特許第6706566号(P6706566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706566真空ポンプ、および真空ポンプに備わるらせん状板、回転円筒体、ならびにらせん状板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706566
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】真空ポンプ、および真空ポンプに備わるらせん状板、回転円筒体、ならびにらせん状板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 19/04 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   F04D19/04 F
   F04D19/04 D
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-205842(P2016-205842)
(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公開番号】特開2018-66327(P2018-66327A)
(43)【公開日】2018年4月26日
【審査請求日】2019年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 均
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 隆
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 剛志
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3135312(JP,U)
【文献】 特表2015−505012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と排気口が形成された外装体と、
前記外装体に内包され、回転自在に支持された回転軸と、
前記回転軸または前記回転軸に配設された回転円筒体の外周面に、少なくとも1つのスリットが設けられ、らせん状に配設されたらせん状板と、
前記らせん状板の前記スリット内に、当該スリットと所定の間隔を設けて配置され、貫通した穴部を有する固定円板と、
前記固定円板を固定するスペーサと、
前記らせん状板と前記固定円板との相互作用により前記吸気口側から吸気した気体を前記排気口側へ移送する真空排気機構と、
を備える真空ポンプであって、
前記スリットの下流側の前記らせん状板の少なくとも1つは、前記スリットの上流側の前記らせん状板の延長線上より、前記スリットの上流側の前記らせん状板と重なる方向へオフセットして配設されたことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
前記スリットの少なくとも1つにおいて、上流側の前記らせん状板と下流側の前記らせん状板が所定の隙間を介して重なり、当該スリットが前記回転軸方向に不可視となることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ。
【請求項3】
前記スリットの少なくとも1つにおいて、上流側の前記らせん状板と下流側の前記らせん状板の位相差は、前記スリットの幅と同値であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空ポンプ。
【請求項4】
前記らせん状板が前記スリットにより分割されて形成された鋭角部の少なくとも1つに、面取り加工が施されたことを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項3に記載の真空ポンプ。
【請求項5】
前記面取り加工は、前記らせん状板が前記スリットにより分割されて形成された水平面の幅内にて施され、かつ、前記面取りが鋭角であることを特徴とする請求項4に記載の真空ポンプ。
【請求項6】
前記らせん状板の前記スリットの幅、あるいは、上流側の前記らせん状板と下流側の前記らせん状板の前記位相差、のうち少なくともいずれか1つよりも小さい半径を有する切削加工用工具によって切削成形された前記らせん状板を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のうち少なくともいずれか1項に記載の真空ポンプ。
【請求項7】
前記請求項1から請求項6の少なくともいずれか1項に記載の真空ポンプに備わるらせん状板。
【請求項8】
前記請求項7に記載のらせん状板を備えることを特徴とする回転円筒体。
【請求項9】
前記請求項7に記載のらせん状板の製造方法であって、
下流側の前記らせん状板の傾斜面を切削する第1工程と、
前記下流側のらせん状板の前記面取りを形成する第2工程と、
上流側の前記らせん状板の傾斜面を切削する第3工程と、
を連続して加工することを特徴とする、前記らせん状板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ、および真空ポンプに備わるらせん状板、回転円筒体、ならびにらせん状板の製造方法に関する。
詳しくは、スリットを有するらせん状板を備える真空ポンプ、および真空ポンプに備わるらせん状板、回転円筒体、ならびにらせん状板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配設される真空室内の真空排気処理を行うための真空ポンプには、回転部と固定部から構成され排気機能を発揮する構造物である気体移送機構が収納されている。
この気体移送機構のうち、回転部に配設されるらせん状板と、固定部に配設される固定円板との相互作用によってガスを圧縮する構成のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015−505012号
【0004】
特許文献1には、真空ポンプの回転円筒の側面にらせん状板(螺旋翼30など)が設置され、当該らせん状板において少なくとも1つ設けられたスロット40(本願の説明ではスリットと称する構成)内に、アレイ状の穴部(穿孔38など)が設けられた固定円板(有孔交差要素14など)が配設される技術について記載されている。
【0005】
図6および図7は、従来技術を説明するための概略図である。
図6に示したように、上述したようなアレイ状の穴部が設けられた固定円板10は、従来のらせん状板9000に設けられたスリット9001内に、当該スリット9001と所定のクリアランス(隙間/間隙)を介して配設される。
この構造であれば、吸気口(上流)側から排気口(下流)側までらせん形状が連続するようにらせん状板9000を配設させることができるので、製造過程における加工が容易であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようならせん状板9000を備える従来の真空ポンプでは、以下に記すような課題があった。
図7(a)に示したように、従来のらせん状板9000では、らせん状板9000の角度θ1が小さい場合には、上流側と下流側のらせん状板9000とで隙間ができ、スリット9001(隙間C)において、らせん状板9000同士(上流側と下流側)は重なり部分を共有しない。つまり、らせん状板9000同士が所定のクリアランスを介して対向することはない構成になる。
この構成だと、肉部11と穴部12を有する固定円板10をらせん状板9000のスリット9001内に配設させた場合に、図7(b)に示したように、らせん状板9000(穴部12)を逆流するガスが増加してしまい、排気効率が低下する虞があった。
【0007】
本発明は、ガスの逆流を低減し、また、排気効率の低下を抑制して生産性を向上させる真空ポンプ、および真空ポンプに備わるらせん状板、回転円筒体、ならびにらせん状板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の本願発明では、吸気口と排気口が形成された外装体と、前記外装体に内包され、回転自在に支持された回転軸と、前記回転軸または前記回転軸に配設された回転円筒体の外周面に、少なくとも1つのスリットが設けられ、らせん状に配設されたらせん状板と、前記らせん状板の前記スリット内に、当該スリットと所定の間隔を設けて配置され、貫通した穴部を有する固定円板と、前記固定円板を固定するスペーサと、前記らせん状板と前記固定円板との相互作用により前記吸気口側から吸気した気体を前記排気口側へ移送する真空排気機構と、を備える真空ポンプであって、前記スリットの下流側の前記らせん状板の少なくとも1つは、前記スリットの上流側の前記らせん状板の延長線上より、前記スリットの上流側の前記らせん状板と重なる方向へオフセットして配設されたことを特徴とする真空ポンプを提供する。
請求項2記載の本願発明では、前記スリットの少なくとも1つにおいて、上流側の前記らせん状板と下流側の前記らせん状板が所定の隙間を介して重なり、当該スリットが前記回転軸方向に不可視となることを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプを提供する。
請求項3記載の本願発明では、前記スリットの少なくとも1つにおいて、上流側の前記らせん状板と下流側の前記らせん状板の位相差は、前記スリットの幅と同値であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の真空ポンプを提供する。
請求項4記載の本願発明では、前記らせん状板が前記スリットにより分割されて形成された鋭角部の少なくとも1つに、面取り加工が施されたことを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項3に記載の真空ポンプを提供する。
請求項5記載の本願発明では、前記面取り加工は、前記らせん状板が前記スリットにより分割されて形成された水平面の幅内にて施され、かつ、前記面取りが鋭角であることを特徴とする請求項4に記載の真空ポンプを提供する。
請求項6記載の本願発明では、前記らせん状板の前記スリットの幅、あるいは、上流側の前記らせん状板と下流側の前記らせん状板の前記位相差、のうち少なくともいずれか1つよりも小さい半径を有する切削加工用工具によって切削成形された前記らせん状板を備えることを特徴とする請求項1から請求項5のうち少なくともいずれか1項に記載の真空ポンプを提供する。
請求項7記載の本願発明では、前記請求項1から請求項6の少なくともいずれか1項に記載の真空ポンプに備わるらせん状板を提供する。
請求項8記載の本願発明では、前記請求項7に記載のらせん状板を備えることを特徴とする回転円筒体を提供する。
請求項9記載の本願発明では、前記請求項7に記載のらせん状板の製造方法であって、下流側の前記らせん状板の傾斜面を切削する第1工程と、前記下流側のらせん状板の前記面取りを形成する第2工程と、上流側の前記らせん状板の傾斜面を切削する第3工程と、を連続して加工することを特徴とする、前記らせん状板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スリットの上流側のらせん状板と、下流側のらせん状板が重なる構成にすることで、らせん状板の間の隙間からガスが逆流するのを低減することができる。その結果、当該らせん状板が備えられた真空ポンプの排気効率を上昇させることができる。
また、らせん状板を一体加工できるようにすることで、生産性を向上させることができる。
以上のことから、排気性能に優れた真空ポンプを低コストで実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る真空ポンプの概略構成例を示した図である。
図2】本発明の実施形態に係るらせん状板を説明するための、真空ポンプの一部概略図である。
図3】本発明の実施形態に係るらせん状板を説明するための概略拡大図である。
図4】本発明の実施形態に係るらせん状板を説明するための概略拡大図である。
図5】本発明の実施形態(変形例)に係るらせん状板を説明するための概略拡大図である。
図6】従来技術を説明するための概略図である。
図7】従来技術を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(i)実施形態の概要
本発明の実施形態に係る真空ポンプでは、スリットよりも下流側のらせん状板を、スリットよりも上流側のらせん状板の延長線上には配設せず、かつ、スリットにより形成される隙間を小さくする下流側の方向へ移動した位置に配設されるように構成する。
さらに、下流側のらせん状板の上述した移動量は、上流側と下流側とでらせん状板同士を軸方向に投影すると隙間がなくなって重なり部分が形成される量とする。
また、らせん状板を加工する(削り出す)にあたり、以下(1)または(2)の少なくともいずれか1つの範囲で設計することが望ましい。
(1)加工用エンドミルの半径は、らせん状板のスリット幅よりも小さくする。
(2)加工用エンドミルの半径は、上流側のらせん状板と下流側のらせん状板との位相差よりも小さくする。なお、本願における「位相差」とは、角度差を示すのではなく、位置関係による周方向間隔(距離)を示すものとして説明する。
さらに、らせん状板のスリットで分割されて形成される鋭角部の少なくとも1つに面取り加工を施す。
【0012】
上述した構成により、穴部を有する固定円板をらせん状板のスリット内に配設させた場合に、ガスがらせん状板のスリットおよび固定円板の穴部を通り抜けて逆流してしまうことを低減することができる。また、加工に必要な工具の移動経路である加工パスの無駄を省いてらせん状板を一体成形できるようにすることで、生産性を向上させることができる。さらに、らせん状板と固定円板の間で生じる摩擦損失を低減し、ガスの流れを滑らかにすることができる。
【0013】
(ii)実施形態の詳細
以下、本発明の好適な実施の形態について、図1から図5を参照して詳細に説明する。
(真空ポンプ1の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る真空ポンプ1の概略構成例を示した図であり、真空ポンプ1の軸線方向の断面を示した図である。
なお、本発明の実施形態では、便宜上、回転翼の直径方向を「径(直径・半径)方向」、回転翼の直径方向と垂直な方向を「軸線方向(または軸方向)」として説明する。
真空ポンプ1の外装体を形成するケーシング(外筒)2は、略円筒状の形状をしており、ケーシング2の下部(排気口6側)に設けられたベース3と共に真空ポンプ1の筐体を構成している。そして、この筐体の内部には、真空ポンプ1に排気機能を発揮させる構造物である気体移送機構が収納されている。
本実施形態では、この気体移送機構は、大きく分けて、回転自在に支持された回転部(ロータ部)と、筐体に対して固定された固定部(ステータ部)から構成されている。
また、図示しないが、真空ポンプ1の外装体の外部には、真空ポンプ1の動作を制御する制御装置が専用線を介して接続されている。
【0014】
ケーシング2の端部には、当該真空ポンプ1へ気体を導入するための吸気口4が形成されている。また、ケーシング2の吸気口4側の端面には、外周側へ張り出したフランジ部5が形成されている。
また、ベース3には、当該真空ポンプ1から気体を排気するための排気口6が形成されている。
【0015】
気体移送機構のうち回転部は、回転軸であるシャフト7、このシャフト7に配設されたロータ8、ロータ8に設けられた複数枚のらせん状板900を備える。
各らせん状板900は、シャフト7の軸線に対して放射状に伸び、かつ、螺旋流路を形成するように伸びたらせん状の円板部材により構成される。なお、当該円板部材には、シャフト7の軸線に対して水平方向に少なくとも1つのスリットが形成されている。
なお、らせん状板900は、ロータ8と一体に形成される構成でもよいし、別部品として配設される構成にしてもよい。
【0016】
シャフト7の軸線方向中程には、シャフト7を高速回転させるためのモータ部20が設けられ、ステータコラム80に内包されている。
さらに、ステータコラム80内には、シャフト7のモータ部20に対して吸気口4側と排気口6側に、シャフト7をラジアル方向(径方向)に非接触で支持するための径方向磁気軸受装置30、31が設けられている。また、シャフト7の下端には、シャフト7を軸線方向(アキシャル方向)に非接触で支持するための軸方向磁気軸受装置40が設けられている。
【0017】
気体移送機構のうち固定部は、筐体(ケーシング2)の内周側に形成されている。
この固定部には、円筒形状をしたスペーサ70により互いに隔てられて固定されている固定円板10が配設されている。
固定円板10は、シャフト7の軸線に対して垂直に放射状に伸びた円板形状をした板状部材である。本実施形態では、半円形状(不完全な円形状)の部材を接合することにより円形形状に形成され、ケーシング2の内周側において、らせん状板900と互い違いに、軸線方向に複数段配設されている。また、固定円板10には、貫通している孔である穴部12(図3)が設けられている。なお、固定円板10における穴部12ではない部分を肉部11(図3)と称する。
なお、段数については、真空ポンプ1に要求される排出性能(排気性能)を満たすために必要な任意の数の固定円板10および(あるいは)らせん状板900を設ける構成にすればよい。
【0018】
スペーサ70は、円筒形状をした固定部材であり、各段の固定円板10は、このスペーサ70によって互いに隔てられて固定されている。
このような構成により、真空ポンプ1は、真空ポンプ1に配設される真空室(図示しない)内の真空排気処理を行う。
【0019】
上述した真空ポンプ1に配設されるらせん状板900について図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係るらせん状板900を説明するための、真空ポンプ1のらせん状板900および固定円板10の概略図である。
図3は、本実施形態に係るらせん状板900を説明するための概略図であり、図2におけるスリット901付近の拡大図である。
図2に示したように、本実施形態では、スリット901よりも下流側のらせん状板900を、スリット901が小さくなる方向へずらしてらせん状板900を構成している。
より詳しくは、図3(a)に示したように、スリット901よりも下流側のらせん状板900を、スリット901よりも上流側のらせん状板900の延長線上(同図点線)に配設せず、同図にて左向きの矢印で示したように、隙間Cを小さくする方向、すなわち、スリット901の上流側のらせん状板900と重なる方向へずらして(移動して/オフセットして)らせん状板900を構成する。
なお、参考までに、同図において二点鎖線で示したらせん状板900の位置は、下流側のらせん状板900を、スリット901よりも上流側のらせん状板900の延長線上に配設した場合の位置(従来技術)である。
【0020】
さらに、より望ましくは、同図に示したように、隙間Cを小さくするだけではなく、さらに下流側のらせん状板900の上流側のらせん状板900方向への移動幅を増して「重なり部分N」が形成される構成にするとよい。より詳しくは、上流側と下流側とで、らせん状板900同士が、軸方向に投影するとスリットがなくなる(見えなくなる/不可視になる)ように重なる「重なり部分N」が形成されるまで、下流側のらせん状板900を上流側のらせん状板900の方向へ移動する(ずらす/オフセットする)構成にするとよい。つまり、本実施形態では、近接する上流側と下流側のらせん状板900同士が所定のクリアランス(スリット901)を介して軸方向に対向する構成となる。
この構成であれば、図3(b)に示したように、貫通している孔である穴部12および穴部12以外の部分である肉部11を有する固定円板10を、らせん状板900のスリット901内に配設させた場合に、ガスがらせん状板900(隙間C/スリット901)および固定円板10(穴部12)を通り抜けて逆流してしまうこと低減することができる。
【0021】
このように、本実施形態のらせん状板900を備える真空ポンプ1では、上述したらせん状板900の構成によって、らせん状板900のスリット901(隙間C)が小さくなる、または、軸方向に投影した場合に完全になくなるので、らせん状板900のスリット901からガスが逆流してしまうこと低減することができる。そのため、排気性能が優れた真空ポンプ1を実現することができる。
【0022】
次に、上述したらせん状板900について、形状や加工方法(製造方法)についてより詳しく説明する。
図4は、本実施形態に係るらせん状板900を説明するための概略拡大図である。
まず、図4(a)に示したように、本実施形態のらせん状板900は、上流側のらせん状板900と下流側のらせん状板900がスリット幅Sを隔てて軸方向に対向(対面)し、かつ、上流側のらせん状板900と下流側のらせん状板900は位相差Pを有する。
以下、この位相差Pと、らせん状板900を削り出す切削加工に使用するエンドミル(以下、加工用エンドミルと称する)との関係について説明する。
なお、本実施形態では、らせん状板900を削り出す切削加工のための工具として、側面の刃で切削し、軸に直交する方向に穴を削り広げる用途で利用される加工用エンドミルであり、一例として、半径R(5mm前後)を有する加工用エンドミルを使用する場合を例にとって説明する。
また、本実施形態では、らせん状板900のスリット901が形成される端面(端部)を平滑に仕上げる際にも、当該加工用エンドミルを用いる。
【0023】
図4(b)および(c)には、らせん状板900を加工用エンドミルで削り出す際の加工用エンドミルの軌跡Tが一点鎖線で示され、この加工用エンドミルが動く方向(中心の軌跡)が二点鎖線で示されている。また、この中心の軌跡は、加工用エンドミルがらせん状板900を加工する際に必要となる移動経路(加工経路/加工パス)も表している。
図4(b)には、上述したらせん状板900のうち、位相差Pが大きい(すなわち、重なり部分Nの投影面積が小さい)場合のらせん状板900が示されている。
本実施形態では、まず、下流側のらせん状板900の傾斜面をスリット901の位置まで加工用エンドミルで加工する。
次に、スリット901の位置で、加工用エンドミルを上流側らせん状板900側へ持ち上げる。その際に、下流側のらせん状板900の先端を加工用エンドミルの右側面で削り、面取り(エッジ)を形成する。そして、そのまま、上流側のらせん状板900の傾斜面を加工する。
ここで、下流側のらせん状板900の面取りの加工から連続して上流側のらせん状板900の傾斜面の加工へ移る際に、下流側のらせん状板900の面取りの加工終了位置と、上流側のらせん状板900の傾斜面の加工開始位置が近い方が効率がよい。
しかし、図4(b)の構成では、下流側のらせん状板900の面取りの加工終了位置と、上流側のらせん状板900の傾斜面の加工開始位置が離れているため、加工開始位置まで移動させる必要がある。
【0024】
そこで、下流側のらせん状板900の面取りの加工から連続して上流側のらせん状板900の傾斜面の加工へ移る際に、上流側のらせん状板900の傾斜面の加工開始位置を合わせるように、以下(図4(c))のように構成するとよい。
【0025】
図4(c)には、上述したらせん状板900のうち、位相差Pを可能な範囲で最小にした(すなわち、重なり部分Nの投影面積を可能な限り最大にした)場合のらせん状板900が示されている。
図4(c)に示したように、らせん状板900を切削加工する(削り出す)にあたり、以下(1)または(2)の少なくともいずれか1つの範囲で設計することが望ましい。
(1)加工用エンドミルの半径Rは、らせん状板900のスリット901のスリット幅Sよりも小さくする(R<S)。
(2)加工用エンドミルの半径Rは、上流側のらせん状板900と下流側のらせん状板900との位相差Pよりも小さくする(R<P)。
この構成であれば、下流側のらせん状板900の傾斜面の加工を終えて加工用エンドミルを上げた位置と、上流側のらせん状板900の傾斜面を加工し始める位置とが一致するので、加工位置まで移動させる必要がない。
なお、加工用エンドミルの半径Rが大きいほど加工作業は容易になる。
そこで、らせん状板900のスリット幅Sと位相差Pを同じまたは同程度(つまり、略同じ)とし、かつ、加工用エンドミルの半径Rは、同程度としたスリット幅Sおよび位相差Pよりもやや小さく構成するとよい(S=P<R)。
【0026】
上述した構成により、らせん状板900を製造する際の加工用エンドミルの加工パスの無駄を省いて経路を短縮して、らせん状板900を継ぎ目無く形成(一体成形)することができる。また、らせん状板900にバリが形成されてしまうのを低減することができる。
その結果、らせん状板900の製造に必要なコストや手間を低減することができるので、生産性を向上させることができる。
【0027】
次に、上述した実施形態の変形例として、らせん状板900の面取りを鋭角とする構成例について説明する。
図5は、本実施形態の変形例に係るらせん状板930(940、950)を説明するための概略拡大図である。
まず、図5(a)に示したように、本変形例のらせん状板930では、上流側のらせん状板930と下流側のらせん状板930の各々に形成される水平部分(水平面)の幅をWとする。
また、その水平面の幅Wにおいて、上流側のらせん状板930と下流側のらせん状板930とが所定の隙間を介して対向する部分の幅をN(重なり部分N)とする。
そして、らせん状板930に施す面取りの角度を面取り角θ3とする。
まず、図5(a)には、面取り角θ3が90度である面取り加工が施されたらせん状板930が示されている。より詳しくは、らせん状板930のスリット901が形成される端部において鋭角(鋭角部)が形成される方の端部に、面取り加工が施される構成にする。
この面取り加工が施された構成により、スリット901部分にバリが形成されることを防ぐことができる。
【0028】
さらに、水平面の幅Wと重なり部分Nとの関係について説明する。
図5(b)に示したように、らせん状板930の水平面と、当該らせん状板930のスリット901に配設される固定円板(固定円板10:図2)との間の摩擦損失を低減するために、水平面の幅Wおよび重なり部分Nを削減するらせん状板940の構成にするとよい。
【0029】
ここで、図5(b)に示したようにらせん状板940に施す面取り加工の面取り角θ3を90度に保ったまま水平面の幅Wを削減すると、面取り面941の幅が増加し、ガスが円滑に流れなくなる虞がある。特に、らせん状板940の厚みが厚い場合には、この影響が大きくなる。
そこで、図5(c)のらせん状板950で示したように、上流側のらせん状板950と、下流側のらせん状板950との重なり部分Nがなくならない範囲で、面取り角θ3を小さくする、すなわち、鋭角の面取り角θ3を形成するとよい。本実施例では、一例として、面取り角θ3を30度で構成している。
あるいは、図示しないが、面取り面941を曲線で形成する構成にしてもよい。面取り面941を曲線で形成することにより、ガスの流れをより滑らかにすることができる。
【0030】
上述した構成により、本変形例では、らせん状板930(940、950)が備わる真空ポンプ1において、スリット901部分にバリが形成されることを防ぐことができる。また、らせん状板930(940、950)の水平面と固定円板10との間の摩擦損失を低減し、ガスの流れをより滑らかにすることができる。
その結果、真空ポンプ1の排気性能を向上させることができる。
【0031】
なお、上述した、スリット901の下流側のらせん状板900(930、940、950)の構成は、真空ポンプ1に配設されるらせん状板900(930、940、950)のうち少なくとも1つの下流側のらせん状板900(930、940、950)が備えていればよい。
【0032】
なお、本発明の実施形態および各変形例は、必要に応じて組み合わせる構成にしてもよい。
【0033】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなすことができ、そして、本発明が当該改変されたものにも及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0034】
1 真空ポンプ
2 ケーシング(外筒)
3 ベース
4 吸気口
5 フランジ部
6 排気口
7 シャフト
8 ロータ
10 固定円板
11 肉部(固定円板)
12 穴部(固定円板)
20 モータ部
30 径方向磁気軸受装置
31 径方向磁気軸受装置
40 軸方向磁気軸受装置
70 スペーサ
80 ステータコラム
900 らせん状板
901 スリット
930 らせん状板
940 らせん状板
941 面取り面(らせん状板)
950 らせん状板
9000 らせん状板(従来)
9001 スリット(従来)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7