(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。なお、本発明において「〜」と表記するときは、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を指す。また、「・・・」と表記するときは、・・・を指して言う。
【0012】
<ホワイトボードシステム>
本発明に係るホワイトボード用シートは筆記面に特定サイズの開孔(表面開孔)を有し、本発明に係るホワイトボード用インクは特定サイズの色材を含む。そして、前記表面開孔の短径が前記色材の体積平均粒子径より有意に小さい。
これによりシートの筆記面にインクの色材が入り込むことなく迅速に乾燥するためインクがにじまず、消去性が良好となる。
本発明は、上記ホワイトボード用シートとインクとを有するホワイトボードシステムにも関する。
【0013】
<シート>
(開孔径)
図1に示すように、ホワイトボードシステムを構成するシートはその筆記面を含む層に空孔2を有し、走査型電子顕微鏡観察像画像解析による該空孔の表面開孔1の短径aが0.05〜0.9μmである。表面開孔の短径は0.1〜0.8μmが好ましく、0.15〜0.7μmがより好ましい。これによりインクのにじみが少なく、短時間で乾燥し、かつ色材3が表面開孔1に入り込みにくくなることによってインクの消去が容易となる。
表面開孔の短径が上記範囲より小さいとインク中の分散媒が浸透せず、インク中の色材粒子と分散媒の層分離が行われにくい。このため、インクの滲み、インクの乾燥遅延が生じやすい。また、インク中の分散媒がシートに長時間接触していると色材が定着しやすくなると推定され、そのため乾燥後にインクを消去する際に消去不良が発生しやすい。一方、表面開孔の短径が上記範囲より大きいとインク分散媒のみならずインク中の色材が表面開孔内に埋没し、乾燥後にインクの消去不良が発生しやすくなる。
表面開孔の長径bは1〜20μmが好ましい。表面開孔の長径が上記範囲内にあると、インク中の溶剤が表面開孔中に浸透しやすくなり、溶剤と色材とがすみやかに分離される。加えて色材が表面開孔に入り込みにくくなる。これによりインクの消去が容易となることから好ましい。
【0014】
筆記面を含む層に空孔を形成する手段としては、無機微細粉末、有機フィラー、結晶核剤によって生じた樹脂結晶等を含む熱可塑性樹脂フィルムを延伸する方法;物理発泡剤または化学発泡剤を含む熱可塑性樹脂を使用してフィルム成形と同時にまたはフィルム成形の後で発泡させる方法;熱硬化性樹脂組成物、紫外線硬化性樹脂組成物、電子線硬化性樹脂組成物等を塗布し、それら組成物が半硬化または未硬化の状態でエンボス賦形する方法等が挙げられる。また、空孔の表面開孔の短径aを上記範囲に制御する方法としては無機微細粉末、有機フィラー等の体積平均粒子径を制御する方法;樹脂結晶のサイズを制御する方法;フィルムの延伸軸数、延伸倍率および延伸温度を制御する方法;エンボスの形状及びサイズを制御する方法等が挙げられる。詳しくは後述する。
また、表面開孔の短径aおよび長径bが上記範囲の関係にある表面を形成するには、表面開孔を設ける層を、無機微細粉末を含む1軸延伸層として設計することが好ましい。
【0015】
表面開孔のサイズは走査型電子顕微鏡観察像画像解析により特定される。具体的には、例えば、筆記面を観察面として観察試料台に貼り付け、その観察面に金を蒸着して、走査型電子顕微鏡(装置名:SM−200、TOPCON(株)製)を使用して観察しやすい任意の倍率(500〜3000倍)にて筆記面を観察する。観察領域を画像データとして取り込み、その画像を画像解析装置(装置名:ルーゼックスAP、ニレコ(株)製)で画像処理を行い、開孔径(長径及び短径)を測定する。
【0016】
(面積開孔率)
シートは、筆記面全体の表面積に対する表面開孔面積の割合であらわされる面積開孔率が2〜12%であることが好ましく、4〜10%がより好ましく、6〜8%がさらに好ましい。これにより、シートの機械的強度を確保しつつ、インクの迅速な乾燥が可能になる。面積開孔率は走査型電子顕微鏡と画像処理装置を組み合わせて測定して求める。
面積開孔率が上記範囲より小さいとインクの迅速な乾燥が達成できず、インクが滲んだり、色材がシートに定着したりしやすくなる。一方、面積開孔率が上記範囲より大きいとシートの筆記面強度が低下して筆記面のへこみや剥離等が生じたり、インクの色材が表面開孔内に埋没したりしやすい。
【0017】
(ボイド率)
ホワイトボード用シートのボイド率はシートの断面を電子顕微鏡観察し、観察像を画像解析して空孔が占める面積割合で求める。
シートのボイド率は30〜60%が好ましく、35〜50%がより好ましい。これによりシートの軽量化、シートの機械的強度確保、シートの白色度向上、インクの乾燥時間短縮の効果が得られる。
ボイド率が上記範囲より小さいとシートの白色度が低下して、情報視認性が低下する傾向がある。
シートのボイド率が上記範囲より大きいと、シートの機械強度不足による筆記時のへこみや表面の破れが発生しやすくなる。また、自立性が不足してシート設置時に手前に垂れ下がる(いわゆるおじぎをする)ため設置が難しくなることがある。
また、シートが多層構造の場合、筆記面を有する最外層のボイド率は15〜50%が好ましく、25〜40%がより好ましい。これによりインクの分散媒を迅速に吸収し、インク中の分散媒と色材とを分離しやすくすることができる。
【0018】
(表面張力)
シートの筆記面の表面張力は30〜100mN/mが好ましく、45〜80mN/mがより好ましい。表面張力はJIS K 6768:1999 プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法に準拠し、市販のぬれ張力試験用混合液を用いて求める。表面張力が上記範囲より小さいと、筆記の際にインクがにじみやすくなる傾向がある。表面張力が上記範囲より大きいと、筆記の際にインクがはじきやすくなる傾向がある。
シートの表面張力を上記範囲に調整するためには、オゾン酸化、コロナ放電、プラズマ処理、コーティング等の方法を適宜組み合わせて適用することができる。
【0019】
(密度)
シートの密度は0.78〜0.92g/cm
3が好ましく、0.80〜0.88g/cm
3がより好ましい。シートの密度はJIS K 7112:1999 プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法のB法(ピクノメーター法)に準拠して求める。
密度が上記範囲より小さいと筆記時のへこみや表面の破れが発生しやすくなり、繰り返し使用に耐えられなくなる傾向がある。
密度が上記範囲より大きいとインク中の分散媒の浸透分離が不十分となり、インクの乾燥遅延や乾燥後にインクを消去する際に消去不良が発生しやすくなる傾向がある。
【0020】
(厚さ)
シートの厚さは60〜350μmが好ましく、100〜300μmがより好ましい。ここで、シートの厚さはJIS K 7130:1999 プラスチック−フィルム及びシート−厚さ測定方法のA法に準拠して測定する。
厚さが上記範囲より小さいと強度不足による破れが発生したり、シートの剛度が低下してホワイトボード用シート設置時に手前に垂れ下がる(いわゆるおじぎをする)ため設置が難しくなったりすることがある。
厚さが上記範囲より大きいとシートが使用時にかさばったり、シート重量が増加して設置が困難になったりすることがある。
また、シートが多層構造の場合、筆記面側の最外層の厚さは18〜30μmが好ましく、23〜28μmがより好ましい。ここで、シート各層の厚さは、シートの断面を走査型電子顕微鏡で観察し、観察像から各層の厚さの比率を求め、これに上記のシート厚さを掛けることによって求める。筆記面側の最外層の厚さが上記範囲より小さいと、インク中の分散媒の浸透分離が不十分となり、インクの乾燥遅延や乾燥後にインクを消去する際に消去不良が発生しやすくなることがある。筆記面側の最外層の厚さが上記範囲より大きいと、シートの機械強度不足による筆記時のへこみや表面の破れが発生しやすくなることがある。
【0021】
(熱可塑性樹脂)
シートに用いられる熱可塑性樹脂は、成形性および経済性の観点から、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドのいずれかを用いることが好ましい。
中でもより長期の繰り返し使用を想定した場合、耐候性や、インクの消去不良発生を防止する観点からポリオレフィンがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の結晶性エチレン系樹脂、結晶性プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン、エチレン−環状オレフィン共重合体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、耐溶剤性および耐薬品性の観点から、結晶性プロピレン系樹脂が好ましい。結晶性プロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体がより好ましい。また、主成分となるプロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとの共重合体を使用することもできる。共重合体は、モノマー成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
また、結晶性プロピレン系樹脂はその主成分となるプロピレンを90mol%以上含むことが好ましい。
上記の結晶性プロピレン系樹脂を使用することによって、インクに含まれる有機溶剤成分がシートの筆記面に浸透することによってインクの色材が定着することを抑制する効果がある。
以下、無機微細粉末と延伸とを組み合わせて表面開孔を形成する場合について、シートに含まれる熱可塑性樹脂の含有量を述べる。無機微細粉末を使用せずに表面開孔を形成する場合は熱可塑性樹脂のみでシートを成形してもよい。
シートに含まれる熱可塑性樹脂フィルム全体の質量に対する上記熱可塑性樹脂の含有量は、25質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、45質量%以上がさらに好ましい。また、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲より少ないと、フィルムの成形性が低下したり、得られたフィルムの機械的強度が低下したりしやすくなる。一方、熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲を超えるとシートの白色度の低下やシートの重量増加になりやすい。
シートが多層構造の場合、筆記面側の最外層の質量に対する上記熱可塑性樹脂の含有量は、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。また、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、65質量%以下がさらに好ましい。これによりインクの溶剤を迅速に吸収することが容易になる。熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲より少ないと、筆記時のへこみや表面の破れが発生しやすくなることがある。また、熱可塑性樹脂の含有量が上記範囲より多いと、インクの乾燥速度が低下し、インクのにじみやインクの消去性低下を起こすことがある。
【0022】
(無機微細粉末)
シートには無機微細粉末を使用できる。以下、無機微細粉末と延伸とを組み合わせて筆記面に表面開孔を形成する場合について述べる。後述の通り無機微細粉末を使用せずに表面開孔を形成してもよい。
無機微細粉末の具体例としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、シリカ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素などの微細粉末、同微細粉末の核の周囲にアルミニウム酸化物ないしは水酸化物を有する複合微細粉末、中空ガラスビーズ等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムは、多くの種類の市販品があり、その平均粒子径や粒度分布が所望のものを得やすいためにより好ましい。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
無機微細粉末は、表面に疎水化処理を行ったものを用いることができ、また、それ自体が疎水性である微細粉末をそのまま用いることもできる。疎水化処理は、無機微細粉末の表面を表面処理剤(疎水化剤)で処理することにより行うことができる。疎水化処理を受けた微細粉末は、その表面に有する疎水化剤によって疎水性が付与される。無機微細粉末は、表面に疎水化処理を行ったものを単独で用いてもよく、表面に疎水化処理を行っていないものと表面に疎水化処理を行ったものとを組み合わせて用いてもよい。
上記表面処理剤としては、脂肪酸、脂環族カルボン酸、芳香族カルボン酸、樹脂酸等の有機カルボン酸、及びそれらの塩、アミド、または炭素数1〜6のアルコールとのエステル;ポリ(メタ)アクリル酸;シランカップリング剤等が挙げられる。表面処理において上記表面処理剤の1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
表面処理剤の含有量は、無機微細粉末の総量に対して、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、0.15質量%以上であることがさらに好ましい。一方、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
シートに含まれる無機微細粉末の平均粒子径は、0.05μm以上であることが好ましく、0.07μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることがさらに好ましい。一方、10μm以下であることが好ましく、6μm以下であることが好ましく、3μm以下であることがより好ましい。これにより、熱可塑性樹脂フィルムに求められる白色度、開孔径、開孔面積率、ボイド率等の物性を満たすことができる。ここで、無機微細粉末の平均粒子径および粒度分布はレーザー回折法で測定して得られた体積平均粒子径を指す。
シートが多層構造の場合、筆記面側の最外層に含まれる無機微細粉末の平均粒子径は、0.9μm以下であることが好ましく、0.8μm以下であることがより好ましく、0.7μm以下であることがさらに好ましい。これによりインクの消去性が向上する。無機微細粉末の平均粒子径が上記範囲より大きいと開孔径が大きくなり、インクの色材粒子が開孔内に入り込みやすくなる。
シートが多層構造の場合、筆記面側の最外層以外の層に含まれる無機微細粉末の平均粒子径は、0.95μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、1.2μm以上であることがさらに好ましい。これにより、熱可塑性樹脂フィルム中に空孔が効率よく形成される傾向にある。無機微細粉末の平均粒子径が上記範囲より小さいとボイド率が低下し、白色度が低下したり密度が高くなったりすることがある。
【0025】
シートに含まれる熱可塑性樹脂フィルム全体の質量に対する上記無機微細粉末の含有量は、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。また、75質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましく、55質量%以下がさらに好ましい。これにより熱可塑性樹脂フィルムに求められる白色度、開孔径、開孔面積率、ボイド率等の物性を満たすことができる。
シートが多層構造の場合、筆記面側の最外層の質量に対する上記熱可塑性樹脂の含有量は、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。これにより筆記面側の最外層にインクの色材粒子の平均粒子径より微細な開孔を形成することができる。無機微細粉末の含有量が上記範囲より少ないとインクの乾燥性が低下することがある。
シートが多層構造の場合、筆記面側の最外層以外の層の質量に対する上記熱可塑性樹脂の含有量は、65質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、45質量%以下がさらに好ましい。無機微細粉末の含有量が上記範囲より多いと筆記時のへこみや表面の破れが発生しやすくなることがある。
【0026】
(各種添加剤)
シートには必要に応じて分散剤、熱安定剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、核剤、滑剤、着色剤等の公知の添加剤を配合してもよい。これらの添加剤は、フィルムの総量100質量%に対して、0.01〜3質量%の割合で配合するのが好ましい。
たとえば、シートに白色度を付与するために無機微細粉末を配合することもできる。この場合は、無機微細粉末として屈折率が高い酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛を使用することが好ましい。また、平均粒子径が0.01〜0.5μmの上記無機微細粉末を使用することが好ましい。
【0027】
(シートの成形)
ホワイトボード用シートの成形には、前述の筆記面の表面の開孔径、面積開孔率、ボイド率、表面張力、密度を実現さえすれば特に限定されず、一般的なシートの成形方法が用いられる。
中でも押出成形と延伸成形との組み合わせ、物理発泡を伴う押出成形、化学発泡を伴う成形などを使用した熱可塑性樹脂フィルムの成形が好ましい。
更に表面張力を制御するために一般的なフィルムに使用される各種表面処理を用いることもできる。
【0028】
(押出成形)
押出成形に際し、まず、熱可塑性樹脂組成物を調製する。具体的には、熱可塑性樹脂及び必要に応じ無機微細粉末、各種添加剤を溶融混練することにより調製することができる。得られた熱可塑性樹脂組成物をそのまま次工程に送ってもよく、いったん冷却しペレット等の形状にしたのち、押出機で加熱して溶融状態にしてから次工程に送ってもよい。
続いて溶融状態の熱可塑性樹脂組成物をシート状に押し出して冷却することにより基材フィルムを製造できる。ここでは前工程から送られた溶融状態の樹脂組成物をTダイ、Iダイなどからシート状に押し出す方法、円形ダイからチューブ状に押し出す方法が挙げられる。さらにTダイ内で複数の樹脂組成物を積層することにより筆記面となる層とそれ以外の層を含む積層基材フィルムを得てもよい。押し出したフィルムに他の層をラミネート等により積層して積層基材フィルムを得てもよい。
【0029】
(延伸成形)
基材フィルムを一軸もしくは二軸延伸してもよい。筆記面となる層が熱可塑性樹脂と無機微細フィラーを含む場合は、延伸されていることが好ましい。延伸方法としては、以下の公知の縦1軸延伸、横1軸延伸、逐次2軸延伸、同時2軸延伸等から適宜選択することができる。
1軸延伸としては、樹脂シートの搬送方向にロール群の周速差を利用して延伸するロール間延伸(縦延伸)、樹脂シートの搬送方向に直交する方向(幅方向)にテンターオーブンを利用して延伸するクリップ延伸(横延伸)、チューブラー法を利用したインフレ成形法などを挙げることができる。
2軸延伸としては、上記の縦延伸法と、上記の横延伸法を組み合わせて利用した逐次2軸延伸を挙げることができる。また、樹脂シートの搬送方向の延伸と、樹脂シートの搬送方向に直交する方向の延伸を同時に行う同時2軸延伸を挙げることができる。より具体的には、テンターオーブンとパンタグラフの組合せ、テンターオーブンとリニアモーターの組合せによる同時2軸延伸方法などを挙げることができる。また、インフレーションフィルムの延伸方法であるチューブラー法による同時2軸延伸方法を挙げることができる。
【0030】
さらに積層基材フィルムを延伸するときには、各層の延伸方法がすべて同じであっても、各層の延伸方法が異なっていてもよい。各層の延伸方法が異なる場合、各層の延伸方法は上記の延伸方法から適宜選択すればよい。これらの中でも、逐次2軸延伸、同時2軸延伸が好ましく、逐次2軸延伸がより好ましい。
【0031】
延伸多孔性フィルムの延伸倍率は、特に制限されず、用いる延伸多孔性フィルムの特性等を考慮して、適宜決定すればよい。縦1軸延伸の延伸倍率は通常3〜11倍の範囲であり、4〜10倍であることが好ましく、5〜7倍であることがより好ましい。横1軸延伸の延伸倍率は通常4〜11倍の範囲であり、4〜10倍であることが好ましく、5〜9倍であることがより好ましい。逐次2軸延伸、同時2軸延伸の延伸倍率は10〜90倍の範囲であり、15〜60倍であることが好ましく、30〜60倍であることがより好ましい。上記の範囲とすることで、延伸ムラを抑制し均一な膜厚となるような安定した延伸成形ができ、また、シートの筆記面に所望の表面開孔を有する空孔が得られ易い傾向にある。
なお、筆記面となる層については開孔径の短径を規定範囲内にする観点から、延伸倍率が3〜9倍の横1軸延伸または延伸倍率が3〜9倍の横1軸延伸を採用することが好ましい。また、筆記面以外の層については白色度向上及び軽量化の観点から、面積延伸倍率が20〜70倍の2軸延伸を採用することが好ましい。
延伸温度、延伸速度、延伸後の熱処理等の各種条件は通常の熱可塑性樹脂フィルムの製造技術を適宜利用することができる。
【0032】
(物理発泡を伴う成形)
ホワイトボード用シートの成形において、ガスを注入しながらの押出成形、具体的にはガスを含む熱可塑性樹脂組成物を押出ノズルから吐出後、減圧により膨張し、均質な分布の空孔を形成する方法を採用することができる。ここでは、「ガス」というときは100kPa(1気圧)、押出しノズルからの吐出温度で気体状態である物質を指し、「気体」というときは物質の三態における気体状態を指す。
前記ガスとしては、プロパン、n−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、ヘキサン等の低級脂肪族炭化水素;シクロブタン、シクロペンタン等の脂環式炭化水素化合物;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;メタノール、エタノール等アルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;クロロメチル、クロロエチル、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン等の低沸点ハロゲン化炭化水素化合物;アルゴン、ヘリウム、フロン、二酸化炭素(炭酸ガス)、窒素等が挙げられる。これらの中でも安価で危険性が少ない観点から、二酸化炭素または窒素が好ましく、超臨界流体として押出機に投入される観点から、二酸化炭素が特に好ましい。
【0033】
熱可塑性樹脂組成物にガスを含ませる方法としては、押出機内の熱可塑性樹脂組成物にガスを注入する方法が挙げられる。注入時のガスの圧力は3.5〜7.5MPaが好ましく、4〜6MPaがさらに好ましい。また、注入時のガスの状態は気体状態でもよいが、液体状態、亜臨界状態または超臨界状態であってもよい。なかでも注入時の気体の状態が超臨界状態であることが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂組成物中にガスが溶解することによって成形後の樹脂フィルム内で微細な空孔を均質に形成することができる。
【0034】
ガスを注入しながらの押出成形をする場合は、多層構成の熱可塑性樹脂フィルムとして、筆記面となる層に空孔を形成し、表面開孔を設けると同時に、多層構成のうち最外層でない少なくとも1層にはガスを含まない層を設けることが機械強度の観点から好ましい。
【0035】
好ましい一態様によれば、3つの押出機と3層積層ダイを使用し、第1の押出機と第3の押出機にはガスを注入し、第2の押出機にはガスを注入せず、三層積層ダイの中で第1の押出機の吐出物/第2の押出機の吐出物/第3の押出機の吐出物となるように積層し、共押出しすることによって、2つの表面層に空孔を有し、コア層に空孔を有しない3層積層フィルムを得ることができる。
押出し成形したフィルムをさらに延伸することもできる。ここで、筆記面に表面開孔の短径が0.05〜0.9μmの空孔を有する観点から、延伸は縦1軸延伸または横1軸延伸であることが好ましい。延伸倍率は1.5〜8倍が好ましく、2〜6倍がより好ましい。
また、押出し成形したフィルムまたは延伸後のフィルムの表面を熱処理することにより面積開孔率を増加させることができる。熱処理温度は熱可塑性樹脂フィルムの融点をTm(℃)としたときに、Tm−20〜Tm+10℃の範囲で行なうことが好ましい。また熱処理時間は1〜30秒が好ましく、3〜15秒がより好ましい。
【0036】
発泡倍率は1.2〜2.5倍が好ましく、1.3〜2.0倍程度がより好ましい。発泡倍率の制御は、熱可塑性樹脂のメルトフローレート(MFR)および溶融張力、熱可塑性樹脂の単位体積当たりのガス注入量、注入時のガス圧力、ノズルからの吐出速度および吐出時の樹脂温度等で行なうことができる。また、前述のとおり延伸を行うことによって、みかけの発泡倍率を増加させることができる。
ガスを注入した押出し成型により、ホワイトボード用シートの外層には、体積1mm
3当たり2500〜40000個の空孔を有することが好ましく、8000〜35000個の空孔を有することがより好ましい。これにより、面積開孔率を上記範囲に設定することができる。
【0037】
(化学発泡を伴う成形)
ホワイトボード用シートの成形において、加熱によりガスを発生させる発泡剤を含む熱可塑性樹脂組成物を押出ノズルから吐出後、加熱膨張させ、均質な分布の空孔を形成する方法を採用することができる。
発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;ヒドラゾカルボンアミド等のヒドラジン化合物;p−トルエンスルホニルヒドラジド、p,p’−オキシ−ビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等のヒドラジド化合物;炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム等の炭酸塩化合物等が挙げられる。
発泡剤の添加量は、樹脂原料100質量部に対し、2〜4質量部が好ましい。熱可塑性樹脂組成物に発泡剤を添加する方法としては、熱可塑性樹脂と添加剤の混合時に発泡剤を添加する方法、熱可塑性樹脂と添加剤とを混合して得た熱可塑性樹脂組成物に発泡剤を添加する方法等が挙げられる。また、混合にはミキシングロール、バンバリーミキサー、ヘンシェル、タンブラー、リボンブレンダー等の混合機にて混合する方法等が挙げられる。
発泡は溶融押出成膜時にガスを発生させて得ることが好ましい。そのため、溶融押出し温度が発泡開始温度の範囲の上限が溶融押出し温度となるような熱可塑性樹脂の溶融押出し温度と発泡剤との組み合わせを採用することが好ましい。溶融押出し温度が発泡開始温度の範囲の下限より低い場合、発泡が不十分となり、未発泡の発泡剤が異物になることがある。また、溶融押出し温度が発泡開始温度の範囲の上限より高い場合、発泡は完全に進行するが樹脂焼け等による異物が発生しやすくなる。
多化学発泡を伴う熱可塑性樹脂フィルムの成形の場合、層構成、延伸、熱処理等は上記のガスを注入しながらの押出成形の項を参照にすることができる。
【0038】
(ハードコート面)
本発明のホワイトボード用シートの筆記面は、フィルム表面の開孔によらず、従来のホワイトボード用表面の素材を使用し、表面開孔の短径が0.05〜0.9μmの空孔を筆記面に有するように構成することもできる。
筆記面の材料としては、硬化性樹脂組成物を挙げることができる。硬化性樹脂組成物としては、メラミン架橋、エポキシ架橋、加水分解性ケイ素基の加水分解縮合反応等の架橋硬化反応性を有する熱硬化性樹脂組成物;γ線、電子線、紫外線、可視光線等のエネルギー線の照射によるラジカル重合、アニオン重合等の架橋硬化反応性を有するエネルギー線硬化性樹脂組成物等が挙げられる。
基材の材料としては、熱可塑性樹脂フィルム、金属板、樹脂被覆金属板、樹脂被覆紙等が挙げられる。熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン及びその共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等の含ハロゲンビニル重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド;ポリカーボネート;ポリスチレン;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂;アクリロニトリル−エチレン及び/またはプロピレン−スチレン共重合樹脂;セルロースアセテート等が挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレア樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。樹脂被覆金属板及び樹脂被覆紙には、上記熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂からなる群より選択される1種を単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
【0039】
ホワイトボード用シートの筆記面に表面開孔の短径が0.05〜0.9μmの空孔を設ける手段としては、上記の基材の少なくとも片面に、エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布し、必要に応じて乾燥して、未硬化又は半硬化状態の当該硬化性樹脂組成物皮膜を形成し、次いで、該皮膜の表面にエンボス加工を行って凹凸構造を形成し、その後、当該硬化性樹脂組成物を硬化させることが好ましい。この様にして表面に特定サイズの空孔を有するハードコート面を形成することができる。このような工程でエンボス加工を行うことによって、エンボス版の凹凸構造を乾燥皮膜に精度よく転写でき、凹凸構造のサイズを制御しやすい。加えて硬化樹脂層における欠陥の発生を低減するこができ、筆記面における筆記性及び消去性を向上できる。
かくして得られた筆記面の凹凸構造のJIS B0601:2013による算術平均粗さRaが0.1〜5.0μmであり、隣接凸部間の平均山間隔Smが0.5〜10μmであることが好ましい。なお、筆記面の凹凸構造に異方性がある場合は、筆記面において凹部の長手方向と垂直な線と平行の方向に粗さ測定を行なう。
筆記面の面積開孔率および表面張力は上述の値を参考にすることができる。
【0040】
(表面処理)
熱可塑性樹脂フィルムを筆記面とする場合、表面張力を制御するためにフィルムの表面処理を行うのが好ましい。より好ましくは、成形後のフィルムに対して酸化処理を行った後に、アンカー剤及び帯電防止剤の塗布を行う。これにより、経時的な表面張力の低下を抑制することができる。
酸化処理方法としては、一般的にフィルムに使用されるコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理などの方法を単独又は組み合わせて使用することができる。これらのうちで好ましくはコロナ放電処理、プラズマ処理であり、設備や操作の容易さから特に好ましくはコロナ放電処理である。
アンカー剤としては、ポリイミン系重合体又はポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物を単独或いは混合したもの、又はこれらに更に架橋剤を加えたものが挙げられる。ポリイミン系重合体又はポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物としては、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)及びポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、又はこれらのアルキル変性体、シクロアルキル変性体、アリール変性体、アリル変性体、アラルキル変性体、アルキラル変性体、ベンジル変性体、シクロペンチル変性体、もしくは脂肪族環状炭化水素変性体、ないしはこれらの水酸化物、ないしはこれら前述のものを数種類複合させたものを挙げることができるが、これらに特に限定されない。
帯電防止剤として、ポリマー型帯電防止剤が挙げられる。ポリマー型帯電防止剤としては、カチオン型、アニオン型、両性型、ノニオン型などが使用可能である。カチオン型としては、アンモニウム塩構造やホスホニウム塩構造を有するものが挙げられる。アニオン型としては、スルホン酸、リン酸、カルボン酸等のアルカリ金属塩、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、(無水)マレイン酸などのアルカリ金属塩(例としてはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等)構造を分子構造中に有するものが挙げられる。両性型としては、前述のカチオン型とアニオン型の両方の構造を同一分子中に含有するもので、例としてはベタイン型が挙げられる。ノニオン型としては、アルキレンオキシド構造を有するエチレンオキシド重合体や、エチレンオキシド重合成分を分子鎖中に有する重合体が挙げられる。その他、ホウ素を分子構造中に有するポリマー型帯電防止剤も例として挙げることができる。これらの中で好ましくはカチオン型のポリマー型帯電防止剤であり、特に窒素含有ポリマー型帯電防止剤であり、より具体的には第三級窒素又は第四級窒素(アンモニウム塩構造)含有アクリル系ポリマーである。
【0041】
(積層)
シートの筆記面の反対面には強度の補強、厚さの調整、重量の調整、カールの調整などの観点から、他の熱可塑性樹脂フィルム、金属板、樹脂被覆金属板、樹脂被覆紙等を積層することができる。熱可塑性樹脂フィルムは延伸されていてもよい。積層方法としては、ドライラミネート法、押出ラミネート法等の従来公知の方法を適宜採用することができる。
ドライラミネート法では、接着剤としてはビニル系、アクリル系、エポキシ系、ゴム系、ウレタン系、ポリエステル系接着剤を用いることができる。塗工法としては、グラビアコーター、デイップコーター、キスロールコーター、スクイズロールコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーター等を使用することができる。
ドライラミネート工程は、上記接着剤をシートの筆記面と反対側の面に均一に塗布し、乾燥オーブン内で溶剤分を蒸発させ乾粘着状態になった接着面に貼合させる基材を重ねて圧着ラミネートする方法が挙げられる。接着剤の塗工量は、1.0〜50.0g/m
2が好ましく、5〜15g/m
2がより好ましい。ここで貼合の順序は、貼合させる基材の貼合面となる側の表面に接着剤を塗布して乾燥したのちシートの筆記面と反対側の面を貼合してもよい。ドライラミネート法によれば貼合する材料の選択範囲が広く、接着剤の種類や塗布量の選択で耐熱性、耐寒性、ガスバリア性、耐薬品性等の特徴を付加することができる。
押出ラミネート法は貼合させる基材がフィルム状に押出し可能な熱可塑性樹脂に限定されるが、簡便な方法であり、また押出しラミネートを介してさらに金属箔等を貼合することもできる。
押出ラミネート法では貼合させる基材として低密度ポリエチレン、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が使用できる。押出しラミネート層の厚さは10〜50μmが好ましく、20〜40μmがより好ましい。
【0042】
(裏面加工)
ホワイトボード用シートは、筆記面と反対側の面(裏面)に後加工が施されていてもよい。後加工としては、用途に応じて被着体に貼合するための粘着加工、テーブル等に載置したときに動きにくくするためのグリップ加工、平滑な被着体に吸着させるための帯電加工、静電気の発生や汚れの吸着を抑制するための帯電防止加工、加飾のための印刷等が挙げられる。これらの裏面加工の方法は公知の方法を適宜使用することができる。
【0043】
<インク>
本発明は、ホワイトボードシステムを構成するインクが、レーザー回折測定による体積平均粒子径として1〜50μmの色材を含む。インクがシートの筆記面に付着した際に、インクの分散媒がホワイトボード用シート表面の開孔にすみやかに吸収され、色材がシート上の表面開孔内部に入り込むことなく付着し、色材と層分離を起こすことを企図したものである。
【0044】
(インク色材)
インクに使用される色材は前述のとおり平均粒子径が1〜50μmであることが必要である。
色材の平均粒子径が上記範囲より小さいと、シートの筆記面に形成した表面開孔に色材が入り込み、インクの消去性が低下する。一方、色材の平均粒子径が上記範囲より大きいと、色材粒子が肉眼で認識できるようになり、筆記跡がむらとなる。
色材の平均粒子径は好ましくは2〜30μmである。
【0045】
インクの色材は平均粒子径が上記範囲に調整されていれば、一般的な有機顔料や無機顔料が使用できる。有機顔料としてはジスアゾ系顔料、アリザリンレーキ、キナクリドン顔料、ベンゾイミダゾロン顔料、フタロシアニン顔料等が挙げられる。また、無機顔料としてはカーボンブラック、酸化チタン、群青、クロムイエロー、カドミウムイエロー、金属フレーク、パール顔料等が挙げられる。有機顔料や無機顔料は、一種または二種以上を適宜混合して使用することができる。
【0046】
上記の一般的な有機顔料や無機顔料はミリングによって平均粒子径を調整することが多い。そのため色材粒子に角や突起が存在しやすく、シートの筆記面に成形した表面開孔に引っかかりやすくなる。また、平均粒子径が上記範囲であっても粒度分布が広く、筆記面の表面開孔のサイズより小さな粒子が多く含まれる傾向がある。そのため、インクの消去性が低下しやすい。
そこで、粒度分布を狭くする観点から、色材として水性媒体に分散した水性インクベースや着色剤を含む樹脂粒子を使用することが好ましく、さらに色材粒子の形状を球形に近くする観点から着色剤を含む樹脂粒子を使用することがより好ましい。
水性媒体に分散した水性インクベースとしては、山陽色素(株)製、商品名:Sandye Super シリーズ、富士色素(株)製、商品名:Fuji SP シリーズ、東洋インク(株)製、商品名:Rio Fast シリーズ、御国色素(株)製、商品名:、ビクトリア シリーズ、御国色素(株)製、商品名:チチカカシリーズ、大日精化(株)製、商品名:TC Color シリーズ等として入手可能である。
着色剤を含む樹脂粒子の製造方法としては、上記の無機顔料または有機顔料および樹脂を膨潤または溶解させる溶媒の存在下、樹脂を混合撹拌し、無機顔料または有機顔料の表面を樹脂で被覆する方法、上記の無機顔料または有機顔料の存在下、モノマーを塊状重合または懸濁重合させる方法、染料またはその前駆体、あるいはロイコ染料と顕色剤との組み合わせのいずれかの存在下、モノマーを塊状重合または懸濁重合させる方法等が挙げられる。
ここで樹脂粒子は最低造膜温度が60℃以上、融点が120℃以上であることが好ましい。これにより樹脂粒子の粘着力が抑制され、インクの消去性が良好になる傾向がある。
水性媒体に分散した水性インクベースや着色剤を含む樹脂粒子は、一種または二種以上を適宜混合して配合することができる。
インク中における色材の含有量は1〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、3〜20質量%がさらに好ましい。インク中における色材の含有量が上記範囲より少ないと、筆記部の濃度が低下したり、分散媒が多くなりインクの乾燥が遅くなったりすることがある。インク中における色材の含有量が上記範囲より多いとインクがかすれることがある。
【0047】
(インク分散体)
本発明においては、平均粒子径が上記範囲の色材が液体の分散媒に分散したインク分散体とすることが最も好ましい実施形態である。
ここで、インク分散体が乾燥後にふき取ることにより容易に除去され、シートを繰り返し使用可能にするためには、分散媒の主成分は水であることが好ましい。
また、インクの分散媒には必要に応じて水と混合可能な有機溶剤を配合することができる。水と混合可能な有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、などの多価アルコール類;チオジエチレングリコールなどのチオグリコール類;トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミンなどのアルカノールアミン類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルキレングリコールアルキルエーテル類およびその誘導体;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどのピロリドン類およびその誘導体等が挙げられる。
これらの有機溶剤を配合することによりインク分散体の表面張力を低下させて筆記面に書きやすくしたり、インク分散体を筆記ペンに装填した時にペン先が乾燥することを抑制する効果が得られる。
水と混合可能な有機溶剤は、一種または二種以上を併用することができる。また、筆記用インク組成物全量に対して、水と混合可能な有機溶剤2〜60質量%を配合することが好ましい。
インク分散体中における分散媒の含有量は60〜99質量%が好ましく、70〜98質量%がより好ましく、80〜97質量%がさらに好ましい。インク中における分散媒の含有量が上記範囲より少ないと、インクがかすれることがある。インク中における分散媒の含有量が上記範囲より多いと、筆記部の濃度が低下したり、分散媒が多くなりインクの乾燥が遅くなったりすることがある。
インク分散体にはその他必要に応じて、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、湿潤剤、防錆剤、潤滑剤、界面活性剤などの各種添加剤を配合することができる。
【0048】
(インク固形物)
本発明においては、平均粒子径が上記範囲の色材を主成分とする固形状のインクとする実施形態でもよい。この場合、平均粒子径が上記範囲の色材1〜40質量%、体質顔料10〜70質量%、ワックス10〜60重量%(上記材料の合計が100質量%)とすることが好ましい。
ここでインク固形物中の色材含有量は、2〜30質量%が好ましい。インク固形物中の色材含有量が上記範囲より少ないと、所要の着色力が得られないことがある。インク固形物中の色材含有量が上記範囲より多いと、描画面における付着性や滑りが悪くなり、製造時の成形性が低下することがある。
また体質顔料としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、タルク、クレー、カオリン、ベントナイト、含水ケイ酸、無水ケイ酸等が挙げられる。なかでも、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを用いることが好ましい。インク固形物に体質顔料を配合することにより描画時にインク固形物が崩壊することによって筆記面に色材を付着させることができる。
インク固形物中の体質顔料含有量は25〜60質量%がより好ましい。インク固形物中の体質顔料含有量が上記範囲より少ないと、インク固形物が固く描画しにくくなることがある。インク固形物中の体質顔料含有量が上記範囲より多いと、インク固形物がもろく折れやすくなることがある。
【0049】
またワックスとしては、木ロウ、蜜ロウ、カルナウバワックス、牛脂硬化油、ポリエチレンワックス、α−オレフィンオリゴマー、ラード、パラフィンワックス等が挙げられる。なかでも、色材の消去性の観点から、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、α−オレフィンオリゴマーを用いることが好ましい。インク固形物にワックスを配合することにより筆記面に色材を定着させることができる。
インク固形物中のワックス含有量は20〜40質量%がより好ましい。すなわちインク固形物中のワックス含有量は通常のクレヨンより少なくすることがインク固形物の消去性の観点から好ましい。インク固形物中のワックス含有量が上記範囲より少ないと、インク固形物がもろく折れやすくなることがある。インク固形物中のワックス含有量が上記範囲より多いと、インク固形物が色材の筆記面への付着量が低下したり、インク固形物が柔らかく折れやすくなったり、インク固形物の消去性が低下したリすることがある。
インク固形物には上記材料のほかに添加剤として、流動パラフィン等のオイル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の界面活性剤等を配合することができ、またインク固形物の表面にシリコーン樹脂等の被膜を設けてべたつきや色材の付着を抑制するようにすることもできる。
インク固形物の製造方法としては、ワックスおよび添加剤の混合物に上記色材と体質顔料を加え、加熱しながら攪拌混合し、ニーダーにて混練し、得られた溶融物を金型に注入した後冷却し、金型から棒状のインク固形物を取り出す方法が挙げられる。ここで、色材、体質顔料、ワックス及び添加剤の配合比を適宜調整することにより、クレヨン、パステル、コンテ、色鉛筆等さまざまな画材の書き味を付与することができる。
なお、上記実施形態は一例であり、本発明の趣旨に合致する限り種々の設計変更が可能であり、これらも本発明の範疇に属し得る。
【実施例】
【0050】
以下に調製例、シート成形例、実施例、比較例および試験例を用いて、本発明を更に具体的に説明する。以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、以下に記載される%は、特記しない限り質量%である。また、配合部は、特記しない限り固形分質量部である。
【0051】
[測定法]
(開孔径および面積開孔率)
シートの開孔径および面積開孔率は、シート試料の筆記面を観察面として観察試料台に貼り付け、その観察面に金を蒸着して走査型電子顕微鏡(装置名:SM−200、TOPCON(株)製)を使用して観察しやすい任意の倍率(500〜3000倍)にて筆記面を観察した。さらに観察した領域を画像データとして取り込み、その画像を画像解析装置(装置名:ルーゼックスAP、ニレコ(株)製)で画像処理を行い、空孔の開孔径(長径及び短径)、空孔部の面積率を求め、これを面積開孔率とした。
【0052】
(ボイド率)
シートの各層におけるボイド率は、同積層体の空孔を潰さないように冷却しながら切削して厚み方向断面(観察面)を作成し、観察試料台に貼り付け、その観察面に金を蒸着して走査型電子顕微鏡(装置名:SM−200、TOPCON(株)製)を使用して観察しやすい任意の倍率(500〜3000倍)にて各層の空孔を観察した。さらに観察した領域を画像データとして取り込み、その画像を画像解析装置(装置名:ルーゼックスAP、ニレコ(株)製)で画像処理を行い、空孔の面積率を求め、これをボイド率(空孔率)とした。
【0053】
(表面張力)
シートの表面張力はJIS K 6768:1999 プラスチック−フィルム及びシート−ぬれ張力試験方法に準拠し、市販のぬれ張力試験用混合液を用いて求めた。
【0054】
(密度)
シートの密度はJIS K 7112:1999 プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法のB法(ピクノメーター法)に準拠して求めた。
【0055】
(厚さ)
シートの厚さはJIS K 7130:1999プラスチック−フィルム及びシート−厚さ測定方法のA法に準拠し、定圧厚さ測定器(機器名:PG−01J、テクロック製)を用いて測定した。また、シート各層の厚さは、上記ボイド率の測定で用いた断面観察像から各層の境界(界面)を判別して、前記全体の厚さと観察される層厚さ比率を乗算して求めた。
【0056】
(粒度分布)
レーザー回折型粒度分布測定装置((株)島津製作所製:SALD−2200)を用いて粒度分布を測定し、D50を体積平均粒径とした。
【0057】
(筆記性、消去性)
シートの筆記面に、評価用のペンを使用して文字を手書きし、1分後の文字を目視評価し、以下の基準で判定した。「良好」および「ややはじき」を合格とする。
良好:インクのはじきやかすれがなく、文字に滲みもない
ややはじき:筆記当初ははじきがないが、1分経過後に輪郭部にはじきが確認できる
はじき:インクがはじかれ筆記できない
にじみ:インクが広がり文字が滲む
また、筆記から約1日後にガーゼで筆記面を弱く2回擦り、擦った後の筆記面を目視評価し、以下の基準で判定した。「良好」および「境界」を合格とする。
良好:インクが完全に拭き取られ残留していない
境界 :文字の端のみが残留している
拭き残り:インクが筆記面に薄く残留している
残留:インクが消去できない
【0058】
[基材の製造]
(製造例1)
(1)コア層用の熱可塑性樹脂組成物の原料として表1の組成物1の配合で全ての原料を混合し、得られた混合物を230℃に設定した押出機に投入して溶融混練した後、250℃に設定したTダイに供給してシート状に押し出し、得られたシートを冷却して無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを、130℃に再加熱した後、ロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸(MD延伸)し、5倍延伸フィルムを得た。
(2)一方、外層1用の熱可塑性樹脂組成物の原料として表1の組成物2の配合で全ての原料を混合し、得られた混合物を230℃の温度に設定した押出機に投入して混練した後、シート状に押出し、上記(1)の工程で得られた5倍延伸フィルムの片面に積層した。
(3)上記(2)の工程と同時に、外層2用の熱可塑性樹脂組成物の原料として表1の組成物3の配合で全ての原料を混合し、得られた混合物を230℃の温度に設定した押出機に投入して混練した後、シート状に押出し、上記(1)の工程で得られた5倍延伸フィルムの外層1を積層した面との反対面に積層して、外層1/コア層/外層2からなる三層構造の積層フィルムを得た。
(4)次いで、上記(3)で得られた三層構造の積層フィルムを60℃の温度まで冷却した後、再び140℃の温度まで加熱し、テンター式延伸機を用いて横方向に8倍延伸し、60℃の温度まで冷却した後、耳縁部をトリミングして三層構造の積層延伸フィルムを得た。この三層積層延伸フィルムの物性を表2に示す。
【0059】
(製造例2)
基材の製造例1において、外層1用の熱可塑性樹脂組成物として表1の組成物2の配合の代わりに表1の組成物4の配合を使用した以外は基材の製造例1と同様にして三層構造の積層延伸フィルムを得た。この三層積層延伸フィルムの物性を表2に示す。
【0060】
(製造例3)
基材の製造例1において、テンター式延伸機を用いる横延伸時の温度を145℃にしたこと以外は基材の製造例1と同様にして三層構造の積層延伸フィルムを得た。この三層積層延伸フィルムの物性を表2に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
[筆記面の表面処理]
(コロナ放電処理)
三層積層延伸フィルムのコロナ放電処理を施そうとする面に対し、コロナ放電処理装置(装置名:HF400F、春日電機(株)製)、長さ0.8mのアルミニウム製放電電極およびトリーターロールにシリコーン被膜ロールを用い、放電電極とトリーターロールとのギャップを5mmとし、ライン処理速度15m/分、印加エネルギー密度4,000J/m
2の条件下でコロナ放電処理を行った。
【0064】
(塗布処理)
(1)帯電防止剤として第4級アンモニウム塩含有アクリル系樹脂(商品名:サフトマーST−2000H、三菱化学(株)製)を固形分として1質量%、接着剤としてポリエチレンイミン(商品名:エポミンP−1000、日本触媒(株)製)を固形分として1質量%、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名:エポライト40、共栄社化学(株)製)0.05質量%を含む水溶液を調製した。
(2)三層積層延伸フィルムの塗布処理を施そうとする面に対し、あらかじめ上記(コロナ放電処理)を施しておき、上記(1)の工程で得た水溶液を単位面積当たり乾燥後固形分で0.02g/m
2となるようにバーコータを用いて塗工した。
(3)次いで、塗工後の積層延伸フィルムを60℃のオーブン中で乾燥させてワインダを用いてロール状に巻き取った。
塗布処理1日後の処理面における表面張力を表3に示す。
【0065】
[インク及びペンの調製]
(インクの調製例1)
(1)保湿剤としてのグリセリン(試薬、和光純薬工業(株)製)20質量%、pH調整剤としてのトリエタノールアミン(試薬、和光純薬工業(株)製)0.8質量%、界面活性剤としてのポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸エステル(商品名:フオスフアノールRS−610、東邦化学工業(株)製)1.0質量%を含む水溶液を調製した。
(2)上記工程(1)の水溶液47質量部、水性顔料分散体(商品名:チチカカカラーRED、御国色素(株)製)8質量部、アクリル樹脂(商品名:ウォーターゾールS−701、DIC(株)製)0.5質量部の混合分散液を50℃に加温し、ホモディスパーザー(機器名:ホモミクサーMARKII2.5型(真空式)、プライミクス(株)製)で3000rpm、20分撹拌し、赤色のインクを調製した。インク中の色材の体積平均粒径は4.6μmであった。
(インクの調製例2)
(1)ピラゾール系黄染料C.I.Solvent Yellow 93(試薬、東京化成工業(株)製)1.5質量部、メタクリル酸メチル(試薬、和光純薬工業(株)製)95質量部およびエチレングリコールジメタクリレート(商品名:1G、新中村化学工業(株)製)5質量部、ラウロイルパーオキサイド(試薬、東京化成工業(株)製)1質量部、からなる着色モノマー混合液を得た。
(2)ホモディスパーザー(機器名:ホモミクサーMARKII2.5型(真空式)、プライミクス(株)製)が備える2L容器に、脱イオン水160重量部、懸濁助剤であるポリカルボン酸ナトリウム塩(商品名:SNディスパーサント2010、サンノプコ(株)製)0.2質量を仕込み、1500rpmで攪拌しながら、上記(1)の工程で得た着色モノマー混合液を添加し、反応器内を窒素置換しながら80℃で4時間重合を行なった。
(3)得られた重合体を、脱イオン水で4回水洗してスラリー状の懸濁重合体粒子を得た。
(4)保湿剤としてのグリセリン(試薬、和光純薬工業(株)製)20質量%、pH調整剤としてのトリエタノールアミン(試薬、和光純薬工業(株)製)0.8質量%、界面活性剤としてのポリオキシエチレンアルキル(12〜15)エーテルリン酸エステル(商品名:フオスフアノールRS−610、東邦化学工業(株)製)1.0質量%を含む水溶液を調製した。
(5)ホモディスパーザー(機器名:ホモミクサーMARKII2.5型(真空式)、プライミクス(株)製)に上記(4)で得た水溶液と上記(4)で得た懸濁重合体粒子とをいれ、500rpmで20分撹拌し、水で固形分濃度1.3質量%に調整して黄色のインクを調製した。インク中の色材の体積平均粒径は5.2μmであった。
【0066】
(ペンの調製)
(1)市販のホワイトボード用マーカー(商品名:潤芯ホワイトボードマーカー、シヤチハタ(株)製)のペン芯を未使用品に交換するとともに、上記調製例1および2のインクを補充してそれぞれ評価用のペン1およびペン2とした。
(2)市販のサインペン(商品名:フリクションカラーズバイオレット、品番:SFC−10M−V、パイロットコーポレーション(株)製)をそのまま評価用のペン3とした。このサインペンに含まれるインクには、色材として体積平均粒子径が3.0μmの可逆熱変色性マイクロカプセルが使用されている。
(3)市販のホワイトボード用マーカー(商品名:潤芯ホワイトボードマーカー、シヤチハタ(株)製)のペン芯を未使用品に交換するとともに、市販の水性顔料インクジェット用シアンインク(商品名:ICC46、エプソン(株)製)のインクを補充して評価用のペン4とした。このインクには色材として体積平均粒子径が0.25μmの顔料が使用されている。
(4)市販のホワイトボード用マーカー黒(商品名:潤芯ホワイトボードマーカー、シヤチハタ(株)製)をそのまま使用して評価用のペン5とした。このインクの色材の体積平均粒子径は測定限界(0.01μm)未満であった。
【0067】
[実施例]
(実施例1)
基材の製造例1で得た基材の外層2面を筆記面とし、この面にコロナ放電および塗布処理を行い、シートを得た。
次に評価用ペン1を用いてペン評価を行ったところ、筆記性良好、消去性良好の結果を得た。
【0068】
(実施例2、比較例1)
実施例1において筆記面を表3の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして評価したところ、シート筆記面における表面開孔の短径によって消去性が明瞭に変化した。
【0069】
(実施例3)
実施例1において、筆記面にコロナ放電処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして評価したところ、筆記性がやや低下したが、消去性は良好であった。
【0070】
(比較例2)
実施例3において筆記面を表3の通りに変更したこと以外は実施例3と同様にして評価したところ、筆記性は良好で消去性は不良(×残留)であった。
実施例3と比較例2とを対比すると、筆記性はシート筆記面の表面張力に影響を受け、消去性はシート筆記面の表面開孔の短径に影響を受けたことがわかる。
【0071】
(実施例4、5、比較例3、4)
実施例1において、評価用ペンを表3の通りに変更したこと以外は実施例1と同様にして評価したところ、色材の体積平均粒子径によって消去性が明瞭に変化した。
【0072】
(比較例5)
市販のシート状ホワイトボード(商品名:マグネットカラーシート、品番:MSC−08−5060W、(株)マグエックス製)に評価用ペン1を用いてペン評価を行ったところ、弾いてしまい筆記性は不良であった。筆記1日後の消去性は良好であった。
【0073】
(比較例6)
比較例5において、評価用ペンをペン5に変更して評価を行った。このシートとインクとの組み合わせは従来のホワイトボードシステムを踏襲するものである。筆記性は良好であったが、拭き残りが生じた。
【0074】
本発明の実施例(実施例1〜5)から分かる通り、表面開孔を有し、走査型電子顕微鏡観察像画像解析による前記表面開孔の短径が0.05〜0.9μmのシートと、体積平均粒子径として1〜50μmの色材を含むインクとの組み合わせによるホワイトボードシステムによれば、良好な筆記性を示すことは言うまでもなく、従来のホワイトボードシステム(比較例6)に比べ消去性が飛躍的に向上している。
一方、前記表面開孔の短径が0.9μmを超えるシートか、体積平均粒子径が1μm未満の色材を含むインクを使用した場合(比較例1〜4)では消去性が不良となった。表面開孔に色材が入り込むためと推測される。
【0075】
【表3】