特許第6706542号(P6706542)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706542色検査合否判定装置及び色検査合否判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706542
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】色検査合否判定装置及び色検査合否判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01J 3/46 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   G01J3/46 Z
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-99296(P2016-99296)
(22)【出願日】2016年5月18日
(65)【公開番号】特開2017-207347(P2017-207347A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000209751
【氏名又は名称】池上通信機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145470
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 健一
(72)【発明者】
【氏名】長島 奈美代
(72)【発明者】
【氏名】西澤 賢一
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−242757(JP,A)
【文献】 特開2009−266839(JP,A)
【文献】 特開2014−068181(JP,A)
【文献】 特開2016−006416(JP,A)
【文献】 特開2016−006408(JP,A)
【文献】 特開2011−095113(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0161788(US,A1)
【文献】 米国特許第05751829(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 3/00−3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色検査対象物に対して光を照射するとともに、当該色検査対象物から反射されてくる光のXYZ値を取得する測色センサと、
前記色検査対象物の色検査において合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲の指定を行う領域範囲指定部と、
前記領域範囲指定部により指定されたXYZ値の領域範囲を合否判定の基準に設定する領域範囲設定部と、
前記測色センサが取得した前記色検査対象物から反射されてくる光の測色値が、前記領域範囲設定部において設定されたXYZ値の領域範囲にあるか否かの合否判定をする色検査合否判定部と、
画面上に予め定められたGUIが表示される表示装置と、
を備え、
前記GUIは、領域範囲表示設定部と、合否判定表示部を含む構成とされており、
前記領域範囲表示設定部は、2次元グラフによる表示設定部と、数値による表示設定部とに区分けされ、
前記領域範囲指定部は、前記2次元グラフによる表示設定部、または、前記数値による表示設定部の何れか一方の表示設定部を通じた操作によって、前記合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲を指定可能に構成されているとともに、当該領域範囲の指定がされた場合には、前記領域範囲設定部が、そのXYZ値の領域範囲を示すデータを前記操作した一方の表示設定部及び他方の表示設定部を通じて相互にリアルタイムで表示させ、さらに、前記色検査合否判定部は、前記合否判定の結果を前記合否判定表示部を通じて表示させることを特徴とする色検査合否判定装置。
【請求項2】
前記2次元グラフによる表示設定部は、XY平面、YZ平面、ZX平面の3つの平面のうちから表示設定に用いる1つの平面を選択し、当該選択した平面において2次元グラフが表示できるよう構成され、当該選択した平面において表示されない次元を基準点の座標として設定した際の、可視色域境界を、当該選択した平面において表示される2次元グラフ上に所定の色を用いて表示するとともに、当該選択した平面において表示されない次元を基準点の座標として設定した際の、各座標点を、その明るさと色によって、当該選択した平面において表示される2次元グラフ上に表示することを特徴とする請求項1記載の色検査合否判定装置。
【請求項3】
前記2次元グラフによる表示設定部は、前記測色センサにより過去に取得された所定数分のXYZ値、または、前記測色センサにより同時に取得された所定数分のXYZ値を前記選択した平面における2次元グラフ上にプロット表示可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の色検査合否判定装置。
【請求項4】
前記2次元グラフによる表示設定部は、2次元グラフ上において所望の範囲を範囲指定枠で囲むことにより、前記領域範囲を指定可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3何れか1項記載の色検査合否判定装置。
【請求項5】
前記数値による表示設定部は、前記指定を行うXYZの各値の基準値と、その許容範囲を数値入力することで、前記領域範囲を指定可能とする入力ボックスが表示されていることを特徴とする請求項1〜4何れか1項記載の色検査合否判定装置。
【請求項6】
色検査対象物の色検査において合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲の指定を表示装置の画面上に表示される予め定められたGUIを通じて行う領域範囲指定ステップと、
前記領域範囲指定ステップにより指定されたXYZ値の領域範囲を合否判定の基準に設定する領域範囲設定ステップと、
前記色検査対象物に対して光を照射するとともに、当該色検査対象物から反射されてくる光のXYZ値を取得する測色値取得ステップと、
前記測色値取得ステップにおいて取得した前記色検査対象物から反射されてくる光の測色値が、前記領域範囲設定ステップにおいて設定されたXYZ値の領域範囲にあるか否かの合否判定をする色検査合否判定ステップと、
を含み、
前記領域範囲指定ステップは、領域範囲表示設定部と、合否判定表示部を含む構成のGUIを通じて領域範囲の指定を行うものであり、且つ、前記領域範囲表示設定部は、2次元グラフによる表示設定部と、数値による表示設定部とに区分けされるものを用い、前記2次元グラフによる表示設定部、または、数値による表示設定部の何れか一方の表示設定部を通じた操作によって、前記合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲を指定し、当該領域範囲の指定がされた場合には、そのXYZ値の領域範囲を示すデータが、前記操作した一方の表示設定部及び他方の表示設定部を通じて相互にリアルタイムで表示させ、さらに、前記色検査合否判定ステップは、前記合否判定の結果を前記合否判定表示部を通じて表示させることを特徴とする色検査合否判定方法。
【請求項7】
前記領域範囲指定ステップは、前記2次元グラフによる表示設定部において、XY平面、YZ平面、ZX平面の3つの平面のうちから表示設定に用いる1つの平面を選択し、当該選択した平面において2次元グラフを表示させ、当該選択した平面において表示されない次元を基準点の座標として設定した際の、可視色域境界を、当該選択した平面において表示される2次元グラフ上に所定の色を用いて表示させるとともに、当該選択した平面において表示されない次元を基準点の座標として設定した際の、各座標点を、その明るさと色によって、当該選択した平面において表示される2次元グラフ上に表示させることを特徴とする請求項6記載の色検査合否判定方法。
【請求項8】
前記領域範囲指定ステップは、前記2次元グラフによる表示設定部において、前記測色値取得ステップにより過去に取得された所定数分のXYZ値、または、前記測色値取得ステップにより同時に取得された所定数分のXYZ値を前記選択した平面における2次元グラフ上にプロット表示させることを特徴とする請求項7記載の色検査合否判定方法。
【請求項9】
前記領域範囲指定ステップは、前記2次元グラフによる表示設定部に表示される2次元グラフ上において所望の範囲を範囲指定枠で囲むことにより、前記領域範囲を指定することを特徴とする請求項6〜8何れか1項記載の色検査合否判定方法。
【請求項10】
前記数値による表示設定部は、前記指定を行うXYZの各値の基準値と、その領域範囲を数値入力可能とする入力ボックスが表示されており、前記領域範囲指定ステップは、前記入力ボックスを通じた操作によって、前記合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲を指定することを特徴とする請求項6〜9何れか1項記載の色検査合否判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査対象物(例えば、印刷物など)の色が基準範囲内にあるか否かの合否判定を行う色検査において、簡易に基準範囲の指定ができ、そして、その指定後の基準範囲が視認しやすく、また、合否判定の結果も視認しやすい色検査合否判定装置及び色検査合否判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体の色が基準範囲内にあるか否かの合否判定を行う色検査において、検査対象物に対して光源から光を照射し、それにより反射される光の測色値XYZを取得する構成の測色センサから入力されるXYZ値について、予め設定された合否判定基準を満たすかどうか判定するといった手法が採用されてきている。この時、XYZ表色系では、3次元の値で色を表現するため、合否判定基準をテキストで表示する(図8参照)場合は、直感的に判別しにくいという問題があった。
【0003】
また、数値表示のみの場合は、XYZ表色系には、可視色域外の領域が多く存在するため、指定した数値が、可視色域に含まれているか否かの判別が非常に難しいという問題もあった。そして、可視色域に含まれない領域を合格判定の領域範囲とすることには、意味が無いため、可能な限り、可視色域外の領域が含まれないよう合否判定の領域範囲を指定・設定することが望ましいとされる。
【0004】
例えば、特許文献1には、測色した色彩データが供給されるデータ処理部と、上記データ処理部に制御データを与える操作部と、上記データ処理部による処理結果を表示する画像表示部とを備え、上記データ処理部は、上記操作部による操作入力を受け付けて、色空間上のグラフとして上記色彩データを色差許容範囲とともに上記画像表示部に表示させるデータ処理を行うことを特徴とする測色データ処理装置が開示されており、この測色データ処理装置では、上記データ処理部は、上記操作部の操作による上記色差許容範囲の指定操作を受け付けて、上記色彩データを指定された色差許容範囲とともに色空間上のグラフとして上記画像表示部に表示させるデータ処理を行い、また、上記データ処理部は、上記色彩データが色差許容範囲内に有るか否かの判定処理を行うとしている。
【0005】
そして、この技術によれば、操作部により所望の表示色空間を指定して、その表示色空間上のグラフとして色彩データを色差許容範囲とともに画像表示部に表示させることができ、使用者が、上記画像表示部の表示内容に基づいて、上記色彩データが所望の表示色空間上において色差許容範囲内に有るか否かを簡単に判断することができるとともに、色のずれ方向も即座に判断することができるようになるとしている。
【0006】
さらに、操作部により所望の色差許容範囲を指定して、その色差許容範囲とともに色彩データを色空間上のグラフとして上記画像表示部に表示させることができ、使用者が、上記画像表示部の表示内容に基づいて、上記色彩データが所望の色差許容範囲内に有るか否かを簡単に判断することができ、また、測定した色彩データが色差許容範囲内に有るか否かの判定処理をデータ処理部により定量的に行うことができるとしている。
【0007】
また、特許文献2には、基準印刷物の所定の点の色と被検査印刷物の該所定の点の色とを測定する測定手段と、前記測定手段により測定された基準印刷物の色と被検査印刷物の色との差に応じて各印刷物の品質を判定する判断手段と、前記測定手段により得られたデータから各色の塗液濃度や塗液粘度の変動を検出する塗液変動検出手段と、前記測定手段により複数の所定の測定点から得られるデータから印刷物面内の部分的な濃度や色の変動を検出する色変動検出手段と、前記測定手段により基準印刷物の色に対し、印刷物全体の色の差と色の変動方向を判定する変動方向判定手段と、前記判定手段の判定結果を印刷物のロット毎に集計する集計手段とを具備することを特徴とする印刷物品質管理装置が開示されており、さらに、前記所定の測定点の位置が示された印刷物のイメージ表示と、各点の判定結果の明度差、色差、濃度等をグラフィック表示する表示手段を具備するとしている。そして、この技術によれば、未熟な若年者でも色の合否判断や、色の変動方向を認識することができるとある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−242757号公報
【特許文献2】特開平10−315436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に開示されている測色データ処理装置は、確かに、選択した表示色空間(RGB空間や、XYZ空間)上のグラフとして色彩データを指定した色差許容範囲とともに画像表示部に表示させることができるため、使用者にとって、色彩データが所望の色差許容範囲内に有るか否かを判断することはできるが、指定する色差許容範囲が、選択した表示色空間に2次元或いは3次元グラフにおいて示されるだけであるため、直感的な範囲指定が難しいとされている。
【0010】
また、例えば、XYZ空間上の2次元グラフを選択し、そのグラフ上に指定する色差許容範囲が表示されたとしても、キーボードやマウスにて、例えば、XYZ表示系における可視色域外の領域を指定してしまった場合には、合否判定に意味が無くなるため、再度指定しなくてはならなくなり、設定の効率上、更なる改良が必要とされてきていた。
【0011】
そして、上記特許文献2に開示されている印刷物品質管理装置は、確かに、測定点の位置が示された印刷物のイメージが表示されるとともに、各測色点の値と、基準値の色差が所定の許容範囲内であるかの判定結果がグラフィック表示されるが、使用者による許容範囲の指定ができず、当然ながら、直感的な範囲指定もできず、使い勝手が悪いとされている。
【0012】
本発明は、上述の課題を解決するためのもので、被検査対象物の色が基準範囲内にあるか否かの合否判定(色検査合否判定)を行う色検査において、簡易に基準範囲の指定を直感的に行うことができ、そして、その指定後の基準範囲が視認しやすく、また、合否判定の結果も視認しやすい色検査合否判定装置及び色検査合否判定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題に対応するため、本発明は、以下の技術的手段を講じている。
即ち、請求項1記載の発明は、色検査対象物に対して光を照射するとともに、当該色検査対象物から反射されてくる光のXYZ値を取得する測色センサと、前記色検査対象物の色検査において合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲の指定を行う領域範囲指定部と、前記領域範囲指定部により指定されたXYZ値の領域範囲を合否判定の基準に設定する領域範囲設定部と、前記測色センサが取得した前記色検査対象物から反射されてくる光の測色値が、前記領域範囲設定部において設定されたXYZ値の領域範囲にあるか否かの合否判定をする色検査合否判定部と、画面上に予め定められたGUIが表示される表示装置とを備え、前記GUIは、領域範囲表示設定部と、合否判定表示部を含む構成とされており、前記領域範囲表示設定部は、2次元グラフによる表示設定部と、数値による表示設定部とに区分けされ、前記領域範囲指定部は、前記2次元グラフによる表示設定部、または、前記数値による表示設定部の何れか一方の表示設定部を通じた操作によって、前記合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲を指定可能に構成されているとともに、当該領域範囲の指定がされた場合には、前記領域範囲設定部が、そのXYZ値の領域範囲を示すデータを前記操作した一方の表示設定部及び他方の表示設定部を通じて相互にリアルタイムで表示させ、さらに、前記色検査合否判定部は、前記合否判定の結果を前記合否判定表示部を通じて表示させることを特徴とする色検査合否判定装置である。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の色検査合否判定装置であって、前記2次元グラフによる表示設定部は、XY平面、YZ平面、ZX平面の3つの平面のうちから表示設定に用いる1つの平面を選択し、当該選択した平面において2次元グラフが表示できるよう構成され、当該選択した平面において表示されない次元を基準点の座標として設定した際の、可視色域境界を、当該選択した平面において表示される2次元グラフ上に所定の色を用いて表示するとともに、当該選択した平面において表示されない次元を基準点の座標として設定した際の、各座標点を、その明るさと色によって、当該選択した平面において表示される2次元グラフ上に表示することを特徴としている。
【0015】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項2記載の色検査合否判定装置であって、前記2次元グラフによる表示設定部は、前記測色センサにより過去に取得された所定数分のXYZ値、または、前記測色センサにより同時に取得された所定数分のXYZ値を前記選択した平面における2次元グラフ上にプロット表示可能に構成されていることを特徴としている。そして、請求項4記載の発明は、請求項1〜3何れか1項記載の色検査合否判定装置であって、前記2次元グラフによる表示設定部は、2次元グラフ上において所望の範囲を範囲指定枠で囲むことにより、前記領域範囲を指定可能に構成されていることを特徴としている。また、請求項5記載の発明は、請求項1〜4何れか1項記載の色検査合否判定装置であって、前記数値による表示設定部は、前記指定を行うXYZの各値の基準値と、その許容範囲を数値入力することで、前記領域範囲を指定可能とする入力ボックスが表示されていることを特徴としている。
【0016】
そして、請求項6記載の発明は、色検査対象物の色検査において合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲の指定を表示装置の画面上に表示される予め定められたGUIを通じて行う領域範囲指定ステップと、前記領域範囲指定ステップにより指定されたXYZ値の領域範囲を合否判定の基準に設定する領域範囲設定ステップと、前記色検査対象物に対して光を照射するとともに、当該色検査対象物から反射されてくる光のXYZ値を取得する測色値取得ステップと、前記測色値取得ステップにおいて取得した前記色検査対象物から反射されてくる光の測色値が、前記領域範囲設定ステップにおいて設定されたXYZ値の領域範囲にあるか否かの合否判定をする色検査合否判定ステップとを含み、前記領域範囲指定ステップは、領域範囲表示設定部と、合否判定表示部を含む構成のGUIを通じて領域範囲の指定を行うものであり、且つ、前記領域範囲表示設定部は、2次元グラフによる表示設定部と、数値による表示設定部とに区分けされるものを用い、前記2次元グラフによる表示設定部、または、数値による表示設定部の何れか一方の表示設定部を通じた操作によって、前記合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲を指定し、当該領域範囲の指定がされた場合には、そのXYZ値の領域範囲を示すデータが、前記操作した一方の表示設定部及び他方の表示設定部を通じて相互にリアルタイムで表示させ、さらに、前記色検査合否判定ステップは、前記合否判定の結果を前記合否判定表示部を通じて表示させることを特徴とする色検査合否判定方法である。
【0017】
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の色検査合否判定方法であって、前記領域範囲指定ステップは、前記2次元グラフによる表示設定部において、XY平面、YZ平面、ZX平面の3つの平面のうちから表示設定に用いる1つの平面を選択し、当該選択した平面において2次元グラフを表示させ、当該選択した平面において表示されない次元を基準点の座標として設定した際の、可視色域境界を、当該選択した平面において表示される2次元グラフ上に所定の色を用いて表示させるとともに、当該選択した平面において表示されない次元を基準点の座標として設定した際の、各座標点を、その明るさと色によって、当該選択した平面において表示される2次元グラフ上に表示させることを特徴としている。
【0018】
さらに、請求項8記載の発明は、請求項7記載の色検査合否判定方法であって、前記領域範囲指定ステップは、前記2次元グラフによる表示設定部において、前記測色値取得ステップにより過去に取得された所定数分のXYZ値、または、前記測色値取得ステップにより同時に取得された所定数分のXYZ値を前記選択した平面における2次元グラフ上にプロット表示させることを特徴としている。またさらに、請求項9記載の発明は、請求項6〜8何れか1項記載の色検査合否判定方法であって、前記領域範囲指定ステップは、前記2次元グラフによる表示設定部に表示される2次元グラフ上において所望の範囲を範囲指定枠で囲むことにより、前記領域範囲を指定することを特徴としている。そして、請求項10記載の発明は、請求項6〜9何れか1項記載の色検査合否判定方法であって、前記数値による表示設定部は、前記指定を行うXYZの各値の基準値と、その領域範囲を数値入力可能とする入力ボックスが表示されており、前記領域範囲指定ステップは、前記入力ボックスを通じた操作によって、前記合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲を指定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被検査対象物の色検査における合否判定基準を簡単に設定及び変更することができるとともに、設定した合否判定基準を2次元グラフによって直感的に確認することが可能である。また、XYZ表色系の値をGUI上にて図示することができることから、例えば、XYZ表色系から、Yxy表色系など、他の表色系への変換が不要となり、その結果、変換過程で生じるような計算誤差も無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る色検査合否判定装置の実施形態を示した構成概略図である。
図2】本発明に係る色検査合否判定装置の実施形態におけるGUIの構成を示した図である。
図3】本発明に係る色検査合否判定装置の実施形態における2次元グラフによる表示設定部を示したもので、(a)はXY平面、(b)はYZ平面、(c)はZX平面を表している。
図4】本発明に係る色検査合否判定方法の実施形態を示したフローである。
図5】本発明に係る色検査合否判定方法の実施形態における数値による領域範囲指定及び設定を示したフローである。
図6】本発明に係る色検査合否判定方法の実施形態における2次元グラフによる領域範囲指定及び設定を示したフローである。
図7】本発明に係る色検査合否判定方法の実施形態における合否判定を示したフローである。
図8】従来の合否判定基準設定画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る色検査合否判定装置及び色検査合否判定方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る色検査合否判定装置の実施形態を示した構成概略図で、図2は、本発明に係る色検査合否判定装置の実施形態におけるGUI(Graphical User Interface、以下同じ。)の構成を示した図で、図3は、本発明に係る色検査合否判定装置の実施形態における2次元グラフによる表示設定部を示したもので、(a)はXY平面、(b)はYZ平面、(c)はZX平面を表している。
【0022】
また、図4は、本発明に係る色検査合否判定方法の実施形態を示したフローで、図5は、本発明に係る色検査合否判定方法の実施形態における数値による領域範囲指定及び設定を示したフロー、図6は、本発明に係る色検査合否判定方法の実施形態における2次元グラフによる領域範囲指定及び設定を示したフロー、そして、図7は、本発明に係る色検査合否判定方法の実施形態における合否判定を示したフローである。
【0023】
また、符号については、10が色検査合否判定装置、12が測色センサ、14が領域範囲指定部、16が領域範囲設定部、18が色検査合否判定部、20がGUI、22が表示装置、24が領域範囲表示設定部、26が合否判定表示部、28が2次元グラフによる表示設定部、30が数値による表示設定部、32がラジオボタン、34がカーソル、36が基準点、38が測色値、40が合否境界(領域範囲)、42が入力ボックスを表している。
【0024】
本実施形態における色検査合否判定装置10は、図1に示すように、色検査対象物に対して光を照射するとともに、この色検査対象物から反射されてくる光のXYZ値を取得する測色センサ12と、色検査対象物の色検査において合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲の指定を行う領域範囲指定部14と、領域範囲指定部14により指定されたXYZ値の領域範囲を合否判定の基準に設定する領域範囲設定部16と、測色センサ12が取得した色検査対象物から反射されてくる光の測色値が、領域範囲設定部16において設定されたXYZ値の領域範囲にあるか否かの合否判定をする色検査合否判定部18と、画面上に予め定められたGUI20が表示される表示装置22とを備えている。
【0025】
ここで、測色センサ12は、本実施形態において、XYZ等色関数と等価な分光感度を持つ光電センサ、分光器及び分光器出力がXYZ等色関数となるように係数を乗じてXYZ値を出力する機構を持つ装置、そして、XYZ等色関数と等価な分光感度を持つ1次元又は2次元画像センサを含むものを用いるのが好ましい。また、測色センサ12、領域範囲指定部14、領域範囲設定部16、色検査合否判定部18、そして、GUI20を1つの装置として纏めるよう構成すれば、狭いスペースでも設置可能となり、また、ユーザーにとって扱いやすくなるという効果が生じる。
【0026】
また、本実施形態における色検査合否判定装置10は、図2に示すように、GUI20が、領域範囲表示設定部24と、合否判定表示部26を含む構成とされており、領域範囲表示設定部24は、2次元グラフによる表示設定部28と、数値による表示設定部30とに区分けされ、領域範囲指定部14は、2次元グラフによる表示設定部28、または、数値による表示設定部30の何れか一方の表示設定部を通じた操作によって、合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲(合否境界)を指定可能に構成されている。
【0027】
そして、領域範囲の指定がされた場合には、領域範囲設定部16が、そのXYZ値の領域範囲を示すデータを操作した一方の表示設定部及び他方の表示設定部を通じて相互にリアルタイムで表示させ、さらに、色検査合否判定部18は、合否判定の結果を合否判定表示部26を通じて表示させるよう構成されている。
【0028】
例えば、図2に示すように、ポインティングデバイスによって操作されるカーソル34で、2次元グラフによる表示設定部28において、合否境界(領域範囲)を枠で指定すれば、領域範囲設定部16により、そのデータから基準値及び許容範囲が計算され、それが、数値による表示設定部30を通じてリアルタイムに数値として反映表示さる。また、逆に、数値による表示設定部30において、基準値と合否境界(領域範囲)を数値によって指定すれば、領域範囲設定部16により、そのデータから基準点及び合否境界(領域範囲)が計算され、それが、2次元グラフによる表示設定部28を通じてリアルタイムに反映表示されるようになっている。
【0029】
なお、本実施形態では、カーソル34は、矢印や、十字線により表示し、ポインティングデバイスは、マウス、トラックパッド、上下左右方向に移動を指示するボタン、そして、上下左右方向に移動を指示するダイヤルといったもので構成するのが好ましい。また、本図では、数値による表示設定部30は、複数の入力ボックス42が並設されており、左の3つの入力ボックス42は、XYZそれぞれの基準値を数値で入力するもの、右の3つの入力ボックス42は、XYZそれぞれの領域範囲を数値で入力するものである。
【0030】
さらに、本実施形態においては、2次元グラフによる表示設定部28は、図2に示すように、ポインティングデバイスによって操作されるカーソル34を画面上に移動させて、XY平面、YZ平面、ZX平面の3つの平面のうちから表示設定に用いる1つの平面をラジオボタン32により選択し、その選択した平面において2次元グラフを表示させるよう構成されている。なお、本図においては、XY平面を選択している。
【0031】
そして、選択した平面において表示されない次元(本図においては、Zとなる。)を基準点の座標として設定した際の、可視色域境界を、選択した平面において表示される2次元グラフ上に所定の色を用いて表示するとともに、選択した平面において表示されない次元(本図においては、Zとなる。)を基準点の座標として設定した際の、各座標点を、その明るさと色によって、選択した平面において表示される2次元グラフ上に表示するようになっている。
【0032】
なお、図中、可視色域境界の内側は、各座標点を、明るさと色によるグラデーションで表現されており、可視色域境界の外側、即ち、可視色域外は、斜線にて表現されている。また、基準点36は、黒丸にて、測色値38は、白丸にて表現されている。ここで、白丸で表現されている測色値38は、図中に2つプロットされているが、これは、メモリー(図示せず)に記録させておいた過去の測色値を所定数分(本図では、2回分)表示させているものである。また、例えば、被色検査対象物において複数の検査領域を設定した場合、それぞれの検査領域で、同時に取得した複数の測色値38を白丸にて所定数分プロットさせるように構成しても良い。さらに、合否境界(領域範囲)40は、四角の枠にて囲まれた範囲で表現されている。
【0033】
続いて、本実施形態において、合否判定基準は、基準点及び合否境界(領域範囲)、または、合否境界(領域範囲)のみで構成されている。つまり、XYZの3次元のうち、少なくとも1次元以上の数値について、基準値と、基準値について加減される許容範囲(領域範囲)とからなる2つの指標としている。また、合否判定において、合格とする範囲(合格範囲)の上限と下限とからなる2つの指標で表されるものとしても良い。なお、この場合、合格範囲の上限は、基準値+許容範囲に等しく、合格範囲の下限は、基準値−許容範囲に等しい。
【0034】
次に、本実施形態においては、XYZ表色系において色検査を行うときの合否判定の基準を、図2に示す数値による表示設定部30にて直接数値を入力して設定するだけでなく、GUI20に示す2次元グラフ上で、ポインティングデバイスによって操作されるカーソル34によっても設定することができる。また、2次元グラフは、図2及び3に示すように、XY平面、YZ平面、ZX平面の3種類の平面を切り換えて表示できるものとしている。
【0035】
さらに、2次元グラフは、図2、3に示すように、可視色域内外の座標が判別できるように、表示されていない次元が、基準点の座標をとるときの可視色域境界を所定の色で描画し、可視色域外の座標点を可視色域外を示す色でプロットする(図では、斜線にて表現)。つまり、XY平面が選択されている場合には、Zの次元が、基準点の座標をとるときの可視色域境界を所定の色で描画し、可視色域外の座標点については、可視色域外を示す色でプロットさせるわけである。
【0036】
また、2次元グラフは、図2、3に示すように、可視色域内の明るさや色が視覚的に判別できるように、表示されていない次元が、基準点の座標をとるときの、各座標点における明るさと色を用いて、2次元グラフ上にプロットする。つまり、XY平面が選択されている場合には、Zの次元が、基準点の座標をとるときの各座標点における明るさと色を用いて、2次元グラフ上に隙間無くプロットする(塗りつぶす)わけである。
【0037】
さらに、領域範囲設定部16は、領域範囲指定部14により領域範囲を数値による表示設定部30を通じて数値によって指定した場合、そのデータから基準点及び合否境界(領域範囲)を計算し、2次元グラフによる表示設定部28に表示中の2次元グラフに表示する(図5参照)。また、領域範囲指定部14により領域範囲を2次元グラフによる表示設定部28に表示されている2次元グラフを通じて指定した場合は、基準値及び許容範囲(領域範囲)を計算し、数値による表示設定部30に数値として表示するように構成されている(図6参照)。
【0038】
続いて、本発明に係る色検査合否判定方法の実施形態について説明する。本実施形態における色検査合否判定方法は、図4に示すように、まず、色検査対象物の色検査において合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲の指定を表示装置の画面上に表示される予め定められたGUIを通じて行う領域範囲指定ステップ(S1)と、領域範囲指定ステップ(S1)により指定されたXYZ値の領域範囲を合否判定の基準に設定する領域範囲設定ステップ(S2)と、色検査対象物に対して光を照射するとともに、その色検査対象物から反射されてくる光のXYZ値を取得する測色値取得ステップ(S3)と、測色値取得ステップ(S3)において取得した色検査対象物から反射されてくる光の測色値が、領域範囲設定ステップ(S2)において設定されたXYZ値の領域範囲にあるか否かの合否判定をする色検査合否判定ステップ(S4)とを含むものである。
【0039】
そして、領域範囲指定ステップ(S1)は、領域範囲表示設定部と、合否判定表示部を含む構成のGUIを通じて領域範囲の指定を行うものであり、且つ、領域範囲表示部は、2次元グラフによる表示設定部と、数値による表示設定部とに区分けされるものを用い、2次元グラフによる表示設定部、または、数値による表示設定部の何れか一方の表示設定部を通じた操作によって、合否判定の基準とするXYZ値の領域範囲を指定し、指定された場合には、そのXYZ値の領域範囲を示すデータが、操作した一方の表示設定部及び他方の表示設定部を通じて相互にリアルタイムで表示させる流れとなっている(S2−1)。さらに、色検査合否判定ステップ(S4)は、合否判定の結果を合否判定表示部を通じて表示させる(S5)ようにもなっている。
【0040】
続いて、上記の領域範囲指定ステップ(S1)は、例えば、図2に示すように、ポインティングデバイスによって操作されるカーソル34で、2次元グラフによる表示設定部28において、領域範囲を枠で指定すれば、領域範囲設定ステップ(S2)において、図6に示すように、基準点が設定されていなければ、そのデータから基準値及び許容範囲が計算され、また、基準点が設定されていれば、そのデータから許容範囲のみが計算され、それが、数値による表示設定部30を通じてリアルタイムに数値として反映表示させることができるようになっている(S2−1)。
【0041】
逆に、数値による表示設定部30において、領域範囲を数値によって指定すれば、領域範囲設定ステップ(S2)において、図5に示すように、そのデータから基準点及び合否境界が計算され、それが、2次元グラフによる表示設定部28を通じてリアルタイムに領域範囲が枠で反映表示させることができるようになっている(S2−1)。
【0042】
なお、本実施形態において、図2に示される各表示設定部(28、30)の構成については、前述の色検査合否判定装置の実施形態において説明したものと同一のものとしている。
【0043】
続いて、領域範囲設定ステップ(S2)は、領域範囲指定ステップ(S1)において領域範囲を数値による表示設定部30を通じて数値によって設定した場合、領域範囲設定ステップ(S2)において、基準点及び合否境界を計算し、2次元グラフによる表示設定部28に表示中の2次元グラフに表示させる。つまり、図5に示すように、まず、基準点を計算し、続いて、合否境界である領域範囲を計算し、その結果を2次元グラフに表示させるという流れである。
【0044】
また、領域範囲指定ステップ(S1)により領域範囲を2次元グラフによる表示設定部28に表示されている2次元グラフを通じて設定した場合は、領域範囲設定ステップ(S2)において、基準値及び許容範囲を計算し、数値による表示設定部30に数値として表示させるように構成されている。
【0045】
詳しくは、図6に示すように、まず、基準点が設定されているか否かの判定が行われ、基準点が設定されていれば、許容範囲のみを計算し、基準点が設定されていなければ、基準値と許容範囲が計算され、その結果を数値として表示させるという流れである。
【0046】
続いて、測色値取得ステップ(S3)において、色検査対象物に対して光を照射するとともに、その色検査対象物から反射されてくる光のXYZ値を取得していく。そして、色検査合否判定ステップ(S4)において、測色値取得ステップ(S3)で取得し、入力されてくるXYZ値が、領域範囲設定ステップ(S2)において設定された領域範囲にあるか否か、つまり、合否判定の基準内にあるか否かの判定を行う。
【0047】
詳しくは、図7に示すように、まず、判定対象の入力されてきた値が残っているか否かをチェックし(判定待ちがあるか否かをチェック)、残っていない場合には、全て「合格」となったとし、残っている場合には、その入力されてきた残りの値が、合否判定の基準内にあるか否かを判定する。合否判定の基準外であれば、残りの入力されてきた値の有無にかかわらず、「不合格」となったとし、また、合否判定の基準内であれば、1つ前のステップへと戻る。
【0048】
1つ前のステップに戻った場合には、判定対象の入力されてきた値が残っているか否かをチェックし、残っていない場合には、全て「合格」となったとし、残っている場合には、再度、その入力されてきた値が、合否判定の基準内にあるか否かを判定する。そして、最終ステップ(S5)では、これらのステップ(S4)で判定された、「合格」または「不合格」を合否判定表示部26を通じて表示させる(S5)ようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る色検査合否判定装置及び色検査合否判定方法は、被検査対象物の色検査における合否判定基準を簡単に設定及び変更することができるとともに、設定した合否判定基準を2次元グラフによって直感的に確認することができるため、色検査技術における熟練度等に左右されずに用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
10 色検査合否判定装置
12 測色センサ
14 領域範囲指定部
16 領域範囲設定部
18 色検査合否判定部
20 GUI
22 表示装置
24 領域範囲表示設定部
26 合否判定表示部
28 2次元グラフによる表示設定部
30 数値による表示設定部
32 ラジオボタン
34 カーソル
36 基準点
38 測色値
40 合否境界
42 入力ボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8