特許第6706552号(P6706552)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706552波力発電装置および波力発電装置の設置方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706552
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】波力発電装置および波力発電装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/18 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   F03B13/18
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-130451(P2016-130451)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-3680(P2018-3680A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(72)【発明者】
【氏名】中野 訓雄
【審査官】 井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0259047(US,A1)
【文献】 特開2016−113985(JP,A)
【文献】 実用新案登録第2510876(JP,Y2)
【文献】 特開2012−251370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/18
E02B 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底に設置される基礎支柱と、
前記基礎支柱を挿通させる筒状の構造体支柱と、
前記構造体支柱の外周側に配置され、前記構造体支柱の延設方向に沿って揺動可能なフロートと、
前記フロートが前記構造体支柱に沿って揺動する事により発電を成す発電機構と、を備え、
前記基礎支柱は、地中に打ち込まれる部分に適用される部材の厚みを海中に立設される部分に適用される部材の厚みよりも厚くしたことを特徴とする波力発電装置。
【請求項2】
前記基礎支柱に対して、前記構造体支柱の配置高さを定めるフランジが設けらていることを特徴とする請求項1に記載の波力発電装置。
【請求項3】
前記発電機構は、前記構造体支柱にラックギヤを備え、
前記フロートに、前記ラックギヤに噛み合うピニオンギヤを有する発電機を備えて成ることを特徴とする請求項1または2に記載の波力発電装置。
【請求項4】
海底に立設される基礎支柱と、前記基礎支柱を挿通させる筒状の構造体支柱と、前記構造体支柱の延設方向に沿って揺動する事で発電を成すフロートと、を有する波力発電装置の設置方法であって、
前記基礎支柱を中継ぎ施工により海底に立設する支柱立設工程と、
前記構造体支柱に対して前記フロートを組み付けるフロート組み付け工程と、
前記基礎支柱に対して、前記フロートを組み付けた前記構造体支柱を設置する構造体設置工程と、を有し、
前記支柱立設工程では、地中に打ち込まれる部分に適用される部材の厚みを海中に立設される部分に適用される部材の厚みよりも厚くすることを特徴とする波力発電装置の設置方法。
【請求項5】
前記基礎支柱は、打撃工法により立設されることを特徴とする請求項4に記載の波力発電装置の設置方法。
【請求項6】
前記基礎支柱は、中堀工法により立設されることを特徴とする請求項4に記載の波力発電装置の設置方法。
【請求項7】
前記基礎支柱は、ウォータージェット併用バイブロ工法により立設されることを特徴とする請求項4に記載の波力発電装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電装置に係り、特に波力により発電を成す、波力発電装置、及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洋上に設置される波力発電装置は、海底に固定、または係留された支柱と、この支柱を起点として揺動するフロートを有する構成のものが多い。装置全体の構造を簡単化することができるからである。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている波力発電装置は、支柱と、この支柱に沿って上下に揺動するフロートを有するものである。支柱内には発電機が備えられ、フロートから延設された枠体の先端を支柱内に引き込むと共に、この枠体の先端にラックギヤを設けている。発電機の回転軸にはピニオンギヤが設けられ、フロートの揺動によって、ラックギヤがピニオンギヤを回転させる事で発電を成すという構成とされている。
【0004】
また、特許文献2に開示されている波力発電装置は、特許文献1に開示されている波力発電装置と同様に、支柱とフロートを有するものであるが、その発電方法が異なる。具体的には、支柱に対して回転自在に備えられたスクリューがウォームギヤとなり、フロートの内周側にこのスクリューにかみ合う凹凸を形成している。これにより、フロートが上下に揺動する事で、支柱に配置されたスクリューが回転し、スクリューに付帯する発電機が駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−181534号公報
【特許文献2】特開2014−55585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されているような波力発電装置では一般的に、その設置、改修作業は現場(海上)で行われる事となる。しかし、機器の設置や大掛かりな改修の場合、作業スペースが限られると共に、天候にも左右されることとなるため、作業性が悪いという問題がある。
【0007】
そこで本発明では、支柱を有する波力発電装置において、設置や改修を行う際の施工性を向上させる事のできる波力発電装置、およびこの波力発電装置の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る波力発電装置は、海底に設置される基礎支柱と、前記基礎支柱を挿通させる筒状の構造体支柱と、前記構造体支柱の外周側に配置され、前記構造体支柱の延設方向に沿って揺動可能なフロートと、前記フロートが前記構造体支柱に沿って揺動する事により発電を成す発電機構と、を備え、前記基礎支柱は、地中に打ち込まれる部分に適用される部材の厚みを海中に立設される部分に適用される部材の厚みよりも厚くしたことを特徴とする。
【0009】
また、上記のような特徴を有する波力発電装置では、前記基礎支柱に対して、前記構造体支柱の配置高さを定めるフランジを設けるようにすると良い。このような特徴を有する事により、波力発電装置を設置するにあたり、フロートの昇降範囲を海面を基準とした任意の位置に定めることができる。
【0010】
また、上記のような特徴を有する波力発電装置において前記発電機構は、前記構造体支柱にラックギヤを備え、前記フロートに、前記ラックギヤに噛み合うピニオンギヤを有する発電機を備えるようにすると良い。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係る波力発電装置の設置方法は、海底に立設される基礎支柱と、前記基礎支柱を挿通させる筒状の構造体支柱と、前記構造体支柱の延設方向に沿って揺動する事で発電を成すフロートと、を有する波力発電装置の設置方法であって、前記基礎支柱を中継ぎ施工により海底に立設する支柱立設工程と、前記構造体支柱に対して前記フロートを組み付けるフロート組み付け工程と、前記基礎支柱に対して、前記フロートを組み付けた前記構造体支柱を設置する構造体設置工程と、を有し、前記支柱立設工程では、地中に打ち込まれる部分に適用される部材の厚みを海中に立設される部分に適用される部材の厚みよりも厚くすることを特徴とする。
【0012】
また、上記のような特徴を有する波力発電装置の設置方法において前記基礎支柱は、打撃工法により立設することができる。
【0013】
また、上記のような特徴を有する波力発電装置の設置方法において前記基礎支柱は、中堀工法により立設するようにしても良い。
【0014】
さらに、上記のような特徴を有する波力発電装置の設置方法において前記基礎支柱は、ウォータージェット併用バイブロ工法により立設することもできる。
【発明の効果】
【0015】
上記のような特徴を有する波力発電装置、及びその設置方法によれば、支柱を有する波力発電装置において、設置や改修を行う際の施工性を向上させる事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る波力発電装置の構成を示す側面図である。
図2図1におけるA−A断面を示す図である。
図3図2におけるB−B断面を示す図である。
図4】打撃工法による支柱立設工程の様子を示す図である。
図5】中堀工法、あるいはJV工法による支柱立設工程の様子を示す図である。
図6】基礎支柱に対してフランジを設置した様子を示す図である。
図7】フロート組み付け工程の様子を示す図である。
図8】構造体設置工程において、基礎支柱の上部に構造体支柱を吊り上げた状態を示す図である。
図9】構造体設置工程が完了した様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の波力発電装置に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図1は、実施形態に係る波力発電装置の全体構成を示す側面図である。また、図2図1におけるA−A断面を示し、図3図2におけるB−B断面を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る波力発電装置10は、基礎支柱12と、この基礎支柱12を挿通させる構造体支柱14、および構造体支柱14に沿って昇降可能なフロート24を基本構成とする。
【0019】
基礎支柱13は、海底に立設され、少なくともその先端が海上(海面よりも上)に出る高さを持つ。基礎支柱12の具体的構造は発明に影響を及ぼすものでは無いが、実施形態に係る形態では中空構造とされている。基礎支柱12は、海底への立設にあたり、地盤の状態によって、その埋設部分の長さが変化する。このため、基礎支柱は、中継ぎ施工されることとなるため、中空部材を採用した方が施工が容易となるためである。また、基礎支柱12を中空とすることで、その内部に送電のためのケーブルを挿通させることが可能となる。
【0020】
また、詳細には、基礎支柱12を構成する部材のうち、地中に打ち込まれる部分と、海中に立設される部分とでは、その素材を異ならせるようにしても良い。地中に打ち込まれる部分に適用される部材は、打ち込み時の衝撃に耐えうる素材、厚みとし、海中に立設される部分に適用される部材は、地中部分よりも薄い部材とする事で、費用の軽減を図ることが可能となる。
【0021】
基礎支柱12の海中部分には、詳細を後述するフロート24の沈降深さに基づいて定められた所定位置(海面を基準とした深さ)に、フランジ12aが設けられる。後述する構造体支柱14の位置決めと係合を行うためである。
【0022】
構造体支柱14は、基礎支柱12の直径よりも大きな内径を持つ筒状の構造体を基本として構成されており、その内部に基礎支柱12を挿通させることを可能としている。構造体支柱14の下端にはフランジ16が備えられ、上端には上部ストッパ18が備えられる。さらに、構造体支柱14の胴部外周には、長手方向に沿って、ガイドレール20と、ラックギヤ22が備えられている。
【0023】
構造体支柱14の下端部に備えられるフランジ16は、詳細を後述するフロート24の沈降側ストッパとしての役割を担うと共に、構造体支柱14を基礎支柱12へ締結させる係合部としての役割を担う。基礎支柱12に設けられたフランジ12aに対して構造体支柱14に設けられたフランジ16をボルト固定する事で、構造体支柱14の係合が成される。
【0024】
上部ストッパ18は、海上に位置する事となり、フロート24が揺動した際の構造体支柱14に対する抜け止めとしての役割を担う。
【0025】
ガイドレール20は、フロート24の昇降をガイドするためのレールである。フロート24の揺れを抑えつつ昇降を支持するためにガイドレール20は、先端面、および両側面の三面を支持面として構成されている。ラックギヤ22は、フロート24に備えられる発電機30の回転軸に連携するピニオンギヤ34に噛合うギヤである。実施形態に係る波力発電装置10においてラックギヤ22は、構造体支柱14の外周に直付けされたベースプレート22aに沿って配置されている。構造体支柱14に直付けされるベースプレート22aと別体構造とすることで、ラックギヤ22の位置調整が可能となる。このため、ピニオンギヤ34との噛合い具合を微調整することが可能となる。また、本実施形態では、ガイドレール20とラックギヤ22をそれぞれ一対、構造体支柱14の中心を通る直線上に配置する構成としている。また、対を成すガイドレール20を結ぶ直線とラックギヤ22を結ぶ直線とが、90°の関係を持つように配置されている。
【0026】
フロート24は、波力を受けることにより、構造体支柱14に沿って昇降することで、電力を生じさせる役割を担う。実施形態に係るフロート24は、図3に示すように、機械室26と空気室28とに機密に分断されており、機械室26には、少なくとも発電機30と、エアコンプレッサ32が備えられている。発電機30は、回転軸を回転させることにより電力を生じさせる役割を担う。発電機30の回転軸と、ピニオンギヤ34との間には、減速機36が設けられている。発電機30には、電力を送電するためのケーブル(不図示)が接続されている。図2に示すフロート24には、2つの発電機30が設けられている。発電機30を複数設ける場合、構造体支柱14の軸心を基点として、放射状に均等配置すると良い。フロート24の重量バランスが安定するからである。1つのフロートに設ける発電機30の数を増やすことにより、波力に対する発電効率を向上させることができる。なお、発電機30を2つとしている本実施形態の場合、構造体支柱14の軸心を基点とした点対称な位置関係で配置されることとなる。
【0027】
また、本実施形態の発電機30には、フライホイールユニット38が付帯されている。フライホイールユニット38は、フロート24が揺動する際の固有周期を調整するための役割を担う。フライホイールユニット38は、発電機30の回転軸に接続された回転軸と、この回転軸に付帯されたフライホイール40を有する。フライホイール40は、図2に示す形態の場合、3枚備えられており、各フライホイール40が備えられる回転軸間にはクラッチ42が設けられ、発電機30の回転軸に接続されるフライホイール40の数を調整することができる構成としている。クラッチ42のON/OFF調整により接続するフライホイール40の数を変更する事で、重み付けの重量を変える事ができ、波力発電装置10を設置する海域の波の状況により、固有周期を変化させることが可能となる。
【0028】
エアコンプレッサ32は、機械室26の気圧を向上させると共に、空気室28への空気の供給により、フロート24の浮力の調整を行う役割を担う。フロート24は、荒天時には、海中へ沈められることがある。このため、機械室26は、大気圧よりも0.5気圧程気圧が高くなるように調整されており、3m程度フロートを沈降させた場合であっても、機械室26の大気圧が海水の侵入圧よりも高くなるように構成されている。
【0029】
フロート24の中心部には、構造体支柱14を挿通させるための貫通孔24aが設けられている。貫通孔24aには、構造体支柱14に設けられたラックギヤ22に噛合うピニオンギヤ34や、ガイドレール20に当接するガイドローラ44(端面ローラ44a,側面ローラ44bを含む総称)が備えられている。ピニオンギヤ34は、ラックギヤ22に噛合った状態でフロート24が昇降することで回転し、減速機36を介して発電機30の回転軸を回動させる。
【0030】
ガイドローラ44は、ガイドレール20に当接して回動することで、フロート24の昇降動作を安定させることができる。実施形態に係るフロート24では、ガイドローラ44は、ガイドレール20の端面に当接する端面ローラ44aと、ガイドレール20の側面に当接する2つの側面ローラ44bを組として、構造体支柱14の軸心を基点として対称となるように設けている。ガイドローラ44をこのように設けることにより、フロート24を平面視した際に、ガイドレール20に対して上下左右へのフロート24の動きを規制することができる。このため、フロート24を安定させることができ、ラックギヤ22に対するピニオンギヤ34の噛合い状態を良好に保つことができる。
【0031】
また、実施形態に係るフロート24には、設置状態において沖合側に位置する側面に、底面に向けた勾配を持つ傾斜面24bを設けている。波が押し寄せることとなる側面に、このような傾斜面24bを設けることにより、波長の短い波に対する揺動性を向上させることができる。つまり、小さな波に対するフロート24の揺動性を向上させることができるのである。
【0032】
次に、上記のような構成の波力発電装置10の設置方法について図4から図9を参照して説明する。実施形態に係る波力発電装置10の設置では、まず、基礎支柱12を設置領域の海底に立設する(図4参照)。基礎支柱12の立設は、種々の工法により行う事ができるが、概ね打撃工法、中堀工法、JV工法(ウォータージェット併用バイブロ工法)のうちのいずれかにより行う事が望ましい。打撃工法とは、ハンマーの落下エネルギーを利用して、基礎支柱を地盤に打ち込む工法の事であり、N値が30から50程度の比較的柔らかい地盤への設置に好適である。
【0033】
中堀工法とは、管内を削孔しながら基礎支柱12を押し込み、基礎支柱12の先端をセメントミルク等で根固めする工法である。図5に示すように、根入れ部分がセメント50で固定されるため、根入れ長に対する支持力が高い。このため、岩盤などの固い地盤への設置に好適である。
【0034】
JV工法とは、ウォータージェットカッターから噴射される高圧力水と、バイブロハンマの振動エネルギーを組み合わせて基礎支柱12を打ち込んで行く工法であり、低振動かつ高い打ち込み力を得ることができる。騒音や汚濁水の発生も少なく、固い地盤への施工性も高い事から、実用性の高い工法といえる。
【0035】
基礎支柱12は、その立設が終了すると、図6に示すように、海中にフランジ12aが取り付けられる。これにより構造体支柱14の固定位置が決定されることとなる(支柱立設工程)。
【0036】
次に、基礎支柱12の立設と並行して、あるいは基礎支柱12の立設と前後して、図7に示すように、構造体支柱14に対してフロート24の組み付け作業を行う。構造体支柱14に対するフロート24の組み付け作業は、陸上、あるいは海上設置領域への搬送フロート上で行うと良い。このような作業環境であれば、足場が安定すると共に十分な作業スペースを確保する事ができ、作業効率が向上することとなる(フロート組み付け工程)。
【0037】
支柱立設工程とフロート組み付け工程が終了した後、基礎支柱12に対して、フロート組み付け工程が終了した構造体支柱14を設置する。構造体支柱14の設置は、クレーン等を介して構造体支柱14を吊り上げ、筒状の構造体支柱14に基礎支柱12を挿通させるように降下させる事で成される。基礎支柱12を挿通させて降下した構造体支柱14は、下端部に設けられたフランジ16が基礎支柱12に設けられたフランジ12aと接触する事で位置決めが成される。その後、フランジ16,12a同士を締結する事で、基礎支柱12に対する構造体支柱14の固定が成され、構造体支柱14の設置作業が完了する(構造体設置工程)。
【0038】
このような構成の波力発電装置10によれば、設置や改修を行う際には、基礎支柱12から構造体支柱14(フロート24を含む)を取り外しての作業とすることができる。このため、設置や改修を行う際の施工性を向上させる事ができる。
【0039】
また、本実施形態に係る波力発電装置10では、従来に比べフロート24を大型なものとし、このフロート24に複数の発電機30を配置する構成とした。このため、従来の波力発電装置に比べ、発電効率を向上させることができる。
【0040】
また、上記実施形態では、フロート24に備える発電機30の数を2つとしているが、スペース的に許容できる範囲であれば、その数をさらに増やすようにしても良い。
【0041】
なお、上記実施形態では、ラックアンドピニオンの関係について、動力伝達のロスを考慮して、両者共ギヤである旨記載した。しかしながら、摩擦抵抗等によりピニオンを回転させることが可能なものであれば、ギヤに限らず、単なるローラとガイドの関係であっても良い。
【0042】
また、上記説明では、恒久的な設置を意図して波力発電装置10の設置の説明を行った。このため、中堀工法の説明では、削孔した孔に基礎支柱12を押し込み、セメントミルクで基礎支柱12の周囲を固めると説明した。しかしながら、このような工法を用いた場合、波力発電装置10の完全撤去を行う事が困難となる。よって、実施後の完全撤去を考慮した上で中堀工法による支柱立設工程を行う場合、次のような手段を採用する事が良い。
【0043】
すなわち、掘削した孔(掘削孔)を、砂で置換した後、打撃工法を用いて基礎支柱12を設置するのである。言い換えると、セメントミルク(図5中のセメント50)に替えて、砂により、掘削孔と基礎支柱12との隙間を埋めるのである。掘削孔と基礎支柱12との隙間に砂を充填する事で、基礎支柱12を立設する際の安定化を図る事ができると共に、固着が生じないため、基礎支柱12の完全撤去も実現可能となる。また、基礎支柱12を撤去した後の掘削孔には、さらに砂を充填して、基礎支柱12の根入れ部分と砂とを置換する事で、人工物が残留する場合に比べ、自然環境への影響を小さなものとする事ができ、かつ他の計画にも利用する事が可能となる。
【0044】
なお、このような手段で中堀工法を行う場合、掘削孔の開口部近郊には、基礎支柱12の立設状態の安定を図るために、補強捨石などを配置しても良い。補強捨石は、掘削孔の開口部において、基礎支柱12の周囲に配置する事で、基礎支柱12の倒れ防止を図ることができる。
【符号の説明】
【0045】
10………波力発電装置、12………基礎支柱、12a………フランジ、14………構造体支柱、16………フランジ、18………上部ストッパ、20………ガイドレール、22………ラックギヤ、22a………ベースプレート、24………フロート、24a………貫通孔、24b………傾斜面、26………機械室、28………空気室、30………発電機、32………エアコンプレッサ、34………ピニオンギヤ、36………減速機、38………フライホイールユニット、40………フライホイール、42………クラッチ、44………ガイドローラ、44a………端面ローラ、44b………側面ローラ、50………セメント。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9