(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チャンバ本体およびチャンバ蓋部を有し、前記チャンバ蓋部により前記チャンバ本体の上部開口を閉塞することにより前記チャンバ本体および前記チャンバ蓋部を含むチャンバ密閉構造を形成するチャンバと、前記チャンバ蓋部を前記チャンバ本体に対して上下方向に相対的に移動するチャンバ開閉機構と、前記チャンバ内に配置され、水平状態で基板を保持する基板保持部と、前記上下方向を向く中心軸を中心として前記基板を前記基板保持部と共に回転する基板回転機構と、前記基板上に処理液を供給する処理液供給部と、前記チャンバ蓋部が前記チャンバ本体から離間することにより前記基板の周囲に形成される環状開口の径方向外側に全周に亘って位置し、回転する前記基板から飛散する処理液を受ける第1カップ部と、前記第1カップ部を、前記環状開口の径方向外側の第1位置と、前記第1位置よりも下方の第2位置との間で前記上下方向に移動するカップ部移動機構と、を備える基板処理装置において基板を処理する基板処理方法であって、
前記基板処理装置が、前記第1カップ部の上側に配置され、前記第1カップ部が前記第2位置に位置する状態で前記環状開口の径方向外側に全周に亘って位置し、回転する前記基板から飛散する処理液を受ける第2カップ部をさらに備え、
前記第2カップ部が、前記チャンバ開閉機構または前記カップ部移動機構により前記上下方向に移動し、
前記基板処理方法が、
a)前記環状開口が形成されている状態で、前記第1カップ部を前記第1位置にて前記チャンバ蓋部および前記チャンバ本体に接触させることにより、前記チャンバ蓋部、前記チャンバ本体および前記第1カップ部を含む第1の外部密閉構造を形成する工程と、
b)前記a)工程よりも後に、前記第1の外部密閉構造内において、回転中の前記基板に第1の処理液を供給し、前記基板から飛散する前記第1の処理液を前記第1カップ部にて受ける工程と、
c)前記チャンバ蓋部により前記チャンバ本体の前記上部開口を閉塞することにより前記チャンバ密閉構造を形成する工程と、
d)前記c)工程よりも後に、前記チャンバ密閉構造内において、回転中の前記基板に第2の処理液を供給し、前記基板から飛散する前記第2の処理液を前記チャンバにて受ける工程と、
e)前記環状開口が形成されている状態で、前記第2カップ部を前記チャンバ蓋部および前記第2位置に位置する前記第1カップ部に接触させることにより、前記チャンバ蓋部、前記チャンバ本体、前記第1カップ部および前記第2カップ部を含む第2の外部密閉構造を形成する工程と、
f)前記e)工程よりも後に、前記第2の外部密閉構造内において、回転中の前記基板に第3の処理液を供給し、前記基板から飛散する前記第3の処理液を前記第2カップ部にて受ける工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る基板処理装置1を示す断面図である。基板処理装置1は、略円板状の半導体基板9(以下、単に「基板9」という。)に処理液を供給して基板9を1枚ずつ処理する枚葉式の装置である。
図1では、基板処理装置1の一部の構成の断面には、平行斜線の付与を省略している(他の断面図においても同様)。
【0015】
基板処理装置1は、チャンバ12と、トッププレート123と、チャンバ開閉機構131と、基板保持部14と、基板回転機構15と、液受け部16と、カバー17とを備える。カバー17は、チャンバ12の上方および側方を覆う。
【0016】
チャンバ12は、チャンバ本体121と、チャンバ蓋部122とを備える。チャンバ12は、上下方向を向く中心軸J1を中心とする略円筒状である。チャンバ本体121は、チャンバ底部210と、チャンバ側壁部214とを備える。チャンバ底部210は、中央部211と、内側壁部212と、環状底部213と、外側壁部215とを備える。中央部211は、中心軸J1を中心とする略円板状の部位である。内側壁部212は、中央部211の外周縁部から下方へと広がる略円筒状の部位である。環状底部213は、内側壁部212の下端から径方向外方へと広がる略円環板状の部位である。外側壁部215は、環状底部213の外周縁部から上方へと広がる略円筒状の部位である。外側壁部215の上端部には、径方向外方へと広がる略円環板状のベース部216が接続されている。
【0017】
チャンバ側壁部214は、中心軸J1を中心とする環状の部位である。チャンバ側壁部214は、外側壁部215の上端部(すなわち、ベース部216の内周縁部)から上方へと突出する。チャンバ側壁部214を形成する部材は、後述するように、液受け部16の一部を兼ねる。以下の説明では、チャンバ側壁部214と外側壁部215と環状底部213と内側壁部212と中央部211の外周縁部とに囲まれた空間を「下部環状空間217」という。換言すれば、チャンバ12は、チャンバ底部210の外周部に、中央部211よりも下方に凹む略円筒状の下部環状空間217を備える。
【0018】
基板保持部14の基板支持部141(後述)に基板9が支持された場合、基板9の外周縁部(すなわち、基板9の外周縁を含む外周縁近傍の部位)は、下部環状空間217の上方に位置する。換言すれば、基板9の下面92の外周縁部は、下部環状空間217と上下方向に対向する。また、基板9の下面92の外周縁部を除く部位は、チャンバ底部210の中央部211の上面と上下方向に対向する。
【0019】
チャンバ蓋部122は中心軸J1に垂直な略円板状であり、チャンバ12の上部を含む。チャンバ蓋部122は、チャンバ本体121の上部開口を閉塞する。
図1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から上方に離間した状態を示す。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121の上部開口を閉塞する際には、チャンバ蓋部122の下端部がチャンバ側壁部214の上部と接触する。
【0020】
チャンバ開閉機構131は、チャンバ12の可動部であるチャンバ蓋部122を、チャンバ12の他の部位であるチャンバ本体121に対して上下方向に相対的に移動する。チャンバ開閉機構131は、チャンバ蓋部122を昇降する蓋部昇降機構である。チャンバ開閉機構131によりチャンバ蓋部122が
図1に示す位置から上下方向に移動する際には、トッププレート123もチャンバ蓋部122と共に上下方向に移動する。チャンバ蓋部122がチャンバ本体121と接して上部開口を閉塞し、さらに、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121に向かって押圧されることにより、チャンバ12内に密閉されたチャンバ空間120(
図5参照)が形成される。換言すれば、チャンバ蓋部122によりチャンバ本体121の上部開口が閉塞されることより、チャンバ本体121およびチャンバ蓋部122を含むチャンバ密閉構造が形成される。
【0021】
基板保持部14は、チャンバ12内(すなわち、チャンバ空間120)に配置され、基板9を水平状態で保持する。具体的には、基板9は、微細パターンが形成された一方の主面91(以下、「上面91」という。)を中心軸J1に垂直に上側を向く状態で基板保持部14により保持される。基板保持部14は、基板9の外周縁部を下側から支持する上述の基板支持部141と、基板支持部141に支持された基板9の外周縁部を上側から押さえる基板押さえ部142とを備える。基板支持部141は、中心軸J1を中心とする略円環状である。基板支持部141は、中心軸J1を中心とする略円環板状の支持部ベース413と、支持部ベース413の上面に固定される複数の第1接触部411とを備える。基板押さえ部142は、トッププレート123の下面に固定される複数の第2接触部421を備える。複数の第2接触部421の周方向の位置は、実際には、複数の第1接触部411の周方向の位置と異なる。
【0022】
トッププレート123は、中心軸J1を中心とする略円板状の部材である。トッププレート123は、チャンバ蓋部122の下方、かつ、基板支持部141の上方に配置される。トッププレート123は中央に開口を有する。基板9が基板支持部141に支持されると、基板9の上面91は、中心軸J1に略垂直なトッププレート123の下面と対向する。トッププレート123の直径は、基板9の直径よりも大きく、トッププレート123の外周縁は、基板9の外周縁よりも全周に亘って径方向外側に位置する。トッププレート123は、基板9の上面91上の空間を周囲の空間から実質的に遮蔽する遮蔽板である。
【0023】
図1に示す状態において、トッププレート123は、チャンバ蓋部122により吊り下げられて支持される。チャンバ蓋部122は、中央部に略環状のプレート保持部222を有する。プレート保持部222は、中心軸J1を中心とする略円筒状の筒部223と、中心軸J1を中心とする略円板状のフランジ部224とを備える。フランジ部224は、筒部223の下端から径方向内方へと広がる。
【0024】
トッププレート123は、環状の被保持部237を備える。被保持部237は、中心軸J1を中心とする略円筒状の筒部238と、中心軸J1を中心とする略円板状のフランジ部239とを備える。筒部238は、トッププレート123の上面から上方に広がる。フランジ部239は、筒部238の上端から径方向外方へと広がる。筒部238は、プレート保持部222の筒部223の径方向内側に位置する。フランジ部239は、プレート保持部222のフランジ部224の上方に位置し、フランジ部224と上下方向に対向する。被保持部237のフランジ部239の下面が、プレート保持部222のフランジ部224の上面に接触することにより、トッププレート123が、チャンバ蓋部122から吊り下がった状態でチャンバ蓋部122に取り付けられる。
【0025】
トッププレート123の外周縁部の下面には、複数の第1係合部241が周方向に配列される。支持部ベース413の上面には、複数の第2係合部242が周方向に配列される。実際には、第1係合部241および第2係合部242は、基板支持部141の複数の第1接触部411、および、基板押さえ部142の複数の第2接触部421とは、周方向において異なる位置に配置される。これらの係合部は3組以上設けられることが好ましく、本実施の形態では4組設けられる。第1係合部241の下部には上方に向かって窪む凹部が設けられる。第2係合部242は支持部ベース413から上方に向かって突出する。
【0026】
基板回転機構15は、いわゆる中空モータである。基板回転機構15は、中心軸J1を中心とする環状のステータ部151と、環状のロータ部152とを備える。ロータ部152は、略円環状の永久磁石を含む。永久磁石の表面は、PTFE樹脂にてモールドされる。ロータ部152は、チャンバ12内に配置される。好ましくは、ロータ部152の少なくとも一部が、下部環状空間217内に配置される。
図1に示す例では、ロータ部152の全体が、下部環状空間217内に配置される。ロータ部152の上部には、接続部材を介して基板支持部141の支持部ベース413が取り付けられる。支持部ベース413は、ロータ部152の上方に配置される。
【0027】
ステータ部151は、中心軸J1を中心とする周方向に配列された複数のコイルを含む。ステータ部151は、チャンバ12の外部に配置される。ステータ部151は、ロータ部152の周囲、すなわち、ロータ部152の径方向外側に配置される。本実施の形態では、ステータ部151は、チャンバ底部210の外側壁部215およびベース部216に固定され、液受け部16の下方に位置する。
【0028】
ステータ部151に電流が供給されることにより、ステータ部151とロータ部152との間に、中心軸J1を中心とする回転力が発生する。これにより、ロータ部152が、中心軸J1を中心として水平状態で回転する。ステータ部151とロータ部152との間に働く磁力により、ロータ部152は、チャンバ12内において直接的にも間接的にもチャンバ12に接触することなく浮遊し、中心軸J1を中心として基板9を基板支持部141と共に浮遊状態にて回転する。
【0029】
液受け部16は、第1カップ部161と、カップ部移動機構162と、カップ対向部163と、第2カップ部164とを備える。第1カップ部161は中心軸J1を中心とする環状の部材である。第1カップ部161は、チャンバ12の径方向外側に全周に亘って位置する。カップ部移動機構162は、第1カップ部161を上下方向に移動する。カップ部移動機構162は、第1カップ部161の径方向外側に配置される。カップ部移動機構162は、上述のチャンバ開閉機構131と周方向に異なる位置に配置される。カップ対向部163は、第1カップ部161の下方に位置し、第1カップ部161と上下方向に対向する。カップ対向部163は、チャンバ側壁部214を形成する部材の一部である。カップ対向部163は、チャンバ側壁部214の径方向外側に位置する環状の液受け凹部165を有する。
【0030】
第1カップ部161は、側壁部611と、上面部612と、ベローズ617とを備える。側壁部611は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。上面部612は、中心軸J1を中心とする略円環板状であり、側壁部611の上端部から径方向内方および径方向外方へと広がる。上面部612のうち側壁部611の上端部から径方向内方へと広がる部位は、第1カップ部161の天蓋部である。側壁部611の下部は、カップ対向部163の液受け凹部165内に位置する。
【0031】
ベローズ617は、中心軸J1を中心とする略円筒状であり、上下方向に伸縮可能である。ベローズ617は、側壁部611の径方向外側において、側壁部611の周囲に全周に亘って設けられる。ベローズ617は、気体および液体を通過させない材料にて形成される。ベローズ617の上端部は、上面部612の外周縁部の下面に全周に亘って接続される。換言すれば、ベローズ617の上端部は、上面部612を介して側壁部611に間接的に接続される。ベローズ617と上面部612との接続部はシールされており、気体および液体の通過が防止される。ベローズ617の下端部は、カップ対向部163を介してチャンバ本体121に間接的に接続される。ベローズ617の下端部とカップ対向部163との接続部でも、気体および液体の通過が防止される。
【0032】
第2カップ部164は、第1カップ部161と同様に、中心軸J1を中心とする環状の部材である。第2カップ部164は、チャンバ12の径方向外側に全周に亘って位置する。第2カップ部164は、第1カップ部161の上側に配置される。換言すれば、第2カップ部164は、第1カップ部161と上下方向に重なる。
【0033】
第2カップ部164は、側壁部641と、上面部642とを備える。側壁部641は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。側壁部641の下部は、第1カップ部161の上面部612と上下方向に対向する。上面部642は、中心軸J1を中心とする略円環板状であり、側壁部641の上端部から径方向内方へと広がる。上面部642は、第2
カップ部164の天蓋部である。第2カップ部164の外径(すなわち、上面部642の外径)は、好ましくは、第1カップ部161の外径以下である。また、上面部642の内径は、チャンバ蓋部122の外径よりも小さい。
【0034】
上面部642の内周縁部(すなわち、第2カップ部164の内周縁部)は、チャンバ蓋部122の下端部から径方向外方に突出するフランジ部125の上側に位置する。フランジ部125は、チャンバ蓋部122の外周縁部である。第2カップ部164の上面部642の内周縁部は、フランジ部125と上下方向に重なる。
図1に示す状態では、上面部642の内周縁部の下面が、フランジ部125の上面に上側から接し、上面部642の内周縁部が、チャンバ蓋部122の外周縁部であるフランジ部125により支持される。これにより、第2カップ部164が、チャンバ蓋部122により吊り下げられて支持される。
図1に示す状態において、チャンバ開閉機構131によりチャンバ蓋部122が上下方向に移動されると、第2カップ部164も、チャンバ蓋部122と共にチャンバ本体121に対して相対的に上下方向に移動される。
【0035】
チャンバ蓋部122の中央には上部ノズル181が取り付けられる。上部ノズル181は、基板9の上面91の中央部に対向してチャンバ蓋部122に固定される。上部ノズル181は、トッププレート123の中央の開口に挿入される。上部ノズル181は中央に液吐出口を有し、基板9の上面91に処理液を供給する処理液供給ノズルである。上部ノズル181は、液吐出口の周囲に、ガスを噴出する噴出口も有する。チャンバ底部210の中央部211の中央には、下部ノズル182が取り付けられる。下部ノズル182は、中央に液吐出口を有し、基板9の下面92の中央部と対向する。
【0036】
図2は、基板処理装置1が備える気液供給部18および気液排出部19を示すブロック図である。気液供給部18は、上述の上部ノズル181および下部ノズル182に加えて、薬液供給部183と、リンス液供給部184と、置換液供給部185と、不活性ガス供給部186とを備える。
【0037】
薬液供給部183、リンス液供給部184および置換液供給部185は、それぞれ弁を介して上部ノズル181に接続される。上部ノズル181は、弁を介して不活性ガス供給部186にも接続される。上部ノズル181は、チャンバ12の内部にガスを供給するガス供給部の一部でもある。下部ノズル182は、弁を介してリンス液供給部184に接続される。
【0038】
液受け部16の液受け凹部165に接続される排出路191は、気液分離部192に接続される。気液分離部192は、排気部192a、排液部192bおよび液回収部192cにそれぞれ弁を介して接続される。チャンバ12のチャンバ底部210に接続される排出路193は、気液分離部194に接続される。気液分離部194は、排気部194aおよび排液部194bにそれぞれ弁を介して接続される。第2カップ部164の下端部に接続される排出路195は、気液分離部196に接続される。気液分離部196は、排気部196aおよび排液部196bにそれぞれ弁を介して接続される。気液供給部18および気液排出部19の各構成は、制御部10により制御される。チャンバ開閉機構131、基板回転機構15およびカップ部移動機構162(
図1参照)も制御部10により制御される。
【0039】
薬液供給部183から上部ノズル181を介して基板9に供給される薬液は、例えば、化学反応を利用して基板を処理する処理液である。当該薬液は、例えば、フッ酸や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液等のエッチング液である。リンス液供給部184は、上部ノズル181または下部ノズル182を介して基板9にリンス液を供給する。当該リンス液は、例えば、純水(DIW:deionized water)である。置換液供給部185は、上部ノズル181を介して基板9上に置換液を供給する。置換液は、後述するように、基板9上のリンス液と置換される。当該置換液は、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)である。薬液供給部183、リンス液供給部184および置換液供給部185は、基板9に処理液(すなわち、上述の薬液、リンス液または置換液)を供給する処理液供給部180である。基板処理装置1では、上述の処理液以外の処理液を供給する処理液供給部が設けられてもよい。
【0040】
不活性ガス供給部186は、上部ノズル181を介してチャンバ12内に不活性ガスを供給する。不活性ガス供給部186から供給される不活性ガスは、例えば、窒素(N
2)ガスである。当該不活性ガスは、窒素ガス以外のガスであってもよい。
【0041】
図3は、基板処理装置1における基板9の処理の流れを示す図である。基板処理装置1では、
図1に示すように、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間して上方に位置し、第1カップ部161がチャンバ蓋部122から離間して下方に位置する状態にて、基板9が外部の搬送機構によりチャンバ12内に搬入され、基板支持部141により下側から支持される(ステップS11)。ステップS11では、第2カップ部164は、チャンバ蓋部122により吊り下げられて支持され、第1カップ部161から上方に離間している。
【0042】
以下、
図1に示すチャンバ12、第1カップ部161および第2カップ部164の状態を「オープン状態」と呼ぶ。チャンバ蓋部122とチャンバ側壁部214との間の開口は、中心軸J1を中心とする環状であり、以下、「環状開口81」という。基板処理装置1では、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間することにより、基板9の周囲(すなわち、径方向外側)に環状開口81が形成される。ステップS11では、基板9は環状開口81を介してチャンバ12内に搬入される。
【0043】
基板9が搬入されると、チャンバ開閉機構131により、チャンバ蓋部122がトッププレート123と共に下降する。チャンバ蓋部122は、
図1に示す位置から
図4に示す位置まで移動し、基板押さえ部142の複数の第2接触部421が基板9の外周縁部に接触する。
【0044】
トッププレート123の下面、および、基板支持部141の支持部ベース413上には、上下方向にて対向する複数対の磁石(図示省略)が設けられている。以下、各対の磁石を「磁石対」ともいう。基板処理装置1では、複数の磁石対が、周方向において第1接触部411、第2接触部421、第1係合部241および第2係合部242とは異なる位置に、等角度間隔にて配置される。基板押さえ部142が基板9に接触している状態では、磁石対の間に働く磁力(引力)により、トッププレート123に下向きの力が働く。これにより、基板押さえ部142が基板9を基板支持部141へと押圧する。
【0045】
基板処理装置1では、基板押さえ部142が、トッププレート123の自重、および、磁石対の磁力により基板9を基板支持部141へと押圧することにより、基板9を基板押さえ部142と基板支持部141とで上下から挟んで強固に保持することができる。
【0046】
図4に示す状態では、被保持部237のフランジ部239が、プレート保持部222のフランジ部224の上方に離間しており、プレート保持部222と被保持部237とは接触していない。換言すれば、プレート保持部222によるトッププレート123の保持が解除されている。このため、トッププレート123は、チャンバ蓋部122から独立して、基板保持部14および基板保持部14に保持された基板9と共に、基板回転機構15により回転可能である。
【0047】
また、
図4に示す状態では、第1係合部241の下部の凹部に第2係合部242が嵌る。これにより、トッププレート123は、中心軸J1を中心とする周方向において基板支持部141の支持部ベース413と係合する。換言すれば、第1係合部241および第2係合部242は、トッププレート123の基板支持部141に対する回転方向における相対位置を規制する(すなわち、周方向における相対位置を固定する)位置規制部材である。チャンバ蓋部122が下降する際には、第1係合部241と第2係合部242とが嵌り合うように、基板回転機構15により支持部ベース413の周方向の位置が制御される。
【0048】
チャンバ蓋部122の下降が終了すると、制御部10(
図2参照)によりカップ部移動機構162が制御されることにより、第1カップ部161が上昇する。第1カップ部161は、上昇中に第2カップ部164に接触する。具体的には、第1カップ部161の上面部612の上面が、第2カップ部164の側壁部641の下端部に接触する。第2カップ部164の側壁部641の下端部は、第1カップ部161の上面部612の上面に設けられた円環状のリップシール613に全周に亘って接触する。これにより、第2カップ部164と第1カップ部161との接触部がシールされ、気体および液体の通過が防止される。換言すれば、リップシール613は、第1カップ部161において第2カップ部164と接触する位置に設けられ、第2カップ部164との間に全周に亘ってシールを形成するカップシール部である。
【0049】
第1カップ部161は、第2カップ部164に接した後も上昇を続け、
図1に示す位置から
図4に示す位置まで移動する。
図4に示す状態では、第2カップ部164は、チャンバ蓋部122のフランジ部125から上方へと離間し、第1カップ部161により下側から支持される。第2カップ部164の上面部642の内周縁部は、チャンバ蓋部122のフランジ部125の上方にて、フランジ部125から離間した位置に位置する。第1カップ部161の当該上昇は、チャンバ蓋部122の下降と並行して、あるいは、チャンバ蓋部122の下降よりも前に行われてもよい。
【0050】
また、
図4に示す状態では、第1カップ部161は、環状開口81の径方向外側に全周に亘って位置する。第1カップ部161の側壁部611は、環状開口81と径方向に対向する。第1カップ部161の上面部612の内周縁部の上面は、チャンバ蓋部122のフランジ部125の下面に設けられた円環状のリップシール252に全周に亘って接触する。これにより、第1カップ部161とチャンバ蓋部122との接触部がシールされ、気体および液体の通過が防止される。
【0051】
以下の説明では、
図4に示す第1カップ部161および第2カップ部164のそれぞれの位置を「第1位置」と呼ぶ。基板処理装置1では、
図4に示すように、第1位置に位置する第1カップ部161の上面部612はチャンバ蓋部122に接触し、第1カップ部161のベローズ617は、カップ対向部163を介してチャンバ本体121に間接的に接触する。このように、環状開口81が形成されている状態で、第1位置に位置する第1カップ部161がチャンバ蓋部122およびチャンバ本体121に接触することにより、チャンバ本体121、チャンバ蓋部122および第1カップ部161を含む第1の外部密閉構造が形成される(ステップS12)。
【0052】
以下の説明では、第1の外部密閉構造の内部空間(すなわち、チャンバ本体121、チャンバ蓋部122、第1カップ部161およびカップ対向部163により囲まれる密閉された内部空間)を、「第1拡大密閉空間100」と呼ぶ。第1拡大密閉空間100は、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121との間のチャンバ空間120と、第1カップ部161とカップ対向部163とに囲まれる第1側方空間160とが、環状開口81を介して連通することにより形成された1つの空間である。また、基板処理装置1において第1拡大密閉空間100が形成されている状態を、「第1の外部密閉状態」と呼ぶ。
【0053】
第1拡大密閉空間100が形成されると、基板回転機構15により一定の回転数での基板9の回転が開始される。また、不活性ガス供給部186(
図2参照)から第1拡大密閉空間100への不活性ガス(例えば、窒素ガス)の供給が開始されるとともに、排気部192a(
図2参照)による第1拡大密閉空間100内のガスの排出が開始される。これにより、所定時間の経過後に、第1拡大密閉空間100が、不活性ガスが充填された不活性ガス充填状態(すなわち、酸素濃度が低い低酸素雰囲気)となる。なお、第1拡大密閉空間100への不活性ガスの供給、および、第1拡大密閉空間100内のガスの排出は、
図1に示すオープン状態から行われていてもよい。
【0054】
続いて、第1の外部密閉構造内において、回転中の基板9の上面91の中央部に向けて、上部ノズル181から第1の処理液である薬液(例えば、エッチング液)の供給が開始される。上部ノズル181からの薬液は、回転する基板9の上面91に連続的に供給される。上面91上の薬液は、基板9の回転により基板9の外周部へと拡がり、上面91全体が薬液により被覆される。
【0055】
基板9の上面91の外周縁へと到達した薬液は、遠心力により当該外周縁から径方向外方へと飛散する。第1拡大密閉空間100では、回転する基板9の上面91から飛散する薬液は、環状開口81を介して第1カップ部161にて受けられ、液受け凹部165へと導かれる。液受け凹部165へと導かれた薬液は、
図2に示す排出路191を介して気液分離部192に流入する。そして、液回収部192cにより、気液分離部192から薬液が回収され、フィルタ等を介して薬液から不純物等が除去された後、再利用される。
【0056】
基板処理装置1では、第1の外部密閉構造内において、上部ノズル181から回転中の基板9の上面91に薬液が継続的に供給されることにより、基板9に対する薬液処理(例えば、エッチング処理)が行われる(ステップS13)。トッププレート123の下面は基板9の上面91に近接しているため、基板9に対する薬液処理は、トッププレート123の下面と基板9の上面91との間の極めて狭い空間において行われる。上部ノズル181からの薬液の供給開始から所定時間が経過すると、上部ノズル181からの薬液の供給が停止される。そして、基板回転機構15により、比較的短い所定時間だけ基板9の回転数が増大され、基板9上から薬液が除去される。
【0057】
薬液処理が終了すると、チャンバ開閉機構131およびカップ部移動機構162により、チャンバ蓋部122、第1カップ部161および第2カップ部164が、
図4に示す位置から同期して下降する。そして、
図5に示すように、チャンバ蓋部122の下端部がチャンバ側壁部214の上端部と接触してチャンバ本体121の上部開口が閉塞されることにより、チャンバ本体121およびチャンバ蓋部122を含むチャンバ密閉構造が形成される(ステップS14)。
【0058】
ステップS14では、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121との間の環状開口81(
図4参照)が閉塞され、チャンバ空間120が、第1側方空間160と隔絶された状態で密閉される。以下の説明では、環状開口81が閉塞されてチャンバ空間120が密閉された基板処理装置1の状態を、「チャンバ密閉状態」と呼ぶ。チャンバ密閉状態では、チャンバ蓋部122の下端部に設けられた円環状のリップシール231が、チャンバ側壁部214の上端部に全周に亘って接触する。これにより、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121との接触部がシールされ、気体および液体の通過が防止される。また、チャンバ密閉状態では、基板9は、チャンバ12の内壁と直接対向し、これらの間に他の液受け部は存在しない。
【0059】
図5に示す状態では、第1カップ部161はカップ対向部163に近接し、第1カップ部161の側壁部611の下部は、カップ対向部163の液受け凹部165内に位置する。また、
図5に示すようにチャンバ蓋部122がチャンバ本体121の上部開口を閉塞している状態においても、第2カップ部164は、
図4に示す状態と同様に、第1カップ部161により下側から支持される。第2カップ部164の上面部642の内周縁部は、チャンバ蓋部122のフランジ部125から上方に離間した位置に位置する。
【0060】
以下の説明では、
図5に示す第1カップ部161および第2カップ部164のそれぞれの位置を「第2位置」と呼ぶ。カップ部移動機構162は、第1カップ部161および第2カップ部164を、環状開口81(
図4参照)の径方向外側の第1位置と、第1位置よりも下方の第2位置との間で上下方向に移動する機構である。第1カップ部161は、
図1に示す基板処理装置1のオープン状態においても第2位置に配置され、基板9の搬入経路から退避している。すなわち、第1カップ部161の第2位置は、基板9の搬入時等に退避する退避位置でもある。
【0061】
チャンバ密閉状態でも、第1の外部密閉状態と同様に、基板押さえ部142が基板9を基板支持部141へと押圧することにより、基板9が、基板押さえ部142と基板支持部141とで上下から挟まれて強固に保持される。また、プレート保持部222によるトッププレート123の保持は解除されており、トッププレート123は、チャンバ蓋部122から独立して、基板保持部14および基板9と共に回転する。
【0062】
チャンバ空間120が密閉されると、排気部192a(
図2参照)によるガスの排出が停止されるとともに、排気部194aによるチャンバ空間120内のガスの排出が開始される。続いて、チャンバ密閉構造内において、回転中の基板9に対して、第2の処理液であるリンス液(例えば、純水)の供給がリンス液供給部184(
図2参照)により開始される。
【0063】
リンス液供給部184からのリンス液は、上部ノズル181および下部ノズル182から吐出されて基板9の上面91および下面92の中央部に連続的に供給される。リンス液は、基板9の回転により上面91および下面92の外周部へと拡がり、基板9の外周縁から径方向外方へと飛散する。基板9から飛散するリンス液は、チャンバ12の内壁(すなわち、チャンバ蓋部122およびチャンバ側壁部214の内壁)にて受けられ、
図2に示す排出路193、気液分離部194および排液部194bを介して廃棄される。
【0064】
基板処理装置1では、チャンバ密閉構造内において、上部ノズル181および下部ノズル182から、回転中の基板9の上面91および下面92にリンス液が継続的に供給されることにより、基板9に対するリンス処理が行われる(ステップS15)。ステップS15では、チャンバ12が基板9から飛散するリンス液を受けることにより、チャンバ12の内部の実質的な洗浄処理が、基板9のリンス処理と並行して行われる。リンス液の供給開始から所定時間が経過すると、リンス液供給部184からのリンス液の供給が停止される。
【0065】
リンス処理が終了すると、チャンバ開閉機構131により、チャンバ蓋部122が
図5に示す位置から上昇することにより、
図6に示すように、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から上方に離間し、環状開口81が形成される。そして、チャンバ蓋部122のフランジ部125の上面が、第2カップ部164の上面部642の内周縁部の下面に接触する。第2カップ部164の上面部642の内周縁部は、チャンバ蓋部122のフランジ部125の上面に設けられた円環状のリップシール251に全周に亘って接触する。これにより、第2カップ部164とチャンバ蓋部122との接触部がシールされ、気体および液体の通過が防止される。また、上述のように、第2カップ部164の側壁部641の下端部は、第2位置に位置する第1カップ部161の上面部612の上面に設けられた円環状のリップシール613に全周に亘って接触している。これにより、第2カップ部164と第1カップ部161との接触部がシールされ、気体および液体の通過が防止される。
【0066】
このように、
図6に示す基板処理装置1では、環状開口81が形成されている状態で、第2位置に位置する第2カップ部164が、チャンバ蓋部122および第2位置に位置する第1カップ部161に接触する。これにより、チャンバ蓋部122、チャンバ本体121、第1カップ部161および第2カップ部164を含む第2の外部密閉構造が形成される(ステップS16)。
図6に示す状態では、第2カップ部164が環状開口81の径方向外側に全周に亘って位置する。
【0067】
以下の説明では、第2の外部密閉構造の内部空間(すなわち、チャンバ本体121、チャンバ蓋部122、第1カップ部161および第2カップ部164により囲まれる密閉された内部空間)を、「第2拡大密閉空間110」と呼ぶ。第2拡大密閉空間110は、チャンバ蓋部122とチャンバ本体121との間のチャンバ空間120と、第2カップ部164と第1カップ部161の上面部612とに囲まれる第2側方空間169とが、環状開口81を介して連通することにより形成された1つの空間である。また、基板処理装置1において第2拡大密閉空間110が形成されている状態を、「第2の外部密閉状態」と呼ぶ。
【0068】
第2拡大密閉空間110が形成されると、排気部194a(
図2参照)によるガスの排出が停止されるとともに、排気部196aによる第2拡大密閉空間110内のガスの排出が開始される。続いて、第2の外部密閉構造内において、回転中の基板9の上面91の中央部に向けて、上部ノズル181から第3の処理液である置換液(例えば、IPA)の供給が開始される。上部ノズル181からの置換液は、回転する基板9の上面91に連続的に供給され、基板9の回転により基板9の外周部へと拡がる。これにより、基板9の上面91上に残留しているリンス液が置換液により置換され、基板9の上面91全体が置換液により被覆される。
【0069】
基板9の上面91の外周縁へと到達したリンス液および置換液は、遠心力により当該外周縁から径方向外方へと飛散する。第2拡大密閉空間110では、回転する基板9の上面91から飛散するリンス液および置換液は、環状開口81を介して第2カップ部164にて受けられる。第2カップ部164にて受けられたリンス液および置換液は、
図2に示す排出路195、気液分離部196および排液部196bを介して廃棄される。
【0070】
基板処理装置1では、第2の外部密閉構造内において、上部ノズル181から回転中の基板9の上面91に置換液が継続的に供給されることにより、基板9に対する置換処理が行われる(ステップS17)。置換液の供給開始から所定時間が経過すると、置換液供給部185からの置換液の供給が停止される。置換処理が終了すると、基板回転機構15により基板9の回転数が増大され、遠心力により基板9上から置換液が除去される。基板9上から飛散した置換液は、第2カップ部164により受けられる。
【0071】
続いて、チャンバ開閉機構131により、チャンバ蓋部122が
図6に示す位置から
図5に示す位置へと下降する。これにより、環状開口81(
図6参照)が閉塞され、チャンバ密閉構造が形成される(ステップS18)。チャンバ空間120が密閉されると、排気部196a(
図2参照)によるガスの排出が停止されるとともに、排気部194aによるチャンバ空間120内のガスの排出が開始される。そして、チャンバ密閉構造内において、基板9の回転数がさらに増大され、基板9の乾燥処理が行われる(ステップS19)。基板9の乾燥開始から所定時間が経過すると、基板9の回転が停止する。基板9の乾燥処理は、排気部194aによりチャンバ空間120が減圧され、大気圧よりも低い減圧雰囲気にて行われてもよい。
【0072】
その後、チャンバ開閉機構131により、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間し、
図5に示す位置から
図1に示す位置へと上昇する。換言すれば、チャンバ蓋部122が、チャンバ本体121から離間する方向に、チャンバ本体121に対して相対的に移動する。このとき、トッププレート123は、チャンバ蓋部122のプレート保持部222により保持されて、チャンバ蓋部122と共に上昇する。また、第2カップ部164の上面部642の内周縁部は、チャンバ蓋部122のフランジ部125により支持され、第2カップ部164がチャンバ蓋部122と共に上昇する(すなわち、チャンバ本体121に対して相対的に上方に移動する。)。チャンバ蓋部122、トッププレート123および第2カップ部164が
図1に示す位置に位置すると、基板9が、図示省略の搬送機構によりチャンバ12から搬出される(ステップS20)。基板処理装置1では、複数の基板9に対し、上述のステップS11〜S20が順次行われる。
【0073】
以上に説明したように、基板処理装置1は、チャンバ12と、チャンバ開閉機構131と、基板保持部14と、基板回転機構15と、処理液供給部180と、第1カップ部161と、カップ部移動機構162と、第2カップ部164とを備える。チャンバ12は、チャンバ本体121およびチャンバ蓋部122を有し、チャンバ蓋部122によりチャンバ本体121の上部開口を閉塞することにより、チャンバ本体121およびチャンバ蓋部122を含むチャンバ密閉構造を形成する。チャンバ開閉機構131は、チャンバ蓋部122をチャンバ本体121に対して上下方向に相対的に移動する。基板保持部14は、チャンバ12内に配置され、水平状態で基板9を保持する。基板回転機構15は、上下方向を向く中心軸J1を中心として、基板9を基板保持部14と共に回転する。処理液供給部180は、基板9上に処理液を供給する。
【0074】
第1カップ部161は、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間することにより基板9の周囲に形成される環状開口81の径方向外側に全周に亘って位置し、回転する基板9から飛散する処理液を受ける。カップ部移動機構162は、第1カップ部161を、環状開口81の径方向外側の第1位置と、第1位置よりも下方の第2位置との間で上下方向に移動する。第2カップ部164は、第1カップ部161の上側に配置され、第1カップ部161が第2位置に位置する状態で環状開口81の径方向外側に全周に亘って位置し、回転する基板9から飛散する処理液を受ける。第2カップ部164は、チャンバ開閉機構131またはカップ部移動機構162により上下方向に移動する。
【0075】
基板処理装置1では、環状開口81が形成されている状態で、第1位置に位置する第1カップ部161がチャンバ蓋部122およびチャンバ本体121に接触することにより、チャンバ蓋部122、チャンバ本体121および第1カップ部161を含む第1の外部密閉構造が形成される。また、環状開口81が形成されている状態で、第2カップ部164がチャンバ蓋部122および第2位置に位置する第1カップ部161に接触することにより、チャンバ蓋部122、チャンバ本体121、第1カップ部161および第2カップ部164を含む第2の外部密閉構造が形成される。
【0076】
このように、基板処理装置1では、チャンバ蓋部122を上下方向に移動するチャンバ開閉機構131、または、第1カップ部161を上下方向に移動するカップ部移動機構162により、第2カップ部164を上下方向に移動する機構が兼用される。これにより、基板処理装置1の構成要素を移動させる機構の増加を抑制しつつ、複数種類の密閉空間(すなわち、チャンバ空間120、第1拡大密閉空間100および第2拡大密閉空間110)を形成することができる。その結果、複数種類の処理液(例えば、薬液、リンス液および置換液)の混液を抑制しつつ、複数種類の処理(例えば、薬液処理、リンス処理および置換処理)を、それぞれに適した種類の密閉空間にて行うことができる。
【0077】
基板処理装置1における基板9の処理では、上述のように、環状開口81が形成されている状態で、第1カップ部161を第1位置にてチャンバ蓋部122およびチャンバ本体121に接触させることにより、チャンバ蓋部122、チャンバ本体121および第1カップ部161を含む第1の外部密閉構造が形成される(ステップS12)。そして、ステップS12よりも後に、第1の外部密閉構造内において、回転中の基板9に第1の処理液(例えば、薬液)が供給され、基板9から飛散する第1の処理液が第1カップ部161にて受けられる(ステップS13)。
【0078】
また、チャンバ蓋部122によりチャンバ本体121の上部開口を閉塞することにより、チャンバ密閉構造が形成される(ステップS14)。そして、ステップS14よりも後に、チャンバ密閉構造内において、回転中の基板9に第2の処理液(例えば、リンス液)が供給され、基板9から飛散する第2の処理液がチャンバ12にて受けられる(ステップS15)。
【0079】
さらに、環状開口81が形成されている状態で、第2カップ部164をチャンバ蓋部122および第2位置に位置する第1カップ部161に接触させることにより、チャンバ蓋部122、チャンバ本体121、第1カップ部161および第2カップ部164を含む第2の外部密閉構造が形成される(ステップS16)。そして、ステップS16よりも後に、第2の外部密閉構造内において、回転中の基板9に第3の処理液(例えば、置換液)が供給され、基板9から飛散する第3の処理液が第2カップ部164にて受けられる(ステップS17)。
【0080】
このように、基板9から飛散する第1の処理液を、チャンバ12にて実質的に受けることなく、第1カップ部161にて受けることにより、チャンバ空間120に第1の処理液の雰囲気が残留することを防止または抑制することができる。その結果、チャンバ密閉構造内において基板9の処理が行われる際に、第1の処理液の残留雰囲気による基板9への悪影響を防止または抑制することができる。例えば、チャンバ密閉構造内において基板9のリンス処理が行われる際に、薬液の残留雰囲気による基板9への悪影響を防止または抑制することができる。
【0081】
また同様に、基板9から飛散する第3の処理液を、チャンバ12にて実質的に受けることなく、第2カップ部164にて受けることにより、チャンバ空間120に第3の処理液の雰囲気が残留することを防止または抑制することができる。その結果、チャンバ密閉構造内において基板9の処理が行われる際に、第3の処理液の残留雰囲気による基板9への悪影響を防止または抑制することができる。例えば、チャンバ密閉構造内において基板9の乾燥処理が行われる際に、置換液の残留雰囲気による基板9への悪影響を防止または抑制することができる。
【0082】
基板処理装置1では、上述のように、第2カップ部164の内周縁部が、チャンバ蓋部122の外周縁部と上下方向に重なっている。そして、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121の上部開口を閉塞している状態では、第2カップ部164が第1カップ部161により支持され、第2カップ部164の内周縁部が、チャンバ蓋部122の外周縁部から上方に離間する。また、チャンバ開閉機構131により、チャンバ蓋部122がチャンバ本体121から離間する方向に相対的に移動する際に、第2カップ部164の内周縁部がチャンバ蓋部122の外周縁部により支持され、第2カップ部164がチャンバ蓋部122と共にチャンバ本体121に対して相対的に移動する。
【0083】
このように、第2カップ部164が、チャンバ本体121から離間する方向にチャンバ蓋部122と共に相対移動することにより、チャンバ12への基板9の搬入、および、チャンバ12からの基板9の搬出を容易とすることができる。また、第2カップ部164をチャンバ蓋部122とは別の部材とすることにより、第2カップ部164がチャンバ蓋部122に固定されている場合に比べて、チャンバ蓋部122および第2カップ部164の形状の自由度を向上することができる。
【0084】
上述のように、第2カップ部164の外径は、第1カップ部161の外径以下である。これにより、基板処理装置1の径方向の大型化を抑制することができる。
【0085】
基板処理装置1では、第1カップ部161は、第2カップ部164と接触する位置に、第2カップ部164との間に全周に亘ってシールを形成するカップシール部(上記例では、リップシール613)を備える。カップシール部は、例えば、縦断面がC状であって横方向に開口する円環状の2つの弾性部材を、開口部とは反対側の部位を互いに向けて同心円状に配置したものである。カップシール部には、第2カップ部164にて受けられた第3の処理液が付着することがある。基板処理装置1では、上述のようにカップシール部が第1カップ部161に設けられることにより、基板9のチャンバ12への搬出入時に第2カップ部164を上昇させる際に、カップシール部に付着した第3の処理液が第2カップ部164と共に上方へと移動することを防止または抑制することができる。その結果、搬出入中の基板9上に、第2カップ部164から第3の処理液が落下することを防止または抑制することができる。
【0086】
上述の基板処理装置1および基板処理方法では、様々な変更が可能である。
【0087】
例えば、
図3に示す基板処理方法では、チャンバ密閉状態で、ステップS15のリンス処理およびステップS19の乾燥処理の2種類の処理が行われるが、必ずしも、チャンバ密閉状態において2種類の処理が行われる必要はない。上述の基板処理方法では、チャンバ密閉状態、第1の外部密閉状態および第2の外部密閉状態のそれぞれにおいて、1種類以上の処理が行われていればよい。また、チャンバ密閉状態、第1の外部密閉状態および第2の外部密閉状態における処理の順序は、様々に変更されてよい。
【0088】
基板処理装置1では、第2カップ部164の外径が、第1カップ部161の外径よりも大きくてもよい。また、第1カップ部161と第2カップ部164とが接触する位置に配置される上述のカップシール部は、第2カップ部164に設けられてもよい。
【0089】
基板処理装置1では、第2カップ部164は、
図1および
図6に示す状態でチャンバ蓋部122に対して固定されていてもよい。具体的には、第2カップ部164の上面部642の内周縁部が、チャンバ蓋部122のフランジ部125に接触した状態で、第2カップ部164がチャンバ蓋部122に固定されていてもよい。この場合、第2カップ部164の上下方向の移動には、カップ部移動機構162は利用されず、チャンバ開閉機構131が利用される。また、
図6に示す状態において、第1カップ部161とカップ対向部163との間の上下方向の距離が図示されたものよりも大きくされ、チャンバ密閉構造を形成する際には、第1カップ部161がさらに下降する。
【0090】
あるいは、第2カップ部164は、
図4および
図5に示す状態で第1カップ部161に対して固定されていてもよい。具体的には、第2カップ部164の側壁部641の下端部が、第1カップ部161の上面部612に接触した状態で、第2カップ部164が第1カップ部161に固定されていてもよい。この場合、第2カップ部164の上下方向の移動には、チャンバ開閉機構131は利用されず、カップ部移動機構162が利用される。また、チャンバ蓋部122の外径は、第2カップ部164の上面部642の内径よりも僅かに小さくされ、
図6に示す第2の外部密閉構造が形成される際には、第2カップ部164の上面部642の内周縁とチャンバ蓋部122の外側面との間にシールが形成される。具体的には、例えば、第2カップ部164の上面部642の内周縁にリップシールが設けられ、当該リップシールがチャンバ蓋部122の外側面と接触することにより(すなわち、当該リップシールを介して第2カップ部164がチャンバ蓋部122に接触することにより)、第2カップ部164とチャンバ蓋部122との間に、気体および液体の通過を防止するシールが形成される。
【0091】
基板処理装置1では、トッププレート123は省略されてもよい。また、上部ノズル181は、必ずしも、基板9の上面91の中央部に対向して固定される必要はない。上部ノズル181は、例えば、基板9の上方にて基板9の中央部と外周縁部との間で往復移動を繰り返しつつ処理液を供給する構造であってもよい。
【0092】
基板処理装置1では、チャンバ空間120にガスを供給して加圧する加圧部が設けられてもよい。チャンバ空間120の加圧は、チャンバ12が密閉されたチャンバ密閉状態で行われ、チャンバ空間120が大気圧よりも高い加圧雰囲気となる。なお、不活性ガス供給部186が当該加圧部を兼ねてもよい。
【0093】
チャンバ開閉機構131は、必ずしもチャンバ蓋部122を上下方向に移動する必要はなく、チャンバ蓋部122が固定された状態で、チャンバ本体121を上下方向に移動してもよい。チャンバ12は、必ずしも略円筒状には限定されず、様々な形状であってよい。
【0094】
基板回転機構15のステータ部151およびロータ部152の形状および構造は、様々に変更されてよい。ロータ部152は、必ずしも浮遊状態にて回転する必要はなく、チャンバ12内にロータ部152を機械的に支持するガイド等の構造が設けられ、当該ガイドに沿ってロータ部152が回転してもよい。基板回転機構15は、必ずしも中空モータである必要はなく、軸回転型のモータが基板回転機構として利用されてもよい。
【0095】
第1カップ部161および第2カップ部164の形状は、適宜変更されてよい。基板処理装置1では、第1カップ部161の上面部612以外の部位(例えば、側壁部611)がチャンバ蓋部122に接することにより、第1拡大密閉空間100が形成されてもよい。また、第2カップ部164の上面部642以外の部位(例えば、側壁部641)がチャンバ蓋部122に接することにより、第2拡大密閉空間110が形成されてもよい。
【0096】
上部ノズル181および下部ノズル182の形状は、突出する形状には限定されない。処理液を吐出する吐出口、または、不活性ガスを噴出する噴出口を有する部位であれば全て本実施の形態のノズルの概念に含まれる。
【0097】
基板処理装置1では、薬液供給部183から供給される薬液により、上述のエッチング処理以外の化学反応を利用した様々な処理、例えば、基板上の酸化膜の除去や現像液による現像等が行われてよい。
【0098】
基板処理装置1では、半導体基板以外に、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、FED(field emission display)等の表示装置に使用されるガラス基板の処理に利用されてもよい。あるいは、基板処理装置1は、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板および太陽電池用基板等の処理に利用されてもよい。
【0099】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。