31が、温度センサTS1,TS2から得られた温度t1,t2に基づいて行う。
【0083】
温度センサTS1は、庫内熱交換器5から流出した冷媒の温度t1(
図2参照)を測定し、測定結果を制御部31に向け送出する。
温度センサTS2は、第1庫外熱交換器3Aから流出した冷媒の温度t2(
図2参照)を測定し、測定結果を制御部31に向け送出する。
【0084】
制御部31は、
図11(フロー図)に示される手順例で、バイパス運転の動作を制御する。
【0085】
まず、制御部31は、外部からの指示により冷却運転を実行する(S1)。
次に、制御部31は、外部からの指示により冷却運転から加温運転に切り換える(S2)。これにより、加温運転が開始する。
【0086】
制御部31は、温度センサTS1からの検出温度である温度t1から温度センサTS2の検出温度である温度t2を減じた値(t1−t2)が、所定の値α未満であるか否かを判定する(S3)。
この判定は、短い時間間隔で行うことが好ましく、リアルタイムで連続的に行うことがより好ましい。
値αは、冷凍装置51の仕様や、冷凍車Cの運用環境等に応じて適宜設定する値であり、例えば5(deg)である。
値αは、負の値と正の値とのいずれにも設定され得る。通常の仕様では、下限は−3(deg)程度となる。
従って、値αを負数に設定した場合に(S3)が成立するためには、少なくともt1−t2<0である。
同様に、値αを0(ゼロ)に設定した場合は、少なくともt1−t2≦0である。
また、値αが正数の場合は、t1−t2<0,t1−t2>0のいずれもあり得る。
【0087】
(S3)の判定がNoの場合、制御部31は、外部からの運転停止指示の有無を判定し(S8)、Noの場合、(S3)の判定を継続する。
(S8)の判定がYesの場合、加温運転を停止し(S9)、動作を終了する。
【0088】
(S3)の判定がYesの場合、判定がYesになってからの経過時間tmが、所定の時間β秒以上であるか否かを判定する(S4)。
所定の時間βは、冷凍装置51の動作特性等に応じて適宜設定する。例えば20秒である。
【0089】
(S4)の判定がNoの場合、(S8)へ移行し、停止指示がない場合は(S3)を実行する。
経過時間tmは(S3)の判定がYesである限り累積する。
(S4)の判定がYesの場合、制御部31は、バイパス運転を実行することを決定し電磁弁61Vを開く。
【0090】
この判定に該当する流路RBでの温度分布が、
図10のバイパス運転開始時及び負圧運転時として示されている。
詳しくは、バイパス運転開始時では、温度t1から温度t2を減じた値αsが値α未満となることで、また、負圧運転時では、温度t1から温度t2を減じた値αsが明らかに値α未満となっているので、制御部31は、バイパス運転の実行を決定する。
【0091】
バイパス運転実行中、制御部31は、温度センサTS1からの検出温度である温度t1から温度センサTS2の検出温度である温度t2を減じた値αsが、所定の値α以上になったかを判定する(S6)。
(S6)の判定がNoの場合、制御部31は(S6)判定を継続する。
(S6)の判定がYesの場合、制御部31は、負圧運転が解消した又は負圧運転になる可能性が十分小さくなったとして、バイパス運転を停止し、通常の加温運転に戻す。すなわち、電磁弁61Vを閉じる(S7)。
【0092】
制御部31は、(S7)を実行したら(S8)へ移行する。
【0093】
このように、制御部31は、冷却運転から加温運転に移行したら、庫内熱交換器5から流出した冷媒の温度t1と、第1庫外熱交換器3Aから流出した冷媒の温度t2と、を比較する。そして、温度t1から温度t2を減じた値αsが所定の値α未満であり、かつその状態が所定の経過時間tm以上継続したら、負圧運転が生じている、又は生じる可能性が十分ある、と判断して、バイパス運転を実行する。
バイパス運転実行中は、温度t1,t2を監視し、両温度に基づく値αsが所定の値α以上となったら、バイパス運転から通常の加温運転に移行する。
【0094】
バイパス運転は、冷却運転から加温運転への切り換え時に実行される他、加温運転中でも、温度t1,t2に応じて適宜実行される。
従って、外部環境が時間とともに変化して、あらたに負圧運転化条件Aになったとしても、負圧運転の発生を防止できる。
これにより、冷凍装置51及びそれを備えた冷凍車Cは、冷えた庫内を短時間で良好に加温できる。
【0095】
<実施例2>
実施例2として冷凍装置52を説明する。冷凍装置52は、実施例1の冷凍装置51に対し、庫内熱交換器を複数(この例で二つ)備えた例である。
冷凍装置52の構成は、その冷媒回路52Rの図である
図12及び制御系の図である
図13に示される。
【0096】
まず、冷凍装置52の概略構成を説明する。
冷凍装置52はヒートポンプ式の冷媒回路52Rを有する。
冷媒回路52Rは、圧縮機A1,四方弁A2,ファンAF1を含む庫外熱交換器A3,受液器A4,ファンAF2Aを含む庫内熱交換器A5A,ファンAF2Bを含む庫内熱交換器A5B,アキュムレータA6,複数の電磁弁を含む電磁弁群A11G(
図13参照:詳細は後述),膨張弁A21,A22A,A22B,及び複数の逆止弁を含む逆止弁群A31G(図示せず:詳細は後述)を有して構成されている。
ファンAF1,AF2A,AF2Bは、モータで駆動する送風機であり、これらを纏めてファン群AFG(
図13参照)とも称する。
【0097】
電磁弁群A11Gは、電磁弁A11,A12,A13,A14A,A14B,A15A,A15B,A16A,A16Bを纏めた総称である。
逆止弁群A31Gは、逆止弁A31a,A31b,A32A,A32B,A33,A34を纏めた総称である。
【0098】
図13に示されるように、冷凍装置52は、制御部A41を備える。制御部A41には、使用者からの運転に関する指示が入力部A42を介して伝達される。制御部A41は、伝達された指示などに基づき、冷媒回路52Rにおける、圧縮機A1,四方弁A2,ファン群AFG,及び電磁弁群A11Gの動作を制御する。
【0099】
庫外熱交換器A3、並びに、庫内熱交換器A5A及び庫内熱交換器A5Bは、いわゆるフィンアンドチューブ式の構造を有する。
庫外熱交換器A3は、第1庫外熱交換器A3A及び第2庫外熱交換器A3Bを有する。庫外熱交換器A3の詳細は後述する。
【0100】
次に、冷媒回路52Rについて詳述する。
図12を理解容易とするため、冷媒回路52Rを、圧縮機A1,四方弁A2,及びアキュムレータA6を含む源流ブロックM1と、庫外熱交換器A3と並列回路ALP1とを含む庫外熱交換ブロックM2と、受液器A4と庫内熱交換器A5A及び庫内熱交換器A5Bとを含む庫内熱交換ブロックM3と、の三つのブロックに区分けして説明する。
【0101】
図12の右下において、圧縮機A1と四方弁A2のポートA2aとは、配管経路AL1で接続されている。
四方弁A2のポートA2bと庫外熱交換器A3における第2庫外熱交換器A3BのポートA3Baとは、配管経路AL2で接続されている。
第2庫外熱交換器A3BのポートA3Bbと第1庫外熱交換器A3AのポートA3Abとは、上述のように並列回路ALP1を介して接続されている。
【0102】
並列回路ALP1は、その一端側とポートA3Bbとが配管経路AL3で接続され、他端側とポートA3Abとが配管経路AL5で接続されている。配管経路AL5には、電磁弁A11が配設されている。
並列回路ALP1は、配管経路AL4a及び配管経路AL4bを並列に有する。
配管経路AL4aには、膨張弁A21と、膨張弁A21に対して第1庫外熱交換器A3A側に直列接続され第1庫外熱交換器A3Aから第2庫外熱交換器A3Bへ向かう流れのみを許容する逆止弁A31aと、が配設されている。
配管経路AL4bには、第2庫外熱交換器A3Bから第1庫外熱交換器A3Aへ向かう流れのみを許容する逆止弁A31bが配設されている。
【0103】
配管経路AL5における電磁弁A11とポートA3Abとの間に分岐部AD1が設けられている。
分岐部AD1には、配管経路AL6の一端側が接続されている。配管経路AL6の他端側は、庫内熱交換ブロックM3のブロックポートM3aを通して分岐部AD2に接続されている。配管経路AL6には、電磁弁A12が配設されている。
【0104】
分岐部AD2と庫内熱交換器A5AのポートA5Aaとは、配管経路AL7Aで接続されている。配管経路AL7Aには、分岐部AD2側から電磁弁A14A,膨張弁A22Aが直列に配設されている。
分岐部AD2と庫内熱交換器A5BのポートA5Baとは、配管経路L7Bで接続されている。配管経路AL7Bには、分岐部AD2側から電磁弁A14B,膨張弁A22Bが直列に配設されている。
【0105】
庫内熱交換器A5AのポートA5Abには、配管経路AL8Aの一端側が接続されている。配管経路AL8Aの他端側には、分岐部AD3が設けられている。配管経路AL8Aには、電磁弁A15Aが配設されている。
庫内熱交換器A5BのポートA5Bbには、配管経路AL8Bの一端側が接続されている。配管経路AL8Bの他方側は、分岐部AD3に接続されている。配管経路AL8Bには、電磁弁A15Bが配設されている。
【0106】
分岐部AD3と四方弁A2のポートA2cとは、庫内熱交換ブロックM3のブロックポートM3cを通して配管経路AL9で接続されている。
【0107】
図12の左上部において、分岐部AD2には、電磁弁A13が配設された配管経路AL10の一端側が接続されている。配管経路AL10の他端側には、分岐部AD4が設けられている。
分岐部AD4と、第1庫外熱交換器A3AのポートA3Aaとは、庫内熱交換ブロックM3のブロックポートM3bを通して配管経路AL11で接続されている。
【0108】
配管経路AL11には、分岐部AD4側から、受液器A4と分岐部AD5が配設されている。分岐部AD5には、配管経路AL11から分岐する配管経路AL12の一端側が接続されている。
配管経路AL12の他端側には分岐部AD55が設けられている。分岐部AD55には、配管経路AL12A及び配管経路AL12Bの一端側が分岐接続されている。
【0109】
配管経路AL7Aにおいて、膨張弁A22Aと庫内熱交換器A5AのポートA5Aaとの間には分岐部AD6Aが設けられている。
分岐部AD6Aと分岐部AD55とは、配管経路AL12Aで接続されている。配管経路AL12Aには電磁弁A16Aが配設されている。
配管経路AL7Bにおいて、膨張弁A22Bと庫内熱交換器A5BのポートA5Baとの間には分岐部AD6Bが設けられている。
分岐部AD6Bと分岐部AD55とは、配管経路AL12Bで接続されている。配管経路AL12Bには電磁弁A16Bが配設されている。
【0110】
配管経路AL11における分岐部AD5と第1庫外熱交換器A3AのポートA3Aaとの間には、分岐部AD7が設けられている。分岐部AD7には、配管経路AL13の一端側が接続されている。
配管経路AL13の他端側には、分岐部AD77が設けられている。
分岐部AD77には、配管経路AL13Aと配管経路AL13Bとが分岐接続されている。
【0111】
配管経路AL13Aは、分岐部AD77と、配管経路AL8Aにおける電磁弁A15Aと庫内熱交換器A5AのポートA5Abと、の間を接続している。
配管経路AL13Bは、分岐部AD77と、配管経路AL8Bにおける電磁弁15Bと庫内熱交換器A5BのポートA5Bbと、の間を接続している。
配管経路AL13A及び配管経路AL13Bには、分岐部AD77に向かう流れのみを許容する逆止弁A32A及び逆止弁A32Bがそれぞれ配設されている。
【0112】
配管経路AL11における分岐部AD5と分岐部AD7との間には、分岐部AD5に向かう流れのみを許容する逆止弁A33が配設されている。
【0113】
図12の左上に示される分岐部AD4と、四方弁A2のポートA2dと、の間は、庫内熱交換ブロックM3のブロックポートM3dを通して配管経路AL14で接続されている。配管経路AL14には、分岐部AD4に向かう流れのみを許容する逆止弁A34が配設されている。
【0114】
配管経路AL9には(分岐部AD3と四方弁A2のポートA2cとの間には)、分岐部AD8が設けられている。
分岐部AD8とアキュムレータA6の入口との間は、配管経路AL15で接続されている。また、アキュムレータA6の出口と圧縮機A1の吸い込み口との間は、配管経路AL16で接続されている。
【0115】
冷媒回路52Rは、さらに次の構成を有している。
【0116】
並列回路ALP1には、第2庫外熱交換器のポートA3Bbと、配管経路AL4a及び配管経路AL4bと、の間に分岐部AD62が設けられている。
配管経路AL11には、第1庫外熱交換器A3AのポートA3Aaと分岐部AD7との間に分岐部AD61が設けられている。
分岐部AD61と並列回路ALP1の分岐部AD62とは、配管経路AL61で接続されている。以下、配管経路AL61をバイパスAL61とも称する。
バイパスAL61には、開閉弁としての電磁弁A61V,キャピラリA62,及び分岐部AD61から分岐部AD62に向かう流れのみを許容する逆止弁A63が配設されている。
電磁弁A61Vの開閉動作は、制御部A41によって制御される(
図13参照)。また、電磁弁A61Vは、電磁弁群A11Gには含まれないものとする。
キャピラリーチューブであるキャピラリA62は、膨張弁A21と同様に減圧器として作用する。また、キャピラリA62は、膨張弁A21よりも通過させる冷媒の量が多い減圧器として用いられる。
【0117】
配管経路AL13Aには、第1庫内熱交換器A5AにおけるポートA5Abの近くに、その部位を流れる冷媒の温度を測定する温度センサATS1Aが配設されている。温度センサATS1Aは、第1庫内熱交換器A5AのポートA5Abに近い位置に配設されていることが好ましい。
配管経路AL13Bには、第1庫内熱交換器A5BにおけるポートA5Bbの近くに、その部位を流れる冷媒の温度を測定する温度センサATS1Bが配設されている。温度センサATS1Bは、第1庫内熱交換器A5BのポートA5Bbに近い位置に配設されていることが好ましい。
【0118】
並列回路ALP1の配管経路AL5における、第1庫外熱交換器A3AのポートA3Abの近傍には、ポートA3Abと分岐部AD1との間の区間を流れる冷媒の温度を測定する温度センサATS2が配設されている。
【0119】
冷媒回路52Rにおいて、庫内熱交換器A5Aを含む分岐部AD2及び分岐部AD55と、分岐部AD3及び分岐部AD77と、の間の配管経路を、庫内熱交換器ユニットA5AUと称する。
庫内熱交換器A5Bを含む分岐部AD2及び分岐部AD55と、分岐部AD3及び分岐部AD77と、の間の配管経路を、庫内熱交換器ユニットA5BUと称する。
庫内熱交換器ユニットA5AUと庫内熱交換器ユニットA5BUとは、実質同じ配管経路である。すなわち、冷媒回路52Rにおいて、二つの庫内熱交換器ユニットが並列に接続されている。
【0120】
上述の各配管の一部は、流れる冷媒の相に応じて次に示される管として分類される。
また、以下の記載で低圧とは、圧縮機1により昇圧された冷媒の圧力(高圧とする)に対し相対的に低い圧力を意味する。
配管経路AL1,AL14は、圧縮機A1により昇圧された高圧のガス冷媒が流れる高圧ガス管である。
配管経路AL2は、高圧又は低圧のガス冷媒が流れるガス管である。
配管経路AL6,AL11は、高圧の液冷媒が流れる高圧液管である。
配管経路AL15,AL16は、低圧のガス冷媒が流れる低圧ガス管である。
【0121】
次に、庫外熱交換器A3の詳細を、
図14を参照して説明する。
図14は、庫外熱交換器A3の断面に対応する模式的構成図である。
【0122】
庫外熱交換器A3は、上述のようにフィンアンドチューブ式で構成されている。
第1庫外熱交換器A3A及び第2庫外熱交換器A3Bは、それぞれ複数のパスを有し、第1庫外熱交換器A3Aのパス数は、第2庫外熱交換器A3Bのパス数以下とされている。
第1庫外熱交換器A3Aは、三つのパスであるパスAP1〜パスAP3を有して構成されている。
第2庫外熱交換器A3Bは、六つのパスであるパスAP4〜AP9を有して構成している。
【0123】
第1庫外熱交換器A3Aの内部において、ポートA3AaとポートA3Abとの間に、パスAP1〜パスAP3が並列に接続されている。
また、パスAP1〜パスAP3は、送風方向(
図14における左右方向)に互いに重なることなく、吸い込み側の一面(以下、吸い込み面とも称する)において実質的に独立した領域となるように配置されている。
【0124】
第2庫外熱交換器A3Bの内部において、ポートA3BaとポートA3Bbとの間に、パスAP4〜AP9が並列に接続されている。
パスAP4〜AP9は、送風方向に互いに概ね重なることなく、吸い込み面において実質的に独立した領域となるように配置されている。
【0125】
第1庫外熱交換器A3Aと第2庫外熱交換器A3Bとは、第1庫外熱交換器A3Aが、ファンAF1の駆動により一定方向に流れる通風外気の風上側となるように配置されている。すなわち、第1庫外熱交換器A3Aは上流側熱交換器であり、第2庫外熱交換器A3Bは下流側熱交換器である。
【0126】
冷凍装置52は、種々の設備や装置等に適用することができる。例えば、冷凍庫、及び冷凍庫を備えて移動可能な冷凍車に用いられる。
図15は、冷凍庫ACTを備えた冷凍車ACへの使用搭載例を示す側面図であり、一部を切断面としている。
【0127】
冷凍車ACは、冷凍庫ACT及び冷凍装置52、並びに、走行するための動力源及び走行機構を有する車両本体部ACHを備えている。冷凍庫ACTは、独立した二つの断熱保温庫として庫室ACA及び庫室ACBを有している。
庫内熱交換器A5Aは、庫室ACAの内部空間ACVA内に配置され、内部空間ACVAの空気と熱交換を行う。
庫内熱交換器A5Bは、庫室ACBの内部空間ACVB内に配置され、内部空間ACVBの空気と熱交換を行う。
冷凍庫ACTの外部(例えば運転席の上方)には、庫外熱交換器3が配置され、外気と熱交換を行う。
【0128】
冷凍装置52の他の部材は冷凍庫ACTの外側に設置される。設置位置は限定されない。
例えば、圧縮機A1やアキュムレータA6などは、収容体ASに納められて車体の下方に設置される。制御部A41及び入力部A42は、運転席まわりに設置される。特に入力部A42は、運転者が操作し易い場所に配設される。
圧縮機A1は、例えば、電源としてのバッテリと、インバータ回路と、によって駆動する電動圧縮機とされる。また、圧縮機A1はこの電動圧縮機に限定されず、冷凍車ACの走行動力源(エンジンやモータ等)を駆動源とするタイプであってもよい。
【0129】
次に、冷凍装置52の動作について、冷凍車ACに搭載された場合を例として
図16〜
図26を主に参照して説明する。
【0130】
冷凍車ACは、冷凍装置52の動作によって、二つの庫室ACA(第1室とする)と庫室ACB(第2室とする)とを、それぞれ独立に、冷却,加温,除霜,停止(冷却も加温もしない)の四つの運転状態で維持できるようになっている。除霜は、庫内熱交換器A5A,A5Bの除霜である。
すなわち、冷凍装置52は、制御部A41の制御によって、庫内熱交換器A5A,A5Bそれぞれについて、冷却,加温,除霜,及び停止の四つの動作モードを選択的に実行できる。従って、各動作モードの組み合わせとして、二つの庫室ACA,ACBに対し全停止を含め16種の動作モードを実行可能とされる。
【0131】
図16は、全停止を含めた16種の動作モード(モード番号1〜16)の制御状態を示した表である。制御部A41は、この表に示されたように、四方弁A2,解放弁としての電磁弁群A11G,及びファン群AFG(ファンAF1,AF2A,AF2B)を制御して各動作モードを選択的に実行する。
すなわち、四方弁A2及び電磁弁群A11Gは、制御部A41の制御の下、冷媒回路52Rにおいて冷媒が流れる流路を、動作モードに応じて選択的に切り替える流路切り替え部RK1とされている。
【0132】
16種の動作モードは、例えば次のようにも分類される。
二室冷却運転(モード番号1)、二室加温運転(モード番号2)、冷却・加温同時運転(モード番号3,4)、一室冷却運転(モード番号5,6)、一室加温運転(モード番号7,8)、除霜運転(モード番号9〜15)、全停止(モード番号16)。
【0133】
四方弁A2のモードについて、制御部A41は、
図17に示されるモード#Aとモード#Bとに切り替える。
この切り替えにおいて、制御部A41は、庫室ACA及び庫室ACBの少なくとも一方を加温又は除霜の動作モードとする場合、モード#Bとし、それ以外の場合にモード#Aとする。
全停止(動作モード16)での四方弁A2のモードは限定されない。すなわち、停止直前の動作モードでのモードのままで支障はない。
【0134】
電磁弁群A11Gのパターンについて、制御部A41は、各弁の開状態、閉状態の組み合わせをA〜Hの8種のパターンで制御する。
詳しくは、
図18に示されるように、庫室ACA及び庫室ACBそれぞれの四つの動作モードの組み合わせとなる合計16種の動作モードそれぞれにA〜Hパターンのいずれかを対応づけて制御する。
全停止(動作モード16)でのパターンは限定されない。すなわち、停止直前の動作モードでのパターンのままで支障はない。
【0135】
ファン群AFGについて、制御部A41は、ファンAF1を、全停止(動作モード16)以外のすべての動作モード1〜15でONとし、ファンAF2A,AF2Bは、それぞれが配設された庫室ACA,ACBが冷却又は加温のときにONとし、除霜又は停止のときにOFFとする。
【0136】
次に、除霜を含まない動作モード(モード番号1〜8)について、
図19〜
図24を参照して説明する。各図において、動作するファンにはハッチングを付与してある。また、ファンによって熱交換器に吸い込まれる空気の温度よりも吹き出される空気の温度の方が低い場合、吹き出される空気を白ヌキ矢印で示し、温度が高い場合、黒矢印で示してある。また、冷媒の流れる経路を太線で示してある。
また、ここで説明するのは、負圧運転化条件A以外の環境条件(外気が極端な高温でない条件)の下における基本的な運転内容である。
【0137】
〔1−1〕二室冷却運転
<モード番号1:
図19参照>
庫室ACA及び庫室ACBを共に冷却するモードである。
圧縮機A1の吐出口から配管経路AL1に吐出した高温高圧のガス冷媒は、モード#Aとされた四方弁A2のポートA2aからポートA2bを通って配管経路AL2に流入する。モード#AではポートA2cとポートA2dとも接続されるが、これらのポートは機能しない。
配管経路AL2に流入した冷媒は、庫外熱交換器A3における第2庫外熱交換器A3Bに対しポートA3Baから流入し、ポートA3Bbから流出する。
冷媒は、ポートA3Bbから流出し、逆止弁A31b及び開状態の電磁弁A11を通り、第1庫外熱交換器A3Aに対しポートA3Abから流入する。
ポートA3Abから流入した冷媒は、第1庫外熱交換器A3AのポートA3Aaから流出して配管経路AL11に流入する。
【0138】
庫外熱交換器A3において、ファンAF1は運転状態にあり、外気は第1庫外熱交換器A3Aから第2庫外熱交換器A3Bへと流動している。
運転状態にあるファンにはハッチングを付し、停止状態のファンは白ヌキとして両状態を区別できるようにしてある。以下の説明も同様である。
外気流動状態で、庫外熱交換器A3では、第2庫外熱交換器A3Bと第1庫外熱交換器A3Aとが一体的に凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機A1から吐出したガス冷媒は、外気に対し放熱して凝縮し、高圧の液冷媒としてポートA3Aaから配管経路AL11に流入する。
詳しくは、冷媒は、第2庫外熱交換器A3Bの入口となるポートA3Baにおいて、全て気相のガス冷媒である。このガス冷媒は、第2庫外熱交換器A3B内を流れるに伴い、外気と熱交換されて一部が凝縮(液化)し、ガス冷媒に対する液冷媒の比率が増加する。
これにより、第2庫外熱交換器A3Bの出口となるポートA3Bbにおいて、冷媒の大半が液冷媒の気液混合冷媒となる。ここで、液冷媒の比率は、運転条件により異なる。
【0139】
次に、ポートA3Bbから流出した気液混合冷媒は、ポートA3Abから第1庫外熱交換器A3Aに流入する。第1庫外熱交換器A3Aで、引き続き冷媒と外気との熱交換が行われ、出口となるポートA3Aaにおいて、冷媒は、高圧でほぼ全てが液相となっている。
以下の説明においては、熱交換器にて外気又は内気が冷媒から熱を奪って放出される場合に、流れを黒矢印で示してある。逆に、冷媒に熱を奪われて放出される場合に、流れを白ヌキ矢印で示してある。
【0140】
冷媒の、庫外熱交換器A3での気相から液相への相変化で、冷媒の体積は減少する。
庫外熱交換器A3では、体積減少により液相の比率が高くなった冷媒が流れる第1庫外熱交換器A3Aのパス数ANa(この例でANa=3)を、気相の比率が高い冷媒が流れる第2庫外熱交換器3Bのパス数ANb(この例でANb=6)よりも少なくしている。これにより、第1庫外熱交換器A3A内を流れる冷媒は、第2庫外熱交換器A3Bを液冷媒として流れるときよりも、流速が大きくなり、冷媒の過冷却度も大きくなる。
【0141】
ポートA3Aaを出て配管経路AL11に流入した高圧の液冷媒は、逆止弁A33を通り受液器A4に入る。
受液器A4では、運転環境に応じた余剰量の液冷媒が滞留する。
例えば、庫室ACA内及び庫室ACB内の熱負荷が小さい場合は、循環する冷媒の量は少なくて済み、受液器A4内に余剰分の液冷媒が溜まる。一方、庫室ACA内及び庫室ACB内の熱負荷が大きい場合は、循環する冷媒の量が多く必要となるので、受液器A4内に溜まる液冷媒の量は少なくなる。従って、冷媒回路52Rに常に最適量の冷媒が循環し、冷却能力が高度に安定維持される。
【0142】
受液器A4を出た液冷媒は、開状態の電磁弁A13を経て分岐部AD2に達し、庫内熱交換器ユニットA5AU側の配管経路AL7Aと庫内熱交換器ユニットA5BU側の配管経路AL7Bとに分岐流入する。
【0143】
まず、配管経路AL7Aに流入した冷媒は、電磁弁A14Aを経由して膨張弁A22Aに入る。冷媒は膨張弁A22Aにおいて減圧膨張し、低温の気液混合冷媒となって庫内熱交換器A5Aに対しポートA5Aaから流入する。
庫内熱交換器A5AのファンAF2Aは動作状態にある。そのため、庫内熱交換器A5A内において、冷媒と、通風する庫内空気(以下通風内気と称する)と、の間で熱交換が行われる。
この熱交換で冷媒は熱を奪ってガス化し、通風内気は降温して庫室ACA内に送出される(白ヌキ矢印)。これにより庫室ACAは冷却される。
【0144】
一方、配管経路AL7Bに流入した冷媒は、電磁弁A14Bを経由して膨張弁A22Bに入る。冷媒は膨張弁A22Bにおいて減圧膨張し、低温の気液混合冷媒となって庫内熱交換器A5Bに対しポートA5Baから流入する。
庫内熱交換器A5BのファンAF2Bは動作状態にある。そのため、庫内熱交換器5B内において、冷媒と、通風内気と、の間で熱交換が行われる。
この熱交換で冷媒は熱を奪ってガス化し、通風内気は降温して庫室ACB内に送出される(白ヌキ矢印)。これにより庫室ACBは冷却される。
【0145】
庫内熱交換器A5A及びA5Bにおいてガス化した冷媒は、それぞれポートA5Ab及びA5Bbから電磁弁A15A及びA15Bを経て分岐部AD3で合流し、配管経路AL15及び配管経路AL16によりアキュムレータA6を経由して圧縮機A1の吸い込み口に戻る。
【0146】
〔1−2〕二室加温運転
<モード番号2:
図20参照>
庫室ACA及び庫室ACBを共に加温するモードである。
圧縮機A1の吐出口から配管経路AL1に吐出した高温高圧のガス冷媒は、モード#Bとされた四方弁A2のポートA2aからポートA2dを通って配管経路AL14に流入する。
配管経路AL14に流入した冷媒は、逆止弁A34及び分岐部AD4を経て、電磁弁A13が閉状態であることから受液器A4に入る。直前の動作モードによって受液器A4に液冷媒が蓄留している場合も、ガス冷媒に押し出され受液器A4内は直ちにガス冷媒のみとなる。
受液器A4を通過したガス冷媒は、分岐部AD5及び配管経路AL12を経て、分岐部AD55において配管経路AL12Aと配管経路AL12Bとに分岐流入する。
【0147】
まず、配管経路AL12Aに流入したガス冷媒は、電磁弁A16Aを経て庫内熱交換器A5Aに対しポートA5Aaから流入する。
庫内熱交換器A5AのファンAF2Aは動作状態にある。そのため、庫内熱交換器A5A内で冷媒と通風内気との間で熱交換が行われ、冷媒は熱を奪われ大部分が凝縮液化して概ね液冷媒となり、通風内気は昇温して庫室ACA内に送出される(黒矢印)。これにより庫室ACAは加温される。
一方、配管経路AL12Bに流入したガス冷媒は、電磁弁A16Bを経て庫内熱交換器A5Bに対しポートA5Baから流入する。
庫内熱交換器A5BのファンAF2Bは動作状態にある。そのため、庫内熱交換器A5B内で冷媒と通風内気との間で熱交換が行われ、冷媒は熱を奪われ大部分が凝縮液化して概ね液冷媒となり、通風内気は昇温して庫室ACB内に送出される(黒矢印)。これにより庫室ACBは加温される。
【0148】
庫内熱交換器A5A及びA5Bから流出する冷媒は、高圧の概ね液化した冷媒であるが、庫室ACA内及び庫室ACB内の熱負荷等の運転環境に応じた量のガス冷媒が含まれている。
この概ね液化した高圧の冷媒は、ポートA5Ab及びA5Bbから配管経路AL13A及びAL13Bに流入し、逆止弁A32A及びA32Bを経て分岐部AD77で合流する。そして、分岐部AD77での合流後、配管経路AL13及び分岐部AD7を経て配管経路AL11を通過し、第1庫外熱交換器A3Aに対しポートA3Aaから流入する。
【0149】
庫外熱交換器A3のファンAF1は動作状態にある。そのため、第1庫外熱交換器A3A内で液冷媒と通風外気との熱交換が行われ、液冷媒は降温して過冷却度が増加する。すなわち、第1庫外熱交換器A3Aは、液冷媒に対し過冷却熱交換器として機能する。
第1庫外熱交換器A3Aに、液冷媒と共に流入した未凝縮のガス冷媒も、通風外気との熱交換により冷却されて完全に液化する。
【0150】
第1庫外熱交換器A3Aでの熱交換後、ポートA3Abから流出した液冷媒は、配管経路AL5の電磁弁A11及び配管経路AL4aの逆止弁A31aを経て膨張弁A21に入る。
液冷媒は、膨張弁A21において、減圧膨張して低温の気液混合冷媒となる。そして、配管経路AL3を通り第2庫外熱交換器A3Bに対しポートA3Bbから流入する。
第2庫外熱交換器A3Bにおいて、冷媒は、通風外気との熱交換で低温の液冷媒が外気から熱を奪ってガス化し、完全なガス冷媒となる。このとき第2庫外熱交換器A3Bは蒸発器として機能している。
このガス冷媒は、ポートA3Baから配管経路AL2に流出し、アキュムレータA6を経て圧縮機A1の吸い込み口に戻る。
【0151】
〔1−3〕冷却・加温同時運転
モード番号3及びモード番号4は、二つの庫室の一方を加温し他方を冷却するという加温運転と冷却運転とを同時に実行する動作モードである。
【0152】
<モード番号3(庫室ACA加温、庫室ACB冷却):
図21参照>
この動作モードでは、庫室ACAに対応する庫内熱交換器ユニットA5AUを加温運転し、庫室ACBに対応する庫内熱交換器ユニットA5BUを冷却運転する。
圧縮機A1から分岐部AD55に至る冷媒の流れは、モード番号2と同じである。
分岐部AD55以降について、このモード番号3では、電磁弁A16Bを閉状態としているため、冷媒(ガス冷媒)は分岐部AD55で分岐せず、配管経路AL12Aにのみ流入する。
配管経路AL12Aに流入したガス冷媒は、電磁弁A16Aを経て庫内熱交換器A5Aに対しポートA5Aaから流入する。
【0153】
庫内熱交換器A5AのファンAF2Aは動作状態にある。そのため、庫内熱交換器5A内で冷媒と通風内気との間で熱交換が行われる。
この熱交換で、冷媒は熱が奪われ大部分が凝縮液化して概ね液冷媒となり、通風内気は昇温して庫室ACA内に送出される。これにより庫室ACAは加温される。
【0154】
庫内熱交換器A5Aから流出する冷媒は、高圧の概ね液化した冷媒であるが、庫室CA内の熱負荷等の運転環境に応じた量のガス冷媒が含まれている。
この概ね液化した高圧の冷媒は、ポートA5Abから配管経路AL13Aに流入し、逆止弁A32Aを経て分岐部AD77及び配管経路AL13を通り、分岐部AD7から配管経路AL11に入る。そして、庫外熱交換器A3の第1庫外熱交換器A3Aに対しポートA3Aaから流入する。
【0155】
庫外熱交換器A3のファンAF1は動作状態にある。そのため、第1庫外熱交換器A3A内で液冷媒と通風外気との熱交換が行われ、液冷媒は熱を奪われ降温して過冷却度が増加する。すなわち、第1庫外熱交換器A3Aは、液冷媒に対し過冷却熱交換器として機能する。
第1庫外熱交換器A3Aに、液冷媒と共に流入した未凝縮のガス冷媒も、通風外気との熱交換により熱を奪われ冷却されて完全に液化する。
【0156】
第1庫外熱交換器A3Aでの熱交換後、液冷媒はポートA3Abを出て配管経路AL6に流入し、電磁弁A12を経て分岐部AD2に達する。
このモードでは、電磁弁A13,A14Aが閉状態にあるため、液冷媒は、開状態とされた電磁弁A14Bが配設された配管経路AL7Bに流入し膨張弁A22Bに入る。
液冷媒は、膨張弁A22Bにおいて、減圧膨張して低温の気液混合冷媒となり、庫内熱交換器A5Bに対しポートA5Baから流入する。
庫内熱交換器A5BのファンAF2Bは動作状態にある。そのため、庫内熱交換器A5B内で気液混合冷媒は、通風内気から熱交換により熱を奪って蒸発し、完全なガス冷媒となる。庫内熱交換器A5Bは蒸発器として機能する。
一方、通風内気は降温して庫室ACB内に送出される。これにより庫室ACBは冷却される。
【0157】
ガス化した冷媒は、ポートA5Bbから配管経路AL8Bに流入し、電磁弁A15B及びアキュムレータA6を経て圧縮機A1の吸い込み口に戻る。
【0158】
<モード番号4(庫室CA冷却、庫室CB加温):
図22参照>
モード番号4は、モード番号3に対し、加温する庫内熱交換器ユニットと冷却する庫内熱交換器ユニットとを入れ替えたものである。
すなわち、電磁弁A16A及び電磁弁A16Bの開閉状態を逆にし、電磁弁A16Aを閉状態、電磁弁A16Bを開状態にして圧縮機A1からの高圧のガス冷媒を、庫内熱交換器A5Bに流入させる。
また、電磁弁A14A及び電磁弁A14Bの開閉状態を逆にし、電磁弁A14Aを開状態、電磁弁A14Bを閉状態にして、第1庫外熱交換器A3Aで冷却された液冷媒を、庫内熱交換器A5Aに流入させる。
これにより、庫室ACAは冷却され、庫室ACBは加温される。
【0159】
この加温と冷却とを同時に実行する動作モード3及び動作モード4では、上述のように、第1庫外熱交換器A3Aにおいて液冷媒の過冷却度が増加する。そのため、その過冷却度が増加した分、冷却運転となる庫内熱交換器の冷却能力が増加する。
【0160】
〔1−4〕一室冷却運転
<モード番号5,6:
図23参照>
一室冷却運転は、二つの庫室ACA,ACBの内、一方を冷却し、他方を運転停止とする。ここで運転停止とは、継続的に運転を止めている場合と、二室冷却運転中に庫室内温度が設定温度に達したため一時的に止めている場合と、の両方を含む。
【0161】
モード番号5は、庫室ACAを冷却し、庫室ACBを運転停止とする動作モードであり、その冷媒流路が
図23の太実線で示されている。
すなわち、モード番号5は、二室冷却運転のモード番号1(
図19参照)に対し、電磁弁A14Bを閉状態にして庫内熱交換器ユニットA5BUに冷媒が流入しないようにすると共にファンAF2Bを停止させる動作モードである。
また、電磁弁A15Bは開状態とし、運転しない庫内熱交換器A5B内の冷媒を、配管経路AL8Bを経て配管経路AL15に向け解放する。電磁弁A15Bは、モード番号5の運転開始から所定時間経過して庫内熱交換器A5B内の冷媒が解放されたら閉状態としてもよい。
モード番号1と共通する冷媒流路における冷媒の相状態や庫外熱交換器A3及び庫内熱交換器A5Aでの熱交換作用等は、モード番号1の場合と同じである。
【0162】
モード番号6は、庫室ACBを冷却し、庫室ACAを運転停止とする運転モードである。その冷媒流路は、分岐部AD2と分岐部AD3との間のみ異なり、その間は
図23の太破線で示される流路となる。
すなわち、モード番号6は、二室冷却運転のモード番号1(
図19参照)に対し、電磁弁A14Aを閉状態にして庫内熱交換器ユニットA5AUに冷媒が流入しないようにすると共にファンAF2Aを停止させたものである(
図23のファンAF2A,AF2Bはモード番号5での動作状態を示している。モード番号6では逆の動作状態となる)。
また、電磁弁A15Aは開状態とし、運転しない庫内熱交換器A5A内の冷媒を、配管経路AL8Aを経て配管経路AL15に向け解放する。電磁弁A15Aは、モード番号6の運転開始から所定時間経過して庫内熱交換器A5A内の冷媒が解放されたら閉状態としてもよい。
モード番号1と共通する冷媒流路における冷媒の相状態や庫外熱交換器A3及び庫内熱交換器A5Bでの熱交換作用等は、モード番号1の場合と同じである。
【0163】
〔1−5〕一室加温運転
<モード番号7,8:
図24参照>
一室加温運転は、二つの庫室ACA,ACBの内、一方を加温し、他方を運転停止とする。ここで運転停止とは、継続的に運転を止めている場合と、二室加温運転中に庫室内温度が設定温度に達したため一時的に止めている場合と、の両方を含む。
【0164】
モード番号7は、庫室ACAを加温し、庫室ACBを運転停止とする動作モードであり、その冷媒流路が
図24の太実線で示されている。
すなわち、モード番号7は、二室加温運転のモード番号2(
図20参照)に対し、電磁弁A16Bを閉状態にして庫内熱交換器ユニットA5BUに冷媒が流入しないようにすると共にファンAF2Bを停止させる動作モードである。
また、電磁弁A15Bは開状態とし、運転しない庫内熱交換器A5B内の冷媒を、配管経路AL8Bを経て配管経路AL9に向け解放する。電磁弁A15Bは、モード番号7の運転開始から所定時間経過して庫内熱交換器A5B内の冷媒が解放されたら閉状態としてもよい。
モード番号2と共通する冷媒流路における冷媒の相状態や庫外熱交換器A3及び庫内熱交換器A5Aでの熱交換作用等は、モード番号2の場合と同じである。
【0165】
モード番号8は、庫室ACBを加温し、庫室ACAを運転停止とする運転モードであり、その冷媒流路は、分岐部AD55と分岐部AD77との間のみ異なり、この間は
図24の太破線で示される流路となる。
すなわち、モード番号8は、二室加温運転のモード番号2(
図20参照)に対し、電磁弁A16Aを閉状態にして庫内熱交換器ユニットA5AUに冷媒が流入しないようにすると共にファンAF2Aを停止させたものである(
図24のファンAF2A,AF2Bはモード番号7での動作状態を示している。モード番号8では逆の動作状態となる。
また、電磁弁A15Aは開状態とし、運転しない庫内熱交換器A5A内の冷媒を、配管経路AL8Aを経て配管経路AL9に向け解放する。電磁弁A15Aは、モード番号8の運転開始から所定時間経過して庫内熱交換器A5A内の冷媒が解放されたら閉状態としてもよい。
モード番号2と共通する冷媒流路における冷媒の相状態や庫外熱交換器A3及び庫内熱交換器A5Bでの熱交換作用等は、モード番号2の場合と同じである。
【0166】
〔1−6〕除霜運転(庫内熱交換器A5A,A5Bの除霜)
例えば庫室ACAを動作モード1,4,5のいずれかで長時間冷却すると、庫内熱交換器A5Aのフィンに、庫室ACA内の空気に含まれる水分が凍結し霜として付着する場合がある。フィンに霜が付着すると熱交換が阻害されるので、庫内熱交換器A5Aのデフロスト運転を実行して除霜する。デフロスト運転は庫内熱交換器A5Bにも同様に実行される。
冷媒回路52Rはヒートポンプ式であるから、除霜にはいわゆる逆サイクルのデフロストを行う。
具体的には、除霜する熱交換器を加温運転し、その熱交換器に該当するファンを停止させる。以下、運転モード毎の詳細を、
図24などを参照して説明する。
【0167】
<モード番号9>
庫内熱交換器A5Aの除霜のみを行うデフロスト運転の動作モードであり、庫内熱交換器A5Aのみを加温運転するモード番号7の動作モードにおいてファンAF2Aを停止(OFF)させたものである。
<モード番号10>
庫内熱交換器A5Bの除霜のみを行うデフロスト運転の動作モードであり、庫内熱交換器A5Bのみを加温運転するモード番号8の動作モードにおいてファンAF2Bを停止(OFF)させたものである。
<モード番号11>
庫内熱交換器A5Aと庫内熱交換器A5Bとの両方を除霜するデフロスト運転の動作モードであり、二室加温運転(モード番号2)の動作モードにおいて、ファンAF2AとファンAF2Bとの両方を停止(OFF)させたものである。
【0168】
また、冷凍装置52は、冷凍庫ACTの二つの庫室ACA,ACBの内の一方の庫室を除霜しながら他方の庫室を冷却又は加温することができる。
<モード番号12>
庫内熱交換器A5Aを除霜し、庫内熱交換器A5Bを加温運転する動作モードであり、二室加温運転(モード番号2)の動作モードにおいて、ファンAF2Aを停止(OFF)させたものである。
<モード番号13>
庫内熱交換器A5Bを除霜し、庫内熱交換器A5Aを加温運転する動作モードであり、二室加温運転(モード番号2)の動作モードにおいて、ファンAF2Bを停止(OFF)させたものである。
<モード番号14>
庫内熱交換器A5Aを除霜し、庫内熱交換器A5Bを冷却運転する動作モードであり、冷却・加温同時運転におけるモード番号3の動作モードにおいて、ファンAF2Aを停止(OFF)させたものである。
<モード番号15>
庫内熱交換器A5Bを除霜し、庫内熱交換器A5Aを冷却運転する動作モードであり、冷却・加温同時運転におけるモード番号4の動作モードにおいて、ファンF2Bを停止(OFF)させたものである。
【0169】
冷凍装置52は、外気が極端に高温でない日本の一般的な環境条件下では、上述の冷却運転後、加温運転を実行して、冷却されて低温となっている庫内温度を直ちに上昇させることができる。
一方、実施例1で述べたように、酷暑期のように外気が極端な高温の場合、例えばモード番号1の二室冷却運転を実行後、直ちにモード番号2の二室加温運転を実行したときに、次の現象が生じる可能性がある。
すなわち、冷却されて低温になっている庫内熱交換器A5A,A5Bで凝縮した低温の液冷媒が、外気で暖められて高温になっている第1庫外熱交換器A3Aに流入した際に沸騰蒸発する、という現象である。
【0170】
沸騰蒸発によって気化した冷媒は、配管経路AL4aの膨張弁A21を十分に通過できないため、冷媒回路52Rを循環する冷媒の量が減少して負圧運転状態となり加温能力が低下する。
【0171】
冷凍装置52では、冷却運転から切り換えた加温運転で、負圧運転状態が生じた場合及び負圧運転状態を生じさせないための予防措置として、バイパス運転を実行するようになっている。
詳しくは、制御部A41は、後述する手順例でバイパス運転を実行するか否かを判定し、バイパス運転と加温運転との切り換えを制御する。
【0172】
まず、負圧運転状態となり得る環境条件(負圧運転化条件A)の下でバイパス運転を実行させたときの冷媒の流れ及び作用を説明する。
バイパス運転の基本動作は加温運転と同じであり、ここでは主に加温運転と異なる冷媒の流れについて説明する。
また、予めモード番号1の二室冷却運転を実行して、庫内熱交換器A5A,A5Bが十分低温になっている状態から加温運転を行う場合のバイパス運転について説明する。
【0173】
まず、二室加温運転のモード番号2の運転状態で、さらに電磁弁A61Vを開状態とすることでバイパス運転が実行される。
庫室ACA及び庫室ACBの内部の空気は、冷却運転で既に低温になっているため、庫内熱交換器A5A,A5Bでの熱交換で冷媒は実質的に液冷媒となって配管経路AL11を流れる。
【0174】
電磁弁A61Vが開状態とされたことにより、庫内熱交換器A5A,A5Bから流出した低温高圧の液冷媒は、
図25に示されるように、配管経路AL11における分岐部AD61において分流する。
詳しくは、モード番号2の二室加温運転の場合と同様に、ポートA3Aaから第1庫外熱交換器A3Aに流入する流れ(本流)と、バイパス運転のみで発生させる流れであるバイパスAL61を流れる流れ(バイパス流)と、に分かれる。
【0175】
本流として第1庫外熱交換器A3Aに流入した液冷媒は、第1庫外熱交換器A3Aが外気で暖められて高温になっているため加温される。
負圧運転化条件Aの下では、外気に暖められた第1庫外熱交換器A3Aの温度が流入した液冷媒の沸点よりも高い。
従って、液冷媒は、第1庫外熱交換器A3Aで加温されると沸騰蒸発してガス冷媒となり、膨張弁A21に流入する。
【0176】
しかしながら、ガス冷媒は膨張弁A21を十分に通過できず、膨張弁A21以降の配管経路には、本流からの冷媒は実質的に流れない、或いは、僅かな量しか流れない。
【0177】
一方、バイパス流としてバイパスAL61に流入した液冷媒は、キャピラリA62で減圧され、逆止弁A63を通り、分岐部AD62を経て第2庫外熱交換器A3BにポートA3Bbから流入する。
第2庫外熱交換器A3Bに流入したバイパス流由来の液冷媒は、外気との熱交換により蒸発する。また、この熱交換は、第2庫外熱交換器A3B自体との間でも行われるので、第2庫外熱交換器A3Bは冷却される。
【0178】
第2庫外熱交換器A3Bの冷却に伴い、フィンを共有している第1庫外熱交換器A3Aの温度も低下する。
この温度低下によって、第1庫外熱交換器A3Aに流入した本流の沸騰蒸発が早期に停止する。そのため、第1庫外熱交換器A3Aから流出する液冷媒の量、すなわち膨張弁A21を通過する冷媒の量が急増する。
従って、冷媒回路52Rを循環する冷媒量が極端に減少することはなく、冷媒量が減少しても急速に回復する。
【0179】
このように、バイパス運転では、電磁弁A61Vを開状態にしてバイパスAL61を通るパイパス流を発生させることで、第2庫外熱交換器A3Bに冷媒を供給でき、冷媒回路52R内を循環する冷媒の量が極端に減少することなく一定量以上確保されるので、負圧運転が生じにくい。また、負圧運転が生じても、早期に通常の加温運転に復帰する。
これにより、冷凍装置52は、冷えた庫内を短時間で良好に加温できる。
【0180】
バイパス運転は、モード番号1の二室冷却運転後にモード番号2の二室加温運転を実施する場合に限定適用されるものではない。バイパス運転は、一室冷却運転を実行して冷却した庫がある状態から、その冷却した庫を加温する加温運転を行う場合にも適用可能であり、詳細は後述する。
【0181】
次に、冷却運転から加温運転への切り換えにおいて、上述のバイパス運転を実施するか否か、の判定方法について説明する。判定は、制御部A41が、温度センサATS1A,ATS1B,ATS2から得られた温度At1A,At1B,At2に基づいて行う。
【0182】
温度センサATS1Aは、庫内熱交換器A5Aから流出した冷媒の温度At1A(
図13参照)を測定し、測定結果を制御部A41に向け送出する。
温度センサATS1Bは、庫内熱交換器A5Bから流出した冷媒の温度At1B(
図13参照)を測定し、測定結果を制御部A41に向け送出する。
温度センサATS2は、第1庫外熱交換器A3Aから流出した冷媒の温度At2(
図13参照)を測定し、測定結果を制御部A41に向け送出する。
【0183】
制御部A41は、
図26(フロー図)に示される手順例で、バイパス運転の動作を制御する。
【0184】
まず、制御部A41は、外部からの指示により二室冷却運転を実行する(AS1)。
次に、制御部A41は、外部からの指示により二室加温運転に切り換える(AS2)。これにより、二室加温運転が開始する。
【0185】
制御部A41は、温度センサATS1Aからの検出温度である温度At1Aから温度センサATS2の検出温度である温度At2を減じた値(At1A−At2)、及び、温度センサATS1Bからの検出温度である温度At1Bから温度センサATS2の検出温度である温度At2を減じた値(At1B−At2)、のいずれかが、所定の値α2未満であるか否かを判定する(AS3)。
【0186】
この判定動作は、短い時間間隔で行うことが好ましく、リアルタイムで連続的に行うことがより好ましい。
値α2は、冷凍装置52の仕様や、冷凍車ACの運用環境等に応じて適宜設定する。例えば5(deg)である。
値α2は、負の値と正の値とのいずれにも設定され得る。通常の仕様では、下限は−3(deg)程度となる。
従って、値α2を負数に設定した場合に(AS3)が成立するためには、少なくとも(At1A−At2)及び(At1B−At2)の一方が0未満である。
同様に、値αを0(ゼロ)に設定した場合は、少なくとも(At1A−At2)及び(At1B−At2)の一方が0以下である。
また、値α2が正数の場合は、(At1A−At2)及び(At1B−At2)のいずれについても、0未満と0以上との両方の場合があり得る。
【0187】
(AS3)の判定がNoの場合、制御部A41は、外部からの運転停止指示の有無を判定し(AS8)、Noの場合、(AS3)の判定を継続する。
(AS8)の判定がYesの場合、加温運転を停止し(AS9)、動作を終了する。
【0188】
(AS3)の判定がYesの場合、判定がYesになってからの経過時間Atmが、所定の時間β2秒以上であるか否かを判定する(AS4)。
所定の時間β2は、冷凍装置52の動作特性等に応じて適宜設定する。例えば20秒である。
【0189】
(AS4)の判定がNoの場合、(AS8)へ移行し、停止指示がない場合は(AS3)を実行する。
経過時間Atmは(AS3)の判定がYesである限り累積する。
(AS4)の判定がYesの場合、バイパス運転を実行することを決定する。すなわち、電磁弁A61Vを開く。これによりバイパス運転が実行される。
【0190】
バイパス運転実行中、温度センサATS1Aからの検出温度である温度At1Aから温度センサATS2の検出温度である温度At2を減じた値、及び、温度センサATS1Bからの検出温度である温度At1Bから温度センサATS2の検出温度である温度At2を減じた値、の両方が、所定の値α2以上であるか否かを判定する(AS6)。
【0191】
(AS6)の判定がNoの場合、制御部A41は(AS6)判定を継続する。
(AS6)の判定がYesの場合、制御部A41は、負圧運転が解消した又は負圧運転になる可能性が十分小さくなったとして、バイパス運転を停止し、通常の加温運転に戻す。すなわち、電磁弁A61Vを閉じる(AS7)。
【0192】
制御部31は、(AS7)を実行したら(AS8)へ移行する。
【0193】
このように、制御部A41は、ニ室冷却運転から二室加温運転に移行したら、庫内熱交換器A5A,A5Bから流出した冷媒の温度At1A,At1Bのそれぞれと、第1庫外熱交換器A3Aから流出した冷媒の温度At2と、を比較する。
そして、温度At1Aから温度At2を減じた値と温度At1Bから温度At2を減じた値とのいずれか一方が、所定の値α2未満であり、かつその状態が所定の経過時間Atm以上継続したら、負圧運転が生じている、又は生じる可能性が十分ある、と判断して、バイパス運転を実行する。
【0194】
バイパス運転実行中も、温度At1A,温度At1B,及び温度At2を監視し、温度At1Aから温度At2を減じた値、及び温度At1Bから温度At2を減じた値が共に所定の値α2以上となったら、バイパス運転から通常の加温運転に移行する。
【0195】
バイパス運転は、冷却運転から加温運転への切り換え時に実行される他、加温運転中でも、温度At1A,At1B,At2に応じて適宜実行される。
従って、外部環境が時間とともに変化して負圧運転化条件Aになったとしても、負圧運転の発生を防止できる。
【0196】
このように、冷凍装置52は、電磁弁A61V,キャピラリA62,及び逆止弁A63を含むバイパスAL61からなるバイパス経路ABP(
図12参照)を有することで、バイパス運転の実行が可能であり、負圧運転が生じにくい。また、負圧運転が生じても、早期に通常の加温運転に復帰する。
そのため、冷凍装置52は、冷えた庫内を短時間で良好に加温できる。
【0197】
冷却運転が、一室冷却運転後の加温運転場合は、冷却した庫の温度を温度At2と比較する。これは実質的に実施例1の制御と同様となる。
【0198】
上述の冷凍装置52は、圧縮機A1から吐出した冷媒を庫内熱交換器A5Aに導入する第1の配管経路(配管経路AL1,AL14,AL11,AL12,AL12A)LH1と、庫内熱交換器A5Aで凝縮して液相化した冷媒を庫外熱交換器A3Aに導入する第2の配管経路(配管経路AL13A,AL13,AL11)LH2と、庫外熱交換器A3Aで過冷却された液相の冷媒を第庫内熱交換器A5Bに導入する第3の配管経路(配管経路AL6,AL7B)LH3と、を含む第1の冷媒流路R1と(
図21参照)、
圧縮機A1から吐出した冷媒を庫内熱交換器A5A及び庫内熱交換器A5Bに対し分岐して導入する第4の配管経路(配管経路AL1,AL14,AL11,AL12,AL12A,AL12B)LH4と、庫内熱交換器A5A,A5Bで液相化した冷媒を庫外熱交換器A3Aに導入する第5の配管経路(配管経路AL13A,AL13B,AL13,AL11)LH5と、を含む第2の冷媒流路R2と(
図20参照)、
圧縮機1から吐出したガス相の冷媒を庫外熱交換器A3に導入する第6の配管経路(配管経路AL1,AL2)LH6と、庫外熱交換器A3で凝縮して液相化した冷媒を庫内熱交換器A5A及び庫内熱交換器A5Bに対し分岐して導入する第7の配管経路(配管経路AL11,AL10,AL7A,AL7B)LH7と、を含む第3の冷媒流路R3と(
図19参照)、
を有する冷媒回路52Rと、
冷媒を流す流路として、第1の冷媒流路R1と、第2の冷媒流路R2と、第3の冷媒流路R3と、を選択的に切り替える流路切り替え部RK1(四方弁A2,電磁弁群A11G)(
図16参照)と、を備えている。
【0199】
また、第2の冷媒流路R2(
図20参照)における第4の配管経路の一部と第3の冷媒流路R3における第7の配管経路の一部とは、共通の部分である共通配管LKとされている。具体的には、配管経路AL11における分岐部AD4と分岐部AD5との間である。そして、この共通配管LKに、受液器A4が配設されている。
【0200】
実施例2の冷凍装置52は、以下のように庫外熱交換器A3の除霜を行うことができる。
モード番号2,7,8、庫外熱交換器A3の第2庫外熱交換器A3Bを蒸発器として機能させる二室同時加温又は一室加温運転を長時間行うと、第2庫外熱交換器A3Bのフィンに、外気に含まれる水分が凍結して霜として付着する場合がある。
この場合に、冷凍装置52は、
図16の動作モードに分類されていないが、庫外熱交換器A3のデフロスト運転を実行することができる。
このデフロスト運転は、二部屋冷却運転のモード番号1の動作モードにおいて、すべてのファンAF1,AF2A,AF2Bを停止(OFF)させた動作である。
【0201】
以上詳述した冷凍装置51及び冷凍車Cは、ヒートポンプ式の冷媒回路51Rを有する。また、冷凍装置52及び冷凍車ACは、ヒートポンプ式の冷媒回路52Rを有する。
従って、圧縮機1,A1の動作で得られる熱エネルギのみならず、庫内熱交換器5及び庫内熱交換器A5A,A5Bを加温運転する動作モードにおいては、それぞれ庫外熱交換器3及び庫外熱交換器A3によって外気から得る熱エネルギを用い、また、加温と冷却とを同時運転する動作モードにおいては更に冷却する庫室の内気から得る熱エネルギを加えて、加温すべき庫室を加温する。これにより、より優れた加温能力が得られる。
【0202】
冷媒回路51R及び冷媒回路52Rは、全停止以外の動作モードにおいて、それぞれ受液器4及び受液器A4に冷媒が通るようになっている。
例えば、冷媒回路52Rにおいて、受液器A4には、複数の庫内熱交換器A5A,A5Bのうち、少なくとも一つを加温又は除霜運転する動作モード(モード番号2〜4,7〜15)においてガス冷媒が満たされる。
これにより、これらの動作モードでは受液器A4に滞留する液冷媒がないので、冷媒回路52R内の冷媒全部を利用でき、連続的に加温又は除霜運転をしても冷媒不足となりにくい。冷媒回路51Rにおいても同様である。
【0203】
冷媒回路52Rは、加温及び除霜運転を含まない動作モード(モード番号1,5,6)において、受液器A4に液冷媒が蓄留可能とされている。
詳しくは、冷却運転において余剰冷媒が生じる状況の場合、その余剰冷媒を受液器A4に確保できるようになっている。
一方、加温及び除霜運転で余剰の冷媒が生じる運転状況の場合、第1庫外熱交換器A3Aにおいて、液冷媒として冷媒回路52R内を循環する適切な冷媒量に応じた余剰分の冷媒を確保できる。
これにより、冷却運転、並びに、加温及び除霜運転を連続で行っても、回路内圧力を最適に高く維持でき、運転能力が高度に維持される。そのため、庫室内の設定温度を高精度で安定維持させることができる。
【0204】
冷媒回路52Rの庫外熱交換器A3は、庫内熱交換器A5A,A5Bを加温及び除霜を含まない動作モード(モード番号1,5,6)で運転した場合、第2庫外熱交換器A3Bが、第1庫外熱交換器A3Aと一体的に凝縮器として機能する。
これにより、冷凍装置52は高い冷却能力を有する。
【0205】
また、負圧運転化条件A以外の環境下において、庫内熱交換器A5A,A5Bの内の、少なくとも一つを加温又は除霜運転する動作モード(モード番号2〜4,7〜15)で運転した場合、第1庫外熱交換器A3Aは、過冷却熱交換器として機能する。
これにより、冷凍装置52は過冷却度の増加分だけ冷却能力が向上している。
さらに、加温又は除霜運転となる庫内熱交換器A5A,A5BのポートA5Ab,A5Bbからは気液混合冷媒が流出する。すなわち、ポート5Aa,5Baからポート5Ab,5Bbに至る熱交換器内にて冷媒の凝縮が起こるので、熱交換器の全体で放熱し、熱交換器の熱交換効率が向上する。
【0206】
冷媒回路52Rにおいて、複数の庫内熱交換器A5A,A5Bは、それぞれ冷媒の入出力のための一対のポートを有し、一対のポートそれぞれに、二系統の入出力配管経路を有している。
例えば、冷媒回路52Rの庫内熱交換器A5Aについて
図12を参照して説明すると、庫内熱交換器A5Aは、入出力のための一対のポートA5Aa,A5Abを有する。
【0207】
ポートA5Aaについては、分岐部AD2に接続する配管経路AL7Aと、分岐部AD55に接続する配管経路AL12Aと、の二系統の経路を有している。
ポートA5Abについては、分岐部AD3に接続する配管経路AL8Aと、分岐部AD77に接続する配管経路AL13Aと、の二系統の経路を有している。
【0208】
ここで、配管経路AL7Aと、配管経路AL8Aと、の組み合わせを第1の経路とし、配管経路AL12Aと、配管経路AL13Aと、の組み合わせを第2の経路とすると、冷媒回路52Rは、庫内熱交換器A5Aを冷却運転する動作モードにおいて、第1の経路を冷媒が流れ、加温又は除霜運転する動作モードにおいて、第2の経路を冷媒が流れるようになっている。庫内熱交換器A5Bについても同様である。
【0209】
すなわち、第1の経路及び第2の経路を有する庫内熱交換器A5A,A5Bには、いずれの動作モードにおいても、冷媒が同じ方向に流れるようになっている。具体的には、ポートA5Aa,A5BaからポートA5Ab,ポートA5Bbに向けて流れる。
【0210】
動作モードを、庫内熱交換器A5A,A5Bが凝縮器として機能する動作モードから蒸発器として機能する動作モードに切り替えた際に、庫内熱交換器A5A,A5Bの内部から圧縮機A1に向け戻る冷媒は、気液混合冷媒である。
そのため、この動作モードの切り替えによって多量の液冷媒が圧縮機A1に向け戻ることはなく、圧縮機A1が液圧縮で壊れる虞はない。
さらに、この切り替え動作は、冷凍装置52を一旦停止して冷媒回路内の圧力を均衡させることなく実行可能である。そのため、冷凍装置52の運転効率は向上する。
【0211】
冷凍装置52は、ヒートポンプ式の冷媒回路52Rを有し、複数の庫内熱交換器A5A,A5Bに対し、交互に冷媒を循環流通させることなく常に冷媒を循環させつつ冷却運転と加温運転とのいずれかを実行させることができる。
これにより、庫内熱交換器A5A,A5Bがそれぞれ配設された庫室ACA,ACBの内部温度が、設定温度に対して上下変化しにくく、設定温度に対して精度よく安定維持させることができる。
【0212】
図31は、冷凍装置52におけるバイパス運転の適用動作を説明するための図である。
図31に示されるように、一室冷却運転を実行し、冷却した庫室を加温すべく加温運転又は除霜のためのデフロスト運転に切り換えた場合は、実施例1で説明したバイパス運転で行える(
図31の黒矢印)。
また、二室冷却運転を実行し、冷却した庫室を加温すべく加温運転又は除霜のためのデフロスト運転に切り換えた場合は、実施例2で説明したバイパス運転で行える(
図31の白ヌキ矢印)。
【0213】
上述の実施例1の冷凍装置51及び実施例2の冷凍装置52における構成及び制御手順は、上述の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形してよい。
【0214】
<変形例:
図27参照>
実施例1の冷凍装置51は、次に説明する冷凍装置151に変形してよい。
変形例の冷凍装置151は、冷凍装置51の冷媒回路51Rにおける庫外熱交換器3を、第1庫外熱交換器3Aをなくして第2庫外熱交換器3Bのみとした冷媒回路151Rを有する。
冷凍装置151は、第1庫外熱交換器3Aをなくしたこと以外、構成は冷凍装置51と同じである(
図2参照)。
【0215】
すなわち、冷凍装置151の庫外熱交換器3は、一つの庫外熱交換器3Bを有しており、分岐部D61から並列回路LP1の配管経路L3,L4との間が、配管経路L62(本経路L62と称する)で接続されている。
温度センサTS2は、本経路L62に配設されている。
【0216】
冷凍装置151の冷却運転であるモード変Aの流路を、
図28に太線で示す。
モード変Aが冷凍装置51におけるモードAに対して異なる点は、並列回路LP1の配管経路L4を通過した冷媒が、そのまま本経路L62及び分岐部D61を通り分岐部D1に至る点である。
【0217】
冷凍装置151の加温運転であるモード変Bの流路を、
図29に太線で示す。
モード変Bが冷凍装置51におけるモードBに対して異なる点は、配管経路L9を通り分岐部D61を通過した冷媒が、そのまま本経路L62を通り、並列回路LP1の配管経路L3に至る点である。
【0218】
制御部31は、冷却運転後の加温運転で、冷凍装置51と同様の
図11を参照して説明した手順(S1〜S9)で、電磁弁61Vの開閉を制御する。
【0219】
負圧運転化条件Aの下では、冷媒回路151Rにおいて、配管経路L8,L9及び本経路L62(以下、中間経路TKと称する:
図27参照)のいずれかが暖かい外気下にある場合、冷却運転で低温となっている庫内熱交換器5で十分冷やされて流出した低温の液冷媒が、中間経路TKを通過するときに暖められて沸騰蒸発しガス化する虞がある。
ガス化した冷媒は、冷凍装置51の場合と同様に膨張弁7を通過できないので、冷媒回路151Rは負圧運転状態になる。
【0220】
制御部31は、この負圧運転状態又は負圧運転状態になる可能性が高いことを、温度t1,t2に基づく手順(S1〜S9)で判定し、電磁弁61Vを適宜開状態にしてバイパス運転を実行する。
冷凍装置151も、電磁弁61V,キャピラリ62,及び逆止弁63を含むバイパスL61からなるバイパス経路BPを有することで、バイパス運転の実行が可能であり、負圧運転が生じにくい。また、負圧運転が生じても、早期に通常の加温運転に復帰する。
【0221】
このように、変形例の冷凍装置151によれば、庫内熱交換器5から庫外熱交換器3までの間の中間経路TKの少なくとも一部が外気に触れるよう配設状況であっても、外気が高温の運転環境の場合に、バイパス運転を実行することで負圧運転となることを回避することができる。
【0222】
上述した実施例及び各変形例は、可能な限り組み合わせて実施してよい。
庫内熱交換器は、2台に限らず、3台以上であってもよい。
例えば、複数の庫内熱交換器と単数の庫外熱交換器とを有する冷媒回路としてもよい。この場合も、制御部は、加温運転において複数の庫内熱交換器から流出する冷媒の各温度と、庫外熱交換器に流入する冷媒の温度と、に基づき、
図26を参照して説明した手順(AS1〜AS9)によってバイパス運転を実行するか否かを判定すればよい。
【0223】
庫内熱交換器が複数ある場合、加温運転で各庫内熱交換器から流出する冷媒の温度をそれぞれ測定する複数の温度センサを、一つの温度センサで代替えしてもよい。
例えば、
図12に破線で示されるように、複数の庫内熱交換器A5A,A5Bから流出した冷媒が合流して流れる配管経路AL13に、一つの温度センサATS1を配設してもよい。
【0224】
制御部A41は、加温運転において配管経路AL13を流れる庫内熱交換器A5A,A5Bから流出して合流した冷媒の温度At1と、温度センサATS1で測定し、温度センサATS2で測定した冷媒の温度At2と、に基づいて、バイパス運転を実行するか否かを判定すればよい。この場合の判定手順は、
図11を参照して説明した手順(S1〜S9)を採用できる。
【0225】
上述した実施例1,2及び変形例では、制御部31,A41が、バイパス運転を実行するか否かを、加温運転で流れる冷媒の温度に基づいて判定するようになっている。
これに対し、制御方法の変形例として、制御部31,A41は、冷却運転実行後、低温となっている庫室の温度を上昇させるべく加温運転に切り換える際に、必ず所定の時間だけバイパス運転を実行するように冷媒回路51R,52R,151Rの動作を制御してもよい。
この変形例は、冷凍装置51,52,151を搭載する冷凍車の使用環境が、負圧運転化条件Aとなる場合が多いときなどに有効である。
【0226】
以上の説明において、膨張弁7,A21を第1の減圧器と称し、キャピラリ62,A62を第2の減圧器と称してもよい。