特許第6706578号(P6706578)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6706578タンデム型Fab免疫グロブリン及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706578
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】タンデム型Fab免疫グロブリン及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20200601BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20200601BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20200601BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20200601BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20200601BHJP
【FI】
   C07K16/46ZNA
   A61K39/395 N
   A61K39/395 L
   A61P1/00
   A61P1/02
   A61P1/04
   A61P1/16
   A61P3/00
   A61P5/00
   A61P9/00
   A61P11/00
   A61P11/02
   A61P11/06
   A61P13/08
   A61P13/12
   A61P15/00
   A61P17/00
   A61P17/06
   A61P19/02
   A61P19/10
   A61P25/00
   A61P25/16
   A61P25/28
   A61P29/00
   A61P29/00 101
   A61P31/04
   A61P31/12
   A61P33/00
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P37/02
   A61P37/06
   A61P37/08
   !C12N15/13
   !C12N15/62 Z
【請求項の数】37
【全頁数】93
(21)【出願番号】特願2016-544523(P2016-544523)
(86)(22)【出願日】2014年12月24日
(65)【公表番号】特表2017-506215(P2017-506215A)
(43)【公表日】2017年3月2日
(86)【国際出願番号】US2014072336
(87)【国際公開番号】WO2015103072
(87)【国際公開日】20150709
【審査請求日】2017年10月25日
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2013/090923
(32)【優先日】2013年12月30日
(33)【優先権主張国】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516195199
【氏名又は名称】エピムアブ バイオセラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ウー チェンビン
【審査官】 木原 啓一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−535032(JP,A)
【文献】 特表2003−531588(JP,A)
【文献】 特表2019−514839(JP,A)
【文献】 特表2012−530088(JP,A)
【文献】 Protein Engineering,1995年,Vol. 8, No. 10,pp. 1057-1062
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00−16/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三つのポリペプチド鎖を含む結合性タンパク質であって、
第一のポリペプチド鎖が、可変ドメインと定常ドメインの間に挿入されたリンカーがない、アミノ末端からカルボキシル末端に向かって(i)CLがVHに直接融合される、VL−CL−VH−CH1−Fc、または(ii)CH1がVLに直接融合される、VH−CH1−VL−CL−Fcのいずれかを含み、
第二のポリペプチド鎖が、VHとCH1の間に挿入されたリンカーがない、アミノ末端からカルボキシル末端に向かってVH−CH1を含み、
第三のポリペプチド鎖が、VLとCLの間に挿入されたリンカーがない、アミノ末端からカルボキシル末端に向かってVL−CLを含み、
Aは第一のエピトープまたは抗原であり、Bは第二のエピトープまたは抗原であり、かつAおよびBは同じ抗原の異なるエピトープまたは異なる抗原であり、
VLがAに結合する第一の親抗体の軽鎖可変ドメインであり、CLが抗体軽鎖定常ドメインであり、VHがBに結合する第二の親抗体の重鎖可変ドメインであり、CH1が抗体重鎖の第一の定常ドメインであり、VHがAに結合する前記第一の親抗体の重鎖可変ドメインであり、かつVLがBに結合する前記第二の親抗体の軽鎖可変ドメインであり、かつ
前記第一のポリペプチド鎖の二つ、前記第二のポリペプチド鎖の二つ、および前記第三のポリペプチド鎖の二つが、会合して、4つの機能的なFab結合領域を有する6つのポリペプチド鎖を含む、二重特異性の四価結合性タンパク質を提供することができ、かつ前記結合性タンパク質がエピトープまたは抗原Aおよびエピトープまたは抗原Bの両方に結合する、
前記結合性タンパク質。
【請求項2】
前記FcはヒトIgG1のFcである、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項3】
前記FcはSEQ ID NO:20の通りである、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項4】
前記Fcは変異体Fcである、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項5】
IL−1α及びIL−1β、IL−12及びIL−18、TNFα及びIL−23、TNFα及びIL−13;TNF及びIL−18;TNF及びIL−12;TNF及びIL−1β;TNF及びMIF;TNF及びIL−6、TNF及びIL−6受容体、TNF及びIL−17;IL−17及びIL−20;IL−17及びIL−23;TNF及びIL−15;TNF及びVEGF;VEGFR及びEGFR;IL−13及びIL−9;IL−13及びIL−4;IL−13及びIL−5;IL−13及びIL−25;IL−13及びTARC;IL−13及びMDC;IL−13及びMIF;IL−13及びTGF−β;IL−13及びLHRアゴニスト;IL−13及びCL25;IL−13及びSPRR2a;IL−13及びSPRR2b;IL−13及びADAM8;並びにTNFα及びPGE4、IL−13及びPED2、TNF及びPEG2からなる群から選択されるサイトカインの対に結合できる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の結合性タンパク質。
【請求項6】
ヒトIL−17及びヒトIL−20に結合する、請求項5に記載の結合性タンパク質。
【請求項7】
抗IL−17抗体LY及び抗IL−20抗体15D2由来の可変重鎖及び可変軽鎖を含む、請求項6に記載の結合性タンパク質。
【請求項8】
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含んだ第一のポリペプチド鎖、SEQ ID NO:21に従うアミノ酸配列を含んだ第二のポリペプチド鎖、およびSEQ ID NO:23に従う配列を含んだ第三のポリペプチド鎖を含む、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項9】
CD138及びCD20;CD138及びCD40;CD19及びCD20;CD20及びCD3;CD3及びCD33;CD16及びCD33、CD3及びCD133;CD38及びCD138;CD38及びCD20;CD20及びCD22;CD38及びCD40;CD40及びCD20;CD−8及びIL−6;CSPG及びRGM A;CTLA−4及びBTNO2;IGF1及びIGF2;IGF1/2及びErb2B;IGF−1R及びEGFR;EGFR及びCD13;IGF−1R及びErbB3;EGFR−2及びIGFR;VEGFR−2及びMet;VEGF−A及びアンジオポエチン−2(Ang−2);IL−12及びTWEAK;IL−13及びIL−1β;MAG及びRGM A;NgR及びRGM A;NogoA及びRGM A;OMGp及びRGM A;PDL−1及びCTLA−4;PD−1及びCTLA−4;PD−1及びTIM−3CD137及びCD20、CD137及びEGFR、CD137及びHer−2;CD137及びPD−1、CD137及びPDL−1、VEGF及びPD−L1Lag−3及びTIM−3、OX40及びPD−1、TIM−3及びPDL−1、EGFR及びDLL−4、PDGFR及びVEGF、EpCAM及びCD3、Her2及びCD3、CD19及びCD3、EGFR及びHer3、CD16a及びCD30、CD30及びPSMA、EGFR及びCD3、CEA及びCD3、TROP−2及びHSG、TROP−2及びCD3、VEGF及びEGFR、HGF及びVEGF、VEGF及びVEGF(異なるエピトープ)、EGFR及びcMet、PDGF及びVEGF、VEGF及びDLL−4、OX40及びPD−L1、ICOS及びPD−1、ICOS及びPD−L1、Lag−3及びPD−1、Lag−3及びPD−L1、Lag−3及びCTLA−4、ICOS及びCTLA−4、CD47及びCD20、RGM A及びRGM B;Te38及びTNFα;TNFα及びBlys;TNFα及びCD−22;TNFα及びCTLA−4ドメイン;TNFα及びGP130;TNFα及びIL−12p40;並びにTNFα及びRANKリガンドからなる群から選択される標的の対に結合できる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の結合性タンパク質。
【請求項10】
ヒトCD3及びヒトCD20に結合できる、請求項9に記載の結合性タンパク質。
【請求項11】
抗CD3抗体OKT3及び抗CD20抗体オファツムマブ由来の可変重鎖及び可変軽鎖を含む、請求項10に記載の結合性タンパク質。
【請求項12】
SEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含んだ第一のポリペプチド鎖; SEQ ID NO:44に従うアミノ酸配列を含んだ第二のポリペプチド鎖;並びにSEQ ID NO:46に従うアミノ酸配列を含んだ第三のポリペプチド鎖を含む、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項13】
CTLA−4上の1以上のエピトープに結合できる、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項14】
PD−1上の1以上のエピトープに結合できる、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項15】
T細胞上の免疫チェックポイントタンパク質上の1以上のエピトープに結合できる、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項16】
前記免疫チェックポイントタンパク質はTIM−3、Lag3、ICOS、BTLA、CD160、2B4、KIR、CD137、CD27、OX40、CD40L、及びA2aRからなる群から選択される、請求項15に記載の結合性タンパク質。
【請求項17】
免疫チェックポイント活性に関与するタンパク質上の1以上のエピトープに結合できる、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項18】
前記免疫チェックポイント活性に関与するタンパク質はPD−L1、PD−L2、ガレクチン9、HVEM、CD48、B7−1、B7−2、ICOSL、B7−H3、B7−H4、CD137L、OX40L、CD70、及びCD40からなる群から選択される、請求項17に記載の結合性タンパク質。
【請求項19】
単一特異性の抗体または抗体断片に対するのと同等以上の親和性で各抗原に結合する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の結合性タンパク質。
【請求項20】
免疫接着分子、造影剤、治療剤、及び細胞傷害剤からなる群から選択される剤に接合される、請求項1〜19のいずれか一項に記載の結合性タンパク質。
【請求項21】
請求項1〜20の何れか1項の結合性タンパク質と、1以上の医薬的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
【請求項22】
請求項1〜20の何れか1項に記載の結合性タンパク質を含む、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、癌、敗血症、代謝障害、または脊髄損傷の治療または予防のための医薬組成物。
【請求項23】
前記炎症性疾患、自己免疫疾患、または神経変性疾患は、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症、アルツハイマー病、およびパーキンソン病からなる群から選択される、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、癌、または脊髄損傷の治療または予防のための医薬の製造における、請求項1〜20のいずれか一項に記載の結合性タンパク質の使用。
【請求項25】
前記炎症性疾患、自己免疫疾患、または神経変性疾患は、喘息、関節リウマチ、SLE、多発性硬化症、アルツハイマー病、およびパーキンソン病からなる群から選択される、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
SEQ ID NO:87に従うアミノ酸配列を含んだ第一のポリペプチド鎖、SEQ ID NO:89に従うアミノ酸配列を含んだ第二のポリペプチド鎖、及びSEQ ID NO:91に従う配列を含んだ第三のポリペプチド鎖を含む、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項27】
ヒトTNF及びヒトIL−17に結合できる、請求項5に記載の結合性タンパク質。
【請求項28】
SEQ ID NO:92に従うアミノ酸配列を含んだ第一のポリペプチド鎖、SEQ ID NO:95に従うアミノ酸配列を含んだ第二のポリペプチド鎖、及びSEQ ID NO:97に従う配列を含んだ第三のポリペプチド鎖を含む、請求項1に記載の結合性タンパク質。
【請求項29】
ヒトCTLA―4及びヒトPD−1に結合できる、請求項9に記載の結合性タンパク質。
【請求項30】
請求項1に記載の結合性タンパク質を含む、関節リウマチ、乾癬、骨粗鬆症、脳卒中、肝疾患、及び口腔癌からなる群から選択される疾患の治療のための医薬組成物であって、該結合性タンパク質はIL−17及びIL−20に結合できる、医薬組成物。
【請求項31】
請求項1に記載の結合性タンパク質を含む、B細胞癌の治療のための医薬組成物であって、該結合性タンパク質はCD3及びCD20に結合できる、医薬組成物。
【請求項32】
前記B細胞癌は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫、成熟B細胞腫瘍、B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、皮膚濾胞中心リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び未分化大細胞リンパ腫からなる群から選択される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項1に記載の結合性タンパク質を含む、自己免疫疾患または炎症性疾患の治療のための医薬組成物であって、該結合性タンパク質はTNF及びIL−17に結合できる、医薬組成物。
【請求項34】
前記自己免疫疾患は、クローン病、乾癬(プラーク乾癬を含む)、関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、または若年性特発性関節炎を含む)、多発性硬化症、強直性脊椎炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、敗血症、神経変性疾患、神経再生、脊髄損傷、原発性及び転移性癌、呼吸器疾患喘息、アレルギー性及び非アレルギー性喘息、感染による喘息、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の感染による喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道炎症を伴う状態、好酸球増加症、線維症及び過剰な粘液産生、嚢胞性線維症、肺線維症、アトピー性疾患、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、湿疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性胃腸炎、皮膚の炎症状態及び/または自己免疫状態、胃腸器官の炎症状態及び/または自己免疫状態、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、肝臓の炎症状態及び/または自己免疫状態、肝硬変、肝線維症、B型及び/またはC型ウイルス性肝炎によって引き起こされる肝線維症、強皮症、腫瘍または癌、肝細胞癌、神経膠芽腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、HTLV−1感染、1型防御免疫応答の発現の抑制、並びにワクチン接種時の1型防御免疫応答の発現の抑制からなる群から選択される、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、または多発性硬化症である、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
請求項1に記載の結合性タンパク質を含む、癌の治療のための医薬組成物であって、該結合性タンパク質はCTLA−4及びPD−1に結合できる、医薬組成物。
【請求項37】
前記癌は、黒色腫、腎臓癌、前立腺癌、膵臓腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、食道癌、頭頸部の扁平上皮細胞癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、甲状腺癌、神経膠芽腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫、または他の悪性腫瘍である、請求項36に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
引用による援用
本願は、2013年12月30日に出願された国際出願番号PCT/CN2013/090923の優先権を主張し、その全体を本明細書の一部として本願に援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、多価及び多重特異的結合性タンパク質に関し、また、多価及び多重特異的結合性タンパク質を製造及び使用する方法に関する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
本明細書と共に電子的に提出されたテキストファイルの内容を、その全体を本明細書の一部として援用する:配列表のコンピュータ読み取り可能な形式のコピー(ファイル名:EPBI_001_01WO_SeqList_ST25.txt、記録された日付:2014年12月2日、ファイルサイズ98KB)
【背景技術】
【0004】
発明の背景
二重特異性または多重特異性抗体が、種々の炎症性疾患、癌、及び他の障害を治療するために有用な分子を作製する試みにおいて作製されている。
【0005】
二重特異性抗体は、二重特異性抗体の所望の特異性を有するマウス・モノクローナル抗体を発現する二つの異なるハイブリドーマ細胞株の体細胞融合に基づくクアドローマ技術を用いて生産されてきた(Milstein,C. and A.C.Cuello,Nature,1983.305(5934):p.537−40参照)。二重特異性抗体は、二つの異なるmAbの化学的接合によって製造することもできる(Staerz,U.D.,et al.,Nature,1985.314(6012):p.628−31参照)。他のアプローチでは、二つの異なるモノクローナル抗体または小さい抗体フラグメントの化学的接合が使用されている(Brennan,M.,et al., Science,1985.229(4708):p.81−3参照)。
【0006】
もう一つの方法は、ヘテロ二官能性架橋剤を用いて二つの親抗体をカップリングさせることである。特に、二つの異なるFab断片が、部位特異的な方法で、それらのヒンジシステイン残基において化学的に架橋されてきた(Glennie,M.J.,et al., J Immunol,1987. 139(7):p.2367−75参照)。
【0007】
近い過去においては、他の組換え二重特異性抗体フォーマットが開発されている(Kriangkum,J.,et al., Biomol Eng,2001.18(2):p.31−40参照)。なかでも、タンデム一本鎖Fv分子及びダイアボディ、並びにそれらの種々の誘導体が、組み換え二重特異性抗体の構築のために使用されてきた。通常、これらの分子の構築は、異なる抗原を認識する二つの一本鎖Fv(scFv)断片から開始される(Economides,A.N.,et al.,Nat Med,2003.9(1):p.47−52参照)。タンデムscFv分子(taFv)は、追加のペプチドリンカーを備えた二つのscFv分子を単純に接続する簡単なフォーマットを意味する。これらのタンデムscFv分子に存在する二つのscFv断片は、別々の折畳み実体を形成する。最大63残基の長さを有するリンカーを用いて二つのscFv断片を接続するために、種々のリンカーを使用することができる(Nakanishi,K., et al.. Annu Rev Immunol,2001.19:p423−74)。
【0008】
最近の研究において、CD28及び黒色腫関連プロテオグリカンに向けられたタンデムscFvの、遺伝子導入ウサギ及びウシによるインビボ発現が報告された(Gracie,J.A.,et al.,J Clin Invest,1999.104(10):p.1393−401参照)。この構築物においては、二つのscFv分子がCH1リンカーによって連結され、最大100mg/Lの二重特異性抗体の血清濃度が検出された。幾つかの研究だけが、非常に短いAla3リンカーまたは長いグリシン/セリンに富むリンカーを使用して、バクテリアにおける可溶性タンデムscFv分子の発現を報告しているに過ぎない(Leung,B.P.,et al., J Immunol,2000.164(12):p.6495−502;Ito,A.,et al.,J Immunol,2003.170(9):p.4802−9; Karni,A.,et al.,J Neuroimmunol,2002.125(1−2):p.134−40参照)。
【0009】
最近の研究では、3または6残基長のランダム化された中央リンカーを含むタンデムscFvレパートリーのファージディスプレイが、細菌中において可溶性かつ活性な形態で生産されるそれらの分子を豊富化した。このアプローチは、6アミノ酸残基リンカーを有する好適なタンデムscFv分子の単離をもたらした(Arndt,M. and J.Krauss, Methods Mol Biol,2003.207:p.305−21参照)。
【0010】
二重特異性ダイアボディ(Db)は、発現のためのダイアボディフォーマットを利する。ダイアボディは、VH及びVLドメインを連結するリンカーの長さを約5残基に低減することにより、scFv断片から生成される(Peipp,M. and T.Valerius,Biochem Soc Trans,2002.30(4):p.507−11参照)。このリンカーサイズの減少は、VHドメイン及びVLドメインの交差対合による二つのポリペプチド鎖の二量体化を促進する。二重特異性ダイアボディは、同じ細胞内において、VH−VL及びVH−VL(VH−VL配置)、またはVL−VH及びVL−VH(VL−VH配置)の何れかの構造を有する二つのポリペプチド鎖を発現させることによって製造される。最近の比較研究は、可変ドメインの配向が、発現及び活性結合部位の形成に影響を与える得ることを実証している(Mack,M., G.Riethmuller,and P.Kufer, Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1995.92(15):p.7021−5参照)。
【0011】
二重特異性ダイアボディの強制的生成のための一つのアプローチは、ノブ・インツー・ホール(knob−into−hole)ダイアボディの製造である(Holliger,P.,T.Prospero,and G.Winter,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,,1993.90(14):p.6444−8.18参照)。これは、HER2及びCD3に対して指向された二重特異性ダイアボディについて実証された。Val37をPheと交換し且つLeu45をTrpと交換することによって大きなノブがVHドメインの中に導入され、また抗HER2または抗CD3可変ドメインの何れかにおいて、Phe98をMetに変異させ且つTyr87をAlaに変異させることによって相補的な孔がVLドメインの中に作製された。このアプローチを使用することによって、二重特異性ダイアボディの産生は、親ダイアボディ―による72%から、ノブ・インツー・ホール−ダイアボディの90%超まで増加させることができた。
【0012】
一本鎖ダイアボディ―(scDb)は、二重特異性ダイアボディ様分子の形成を改善するための代替戦略を表す(Holliger,P. and G.Winter,Cancer Immunol Immunother,1997.45(3−4):p.128−30;Wu,A.M.,et al.,Immunotechnology,1996.2(1):p.21−36参照)。二重特異性一本鎖ダイアボディは、長さが約15アミノ酸残基の追加の中央リンカーを備えた二つのダイアボディ形成ポリペプチド鎖を連結することによって製造される。その結果、一本鎖ダイアボディ単量体に対応する分子量(50〜60キロダルトン)を持った全ての分子が二重特異性である。幾つかの研究により、二重特異性の一本鎖ダイアボディは、細菌中において可溶性かつ活性な形態で発現され、大部分が単量体として存在する純粋な分子であることが示されている(Holliger,P. and G.Winter,Cancer Immunol Immunother,1997.45(3−4):p.128−30;Wu,A.M.,et al.,Immunotechnology,1996.2(1):p.21−36;Pluckthun,A. and P.Pack,Immunotechnology,1997.3(2):p.83−105;Ridgway,J.B.,et al.,Protein Eng,1996.9(7):p.617−21参照)。
【0013】
ダイアボディはFcに融合されて、ジダイアボディと称する更なるIg様分子を生成する(Lu,D.,et al.,J Biol Chem,2004.279(4):p.2856−65)。加えて、IgGの重鎖に二つのFab反復を含み、四つの抗原分子に結合できる多価抗体構築物が記載されている(米国特許番号8,722,859 B2,及び Miller,K.,et al.,J Immunol,2003.170(9):p.4854−61参照)。
【0014】
最近の例は、四価のIgGの一本鎖可変フラグメント(scFv)融合(Dong J,et al.2011 MAbs 3:273-288;Coloma MJ,Morrison SL 1997 Nat Biotechnol 15:159-163;Lu D,et al.2002 J Immunol Methods 267:213-226)、カツマキソマブ、三官能性ラット/マウスハイブリッド二重特異性上皮細胞接着分子−CD3抗体(Lindhofer H,et al 1995 J Immunol 155:219-225)、二重特異性CD19−CD3 scFv抗体ブリナツモマブ(Bargou R,et al.2008 Science 321:974-977)、「二重作用性Fab」(DAF)抗体(BostromJ,et al.2009 Science 323:1610-1614)、触媒性抗体に共有結合したファーマコフォアペプチド(Doppalapudi VR,et al.2010 Proc Natl Acad Sci USA 107:22611-22616)、二重特異性抗体を生じさせるための半IgG4分子間での動的交換の使用(van der Neut Kolfschoten M,et al.2007 Science 317:1554-1557;Stubenrauch K,et al.2010 Drug Metab Dispos 38:84-91)、または二重結合性抗体の半分の抗原結合性断片(Fab)内での重鎖及び軽鎖ドメインの交換による使用(CrossMab方式 )(Schaefer W et al,2011 Proc Natl Acad Sci 108:11187−92)である。
【0015】
当該技術分野においては、二重抗原結合機能を有する単一の分子実体、並びに多価及び多重特異的な結合性タンパク質を生成する方法が必要でとされている。本発明は、これらの必要性及び他の必要性に対処するものである。
【発明の概要】
【0016】
本発明は、多価及び多重特異的結合性タンパク質、並びにそのような結合性タンパク質を製造及び使用する方法を提供する。一実施形態において、本明細書で提供される多価及び多重特異的結合性タンパク質はタンデム型Fab免疫グロブリン(FIT−Ig)であり、2以上の抗原、または同じ抗原の2以上のエピトープ、または同じエピトープの2以上のコピーに結合することができる。本明細書で提供される多価及び多重結合性タンパク質は、急性及び慢性の炎症性疾患及び障害、自己免疫疾患、癌、脊髄損傷、敗血症、並びに他の疾患、障害、及び状態の治療及び/または予防のために有用である。該多価及び多重特異性結合性タンパク質を含有する医薬組成物が、本明細書において提供される。加えて、このようなFIT−Igを作製するための核酸、組換え発現ベクター、及び宿主細胞が、本明細書において提供される。インビボまたはインビトロにおいて特定の抗原を検出するために、本発明のFIT−Igを使用する方法もまた、本発明に包含される。
【0017】
本発明は、2以上の抗原を例えば高親和性で結合できる結合性タンパク質のファミリーを提供する。一つの態様において、本発明は二つの親モノクローナル抗体、即ち、抗原Aに結合するmAbA及び抗原Bに結合するmAbBを使用して、二重特異的結合性タンパク質を構築するためのアプローチを提供する。一つの実施形態において、ここに開示される結合性タンパク質は、抗原、サイトカイン、ケモカイン、サイトカイン受容体、ケモカイン受容体、サイトカインもしくはケモカインの関連分子、または細胞表面タンパク質に結合することができる。
【0018】
従って、一態様では、2以上の抗原に結合できる結合性タンパク質が提供される。一実施形態において、本発明は少なくとも二つのポリペプチド鎖を含む結合性タンパク質を提供し、ここでのポリペプチド鎖は対合して2以上の抗原に結合できるIgG様分子を形成する。一実施形態において、該結合性タンパク質は、2本、3本、4本、または5本以上のポリペプチド鎖を含んでいる。一実施形態において、該結合性タンパク質は少なくとも一つのVL、少なくとも一つのVL、少なくとも一つのVH、少なくとも一つのVH、少なくとも一つのCL、及び少なくとも一つのCH1を含んでおり、ここでのVLは軽鎖可変ドメインであり、VHは重鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、Aは第一の抗原であり、Bは第二の抗原である。更なる実施形態において、第一のポリペプチド鎖は、VL、CL、VH、及びCH1を含んでいる。更なる実施形態において、前記結合性タンパク質は更にFcを含んでいる。別の実施形態において、該Fc領域は変異型Fc領域である。更なる実施形態において、該変異型Fc領域は、ADCCまたはCDCのような修飾されたエフェクター機能を示す。別の実施形態では、該変異型Fc領域は、1以上のFcγRに対する修飾された親和性またはアビディティーを示す。
【0019】
一実施形態において、該結合性タンパク質は三つのポリペプチド鎖を含んでおり、ここで第一のポリペプチド鎖はVL、CL、VH及びCH1を具備し、第二のポリペプチド鎖はVH及びCH1を具備し、また第三のポリペプチド鎖はVL及びCLを具備している。更なる実施形態において、該結合性タンパク質の第一のポリペプチド鎖は、更にFcを含んでいる。別の実施形態において、前記結合性タンパク質は二つのポリペプチド鎖を含んでおり、ここでの第一のポリペプチド鎖はVL、CL、VH及びCH1を具備し、第二のポリペプチド鎖は、VH、CH1、VL、及びCLを具備している。更なる実施形態では、前記第一のポリペプチド鎖は、更にFcを備えている。
【0020】
一実施形態において、前記結合性タンパク質は3本のポリペプチド鎖を含んでおり、同時トランスフェクション際、それらの対応するcDNAは、第一:第二:第三のモル比が1:1:1、1:1.5:1、1:3:1、1:1:1.5、1:1:3、1:1.5:1.5、1:3:1.5、1:1.5:3、または1:3:3で存在する。別の実施形態において、前記結合性タンパク質は2本のポリペプチド鎖を含んでおり、同時トランスフェクションの際、それらの対応するcDNAは、何れか所定のトランスフェクションにおいてモノマーFIT−Ig画分を最大化する努力において、最適化により、第一:第二のモル比が1:1、1:1.5もしくは1:3、または他の任意の比率で存在する。
【0021】
一実施形態において、本発明の結合性タンパク質はペプチドリンカーを含まない。一実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、少なくとも一つのアミノ酸またはポリペプチドリンカーを含む。更なる実施態様において、前記リンカーは、G、GS、SG、GGS、GSG、SGG、GGG、GGGS、SGGG、GGGGS、GGGGSGS、GGGGSGS、GGGGSGGS、GGGGSGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGS、AKTTPKLEEGEFSEAR、AKTTPKLEEGEFSEARV、AKTTPKLGG、SAKTTPKLGG、AKTTPKLEEGEFSEARV、SAKTTP、SAKTTPKLGG、RADAAP、RADAAPTVS、RADAAAAGGPGS、RADAAAA(GS)、SAKTTP、SAKTTPKLGG、SAKTTPKLEEGEFSEARV、ADAAP、ADAAPTVSIFPP、TVAAP、TVAAPSVFIFPP、QPKAAP、QPKAAPSVTLFPP、AKTTPP、AKTTPPSVTPLAP、AKTTAP、AKTTAPSVYPLAP、ASTKGP、ASTKGPSVFPLAP、GENKVEYAPALMALS、GPAKELTPLKEAKVS、及びGHEAAAVMQVQYPASからなる群から選択される。前記リンカーはまた、以前に記載されたようなインビボで切断可能なペプチドリンカー、プロテアーゼ(例えばMMP類)感受性リンカー、還元により切断され得るジスルフィド結合に基づくリンカー等(バイオ医薬のための融合タンパク質技術:応用及び課題(Fusion Protein Technologies for Biopharmaceuticals: Applications and Challenges)、Stefan R.Schmidt編)、または当該技術において既知の任意の切断可能なリンカーであることができる。このような切断可能なリンカーは、組織/細胞の浸透及び分布を改善するため、標的への結合を増強するため、潜在的な副作用を低減するため、並びに二つの異なるFab領域のインビボにおける機能的及び物理的な半減期を調節するために、様々な目的でトップFabをインビボで放出するために使用することができる。
【0022】
一実施形態において、前記結合性タンパク質は、アミノ末端からカルボキシル末端までVL−CL−VH−CH1−Fcを含む第一のポリペプチドと、アミノ末端からカルボキシル末端までVH−CH1を含む第二のポリペプチド鎖と、アミノ末端からカルボキシル末端までVL−CL含む第三のポリペプチド鎖を含んでなり、ここでのVLは軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、Aは第一のエピトープまたは抗原であり、Bは第二のエピトープまたは抗原である。一実施形態において、Fc領域はヒトIgG1である。別の実施形態において、Fc領域は変異型Fc領域である。更なる実施形態において、Fc領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:20に対して、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一である。更なる実施形態において、第一のポリペプチド鎖のCLはVHに直接融合される。別の実施形態において、第一のポリペプチド鎖のCLは、アミノ酸リンカーまたはオリゴペプチドリンカーを介してVHに連結される。更なる実施形態において、リンカーはGSG(SEQ ID NO:26)またはGGGGSGS(SEQ ID NO:28)である。
【0023】
別の実施形態において、前記結合性タンパク質は、アミノ末端からカルボキシル末端までVH−CH1−VL−CL−Fcを含む第一のポリペプチド、アミノ末端からカルボキシル末端までVH−CH1を含む第二のポリペプチド鎖、及びアミノ末端からカルボキシル末端までVL−CLを含む第三のポリペプチド鎖を含んでおり、ここでのVLは軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、Aは第一のエピトープまたは抗原であり、Bは第二のエピトープまたは抗原である。一実施形態において、Fc領域はヒトIgG1である。別の実施形態において、Fc領域は変異型Fc領域である。更なる実施形態において、Fc領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:20に対して、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一である。一実施形態において、第一のポリペプチド鎖のCH1はVLに直接融合される。別の実施形態では、第一のポリペプチド鎖のCH1は、アミノ酸リンカーまたはオリゴペプチドリンカーを介してVLに連結される。更なる実施形態において、前記リンカーはGSG(SEQ ID NO:26)またはGGGGSGS(SEQ ID NO:28)である。
【0024】
別の実施形態において、前記結合性タンパク質は、アミノ末端からカルボキシル末端までVL−CL−VH−CH1−Fcを含む第一のポリペプチド、及びアミノ末端からカルボキシル末端までVH−CH1−VL−CLを含む第二のポリペプチド鎖を含んでおり、ここでのVLは軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、Aは第一のエピトープまたは抗原であり、Bは第二のエピトープまたは抗原である。一実施形態において、Fc領域はヒトIgG1である。別の実施形態において、Fc領域は、変異型Fc領域である。更なる実施形態において、Fc領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:20に対して、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一である。更なる実施形態において、前記第一のポリペプチド鎖のCLは、VHに直接融合される。別の実施形態では、前記第一のポリペプチド鎖のCLは、アミノ酸リンカーまたはオリゴペプチドリンカーを介してVHに連結される。更なる実施形態において、前記リンカーはGSG(SEQ ID NO:26)またはGGGGSGS(SEQ ID NO:28)である。
【0025】
別の実施形態において、結合性タンパク質は、アミノ末端からカルボキシル末端までVH−CH1−VL−CL−Fcを含む第一のポリペプチド、及びアミノ末端からカルボキシル末端までVL−CL−VH−CH1を含む第二のポリペプチド鎖を含んでおり、ここでのVLは軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、Aは第一のエピトープまたは抗原であり、Bは第二のエピトープまたは抗原である。一実施形態において、Fc領域はヒトIgG1である。別の実施形態において、Fc領域は変異型Fc領域である。更なる実施形態では、Fc領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:20に対して、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%同一である。一実施形態において、第一のポリペプチド鎖のCH1はVLに直接融合される。別の実施形態では、第一のポリペプチド鎖のCH1は、アミノ酸リンカーまたはオリゴペプチドリンカーを介してVLに連結される。更なる実施形態において、前記リンカーはGSG(SEQ ID NO:26)またはGGGGSGS(SEQ ID NO:28)である。
【0026】
本発明の結合性タンパク質は、サイトカイン対に結合することができる。例えば、本発明の結合性タンパク質は、下記からなる群から選択されるサイトカイン対に結合することができる:即ち、IL−1α及びIL−1β、IL−12及びIL−18、TNFα及びIL−23、TNFα及びIL−13、TNF及びIL−18、TNF及びIL−12、TNF及びIL−1β、TNF及びMIF、TNF及びIL−6、TNF及びIL−6受容体、TNF及びIL−17、IL−17及びIL−20、IL−17及びIL−23、TNF及びIL−15、TNF及びVEGF、VEGFR及びEGFR、PDGFR及びVEGF、IL−13及びIL−9、IL−13及びIL−4、IL−13及びIL−5、IL−13及びIL−25、IL−13及びTARC、IL−13及びMDC、IL−13及びMIF、IL−13及びTGF−β、IL−13及びLHRアゴニスト、IL−13及びCL25、IL−13及びSPRR2a、IL−13及びSPRR2b、IL−13及びADAM8、TNFα及びPGE4、IL−13及びPED2、TNF及びPEG2である。一実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、IL−17及びIL−20に結合することができる。本発明の結合性タンパク質は、一実施形態ではIL−17及びIL−20に結合することができ、抗IL−17抗体LY及び抗IL−20抗体15D2由来の可変重鎖及び軽鎖を含んでいる。一実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、IL−17及びTNFに結合することができる。本発明の結合性タンパク質は、一実施形態ではIL−17及びTNFに結合し、抗IL−17抗体LY及びTNF抗体ゴリムマブ由来の可変重鎖及び軽鎖を含むことが可能である。
【0027】
一実施形態において、本発明の結合性タンパク質はIL−17及びIL−20に結合し、またSEQ ID NO:15,25及び27からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第一のポリペプチド、SEQ ID NO:21に従うアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第二のポリペプチド鎖、及びSEQ ID NO:23に従うアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第三のポリペプチド鎖を含んでいる。別の実施形態において、本発明の結合性タンパク質はIL−27及びIL−20に結合し、またSEQ ID NO:15、25及び27からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第一のポリペプチド鎖、SEQ ID NO:29,30及び31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から本質的になり、または該アミノ酸配列からなる第二のポリペプチド鎖を含んでいる。
【0028】
一実施形態において、本発明の結合性タンパク質はTNF及びIL−17に結合し、またSEQ ID NO:87に従うアミノ段配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第一のポリペプチド、SEQ ID NO:89に従うアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなると第二のポリペプチド鎖、及びSEQ ID NO:91に従う配列を含み、該配列から実質的になり、または該配列からなる第三のポリペプチド鎖を含んでいる。
【0029】
別の実施形態では、結合性タンパク質は、下記からなる群から選択される標的対に結合することができる:即ち、CD137及びCD20、CD137及びEGFR、CD137及びHER−2、CD137及びPD−1、CD137及びPDL−1、VEGF及びPD−L1、Lag−3及びTIM−3、OX40及びPD−1、TIM−3及びPD−1、TIM−3及びPDL−1、EGFR及びDLL−4、CD138及びCD20、CD138及びCD40、CD19及びCD20、CD20及びCD3、CD3及びCD33、CD3及びCD133、CD47とCD20、CD38及びCD138、CD38及びCD20、CD20及びCD22、CD38及びCD40、CD40及びCD20、CD−8及びIL−6、CSPG類及びRGM A、CTLA−4及びBTNO2、IGF1及びIGF2、IGF1/2及びErb2B、IGF−1R及びEGFR、EGFR及びCD13、IGF−1R及びErbB3、EGFR−2及びIGFR、VEGFR−2及びMet、VEGF−A及びアンジオポエチン−2(Ang−2)、IL−12及びTWEAK、IL−13及びIL−1β、PDGFR及びVEGF、EpCAM及びCD3、Her2及びCD3、CD19及びCD3、EGFR及びHer3、CD16a及びCD30、CD30及びPSMA、EGFR及びCD3、CEA及びCD3、TROP−2及びHSG、TROP−2及びCD3、MAG及びRGM A、NgR及びRGM A、NogoA及びRGM A、OMGp及びRGM A、PDL−1及びCTLA−4、CTLA−4及びPD−1、PD−1及びTIM−3、RGM A及びRGM B、Te38及びTNFα、TNFα及びBlys、TNFα及びCD−22、TNFα及びCTLA−4ドメイン、TNFα及びGP130、TNFα及びIL−12p40、並びにTNFα及びRANKリガンド、IXa因子、X因子である。一実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、CD3及びCD20に結合することができる。本発明の結合性タンパク質は、一実施形態ではCD3及びCD20に結合することができ、抗CD3抗体OKT3及び抗CD20抗体オファツムマブ由来の可変重鎖及び軽鎖を含んでいる。一実施形態では、本発明の結合性タンパク質はCTLA−4及びPD−1に結合することができる。本発明の結合性タンパク質は、一実施形態では、CTLA−4及びPD−1に結合することができ、CTLA−4抗体イピリムマブとPD−1抗体ニボルマブ由来の可変重鎖及び軽鎖を含んでいる。
【0030】
一実施形態において、本発明の結合性タンパク質はCD3及びCD20に結合し、またSEQ ID NO:41及び48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第一のポリペプチド鎖、SEQ ID NO:44に従うアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第二のポリペプチド鎖、及びSEQ ID NO:46に従うアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第三のポリペプチド鎖を含んでいる。
【0031】
一実施形態において、本発明の結合の結合性タンパク質は、CTLA−4及びPD−1に結合し、またSEQ ID NO:92に従うアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第一のポリペプチド鎖、SEQ ID NO:95に従うアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第二のポリペプチド鎖、及びSEQ ID NO:97に従うアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列から実質的になり、または該アミノ酸配列からなる第三のポリペプチド鎖を含んでいる。
【0032】
一実施形態において、本明細書で提供される結合性タンパク質は、CTLA−4の1以上のエピトープに結合することができる。一実施形態では、本明細書で提供される結合性タンパク質は、PD−1上の1以上のエピトープに結合することができる。
【0033】
一実施形態において、前記結合性タンパク質は、例えばTIM−3、Lag3、ICOS、BTLA、CD160、2B4、KIR、CD137、CD27、OX40、CD40L及びA2aRのようなT細胞の1以上の免疫チェックポイントタンパク質上の1以上のエピトープに結合することができる。別の実施形態において、前記結合性タンパク質は、例えば、PD−L1、PD−L2、ガレクチン9、HVEM、CD48、B7−1、B7−2、ICOSL、B7−H3、B7−H4、CD137L、OX40L、CD70、及びCD40のような免疫チェックポイント経路に関与している1以上の腫瘍細胞表面タンパク質上の1以上のエピトープに結合することができる。
【0034】
一つの態様において、本発明は、本明細書に記載の結合性タンパク質を含む医薬組成物を提供する。一実施形態において、本明細書では、特許請求の範囲の何れかの請求項に記載の結合性タンパク質と、1以上の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
【0035】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象における炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、癌、敗血症、または脊髄損傷を治療または予防する方法を提供する。一実施形態では、当該方法は、対象に対して、有効量の本明細書で提供される1以上の結合性タンパク質、または本明細書に提供される結合性タンパク質及び薬学的に許容される担体を含有する1以上の医薬組成物を投与することを包含する。本明細書ではまた、炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、癌、または脊髄損傷の治療または予防のための医薬の製造における、本明細書に記載の結合性タンパク質の使用が提供される。一実施形態において、前記炎症性疾患、自己免疫疾患または神経変性疾患は、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、アルツハイマー病、またはパーキンソン病からなる群から選択される。
【0036】
一実施形態において、本開示は、それを必要としている対象に対して、関節リウマチ、乾癬、骨粗鬆症、脳卒中、肝疾患、または口腔癌を治療または予防するための方法を提供するものであり、該方法は、前記対象に対して本明細書に記載したFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含んでなり、該結合性タンパク質はIL−17及びIL−20に結合できることを特徴とする。更なる実施形態において、前記FIT−Ig結合性タンパク質は、SEQ ID NO:15、25、及び27から選択されるアミノ酸配列、SEQ ID NO:21に従うアミノ酸配列並びにアミノ酸配列23に従うアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、前記FIT−Ig結合性タンパク質は、SEQ ID NO:15、25、及び27から選択されるアミノ酸配列、及びSEQ ID NO:29、30及び31から選択されるアミノ酸配列を含んでいる。
【0037】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする対象においてB細胞癌を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、前記対象に対してFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含んでなり、該FIT−Ig結合性タンパク質は1以上のB細胞抗原に結合することができる。更なる実施形態では、該FIT−Ig結合性タンパク質はCD20に結合することができる。更なる実施形態において、前記FIT−Igの結合性タンパク質は、CD20及び別の抗原に結合することができる。更なる実施形態において、前記結合性タンパク質は、CD3及びCD20に結合することができる。更なる実施形態において、前記癌はB細胞癌である。更に別の実施形態において、前記B細胞癌は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫[NHL]、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫、成熟B細胞腫瘍、B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、皮膚濾胞中心リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び未分化大細胞リンパ腫からなる群から選択される。一実施形態において、本開示は、それを必要としている対象においてB細胞癌を治療または予防するための方法を提供し、該方法は、前記対象に対してFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含んでなり、ここでの該FIT−Ig結合性タンパク質はSEQ ID NO:41または48に従うアミノ酸配列、及びSEQ ID NO:44に従うアミノ酸配列、及びSEQ ID NO:46に従うアミノ酸配列を含んでいる。
【0038】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染症を治療または予防するための方法を提供し、該方法は前記被験体に対して、本明細書に記載のFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含んでなり、ここでの該結合性タンパク質はTNF及びIL−17に結合することができる。更なる実施形態では、前記FIT−Ig結合性タンパク質は、SEQ ID NO:87、89、及び91に従う配列を含んでいる。別の実施形態において、本開示は自己免疫疾患または炎症性疾患を治療または予防するための方法を提供し、該方法は対象に対してFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含み、ここでの該結合性タンパク質はTNF及びIL−17に結合することができ、また前記自己免疫または炎症性疾患はクローン病、乾癬(プラーク乾癬を含む)、関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、または若年性特発性関節炎を含む)、多発性硬化症、強直性脊椎炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、敗血症、神経変性疾患、神経再生、脊髄損傷、原発性及び転移性癌、呼吸器疾患、喘息;アレルギー性及び非アレルギー性喘息;感染による喘息;呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の感染による喘息;慢性閉塞性肺疾患(COPD);気道炎症を伴う状態;好酸球増加;線維症及び過剰な粘液産生;嚢胞性線維症;肺線維症;アトピー性障害;アトピー性皮膚炎;蕁麻疹;湿疹;アレルギー性鼻炎;アレルギー性胃腸炎;皮膚の炎症及び/または自己免疫状態;胃腸器官の炎症性及び/または自己免疫状態;炎症性腸疾患(IBD);潰瘍性大腸炎;肝臓の炎症及び/または自己免疫状態;肝硬変;肝線維症;B型及び/またはC型肝炎ウイルスによって引き起こされる肝線維症;強皮症からなる群から選択される。別の実施形態において、本開示は、それを必要とする対象において癌を治療または予防するための方法を提供し、該方法は前記対象に対して、本明細書に記載のFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含んでなり、該結合性タンパク質はTNF及びIL−17に結合することができる。更なる実施形態において、前記癌は肝細胞癌;神経膠芽腫;リンパ腫;またはホジキンリンパ腫である。別の実施形態において、本開示は、それを必要とする対象において感染症を治療または予防するための方法を提供し、該方法は前記対象に対して、本明細書に記載のFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含んでなり、ここでの前記感染症は、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、HTLV−1感染である。一実施形態において、本開示は、1型防御免疫応答の発現を抑制し、またワクチン接種時の1型防御免疫応答の発現を抑制するための方法を提供する。
【0039】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における関節リウマチを治療するための方法を提供するものであり、該方法は前記対象に対してFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含み、該結合性タンパク質は、SEQ ID NO:87,89及び91に従う配列を含んでいる。
【0040】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における癌を治療または予防するための方法を提供するものであり、該方法は前記対象に対して本明細書に記載のFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含み、ここでの結合性タンパク質は、CTLA−4及びPD−1に結合することができる。更なる実施形態において、前記FIT−Igの結合性タンパク質は、SEQ ID NO:92,95及び97を含んだアミノ酸配列を含んでいる。別の実施形態において、本開示は、それを必要とする対象において癌を治療または予防するための方法を提供し、ここでの前記結合性タンパク質はCTLA−4及びPD−1に結合することができ、また前記癌は典型的に免疫療法に応答する癌である。別の実施形態において、前記癌は、免疫療法と関連しない癌である。別の実施形態において、前記癌は、難治性または再発悪性腫瘍の癌である。別の実施形態において、前記結合性タンパク質は、腫瘍細胞の増殖または生存を阻害する。別の実施形態において、前記癌は、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓癌(例えば明細胞癌)、前立腺癌(例えば、ホルモン不応性前立腺腺癌)、膵臓腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、食道癌、頭頸部の扁平上皮癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、甲状腺癌、神経膠芽腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫、及び他の新生物悪性腫瘍からなる群から選択される。
【0041】
一実施形態において、本開示は、それを必要とする対象における黒色腫を治療または予防するための方法を提供し、該方法は前記対象に対して本明細書に記載のFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含んでなり、ここでの該結合性タンパク質はCTLA−4及びPD−1に結合することができる。更なる実施態様において、本開示は、それを必要としている対象における黒色腫を治療または予防するための方法を提供するものであり、該方法は前記対象に対して、SEQ ID NO:92,95、及び97に従うアミノ酸配列を含んでなるFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含んでいる。
【0042】
別の実施形態において、本開示は、それを必要とする対象において感染または感染性疾患を治療または予防するための方法を提供するものであり、該方法は前記対象に対して、本明細書に記載のFIT−Ig結合性タンパク質を投与することを含んでなり、該結合性タンパク質はCTLA−4及びPD−1に結合することができる。一実施形態において、該FIT−Ig結合性タンパク質は病原体、毒素及び自己抗原に対する免疫応答を刺激するために、単独で、またはワクチンと組み合わせて投与される。従って、一実施形態では、本明細書において提供される結合性タンパク質はヒトへの感染性ウイルスに対する免疫応答を刺激するために使用することができ、該ウイルスにはヒト免疫不全ウイルス、A型、B型及びC型肝炎ウイルス、エプスタイン ・バーウイルス、ヒト・サイトメガロウイルス、ヒト・パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、細菌、真菌寄生体、または他の病原体が含まれるが、これらに限定されない。
[本発明1001]
少なくとも二つのポリペプチド鎖を含む結合性タンパク質であって、前記ポリペプチド鎖は対合して、2以上の抗原に結合できるIgG様分子を形成し、ここで第一のポリペプチド鎖はVL、CL、VH、及びCH1を含み、ここでのVLは軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、VHは重鎖可変ドメインであり、CH1は前記重鎖の第一の定常ドメインであり、Aは第一の抗原であり、かつBは第二の抗原である、結合性タンパク質。
[本発明1002]
三つのポリペプチド鎖を含み、ここで第二のポリペプチド鎖はVH及びCH1を含み、かつ第三のポリペプチド鎖はVL及びCLを含む、本発明1001の結合性タンパク質。
[本発明1003]
二つのポリペプチド鎖を含み、ここで第二のポリペプチド鎖はVH、CH1、VL及びCLを含む、本発明1001の結合性タンパク質。
[本発明1004]
Fcを更に含む、本発明1001の結合性タンパク質。
[本発明1005]
前記FcはヒトIgG1のFcである、本発明1004の結合性タンパク質。
[本発明1006]
前記FcはSEQ ID NO:20の通りである、本発明1004の結合性タンパク質。
[本発明1007]
前記Fcは変異体Fcである、本発明1004の結合性タンパク質。
[本発明1008]
少なくとも一つのポリペプチドリンカーを更に含む、本発明1001、1002、または1003の結合性タンパク質。
[本発明1009]
前記少なくとも一つのポリペプチドリンカーは、
からなる群から選択される、本発明1008の結合性タンパク質。
[本発明1010]
第一、第二、及び第三のポリペプチド鎖構築物から、1:1:1、1:1.5:1.5、または1:3:3からなる群から選択される第一:第二:第三のモル比で調製される、本発明1002の結合性タンパク質。
[本発明1011]
第一のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVL−CL−VH−CH1−Fcを含み、第二のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVH−CH1を含み、かつ第三のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVL−CLを含む、本発明1002の結合性タンパク質。
[本発明1012]
第一のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVH−CH1−VL−CL−Fcを含み、第二のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVH−CH1を含み、かつ第三のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVL−CLを含む、本発明1002の結合性タンパク質。
[本発明1013]
第一及び第二のポリペプチド鎖構築物から、1:1、1:1.5、または1:3からなる群から選択される第一:第二のモル比で調製される、本発明1003の結合性タンパク質。
[本発明1014]
第一のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVL−CL−VH−CH1−Fcを含み、かつ第二のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVH−CH1−VL−CLを含む、本発明1003の結合性タンパク質。
[本発明1015]
第一のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVH−CH1−VL−CL−Fcを含み、かつ第二のポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシル末端へとVL−CL−VH−CH1を含む、本発明1003の結合性タンパク質。
[本発明1016]
第一のポリペプチド鎖のCLが、VHに直接融合される、本発明1011または1014の結合性タンパク質。
[本発明1017]
第一のポリペプチド鎖のCLが、アミノ酸リンカーまたはオリゴペプチドリンカーを介してVHに連結される、本発明1011または1014の結合性タンパク質。
[本発明1018]
第一のポリペプチド鎖のCH1が、VLに直接融合される、本発明1012または1015の結合性タンパク質。
[本発明1019]
第一のポリペプチド鎖のCH1が、アミノ酸リンカーまたはオリゴペプチドリンカーを介してVLに連結される、本発明1012または1015の結合性タンパク質。
[本発明1020]
前記リンカーは、
からなる群から選択される、本発明1017または1019の結合性タンパク質。
[本発明1021]
前記リンカーは、SEQ ID NO:26及びSEQ ID NO:28からなる群から選択される、本発明1020の結合性タンパク質。
[本発明1022]
前記ポリペプチド鎖がモノマーIgG様分子を形成する、本発明1001〜1021のいずれかの結合性タンパク質。
[本発明1023]
IL−1α及びIL−1β、IL−12及びIL−18、TNFα及びIL−23、TNFα及びIL−13;TNF及びIL−18;TNF及びIL−12;TNF及びIL−1β;TNF及びMIF;TNF及びIL−6、TNF及びIL−6受容体、TNF及びIL−17;IL−17及びIL−20;IL−17及びIL−23;TNF及びIL−15;TNF及びVEGF;VEGFR及びEGFR;IL−13及びIL−9;IL−13及びIL−4;IL−13及びIL−5;IL−13及びIL−25;IL−13及びTARC;IL−13及びMDC;IL−13及びMIF;IL−13及びTGF−β;IL−13及びLHRアゴニスト;IL−13及びCL25;IL−13及びSPRR2a;IL−13及びSPRR2b;IL−13及びADAM8;並びにTNFα及びPGE4、IL−13及びPED2、TNF及びPEG2からなる群から選択されるサイトカインの対に結合できる、本発明1001〜1022のいずれかの結合性タンパク質。
[本発明1024]
ヒトIL−17及びヒトIL−20に結合する、本発明1023の結合性タンパク質。
[本発明1025]
抗IL−17抗体LY及び抗IL−20抗体15D2由来の可変重鎖及び可変軽鎖を含む、本発明1024の結合性タンパク質。
[本発明1026]
SEQ ID NO:15、25、及び27からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んだ第一のポリペプチド鎖、SEQ ID NO:21に従うアミノ酸配列を含んだ第二のポリペプチド鎖、並びにSEQ ID NO:23に従う配列を含んだ第三のポリペプチド鎖を含む、本発明1002の結合性タンパク質。
[本発明1027]
SEQ ID NO:15、25、及び27からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んだ第一のポリペプチド鎖、並びにSEQ ID NO:29、30及び31からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んだ第二のポリペプチド鎖を含む、本発明1003の結合性タンパク質。
[本発明1028]
CD138及びCD20;CD138及びCD40;CD19及びCD20;CD20及びCD3;CD3及びCD33;CD16及びCD33、CD3及びCD133;CD38及びCD138;CD38及びCD20;CD20及びCD22;CD38及びCD40;CD40及びCD20;CD−8及びIL−6;CSPG及びRGM A;CTLA−4及びBTNO2;IGF1及びIGF2;IGF1/2及びErb2B;IGF−1R及びEGFR;EGFR及びCD13;IGF−1R及びErbB3;EGFR−2及びIGFR;VEGFR−2及びMet;VEGF−A及びアンジオポエチン−2(Ang−2);IL−12及びTWEAK;IL−13及びIL−1β;MAG及びRGM A;NgR及びRGM A;NogoA及びRGM A;OMGp及びRGM A;PDL−1及びCTLA−4;PD−1及びCTLA−4;PD−1及びTIM−3;CD137及びCD20、CD137及びEGFR、CD137及びHer−2;CD137及びPD−1、CD137及びPDL−1、VEGF及びPD−L1、Lag−3及びTIM−3、OX40及びPD−1、TIM−3及びPDL−1、EGFR及びDLL−4、PDGFR及びVEGF、EpCAM及びCD3、Her2及びCD3、CD19及びCD3、EGFR及びHer3、CD16a及びCD30、CD30及びPSMA、EGFR及びCD3、CEA及びCD3、TROP−2及びHSG、TROP−2及びCD3、VEGF及びEGFR、HGF及びVEGF、VEGF及びVEGF(同一もしくは異なるエピトープ)、EGFR及びcMet、PDGF及びVEGF、VEGF及びDLL−4、OX40及びPD−L1、ICOS及びPD−1、ICOS及びPD−L1、Lag−3及びPD−1、Lag−3及びPD−L1、Lag−3及びCTLA−4、ICOS及びCTLA−4、CD47及びCD20、RGM A及びRGM B;Te38及びTNFα;TNFα及びBlys;TNFα及びCD−22;TNFα及びCTLA−4ドメイン;TNFα及びGP130;TNFα及びIL−12p40;並びにTNFα及びRANKリガンドからなる群から選択される標的の対に結合できる、本発明1001〜1022のいずれかの結合性タンパク質。
[本発明1029]
ヒトCD3及びヒトCD20に結合できる、本発明1028の結合性タンパク質。
[本発明1030]
抗CD3抗体OKT3及び抗CD20抗体オファツムマブ由来の可変重鎖及び可変軽鎖を含む、本発明1029の結合性タンパク質。
[本発明1031]
SEQ ID NO:41及び48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含んだ第一のポリペプチド鎖; SEQ ID NO:44に従うアミノ酸配列を含んだ第二のポリペプチド鎖;並びにSEQ ID NO:46に従うアミノ酸配列を含んだ第三のポリペプチド鎖を含む、本発明1002の結合性タンパク質。
[本発明1032]
CTLA−4上の1以上のエピトープに結合できる、本発明1001の結合性タンパク質。
[本発明1033]
PD−1上の1以上のエピトープに結合できる、本発明1001の結合性タンパク質。
[本発明1034]
T細胞上の免疫チェックポイントタンパク質上の1以上のエピトープに結合できる、本発明1001の結合性タンパク質。
[本発明1035]
前記免疫チェックポイントタンパク質はTIM−3、Lag3、ICOS、BTLA、CD160、2B4、KIR、CD137、CD27、OX40、CD40L、及びA2aRからなる群から選択される、本発明1034の結合性タンパク質。
[本発明1036]
免疫チェックポイント活性に関与するタンパク質上の1以上のエピトープに結合できる、本発明1001の結合性タンパク質。
[本発明1037]
前記タンパク質はPD−L1、PD−L2、ガレクチン9、HVEM、CD48、B7−1、B7−2、ICOSL、B7−H3、B7−H4、CD137L、OX40L、CD70、及びCD40からなる群から選択される、本発明1036の結合性タンパク質。
[本発明1038]
単一特異性の抗体または抗体断片に対するのと同等以上の親和性で各抗原に結合する、本発明1001〜1037のいずれかの結合性タンパク質。
[本発明1039]
免疫接着分子、造影剤、治療剤、及び細胞傷害剤からなる群から選択される剤に接合される、本発明1001〜1038のいずれかの結合性タンパク質。
[本発明1040]
本発明1001〜1039の何れかの結合性タンパク質と、1以上の医薬的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物。
[本発明1041]
それを必要としている対象における炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、癌、敗血症、代謝障害、または脊髄損傷の治療または予防方法であって、有効量の本発明1040の医薬組成物を該対象に投与することを含む、方法。
[本発明1042]
前記炎症性疾患、自己免疫疾患、または神経変性疾患は、喘息、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、アルツハイマー病、またはパーキンソン病からなる群から選択される、本発明1031の方法。
[本発明1043]
炎症性疾患、自己免疫疾患、神経変性疾患、癌、または脊髄損傷の治療または予防のための医薬の製造における、本発明1001〜1039のいずれかの結合性タンパク質の使用。
[本発明1044]
前記炎症性疾患、自己免疫疾患、または神経変性疾患は、喘息、関節リウマチ、SLE、多発性硬化症、アルツハイマー病、またはパーキンソン病からなる群から選択される、本発明1043の使用。
[本発明1045]
SEQ ID NO:87に従うアミノ酸配列を含んだ第一のポリペプチド鎖、SEQ ID NO:89に従うアミノ酸配列を含んだ第二のポリペプチド鎖、及びSEQ ID NO:91に従う配列を含んだ第三のポリペプチド鎖を含む、本発明1002の結合性タンパク質。
[本発明1046]
ヒトTNF及びヒトIL−17に結合できる、本発明1023の結合性タンパク質。
[本発明1047]
SEQ ID NO:92に従うアミノ酸配列を含んだ第一のポリペプチド鎖、SEQ ID NO:95に従うアミノ酸配列を含んだ第二のポリペプチド鎖、及びSEQ ID NO:97に従う配列を含んだ第三のポリペプチド鎖を含む、本発明1002の結合性タンパク質。
[本発明1048]
ヒトCTLA―4及びヒトPD−1に結合できる、本発明1028の結合性タンパク質。
[本発明1049]
それを必要としている対象における関節リウマチ、乾癬、骨粗鬆症、脳卒中、肝疾患、及び口腔癌からなる群から選択される疾患の治療方法であって、該方法は、本発明1001の結合性タンパク質を該対象に投与することを含み、該結合性タンパク質はIL−17及びIL−20に結合できる、方法。
[本発明1050]
それを必要としている対象におけるB細胞癌の治療方法であって、該方法は、本発明1001の結合性タンパク質を該対象に投与することを含み、該結合性タンパク質はCD3及びCD20に結合できる、方法。
[本発明1051]
前記B細胞癌は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、前駆B細胞リンパ芽球性白血病/リンパ腫、成熟B細胞腫瘍、B細胞慢性リンパ球性白血病/小リンパ球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、皮膚濾胞中心リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫、移植後リンパ増殖性障害、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び未分化大細胞リンパ腫からなる群から選択される、本発明1050の方法。
[本発明1052]
それを必要としている対象における自己免疫疾患または炎症性疾患の治療方法であって、該方法は、本発明1001の結合性タンパク質を該対象に投与することを含み、該結合性タンパク質はTNF及びIL−17に結合できる、方法。
[本発明1053]
前記自己免疫疾患は、クローン病、乾癬(プラーク乾癬を含む)、関節炎(関節リウマチ、乾癬性関節炎、骨関節炎、または若年性特発性関節炎を含む)、多発性硬化症、強直性脊椎炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、ブドウ膜炎、敗血症、神経変性疾患、神経再生、脊髄損傷、原発性及び転移性癌、呼吸器疾患喘息、アレルギー性及び非アレルギー性喘息、感染による喘息、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)の感染による喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気道炎症を伴う状態、好酸球増加症、線維症及び過剰な粘液産生、嚢胞性線維症、肺線維症、アトピー性疾患、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、湿疹、アレルギー性鼻炎、アレルギー性胃腸炎、皮膚の炎症状態及び/または自己免疫状態、胃腸器官の炎症状態及び/または自己免疫状態、炎症性腸疾患(IBD)、潰瘍性大腸炎、肝臓の炎症状態及び/または自己免疫状態、肝硬変、肝線維症、B型及び/またはC型ウイルス性肝炎によって引き起こされる肝線維症、強皮症、腫瘍または癌、肝細胞癌、神経膠芽腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ウイルス感染、細菌感染、寄生虫感染、HTLV−1感染、1型防御免疫応答の発現の抑制、並びにワクチン接種時の1型防御免疫応答の発現の抑制からなる群から選択される、本発明1052の方法。
[本発明1054]
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、または多発性硬化症である、本発明1053の方法。
[本発明1055]
それを必要としている対象における癌の治療方法であって、該方法は、本発明1001の結合性タンパク質を該対象に投与することを含み、該結合性タンパク質はCTLA−4及びPD−1に結合できる、方法。
[本発明1056]
前記癌は、黒色腫、腎臓癌、前立腺癌、膵臓腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、食道癌、頭頸部の扁平上皮細胞癌、肝臓癌、卵巣癌、子宮頸癌、甲状腺癌、神経膠芽腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫、及び他の悪性腫瘍である、本発明1055の方法。
[本発明1057]
第一のポリペプチドはVL−CL−(X1)n−VH−CH1−(X2)nを含み、ここでVLはmAb Aの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、X1はアミノ酸リンカーもしくはオリゴペプチドリンカーを表し、VHはmAb Bの重鎖可変ドメインであり、CH1は前記重鎖の第一定常ドメインであり、X2はFc領域または異なる二量体化ドメインを表し、かつnは0または1である、本発明1001の結合性タンパク質。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1Aは、FIT1−Ig、FIT2−Ig、及びFIT3−Igのような三つの構築物から構成されるFIT−Igの構造を示している。図1Bは、FIT1−Igを調製するために使用される三つの構築物を示す。
図2図2Aは、二つの構築物から構成されるFIT−Igの基本的な構造を示している。図2Bは、FIT−Igを調製するために使用される二つの構築物を示す。
図3図3は、ビアコアにより測定されるFIT1−Igの二重特異的な抗原結合を提供する。図3の上段のパネルは、FIT1−Igが最初にIL−17で飽和され、続いてIL−20で飽和されたビアコア結合アッセイの結果を示す。図3の下段のパネルは、FIT1−Igが最初にL−20で飽和され、続いてIL−17で飽和されたビアコアアッセイの結果を示す。
図4図4は、PEG−誘導沈殿により測定された、あるpH範囲における抗IL−17/IL−20・FIT−Ig、またはモノクローナル抗体リツキシマブの溶解度を示す。
図5図5は、DG44(5A及び5B)システム及びCHO−S(5C及び5D)システムの両方における、安定したCHO細胞株発生の安定性を示す。
図6図6は、ELISAによって評価された、FIT10−Igまたは親抗体イピリムマブ及びニボルマブによるCTLA−4(図6A)またはPD−1(図6B)への結合を示している。
図7図7は、CTLA−4及びPD−1の両方に対するFIT10−Igの多重結合試験を示している。CTLA−4への結合に続くPD−1への結合;及びPD−1による結合に続くCTLA−4による結合の両者が、図7に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0044】
詳細な説明
本発明は、多価及び多重特異的結合性タンパク質、該結合性タンパク質の製造方法、並びに急性及び慢性炎症性疾患及び障害、癌、及び他の疾患の予防及び/または治療におけるそれらの使用に関する。本発明は、2以上の抗原に結合することが可能な多価及び/または多重特異的結合性タンパク質に関する。特に、本発明は、タンデム型Fab免疫グロブリン(FIT−IG)、及びその医薬組成物、並びにこのようなFIT−Igを作製するための核酸、組換え発現ベクター及び宿主細胞に関する。インビトロまたはインビボの何れかで特異的抗原を検出するために、本発明のFIT−Igを使用する方法もまた本発明に包含される。
【0045】
本明細書で提供される結合性タンパク質の新規ファミリーは、例えば、高い親和性で、2以上の抗原に結合することができる。即ち、本発明は、二つの親モノクローナル抗体:即ち、抗原aに結合するmAb−A及び抗原bに結合するmAb−Bを使用して、二重特異的結合性タンパク質を構築するためのアプローチを提供する。
【0046】
一態様において、本発明は、第一の抗原またはエピトープに特異的な可変軽鎖、第一の軽鎖定常ドメイン、第二の抗原またはエピトープに特異的な可変重鎖、第一の重鎖CH1、前記第一の抗原またはエピトープに特異的な可変重鎖、第二の重鎖CH1、前記第二の抗原またはエピトープに特異的な可変重鎖、及び第二の軽鎖定常ドメインを含んでなる結合性タンパク質を提供する。一実施形態において、前記結合性タンパク質は更にFc領域を含む。前記結合性タンパク質は、更に、前記結合性タンパク質の2以上の成分を連結する1以上のアミノ酸もしくはポリペプチドリンカーを含むことができる。例えば、前記結合性タンパク質は、軽鎖可変領域を前記軽鎖定常領域に連結するポリペプチドリンカーを含むことができる。
【0047】
一実施形態において、本開示は、VL−CL−(X1)n−VH−CH1−(X2)nを備えたポリペプチド鎖を含んでなる結合性タンパク質を提供するものであり、ここでのVLはmAb−Aの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、X1はアミノ酸またはオリゴペプチドリンカーを表し、VHはmAb−Bの重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、X2はFc領域または異なる二量体化ドメインを表し、nは0または1である。
【0048】
一実施形態において、本発明は、三つの異なるポリペプチド鎖を含む結合性タンパク質(図1)を提供し、第一のポリペプチド鎖(構造物#1)はVL−CL−(X1)n−VH−CHl−(X2)nを備え、ここでのVLはmAb−Aの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、X1はアミノ酸もしくはオリゴペプチドリンカーを表し、VHはmAb−Bの重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、X2はFc領域もしくは異なる二量体化ドメインを表し、nは0または1である。第二のポリペプチド鎖(構築物#2)は、VHA−CH1を含んでなり、ここでのVHはmAb−Aの重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインである。第三のポリペプチド鎖(構築物#3)は、VL−CLを含んでなり、ここでのVLはmAb−Bの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖の定常ドメインである。
【0049】
別の実施形態において、本発明は、可変ドメインの順序が逆になっていることを除き、先の実施形態と同様の全体的分子設計をもった三つの異なるポリペプチド鎖を含む結合性タンパク質を提供する。この実施形態において、第一のポリペプチド鎖は、VH−CHl−(X1)n−VL−CL−(X2)nを含み、ここでのVLはmAb−Aの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、X1はアミノ酸もしくはオリゴペプチドリンカーを表し、VHはmAb−Bの重鎖可変ドメイン、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、X2はFc領域または異なる二量体化ドメインを表し、nは0または1である。第二のポリペプチド鎖はVH−CH1を含み、ここでのVHはmAb−Aの重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一の定常ドメインである。第三のポリペプチド鎖はVL−CLを含み、ここでのVLはmAb−Bの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖の定常ドメインである。
【0050】
別の実施形態において、本発明は、二つの異なるポリペプチド鎖を含む結合性タンパク質(図2)を提供し、ここでの第一のポリペプチド鎖(構築物#1)は、VL−CL−(X1)n−VH−CHl−(X2)nを含んでおり、ここでのVLは、mAb−Aの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインであり、X1は、アミノ酸もしくはオリゴペプチドリンカーを表し、VHはmAb−Bの重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、X2はFc領域もしくは異なる二量体化ドメインを表し、nは0または1である。第二のポリペプチド鎖(構築物#4)は、VH−CH1−(X3)n−VL−CLを含んでなり、ここでのVHはmAb−A重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、X3は定常ドメインではないアミノ酸もしくはポリペプチドであり、nは0または1であり、VLはmAb−Bの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメインである。
【0051】
別の実施形態において、本発明は、可変ドメインの順序が逆になっているのを除いて、先の実施形態と同様の全体的な分子設計を持つ二つのポリペプチド鎖を含んでなる結合性タンパク質を提供する。この実施形態において、第一のポリペプチド鎖は、VH−CH1−(X1)n−VL−CL−(X2)nを含んでなり、ここでのVLはmAb−Aの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖定常ドメイン、X1はアミノ酸もしくはオリゴペプチドリンカーを表し、VHはmAb−Bの重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、X2はFc領域または異なる二量体化ドメインを表し、nは0または1である。第二のポリペプチド鎖はVL−CL−(X3)n−VH−CH1を含んでなり、ここでのVHはmAb−Aの重鎖可変ドメインであり、CH1は重鎖の第一定常ドメインであり、X3はアミノ酸もしくはオリゴペプチドリンカーを表し、nは0または1であり、VLはmAb−Bの軽鎖可変ドメインであり、CLは軽鎖の定常ドメインである。
【0052】
一実施形態において、前記結合性タンパク質中のVH及びVLドメインは、マウス重鎖/軽鎖の可変ドメイン、完全なヒト重鎖/軽鎖の可変ドメイン、CDR移植された重鎖/軽鎖可変ドメイン、ヒト化された重鎖/軽鎖の可変ドメイン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態において、VH/VL及びVH/VLは同じ抗原に結合することができる。別の実施形態において、VH/VL及びVH/VLは異なる抗原に結合することができる。
【0053】
一実施形態において、前記第一のポリペプチド鎖はVL−CL−VH−CH1−Fcを含み、該第一のポリペプチド鎖のCL及びVHは一緒に直接融合される。別の実施形態において、CL及びVHは、アミノ酸またはオリゴペプチドリンカーによって連結される。別の実施形態では、前記第一のポリペプチド鎖は、VH−CH1−VL−CL−Fcを含んでおり、前記CH1及びVLは直接一緒に融合される。別の実施形態において、CH1及びVLはアミノ酸またはオリゴペプチドリンカーによって連結される。更なる実施形態において、前記オリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーは、柔軟性を提供する任意の合理的な配列の1以上のアミノ酸を含んでいる。好ましくは、前記リンカーは、G、GS、SG、GGS、GSG、SGG、GGG、GGGS、SGGG、GGGGS、GGGGSGS、GGGGSGS、GGGGSGGS、GGGGSGGGGS、GGGGSGGGGSGGGGS、AKTTPKLEEGEFSEAR、AKTTPKLEEGEFSEARV、AKTTPKLGG、SAKTTPKLGG、AKTTPKLEEGEFSEARV、SAKTTP、SAKTTPKLGG、RADAAP、RADAAPTVS、RADAAAAGGPGS、RADAAAA(GS)、SAKTTP、SAKTTPKLGG、SAKTTPKLEEGEFSEARV、ADAAP、ADAAPTVSIFPP、TVAAP、TVAAPSVFIFPP、QPKAAP、QPKAAPSVTLFPP、AKTTPP、AKTTPPSVTPLAP、AKTTAP、AKTTAPSVYPLAP、ASTKGP、ASTKGPSVFPLAP、GENKVEYAPALMALS、GPAKELTPLKEAKVS、及びGHEAAAVMQVQYPASからなる群から選択される。一実施形態において、前記リンカーのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:26、28及び49〜86からなる群から選択され得る。一実施形態では、前記リンカーは、GSG(SEQ ID NO:26)またはGGGGSGS(SEQ ID NO:28)である。前記リンカーはまた、以前に記載されたように(バイオ医薬のための融合タンパク質技術:応用及び課題(Fusion Protein Technologies for Biopharmaceuticals: Applications and Challenges)、Stefan R.Schmidt編)、インビボで切断可能なペプチドリンカー、プロテアーゼ(例えばMMP)感受性リンカー、還元により切断され得るジスルフィド結合に基づくリンカー等、または当該技術において既知の何れかの切断可能なリンカーであることができる。このような切断可能なリンカーは、二つの異なるFab領域の組織/細胞の浸透及び分布を改善するため、標的への結合を増強するため、潜在的な副作用を低減するため、並びにインビボでの機能的及び物理的な半減期を調節するために、様々な目的で上部Fabをインビボで放出するために使用することができる。一実施形態において、前記結合性タンパク質はFc領域を含んでいる。本明細書で使用するとき、用語「Fc領域」とは、IgG重鎖のC末端領域を意味する。ヒトIgG1のFc領域を含むアミノ酸配列の例は、SEQ ID NO:20である。IgGのFc領域は二つの定常ドメイン、即ち、CH2及びCH3を含んでいる。
【0054】
一実施形態において、前記Fc領域は変異型Fc領域である。一実施形態において、前記変異型Fc領域は、親Fc領域に対して、置換、欠失、または挿入のような1以上のアミノ酸修飾を有している。更なる実施形態において、前記Fc領域のアミノ酸修飾は、親のFc領域の活性に対してエフェクター機能活性を変化させる。例えば、一実施形態において、変異型Fc領域は、変化した(即ち、増加または減少した)抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、補体媒介性細胞傷害性(CDC)、食作用、オプソニン作用、または細胞結合を有し得る。別の実施形態において、Fc領域のアミノ酸修飾は、親Fc領域に対して、FcγRについての変異型Fc領域の親和性を変化(即ち、増加または減少)させることができる。例えば、変異型Fc領域は、FcγRI、FcyRII、FcγRIIIについての親和性を変更することができる。
【0055】
一つの好ましい実施形態において、本明細書で提供される結合性タンパク質は、1以上の標的に結合することができる。一実施形態において、前記標的は、サイトカイン、細胞表面タンパク質、酵素及び受容体からなる群から選択される。好ましくは、前記結合性タンパク質は、1以上の標的の生物学的機能を調節することができる。より好ましくは、前記結合性タンパク質は、1以上の標的を中和することができる。
【0056】
一実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、リンホカイン、モノカイン、及びポリペプチドホルモンからなる群から選択されるサイトカインに結合することができる。更なる実施形態において、前記結合性タンパク質は、下記からなる群から選択されるサイトカイン対に結合することができる:即ち、IL−1α及びIL−1β;IL−12及びIL−18;TNFα及びIL−23、TNFα及びIL−13;TNF及びIL−18;TNF及びIL−12;TNF及びIL−1β;TNF及びMIF;TNF及びIL−6、TNF及びIL−6受容体、TNF及びIL−17;IL−17及びIL−20;IL−17及びIL−23;TNF及びIL−15;TNF及びVEGF;VEGFR及びEGFR;IL−13及びIL−9;IL−13及びIL−4;IL−13及びIL−5:IL−13及びIL−25;IL−13及びTARC;IL−13及びMDC;IL−13及びMIF;IL−13及びTGF−β;IL−13及びLHRアゴニスト;IL−13及びCL25;IL−13及びSPRR2a;IL−13及びSPRR2b;IL−13及びADAM8;TNFα及びPGE4、IL−13及びPED2、TNF及びPEG2である。
【0057】
別の実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、下記からなる群から選択される標的対に結合することができる:即ち、CD137及びCD20、CD137及びEGFR、CD137及びHer−2、CD137及びPD−1、CD137及びPDL−1、VEGF及びPD−L1、Lag−3及びTIM−3、OX40及びPD−1、TIM−3及びPD−1、TIM−3及びPDL−1、EGFR及びDLL−4、VEGF及びEGFR、HGF及びVEGF、VEGF及びVEGF(同じかまたは異なるエピトープ)、VEGF及びAng2、EGFR及びcMet、PDGF及びVEGF、VEGF及びDLL−4、OX40及びPD−L1、ICOS及びPD−1、ICOS及びPD−L1、Lag−3及びPD−1、Lag−3及びPD−L1、Lag−3及びCTLA−4、ICOS及びCTLA−4、CD138及びCD20;CD138及びCD40;CD19及びCD20;CD20及びCD3;CD3及びCD33;CD3及びCD133;CD38&CD138;CD38及びCD20;CD20及びCD22;CD38及びCD40;CD40及びCD20;CD47及びCD20、CD−8及びIL−6;CSPG及びRGM−A;CTLA−4とBTNO2;CTLA−4及びPD−1;IGF1及びIGF2;IGF1/2及びErb2B;IGF−IR及びEGFR;EGFR及びCD 13;IGF−IR及びErbB3;EGFR−2及びIGFR;Her2及びHer2(同じかまたは異なるエピトープ);第IXa因子、第X因子、VEGFR−2及びMet;VEGF−A及びアンジオポエチン−2(Ang−2);IL−12及びTWEAK;IL−13及びIL−1β;MAG及びRGM−A;NgR及びRGM−A;NogoA及びRGM A;OMGp及びRGM−A;PDL−1及びCTLA−4;PD−1及びTIM−3;RGM−A及びRGM−B;Te38及びTNFα;TNFα及びBlys;TNFα及びCD−22;TNFα及びCTLA−4ドメイン;TNFα及びGP130;TNFα及びIL−12p40;並びにTNFα及びRANKリガンドである。
【0058】
一実施形態において、前記結合性タンパク質は、ヒトIL−17及びヒトIL−20に結合することができる。更なる実施形態において、前記結合性タンパク質はヒトIL−17及びヒトIL−20に結合することができ、またSEQ ID NO:15,25及び27からなる群から選択される配列に対して約65%、約70%、約75%、約80%、85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるFIT−Igポリペプチド鎖#1配列;SEQ ID NO:21に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるポリペプチド鎖#2配列;SEQ ID NO:23に対して 約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、100%同一であるポリペプチド鎖#3配列を含んでいる。別の実施形態において、前記結合性タンパク質は、ヒトIL−17及びヒトIL−20に結合することができ、SEQ ID NO:15、25、及び27からなる群から選択される配列に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるFIT−Igポリペプチド鎖#1配列;及びSEQ ID NO:29,30及び31からなる群から選択される配列に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるポリペプチド鎖#4を含んでいる。
【0059】
一実施形態において、前記結合性タンパク質は、ヒトCD3及びヒトCD20に結合することができる。更なる実施形態において、前記結合性タンパク質は、SEQ ID NO:41及び48からなる群から選択される配列に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるFIT−Igポリペプチド鎖#1配列;SEQ ID NO:44に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるポリペプチド鎖#2配列;及びSEQ ID NO:46に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるポリペプチド鎖#3配列を含んでいる。
【0060】
一実施形態において、前記結合性タンパク質はヒトIL−17及びヒトTNFに結合することができる。更なる実施形態において、前記結合性タンパク質は、ヒトIL−17及びヒトTNFに結合でき、SEQ ID NO:87に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるFIT−Igポリペプチド鎖#1配列;SEQ ID NO:89に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるポリペプチド鎖#2配列;及びSEQ ID NO:91に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるポリペプチド鎖#3配列を含んでいる。
【0061】
一実施形態において、前記結合性タンパク質は、ヒトCTLA−4及びヒトPD−1に結合することができる。更なる実施形態において、前記結合性タンパク質は、ヒトCTLA−4及びヒトPD−1に結合することができ、またSEQ ID NO:92に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるFIT−Igポリペプチド鎖#1配列;SEQ ID NO:95に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるポリペプチド鎖#2配列;並びにSEQ ID NO:97に対して約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、または100%同一であるポリペプチド鎖#3配列を含んでいる。
【0062】
別の実施形態では、本発明の結合性タンパク質は、下記からなる群から選択される1または2のサイトカイン、サイトカイン関連タンパク質、及びサイトカイン受容体に結合することができる:即ち、BMP1、BMP2、BMP3B(GDF10)、BMP4、BMP6、BMP8、CSF1(M−CSF)、CSF2(GM−CSF)、CSF3(G−CSF)、EPO、FGF1(aFGF)、FGF2(bFGF)、FGF3(int−2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST−2)、FGF7(KGF)、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、IGF1、IGF2、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFNB1、IFNG、IFNW1、FIL1、FIL1(イプシロン)、FIL1(ゼータ)、IL1A、IL1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL17B、IL18、IL19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、PDGFA、FGER1、FGFR2、FGFR3、EGFR、ROR1、2B4、KIR、CD137、CD27、OX40、CD40L、A2aR、CD48、B7−1、B7−2、ICOSL、B7−H3、B7−H4、CD137L、OX40L、CD70、CD40、PDGFB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、LTA(TNF−b)、LTB、TNF(TNF−a)、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4−1BBリガンド)、TNFSF10(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(AP03L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM−L)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、FIGF(VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、IL1R1、IL1R2、ILIRLI、IL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL15RA、IL17R、IL18R1、IL20RA、IL21R、IL22R、IL1HY1、IL1RAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、IL1RN、IL6ST、IL18BP、IL18RAP、IL22RA2、AIF1、HGF、LEP(レプチン)、PTN、及びTHPOである。
【0063】
本発明の結合性タンパク質は、下記からなる群から選択される1以上のケモカイン、ケモカイン受容体、及びケモカイン関連タンパク質に結合することができる:CCL1(I−309)、CCL2(MCP−1/MCAF)、CCL3(MIP−1a)、CCL4(MIP−1b)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP−3)、CCL8(mcp−2)、CCL11(エオタキシン)、CCL13(MCP−4)、CCL15(MIP−1d)、CCL16(HCC−4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MIP−3b)、CCL20(MIP−3a)、CCL21(SLC/exodus−2)、CCL22(MDC/STC−1)、CCL23(MPIF−1)、CCL24(MPIF−2/エオタキシン−2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン−3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CXCL1(GRO1)、CXCL2(GRO2)、CXCL3(GRO3)、CXCL5(ENA−78)、CXCL6(GCP−2)、CXCL9(MIG)、CXCL10(IP10)、CXCL11(I−TAC)、CXCL12(SDF1)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、PF4(CXCL4)、PPBP(CXCL7)、CX3CL1(SCYD1)、SCYE1、XCL1(リンホタクチン)、XCL2(SCM−1b)、BLRl(MDR15)、CCBP2(D6/JAB61)、CCR1(CKR1/HM145)、CCR2(mcp−1RB/RA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR−L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBI1)、CCR8(CMKBR8/TER1/CKR−L1)、CCR9(GPR−9−6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L−CCR)、XCR1(GPR5/CCXCR1)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CX3CR1(V28)、CXCR4、GPR2(CCR10)、GPR31、GPR81(FKSG80)、CXCR3(GPR9/CKR−L2)、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、HM74、IL8RA(IL8Ra)、IL8RB(IL8Rb)、LTB4R(GPR16)、TCP10、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、BDNF、C5R1、CSF3、GRCC10(C10)、EPO、FY(DARC)、GDF5、HIF1A、IL8、PRL、RGS3、RGS13、SDF2、SLIT2、TLR2、TLR4、TREM1、TREM2、及びVHLである。
【0064】
別の実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、例えばインテグリンのような細胞表面タンパク質に結合することができる。別の実施形態では、本発明の結合性タンパク質は、キナーゼ及びプロテアーゼからなる群から選択される酵素に結合することができる。更に別の実施形態では、本発明の結合性タンパク質は、リンホカイン受容体、モノカイン受容体及びポリペプチドホルモン受容体からなる群から選択される受容体に結合することができる。
【0065】
一実施形態において、前記結合性タンパク質は多価である。別の実施形態において、前記結合性タンパク質は多重特異的である。上記の多価の及び/または多重特異的な結合性タンパク質は、特に治療の観点から望ましい特性を有している。例えば、この多価及びまたは多重特異的結合性タンパク質は、(1)二価抗体よりも早く、当該抗体が結合する抗原を発現する細胞により内部移行(及び/または異化)することができ;(2)アゴニスト抗体であり;及び/または(3)当該多価抗体が結合できる抗原を発現する細胞の細胞死及び/またはアポトーシスを誘導する。前記多価及びまたは多重特異的結合性タンパク質の少なくとも一つの抗原結合特異性を提供する「親抗体」は、該抗体が結合する抗原を発現する細胞により内部移行(及び/または異化)されるものであることができ;及び/またはアゴニスト、細胞死誘導性及び/またはアポトーシス誘導性抗体であることができ、また本明細書に記載する多価及びまたは多重特異性結合性タンパク質は、これらの特性の1以上において改善を示すことができる。更に、前記親抗体は、これら特性の任意の1以上を欠いてもよいが、本明細書に記載の多価結合性タンパク質として構築したときには、それらを賦与することができる。
【0066】
別の実施例において、本発明の結合性タンパク質は、下記からなる群から選択される、1以上の標的に対するオン速度定数(Kon)を有している:即ち、表面プラズモン共鳴により測定したときに少なくとも約10−1−1、少なくとも約10−1−1、少なくとも約10−1−1、少なくとも約10−1−1、及び少なくとも約10−1−1である。好ましくは、本発明の結合性タンパク質は、表面プラズモン共鳴で測定したときに、1以上の標的に対して10−1−1〜10−1−1、10−1−1〜10−1−1、10−1−1〜10−1−1、または10−1−1〜10−1−1のオン速度乗数(Kon)を有する。
【0067】
別の実施形態において、前記結合性タンパク質は下記からなる群から選択される、1以上の標的に対するオフ速度定数(Koff)を有している:即ち、表面プラズモン共鳴により測定したときに最大で約10−3−1、最大で約10−4−1、最大で約10−5−1、及び最大で約10−6−1である。好ましくは、本発明の結合性タンパク質は、表面プラズモン共鳴で測定したときに、1以上の標的に対して10−3−1〜10−4−1、10−4−1〜10−5−1、または10−5−1〜10−6−1のオフ速度乗数(Koff)を有する。
【0068】
別の実施形態において、前記結合性タンパク質は下記からなる群から選択される、1以上の標的に対する解離定数(K)を有している:即ち、最大で約10−7M、最大で約10−8M、最大で約10−9M、最大で約10−10M、及び最大で約10−11M、最大で約10−12M、及び最大で約10−13Mである。好ましくは、本発明の結合性タンパク質は、IL−12またはIL−23に対して、10−7M〜10−8M;10−8M〜10−9M;10−9M〜10−10M;10−10M〜10−11M;10−11M〜10−12M;または10−12M〜10−13Mの解離定数(K)を有している。
【0069】
別の実施形態において、上記の結合性タンパク質は、免疫接着分子、造影剤、治療剤、及び細胞傷害剤からなる群から選択される剤を更に含む複合体である。一実施形態において、前記造影剤は、放射性標識、酵素、蛍光標識、発光標識、生物発光標識、磁気標識、及びビオチンからなる群から選択される。更なる実施形態において、前記造影剤は、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、及び153Smからなる群から選択される放射性標識である。一実施形態において、前記治療剤または細胞傷害剤は、免疫抑制剤、免疫刺激剤、抗代謝物質、アルキル化剤、抗生物質、成長因子、サイトカイン、抗血管新生剤、抗有糸分裂剤、アントラサイクリン、毒素及びアポトーシス剤からなる群から選択される。一実施形態において、前記結合性タンパク質は、前記薬剤に直接接合される。別の実施形態において、前記結合性タンパク質は、リンカーを介して前記薬剤に接合される。適切なリンカーには、本明細書に開示されたアミノ酸及びポリペプチドリンカーが含まれるが、これらに限定されない。リンカーは、切断可能であっても切断可能でなくてもよい。
【0070】
別の実施形態において、上記の結合性タンパク質は結晶化された結合性タンパク質であり、結晶として存在する。好ましくは、該結晶は、担体を含まない医薬徐放性結晶である。より好ましくは、該結晶化された結合性タンパク質は、前記結合性タンパク質の可溶性対応物よりも長いインビボ半減期を有する。最も好ましくは、前記結晶化された結合性タンパク質は生物学的活性を保持する。
【0071】
別の実施形態において、上記の結合性タンパク質はグリコシル化される。好ましくは、該グリコシル化はヒトのグリコシル化パターンである。
【0072】
本発明の一態様は、上記で開示した結合性タンパク質の何れか一つをコードする単離された核酸に関する。更なる実施形態は、上記で開示した単離された核酸を含んでなるベクターを提供するものであり、該ベクターは、pcDNA;pTT(Durocher et al.,Nucleic Acids Research 2002,Vol 30,No.2);pTT3(追加の多重クローニング部位を持つpTT;pEFBOS(Mizushima,S.and Nagata,S.,(1990)Nucleic acids Research Vol 18,No.17);pBV;pJV;pcDNA3.1 TOPO、pEF6 TOPO、及びpBJからなる群から選択される。前記多重特異的結合性タンパク質及びその製造方法が提供される。該結合性タンパク質は、様々な技術を用いて生成することができる。結合性タンパク質を生成する発現ベクター、宿主細胞及び方法が、本開示において提供される。
【0073】
本開示の結合性タンパク質における抗原結合性可変ドメインは、ポリクローナルAb、モノクローナルAb、及びまたは興味ある抗原に結合できる受容体を含む親結合性タンパク質から得ることができる。これらの親結合性タンパク質は、天然に存在し得るものであり、あるいは組換え技術によって作製することができる。当業者は、抗体及び/または単離された受容体を産生するための多くの方法に精通しており、これにはハイブリドーマ技術を使用すること、選択されたリンパ球抗体法(SLAM)、ファージ、酵母もしくはRNA−タンパク質融合ディスプレイまたは他のライブラリーの使用、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の少なくとも幾つかを含む非ヒト動物を免疫化すること、並びにキメラ、CDR移植、及びヒト化抗体の調製が含まれるが、これらに限定されない。例えば、米国特許公開番号20090311253A1を参照されたい。可変ドメインはまた、親和性成熟技術を用いて調製することができる。前記結合性タンパク質の結合性可変ドメインは、当該技術において知られた抽出手順で(例えば、溶媒、界面活性剤、及び/または親和性精製を用いて)入手し、または当技術分野で既知の生物物理学的方法(例えば、X線結晶学、NMR、干渉、及び/またはコンピュータモデリング)により決定された単離された受容体分子から得ることもできる。
【0074】
前記結合性タンパク質分子に望まれる少なくとも1以上の特性を備えた親結合性タンパク質を選択することを含んでなる実施形態が提供される。一実施形態において、前記望ましい特性は、例えば、抗原特異性、抗原に対する親和性、効力、生物学的機能、エピトープ認識、安定性、溶解性、生産効率、免疫原性、薬物動態、生物学的利用能、組織交差反応性、またはオルソロガス抗原結合性のような、抗体パラメータを特徴付けるために使用されるもののうちの一つ以上である。例えば、米国特許公開番号20090311253を参照されたい。
【0075】
多重特異性抗体はまた、前記抗原結合性ドメインの1以上が非機能的になるように設計することができる。前記可変ドメインは、本明細書に記載する方法の何れかによって作製された親結合性タンパク質から、組換えDNA技術を用いて得ることができる。一実施形態において、可変ドメインは、マウス重鎖または軽鎖の可変ドメインである。別の実施形態において、可変ドメインは、移植されたCDRまたはヒト化可変重鎖または軽鎖ドメインである。一実施形態において、可変ドメインは、ヒト重鎖または軽鎖の可変ドメインである。
【0076】
一実施形態では、1以上の定常ドメインが、組換えDNA技術を用いて可変ドメインに連結される。一実施形態では、1以上の重鎖可変ドメインを含む配列が重鎖定常ドメインに連結され、1以上の軽鎖可変ドメインを含む配列が軽鎖定常ドメインに連結される。一実施形態において、前記定常ドメインは、それぞれヒト重鎖定常ドメイン及びヒト軽鎖定常ドメインである。一実施形態において、前記重鎖は、更にFc領域に連結される。該Fc領域は、天然配列のFc領域または変異体Fc領域であることができる。別の実施形態において、前記Fc領域はヒトFc領域である。別の実施形態において、前記Fc領域には、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM、IgE、またはIgDのFc領域が含まれる。
【0077】
更に、本明細書において提供される結合性タンパク質は組織特異的送達(強化された局所PKのため、従ってより高い有効性及び/またはより低い毒性のために組織マーカー及び疾患メディエータを標的とする)のために用いることができ、これには細胞内送達(内部移行する受容体及び細胞内分子を標的とする)、脳内部への送達(脳−血液関門を横断するためにトランスフェリン受容体及びCNS疾患メディエータを標的とする)が含まれる。前記結合性タンパク質は、抗原の非中和エピトープへの結合を介して該抗原を特定の場所に送達するための、また前記抗原の半減期を増加させるため担体タンパク質として機能することができる。更に、前記結合性タンパク質は、患者に移植される医療装置に物理的に連結されるように、またはこれらの医療装置をターゲッティングするために設計することができる(Burke et al.(2006) Advanced Drug Deliv.Rev.58(3):437−446;Hildebrand et al.(2006) Surface and Coatings Technol.200(22−23):6318−6324;Drug/device combinations for local drug therapies and infection prophylaxis, Wu(2006) Biomaterials 27(11):2450−2467;Mediation of the cytokine network in the implantation of orthopedic devices,Marques(2005) Biodegradable Systems in Tissue Engineer.Regen.Med.377−397参照)。適切な種類の細胞を医療用インプラントの部位へと向けさせることにより、治癒及び正常な組織機能の回復を促進することができる。或いは、装置に結合された、または該装置を標的とする受容体抗体融合タンパク質による、装置移植の際に放出されたメディエータ(サイトカインを含むが、これに限定されない)の阻害もまた提供される。
【0078】
一態様において、宿主細胞は上記で開示したベクターで形質転換される。一実施形態において、該宿主細胞は原核細胞である。更なる実施形態において、該宿主細胞は大腸菌である。別の実施形態において、該宿主細胞は真核細胞である。更なる実施形態において、該真核細胞は、原生生物細胞、動物細胞、植物細胞及び真菌細胞からなる群から選択される。一実施形態において、前記宿主細胞には、限定されるものではないが293、COS、NS0、及びCHOを含む哺乳動物細胞、及び;またはサッカロマイセス・セレビシエ等の真菌細胞;またはSf9などの昆虫細胞が含まれる。
【0079】
本発明の別の態様は、上記に開示した結合性タンパク質を製造する方法であって、上記に開示した宿主細胞の何れかを、前記結合性タンパク質を産生するのに十分な条件下に培地中で培養することを含む方法を提供する。好ましくは、この方法で製造される前記結合性タンパク質の50%〜75%が、二重特異性の四価結合性タンパク質である。より好ましくは、この方法により製造される結合性タンパク質の75%〜90%が、二重特異的の四価結合性タンパク質である。最も好ましくは、製造される結合性タンパク質の90%〜95%が二重特異的の四価結合性タンパク質である。
【0080】
別の実施形態は、上記に開示した方法に従って製造された結合性タンパク質を提供する。
【0081】
一つの実施形態は、結合性タンパク質を放出するための組成物を提供し、ここでの組成物は、上記で開示したようにして次に結晶化される結合性タンパク質、及び成分;並びに少なくとも一つのポリマー担体を含有する製剤を含む。好ましくは、該ポリマー担体はポリ(アクリル酸)、ポリ(シアノアクリレート)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(酸無水物)、ポリ(デプシペプチド)、ポリ(エステル)、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸 - co - グリコール酸)またはPLGA、ポリ(b−ヒドロキシブチレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ((ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、ポリ[(オルガノ)ホスファゼン]、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、無水マレイン酸−アルキルビニルエーテル共重合体、プルロニックポリオール、アルブミン、アルギン酸塩、セルロース及びセルロース誘導体、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、ヒアルロン酸、オリゴ糖、グリカミノグリカン(glycaminoglycans)、硫酸ポリサッカライド、並びにそれらの混合物及び共重合体からなる群の1以上から選択されるポリマーである。好ましくは、該成分は、アルブミン、スクロース、トレハロース、ラクチトール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、メトキシポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールからなる群から選択される。別の実施形態は、哺乳動物を治療する方法であって、該哺乳動物に対して、上記に開示された組成物の有効量を投与する工程を含む方法を提供する。
【0082】
本発明はまた、上記に開示された結合性タンパク質、及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。薬学的に許容される担体としては、リン酸緩衝液または生理食塩水が含まれるが、これらに限定されない。他の一般的な非経口媒体には、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液、または不揮発性油が含まれる。静脈内媒体には、体液及び栄養補充液、リンゲルデキストロースに基づくような電解質補給剤等が含まれる。抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、及び不活性ガス等のような、防腐剤及び他の添加物も存在し得る。より具体的には、注射用に適した医薬組成物には、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、並びに滅菌注射溶液または分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。前記担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの適切な混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。幾つかの場合、当該組成物中には等張剤、例えばマンニトール、ソルビトールのような糖、ポリアルコール、または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、当該組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0083】
更なる実施形態において、前記医薬組成物は、疾患を治療するための少なくとも一つの追加の治療薬を含有する。一実施形態において、該追加の薬剤は下記からなる群から選択される:即ち、治療剤、造影剤、細胞傷害剤、血管新生阻害剤(抗VEGF抗体またはVEGFトラップを含むがこれに限定されない)、キナーゼ阻害剤(KDR阻害剤及びTIE−2阻害剤を含むがこれらに限定されない);共刺激分子遮断剤(抗B7.1、抗B7.2、CTLA4−Ig、抗PD−1、抗CD20を含むがこれらに限定されない);接着分子遮断剤(抗LFA−1・Ab、抗E/LセレクチンAb、小分子阻害剤を含むがこれらに限定されない);抗サイトカイン抗体またはその機能性断片(抗IL−18、抗TNF、抗IL−6/サイトカイン受容体抗体を含むがこれらに限定されない);メトトレキサート;シクロスポリン;ラパマイシン;FK506;検出可能な標識またはレポーター;TNFアンタゴニスト;抗リウマチ剤;筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、鎮痛剤、麻酔剤、鎮静剤、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌剤、抗乾癬剤、コルチコステロイド、アナボリックステロイド、エリスロポエチン、免疫剤、免疫グロブリン、免疫抑制剤、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗うつ薬、抗精神病薬、興奮剤、喘息薬、ベータアゴニスト、吸入ステロイド、エピネフリンもしくは類似体、サイトカイン、及びサイトカインアンタゴニストである。
【0084】
別の態様において、本発明は、上記に開示された結合性タンパク質によって結合され得る標的(複数可)が有害である疾患に罹患したヒト対象を治療する方法であって、前記ヒト対象における前記標的(複数可)の活性が阻害され、前記疾患の治療もしくは予防が達成されるように、前記ヒト対象に対して、上記で開示された結合性タンパク質を投与することを含んでなる方法を提供する。一実施形態において、前記疾患または障害は、炎症状態、自己免疫疾患、または癌である。一実施形態において、前記疾患または障害は下記を含んでなる群から選択される:関節炎、骨関節炎、若年性慢性関節炎、敗血症性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性エリテマトーデス、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インスリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、強皮症の皮膚炎、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、臓器移植に関連した急性または慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固症候群、川崎病、グレーブス病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、腎臓の顕微鏡的血管炎、慢性活動性肝炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒素ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染性疾患、寄生虫疾患、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン疾患、アルツハイマー病、脳卒中、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、散発性多腺欠損I型及び多腺欠損II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸窮迫症候群、脱毛症、円形脱毛症、血清陰性関節症、関節症、ライター病、乾癬性関節症、潰瘍性大腸炎関節症、腸滑膜炎、クラミジア、エルシニア及びサルモネラ関連関節症、脊椎関節症、アテローム性疾患/動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫水疱性疾患、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線形IgA疾患、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年悪性貧血、筋痛性脳炎/ロイヤルフリー病、慢性皮膚粘膜カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、特発自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全関連疾患、B型肝炎、C型肝炎、一般的多様性免疫不全(一般的多様性低ガンマグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣不全、早発卵巣不全、線維性肺疾患、特発性線維化性肺胞炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織病関連間質性肺疾患、混合性結合組織病関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性エリテマトーデス関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、シェーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎瀰漫性肺疾患、ヘモジデリン沈着関連肺疾患、薬物誘発性間質性肺疾患、線維症、放射線線維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風性関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的な自己免疫疾患またはルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫介在性低血糖症、黒色表皮症を伴うB型インスリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に関連した急性免疫疾患、臓器移植に関連した慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、乾癬1型、乾癬2型、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎疾患NOS、糸球体腎炎、腎臓の微視的血管炎、ライム病、円板状エリテマトーデス、男性不妊特発性またはNOS、精子自己免疫、多発性硬化症(全てのサブタイプ)、交感性眼炎、結合組織病に対する二次的肺性高血圧、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ様脊椎炎、スティル病、全身性硬化症、シェーグレン症候群、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫の自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液浮腫、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性血管炎、白斑急性肝疾患、慢性肝疾患、アルコール性肝硬変、アルコール性肝障害、胆汁鬱滞、特異体質性肝疾患、薬物誘発性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、アレルギー及び喘息、B群連鎖球菌(GBS)感染症、精神障害(例えば、鬱病及び統合失調症)、Th2型及びTh1型媒介性疾患、急性及び慢性疼痛(痛みの異なる形式)、例えば肺癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、結腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌及び直腸癌及び造血器悪性腫瘍(白血病及びリンパ腫)のような癌、無ベータリポタンパク質血症、先端チアノーゼ、急性及び慢性の寄生または感染プロセス、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性または慢性の細菌感染症、急性膵炎、急性腎不全、腺癌、上室性期外収縮、エイズ認知症複合、アルコール誘発肝炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性接触皮膚炎、アレルギー性鼻炎、同種移植拒絶、α−1−アンチトリプシン欠乏症、筋萎縮性側索硬化症、貧血、狭心症、前角細胞変性、抗cd3療法、抗リン脂質症候群、抗受容体過敏反応、大動脈流及び抹消動脈瘤、大動脈解離、動脈性高血圧、動脈硬化症、動静脈瘻、運動失調、心房細動(持続性または発作性)、心房粗動、房室ブロック、B細胞リンパ腫、骨移植片拒絶、骨髄移植(BMT)拒絶、脚ブロック、バーキットリンパ腫、火傷(Burns)、心不整脈、心臓スタン症候群、心臓腫瘍、心筋症、心肺バイパス炎症反応、軟骨移植拒絶、小脳皮質変性症、小脳障害、混沌または多病巣性心房頻拍、化学療法関連疾患、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性アルコール中毒、慢性炎症性病変、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性サリチル酸塩中毒、結腸直腸癌、鬱血性心不全、結膜炎、接触皮膚炎、肺性心、冠動脈疾患、クロイツフェルト・ヤコブ病、培養陰性敗血症、嚢胞性線維症、サイトカイン療法関連障害、ボクサー認知症、脱髄疾患、デング出血熱、皮膚炎、皮膚疾患、糖尿病、真正糖尿病、糖尿病性アテローム硬化症病、瀰漫性レビー小体病、拡張型鬱血性心筋症、基底神経節障害、中年期ダウン症候群、中枢神経系ドーパミン受容体遮断薬により誘導される薬物誘導性運動障害、薬剤感受性、湿疹、脳脊髄炎、心内膜炎、内分泌障害、喉頭蓋炎、エプスタイン・バーウイルス感染症、肢端紅痛症、錐体外路及び小脳障害、家族性の食血細胞性リンパ組織球増多症、胎児胸腺移植拒絶、フリードライヒ失調症、機能性末梢動脈疾患、真菌性敗血症、ガス壊疽、胃潰瘍、糸球体腎炎、任意の器官及び組織の移植片拒絶、グラム陰性敗血症、グラム陽性敗血症、細胞内生物に起因する肉芽腫、毛様細胞白血病、ハレルフォルデン−スパッツ病、橋本甲状腺炎、花粉症、心臓移植拒絶、血色素症、血液透析、溶血性尿毒症症候群/血栓性血小板減少性紫斑病、出血、肝炎(A)、ヒス束不整脈、HIV感染/HIV神経障害、ホジキン病、多動性運動障害、過敏性反応、過敏性肺炎、高血圧、運動低下運動障害、視床下部−下垂体−副腎軸評価、特発性アジソン病、特発性肺線維症、抗体媒介性細胞傷害、無力症、乳児脊髄性筋萎縮症、大動脈の炎症、インフルエンザA、電離放射線被曝、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、虚血再灌流障害、虚血性脳卒中、若年性関節リウマチ、若年性脊髄性筋萎縮症、カポジ肉腫、腎臓移植拒絶反応、レジオネラ症、リーシュマニア症、ハンセン病、皮質脊髄系の病変、脂肪性浮腫、肝移植拒絶、リンパ性皮膚病、マラリア、悪性リンパ腫、悪性組織球症、悪性黒色腫、髄膜炎、髄膜炎菌血症、代謝/特発性片頭痛、ミトコンドリアのマルチシステム障害、混合型結合組織疾患、単クローン性免疫グロブリン血症、多発性骨髄腫、多重システム変性(Mencel Dejerine− Thomas Shi−Drager and Machado−Joseph)、重症筋無力症、細胞内マイコバクテリウム・アビウム、結核菌、骨髄異形成症候群、心筋梗塞、心筋虚血性疾患、鼻咽頭癌、新生児慢性肺疾患、腎炎、ネフローゼ、神経変性疾患、神経原性筋萎縮症、好中球減少性発熱、非ホジキンリンパ腫、腹部大動脈及びその枝血管の閉塞、閉塞性動脈疾患、okt3療法、精巣炎/副睾丸炎、精巣炎/精管切除反転手順、臓器肥大症、骨粗鬆症、膵臓移植拒絶反応、膵臓癌、腫瘍随伴症候群/悪性腫瘍の高カルシウム血症、副甲状腺移植拒絶、骨盤内炎症性疾患、通年性鼻炎、心膜疾患、末梢アテローム硬化性疾患、末梢血管疾患、腹膜炎、悪性貧血、カリニ肺炎、肺炎、POEMS症候群(多発性神経障害、臓器肥大症、内分泌障害、単クローン性免疫グロブリン血症、及び皮膚変化症候群)、灌流後症候群、ポンプ後症候群、MI後心臓切開症候群、子癇前症、進行性核上性麻痺、原発性肺高血圧症、放射線療法、レイノー現象、レイノー病、レフサム病、規則的な狭QRS頻拍、腎血管性高血圧症、再灌流障害、拘束型心筋症、肉腫、強皮症、老人性舞踏病、レビー小体型老人性痴呆症、血清反応陰性関節症、ショック、鎌状赤血球貧血、皮膚同種移植片拒絶反応、皮膚変化症候群、小腸移植拒絶、固形腫瘍、特異的不整脈、脊髄運動失調、脊髄小脳変性症、連鎖球菌性筋炎、小脳の構造的病変、亜急性硬化性全脳炎、失神、心臓血管系の梅毒、全身性アナフィラキシー、全身性炎症反応症候群、全身型若年性関節リウマチ、T細胞またはFAB・ALL、毛細血管拡張症、血栓閉塞性、血小板減少症、毒性、移植、外傷/出血、III型過敏性反応、IV型過敏症、不安定狭心症、尿毒症、尿路性敗血症、蕁麻疹、心臓弁膜症、静脈瘤、血管炎、静脈疾患、静脈血栓症、心室細動、ウイルス及び真菌感染症、致命的な脳炎/無菌性髄膜炎、致命的な関連血球貪食性症候群、ウェルニッケ−コルサコフ症候群、ウィルソン病、任意の臓器または組織の異種移植片拒絶である。
【0085】
別の態様において、本発明は、疾患に罹患している患者を治療する方法であって、先に上記で開示した結合性タンパク質の何れかを、上記で述べた第二の薬剤の投与の前、それと同時に、またはその後に投与する工程を含む方法を提供する。好ましい実施形態において、前記第二の薬剤は下記からなる群から選択される:即ち、ブデノシド、上皮成長因子、コルチコステロイド、シクロスポリン、スルファサラジン、アミノサリチル酸、6−メルカプトプリン、アザチオプリン、メトロニダゾール、リポキシゲナーゼ阻害剤、メサラミン、オルサラジン、バルサラジド、抗酸化剤、トロンボキサン阻害剤、IL−1受容体アンタゴニスト、抗IL−Ιβモノクローナル抗体、抗IL−6モノクローナル抗体、成長因子、エラスターゼ阻害剤、ピリジニル−イミダゾール化合物、TNF、LT、IL−1、IL−2、IL−6、IL−7、IL−8、IL−12、IL−13、IL−15、IL−16、IL−18、IL−23、EMAP−II、GM−CSF、FGF及びPDGFの抗体またはアゴニスト、CD2、CD3、CD4、CD8、CD−19、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD90またはそれらのリガンドの抗体、メトトレキセート、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID、イブプロフェン、コルチコステロイド、プレドニゾロン、ホスホジエステラーゼ阻害剤、アデノシンアゴニスト、抗血栓剤、補体阻害剤、アドレナリン作動薬、IRAK、NIK、IKK、P38、MAPキナーゼ阻害剤、IL−Ιβ変換酵素阻害剤、TNFα変換酵素阻害剤、T細胞シグナル伝達阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体、可溶性p55TNF受容体、可溶性p75TNF受容体、sIL−1RI、sIL−lRII、sIL−6R、抗炎症性サイトカイン、IL−4、IL−10、IL−11、IL−13及びTGFβである。
【0086】
一実施形態において、上記に開示された医薬組成物は、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液包内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、口腔、舌下、鼻腔内、及び経皮から選択される少なくとも一つの投与モードにより、前記対象に投与される。
【0087】
本発明の一態様は、本発明の少なくとも一つの結合性タンパク質に対する少なくとも一つの抗イディオタイプ抗体を提供する。該抗イディオタイプ抗体は、本発明の結合性タンパク質に組み込むことができる免疫グロブリン分子の少なくとも一部、例えば、限定されるものではないが、重鎖もしくは軽鎖の少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)またはそのリガンド結合部分、重鎖もしくは軽鎖の可変領域、重鎖もしくは軽鎖の定常領域、フレームワーク領域;またはそれらの任意の部分を備えた分子を含んだ任意のタンパク質またはペプチドを含んでいる。
【0088】
別の実施形態において、本発明の結合性タンパク質は、下記からなる群から選択される1以上の標的に結合することができる:即ち、ABCF1;ACVR1; ACVR1B;ACVR2;ACVR2B;ACVRL1;ADORA2A;アグリカン;AGR2;AICDA;AIF1;AIG1;AKAP1;AKAP2;AMH;AMHR2;ANGPT1;ANGPT2;ANGPTL3;ANGPTL4;ANPEP;APC;APOC1;AR;AZGP1(亜鉛−a−糖タンパク質);B7.1;B7.2;BAD;BAFF;BAG1;BAI1;BCL2;BCL6;BDNF;BLNK;BLR1(MDR15);BlyS;BMP1;BMP2;BMP3B(GDF10);BMP4;BMP6;BMP8;BMPR1A;BMPR1B;BMPR2;BPAG1(プレクチン);BRCA1;C19orf10(IL27w);C3;C4A;C5;C5R1;CANT1;CASP1;CASP4;CAV1;CCBP2(D6/JAB61);CCL1(I−309);CCL11(エオタキシン);CCL13(MCP−4);CCL15(MIP−1d);CCL16(HCC−4);CCL17(TARC);CCL18(PARC);CCL19(MIP−3b);CCL2(MCP−1);MCAF;CCL20(MIP−3a);CCL21(MIP−2);SLC;exodus−2;CCL22(MDC/STC−1);CCL23(MPIF−1);CCL24(MPIF−2/エオタキシン−2);CCL25(TECK);CCL26(エオタキシン−3);CCL27(CTACK/ILC);CCL28;CCL3(MIP−1a);CCL4(MIP−1b);CCL5(RANTES);CCL7(MCP−3);CCL8(mcp−2);CCNA1;CCNA2;CCND1;CCNE1;CCNE2;CCR1(CKR1/HM145);CCR2(mcp−1RB/RA);CCR3(CKR3/CMKBR3);CCR4;CCR5(CMKBR5/ChemR13);CCR6(CMKBR6/CKR−L3/STRL22/DRY6);CCR7(CKR7/EBI1);CCR8(CMKBR8/TER1/CKR−L1);CCR9(GPR−9−6);CCRL1(VSHK1);CCRL2(L−CCR);CD164;CD19;CD1C;CD20;CD200;CD−22;CD24;CD28;CD3;CD37;CD38;CD3E;CD3G;CD3Z;CD4;CD40;CD40L;CD44;CD45RB;CD47、CD48、CD52;CD69;CD70、CD72;CD74;CD79A;CD79B;CD8;CD80;CD81;CD83;CD86;CD137、CD138、B7−1、B7−2、ICOSL、B7−H3、B7−H4、CD137L、OX40L、CDH1(E−カドヘリン);CDH10;CDH12;CDH13;CDH18;CDH19;CDH20;CDH5;CDH7;CDH8;CDH9;CDK2;CDK3;CDK4;CDK5;CDK6;CDK7;CDK9;CDKN1A(p21Wap1/Cip1);CDKN1B(p27Kip1);CDKN1C;CDKN2A(p16INK4a);CDKN2B;CDKN2C;CDKN3;CEBPB;CER1;CHGA;CHGB;キチナーゼ;CHST10;CKLFSF2;CKLFSF3;CKLFSF4;CKLFSF5;CKLFSF6;CKLFSF7;CKLFSF8;CLDN3;CLDN7(クローディン−7);CLN3;CLU(クラステリン);CMKLR1;CMKOR1(RDC1);CNR1;COL18A1;COL1A1;COL4A3;COL6A1;CR2;CRP;CSF1(M−CSF);CSF2(GM−CSF);CSF3(GCSF);CTLA−4;CTNNB1(b−カテニン);CTSB(カテプシンB);CX3CL1(SCYD1);CX3CR1(V28);CXCL1(GRO1);CXCL10(IP−10);CXCL11(I−TAC/IP−9);CXCL12(SDF1);CXCL13;CXCL14;CXCL16;CXCL2(GRO2);CXCL3(GRO3);CXCL5(ENA−78/LIX);CXCL6(GCP−2);CXCL9(MIG);CXCR3(GPR9/CKR−L2);CXCR4;CXCR6(TYMSTR/STRL33/ボンゾ);CYB5;CYC1;CYSLTR1;DAB2IP;DES;DKFZp451J0118;DNCL1;DPP4;E2F1;ECGF1;EDG1;EFNA1;EFNA3;EFNB2;EGF;EGFR;ELAC2;ENG;ENO1;ENO2;ENO3;EPHB4;EPO;ERBB2(Her−2);EREG;ERK8;ESR1;ESR2;F3(TF);FADD;FasL;FASN;FCER1A;FCER2;FCGR3A;FGF;FGF1(aFGF);FGF10;FGF11;FGF12;FGF12B;FGF13;FGF14;FGF16;FGF17;FGF18;FGF19;FGF2(bFGF);FGF20;FGF21;FGF22;FGF23;FGF3(int−2);FGF4(HST);FGF5;FGF6(HST−2);FGF7(KGF);FGF8;FGF9;FGFR3;FIGF(VEGFD);FIL1(イプシロン);FIL1(ゼータ);FLJ12584;FLJ25530;FLRT1(フィブロネクチン);FLT1;FOS;FOSL1(FRA−1);FY(DARC);GABRP(GABAa);GAGEB1;GAGEC1;GALNAC4S−6ST;GATA3;GDF5;GFI1;GGT1;GM−CSF;GNAS1;GNRH1;GPR2(CCR10);GPR31;GPR44;GPR81(FKSG80);GRCC10(C10);GRP;GSN(ゲルゾリン);GSTP1;HAVCR2;HDAC4;HDAC5;HDAC7A;HDAC9;HGF;HIF1A;HIP1;ヒスタミン及びヒスタミン受容体;HLA−A;HLA−DRA;HM74;HMOX1;HUMCYT2A;ICEBERG;ICOSL;ID2;IFN−a;IFNA1;IFNA2;IFNA4;IFNA5;IFNA6;IFNA7;IFNB1;IFNガンマ;IFNW1;IGBP1;IGF1;IGF1R;IGF2;IGFBP2;IGFBP3;IGFBP6;IL−1;IL10;IL10RA;IL10RB;IL11;IL11RA;IL−12;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL13RA1;IL13RA2;IL14;IL15;IL15RA;IL16;IL17;IL17B;IL17C;IL17R;IL18;IL18BP;IL18R1;IL18RAP;IL19;IL1A;IL1B;IL1F10;IL1F5;IL1F6;IL1F7;IL1F8;IL1F9;IL1HY1;IL1R1;IL1R2;IL1RAP;IL1RAPL1;IL1RAPL2;IL1RL1;IL1RL2;IL1RN;IL2;IL20;IL20RA;IL21R;IL22;IL22R;IL22RA2;IL23;IL24;IL25;IL26;IL27;IL28A;IL28B;IL29;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL3;IL30;IL3RA;IL4;IL4R;IL5;IL5RA;IL6;IL6R;IL6ST(糖タンパク質130);IL7;IL7R;IL8;IL8RA;IL8RB;IL8RB;IL9;IL9R;ILK;INHA;INHBA;INSL3;INSL4;IRAK1;IRAK2;ITGA1;ITGA2;ITGA3;ITGA6(a6インテグリン);ITGAV;ITGB3;ITGB4(b4インテグリン);JAG1;JAK1;JAK3;JUN;K6HF;KAI1;KDR;KITLG;KLF5(GCボックスBP);KLF6;KLK10;KLK12;KLK13;KLK14;KLK15;KLK3;KLK4;KLK5;KLK6;KLK9;KRT1;KRT19(ケラチン19);KRT2A;KRTHB6(毛髪特異的II型ケラチン);LAMA5;LEP(レプチン);Lingo−p75;Lingo−Troy;LPS;LTA(TNF−b);LTB;LTB4R(GPR16);LTB4R2;LTBR;MACMARCKS;MAGもしくはOmgp;MAP2K7(c−Jun);MDK;MIB1;ミッドカイン;MIF;MIP−2;MKI67(Ki−67);MMP2;MMP9;MS4A1;MSMB;MT3(メタロチオネクチン−III);MTSS1;MUC1(ムチン);MYC;MYD88;NCK2;ニューロカン;NFKB1;NFKB2;NGFB(NGF);NGFR;NgR−Lingo;NgR−Nogo66(Nogo);NgR−p75;NgR−Troy;NME1(NM23A);NOX5;NPPB;NR0B1;NR0B2;NR1D1;NR1D2;NR1H2;NR1H3;NR1H4;NR1I2;NR1I3;NR2C1;NR2C2;NR2E1;NR2E3;NR2F1;NR2F2;NR2F6;NR3C1;NR3C2;NR4A1;NR4A2;NR4A3;NR5A1;NR5A2;NR6A1;NRP1;NRP2;NT5E;NTN4;ODZ1;OPRD1;PCSK9;P2RX7;PAP;PART1;PATE;PAWR;PCA3;PCNA;PD−1;PD−L1;アルファ4ベータ7、OX40、GITR、TIM−3、Lag−3、B7−H3、B7−H4、GDF8、CGRP、Lingo−1、IXa因子、X因子、ICOS、GARP、BTLA、CD160、ROR1、2B4、KIR、CD27、OX40、CD40L、A2aR、PDGFA;PDGFB;PECAM1;PF4(CXCL4);PGF;PGR;ホスファカン;PIAS2;PIK3CG;PLAU(uPA);PLG;PLXDC1;PPBP(CXCL7);PPID;PR1;PRKCQ;PRKD1;PRL;PROC;PROK2;PSAP;PSCA;PTAFR;PTEN;PTGS2(COX−2);PTN;RAC2(p21Rac2);RARB;RGS1;RGS13;RGS3;RNF110(ZNF144);ROBO2;S100A2;SCGB1D2(リポフィリンB);SCGB2A1(マンマグロビン2);SCGB2A2(マンマグロビン1);SCYE1(内皮単球活性化サイトカイン);SDF2;SERPINA1;SERPINA3;SERPINB5(マスピン);SERPINE1(PAI−1);SERPINF1;SHBG;SLA2;SLC2A2;SLC33A1;SLC43A1;SLIT2;SPP1;SPRR1B(Spr1);ST6GAL1;STAB1;STAT6;STEAP;STEAP2;TB4R2;TBX21;TCP10;TDGF1;TEK;TGFA;TGFB1;TGFB1I1;TGFB2;TGFB3;TGFBI;TGFBR1;TGFBR2;TGFBR3;TH1L;THBS1(トロンボスポンジン−1);THBS2;THBS4;THPO;TIE(Tie−1);TIMP3;組織因子;TLR10;TLR2;TLR3;TLR4;TLR5;TLR6;TLR7;TLR8;TLR9;TNF;TNF−a;TNFAIP2(B94);TNFAIP3;TNFRSF11A;TNFRSF1A;TNFRSF1B;TNFRSF21;TNFRSF5;TNFRSF6(Fas);TNFRSF7;TNFRSF8;TNFRSF9;TNFSF10(TRAIL);TNFSF11(TRANCE);TNFSF12(APO3L);TNFSF13(April);TNFSF13B;TNFSF14(HVEM−L);TNFSF15(VEGI);TNFSF18;TNFSF4(OX40リガンド);TNFSF5(CD40リガンド);TNFSF6(FasL);TNFSF7(CD27リガンド);TNFSF8(CD30リガンド);TNFSF9(4−1BBリガ
ンド);TOLLIP;Toll様受容体;TOP2A(トポイソメラーゼIia);TP53;TPM1;TPM2;TRADD;TRAF1;TRAF2;TRAF3;TRAF4;TRAF5;TRAF6;TREM1;TREM2;TRPC6;TSLP;TWEAK;VEGF;VEGFB;VEGFC;バーシカン;VHL C5;VL−4;XCL1(リンホタクチン);XCL2(SCM−1b);XCR1(GPR5/CCXCR1);YY1;及びZFPM2である。
【0089】
二つ以上の抗原に結合するそれらの能力を考えると、本発明の結合性タンパク質は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)または組織免疫組織化学等の従来のイムノアッセイを用いて、抗原(例えば、血清または血漿のような生物学的サンプル中において)を検出するために使用することができる。FIT−Igは、結合型もしくは非結合型の抗体の検出を容易にするために、直接的または間接的に検出可能な物質で標識される。適切な検出可能な物質には、種々の酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質及び放射性物質が含まれる。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、α−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれる。適切な補欠分子族複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが含まれる。適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリトリンが挙げられる。発光物質の例にはルミノールが含まれ、適切な放射性物質の例としては、H、14C、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I、177Lu、166Ho、または153Smが含まれる。
【0090】
本発明の結合性タンパク質は、一実施形態において、インビトロ及びインビボの両方において、抗原の活性を中和することができる。従って、そのようなFIT−Igは、例えば抗原を含有する細胞培養物において、ヒト対象において、または本発明の結合性タンパク質と交差反応する抗原を有する他の哺乳動物被験体において、抗原活性を阻害するために使用することができる。別の実施形態において、本発明は、抗原活性が有害である疾患または障害に罹患している対象において、前記抗原活性を低下させるための方法を提供する。本発明の結合性タンパク質は、治療目的でヒト対象に投与することができる。
【0091】
本明細書中で使用されるとき、「抗原活性が有害である疾患」の用語は、疾患に罹患している対象における抗原の存在が前記疾患の病態生理の原因であること、または該疾患の悪化に寄与する因子であることが示され、または疑われている疾患及び他の障害を含むことを意図している。従って、抗原活性が有害である疾患は、該抗原活性の低下により該疾患の症候及び/または進行の緩和が期待される疾患である。このような疾患は、該疾患に罹患している対象の生物学的体液中の該抗原の濃度の増大(例えば、該対象の血清、血漿、滑液等における抗原濃度の増加)によって明らかになる。本発明の結合性タンパク質で治療できる疾患の非限定的な例には、以下で説明する疾患、及び本発明の抗体の医薬組成物に関する章で述べる疾患が含まれる。
【0092】
本発明のFIT−Igは、一つの抗原または複数の抗原に結合することがでる。このような抗原として、限定されるものではないが、以下のデータベースに列記された標的が含まれ、該データベースを本明細書の一部として援用する。これらの標的データベースに以下のリストが含まれるが、これらに限定されるものではない。
・治療標的(http://xin.cz3.nus.edu.sg/group/cjttd/ttd.asp)。
・サイトカイン及びサイトカイン受容体(http://www.cytokinewebfacts.com/、http://www.copewithcytokines.de/cope.cgi、及び
・http://cmbi.bjmu.edu.cn/cmbidata/cgf/CGF_Database/cytokine.medic.kumamoto−u.ac.jp/CFC/indexR.html)。
・ケモカイン(http://cytokine.medic.kumamoto−u.ac.jp/CFC/CK/Chemokine.html)。
・ケモカイン受容体及びGPCR(http://csp.medic.kumamoto−u.ac.jp/CSP/Receptor.html、http://www.gpcr.org/7tm/)。
・嗅覚受容体(http://senselab.med.yale.edu/senselab/ORDB/default.asp)。
・受容体(http://www.iuphar−db.org/iuphar−rd/list/index.htm)。
・癌の標的(http://cged.hgc.jp/cgi−bin/input.cgi)。
・潜在的抗体標的として分泌されたタンパク質(http://spd.cbi.pku.edu.cn)。
・プロテインキナーゼ(http://spd.cbi.pku.edu.cn/)、及び
・ヒトCDマーカー(http://content.labvelocity.com/tools/6/1226/CD_table_final_locked.pdf)及び(Zola H,2005,CD molecules 2005:human cell differentiation molecules,Blood,106:3123−6)。
【0093】
FIT−Igは、二つの異なる標的を同時にブロックして、有効性/安全性を高め、及び/または患者のカバレッジを高めるための治療剤として有用である。このような標的には、可溶性標的(IL−13及びTNF)及び細胞表面受容体標的(VEGFR及びEGFR)を含み得る。それはまた、癌治療のために腫瘍細胞とT細胞(HER2及びCD3)との間で、または自己免疫/移植のために自己反応性細胞とエフェクター細胞の間で、または何れか所与の疾患において疾患原因細胞を除去するために任意の標的細胞とエフェクター細胞との間で、再指向された細胞傷害性を誘導するためにも使用することができる。
【0094】
加えて、FIT−Igは、同じ受容体上の二つの異なるエピトープを標的とするように設計されている場合、受容体のクラスタリング及び活性化をトリガーするために使用することができる。これは、アゴニスト及びアンタゴニストの抗GPCR治療において利点を有することができる。この場合、FIT−Igは、クラスタリング/シグナル伝達(二つの細胞表面分子)またはシグナル伝達(一つの分子中)のために、一つの細胞上の二つの異なるエピトープをターゲッティングするために使用できる。同様に、FIT−Ig分子は、CTLA−4の細胞外ドメインの二つの異なるエピトープ(または同一エピトープの二つのコピー)を標的化することによって、CTLA−4ライゲーション及び負の信号をトリガーするように設計することができ、これは免疫応答のダウンレギュレーションを導く。CTLA−4は、多くの免疫学的疾患の治療処置のための臨床的に検証された標的である。CTLA−4/B7相互作用は、細胞周期の進行、IL−2産生、及び活性化後のT細胞の増殖を減衰させることにより、T細胞活性化を負に調節し、またCTLA−4(CD152)の結合はT細胞活性化をダウンレギュレートして免疫寛容の誘導を促進することができる。しかし、CTLA−4の活性化にはライゲーションを必要とするので、CTLA−4のアゴニスト抗体結合によってT細胞の活性化を減衰させる戦略は成功していない。結晶構造解析(Stamper 2001,Nature 410:608)により示されるように、CTLA−4/B7の分子間相互作用は「歪んだジッパー」アレイの状態にある。しかし、現在入手可能なCTLA−4結合試薬は、抗CTLA−4モノクローナル抗体を含めて、何れもライゲーション特性を有していない。この問題に対処するために、幾つかの試みがなされてきた。一つの事例では、細胞メンバーに結合した一本鎖抗体が生成され、これはマウスにおいて同種拒絶を有意に阻害した(Hwang,2002 JI 169:633)。別の事例では、CTLA−4に対する人工のAPC表面に連結された一本鎖抗体が生成され、T細胞応答を減衰させることが実証された(Griffin,2000 JI 164:4433)。両方の事例において、CTLA−4ライゲーションは、人工システムにおいて密に局在化されたメンバー結合抗体によって達成された。これらの実験は、CTLA−4の負のシグナル伝達をトリガーすることによる免疫ダウンレギュレーションのための概念実証を提供するが、これらの報告で使用される試薬は治療的用途には適していない。この目的のために、CTLA−4細胞外ドメインの二つの異なるエピトープ(または同一エピトープの二つのコピー)をターゲッティングするFIT−Igの分子を使用することによって、CTLA−4ライゲーションが達成され得る。その根拠は、IgGの二つの結合部位にまたがる距離、即ち、約150〜170Åは、CTLA−4の活性ライゲーション(二つのCTLA−4ホモ二量体の間の30〜50Å)には大きすぎるということである。しかし、FIT−Igの(一方のアーム)上の二つの結合部位間の距離は遥かに短く、これも30〜50Åの範囲であり、CTLA−4の適切なライゲーションを可能にする。
【0095】
同様に、FIT−Igは、細胞表面受容体複合体の二つの異なるメンバー(例えば、IL−12Rアルファ及びベータ)をターゲッティングできる。更に、FIT−Igは、CR1及び可溶性タンパク質/病原体をターゲッティングして、該標的可溶性タンパク質/病原体の迅速なクリアランスを駆動することができる。
【0096】
更に、本発明のFIT−Igは、細胞内送達(内部移行受容体及び細胞内分子をターゲッティングする)、脳の内部への送達(血液脳関門を通過するためにトランスフェリン受容体及びCNS疾患メディエータをターゲッティングする)を含めて、組織特異的送達(高いローカルPK、従ってより高い効力及び/またはより低い毒性のために、組織マーカー及び疾患メディエータをターゲッティングする)のために用いることができる。FIT−Igは、抗原の非中和エピトープへの結合を介して該抗原を特定の場所に送達するための担体タンパク質として働くことができ、また前記抗原の半減期を増加させることができる。更に、FIT−Igは、患者に移植される医療装置に物理的に連結されるか、またはこれらの医療装置をターゲッティングするように設計することができる(Burke,Sandra E.;Kuntz,Richard E.;Schwartz,Lewis B.Zotarolimus(ABT−578) eluting stents.Advanced Drug Delivery Reviews(2006),58(3),437−446;Surface coatings for biological activation and functionalization of medical devices.Hildebrand,H.F.;Blanchemain、N.;Mayer,G.;Chai,F.;Lefebvre,M.;Boschin,F.Surface and Coatings Technology (2006),200(22−23),6318−6324.;Drug/device combinations for local drug therapies and infection prophylaxis.Wu,Peng;Grainger,David W.Biomaterials(2006),27(11),2450−2467.;Mediation of the cytokine network in the implantation of orthopedic devices. Marques,A.P.;Hunt,J.A.;Reis,Rui L, Biodegradable Systems in Tissue Engineering and Regenerative Medicine(2005),377−397;Page:52;Mediation of the cytokine network in the implantation of orthopedic devices. Marques,A.P.;Hunt,J.A.;Reis,Rui L.Biodegradable Systems in Tissue Engineering and Regenerative Medicine(2005),377−397)。簡単に言えば、適切な種類の細胞を医療用インプラントの部位へ向かわせることは、治癒及び正常な組織機能の回復を促進することができる。或いは、装置の移植の際に、該装置に結合され、または該装置をターゲッティングするFIT−Igによって放出されるメディエータ(サイトカインが含まれるが、これに限定されない)の阻害もまた提供される。例えば、ステントは、閉塞された動脈を清浄化して心筋への血流を改善するために、介入心臓病学において長年使用されてきた。しかしながら、伝統的な裸の金属ステントは、一部の患者では再狭窄(治療領域における動脈の再狭窄)を引き起こすことが知られており、血液凝固を導く可能性がある。最近、抗CD34抗体でコーティングされたステントが記載されており、これは血液全体を循環する内皮前駆細胞(EPC)を捕捉することによって、再狭窄を減少させ、また血栓の発生を防止するものである。内皮細胞は、血管をライニングする細胞であり、血液がスムーズに流れることを可能にする。該EPCは、滑らかな層を形成するステントの硬い表面に付着し、これは治癒を促進するだけでなく、再狭窄及び血栓、即ち、以前はステントの使用に付随するとされていた合併症を防止する(Aoji et al.2005 J Am Coll Cardiol.45(10):1574−9)。ステントを必要とする患者についての結果を改善することに加えて、心血管バイパス手術を必要とする患者についての関連性も存在する。例えば、抗EPC抗体でコーティングされた補綴血管(人工動脈)は、バイパス手術移植のために患者の脚または腕の動脈を使用する必要性をなくすであろう。このことは手術及び麻酔の時間を減少し、ひいては冠動脈手術の死亡率を低減するであろう。FIT−Igは、細胞の動員を促進するように、移植された装置にコーティングされた細胞表面マーカー(例えばCD34)、並びにタンパク質(または任意の種類のエピトープ:脂質及び多糖類を含むがこれに限定されない)に結合するように設計される。このようなアプローチは、他の医療用インプラントにも一般に適用することができる。或いは、FIT−Igは医療装置上にコーティングすることができ、移植されたときには全てのFITを該装置から放出し(または既に負荷されたFIT−Igのエイジング及び変性を含む、追加の新鮮なFIT−Igを必要とし得る任意の他の必要性)、前記装置は患者への新鮮なFIT−Igの全身投与により再負荷することができ、この場合にFIT−Igは結合部位の一方の組で問題の標的(サイトカイン、細胞表面マーカー(例えばCD34)等)に結合し、また他方の組で前記装置にコーティングされた標的(タンパク質、何等かのエピトープを含み、限定されるものではないが脂質、多糖類及びポリマーを含む)に結合するように設計される。この技術は、コーティングされた移植片の有用性を延長する利点を有する。
【0097】
本発明のFIT−Ig分子はまた、種々の疾患を治療するための治療用分子としても有用である。このようなFIT−Ig分子は、特定の疾患に関与する1以上の標的に結合することができる。種々の疾患におけるこのような標的の例を以下に記載する。
【0098】
以下を含む多くのタンパク質が、一般的な自己免疫反応及び炎症反応に関与している:即ち、C5、CCL1(I−309)、CCL11(エオタキシン)、CCL13(mcp−4)、CCL15(MIP−1d)、CCL16(HCC−4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19、CCL2(mcp−1)、CCL20(MIP−3a)、CCL21(MIP−2)、CCL23(MPIF−1)、CCL24(MPIF−2/エオタキシン−2)、CCL25(TECK)、CCL26、CCL3(MIP−1a)、CCL4(MIP−1b)、CCL5(RANTES)、CCL7(mcp−3)、CCL8(mcp−2)、CXCL1、CXCL10(IP−10)、CXCL11(I−TAC/IP−9)、CXCL12(SDF1)、CXCL13、CXCL14、CXCL2、CXCL3、CXCL5(ENA−78/LIX)、CXCL6(GCP−2)、CXCL9、IL13、IL8、CCL13(mcp−4)、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CX3CR1、IL8RA、XCR1(CCXCR1)、IFNA2、IL10、IL13、IL17C、IL1A、IL1B、IL1F10、IL1F5、IL1F6、IL1F7、IL1F8、IL1F9、IL22、IL5、IL8、IL9、LTA、LTB、MIF、SCYE1(内皮単球活性化サイトカイン)、SPP1、TNF、TNFSF5、IFNA2、IL10RA、IL10RB、IL13、IL13RA1、IL5RA、IL9、IL9R、ABCF1、BCL6、C3、C4A、CEBPB、CRP、ICEBERG、IL1R1、IL1RN、IL8RB、LTB4R、TOLLIP、FADD、IRAK1、IRAK2、MYD88、NCK2、TNFAIP3、TRADD、TRAF1、TRAF2、TRAF3、TRAF4、TRAF5、TRAF6、ACVR1、ACVR1B、ACVR2、ACVR2B、ACVRL1、CD28、CD3E、CD3G、CD3Z、CD69、CD80、CD86、CNR1、CTLA−4、CYSLTR1、FCER1A、FCER2、FCGR3A、GPR44、HAVCR2、OPRD1、P2RX7、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、TLR10、BLR1、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL11、CCL13、CCL15、CCL16、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL21、CCL22、CCL23、CCL24、CCL25、CCR1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CCR9、CX3CL1、CX3CR1、CXCL1、CXCL2、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL10、CXCL11、CXCL12、CXCL13、CXCR4、GPR2、SCYE1、SDF2、XCL1、XCL2、XCR1、AMH、AMHR2、BMPR1A、BMPR1B、BMPR2、C19orf10(IL27w)、CER1、CSF1、CSF2、CSF3、DKFZp451J0118、FGF2、GFI1、IFNA1、IFNB1、IFNG、IGF1、IL1A、IL1B、IL1R1、IL1R2、IL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3、IL4、IL4R、IL5、IL5RA、IL6、IL6R、IL6ST、IL7、IL8、IL8RA、IL8RB、IL9、IL9R、IL10、IL10RA、IL10RB、IL11、IL11RA、IL12A、IL12B、IL12RB1、IL12RB2、IL13、IL13RA1、IL13RA2、IL15、IL15RA、IL16、IL17、IL17R、IL18、IL18R1、IL19、IL20、KITLG、LEP、LTA、LTB、LTB4R、LTB4R2、LTBR、MIF、NPPB、PDGFB、TBX21、TDGF1、TGFA、TGFB1、TGFB1I1、TGFB2、TGFB3、TGFBI、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、TH1L、TNF、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF7、TNFRSF8、TNFRSF9、TNFRSF11A、TNFRSF21、TNFSF4、TNFSF5、TNFSF6、TNFSF11、VEGF、ZFPM2、及びRNF110(ZNF144)である。上記の標的の1以上に結合することができるFIT−Igをも想定される。
【0099】
アレルギー性喘息は、好酸球増多症、杯細胞異形成、上皮細胞変化、気道過敏症(AHR)、Th2及びTh1サイトカインの発現の存在、並びに血清IgEレベルの上昇を特徴とする。気道炎症は喘息の病因の基礎をなす重要な因子であることが現在広く認められており、これにはT細胞、B細胞、好酸球、肥満細胞及びマクロファージのような炎症細胞、並びにそれらが分泌するサイトカイン及びケモカインを含むメディエータの複雑な相互作用が含まれる。コルチコステロイドは、今日の喘息に対する最も重要な抗炎症治療であるが、それらの作用機序は非特異的であり、また特に若年の患者集団において安全性の問題が存在する。より特異的で且つ標的が絞られた療法の開発が正当化される。マウスにおけるIL−13は、好酸球性炎症とは独立に、AHR、粘液分泌過多及び気道線維症を含めて、喘息の多くの特徴を模倣するとの増大する証拠が存在する(Finotto et al.,InternationalImmunology(2005),17(8),993−1007;Padilla et al.,Journal of Immunology(2005),174(12),8097−8105)。
【0100】
IL−13は、喘息に関連した病理学的応答を生じることにおいて重要な役割を有することが示唆されている。肺におけるIL−13の影響を低減する抗IL−13モノクローナル抗体療法の開発は、喘息のためのかなり有望な新規治療を提供するエキサイティングな新しいアプローチである。しかし、示差免疫学経路の他のメディエータもまた喘息の発病に関与し、IL−13に加えて、これらのメディエータの遮断もまた追加の治療的利点を提供する可能性がある。このような標的対には、IL−13と腫瘍壊死因子α(TNF−α)のような前炎症性サイトカインの対が含まれるが、これらに限定されない。TNF−αは、喘息における炎症反応を増幅する可能性があり、また疾患の重症度に繋がる可能性もある(McDonnell,etal.,Progress in Respiratory Research(2001),31(New Drugs for Asthma,Allergy and COPD),247−250)。これは、IL−13及びTNF−αの両方を遮断することが、特に重篤な気道疾患において有益な効果を有し得ることを示唆する。好ましい実施形態において、本発明のFIT−Igは標的IL−13及びTNFαに結合し、喘息を治療するために使用される。
【0101】
炎症及びAHRの両方を評価できるOVA誘発性喘息マウスモデル等の動物モデルは、当技術分野で公知であり、種々のFIT−Ig分子の喘息を治療する能力を決定することができる。喘息を研究するための動物モデルは、下記文献に開示されている:Coffman,et al.,Journal of Experimental Medicine(2005),201(12),1875−1879;Lloyd, et al.,Advances in Immunology(2001),77,263−295;Boyce et al.,Journal of Experimental Medicine(2005),201(12),1869−1873;及びSnibson,et al.,Journal of the British Society for Allergy and Clinical Immunology(2005),35(2),146−52。これらの標的対のルーチンの安全性評価に加えて、免疫抑制の程度についての特別な試験が正当化され、且つ最良の標的対を選択するのに役立つ(Luster et al.,Toxicology(1994),92(1−3),229−43;Descotes,et al.,Developments in biological standardization(1992),77 99−102;Hart et al.,Journal of Allergy and Clinical Immunology(2001),108(2),250−257参照)。
【0102】
上記に開示した原理に基づき、また有効性及び安全性のための同じ評価モデルを使用して、FIT−Ig分子に結合し喘息を治療するのに有用であり得る他の標的対を決定することができる。好ましくは、このような標的には、限定されるものではないが次のものが含まれる:即ち、IL−13及びIL−1β(IL−1βもまた喘息における炎症反応に関与するため);IL−13と炎症に関与するサイトカイン及びケモカイン、例えばIL−13及びIL−9;IL−13及びIL−4;IL−13及びIL−5;IL−13及びIL−25;IL−13及びTARC;IL−13及びMDC;IL−13及びMIF;IL−13及びTGF−β;IL−13及びLHRアゴニスト;IL−13及びCL25; IL−13及びSPRR2a;IL−13及びSPRR2b;並びにIL−13及びADAM8である。本発明はまた、下記からなる群から選択される喘息に関与する1以上の標的に結合できるFIT−Igも想定している:CSF1(MCSF)、CSF2(GM−CSF)、CSF3(GCSF)、FGF2、IFNA1、IFNB1、IFNG、ヒスタミン及びヒスタミン受容体、IL1A、IL1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL11、IL12A、IL12B、IL13、IL14、IL15、IL16、IL17、IL18、IL19、KITLG、PDGFB、IL2RA、IL4R、IL5RA、IL8RA、IL8RB、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2、IL18R1、TSLP、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL7、CCL8、CCL13、CCL17、CCL18、CCL19、CCL20、CCL22、CCL24、CX3CL1、CXCL1、CXCL2、CXCL3、XCL1、CCR2、CCR3、CCR4、CCR5、CCR6、CCR7、CCR8、CX3CR1、GPR2、XCR1、FOS、GATA3、JAK1、JAK3、STAT6、TBX21、TGFB1、TNFSF6、YY1、CYSLTR1、FCER1A、FCER2、LTB4R、TB4R2、LTBR、及びキチナーゼ。
【0103】
全身性疾患である関節リウマチ(RA)は、関節の滑膜における慢性炎症反応を特徴とするものであり、軟骨の変性及び傍関節骨の浸食を伴う。TNF、ケモカイン、及び増殖因子を含む多くの炎症誘発性サイトカインが、罹患した関節において発現される。RAのマウスモデルに対する抗TNF抗体またはsTNFR融合タンパク質の全身投与は、抗炎症性かつ関節保護的であることが示された。RA患者におけるTNFの活性が、静脈内に投与インフリキシマブ(Harriman G,Harper LK,Schaible TF.1999,Summary of clinical trials in rheumatoid arthritis using infliximab, an anti−TNFalpha treatment.Ann Rheum Dis 58 Suppl 1:I61−4)、即ち、キメラ抗TNFモノクローナル抗体(mAB)で阻止された臨床試験は、TNFが、IL−6、IL−8、MCP−1、及びVEGFの産生、関節への免疫細胞及び炎症細胞の動員、血管新生、マトリックスメタロプロテイナーゼ−1及び−3の血液レベルの低下を調節するという証拠を提供した。関節リウマチにおける炎症性経路をより良く理解することにより、関節リウマチに関与する他の治療標的の同定が導かれた。インターロイキン−6アンタゴニスト(MRA)、CTLA4Ig(abatacept,Genovese Mc et al 2005 Abatacept for rheumatoid arthritis refractory to tumor necrosis factor alpha inhibition.N Engl J Med.353:1114−23)、及び抗B細胞療法(rituximab,Okamoto H,Kamatani N.2004 Rituximab for rheumatoid arthritis.N Engl J Med.351:1909)のような有望な治療は、既にここ1年に亘って、ランダム対照試験により試験されている。インターロイキン15、インターロイキン17、インターロイキン18を含む他のサイトカインが同定され、動物モデルにおいて有益であることが示されており、これらの薬剤の臨床試験が現在進行中である。抗TNF及びもう一つのメディエータを組み合わせた二重特異性抗体療法は、臨床的効力及び/または患者のカバレッジを向上させことにおいて大きな可能性を秘めている。例えば、TNF及びVEGFの両方をブロックすることは、潜在的に、炎症及び血管新生を根絶することができるが、これらは両者共にRAの病態生理に関与している。RAに関与する他の標的対を特異的なFIT−IgのIgでブロックすることもまた想定され、これにはTNF及びIL−18;TNF及びIL−12;TNF及びIL−23;TNF及びIL−1β;TNF及びMIF;TNF及びIL−17;並びにTNF及びIL−15が含まれるが、これらに限定されない。これら標的対のルーチン安全性評価に加えて、免疫抑制の程度についての特別な試験が、最良の標的対を選択する上で正当化され得、また有用であり得る(Luster et al.,Toxicology(1994),92(1−3),229−43;Descotes,et al.,Developments in biological standardization(1992)77,99−102;Hart et al.,Journal of Allergy and Clinical Immunology(2001),108(2),250−257参照)。FIT−IgのIg分子が関節リウマチの治療に有用であるかどうかは、コラーゲン誘発性関節炎のマウスモデルのような前臨床動物RAモデルを用いて評価することができる。他の有用なモデルも当該分野において周知である(Brand DD.,Comp Med.(2005) 55(2):114−22参照)。
【0104】
全身性エリテマトーデス(SLE)の顕著な免疫病原的特徴は、ポリクローナルB細胞の活性化であり、これは高グロブリン血症、自己抗体産生、免疫複合体形成を導く。基本的な異常は、一般化されたT細胞の調節不全により、T細胞が禁止されたB細胞クローンを抑制できないことであると思われる。加えて、B細胞及びT細胞の相互作用は、IL−10のような幾つかのサイトカイン、並びに二次信号を開始するCD40、CD40L、B7、CD28、及びCTLA−4のような共刺激分子によって促進される。これらの相互作用は、免疫複合体及びアポトーシス材料の減損された貪食細胞クリアランスと共に、結果として生じる組織傷害を伴った免疫応答を永続させる。下記の標的は、SLEに関与する可能性があり、潜在的に治療的介入のためのFIT−Igアプローチのために使用できる:B細胞標的療法:CD−20、CD−22、CD−19、CD28、CD4、CD80、HLA−DRA、IL10、IL2、IL4、TNFRSF5、TNFRSF6、TNFSF5、TNFSF6、BLR1、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、ICOSL、IGBP1、MS4A1、RGS1、SLA2、CD81、IFNB1、IL10、TNFRSF5、TNFRSF7、TNFSF5、AICDA、BLNK、GALNAC4S−6ST、HDAC4、HDAC5、HDAC7A、HDAC9、IL10、IL11、IL4、INHA、INHBA、KLF6、TNFRSF7、CD28、CD38、CD69、CD80、CD83、CD86、DPP4、FCER2、IL2RA、TNFRSF8、TNFSF7、CD24、CD37、CD40、CD72、CD74、CD79A、CD79B、CR2、IL1R2、ITGA2、ITGA3、MS4A1、ST6GAL1、CD1C、CHST10、HLA−A、HLA−DRA、及びNT5E;共刺激信号:CTLA−4またはB7.1/B7.2;B細胞生存の阻害:BLYS、BAFF;補体の不活性化:C5;サイトカイン調節:重要な原理は、任意の組織における正味の純生物学的応答は、炎症促進性または抗炎症性サイトカインの局部的レベルの間のバランスの結果ということである(Sfikakis PP et al 2005 Curr Opin Rheumatol 17:550−7参照)。SLEは、文献に記載された血清IL−4、IL−6、IL−10の上昇を伴った、Th−2に駆動される疾患と考えられている。IL−4、IL−6、IL−10、IFN−α、及びTNF−αからなる群から選択される、1以上の標的に結合できるFIT−Igもまた想定される。上記で述べた標的の組み合わせはSLEの治療効果を増強し、これは多くのループス前臨床モデルで試験することができる(Peng SL (2004) Methods Mol Med.;102:227−72参照)。
【0105】
多発性硬化症(MS)は、主に未知の病因による複雑なヒト自己免疫型疾患である。神経系全体に亘るミエリン塩基性タンパク質(MBP)の免疫学的破壊が、多発性硬化症の主要な病態である。MSは、CD4及びCD8T細胞による浸潤、及び中枢神経系内の応答が関与する複雑な病変の疾病である。CNSでのサイトカイン、反応性窒素種及び共刺激因子分子の発現は、MSにおいて全て記述されている。自己免疫の発生に貢献する免疫学的メカニズムは、主要な検討事項である。特に、抗原発現、サイトカイン及び白血球相互作用、及びTh1及びTh2細胞のような他のT細胞のバランス/調節を補助する調節T細胞は、治療標的の同定のための重要な領域である。
【0106】
IL−12は、APCによって産生され、Th1エフェクター細胞の分化を促進する炎症促進性サイトカインである。IL−12は、MS患者の発症している病変、ならびにEAEに罹患した動物において産生される。以前、IL−12経路における干渉は齧歯類においてEAEを効果的に予防し、また抗IL−12mAbを用いたIL−12p40のインビボ中和はコモンマーモセット類におけるミエリン誘発性EAEモデルにおいて有益な効果を有することが示された。
【0107】
TWEAKは、構成中枢神経系(CNS)において構成的に発現するTNFファミリーのメンバーであり、細胞型に依存して増殖性、炎症誘発性またはアポトーシス効果を有する。その受容体であるFnl4は、内皮細胞、反応性星状細胞及びニューロンによりCNSにおいて発現される。TWEAK及びFnl4mRNAの発現は、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の際に脊髄において増加した。C57BL/6マウスにおいてミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)で誘導されたEAEでの抗TWEAK抗体治療は、マウスをプライミング相の後に治療したときに、疾患の重症度及び白血球浸潤の低下をもたらした。
【0108】
本発明の一態様は、IL−12、TWEAK、IL−23、CXCL13、CD40、CD40L、IL−18、VEGF、VL−4、TNF、CD45RB、CD200、IFNガンマ、GM−CSF、FGF、C5、CD52、及びCCR2からなる群から選択される1以上、好ましくは二つの標的に結合できるFIT−IgのIg分子に関する。好ましい実施形態は、MSの治療のための有益な治療薬として、二重特異性の抗IL−12/TWEAK・FIT−IgのIgを含んでいる。MSを治療するためのFIT−Ig分子の有用性を評価する幾つかの動物モデルが、当該技術において知られている(Steinman L, et al.,(2005) Trends Immunol. 26(11):565−71; Lublin FD.,et al.,(1985) Springer Semin Immunopathol.8(3):197−208;Genain CP,et al.,(1997) J Mol Med.75(3):187−97;Tuohy VK,et al.,(1999) J Exp Med. 189(7):1033−42;Owens T, et al.,(1995) Neurol Clin.13(1):51−73;及び 't Hart BA,et al.,(2005) J Immunol 175(7):4761−8参照)。これら標的対のルーチンの安全性評価に加えて、免疫抑制の程度についての特殊な試験が、最良の標的対を選択するために正当化され、また有用であり得る(Luster et al.,Toxicology(1994),92(1−3),229−43;Descotes,et al.,Developments in biological standardization(1992),77,99−102;Jones R.2000 Rovelizumab(ICOS Corp).IDrugs.3(4):442−6参照)。
【0109】
敗血症の病態生理は、両方のグラム陰性生物(リポ多糖[LPS]、リピドA、エンドトキシン)及びグラム陽性生物(リポテイコ酸、ペプチドグリカン)の外膜成分によって開始される。これらの外膜成分は、単球表面上のCD14受容体に結合することができる。次いで、最近記載されたトール様受容体によって信号は細胞に伝達され、最終的には炎症誘発性サイトカイン腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)及びインターロイキン−1(IL−I)の産生をもたらす。圧倒的な炎症反応及び免疫応答は敗血症性ショックの本質的な特徴であり、敗血症により誘導される組織損傷、多臓器不全、及び死亡の病因において中心的な役割を果たす。サイトカイン、特に腫瘍壊死因子(TNF)及びインターロイキン(IL)−1は、敗血症性ショックの重要なメディエータであることが示されている。これらのサイトカインは、組織への直接的な毒性効果を有し;それらはまたホスホリパーゼA2を活性化させる。これらの効果及びその他の効果は、血小板活性化因子の増大した濃度、一酸化窒素合成酵素活性の促進、好中球による組織浸潤の促進、及び好中球活性の促進を導く。
【0110】
敗血症及び敗血症性ショックの治療は未だ臨床的な難問であり、炎症反応を目的として生物学的応答調節剤(即ち、抗TNF、抗MIF)を用いた最近のプロスペクティブ試験は、僅かな臨床的有益性を示したに過ぎない。最近は、免疫抑制の付随期間を逆転させることを目的とした治療へと興味がシフトしてきている。実験動物及び重症患者での研究により、リンパ系器官及び幾つかの実質組織の増大したアポトーシスは、この免疫抑制、アネルギー、及び器官系の機能不全に寄与することが示された。敗血症症候群の際、リンパ球アポトーシスは、IL−2の不存在によって、或いはグルココルチコイド、グランザイム、または所謂「死」サイトカイン:腫瘍壊死因子αもしくはFasリガンドの放出によって誘発することができる。アポトーシスは、サイトゾルカスパーゼ及び/またはミトコンドリアカスパーゼの自己活性化を介して進行し、これはBcl−2ファミリーのプロアポトーシス及び抗アポトーシスのメンバーによって影響を受ける可能性がある。実験動物において、アポトーシス阻害剤を用いた治療はリンパ系細胞のアポトーシスを防止できるだけでなく、結果を改善する可能性もある。抗アポトーシス剤を用いた臨床試験は、殆どはそれらの投与及び組織ターゲティングに関連した技術的な問題の故に未だ成功にはほど遠いが、リンパ球アポトーシスの阻害は、敗血症患者のための魅力的な治療目標である。同様に、炎症性メディエータ及びアポトーシスメディエータの両方を標的とする二重特異性の薬剤は、追加の利益を有し得る。本発明の一つの態様は、下記からなる群から選択される敗血症に関与する1以上の標的、好ましくは二つの標的に結合できるFIT−IgのIgに関する:即ち、TNF、IL−1、MIF、IL−6、IL−8、IL−18、IL−12、IL−23、FasL、LPS、Toll様受容体、TLR−4、組織因子、MIP−2、ADORA2A、CASP1、CASP4、IL10、IL1B、NFKB1、PROC、TNFRSF1A、CSF3、IL10、IL1B、IL6、ADORA2A、CCR3、IL10、IL1B、IL1RN、MIF、NFKB1、PTAFR、TLR2、TLR4、GPR44、HMOX1、ミッドカイン、IRAK1、NFKB2、SERPINA1、SERPINE1、及びTREM1である。敗血症のための斯かるFIT−IgのIgの有効性は、当技術分野において知られた前臨床動物モデルにおいて評価することができる(Buras JA,et al.,(2005) Nat Rev Drug Discov.4(10):854−65及びCalandra T,et al.,(2000) Nat Med.6(2):164−70参照)。
【0111】
慢性神経変性疾患は、通常、神経機能(神経細胞死、脱髄)の進行性の喪失、モビリティ喪失及び記憶喪失によって特徴付けられる年齢依存性疾患である。慢性神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)の基礎をなす機構の新たな知識は複雑な病因を示し、種々の因子、例えば年齢、血糖状態、アミロイド産生及び多量体化、その受容体RAGE(AGEの受容体)に結合する進行した糖化の最終生成物(AGE)の蓄積、増大した脳酸化ストレス、減少した脳血流、炎症性サイトカイン及びケモカインの放出を含む神経炎症、神経機能障害及びミクログリアの活性化が、それらの発症及び進行に寄与することが認識されてきた。従って、これらの慢性神経変性疾患は、複数の細胞型とメディエータとの間の複雑な相互作用を呈する。このような疾患の治療戦略は限られており、主に非特異的抗炎症剤(例えば、コルチコステロイド、COX阻害剤)で炎症プロセスを阻止すること、またはニューロン喪失及び/またはシナプス機能を防御する薬剤の何れかで構成される。これらの治療は、疾患の進行を止めることができない。最近の研究では、可溶性A−βペプチド(A−bのオリゴマー形態を含む)に対する抗体のような更にターゲッティングされた療法は、疾患の進行を停止させるだけでなく、記憶の維持に役立ち得る可能性を示唆している。これらの予備的観察は、複数の疾患メディエータ(例えばA−β及びTNFなどの炎症性サイトカイン)を標的とする特異的治療法は、単一疾患のメカニズム(例えば、可溶性A−β単独)をターゲッティングする場合に観察されるよりも、慢性神経変性疾患のためのより良い治療効果を提供できることを示唆している(C.E.Shepherd,et al,Neurobiol Aging.2005 Oct 24;Nelson RB.,Curr Pharm Des. 2005;11:3335;William L. Klein.;Neurochem Int. 2002;41:345;Michelle C Janelsins,et al.,J Neuroinflammation.2005;2:23;Soloman B.,Curr Alzheimer Res.2004;1:149;Igor Klyubin,et al.,Nat Med.2005;11:556−61;Arancio O,et al.,EMBO Journal(2004) 1−10;Bornemann KD,et al.,Am J Pathol.2001;158:63;Deane R,et al.,Nat Med.2003;9:907−13;及びEliezer Masliah,et al.,Neuron.2005;46:857参照)。
【0112】
本発明のFIT−Igの分子は、アルツハイマー病のような慢性神経変性疾患に関与する1以上の標的に結合することができる。このような標的には、ADの病因に関与する任意の可溶性または細胞表面メディエータ、例えばAGE(S100 A、アンホテリン)、炎症誘発性サイトカイン(例えばIL−1)、ケモカイン(例えば、MCP1)に関与する任意のメディエータ、神経再生を阻害する分子(例えばのNogo、RGM A)、神経突起の成長を増強する分子(ニューロトロフィン)が含まれるが、これらに限定されない。FIT−Ig分子の効力は、アミロイド前駆体タンパク質またはRAGEを過剰発現し、またアルツハイマー病様の症状を発症するトランスジェニックマウスのような前臨床動物モデルで検証することができる。加えて、FIT−Ig分子を構築して、動物モデルにおいて有効性について試験することができ、またヒト患者における試験のための最良の治療的FIT−Igを選択することができる。FIT−Ig分子はまた、パーキンソン病のような他の神経変性疾患の治療にも使用することができる。アルファ−シヌクレインは、パーキンソンの病理学に関与している。アルファ−シヌクレイン及びTNF、IL−1、MCP−1のような炎症性メディエータをターゲッティングできるFIT−Igは、パーキンソン病のための効果的な療法を立証でき、本発明において考慮されている。
【0113】
病理学的メカニズムの知識の増大にもかかわらず、脊髄損傷(SCI)は未だ壊滅的な状態であり、高い医療の必要性により特徴付けられた医学的適応症に相当する。殆どの脊髄損傷は挫傷または圧迫傷害であり、通常、一次損傷の後には二次損傷機構(炎症性メディエータ、例えばサイトカイン及びケモカイン)が続き、これは一次損傷を悪化させて病変領域の大幅な拡大(時には10倍以上になる)をもたらす。SCIにおけるこれらの一次及び二次カニズムは、他の手段、例えば脳卒中によって引き起こされる脳損傷の場合と非常に類似している。満足な治療法は存在せず、メチルプレドニゾロン(MP)の高用量ボーラス注射は損傷後8時間の狭い時間ウィンドウ内でのみ使用される治療法である。しかし、この治療は二次的損傷の防止を意図しているに過ぎず、有意な機能回復を生じることはない。それは、明確な有効性の欠如と、その後の感染症や重度の組織病理学的な筋変化を伴った免疫抑制のような、深刻な副作用を重く批判されている。内在性の再生能を刺激する他の薬物、生物製剤または小分子は承認されていないが、近年、有望な治療原理及び薬物候補がSCI動物モデルにおいて有効性を示した。人間のSCIにおける機能回復の欠如は、大部分は、病変部位において、瘢痕組織において、ミエリンにおいて、並びに傷害関連細胞での、神経突起成長を阻害する因子によって引き起こされる。このような因子は、ミエリン関連タンパク質のNogoA、OMgp及びMAG、RGM A、scar関連CSPG(コンドロイチン硫酸プロテオグリカン)及び反応性星状細胞に対する阻害因子(幾つかのセマフォリン及びエフリン)である。しかし、病変部位には、成長阻害分子だけでなく、ニューロトロフィン、ラミニン、L1、その他のような神経突起成長刺激因子が見られる。神経突起成長阻害分子及び成長促進分子のこのアンサンブルは、阻害の影響の低減がバランスを成長阻害から成長促進へとシフトさせる可能性があるので、NogoAまたはRGM Aのような単一の要因をブロッキングすることが、齧歯類SCIモデルにおける顕著な機能的回復を生じることを説明することができる。しかし、単一の神経突起成長阻害分子をブロックして観察された回復は、完全ではなかった。より速く且つより顕著な回復を達成するには、二つの神経突起成長阻害分子、例えばNogo及びRGM Aをブロックするか、或いは一方の神経突起成長阻害分子をブロックし、且つ神経突起成長増強分子、例えばNogo及びニューロトロフィンの機能を高めるか、或いは神経突起成長阻害分子(例えばNogo)及び炎症促進分子(例えばTNF)をブロックすることが望ましい(McGee AW,et al.,Trends Neurosci.2003;26:193;Marco Domeniconi,et al.,J Neurol Sci.2005;233:43;Milan Makwana1,et al.,FEBS J.2005;272:2628;Barry J.Dickson,Science.2002;298:1959;Felicia Yu Hsuan Teng,et al.,J Neurosci Res.2005;79:273;Tara Karnezis,et al.,Nature Neuroscience 2004;7,736;Gang Xu,et al.,J.Neurochem.2004;91;1018参照)。
【0114】
想定される他のFIT−Igは、下記のような標的対に結合できるものである:NgR及びRGM A;NogoA及びRGM A;MAG及びRGM A;OMGp及びRGM A;RGM A及びRGM B;CSPG類及びRGM A;アグリカン、ミッドカイン、ニューロカン、バーシカン、ホスファカン、Te38及びTNF−a;樹状突起及び軸索発芽を促進する抗体と組み合わせたAβグロブロマー特異的抗体。樹状突起の病理は、ADの非常に初期の兆候であり、NOGO Aは樹状突起成長を制限することが知られている。このようなタイプのabを、SCI−候補(ミエリンタンパク質)抗体の何れかと組み合わせることができる。他のFIT−Igの標的には、NgR−p75、NgR−Troy、NgR−Nogo66(Nogo)、NgR−Lingo、Lingo−Troy、Lingo−p75、MAGまたはOmgpの任意の組合せが含まれ得る。加えて、標的はまた、神経突起の阻害に関与する可溶性または細胞表面の任意のメディエータ、例えばNogo、Ompg、MAG、RGM A、セマフォリン、エフリン、可溶性A−b、炎症誘発性サイトカイン(例えばIL−1)、ケモカイン(例えば、MIP 1a)、神経再生を阻害する分子を含み得る。抗NOGO/抗RGM Aまたは類似のFIT−Ig分子の効力は、脊髄損傷の前臨床動物モデルにおいて検証することができる。加えて、これらFIT−Ig分子を構築して動物モデルで有効性を試験することができ、また最良の治療用FIT−Igをヒト患者での試験のために選択することができる。また、単一の受容体、例えばNogo受容体上の二つの異なるリガンド結合部位をターゲッティングするFIT−Ig分子を構築することができ、これは三つのリガンドNogo、Ompg、及びMAG、並びにA−b及びS100Aに結合するRAGEに結合する。更に、神経突起成長阻害剤、例えばNOGO及びNOGO受容体はまた、多発性硬化症のような免疫疾患において神経再生を妨げる上で役割を果たしている。NOGO−NOGO受容体相互作用の阻害は、多発性硬化症の動物モデルにおいて回復を増強することが示されている。従って、一つの免疫メディエータ、例えばIL−12のようなサイトカイン、及び神経突起成長阻害剤分子、例えばNOGOまたはRGMの機能をブロックできるFIT−Ig分子は、免疫分子または神経突起伸長阻害剤分子の何れかのみをブロックする場合よりも、速く且つ高い有効性を提供する可能性がある。
【0115】
モノクローナル抗体療法は、癌のための重要な治療法として浮上してきている(von Mehren M,et al 2003 Monoclonal antibody therapy for cancer.Annu Rev Med.;54:343−69)。抗体は、アポトーシスを誘導すること、リダイレクトされた細胞傷害性、リガンド−受容体相互作用を防止すること、または新生物性表現型に重要なタンパク質の発現を阻止することによって、抗腫瘍効果を発揮することができる。加えて、抗体は腫瘍微小環境の成分をターゲッティングして、腫瘍関連血管系の形成のような重要な構造を乱すことができる。抗体はまた、そのリガンドが上皮成長因子受容体のような増殖因子である受容体をターゲッティングすることができる。こうして、抗体は細胞成長を刺激する天然のリガンドが標的腫瘍細胞に結合するのを阻害する。或いは、抗体は、抗イディオタイプネットワーク、補体媒介性細胞傷害、または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することができる。二つの別々の腫瘍メディエータを標的とする二重特異性抗体の使用は、おそらく、単一特異的療法に比べて追加の利点を提供するであろう。腫瘍学的疾患を治療するために、次の標的対に結合できるFIT−IgのIgをもまた考慮される:即ち、IGF1及びIGF2;IGF1/2及びErb2B;VEGFR及びEGFR;CD20及びCD3;CD138及びCD20;CD38及びCD20;CD38 & CD138;CD40及びCD20;CD138及びCD40;CD38及びCD40である。標的の他の組み合わせには、EGF/erb−2/erb−3ファミリーの1以上のメンバーが含まれる。FIT−IgのIg類が結合する腫瘍疾患に関与する他の標的(1以上)には、下記からなる群から選択されるものが含まれるが、これらに限定されない:即ち、CD52、CD20、CD19、CD3、CD4、CD8、BMP6、IL12A、IL1A、IL1B、IL2、IL24、INHA、TNF、TNFSF10、BMP6、EGF、FGF1、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF2、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、GRP、IGF1、IGF2、IL12A、IL1A、IL1B、IL2、INHA、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFB3、VEGF、CDK2、EGF、FGF10、FGF18、FGF2、FGF4、FGF7、IGF1、IGF1R、IL2、VEGF、BCL2、CD164、CDKN1A、CDKN1B、CDKN1C、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2C、CDKN3、GNRH1、IGFBP6、IL1A、IL1B、ODZ1、PAWR、PLG、TGFB1I1、AR、BRCA1、CDK3、CDK4、CDK5、CDK6、CDK7、CDK9、E2F1、EGFR、ENO1、ERBB2、ESR1、ESR2、IGFBP3、IGFBP6、IL2、INSL4、MYC、NOX5、NR6A1、PAP、PCNA、PRKCQ、PRKD1、PRL、TP53、FGF22、FGF23、FGF9、IGFBP3、IL2、INHA、KLK6、TP53、CHGB、GNRH1、IGF1、IGF2、INHA、INSL3、INSL4、PRL、KLK6、SHBG、NR1D1、NR1H3、NR1I3、NR2F6、NR4A3、ESR1、ESR2、NR0B1、NR0B2、NR1D2、NR1H2、NR1H4、NR1I2、NR2C1、NR2C2、NR2E1、NR2E3、NR2F1、NR2F2、NR3C1、NR3C2、NR4A1、NR4A2、NR5A1、NR5A2、NR6A1、PGR、RARB、FGF1、FGF2、FGF6、KLK3、KRT1、APOC1、BRCA1、CHGA、CHGB、CLU、COL1A1、COL6A1、EGF、ERBB2、ERK8、FGF1、FGF10、FGF11、FGF13、FGF14、FGF16、FGF17、FGF18、FGF2、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、GNRH1、IGF1、IGF2、IGFBP3、IGFBP6、IL12A、IL1A、IL1B、IL2、IL24、INHA、INSL3、INSL4、KLK10、KLK12、KLK13、KLK14、KLK15、KLK3、KLK4、KLK5、KLK6、KLK9、MMP2、MMP9、MSMB、NTN4、ODZ1、PAP、PLAU、PRL、PSAP、SERPINA3、SHBG、TGFA、TIMP3、CD44、CDH1、CDH10、CDH19、CDH20、CDH7、CDH9、CDH1、CDH10、CDH13、CDH18、CDH19、CDH20、CDH7、CDH8、CDH9、ROBO2、CD44、ILK、ITGA1、APC、CD164、COL6A1、MTSS1、PAP、TGFB1I1、AGR2、AIG1、AKAP1、AKAP2、CANT1、CAV1、CDH12、CLDN3、CLN3、CYB5、CYC1、DAB2IP、DES、DNCL1、ELAC2、ENO2、ENO3、FASN、FLJ12584、FLJ25530、GAGEB1、GAGEC1、GGT1、GSTP1、HIP1、HUMCYT2A、IL29、K6HF、KAI1、KRT2A、MIB1、PART1、PATE、PCA3、PIAS2、PIK3CG、PPID、PR1、PSCA、SLC2A2、SLC33A1、SLC43A1、STEAP、STEAP2、TPM1、TPM2、TRPC6、ANGPT1、ANGPT2、ANPEP、ECGF1、EREG、FGF1、FGF2、FIGF、FLT1、JAG1、KDR、LAMA5、NRP1、NRP2、PGF、PLXDC1、STAB1、VEGF、VEGFC、ANGPTL3、BAI1、COL4A3、IL8、LAMA5、NRP1、NRP2、STAB1、ANGPTL4、PECAM1、PF4、PROK2、SERPINF1、TNFAIP2、CCL11、CCL2、CXCL1、CXCL10、CXCL3、CXCL5、CXCL6、CXCL9、IFNA1、IFNB1、IFNG、IL1B、IL6、MDK、EDG1、EFNA1、EFNA3、EFNB2、EGF、EPHB4、FGFR3、HGF、IGF1、ITGB3、PDGFA、TEK、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFBR1、CCL2、CDH5、COL18A1、EDG1、ENG、ITGAV、ITGB3、THBS1、THBS2、BAD、BAG1、BCL2、CCNA1、CCNA2、CCND1、CCNE1、CCNE2、CDH1(E−カドヘリン)、CDKN1B(p27Kip1)、CDKN2A(p16INK4a)、COL6A1、CTNNB1(b−カテニン)、CTSB(カテプシンB)、ERBB2(Her−2)、ESR1、ESR2、F3(TF)、FOSL1(FRA−1)、GATA3、GSN(ゲルソリン)、IGFBP2、IL2RA、IL6、IL6R、IL6ST(糖タンパク質130)、ITGA6(a6インテグリン)、JUN、KLK5、KRT19、MAP2K7(c−Jun)、MKI67(Ki−67)、NGFB(NGF)、NGFR、NME1(NM23A)、PGR、PLAU(uPA)、PTEN、CTLA−4、OX40、GITR、TIM−3、Lag−3、B7−H3、B7−H4、GDF8、CGRP、Lingo−1、ICOS、GARP、BTLA、CD160、ROR1、SERPINB5(マスピン)、SERPINE1(PAI−1)、TGFA、THBS1(トロンボスポンジン−1)、TIE(Tie−1)、TNFRSF6(Fas)、TNFSF6(FasL)、TOP2A(トポイソメラーゼIia)、TP53、AZGP1(亜鉛−a−糖タンパク質)、BPAG1(プレクチン)、CDKN1A(p21Wap1/Cip1)、CLDN7(クローディン7)、CLU(クラステリン)、ERBB2(Her−2)、FGF1、FLRT1(フィブロネクチン)、GABRP(GABAa)、GNAS1、ID2、ITGA6(a6インテグリン)、ITGB4(b4インテグリン)、KLF5(GCボックスBP)、KRT19(ケラチン19)、KRTHB6(毛髪特異的II型ケラチン)、MACMARCKS、MT3(メタロチオネクチン−III)、MUC1(ムチン)、PTGS2(COX−2)、RAC2(p21Rac2)、S100A2、SCGB1D2(リポフィリンB)、SCGB2A1(マンマグロビン2)、SCGB2A2(マンマグロビン1)、SPRR1B(Spr1)、THBS1、THBS2、THBS4、及びTNFAIP2(B94)である。
【0116】
一実施形態において、本明細書で提供される組成物及び方法で治療または診断できる疾患には、乳房、結腸、直腸、肺、中咽頭、下咽頭、食道、胃、膵臓、肝臓、胆嚢及び胆管、小腸、尿管(腎臓、膀胱と尿路上皮を含む)、女性生殖管(子宮頸部、子宮、卵巣、ならびに絨毛癌及び妊娠性絨毛性疾患を含む)、男性生殖管(前立腺、精嚢、精巣及び胚細胞腫瘍を含む)、内分泌腺(甲状腺、副腎、及び下垂体を含む)、及び皮膚の癌、並びに血管腫、黒色腫、肉腫(骨及び軟組織から生じるもの、並びにカポジ肉腫を含む)、脳、神経、眼、及び髄膜の腫瘍(星細胞腫、神経膠腫、神経膠芽腫、網膜芽細胞腫、神経腫、神経芽細胞腫、神経鞘腫、及び髄膜腫を含む)、白血病及びリンパ腫(ホジキン及び非ホジキンリンパ腫)などの造血器悪性腫瘍から生じる固形腫瘍を含む原発性及び転移性の癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0117】
一実施形態において、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合部分は、単独で、或いは放射線療法及び/または他の化学療法剤と組み合わせて使用されたときに、癌を治療するために、または本明細書に記載の腫瘍からの転移の予防において使用される。
【0118】
本発明の別の実施形態によれば、ヒトの免疫エフェクター細胞は、ヒトのリンパ系細胞系統のメンバーである。この実施形態では、該エフェクター細胞は、有利にはヒトT細胞、ヒトB細胞またはヒトナチュラルキラー(NK)細胞であり得る。有利には、このような細胞は標的細胞に対して細胞障害性またはアポトーシス効果を有するであろう。特に有利には、前記ヒトのリンパ細胞は細胞傷害性T細胞であり、これは活性化されたときに標的細胞に対して細胞傷害性効果を発揮する。従って、この実施形態によれば、前記ヒトエフェクター細胞の動員される活性は、この細胞の細胞傷害活性である。
【0119】
好ましい実施形態によれば、前記細胞傷害性T細胞の活性化は、前記細胞傷害性T細胞表面のエフェクター抗原としてのCD3抗原の、本発明のこの実施形態の二重特異性抗体による結合を介して生じ得る。ヒトCD3抗原は、ヘルパーT細胞及び細胞傷害性T細胞の両方に存在する。ヒトCD3は、多分子T細胞複合体の一部としてT細胞上に発現される抗原を意味し、これは三つの異なる鎖、即ち、CD3イプシロン、CD3デルタ及びCD3ガンマ含んでいる。
【0120】
T細胞の細胞傷害能の活性化は、複数のタンパク質の相互作用を必要とする複雑な現象である。T細胞レセプター(「TCR」)タンパク質は、二つの異なる糖タンパク質サブユニットからなる、膜結合されたジスルフィド結合ヘテロダイマーである。TCRは外来のペプチド抗原を認識して結合し、該抗原自身は高度に多様なクラスの主要組織適合遺伝子複合体(「MHC」)タンパク質のメンバーにより結合され、提示されており、抗原提示細胞(「APC」)の表面の前記MHCに結合されている。
【0121】
可変TCRは上記で概説したようにして外来抗原に結合するが、この結合が生じたことのT細胞へのシグナリングは、TCRに関連した他の不変のシグナル伝達タンパク質の存在に依存する。会合した形態でのこれらのシグナル伝達タンパク質は、集合的にCD3複合体と称されており、ここでは一纏めにしてCD3抗原と呼ぶ。
【0122】
従って、T細胞の細胞傷害性の活性化は、通常は先ず、TCRのMHCタンパク質との結合に依存し、それ自身は外来抗原に結合し、別の細胞上に位置している。この初期のTCR−MHC結合が行われたときにのみ、T細胞クローン増殖の原因であるCD3依存性のシグナル伝達カスケードが、及び最終的にはT細胞の細胞傷害性が結果として生じ得る。
【0123】
しかしながら、本発明の二重特異性抗体の第一または第二の部分によるヒトCD3抗原の結合は、独立したTCR−MHC結合の非存在下に、T細胞を活性化させて他の細胞に対して細胞傷害効果を発揮する。このことは、T細胞がクローン的に独立した方法で、即ち、T細胞に担持された特異的なTCRクローンとは独立した方法で、細胞障害的に活性化され得ることを意味する。これは、一定のクローン的同一性の特異的T細胞のみでなく、全体のT細胞区画の活性化を可能にする。
【0124】
従って、上記の説明の観点から、本発明の特に好ましい実施形態では、前記エフェクター抗原がヒトCD3抗原である二重特異性抗体を提供する。本発明のこの実施形態による二重特異性抗体は、合計で二つまたは三つの抗体可変ドメインを有し得る。
【0125】
本発明の更なる実施形態によれば、本発明の二重特異性抗体に結合される他のリンパ細胞関連エフェクター抗原は、ヒトCD16抗原、ヒトNKG2D抗原、ヒトNKp46抗原、ヒトCD2抗原、ヒトCD28抗原またはヒトCD25抗原であり得る。
【0126】
本発明の別の実施形態によれば、前記ヒトエフェクター細胞はヒト骨髄細胞系列のメンバーである。有利には、前記エフェクター細胞はヒト単球、ヒト好中球顆粒球またはヒト樹状細胞であり得る。有利には、このような細胞は、標的細胞に対して細胞障害性効果またはアポトーシス効果の何れかを有している。本発明の二重特異性抗体が結合できるこの実施形態内の有利な抗原は、ヒトCD64抗原またはヒトCD89抗原であることができる。
【0127】
本発明の別の実施形態によれば、標的抗原は疾患状態にある標的細胞またはエフェクター細胞上に独特に発現される抗原であるが、これは健康な状態では発現されないか、低レベルで発現され、またはアクセス可能でない。本発明の二重特異性抗体によって特異的に結合され得るこのような標的抗原の例は、有利には、EpCAM、CCR5、CD19、HER−2neu、HER−3、HER−4、EGFR、PSMA、CEA、MUC−1(ムチン)、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5AC、MUC5B、MUC7、βhCG、Lewis−Y、CD20、CD33、CD30、ガングリオシドGD3、9−O−アセチル−GD3、GM2、Globo H、フコシルGM1、ポリSA、GD2、炭酸脱水酵素IX(MN/CA IX)、CD44v6、ソニック・ヘッジホッグ(Shh)、Wue−1、血漿細胞抗原、(膜結合型)IgE、黒色腫コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)、CCR8、TNF−アルファ前駆体、STEAP、メソテリン、A33抗原、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、Ly−6;デスモグレイン4、E−カドヘリンネオエピトープ、胎児アセチルコリン受容体、CD25、CA19−9マーカー、CA−125マーカー及びミューラー阻害物質(MIS)受容体II型、sTn(シアリル化Tn抗原;TAG−72)、FAP(線維芽細胞活性化抗原)、エンドシアリン、EGFRvIII、LG、SAS及びCD63から選択される。
【0128】
特定の実施形態によれば、二重特異性抗体が特異的に結合する標的抗原は癌関連抗原、即ち、悪性状態に関連した抗原であり得る。このような抗原は悪性細胞上において発現され、またはアクセス可能であるのに対して、非悪性細胞上においては、該抗原は存在せず、有意に存在せず、またはアクセス可能でない。このように、本実施形態の二重特異性抗体は、標的抗原を担持し、または該標的抗原をアクセス可能にする悪性標的細胞に対して、ヒト免疫エフェクター細胞の活性を動員する二重特異性抗体である。
【0129】
遺伝子治療:特定の実施形態において、本明細書で提供される結合性タンパク質をコードする核酸配列、または本明細書に提供される別の予防剤もしくは治療剤は、遺伝子療法によって、疾患またはその1以上の症状を治療、予防、管理、または改善するために投与される。遺伝子治療とは、発現された、または発現可能な核酸を対象へ投与することにより行われる治療を言う。この実施形態において、該核酸は、予防効果もしくは治療効果を媒介する本明細書で提供されるそれらのコードされた抗体、または予防剤もしくは治療剤を産生する。
【0130】
当技術分野で利用可能な遺伝子治療のための方法は何れも、本明細書で提供される方法において使用することができる。遺伝子治療の方法の一般的な概観については以下を参照されたい:Goldspiel et al.(1993) Clin. Pharmacy 12:488−505;Wu and Wu(1991) Biotherapy 3:87−95;Tolstoshev(1993) Ann Rev. Pharmacol. Toxicol.32:573−596;Mulligan(1993) Science 260:926−932;Morgan and Anderson(1993) Ann Rev. Biochem.62:191−217;and May(1993) TIBTECH 11(5):155−215。一般的に使用できる組換えDNA技術の分野で知られている方法は、下記に記載されている:Ausubel et al.(eds.),Current Protocolsin Molecular Biology,John Wiley &Sons,NY(1993);及びKriegler,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990)。遺伝子治療の種々の方法の詳細な説明は、米国特許公開番号US20050042664に開示されている。
【0131】
診断:本明細書での開示はまた診断的応用を提供し、これには診断アッセイ法、1以上の結合性タンパク質を含む診断キット、並びに自動化及び/または半自動化システムで使用するための前記方法及びキットの適合が含まれるが、これらに限定されるものではない。この提供される方法、キット、及び適合は、個体における疾患もしくは傷害の検出、モニタリング、及び/または治療に用いることができる。これについては以下で更に説明する。
【0132】
A.アッセイ方法:本開示はまた、本明細書に記載されるように少なくとも一つの結合性タンパク質を用いて、試験試料中のアナライトもしくはその断片の存在、その量もしくは濃度を決定する方法を提供する。当該技術分野で知られている如何なる適切なアッセイも、本方法において使用できる。例としては、免疫アッセイ及び/または質量分析法を用いる方法が含まれるが、これらに限定されない。本開示により提供される免疫アッセイには、中でもサンドイッチ免疫アッセイ、ラジオ免疫アッセイ(RIA)、酵素免疫測定法(EIA)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、競合阻害免疫アッセイ、蛍光偏光免疫アッセイ(FPIA)、酵素多重免疫アッセイ技術(EMIT)、生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)、及び均質な化学発光アッセイが含まれる。化学発光微粒子免疫アッセイは、特に、ARCHITECT(登録商標)自動分析装置(アボットラボラトリーズ社、アボットパーク、I11)を使用するものは、免疫測定法の一例である。質量分析法を用いる方法が本開示により提供され、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化)またはSELDI(表面増強レーザー脱離/イオン化)が含まれるが、これらに限定されない。
【0133】
免疫アッセイ及び質量分析を用いて生物学的試験サンプルを収集、操作、処理、及び分析する方法は当業者によく知られており、本開示の実施において提供される(US2009−0311253 A1) 。
【0134】
B.キット:試験試料中におけるアナライトもしくはその断片の存在、量または濃度について試験試料をアッセイするためのキットもまた提供される。該キットは、アナライトもしくはその断片について試験試料をアッセイするための少なくとも一つの成分と、該アナライトまたはその断片について前記試験試料をアッセイするための説明書を備えている。前記アナライトもしくはその断片について前記試験試料をアッセイするための少なくとも一つの成分は、任意に固相上に固定化された本明細書に開示される結合性タンパク質、及び/または抗アナライト結合性タンパク質(またはその断片、変異体、もしくはその変異体の断片)を含有する組成物を含むことができる。必要に応じ、該キットは、単離または精製された検体を含むことができる標準物質または対照を含むことができる。該キットは、免疫アッセイ及び/または質量分析により分析物について試験試料をアッセイするための、少なくとも一つの成分を含むことができる。アナライト、結合性タンパク質、及び/もしくは抗アナライト結合性タンパク質、またはその断片を含むキット成分は、必要に応じて当該技術で既知の何れかの検出可能な標識を用いて標識することができる。本開示の実施において提供される作製のための材料及び方法は、当該技術分野の当業者に既知であろう(US 2009−0311253A1)。
【0135】
C.キット及び方法の適合:ここに記載した免疫アッセイのようなアッセイによる試験試料中のアナライトの存在、量もしくは濃度を決定するためのキット(またはその成分)並びに方法は、例えば米国特許番号5,089,424及び5,006,309に記載され、また例えばアボットラボラトリーズ(Abbott Park,Ill)によりARCHITECT(登録商標)として市販されているような、種々の自動化システム及び半自動化システム(前記固相が微小粒子を含むものを含む)において使用するために適合させることができる。アボットラボラトリーズから入手可能な他のプラットホームには、AxSYM(登録商標),IMx(登録商標、例えば米国特許番号5,294,404参照)、PRISM(登録商標)、EIA(ビーズ)、及びQuantum(商標)II、並びに他のプラットホームが含まれるが、これらに限定されない。加えて、該アッセイ、キット及びキット成分は他のフォーマット、例えば電気化学的もしくは他の手持ち型の、または医療現場でのアッセイシステムでも用いることができる。本開示は、例えば、サンドイッチ型免疫アッセイを行うアボットポイントオブケアの商業的な電気化学的免疫アッセイシステム(i−STAT(登録商標)、アボットラボラトリーズ)に適用可能である。免疫センサー及びその製造方法、並びに単回使用の試験装置におけるにその操作方法が、例えば米国特許番号5,063,081、7,419,821、及び7,682,833;及び米国特許公開番号20040018577、20060160164及びUS20090311253に記載されている。本明細書に記載される方法の他の適切な変更及び適合は明らかであり、本明細書に開示された実施形態の範囲から逸脱することなく適切な均等物を使用してなされ得ることは、当業者には容易に明らかであろう。ここで一定の実施形態を詳細に説明してきたが、これらの実施形態は、以下の例示のみを目的とした限定を意図しない実施例を参照することによって更に明確に理解されるであろう。
【0136】
上記では、理解の明確化の目的のための説明及び例により本発明を幾らか詳細に記載してきたが、本発明の教示を考慮すれば、添付の特許請求の範囲の精神または範囲を逸脱することなく、それに一定の変更及び修飾を加え得ることが、当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は限定のためではなく、例示のためだけに提供されるものである。当業者は、実質的に同様の結果を生じるような、変更もしくは修飾され得る種々の重要でないパラメータを容易に認識するであろう。
【実施例】
【0137】
実施例1.抗IL17/IL−20のタンデム型Fab免疫グロブリン(FIT−Ig)の構築、発現、精製及び分析
FIT−Igの技術を実証するために、我々は一群の抗IL−17/IL−20・FIT−Ig分子を作製した:即ち、FIT1−Ig、FIT2−Ig、及びFIT3−Igであり、これらの全ては図1に示すように三つの異なるポリペプチドを含んでおり、ここでは抗原AがIL−17であり、抗原BがIL−20である。IL−17及びIL−20に結合できるFIT−Igを作製するために使用されたDNA構築物が、図1Bに示されている。簡単に説明すると、親mAbは二つの高親和性抗体、即ち、抗IL−17(クローンLY)(米国特許7,838,638)及び抗hIL−20(クローン15D2)(米国特許出願公開番号US2014/0194599)を含んでいた。FIT−Ig構築物#1を生成するために、LYのVL−CLが、直接(FIT1−Ig)、または3アミノ酸のリンカーを介して(FIT2−IG)もしくは7アミノ酸のリンカーを介して(FIT3−Ig)、15D2重鎖のN末端に融合された(表1に示す通り)。構築物#2はLYのVH−CH1であり、第三の構築物は15D2のVL−CLである。各FIT−Igの三つの構築物を293細胞に同時トランスフェクトして、FIT−Igタンパク質の発現及び分泌を生じさせた。
【0138】
我々はまた、一群の抗IL−17/IL−20・FIT−Ig分子を作製した:即ち、FIT4−Ig、FIT5−Ig、及びFIT6−Igであり、その各々は、図2に示すように二つの異なるポリペプチドを含んでいる。IL−17及びIL−20に結合できるFIT−Igを作製するために使用されたDNA構築物は図2Bに示されており、ここでの抗原AはIL−17、抗原BはIL−20である。簡単に説明すると、親mAbは、二つの高親和性抗体、抗IL−17(クローンLY)及び抗hIL−20(クローン15D2)を含んでいた。FIT−Ig構築物#1を作製するために、LYのVL−CLは、直接に(FIT4−IG)、または3アミノ酸のリンカーを介して(FIT5−IG)もしくは7アミノ酸のリンカーを介して(FIT6−Ig)、15D2重鎖のN末端に融合された(表1に示す通り)。FIT−Ig構築物#4を作製するために、LYのVH−CH1が、直接に(FIT4−IG)、または3アミノ酸のリンカーを介して(FIT5−IG)もしくは7アミノ酸のリンカーを介して(FIT6−Ig)、15D2軽鎖のN末端に融合された。各FIT−Igのための二つのDNA構築物(構築物#1及び#4)を、293細胞に同時トランスフェクトして、FIT−Igタンパク質の発現及び分泌を生じさせた。PCRクローニングの詳細な手順を以下に記載する。
【0139】
実施例1.1:抗IL−17/IL−20・FIT−Ig分子の分子クローニング
構築物#1のクローニングのために、LY軽鎖を、軽鎖シグナル配列にアニールする順方向プライマー及び軽鎖のC末端にアニールする逆方向プライマーを用いたPCRにより増幅させた。15D2の重鎖を、15D2VHのN末端にアニールする順方向プライマー及びCHのC末端にアニールする逆方向プライマーを用いたPCRにより増幅させた。これら二つのPCR断片をゲル精製し、シグナルペプチド及びCHプライマー対を用いたオーバーラップPCRにより合体させた。この合体されたPCR生成物を、既にヒトFc配列を含んでいる293発現ベクターの中にクローニングした。
【0140】
(表1)抗IL−17/IL−20・FIT−Ig分子及びDNA構築物
【0141】
構築物#2のクローニングのために、LY・VH−CH1を、重鎖シグナルペプチドにアニールする順方向プライマー及びCH1のC末端にアニールする逆方向プライマーを用いたPCRにより増幅させた。このPCR産物をゲル生成し、293発現ベクター中にクローニングした。
【0142】
構築物#3については、15D2の軽鎖を軽鎖シグナルペプチドのN末端にアニールする順方向プライマー及びCLの末端にアニールする逆方向プライマーを用いたPCRにより増幅させた。このPCR産物をゲル精製し、293発現ベクター中にクローニングした。
【0143】
構造物#4のクローニングについては、LY・VH−CH1を、重鎖シグナルペプチドのN末端にアニールする順方向プライマー及びCH1の末端にアニールする逆方向プライマーを用いたPCRにより増幅させた。15D2・VLは、15D2・VLの末端にアニールするプライマーを用いて増幅させた。両方のPCR産物をゲル精製し、オーバーラップPCRによって合体させた。合体されたPCR産物をゲル精製し、293発現ベクター中にクローニングした。表2は、上記分子クローニングのために使用されたPCRプライマーの配列を示している。
【0144】
(表2)抗IL−17/抗CD20・FIT−Igの分子構築のために使用されるPCRプライマー
【0145】
hIL−17/hIL−20・FIT1−Ig、FIT2−Ig、FIT3−Ig、FIT4−Ig、FIT5−Ig、及びFIT6−Igの最終的な配列が、表3に記載されている。
【0146】
(表3)抗IL−17/IL−20・FIT−Ig分子のアミノ酸配列
【0147】
実施例1.2:抗IL−17/IL−20・FIT−Igタンパク質の発現、精製及び分析
各FIT−Igの全てのDNA構築物は、ベクターベースのpBOSの中にサブクローニングされ、正確性を保証するために配列決定された。各FIT−Igの構築物#1、#2、及び#3(1、2、及び3)、または各FIT−Igの構築物#1及び#4(4、5、及び6)を、ポリエチレンイミン(PEI)を用いて293E細胞において一過性に共発現させた。簡単に説明すると、FreeStyle(商標)293 Expression Medium中においてDNAとPEIとを、DNA:PEIの比が1:2の最終濃度になるように混合し、室温で15分間(20分以下)インキュベートし、次いで60μg DNA/120mL培養で293E細胞に加えた(1.0〜1.2×10/mL,細胞生存率>95%)。振盪器で6〜24時間培養した後、37℃、8%COにおいて125rpm/分で振盪しながら、トランスフェクトされた細胞に最終濃度5%でペプトンを加えた。第6日ないし第7日に、遠心分離及び濾過により上清を回収し、プロテインAクロマトグラフィー(Pierce社、ロックフォード、IL)を用いて、製造業者の指示に従ってFIT−Igタンパク質を精製した。このタンパク質をSDS−PAGEにより分析し、それらの濃度をA280及びBCA(Pierce社、ロックフォード、IL)により決定した。
【0148】
FIT1−Ig、FIT2−Ig、及びFIT3−Igの発現のために、この三つの構築物の異なるDNAモル比、即ち、構築物#1:#2:#3=1:1:1、構築物#1:#2:#3=1:1.5:1.5、及び構築物#1:#2:#3=1:3:3を用いた(表4)。FIT−Igタンパク質を、プロテインAクロマトグラフィーにより精製した。精製収率(7〜16mg/L)は、各タンパク質についての発現培地のhlgG定量と一致した。精製されたFIT−Igの組成及び純度を、還元条件下及び非還元条件下の両方においてSDS−PAGEにより分析した。非還元条件下において、FIT−Igは約250キロダルトンの単一バンドとして移動した。還元条件下では、FIT−Igタンパク質の各々が二つのバンドを生じ、より高いMWの一つのバンドは約75キロダルトンの構築物#1であり、より低いMW一つのバンドは約25キロダルトンで重なった構築物#2及び#3の両方に対応した。このSDS−PAGEは、各FIT−Igが単一種として発現され、三つのポリペプチド鎖が効率的に対合してIgG様分子を形成することを示した。鎖のサイズ、並びにFIT−Ig分子の完全長タンパク質は、アミノ酸配列に基づいて計算されたそれらの分子量と一致している。
【0149】
(表4)hIL−17/IL−20・FIT−Igタンパク質の発現及びSEC分析
【0150】
溶液中のFIT−Igの物理的特性を更に研究するために、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて各タンパク質を分析した。FIT−IgのSEC分析のために、PBS中の精製されたFIT−Igを、TSKゲルSuperSW3000の300×4.6mmカラム(TOSOH)に適用した。SECのために、HPLC機器モデルU3000(DIONEX)を使用した。280nm及び214nmでのUV検出を用いて、全てのタンパク質を決定した。溶出は、0.25mL/分の流速で無勾配であった。三つの全てのFIT−Igタンパク質は単一の主要ピークを示し、単量体タンパク質としての物理的な均一性を実証した(表4)。構築物#1:#2:#3=1:3:3の比率は、全ての三つのFIT−Igタンパク質について、SECによってより良好な単量体プロフィールを示した(表4)。
【0151】
表4はまた、全てのFIT−Igタンパク質の発現レベルは通常のmAbの発現レベルに匹敵しており、FIT−Igは哺乳動物細胞において効率的に発現させ得ることを示している。FIT4−Ig、FIT5−Ig、及びFIT6−Igの発現について、構築物のDNA比率は#1:#4=1:1、発現レベルは1〜10mg/mLの範囲であり、またSECにより決定されたピークモノマー画分%は58〜76%であった。この特定のmAbの組み合わせ(LY及び15D2)に基づいて、3−ポリペプチドFIT−Ig構築物(FIT1−Ig、FIT2−Ig、及びFIT3−Ig)は、2−ポリペプチドFIT−Ig構築物(FIT4−Ig、FIT5−Ig、及びFIT6−Ig)よりも良好な発現を示した。従って、FIT1−Ig、FIT2−Ig、及びFIT3−Igは、機能的性質について更に分析された。
【0152】
実施例1.3 抗IL−17/IL−20・FIT−Igの抗原結合親和性の決定
rhIL−17及びrhIL−20に結合するFIT−Igの動力学が、25℃でHBS−EP(10mMのHEPES、pH7.4、150mMのNaCl、3mMのEDTA、0.005%界面活性剤P20)を使用して、ビアコアX100装置(ビアコアAB、ウプサラ、スウェーデン)を備えた表面プラズモン共鳴(表5)によって決定された。簡単に説明すると、ヤギ抗ヒトIgG・Fcγ断片特異的ポリクローナル抗体(ピアスバイオテクノロジー社、ロックフォード、IL)を、製造業者の指示に従って標準的なアミンカップリングキットを用い、CM5研究グレードのバイオセンサーチップの全体亘って直接固定した。精製されたFIT−Igの試料を、ヤギ抗ヒトIgG・Fc特異的反応表面の全体に亘る捕捉のためにHEPES緩衝生理食塩水で希釈し、5μL/分の流速で反応マトリックス上に注入した。会合及び解離の速度乗数、即ち、kon(M−1s−1)及びkoff(s−1)を、30μL/分の連続流速の下で決定した。速度定数は、1.25〜1000nMの範囲の10の異なる抗原濃度において、速度論的結合測定を行うことにより誘導された。FIT−Igと標的タンパク質の間の反応の平衡解離定数(M)を、式(KD=koff/kon)により動力学的速度定数から計算した。抗原サンプルのアリコートを、ブランク基準と反応CM表面上に同時に注入して、任意の非特異的結合バックグラウンドを記録し、且つ屈折率変化及び注入ノイズの大半を除去するために減算した。表面は、その後2回に亘って、25mLの10mMのグリシン(pH1.5)を10μL/分の流速で注入することにより再生された。抗Fc抗体を固定化した表面は完全に再生され、12サイクルに亘って完全な捕捉能力を保持した。
【0153】
(表5)抗IL−17/IL−20・FIT−Ig分子の機能特徴付け
【0154】
ビアコア分析は、hIL−17及びhIL−20に対する三つのFIT−Igの全体の結合パラメータが類似していることを示し、FIT−Igの親和性は親mAb・LY及び15D2のそれに非常に近似しており、また何れの抗原結合性ドメインについても結合親和性の喪失はなかった(表5)。
【0155】
加えて、FIT−Igの四価二重特異性抗原はビアコアによっても分析された。FIT1−Igは、最初にヤギ抗ヒトFc抗体を介してビアコアセンサチップに捕捉され、第一の抗原が注入され、結合信号が観察された。FIT1−Igが第一の抗原で飽和されたときに、第二の抗原が注入されて第二の信号が観測された。これはFIT2−Igについて、最初にIL−17を注入し、続いてIL−20を注入することによって、または最初にIL−20を注入し、続いてIL−17を注入することによっての何れかで行われた(図3)。何れの順番においても、二重結合活性が検出され、また両方の抗原結合性が25〜30RUで飽和された。同様の結果が、FIT2−Ig及びFIT3−Igについても得られた。従って、各FIT−Igは、二重特異性の四価分子として同時に両方の抗原に結合することができた。
【0156】
FIT−Igの発現プロファイル及び二重結合特性により、FIT−Ig分子内において、VL−CLはそれらの対応するVH−CH1と正しくペアリングされて2官能性の結合ドメインを形成し、単一の単量体で四価及び二重特異性の全長FIT−Igタンパク質として発現されることが明らかに示された。これは、四価ではあるが、一つの標的抗原に対する単一特異性の結合活性を示す多価抗体型分子(Miller and Presta,米国特許番号8722859)とは対照的である。
【0157】
実施例1.4 抗IL−17/IL−20・FIT−Igの生物学的活性の決定
IL−17の機能を中和するFIT−Igの生物学的活性が、GROαバイオアッセイを用いて測定された。簡単に説明すれば、Hs27細胞を、10000細胞/50μL/ウエルで96ウェルプレートに播種した。FIT−Igまたは抗IL−17対照抗体(25μL)が、2.5nMの出発濃度に続いて1:2の連続希釈で5pMまで、二連のウエル中に加えられた。次いで、IL−17(25μL)を各ウエルに添加した。IL−17Aの最終濃度は0.3nMであった。細胞培養上清を回収する前に、細胞を37℃で17時間インキュベートした。細胞培養上清中のGRO−αの濃度は、製造者のプロトコル(R&Dシステム社)従い、ヒトCACL1/GROアルファQuantikineキットにより測定した。
【0158】
IL−20機能を中和するFIT−Igの生物学的活性は、IL−20R BAF3細胞増殖アッセイを用いて測定した。簡単に言うと、25μLの組換えヒトIL−20を、0.8nMで96ウェルプレートの各ウエルに添加した(IL−20の最終濃度は0.2nMである)。抗IL20抗体もしくはFIT−Igまたは他の対照抗体は、400nMに希釈し(作業濃度は100nMであった)、続いて5倍の連続希釈で希釈し、96ウェルアッセイプレートに加えた(ウエル当たり25μL)。次いで、IL−20受容体を安定にトランスフェクトしたBaF3細胞を、50μLの容積のRPMI1640+10%FBS、800μg/mLの濃度のハイグロマイシンB、800μg/mLの濃度のG418において、10000細胞/ウエルの濃度で各ウエルに添加した。48時間のインキュベーション後、100μLのCellTiter−Glo発光緩衝液を各ウエルに添加した。内容物は、細胞溶解を誘導するためにオービタル振盪器上で2分間混合し、発光シグナルを安定化させるためにプレートを室温で10分間インキュベートした。発光はSpectraMax・M5によって記録された。
【0159】
表5に示すように、全てのFIT−Igが、親抗体のそれと同じ親和性で、hIL−20及びhlL−17の両方を中和することができた。ビアコア及び細胞ベースの中和アッセイの両方を使用した機能的な分析に基づけば、三つのFIT−Igの全部が親mAbの活性を完全に保持すると思われる。三つのFIT−Igの間に有意な機能的相違は存在せず、このことはリンカーがオプションであったこと、及びFIT−Igの構築物が、二つのFab結合領域間のペプチドスペーサーの非存在下において、二重結合性を可能にする十分な柔軟性及び特別な寸法を提供したことを示している。これは、下方の(第二の)可変ドメインの活性を保持するために二つのポリペプチド鎖の各々の二つの可変ドメインの間にリンカーが必要とされるDVD−Ig型の分子とは対照的である。
【0160】
実施例1.5 抗IL−17/IL−20・FIT−Igの安定性研究
クエン酸緩衝液(pH=6.0)中のFIT1−Igタンパク質試料を、個別に4℃、25℃及び40℃において1日間、3日間または7日間、一定にインキュベートした。同様に、FIT1−Igタンパク質試料を1回、2回または3回、凍結−解凍した。10μgの各タンパク質試料を流速0.3mL/分で15分間、Superdex200 5/150GLを装備したUtimate3000HPLCに注入して、SEC−HPLCにより全ての試料の無傷の完全な単量体タンパク質の画分を検出し、データを記録し、製造業者によって供給されるChromeleonソフトウエアを用いて分析した。表6は、FIT1−Ig及びFIT3−Igが、これらの熱チャレンジ条件下で完全無傷の単量体分子で残っていることを示している。
【0161】
(表6)SECで完全の単量体画分%を測定することによるFIT−Igの安定性解析
【0162】
実施例1.6 抗IL−17/IL−20・FIT−Igの溶解度研究
FIT1−Igの溶解度を、濃度が増大するPEG6000(PEG6000は上海リンフェン化学試薬公司(Shanghai lingfeng chemical reagent co. Ltd)から購入した)の存在下において、沈殿の兆候を測定することにより分析した。簡単に言うと、PEG6000の存在下でのタンパク質の溶解度は、PEG6000濃度(0、5%、10%、15%、20%、25%、30%)の関数として得られた。溶解度研究は、pH6.0の溶液において25℃の温度で行った。簡潔に説明すると、タンパク質、PEG及びバッファーの適切な量の緩衝ストック溶液を混合することによりタンパク質を沈殿させ、望ましい濃度の成分を得た。最終容積を200μLにし、タンパク質の濃度を1.0mg/mLに設定した。この最終溶液を十分に混合し、16時間平衡化させた。平衡化の後、該溶液を13000rpmで10分間遠心分離し、タンパク質沈殿物を分離させた。タンパク質の溶解度が、スペクトラマックス・プラス384(モレキュラーデバイス社)を用いて280nmで測定され、上清の吸光度から得られ、そしてタンパク質濃度の標準曲線に基づいて濃度が計算された(図4A)。我々は、同じ実験方法を使用して、三つの異なるpH条件下で市販の抗体であるリツキサンを分析した(図4B)。タンパク質溶解度はpH条件に依存し、また予測されたFIT−Igの溶解度はモノクローナル抗体の範囲内であるように思われた。
【0163】
実施例1.7 抗IL−17/IL−20・FIT−Igの薬物動態学的研究
FIT1−Igの薬物動態学的特性を、雄のSprague−Dawley系(SD)ラットで評価した。FIT−Igタンパク質は、背部皮膚下において、頸静脈カニューレを介してまたは皮下に5mg/kgの単回静脈内容量で雄のSDラットに投与された。血清サンプルは、28日の期間に亘り異なる時点で採取され、サンプリングは0,5,15、及び30分;1,2,4,8及び24時間;及び2,4,7,10,14,21及び28日において尾静脈を介した連続出血で行われ、ヒトIL−17捕捉及び/またはヒトIL−20捕捉のELISAによって分析された。簡単に言うと、ELISAプレートをヤギ抗ビオチン抗体でコーティングし(5μg/mL、4℃で一晩)、スーパーブロック(Superblock、Pierce社)でブロッキング処理し、10%スーパーブロックTTBS中の50ng/mLのビオチン化ヒトIL−17(IL−17捕捉ELISA)またはIL−20(IL−20捕捉ELISA)と共に、室温において2時間インキュベートした。血清サンプルを連続的に希釈し(0.5%血清、TTBS中の10%スーパーブロック)、室温で30分間、該プレート上でインキュベートした。検出は、HRP標識されたヤギ抗ヒト抗体を用いて行われ、濃度は、4パラメータロジスティック適合を用い、標準曲線の補助を用いて決定された。特に皮下群の幾つかの動物は、恐らくは抗ヒト反応の発症に起因して、第10日の後にFIT−Ig濃度の急激な低下を示した。これらの動物は、最終的な計算から除外された。薬物動態パラメータの値は、WinNonlinソフトウエア(ファーサイト社、マウンテンビュー、カリフォルニア州)を使用して、非コンパートメントモデルによって決定した。
【0164】
ラットPK研究、FIT1−Igの血清濃度は、二つの異なるELISA法によって決定したときに非常に類似しており、これは分子が無傷であり、インビボにおいて両方の抗原に結合できたことを示している。IV投与の際に、FIT1−Igは、従来のIgG分子のPKプロファイルに類似した、分布相及びその後の排出相からなる二相性薬物動態プロファイルを示した。二つの異なる分析方法に基づいて計算された薬物動態パラメータは非常に類似しており、表7に示されている。FIT−Igのクリアランスは低く(12mL/日/kg)、低容積の分布(Vss130mL/kg)は長い半減期をもたらした(T1/2>10日)。皮下投与後、FIT−Igは徐々に吸収され、投与後4日目には約26.9μg/mLの最大血清濃度に達する。最終半減期は約11日であり、皮下生体利用可能性は100%に近かった。これらの結果に示されるように、FIT1−Igの性質は、インビボでの従来のIgG分子に非常に類似しており、同等の投与計画を用いた治療的適用についての可能性を示している。
【0165】
FIT−Igの薬物動態研究は、多重特異的Ig様生物製剤開発の分野において驚くべきブレークスルーを実証してきた。ラット薬物動態学的システムは、一般的に、治療用モノクローナル抗体(mAb)の前臨床評価のために製薬業界で使用され、それはヒトにおけるmAbの薬物動態プロファイルを十分に予測する。FIT−Igの長い半減期及び低いクリアランスは、治療用モノクローナル抗体に類似した低い投与頻度で、慢性適応症のための治療的有用性を可能にする。加えて、IgGよりも100−kDa大きいFIT−Igは、PK研究からの分布パラメータのそのIgG様容積に基づいて、組織の中に効率的に浸透するように思える。
【0166】
(表7)SDラットにおけるFIT1−Igの薬物動態解析
【0167】
実施例1.8 FIT−Igの安定なCHO細胞株の発生研究
FIT−Igは一過性トランスフェクトされた293E細胞において効率的に発現されることが観察されている。FIT−Igの製造可能性を更に決定するために、CHO−DG44及びCHO−Sの両細胞株において安定なトランスフェクションが行われ、その後のクローン選択、並びに生産性分析が行われた。簡単に述べると、CHO細胞は、フリーダムpCHOベクター(ライフテクノロジーズ社)中にサブクローニングされた20μgのDNA(CHO・DG44細胞用)または25μgのDNA(CHO−S細胞用)をプラスした400μLのトランスフェクション溶液中において8×10個の細胞を用い、エレクトロポレーションによりトランスフェクトされた。安定な細胞株の選択は、ルーチンの手順を用いて行われた。手短に言えば、CHO−DG44の選択のためには、トランスフェクションの際に、安定したプールを選択し(−HT/2P/400G、ここでPはμg/mLのピューロマイシンであり、Gはμg/mLのG418である)、タンパク質産生はIgG・ELISAにより分析した。トッププールが選択され、増大する濃度のMTX(50、100、200及び500nM)で数ラウンドの増幅へと進められ、続いてIgG・ELISAによるタンパク質産生の分析が行われた。次いで、このトッププールはサブクローニングのために選択された。CHO−S細胞選択については、第一相選択は10P/400G/100M(MはnMのMTXである)を含む培地中で行い、続いてタンパク質産生の分析を行った。次に、トッププールが選択されて30P/400G/500Mまたは50P/400G/1000Mの何れかにおける第二相選択へと進み、続いてELISAによるタンパク質産生測定が行われた。このトッププールは、次いでサブクローニングのために選択された。タンパク質の生産性分析については、完全に回収された細胞プール(生存率>90%)を、125mLの振盪フラスコ中の30mLの新鮮培地(6mMのLグルタミンを補充したCD・FortiCHO(商標)培地)を使用して、5×10生存細胞/mL(CHO・DG44)または3×10生存細胞/mL(CHO−S)で播種した。細胞を、37℃、相対湿度80%、8%CO、及び130rpmにおいて、振盪プラットホーム上でインキュベートした。サンプル培養物は、毎日または規則的な間隔で(例えば第0,3,5,7,10,12及び14日)、培養物の生存率が50%未満に低下するまで、または培養の第14日に達するまで、細胞密度、生存率、及び生産性を決定する。サンプリングの後、培養体には必要に応じてグルコースを給餌する。
【0168】
FIT1−Ig・CHO安定細胞株の全体の発生プロセスは、CHO細胞におけるモノクローナル抗体の発生のそれと類似した特徴を示した。例えば2P/400Gの下でのDG44プール分析の際に、VCDは第10〜12日までは約1.3E7まで増大し続けた一方、細胞生存率は第13〜14日までは約80%超のまま残り、生産性は第14日に殆ど40mg/mLに達した(図5A)。5P/400G/50Mで増幅されると、生産性は第14日に50mg/mL超に達した(図5B)。CHO−S細胞の選択について、力価はフェーズ1の選択の間に200mg/mL超に達し(図5C)、フェーズ2の選択では370mg/mL超に達した(図5D)。これらの生産性レベルは、我々の研究室での正規のヒトmAbの発生において以前に観察されていたものと同様であり、FIT−Igが商業的応用のためのmAbと同様の製造可能性を示すことを示唆している。
【0169】
実施例2:抗CD3/CD20タンデム型Fab免疫グロブリン(FIT−Ig)の構築、発現、及び精製
FIT−Igが細胞表面抗原に結合できるかどうかを決定するために、我々は抗CD3/CD20・FIT−Ig分子であるFIT7−Ig及びFIT8−Igを作製した。これらは、図1に示すような3ポリペプチド構築物である。細胞表面CD3及びCD20に結合できるFIT−Igを作製するために使用される構築物が、図1Bに示されている。簡単に説明すると、親mAbは二つの高親和性抗体、即ち、抗CD3(OKT3)及び抗CD20(オファツムマブ)を含んでいる。FIT7−Ig構築物#1を作製するために、OKT3のVL−CLを直接(FIT7−Ig)または7アミノ酸リンカーを介して(FIT8−Ig)、オファツムマブ重鎖のN末端に融合された(表8に示す通り)。構築物#2はOKT3のVH−CH1であり、第三の構築物は、オファツムマブのVL−CLである。FIT−Igのための三つの構築物が293細胞に同時トランスフェクトされ、FIT−Igタンパク質の発現及び分泌をもたらした。PCRクローニングの詳細な手順は以下の通りである。
【0170】
実施例2.1 抗CD3/CD20FIT−Igの分子クローニング
この分子クローニング方法は、抗hIL−17/hIL−20・FIT−Igの場合と同じである。
【0171】
(表8)抗CD3/CD20・FIT−Ig分子及び構築物
【0172】
表9は、上記の分子構築のために使用されたPCRプライマーの配列を示している。
【0173】
(表9)抗IL−17/IL−20・FIT−Igの分子構築のために使用したPCRプライマー
【0174】
抗CD3/CD20・FIT−Igの最終的な配列を表10に記載する。
【0175】
(表10)抗CD3/CD20・FIT−Igのアミノ酸配列
【0176】
実施例2.2 抗CD3/CD20・FIT−Igの発現及び精製
各FIT−Igの全てのDNA構築物をpBOSに基づくベクターの中にサブクローニングし、正確性を保証するために配列決定した。各FIT−Igの構築物#1、#2、及び#3を、ポリエチレンイミン(PEI)を使用して293E細胞中で一過性共発現させた。簡単に言うと、FreeStyle(商標)293 Expression Medium中のDNAをPEIと混合して、DNA:PEI比が1:2の最終濃度とし、室温で15分間(20分以下)インキュベートし、次いで60μg・DNA/120mL培養物で293E細胞に添加した(1.0〜1.2×10/mL、細胞性生存率>95%)。振盪器で6〜24時間培養した後、125rpm/分で振盪しながら、37℃、8%COにおいて、ペプトンを5%の最終濃度で前記トランスフェクトされた細胞に添加した。第6日ないし第7日に、遠心分離及び濾過により上清を回収し、プロテインAクロマトグラフィー(Pierce社、ロックフォード、IL)を製造者の指示に従って使用することによりFIT−Igタンパク質を精製した。このタンパク質をSDS−PAGEにより分析し、その濃度をA280及びBCA(Pierce社、ロックフォード、IL)により決定した(表11)。
【0177】
(表11)抗CD3/CD20・FIT−Igタンパク質の発現及びSEC分析
【0178】
実施例2.3 抗CD3/CD20・FIT−Ig分子の結合活性
両方の標的に対する抗CD3/CD20・FIT−Igの結合が、細胞表面にCD3を発現するジャーカット細胞、及び細胞表面にCD20を発現するラージ細胞を使用して、FACSによって分析された。簡単に述べると、5×10 個の細胞を氷冷PBSで洗浄し、氷上において1時間、2%FBSでブロックした。細胞を、抗体、FIT−Ig(100nM)、またはアイソタイプ対照と共に氷上で1時間インキュベートし、PBSで3回洗浄した。二次抗体(Alexa Fluor488で標識したヤギ抗ヒトIgG、インビトロゲン社)を添加し、氷上で1時間、暗所で細胞と共にインキュベートし、PBSで3回洗浄した。サンプルをFACSキャリバーで分析した。細胞表面結合は、FIT7−Ig及びFIT8−Igの両方が、濃度依存的に、細胞表面抗原CD3及びCD20の両方に結合できたことを示している。親mAbの結合活性と比較すると、FIT−Igはジャーカット細胞上のCD3に対しては低下した結合強度を示したが、ラージ細胞上のCD20に対しては増強された結合強度を示した。すべての結合研究において、FIT7−Ig及びFIT8−Igは、両方の抗原に対して類似した結合活性を示し、リンカーはFIT8−Igのその結合能に大きな影響を与えなかったことを示している(表12)。
【0179】
(表12)抗CD3/CD20・FIT−Igタンパク質の細胞表面抗原結合研究
【0180】
実施例3:抗TNF/IL−17タンデム型Fab免疫グロブリン(FIT−Ig)の構築、発現及び精製
ヒトIL−17及びヒトTNFαに結合できる別のFIT−Ig(FIT9−Ig)はまた、図1に示すように、3ポリペプチド構築物において、抗IL−17モノクローナル抗体クローンLY、及び抗TNFモノクローナル抗体ゴリムマブを使用して作製された。FIT9−Ig構築物#1を作製するために、ゴリムマブのVL−CLは、LY重鎖のN末端に直接融合された(表13に示した通り)。構築物#2はゴリムマブのVH−CH1であり、第三の構築物はLYのVL−CLである。FIT9−Igの3構築物は293細胞に同時トランスフェクトされ、FIT9−Igタンパク質の発現及び分泌をもたらした。抗TNF/IL−17・FIT−Igの最終的な配列は表14に記載されている。
【0181】
実施例3.1 抗TNF/IL−17・FIT−Igの分子クローニング:
分子クローニングの方法は、抗hIL−17/hIL−20・FIT−Igの場合と同じである。
【0182】
(表13)抗TNF/IL−17・FIT−Ig分子及び構築物
【0183】
(表14)抗TNF/IL−17・FIT−Ig分子のアミノ酸配列
【0184】
実施例3.2 抗TNF/IL−17・FIT−Igタンパク質の発現、精製及び分析
各FIT−Igの全てのDNA構築物は、pBOSベースのベクターにサブクローニングし、正確性を保証するために配列決定した。FIT9−Igの構築物#1、#2、及び#3は、先に述べたようにして、293E細胞においてポリエチレンイミン(PEI)を使用して一過性に共発現させ、FIT9−Igタンパク質はプロテインAクロマトグラフィーにより精製した。発現レベルは10〜23mg/Lであった。精製されたタンパク質は、IL−17(Hs27細胞によるGROαの産生)及びTNF(L929細胞によるIL−8の産生)について細胞ベースのアッセイを用いた機能解析に付された。ヒトTNFに対するFIT9−Igの中和効力は(同じ実験におけるゴリムマブによる15.9pMに比較して)11.6pMであり、ヒトIL−17に対しては122pM(同じ実験でのLYによる51.5pMに比較される)であった。全体的に、FIT9−Igは親mAbの生物学的活性を維持した。
【0185】
実施例4:抗CTLA−4/PD−1タンデム型Fab免疫グロブリン(FIT−Ig)の構築、発現及び精製
ヒトCTLA−4及びヒトPD−1に結合できる別のFIT−Ig(FIT10−Ig)は、図1に示すように、3−ポリペプチド構築物において抗CTLA−4モノクローナル抗体イピリムマブ、及び抗PD−1モノクローナル抗体ニボルマブを使用して作製された。FIT10−Ig構築物#1を作製するために、イピリムマブのVL−CLがニボルマブ重鎖のN末端に直接融合された(表15に示した通り)。構築物#2はイピリムマブのVH−CH1であり、第三の構築物はニボルマブのVL−CLである。FIT10−Igの3構築物は293細胞に同時トランスフェクトされて、FIT10−Igタンパク質の発現及び分泌をもたらした。
【0186】
実施例4.1 抗CTLA−4/PD−1・FIT−Igの分子クローニング:
この分子クローニング方法は、抗hIL−17/hIL−20・FIT−Igの場合と同様である。抗CTLA−4/PD−1・FIT−Igの最終的な配列は表16に記載されている。
【0187】
(表15)抗CTLA−4/PD−1・FIT−Ig分子及び構築物
【0188】
(表16)抗CTLA−4/PD−1・FIT−Ig分子のアミノ酸配列
【0189】
実施例4.2 抗CTLA−4/PD−1・FIT−Igタンパク質の発現、精製及び機能解析
各FIT−Igの全てのDNA構築物をpBOSベースのベクターにサブクローニングし、正確性を保証するために配列決定した。FIT10−Igの構築物#1、#2、#3を、先に述べたようにして、ポリエチレンイミン(PEI)を使用して293E細胞の中で一過性に共発現させ、プロテインAクロマトグラフィーによって、FIT9−Igタンパク質を98%の完全な単量体タンパク質に精製した。発現レベルは、43mg/L以下であった。この精製されたタンパク質を、組換えCTLA−4Ig及びPD−1に対するELISAを使用して結合分析に供した。簡単に言えば、CTLA−4への結合に関しては、ヒトCTLA−4Ig(R&Dシステムズ社)を96ウェルプレート上に固定化し、続いてルーチン洗浄及びブロッキング処理を行った。次に、FIT−10−Igまたはイピリムマブを種々の濃度でプレートに添加し、続いてインキュベート及び複数回の洗浄工程を行い、抗ヒトFab−HRPで検出した。PD−1に結合するため、ヒトPD−1(hisタグを有する)(R&D システムズ社)を96ウェルプレート上に固定化し、続いてルーチン洗浄及びブロッキング処理を行った。次いで、種々の濃度のFIT−10−Igまたはニボルマブを前記プレートに加え、続いてインキュベーション及び複数回の洗浄工程を行い、抗ヒトFc−HRPを用いて検出した(図6)。FIT10−Igは、それぞれ親mAbのイピリムマブ及びニボルマブと同様の活性で、CTLA−4(A)及びPD−1(B)の両方に結合できたと思われる。
【0190】
加えて、複数抗原の結合研究がOctetRedを用いて行われ、FIT10−Igが、組換えCTLA−4及びPD−1に同時に結合できるどうかが決定された。簡単に言えば、FIT10−Igは10μg/mLの濃度でAR2Gセンサー上に固定化され、続いてアッセイ緩衝液中(PBS、pH7.4、0.1%BSA、0.02%Tween)において80nMの濃度で、CTLA−4Igの結合、次いでPD−1の結合(または、PD−1の結合、次いでCTLA−4Igの結合)が行われた。実験の最後に、pH1.5の10mMグリシンで表面を5回再生させた(図7)。この実験は、FIT10−Igはそれが既にCTLA−4に結合したときにPD−1に結合でき、またその逆も可能であり、FIT10−IgがCTLA−4Ig及びPD−1の両方に同時に結合できることを示した。
【0191】
本明細書において引用された全ての刊行物、特許出願、及び発行された特許は、各個別の刊行物、特許出願及び発行された特許が具体的に且つ個別にその全体が参照により組み込まれたのと同様に、本明細書の一部として本願に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]