特許第6706579号(P6706579)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706579
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】衛星位置決め方法の改良
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/30 20100101AFI20200601BHJP
【FI】
   G01S19/30
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-548176(P2016-548176)
(86)(22)【出願日】2015年1月26日
(65)【公表番号】特表2017-504033(P2017-504033A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2015051514
(87)【国際公開番号】WO2015110640
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年11月7日
(31)【優先権主張番号】1401237.1
(32)【優先日】2014年1月24日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511247389
【氏名又は名称】キネテイツク・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マクラウド,マルコム・デイビッド
【審査官】 安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0097915(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/031797(WO,A1)
【文献】 特表平11−513796(JP,A)
【文献】 特表2010−515324(JP,A)
【文献】 特表2012−505412(JP,A)
【文献】 特開2008−032737(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0104046(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/082635(WO,A1)
【文献】 米国特許第06081691(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00−19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信機での着信BOC衛星信号の到達時間を決定する方法であって、BOC信号が、サブキャリア信号を乗じたBPSK信号を備え、着信信号を受信するステップと、着信信号に第1の実数値の周期的修正信号を乗じて第1の修正された出力を生成するステップと、第1の修正された出力を相関させて第1の相関出力を得るステップと、着信信号に第2の実数値の周期的修正信号を乗じて第2の修正された出力を生成するステップと、第2の修正された出力を相関させて第2の相関出力を生成するステップと、第1の相関出力と第2の相関出力を比較するステップとを備え、第1および第2の修正された出力の相関が、着信衛星信号内に含まれる識別子信号と同じ形状を有する、レンジングコードを備える相関参照信号とともに行われ、第1および第2の実数値の周期的修正信号が、それぞれサインおよびコサイン相であり、二値化または三値化されており、BOCサブキャリア信号に対して同じまたは同様の周波数を有し、互いに同様の形であり、さらに周期的信号に対する着信信号の時間遅延が、第1および第2の相関出力の大きさの比を用いて計算される、方法。
【請求項2】
GNSS衛星ナビゲーションシステムで用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の相関出力と第2の相関出力を比較するステップが、第1の相関出力と第2の相関出力の比を計算することを備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の周期的修正信号および第2の周期的修正信号が、実数値のバイナリ(二値の)信号である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の周期的修正信号および第2の周期的修正信号が、ターナリ(三値の)信号である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
着信信号に、第1の修正信号および第2の修正信号を実質的に同時に乗じる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
受信機でのBOC信号の到達時間を決定する装置であって、BOC信号が、関連するサブキャリア信号を備え、着信信号を受信する受信機と、着信信号に第1の実数値の周期的修正信号を乗じる第1の乗算器と、第1の乗算器の出力を相関させるように配置された第1の相関器と、着信信号に第2の実数値の周期的修正信号を乗じる第2の乗算器と、第2の乗算器の出力を相関させるように配置された第2の相関器と、第1の相関器と第2の相関器のそれぞれの出力を比較する手段とを備え、第1および第2の相関器が、着信衛星信号内に含まれる識別子信号と同じ形状を有する、レンジングコードを備える相関参照信号を使用し、第1および第2の実数値の周期的修正信号が、それぞれサインおよびコサイン相であり、二値化または三値化されており、BOCサブキャリア信号に対して同じまたは同様の周波数を有し、互いに同様の形であり、さらに周期的信号に対する着信信号の時間遅延が、第1および第2の相関出力の大きさの比を用いて計算される、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良された衛星位置決め方法に関し、詳細には、衛星と受信機の間の距離を決定する改良された方法に関する。GNSSなどの衛星位置決めシステムは、地球上の受信機の位置を正確に決定するのに使用される。これは、衛星と受信機の間の距離の正確な知識を必要とする。この距離を計算するために、信号が、衛星から受信機に伝わるのにかかる正確な時間が必要になる。これは、信号が衛星を離れる正確な時間の表示を信号に含ませることによって達成される。次いで、信号が受信機に達する正確な時間を決定することによって、信号が衛星から受信機に伝わるのにかかる時間を計算することができる。
【背景技術】
【0002】
受信機が、信号の到達時間を決定するには、受信機は、まず信号を取り込まなければならない。この目的で、信号は、レンジングコードとして知られているコードの一部を含みうる。レンジングコードは、受信機によって知られる。受信機は、レンジングコードを識別しようと、信号に処理動作を行う。レンジングコードが識別されると、受信機は、信号に「ロックオン」し、信号に含まれる他の情報を読み取る。初めて信号にロックオンすることは、「捕捉」として知られている。捕捉が達成されたら、受信機は、衛星と交信を保つのが望ましい。衛星と受信機の間の相対的な移動によって、衛星と受信機の距離は、常時変化し続け、決定されることが必要である。信号へロックオンし続けるプロセスは、トラッキングとして知られている。
【0003】
知られているシステムで、受信機のアンテナでの低い信号対雑音比は、レンジングコードを識別するために、信号に相関動作を行うことが通常必要であることを意味する。これは、ある期間にわたって、通常、一定の時間間隔で、信号の振幅を繰り返し測定することを含む。特定の時間の測定された振幅に、対応する時間の知られているレンジングコードの振幅を乗じる。次いで、これらの乗算演算の結果は、合計される。次いで、このプロセスは、何度も繰り返される。このプロセスが繰り返されるたび、サンプリング動作は、前回のサンプリング動作に対してわずかに遅れる。上述の振幅の合計が、非常に大きくなると、着信信号と相関参照データが良好に一致することが分かった。次いで、相関器によって与えられた時間遅延が、測定される。このやり方で、受信機での信号の到達時間の粗い推定値を得ることができる。しかし、受信機と衛星の距離を、より正確に決定することができるように、到達時間のより正確な決定を提供することが望ましい。これは、特に、トラッキングの段階で、重要である。
【0004】
GNSS衛星によって送信される信号の種類の1つは、バイナリ位相シフトキーイング(BPSK)として知られている。BPSK信号で、レンジングコードの情報は、一連の矩形波(チップ)として信号に変調される。本発明は、バイナリオフセットキャリア(BOC)として知られている、GNSS衛星によって送信される別の種類の信号の受信を意図する。BOC信号において、レンジングコードの情報を含むBPSK信号に、信号への変調より前に、BPSKのチップレートより高い周波数のサブキャリア波形を最初に乗じる。サブキャリア波形は、周波数がサブキャリア周波数である矩形波である。
【0005】
BOC衛星信号にロックオンする、知られているやり方の1つは、受信したBOC信号を相関器に入力して、BOC信号自体(受信機によって知られる)を相関参照信号として用いることである。この手法を使用すると、相関器の出力の時間による変化は、最大ピークに達するまでだんだん高さが高くなる一連の狭いピークに続いてだんだん高さが低くなる一連の狭いピークという形状を有する。この方法は、最大ピークが確実に識別されるのに十分な小さい時間ステップでサンプリング動作を行うのにはコストがかかるという欠点を有する。
【0006】
信号にロックオンする代替のやり方は、「サイドバンド」として知られている、エネルギーが集中している2つの周波数帯域の一方または他方に存在する、BOC信号のコンポネントに相関をただ行うことである。上側サイドバンドの中心は、周波数が、オリジナルサブキャリア信号の周波数と等しい量だけ、BOC信号全体の中心からずれている。下側サイドバンドの中心は、周波数が、オリジナルサブキャリア信号の負の周波数と等しい量だけ、BOC信号全体の中心からずれている。BOC信号の上側サイドバンドのみの抽出は、デジタルダウンコンバータ(DDC)により達成することができる。これは、BPSK信号と同様の、相関器に入力する信号をもたらし、レンジングコードのBPSKの形状は、相関器の参照信号として使用される。「単一のサイドバンド」方法と呼ばれるこの方法を用いると、相関器の出力は、BPSK信号の場合と同一の形状を有し、それは、ピークに向かって直線状に高まり、そして、直線状に低下する。相関出力の正確なピークの時間を、この方法を用いて正確に推定するのは、より難しい。結果として、この方法を用いて得られる信号の到達時間の推定値は、かなり大まかである。
【0007】
他の知られている方法は、着信信号を修正しこの修正された信号を処理し、着信信号と修正信号の間の時間遅延についての情報を抽出しそれによって改良された到達時間の推定値を得ようとすることを含む。そのような方法は、複雑で、比較的大きな処理能力を要し、とても高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3104195号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Herve GUICHON, et al., “ACQUISITION OF BOC SIGNAL IN PRESENCE OF MULTIPATH”
【非特許文献2】Vincent Heiries, et al., “Analysis of Non Ambiguous BOC Signal Acquisition Performance”
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
信号の到達時間を正確に決定する代替方法が以下で考案されている。
【0011】
本発明の第1の態様によると、受信機での着信衛星信号の到達時間を決定する方法が提供される。この方法は:着信信号を受信するステップと、着信信号に第1の実数値の周期的修正信号を乗じて第1の修正された出力を生成するステップと、第1の修正された出力を相関させて第1の相関出力を得るステップと、着信信号に第2の実数値の周期的修正信号を乗じて第2の修正された出力を生成するステップと、第2の修正された出力を相関させて第2の相関出力を生成するステップと、第1の相関出力と第2の相関出力を比較するステップとを備える。
【0012】
この方法は、第1の相関出力と第2の相関出力を比較することによって、信号の到達時間の正確な推定値を、知られている方法よりも少ない処理能力を用いて得ることが可能になるので、有利である。特に、実数値の信号を乗じることは、複素数値の信号を乗じることよりも、複雑でなく、低コストである。
【0013】
第1の相関出力と第2の相関出力を比較するステップは、第1の相関出力と第2の相関出力の比を計算することを備えてもよく、第1の相関出力と第2の相関出力の比に比例する角度の逆正接を計算することを備えてもよい。
【0014】
着信信号の第1の部分に第1の実数値の周期的修正信号を乗じるステップ、および/または、着信信号の第2の部分に第2の実数値の周期的修正信号を乗じるステップは、着信信号の第1の部分および/または第2の部分それぞれにビットストリームを適用することを備える。ビットストリームは、+1または−1のどちらかの値を有する複数のビットを備えてもよい。このことによる利益は、方法を簡単な装置を使用して行うことができること、および低い処理能力のみが要求されることである。
【0015】
第1の相関出力および/または第2の相関出力は、着信信号と第1の修正信号および/または第2の修正信号それぞれの間の時間遅延によって、正弦波状に変化しうる。
【0016】
着信信号は、識別子信号を含みうる。第1の修正された出力および第2の修正された出力を相関させるステップは、識別子信号と同一の形状を有する相関参照信号を用いることを備えうる。識別子信号は、レンジングコードを備えうる。着信信号は、識別子信号により変調されたサブキャリア信号を備えうる。サブキャリア信号は、周期的であってもよく、識別子信号より高周波数であってもよい。サブキャリア信号は、一般に、矩形波の形状を有しうる。識別子信号は、BPSK信号を備えうる。着信信号は、BOC信号でありうる。受信した着信信号は、第1の実数値の周期的乗算信号および第2の実数値の周期的乗算信号を乗じる前に、復調されうる。
【0017】
第1の実数値の修正信号は、第2の実数値の修正信号に対して、知られている関係を有しうる。第1の実数値の修正信号は、第2の実数値の修正信号と同様の形でありうる。第1の修正信号と第2の修正信号の間に、予め定められた時間遅延が存在しうる。第1の修正信号は、サイン相でありうる。第2の修正信号は、コサイン相でありうる。第1の修正信号および/または第2の修正信号は、着信信号のコンポネント信号と同様のまたは実質的に等しい周波数を有しうる。着信信号のコンポネントは、サブキャリア信号でありうる。
【0018】
第1の周期的修正信号および第2の周期的修正信号は、実数値のバイナリ(二値の)またはターナリ(三値の)信号でありうる。これは、乗算演算の実行を簡単にしうるし、その結果、消費電力は少なくなる。本発明のさらなる利点は、相関演算の間、相関のピーク値の時間遅延を正確に識別することが必要でないことである。ピークから離れた位置にある第1の相関器の出力および第2の相関器の出力の値は、修正信号に対して着信信号の到達時間への相対的依存が同一であり、たとえば、第1の相関器の出力と第2の相関器の出力の比は、ピークでの比とピークから離れた比が実質的に同一である。
【0019】
着信信号に、第1の修正信号および第2の修正信号を、実質的に同時に乗じてもよい。第1の修正された出力を相関させるステップと第2の修正された出力を相関させるステップは、実質的に同時に行ってもよい。
【0020】
本方法は、GNSS衛星位置決めシステムで使用されうる。
【0021】
本発明のさらなる態様によると、受信機での信号の到達時間を決定する装置であって、着信信号を受信する受信機と、着信信号に第1の実数値の周期信号を乗じる第1の乗算器と、第1の乗算器の出力を相関させるように配置された第1の相関器と、着信信号に第2の実数値の周期信号を乗じる第2の乗算器と、第2の乗算器の出力を相関させるように配置された第2の相関器と、第1の相関器と第2の相関器のそれぞれの出力を比較する手段とを有する、決定する装置を提供する。
【0022】
装置は、本発明の第1の態様の方法を行うように構成されうる。第1の乗算器および第2の乗算器は、第1の実数値の周期信号および/または第2の実数値の周期信号がバイナリ(2値の)またはターナリ(3値の)信号であるように構成されうる。第1の乗算器および第2の乗算器は、同一のユニットに配置されうる。
【0023】
第1の乗算器は、第1の実数値の周期信号がコサイン相であるように構成されうる。第2の乗算器は、第2の周期信号がサイン相であるように構成されうる。相関器の出力を比較する手段は、着信信号と実数値の周期信号の間の時間遅延を示す出力を生成するように構成されうる。
【0024】
装置は、使用中に、復調器からの出力である信号が、第1の乗算器および第2の乗算器の入力に与えられるように配置されうる。第1の相関器および/または第2の相関器は、相関器の参照信号としてBPSK信号を使用しうる。比較手段は、第1の相関器の出力と第2の相関器の出力の比を計算するように構成されて配置された計算機を備えうる。計算機は、第1の相関器の出力と第2の相関器の出力の比に比例する角度の逆正接を計算するように構成されうる。
【0025】
本発明の現在好ましい実施形態は、例示のみのために、添付の図面を参照してこれから詳細を記述する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】典型的なBOC信号およびその構成信号のプロットである。
図2】本発明の装置の概略図である。
図3】本発明による装置によって行われる方法のステップの流れ図である。
図4】典型的なBPSK信号の場合の時間オフセットに対する相関振幅のプロットである。
図5】コサイン相の周期信号およびサイン相の周期信号を乗じた着信信号の場合の時間オフセットに対する相関振幅のプロットである。
図6】着信信号と与えられる周期信号の間の時間遅延が異なる図5のプロットである。
図7】相関振幅が、着信BOC信号と与えられる周期信号の間の時間遅延によってどのように変化するかを示す概略プロットである。
図8】BOC信号と周期関数の間のある異なる時間遅延での、BOC信号と周期関数の乗算の結果を示す図である。
図9】BOC信号と周期関数の間のある異なる時間遅延での、BOC信号と周期関数の乗算の結果を示す図である。
図10】BOC信号と周期関数の間のある異なる時間遅延での、BOC信号と周期関数の乗算の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、GNSS衛星位置決めシステムの改良に関する。上述したように、GNSSなどのシステムは、地球上の受信機の位置の正確な決定を必要とする。これを達成するために、受信機での衛星信号の到達時間は、正確に決定されなければならない。衛星によって送られる信号は、衛星からの信号の送信の時間を含む情報を含む。衛星によって送信されるいくつかの信号に、情報が一連の矩形波(チップ)にBPSK変調されたBPSK信号がある。もたらされたBPSK信号は、チップの繰り返しパターンを備える。繰り返しパターンの一部は、受信機によって知られている。チップの各パターンのこの知られる部分は、信号を識別し追跡するように、受信機によって使用される。
【0028】
衛星によって送信される他の信号に、送信に先立ってBPSK信号に「サブキャリア」信号を乗じたBOC信号もある。「BOC変調」で、サブキャリア信号は、実質的に、BPSKのチップレートより高い周波数の矩形波である。この乗算演算は、BOC信号をもたらす。BOC信号は、無線周波数キャリア信号を変調するのに用いられる。このRF信号は、衛星によって送信される。図1は、典型的なBOC信号3、ならびにその構成信号であるサブキャリア1およびBPSK信号2を示す。
【0029】
上述したように、BPSK信号は、チップを備える。各チップは、+1または−1の値を有する。図1の下のトレースによって表されたBOC信号について考える。このBOC信号は、3つの部分を有する。第1の部分は、−1の値のBPSKチップによって変調されたサブキャリア信号である。これに、+1の値のBPSKチップによって変調されたサブキャリア信号である第2の部分が続く。これに、−1の値のBPSKチップによって変調されたサブキャリア信号である第2の部分が続く。
【0030】
受信機は、図2に、概略的に示されている。全体が4として示される受信機は、アンテナ5を通じて、RFキャリア信号を受信する。次いで、復調動作が、復調器6によって行われ、その結果、これ以降「BOC信号」と称される送信されたオリジナルBOC信号と同様の信号をもたらす。乗算器8は、信号7にサブキャリア信号と同一のまたは同様の周波数を有する実数値のコサイン相の周期関数を乗じて、第1の出力信号を生成する。この出力信号は、明細書で、コサイン出力と称される。同時に、乗算器9は、信号7に、サブキャリア信号と同一のまたは同様の周波数を有する実数値のサイン相の周期関数を乗じて、第2の出力信号を生成する。この出力信号は、明細書で、サイン出力と称される。コサイン出力およびサイン出力のそれぞれの時間による変化は、BOC信号と実数値のコサイン相の周期関数および実数値のサイン相の周期関数の間の時間遅延、すなわち、BOC信号のピークとトラフの時間的な位置に対する周期関数のピークとトラフの時間的な位置に依存する。コサイン出力は、第1の相関器10に与えられる。同時に、サイン出力は、第2の相関器11に与えられる。
【0031】
第1の相関器10および第2の相関器11は、従来の相関器であり、すなわち、低い信号対雑音比が存在しうるということに関わらず、信号の知られている部分の時間的な位置を見つけることを目的としている。第1の相関器10および第2の相関器11のそれぞれは、参照信号として、オリジナルBPSK信号を用いる。第1の相関器10および第2の相関器11のそれぞれは、1つの繰り返しチップパターンの間、時間間隔で、入力信号の振幅を測定する。各測定された振幅に、対応する時間間隔で、入力信号が比較されている参照信号の振幅を乗じる。次いで、乗算の結果は、合計される。合計のサイズは、入力信号が参照信号にどれくらい一致するかの指標である。この測定および合計のプロセスは、前回の一連の測定が行われた対応する時点からオフセットされた時点で測定を行う状態で、次の繰り返しチップパターンで繰り返すことができる。このようにして、相関プロセスは、繰り返しチップパターンに沿って知られている部分を探す。
【0032】
特定の時間オフセットでの合計が、前回の時間オフセットでの合計より大きい値なら、プロセスは、知られている部分に近づいている。相関プロセスを繰り返すことによって、合計のピーク値に達するまで、合計の値はだんだん大きくなる。ピーク値に達するということは、知られている部分に一番近い時間オフセットで合計が行われていることを意味する。プロセスが知られている部分を「通過している」とき、それでもさらに大きな時間オフセットで相関を行うと、合計の値は小さくなる。例を挙げると、相関器で、参照信号と同一の信号を用いてBPSK信号を相関させると、図4に示すように、時間遅延に応じて相関出力に「三角形」のピークが生じる。
【0033】
上述したように、本発明で、BOC信号に、実数値の周期信号を乗じる。3つのトレースを示す図8について考える。上のトレースは、実数値の周期信号を表す。真ん中のトレースは、図1の着信BOC信号、すなわちBPSK信号を乗じたオリジナルサブキャリア信号を表す。明確にするために、BOC信号を生成するBPSK信号は、図8でBOC信号に重畳した点線で示す。BOC信号は、3つの別個の部分を有する。ほぼt=0とt=1の間の第1の部分は、BPSK信号の+1の値を有する部分が乗ぜられたサブキャリア信号の結果である。ほぼt=1とt=2の間の第2の部分は、BPSK信号の−1の値を有する部分が乗ぜられたサブキャリア信号の結果である。ほぼt=2とt=3の間の第3の部分は、BPSK信号の+1の値を有する部分が乗ぜられたサブキャリア信号の結果である。下のトレースは、周期信号(上のトレース)と着信BOC信号(真ん中のトレース)の乗算の結果を示す。
【0034】
周期信号とBOC信号の間の時間遅延は、BOC信号の第1の部分および第3の部分のピークが、周期信号のピークと時間的にほぼ整列するようになっている。さらに、BOC信号の第2の部分のピークは、周期信号のトラフと時間的にほぼ整列する。これは、BOC信号に周期信号を乗じると、図8の下のトレースが生成されることを意味する。この下のトレースは、BPSK信号(真ん中のトレースに重畳する点線)と形が類似している。相関器が、参照信号としてBPSK信号を用いるとき、相関器を通じて下のトレースを通すと、大きな正の結果が生成される。
【0035】
図9および図10は、図8と同一の3つのトレースを示すが、図9および図10の周期信号と着信BOC信号の間の時間遅延は、図8とかつ互いに異なる。図9で、時間遅延は、BOC信号の第1の部分および第3の部分のピークは、周期信号のトラフと時間的にほぼ整列するようになっている。さらに、BOC信号の第2の部分のピークは、周期信号のピークと時間的にほぼ整列する。これは、BOC信号に周期信号を乗じると、図9の下のトレースが生成されることを意味する。この下のトレースは、BPSK信号(真ん中のトレースに重畳する点線)と形がほぼ反対である。相関器が、参照信号としてBPSK信号を用いるとき、相関器を通じて下のトレースを通すと、大きな負の結果が生成される。
【0036】
図10で、周期信号とBOC信号の間の時間遅延は、BOC信号の第1の部分および第3の部分のピークが、周期信号のピークから、時間的に、わずかにオフセットするようになっている。さらに、BOC信号の第2の部分のピークは、周期信号のトラフから、時間的に、わずかにオフセットされている。これは、BOC信号に周期信号を乗じると、図10の下のトレースが生成されることを意味する。図10のこの下のトレースは、3つの部分を有する。ほぼt=0とt=1の間の第1の部分で、+1の値は、−1の値より頻繁に発生する。+1の値は、時間のうちX%で発生すると言える。ここで、Xは、50より大きい。ほぼt=1とt=2の間の第2の部分で、−1の値は、時間のうちX%で、したがって+1より頻繁に発生する。第3の部分は、第1の部分と同一の形状を有する。相関器は、参照信号としてBPSK信号を用いるとき、相関器を通じて下のトレースを通すと、正の結果が生成される。しかし、結果の大きさは、図8より小さく、実際、図8の大きさのX%である。
【0037】
したがって、相関出力のサイズは、BOC信号と周期信号の間の時間遅延に依存すると把握することができる。本発明は、この依存を活用して、BOC信号と周期信号の間の時間遅延を決定し、したがって、受信機でのBOC信号の到達時間を正確に決定する。ピークの相関出力は、着信BOC信号と実数値の周期関数の間の時間遅延によって変化する。
【0038】
上述したように、本発明の方法で、着信BOC信号の一部に、コサイン相の周期関数を乗じ、BOC信号の同じ部分に、サイン相の周期関数を乗じる。各出力を相関させると、異なる結果が生まれる。これは、サイン相の信号のピークおよびトラフは、コイン相の信号のピークおよびトラフからオフセットされているから、2つの乗算演算は、異なる結果を生むためである。図5は、コサイン相の周期関数を乗じたBOC信号の場合の相関器の出力(下のトレース)およびサイン相の周期関数を乗じたBOC信号の場合の相関器の出力(上のトレース)を示す。
【0039】
相関器の出力は両方、着信BOC信号とそれぞれの周期信号の間の時間遅延によって変化する。このことを、図5の場合よりも、信号が、サブキャリア期間の1/16の時間遅く到達する場合の相関器の出力を示す図6に示す。下のプロットは、第1の相関器10の結果を示し、上のプロットは、第2の相関器11の結果を示す。図5および図6に示すプロットの線は、直線なので、上のプロットと下のプロットの大きさの比は、水平軸上の位置に依存しない。着信信号の周期信号に対する時間遅延は、上のプロットと下のプロットの大きさの比を用いて、計算される。したがって、この時間遅延は、サイン相関出力およびコサイン相関出力が相関のピークから離れているとしても、これら出力を用いて正確に計算することができる。正確な相関のピークを見つけることは必要ではない。
【0040】
図7は、着信信号と与えられた周期信号の間の時間遅延によって、どのようにピークの相関出力が変化するかを示す。曲線の1つは、コサイン相の周期関数を用いた、ピークの相関出力を示し、他方は、サイン相の周期関数を用いた、ピークの相関出力を示す。両方の曲線は、実質的に正弦波の遅延依存を有することが把握できる。実数値のサイン相の信号および実数値のコサイン相の信号は、相互に、知られている関係を有するので、相関器の出力の値を比較することによって、時間遅延を計算することが可能になる。特に、時間遅延は、第1の相関器の出力と第2の相関器の出力の比の逆正接に比例する。
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
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図10