特許第6706582号(P6706582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司の特許一覧 ▶ 中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706582
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】オレフィン重合用の触媒成分の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   C08F4/654
【請求項の数】33
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2016-565201(P2016-565201)
(86)(22)【出願日】2015年4月29日
(65)【公表番号】特表2017-514946(P2017-514946A)
(43)【公表日】2017年6月8日
(86)【国際出願番号】CN2015077844
(87)【国際公開番号】WO2015165405
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2018年3月13日
(31)【優先権主張番号】201410176103.3
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201410177203.8
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201410176105.2
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201410176229.0
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201410177192.3
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201410176179.6
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201410177228.8
(32)【優先日】2014年4月29日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】510016575
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司北京化工研究院
【氏名又は名称原語表記】BEIJING RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY,CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】王世波
(72)【発明者】
【氏名】周俊領
(72)【発明者】
【氏名】劉東兵
(72)【発明者】
【氏名】張磊
(72)【発明者】
【氏名】呂新平
(72)【発明者】
【氏名】毛炳権
(72)【発明者】
【氏名】劉振杰
(72)【発明者】
【氏名】周▲しん▼
(72)【発明者】
【氏名】張長礼
(72)【発明者】
【氏名】▲しん▼宝泉
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第101407561(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102875707(CN,A)
【文献】 特開昭58−032604(JP,A)
【文献】 特開昭54−040293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/60−4/70
C08F 10/00−10/14
C08F 110/00−110/14
C08F 210/00−210/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機エポキシ化合物を含有するハロゲン化マグネシウム溶液を、ハロゲン含有化合物と混合して固形物を析出させることにより得られる、オレフィン重合用の触媒成分であって、
前記有機エポキシ化合物が、式Iで示される3員環エポキシ化合物であり
【化4】
(式I中、R及びRは、独立してH又はC〜C10ヒドロカルビル若しくはハロゲン化ヒドロカルビルから選択され、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよい);又は前記有機エポキシ化合物が、4〜8員環エポキシ化合物であり、
前記ハロゲン含有化合物が、ハロゲン及びチタン含有化合物、ハロゲン化有機炭化水素化合物、ハロゲン化アシル化合物、ハロゲン及びリン含有化合物、ハロゲン及びホウ素含有化合物、ハロゲン化有機アルミニウム化合物、並びにハロゲン及びケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み、
前記ハロゲン化マグネシウム溶液が、無水ハロゲン化マグネシウムを、酸素含有有機チタン化合物、前記有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒を含むが、ホスファート化合物を含まない混合溶媒に溶解することにより形成される、触媒成分。
【請求項2】
前記ハロゲン化マグネシウム溶液が、前記無水ハロゲン化マグネシウムを、前記酸素含有有機チタン化合物、前記有機エポキシ化合物、前記ヒドロキシ含有化合物、及び前記不活性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより形成される、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項3】
前記ハロゲン化マグネシウムが、式MgXで示される通りであり、式中、Xはハロゲンであり、前記酸素含有有機チタン化合物が、式Ti(OR4−nで示される通りであり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、0<n≦4であり、Xはハロゲンであり、
前記ヒドロキシ含有化合物が、式HORで示されている通りであり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、
前記不活性溶媒が、C〜C100脂肪族炭化水素又はハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素又はハロゲン化芳香族炭化水素であり、飽和又は不飽和鎖の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよい、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項4】
前記不活性溶媒が、C〜C20炭化水素化合物である、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項5】
前記ハロゲン化マグネシウムが、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記酸素含有有機チタン化合物が、チタナート化合物及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記ヒドロキシ含有化合物が、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、フェノール及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記不活性溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブタン、イソブタン、イソペンタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項6】
前記酸素含有有機チタン化合物が、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、及びチタン酸テトライソオクチルからなる群から選択される少なくとも1つであり、
前記ヒドロキシ含有化合物が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、イソオクタノール、ベンジルアルコール、及びフェネチルアルコールからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項7】
1モル当りのハロゲン化マグネシウムに基づいて算出すると、
前記酸素含有有機チタン化合物が、0.01〜2.0モルであり、
前記有機エポキシ化合物が、0.01〜10モルであり、
前記ヒドロキシ含有化合物が、0.01〜20モルであり、
前記ハロゲン含有化合物が、0.1〜100モルである、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項8】
1モル当りのハロゲン化マグネシウムに基づいて算出すると、
前記酸素含有有機チタン化合物が、0.1〜1.5モルであり、
前記有機エポキシ化合物が、0.1〜6.5モルであり、
前記ヒドロキシ含有化合物が、0.1〜15モルであり、
前記ハロゲン含有化合物が、0.5〜50モルである、請求項1に記載の触媒成分。
【請求項9】
前記有機エポキシ化合物が、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ブタジエンオキシド、ブタジエンジオキシド、エポキシクロロプロパン、メチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、及びテトラヒドロフランからなる群から選択される1つ以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒成分。
【請求項10】
前記ハロゲン及びチタン含有化合物が、式Ti(OR4−nで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、0≦n≦3であり、Xはハロゲンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒成分。
【請求項11】
前記ハロゲン及びチタン含有化合物が、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、塩化トリエトキシチタン、二塩化ジエトキシチタン、及び三塩化エトキシチタンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載の触媒成分。
【請求項12】
前記ハロゲン及びチタン含有化合物が、四塩化チタン、四臭化チタン、及び四ヨウ化チタンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項10に記載の触媒成分。
【請求項13】
前記ハロゲン化有機炭化水素化合物が、式RXで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、Xはハロゲンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒成分。
【請求項14】
前記ハロゲン化有機炭化水素化合物が、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、クロロ−t−ブタン、ブロモ−t−ブタン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、及び1,1−ジクロロプロパンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項13に記載の触媒成分。
【請求項15】
前記ハロゲン化アシル化合物が、式RCOXで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又は水素であり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、Xはハロゲンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒成分。
【請求項16】
前記ハロゲン化アシル化合物が、フッ化アシル化合物、塩化アシル化合物、臭化アシル化合物、及びヨウ化アシル物化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項15に記載の触媒成分。
【請求項17】
前記ハロゲン化アシル化合物が、塩化アシル化合物である、請求項15に記載の触媒成分。
【請求項18】
前記ハロゲン及びリン含有化合物が、式OPR3−qで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20アルキル又はアルコキシであり、0≦q<3であり、p=0又は1であり、Xはハロゲンであり;又は、前記ハロゲン及びリン含有化合物が五塩化リンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒成分。
【請求項19】
前記ハロゲン及びリン含有化合物が、メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、ブチルジクロロホスフィン、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、ジクロロリン酸メチル、ジクロロリン酸エチル、及びジクロロリン酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項18に記載の触媒成分。
【請求項20】
前記ハロゲン及びリン含有化合物が、三塩化リン、五塩化リン、及びオキシ塩化リンからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項18に記載の触媒成分。
【請求項21】
前記ハロゲン及びホウ素含有化合物が、式BR3−qで示される通りであり、式中、Rは、C〜C20アルキル又はアルコキシであり、0≦q<3であり、Xはハロゲンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒成分。
【請求項22】
前記ハロゲン及びホウ素含有化合物が、二塩化メチルホウ素、二塩化エチルホウ素、二塩化ブチルホウ素、二塩化メトキシホウ素、二塩化エトキシホウ素、三塩化ホウ素、及び二塩化ブトキシホウ素からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項21に記載の触媒成分。
【請求項23】
前記ハロゲン化有機アルミニウム化合物が、式AlR3−nで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、0.5≦n≦2.5であり、Xはハロゲンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒成分。
【請求項24】
前記式中、Rは、6つ以下の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビルである、請求項23に記載の触媒成分。
【請求項25】
前記ハロゲン化有機アルミニウム化合物が、二塩化エチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、及び二塩化イソブチルアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項23に記載の触媒成分。
【請求項26】
前記ハロゲン及びケイ素含有化合物が、式(RO)SiR4−n−qで示される化合物であり、式中、R及びRは、C〜C20ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビルから独立して選択され、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、q及びnは各々、0又は正の数であり、0≦q+n≦3であり、Xはハロゲンである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の触媒成分。
【請求項27】
前記ハロゲン及びケイ素含有化合物が、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、三塩化エトキシケイ素、三塩化フェニルケイ素、三塩化メチルケイ素、三塩化エチルケイ素、二塩化ジメトキシケイ素、二塩化メチルメトキシケイ素、及び二塩化メチルフェノキシケイ素からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項26に記載の触媒成分。
【請求項28】
前記ハロゲン及びケイ素含有化合物が、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、三塩化エトキシケイ素、及び三塩化フェニルケイ素からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項26に記載の触媒成分。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれか一項に記載の触媒成分を調製するための方法であって、
まず無水ハロゲン化マグネシウムを、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒を含むが、ホスファート化合物を含まない混合溶媒に溶解して、ハロゲン化マグネシウム溶液を形成する工程と;
次いで前記ハロゲン化マグネシウム溶液をハロゲン含有化合物と混合して固形物を析出させ、前記触媒成分を得る工程とを含み、
前記有機エポキシ化合物が、式Iで示される3員環エポキシ化合物であり、
【化5】
(式I中、R及びRは、独立してH又はC〜C10ヒドロカルビル若しくはハロゲン化ヒドロカルビルから選択され、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよい);又は、前記有機エポキシ化合物が、4〜8員環エポキシ化合物であり、
前記ハロゲン含有化合物が、ハロゲン及びチタン含有化合物、ハロゲン化有機炭化水素化合物、ハロゲン化アシル化合物、ハロゲン及びリン含有化合物、ハロゲン及びホウ素含有化合物、ハロゲン化有機アルミニウム化合物、並びにハロゲン及びケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む方法。
【請求項30】
前記ハロゲン化マグネシウム溶液が、無水ハロゲン化マグネシウムを、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより形成される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
以下の成分の反応生成物を含む、オレフィン重合用の触媒:
(a)請求項1〜28のいずれか一項に記載の触媒成分、
(b)式AlR3−mで示され、式中、Rが水素又はC〜C20ヒドロカルビルであり、Xがハロゲンであり、mが0<m≦3である、少なくとも1つの有機アルミニウム化合物。
【請求項32】
ハロゲン含有化合物と混合して固形物を析出させることにより、オレフィン重合用の触媒成分を調製するためのプロセスに使用されるハロゲン化マグネシウム溶液系であって、
前記ハロゲン化マグネシウム溶液系の溶媒は、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒を含む混合溶媒であり、
前記有機エポキシ化合物が、式Iで示される3員環エポキシ化合物であり、
【化6】
(式I中、R及びRは、独立してH又はC〜C10ヒドロカルビル若しくはハロゲン化ヒドロカルビルから選択され、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよい);又は前記有機エポキシ化合物が、4〜8員環エポキシ化合物であり、
前記ハロゲン化マグネシウム溶液系がホスファート化合物を含まない、ハロゲン化マグネシウム溶液系。
【請求項33】
前記ハロゲン化マグネシウム溶液系の溶媒が、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒からなる混合溶媒である、請求項32に記載のハロゲン化マグネシウム溶液系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年4月29日に出願された中国特許出願第CN201410176103.3号、中国特許出願第201410177203.8号、中国特許出願第201410176105.2号、中国特許出願第201410176229.0号、中国特許出願第201410177192.3号、中国特許出願第201410176179.6号、及び中国特許出願第201410177228.8号の優先権を主張するものであり、これら文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、オレフィン重合用の触媒調製の技術分野に属する。本発明は、オレフィン重合用の触媒成分を調製するための方法に関する。更に、本発明は、オレフィン重合又は共重合用の触媒成分、及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
オレフィン重合技術の開発と共に、重合技術で使用される触媒には大きな進歩が見られる。高効率触媒は、重合特性が良好であり、応用技術が成熟しているため、オレフィン重合用の触媒に依然として重要な役割を果たしている。新しい構造のポリオレフィン樹脂の開発及び生産に益々多くの注目が集まっており、オレフィン重合触媒の広範な特性に対しての要求が益々厳しくなっている。触媒は、処理装置に適合するだけでなく、樹脂の構造を調整及び制御可能であることも必要である。長年にわたる調査及び研究者により、Mg−Ti系高効率触媒が、そのような応用に好適であることが示されている。
【0004】
現在、Mg−Ti系高効率触媒は、主に溶解析出法、すなわち、まずマグネシウム化合物を溶媒に溶解し、次いで析出させることにより調製される。例えば、特開昭54−40293号には、チタナートと共にマグネシウム化合物を溶解することが開示されており、特開昭56−811号及び特開昭58−83006号には、アルコール、アルデヒド、アミン、カルボン酸と共にマグネシウム化合物を溶解すること開示されており、特開昭58−19307号には、有機リン化合物と共にマグネシウム化合物を溶解することが開示されており、特開昭58−183708号には、有機エポキシ化合物及び有機リン化合物(ホスファート化合物)の混合物と共にマグネシウム化合物を溶解することが開示されている。
【0005】
マグネシウム化合物を溶解するための上記溶液は、粉砕方法の欠点をある程度まで排除することができるが、それらには、依然として改善の余地があると考えられる。例えば、特開昭54−40293号、特開昭58−19307号、及び特開昭58−183708号では、マグネシウム化合物の溶液から析出物として分離された触媒をオレフィン重合に使用する場合、その触媒活性は、比較的低く、重合の継続と共に明らかに低下し、得られるポリマーの容積密度も低い。
【0006】
加えて、Mg−Ti系高効率触媒は、有機マグネシウム金属化合物、塩素化剤、及び遷移金属チタン化合物等の化学物質を使用して様々なタイプの触媒を調製する化学反応法によっても調製される。そのような方法は、中国特許第1158136号、中国特許第1299375号、中国特許第1795213号、並びに米国特許第3787384号、米国特許第4148754号、米国特許第4173547号、米国特許第4508843号、及び米国特許第5124296号に開示されている。そのようなMg−Ti触媒の性能は容易に調節することができるものの、得られる触媒は、良好な粒子形態ではなく、広い分布を示し、多峰分布を示すことさえあり、重合プラントの長期的な安定操業にとって好ましくない。
【0007】
上記を鑑みると、活性が高く、活性低下が遅く、水素レスポンスが良好であり、重合プラントの長期的な安定操業に貢献するオレフィン重合触媒成分を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の欠点に対処するために、オレフィン重合用の触媒成分を調製するための方法を提供することを目的とする。本方法により調製されるオレフィン重合用の触媒成分は、重合活性が高く、活性低下速度が遅く、良好な水素レスポンスを示し、重合プラントの長期的な安定操業に貢献する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の発明者らは、触媒成分及びそれらの活性について鋭意研究を実施した。本発明の発明者らは、数多くの実験により、触媒調製中の溶解及び析出に好適なハロゲン化マグネシウム系を選択することにより、オレフィン重合又は共重合に好適な触媒系を得ることができること見出した。そのような触媒系は、重合活性が非常に高く、重合動力学が安定しており、活性低下速度が遅く、水素レスポンスが良好である。この触媒は、良好な粒子形態及び狭域な粒度分布を有するため、良好な粒子形態、狭域な粒度分布、わずかな微細粉末、及びポリマーの大きな容積密度がもたらされる。これは、重合プラントの長期的な安定操業に貢献し、3つ以上の炭素を有するオレフィンのポリマーが、非常に高い立体規則性を有する。加えて、触媒の合成は、原料の消費が低いこと、装置の稼働率が高いこと、操作が容易なこと、及び環境にやさしいこと等の利点を有する。本発明は、上記の知見に基づくものである。
【0010】
1つの態様では、本発明は、オレフィン重合用の触媒成分を提供する。この触媒成分は、有機エポキシ化合物を含有するハロゲン化マグネシウム溶液を、ハロゲン含有化合物と混合して固形物を析出させることにより得られ、有機エポキシ化合物は、式Iで示される3員環エポキシ化合物であり、
【0011】
【化1】

式I中、R及びRは、独立してH又はC〜C10ヒドロカルビル若しくはハロゲン化ヒドロカルビルから選択され、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく;又は有機エポキシ化合物は、4〜8員環エポキシ化合物であり;ハロゲン含有化合物は、ハロゲン及びチタン含有化合物、ハロゲン化有機炭化水素化合物、ハロゲン化アシル化合物、ハロゲン及びリン含有化合物、ハロゲン及びホウ素含有化合物、ハロゲン化有機アルミニウム化合物、並びにハロゲン及びケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み;ハロゲン化マグネシウム溶液は、無水ハロゲン化マグネシウムを、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒を含む混合溶媒に溶解することにより形成される。
【0012】
本発明によると、ハロゲン化マグネシウム溶液は、無水ハロゲン化マグネシウムを、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより形成される。
【0013】
上述のように、本発明の発明者らは、数多くの実験により、触媒調製中の溶解及び析出に好適なハロゲン化マグネシウム系を選択することにより、オレフィン重合又は共重合に好適な触媒系を得ることができること見出した。更に、本発明の本発明者らは、意外にも、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒を含有する混合溶媒、好ましくは、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒からなる混合溶媒を使用することにより、無水ハロゲン化マグネシウムを完全に溶解して、均一なハロゲン化マグネシウム溶液を形成することができることを見出した。更に、オレフィン重合又は共重合用の触媒成分は、形成されたハロゲン化マグネシウム溶液を、ハロゲン含有化合物と混合し、次いで固形物を析出させることにより得ることができる。この触媒成分は、重合活性が非常に高く、重合動力学が安定しており、活性低下速度が遅く、水素レスポンスが良好である。また、この触媒は、良好な粒子形態及び狭域な粒度分布を有するため、良好な粒子形態、狭域な粒度分布、わずかな微細粉末、及びポリマーの大きな容積密度がもたらされる。これは、重合プラントの長期的な安定操業に貢献し、3つ以上の炭素を有するオレフィンのポリマーは非常に高い立体規則性を有する。
【0014】
本発明の1つ以上の実施形態では、ハロゲン化マグネシウムは、式MgXで示される通りであり、式中、Xはハロゲンであり;酸素含有有機チタン化合物は、式Ti(OR4−nで示される通りであり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、0<n≦4であり、Xはハロゲンであり;ヒドロキシ含有化合物は、式HORで示されている通りであり、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく;不活性溶媒は、C〜C100脂肪族炭化水素又はハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素又はハロゲン化芳香族炭化水素であり、飽和又は不飽和鎖の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく;好ましくは不活性溶媒は、C〜C20炭化水素化合物である。
【0015】
本発明の1つ以上の実施形態では、ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され;酸素含有有機チタン化合物は、チタナート化合物及びそれらの混合物からなる群から、好ましくは、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、及びチタン酸テトライソオクチルからなる群から選択され;ヒドロキシ含有化合物は、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、又はフェノールからなる群から、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、イソオクタノール、ベンジルアルコール、及びフェネチルアルコールからなる群から選択され;不活性溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブタン、イソブタン、イソペンタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
本発明では、1モル当りのハロゲン化マグネシウムに基づいて算出すると、酸素含有有機チタン化合物は、0.01〜2.0モル、好ましくは0.1〜1.5モルであり、 有機エポキシ化合物は、0.01〜10モル、好ましくは0.1〜6.5モルであり、ヒドロキシ含有化合物は、0.01〜20モル、好ましくは0.1〜15モルであり、ハロゲン含有化合物は、0.1〜100モル、好ましくは0.5〜50モルである。
【0017】
本発明では、有機エポキシ化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ブタジエンオキシド、ブタジエンジオキシド、エポキシクロロプロパン、メチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、及びテトラヒドロフランからなる群から選択される1つ以上である。
【0018】
本発明の1つ以上の実施形態では、ハロゲン及びチタン含有化合物は、式Ti(OR4−nで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、0≦n≦3であり、Xはハロゲンである。ハロゲン及びチタン含有化合物は、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、塩化トリエトキシチタン、二塩化ジエトキシチタン、及び三塩化エトキシチタンからなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは、ハロゲン化マグネシウムは、四塩化チタン、四臭化チタン、及び四ヨウ化チタンからなる群から選択される。
【0019】
本発明の1つ以上の実施形態では、ハロゲン化有機炭化水素化合物は、式RXで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、Xはハロゲンである。ハロゲン化有機炭化水素化合物は、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、クロロ−t−ブタン、ブロモ−t−ブタン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、及び1,1−ジクロロプロパンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0020】
本発明によると、ハロゲン化アシル化合物は、式RCOXで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又は水素であり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、Xはハロゲンである。ハロゲン化アシル化合物は、フッ化アシル物化合物、塩化アシル化合物、臭化アシル化合物、及びヨウ化アシル物化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み、好ましくは、ハロゲン化アシル化合物は、塩化アシル化合物である。
【0021】
本発明の1つ以上の実施形態では、塩化アシル化合物は、式RCOClで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又は水素であり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよい。塩化アシル化合物は、塩化ホルミル、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル、二塩化フタロイル、塩化フェニルアセチル、塩化フェニルプロピオニル、及び塩化フェニルブチリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0022】
本発明の1つ以上の実施形態では、ハロゲン及びリン含有化合物は、式OPR3−qで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20アルキル又はアルコキシであり、0≦q<3であり、p=0又は1であり、Xはハロゲンであり、又はハロゲン及びリン含有化合物は、五塩化リンである。ハロゲン及びリン含有化合物は、メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、ブチルジクロロホスフィン、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、ジクロロリン酸メチル、ジクロロリン酸エチル、及びジクロロリン酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは、ハロゲン及びリン含有化合物は、三塩化リン、五塩化リン、及びオキシ塩化リンからなる群から選択される。
【0023】
本発明の1つ以上の実施形態では、ハロゲン及びホウ素含有化合物は、式BR3−qで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20アルキル又はアルコキシであり、0≦q<3であり、Xはハロゲンである。ハロゲン及びホウ素含有化合物は、二塩化メチルホウ素、二塩化エチルホウ素、二塩化ブチルホウ素、二塩化メトキシホウ素、二塩化エトキシホウ素、三塩化ホウ素、及び二塩化ブトキシホウ素からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0024】
本発明の1つ以上の実施形態では、ハロゲン化有機アルミニウム化合物は、式AlR3−nで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、好ましくは、6つ以下の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビルであり、0.5≦n≦2.5であり、Xはハロゲンである。ハロゲン化有機アルミニウム化合物は、二塩化エチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、及び二塩化イソブチルアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0025】
本発明の1つ以上の実施形態では、ハロゲン及びケイ素含有化合物は、式(RO)SiR4−n−qで示される化合物であり、式中、R及びRは、C〜C20ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビルから独立して選択され、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、q及びnは各々、0又は正の数であり、0≦q+n≦3であり、Xはハロゲンである。 ハロゲン及びケイ素含有化合物は、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、三塩化エトキシケイ素、三塩化フェニルケイ素、三塩化メチルケイ素、三塩化エチルケイ素、二塩化ジメトキシケイ素、二塩化メチルメトキシケイ素、及び二塩化メチルフェノキシケイ素からなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは、ハロゲン及びケイ素含有化合物は、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、三塩化エトキシケイ素、及び三塩化フェニルケイ素からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0026】
別の態様では、本発明は、オレフィン重合用の触媒成分を調製するための方法を提供する。この方法は、まず無水ハロゲン化マグネシウムを、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒を含むが、ホスファート化合物を含まない混合溶媒に溶解して、ハロゲン化マグネシウム溶液を形成するステップ;次いでハロゲン化マグネシウム溶液をハロゲン含有化合物と混合して固形物を析出させ、触媒成分を得るステップを含み、有機エポキシ化合物は、式Iの中で示される3員環エポキシ化合物であり、
【0027】
【化2】

式I中、R及びRは、独立してH又はC〜C10ヒドロカルビル若しくはハロゲン化ヒドロカルビルから選択され、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく;又は有機エポキシ化合物は、4〜8員環エポキシ化合物であり;ハロゲン含有化合物は、ハロゲン及びチタン含有化合物、ハロゲン化有機炭化水素化合物、ハロゲン化アシル化合物、ハロゲン及びリン含有化合物、ハロゲン及びホウ素含有化合物、ハロゲン化有機アルミニウム化合物、並びにハロゲン及びケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0028】
本発明で得られるハロゲン化マグネシウム溶液は、非晶質ハロゲン化マグネシウムである。言い換えれば、本発明のハロゲン化マグネシウム溶液は、結晶性ハロゲン化マグネシウムを含有しない。本発明では、原料無水ハロゲン化マグネシウムは、α、β、又はγ等の結晶形態であってもよい結晶性ハロゲン化マグネシウムである。本発明では、混合溶媒は、上記4つの必須有機溶媒に加えて、他の有機溶媒、例えば、エステル、ケトン、アミン等から選択される有機溶媒を含有していてもよい。これら他の有機溶媒の量は、最終ハロゲン化マグネシウム溶液産物の相状態が影響を受けないであろうという前提で選択される。
【0029】
本発明では、混合溶媒は、ハロゲン化マグネシウム溶液が下流の応用でより良好な性能を示すことができるように、ホスファート化合物を含有しない。それにより、例えば、触媒の調製に使用する場合、固形物成分の容易な析出が可能になり、対応する触媒の活性増加が可能になる。同時に、下流の触媒産物に毒性リン含有物質が残留することを回避することができる。本発明では、ホスファート化合物は、リン酸トリブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリエチル、又はリン酸トリメチルから選択される。
【0030】
好ましくは、本発明では、ハロゲン化マグネシウム溶液は、無水ハロゲン化マグネシウムを、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒からなる混合溶媒に溶解することにより形成される。つまり、好ましくは、本発明の混合溶媒は、上記の4つの必須有機溶媒のみを含む。
【0031】
1つ以上の実施形態では、ハロゲン化マグネシウムは、式MgXで示される通りであり、式中、Xはハロゲンである。酸素含有有機チタン含有化合物は、式Ti(OR4−nに示される通りであり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、0<n≦4であり、Xはハロゲンである。好ましくは、四価チタン化合物が使用される。それは、四価チタン化合物が室温で液体状態であり、一般的に幾つかの溶媒と良好な混和性を有するためである。反応で特異的に使用されるチタン化合物は、好ましくは、式Ti(OR4−nで示され、式中、n=4である化合物、又はその混合物から選択される。最も一般的に用いられる化合物は、チタン酸テトラブチルである。ヒドロキシ含有化合物は、式HORで示される通りであり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、不活性溶媒は、C〜C100脂肪族炭化水素又はハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素又はハロゲン化芳香族炭化水素であり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、好ましくは、不活性溶媒は、C〜C20炭化水素化合物である。
【0032】
好ましくは、ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、反応に使用されるハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、又は塩化マグネシウムを含有する混合物であり、酸素含有有機チタン化合物は、チタナート化合物及びそれらの混合物からなる群から、好ましくは、チタン酸テトラエチル、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、及びチタン酸テトライソオクチルから選択され、ヒドロキシ含有化合物は、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、又はフェノールであり、好ましくは、ヒドロキシ含有化合物は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ヘキサノール、イソオクタノール、ベンジルアルコール、及びフェネチルアルコールからなる群から選択され、不活性溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブタン、イソブタン、イソペンタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
1つ以上の実施形態では、1モル当りのハロゲン化マグネシウムに基づいて算出すると、酸素含有有機チタン化合物は、0.01〜2.0モル、好ましくは0.1〜1.5モルであり、有機エポキシ化合物は、0.01〜10モル、好ましくは0.1〜6.5モルであり、ヒドロキシ含有化合物は、0.01〜20モル、好ましくは0.1〜15モルであり、ハロゲン含有化合物は、0.1〜100モル、好ましくは0.5〜50モルである。
【0034】
1つ以上の実施形態では、ハロゲン化マグネシウム溶液中のハロゲン化マグネシウムのモル濃度は、0.0001から20mol/Lまで、好ましくは0.001から10mol/Lまでの範囲である。
【0035】
本発明の本発明者らは、数多くの実験により、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒を含有する混合溶媒、好ましくは、上記の組成による、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒からなる混合溶媒を使用することにより、無水ハロゲン化マグネシウムを完全に溶解して、均一なハロゲン化マグネシウム溶液を形成することができることを見出した。更に、オレフィン重合又は共重合用の触媒成分は、形成されたハロゲン化マグネシウム溶液を、ハロゲン含有化合物と混合し、そして固形物を析出させることにより得ることができる。この触媒成分は、重合活性が非常に高く、重合動力学が安定しており、活性低下速度が遅く、水素レスポンスが良好である。この触媒は、良好な粒子形態及び狭域な粒度分布を有するため、良好な粒子形態、狭域な粒度分布、わずかな微細粉末、及びポリマーの大きな容積密度がもたらされる。これは、重合プラントの長期的な安定操業に貢献し、3つ以上の炭素を有するオレフィンのポリマーが、非常に高い立体規則性を有する。
【0036】
本発明では、好ましくは、式Iで示される有機エポキシ化合物は、C〜C脂肪族オレフィン、ジアルケン、ハロゲン化脂肪族オレフィン、ジアルケンの酸化物、グリシジルエーテル、又は分子内エーテル等を含む。好ましくは、有機エポキシ化合物は、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ブタジエンオキシド、ブタジエンジオキシド、エポキシクロロプロパン、メチルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、及びテトラヒドロフランからなる群から選択される1つ以上である。
【0037】
1つ以上の実施形態では、ハロゲン及びチタン含有化合物は、式Ti(OR4−nで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、0≦n≦3であり、Xはハロゲンである。
【0038】
本発明では、好ましくは、ハロゲン及びチタン含有化合物は、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、塩化トリエトキシチタン、二塩化ジエトキシチタン、及び三塩化エトキシチタンからなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは、ハロゲン及びチタン含有化合物は、四塩化チタン、四臭化チタン、及び四ヨウ化チタンからなる群から選択される。
【0039】
1つ以上の実施形態では、ハロゲン化有機炭化水素化合物は、式RXで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、Xはハロゲンである。
【0040】
本発明では、好ましくは、ハロゲン化有機炭化水素化合物は、クロロシクロヘキサン、ブロモシクロヘキサン、クロロ−t−ブタン、ブロモ−t−ブタン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、及び1,1−ジクロロプロパンからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0041】
1つ以上の実施形態では、ハロゲン化アシル化合物は、式RCOXで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又は水素であり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、Xはハロゲンである。
【0042】
本発明では、ハロゲン化アシル化合物は、フッ化アシル化合物、塩化アシル化合物、臭化アシル化合物、及びヨウ化アシル化合物の少なくとも1つを含む。好ましくは、ハロゲン化アシル化合物は、塩化アシル化合物である。
【0043】
1つ以上の更なる実施形態では、塩化アシル化合物は、式RCOClで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビル又は水素であり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよい。
【0044】
本発明では、好ましくは、塩化アシル化合物は、塩化ホルミル、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ベンゾイル、二塩化フタロイル、塩化フェニルアセチル、塩化フェニルプロピオニル、及び塩化フェニルブチリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0045】
1つ以上の実施形態では、ハロゲン及びリン含有化合物は、式OPR3−qで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20アルキル又はアルコキシであり、0≦q<3であり、p=0又は1であり、Xはハロゲンであり;又はハロゲン及びリン含有化合物は、五塩化リンである。
【0046】
本発明では、好ましくは、ハロゲン及びリン含有化合物は、メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、ブチルジクロロホスフィン、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、ジクロロリン酸メチル、ジクロロリン酸エチル、及びジクロロリン酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは、ハロゲン及びリン含有化合物は、三塩化リン、五塩化リン、及びオキシ塩化リンからなる群から選択される。
【0047】
1つ以上の実施形態では、ハロゲン及びホウ素含有化合物は、式BR3−qで示される通りであり、式中、Rは、C〜C20アルキル又はアルコキシであり、0≦q<3であり、Xはハロゲンである。
【0048】
本発明では、ハロゲン及びホウ素含有化合物は、好ましくは、二塩化メチルホウ素、二塩化エチルホウ素、二塩化ブチルホウ素、二塩化メトキシホウ素、二塩化エトキシホウ素、三塩化ホウ素、及び二塩化ブトキシホウ素からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0049】
1つ以上の実施形態では、ハロゲン化有機アルミニウム化合物は、式AlR3−nで示される化合物であり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、好ましくは、6つ以下の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビルであり、0.5≦n≦2.5であり、Xはハロゲンである。
【0050】
本発明では、好ましくは、ハロゲン化有機アルミニウム化合物は、二塩化エチルアルミニウム、セスキ塩化エチルアルミニウム、塩化ジエチルアルミニウム、及び二塩化イソブチルアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0051】
1つ以上の実施形態では、ハロゲン及びケイ素含有化合物は、式(RO)SiR4−n−qで示される化合物であり、式中、R及びRは、C〜C20ヒドロカルビル又はハロゲン化ヒドロカルビルから独立して選択され、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、q及びnは各々、0又は正の数であり、0≦q+n≦3であり、Xはハロゲンである。
【0052】
本発明では、ハロゲン及びケイ素含有化合物は、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、三塩化エトキシケイ素、三塩化フェニルケイ素、三塩化メチルケイ素、三塩化エチルケイ素、二塩化ジメトキシケイ素、二塩化メチルメトキシケイ素、及び二塩化メチルフェノキシケイ素からなる群から選択される少なくとも1つであり、好ましくは、ハロゲン及びケイ素含有化合物は、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、三塩化エトキシケイ素、及び三塩化フェニルケイ素からなる群から選択される少なくとも1つである。本発明のハロゲン化マグネシウム溶液を調製するステップでは、マグネシウム化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び有機チタン化合物が互いに接触する温度は、反応物の特性に依存する。一般的に、比較的高温で、好ましくは反応物の分解温度未満で溶解を実施することが有利であり、通常、温度は200℃以下、典型的には150℃以下である。溶解時間は、反応物の特性及び操作条件に依存する。一般的に、時間は、完全に透明な溶液を得ることができるように選択される。典型的には、10分〜24時間、好ましくは2時間〜16時間が必要とされる。上述のような不活性溶媒を、溶解中に添加することができる。
【0053】
触媒成分を調製する第2のステップは、析出ステップと呼ばれる場合もある。このステップでは、マグネシウム−チタン錯体溶液の塩素化反応を完了させて、液状錯体を溶液から析出させる。任意の公知で好適な方法を使用して、マグネシウム−チタン溶液をハロゲン含有化合物と接触させることができる。例えば、マグネシウム−チタン錯体溶液をハロゲン含有化合物溶液に滴加してもよく、又はハロゲン含有化合物溶液をマグネシウム−チタン溶液に滴加してもよい。滴加速度は、反応に局所的過熱が生じ得ないという前提で選択される。反応の滑らかな進行を容易にするために、滴加中に撹拌を行うことが多い。この析出ステップでは、温度は、−40℃から100℃まで、好ましくは−20℃から80℃までの範囲で制御することができる。析出ステップの反応時間は、完全な析出が得られるように十分に長い時間であるべきである。反応時間は、1分から10時間まで、好ましくは0.5時間から8時間までの範囲であってもよい。
【0054】
析出ステップの後、ある温度にてある期間にわたって熟成処理を実施することは、触媒の粒子形状にとって有利であり、同時に、触媒粒子の強度を向上させることができるため、触媒の存在下でエチレン重合する過程での触媒粒子の断片化を軽減することができる。熟成処理の温度は、一般的に、析出反応の温度と等しいか又は析出反応の温度よりも高い。熟成処理の時間は、0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間に制御することできる。
【0055】
熟成処理の後、典型的には、過剰量の反応物及び調製過程で形成される副産物を除去するために、洗浄が実施される。ベンゼン、トルエン、キシレン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、又はシクロヘキサン、又はそれらの混合物等の任意の不活性溶媒を、洗浄に使用することができる。実験では、ヘキサン又はトルエンが、洗浄用不活性溶媒として通常、使用される。洗浄後、触媒の懸濁液に、数回にわたってチタンを直接負荷してもよく、又は窒素置換して加熱条件下で乾燥して、触媒粉末を直接得てもよい。
【0056】
また、本発明は、以下の成分の反応生成物を含むオレフィン重合用の触媒を提供する:
(a)上述の調製方法により調製される触媒成分、
(b)式AlR3−mで示され、式中、Rが水素又はC〜C20ヒドロカルビルであり、Xがハロゲンであり、mが0<m≦3である、少なくとも1つの有機アルミニウム化合物。
【0057】
本発明では、1つ又は2つを超える有機アルミニウム化合物、好ましくは、AlEt、Al(iso−Bu)、Al(n−C13、Al(n−C17、及びAlEtCl等を選択し、組み合わせて使用してもよい。
【0058】
加えて、本発明は、オレフィン重合用の触媒成分を調製するためのプロセスに使用されるハロゲン化マグネシウム溶液系を更に提供する。この系は、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒を含み、有機エポキシ化合物は、式Iで示される3員環エポキシ化合物であり、
【0059】
【化3】

式I中、R及びRは、独立してH又はC〜C10ヒドロカルビル若しくはハロゲン化ヒドロカルビルから選択され、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく;又は有機エポキシ化合物は、4〜8員環エポキシ化合物である。
【0060】
本発明によると、ハロゲン化マグネシウム溶液系は、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒からなる混合溶媒である。
【0061】
上述のように、オレフィン重合触媒の調製に使用される既存の溶媒、及び無水ハロゲン化マグネシウムは、ハロゲン化マグネシウムを含有する懸濁液を形成することができるに過ぎない。オレフィン重合に使用する場合、ハロゲン化マグネシウムを含有するそのような懸濁液を使用することにより調製される触媒成分は、重合活性が低く、活性低下速度が比較的迅速であり、水素レスポンスが不良であり、重合プラントの長期的な安定操業には不利である。
【0062】
上述のように、本発明者は、数多くの実験により、触媒調製中の溶解及び析出に好適なハロゲン化マグネシウム系を選択することにより、オレフィン重合又は共重合に好適な触媒系を得ることができること見出した。そのような触媒系は、重合活性が非常に高く、重合動力学が安定しており、活性低下速度が遅く、水素レスポンスが良好である。この触媒は、良好な粒子形態及び狭域な粒度分布を有するため、良好な粒子形態、狭域な粒度分布、わずかな微細粉末、及びポリマーの大きな容積密度がもたらされる。これは、重合プラントの長期的な安定操業に有利であり、3つ以上の炭素を有するオレフィンのポリマーが、非常に高い立体規則性を有する。加えて、触媒の合成は、原料の消費が低いこと、装置の稼働率が高いこと、操作が容易なこと、及び環境にやさしいこと等の利点を有する。
【0063】
本発明の1つ以上の実施形態では、ハロゲン化マグネシウムは、式MgXで示される通りであり、式中、Xはハロゲンであり;酸素含有有機チタン化合物は、式Ti(OR4−nで示される通りであり、式中、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、0<n≦4であり、Xはハロゲンであり、ヒドロキシ含有化合物は、式HORで示されている通りであり、Rは、C〜C20ヒドロカルビルであり、飽和又は不飽和の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、不活性溶媒は、C〜C100脂肪族炭化水素又はハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素又はハロゲン化芳香族炭化水素であり、飽和又は不飽和鎖の直鎖、分岐鎖、又は環式鎖であってもよく、好ましくは、不活性溶媒は、C〜C20炭化水素化合物である。
【0064】
1つ以上の実施形態では、1モル当りのハロゲン化マグネシウムに基づいて算出すると、酸素含有有機チタン化合物は、0.01〜2.0モル、好ましくは0.1〜1.5モルであり、有機エポキシ化合物は、0.01〜10モル、好ましくは0.1〜6.5モルであり、ヒドロキシ含有化合物は、0.01〜20モル、好ましくは0.1〜15モルである。
【0065】
上述のように、本発明では、混合溶媒は、得られるハロゲン化マグネシウム溶液が、下流の応用でより良好な性能を示すことができるように、ホスファート化合物を含有しない。それにより、例えば、触媒の調製に使用する場合、固形物成分の容易な析出が可能になり、対応する触媒の活性増加が可能になる。同時に、下流の触媒産物に毒性リン含有物質が残留することを回避することができる。本発明では、ホスファート化合物は、リン酸トリブチル、リン酸トリイソブチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリエチル、又はリン酸トリメチルから選択される。
【0066】
好ましくは、本発明の混合溶媒は、4つの必須有機溶媒、つまり酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒のみを含む。
【0067】
本発明では、「ホスファート化合物」、つまり有機リン化合物は、リン酸のエステル誘導体であり、リン酸の誘導体である。リン酸は三元酸であるため、ホスファートは、置換ヒドロカルビルの数に従って、第一級ホスファート(モノ有機ホスファート、ヒドロカルビルホスファート)、第二級ホスファート(ホスホジエステル)、及び第三級ホスファート(ホスホトリエステル)に分類することができる。
【0068】
本発明では、「チタナート化合物」は、チタン酸テトラブチル、及びチタン酸テトラエチル等の、ヒドロカルビルオキシを有するチタン含有化合物を指す。
【0069】
本発明では、「フェノール」、つまりフェノール化合物は、芳香族環の少なくとも1つの水素が、ヒドロキシル(−OH)により置換されている、式ArOHで示される芳香族化合物である。
【0070】
本発明では、「炭化水素化合物」は、炭素原子及び水素原子により形成される化合物を指し、アルカン、シクロアルカン、アルケン、アルキン、及び芳香族炭化水素を含む。
【0071】
本発明では、「エステル」は、アルコールをカルボン酸又は無機酸素酸とエステル化反応させることにより形成される産物を指す。カルボキシル酸エステルに加えて、エステル化合物は、硝酸及び硫酸等の無機酸素酸のエステルを含む。
【0072】
本発明では、「ケトン」は、式RC(=O)R’で示される有機化合物を指し、式中、R及びR’は、互いに同一であるか又は互いに異なる原子又は官能基であってもよく、2つの炭素原子で接合されたカルボニル(C=O)を有する。
【0073】
本発明では、用語「アミン」は、アンモニア分子(NH)の水素が、ヒドロカルビル基により置換された後で形成される有機化合物を指す。
【0074】
本発明では、「セスキ塩化エチルアルミニウム」は、トリエチルジアルミニウムトリクロリドとしても知られており、C15AlClの分子式を有する。
【0075】
本発明では、「ハロゲン化マグネシウム溶液系」は、オレフィン重合用触媒の調製中にハロゲン化マグネシウム又は無水ハロゲン化マグネシウムを溶解するために使用される混合溶媒、幾つかの成分、例えば、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒、好ましくは無水ハロゲン化マグネシウムを溶解するために使用される混合溶媒を含む混合溶媒、酸素含有有機チタン化合物、有機エポキシ化合物、ヒドロキシ含有化合物、及び不活性溶媒を含む混合溶媒を指す。
【0076】
本発明に関する触媒成分又は触媒は、多様なオレフィンの重合又は共重合、好ましくは、エチレン、プロペン、ブテン、ヘキセン、及びオクテンの単独重合又は共重合、特にエチレンの単独重合又はエチレンと他のα−オレフィンとの共重合に好適であり、ここで、α−オレフィンは、プロペン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、及び4−メチルペンテン−1から選択される1つである。
【発明を実施するための形態】
【0077】
測定方法
1.担体及び触媒の粒度分布:MASTERSIZE粒径分析器により測定し、分散剤はn−ヘキサンであり、測定範囲は、0.02〜2000μmである。
2.触媒中の金属(主にチタン及びマグネシウム)の重量パーセント:ICPプラズマ分光計を使用して測定。
3.メルトインデックス:ASTMD1238規格に基づいて測定。
4.容積密度:DIN−53194規格に基づいて測定。
【0078】
下記の実施形態は、本発明を限定するためではなく、例示のために提供されている。
【0079】
実施例
以下の実施例1〜5では、まずハロゲン化マグネシウムの溶液を調製した。その後、ハロゲン化マグネシウムの溶液を、ハロゲン及びチタン含有化合物と混合して、固形物を析出させ、それにより触媒成分を得た。
【0080】
実施例1
触媒成分の調製:無水塩化マグネシウム 2.4gを計量し、次いでチタン酸テトラブチル 8.8mL、エポキシクロロプロパン 2.0mL、無水エタノール 2.2mL、及びメチルベンゼン 50mLを添加した。得られた混合物を60℃に維持し、透明溶液が得られるまで撹拌した。メチルベンゼン 100mLを再び添加した。溶液を−20℃に冷却し、次いで四塩化チタン 30mLをビュレットでゆっくりと滴加した。その後、溶液を−20℃に維持して0.5時間反応させ、次に50℃に加熱して4時間反応させ、最後に90℃に加熱して3時間反応させて、触媒の懸濁液を得た。触媒の懸濁液を、静置して沈殿させ、各回メチルベンゼン 50mLで4回洗浄し、各回ヘキサン 50mLで2回洗浄した。洗浄した後、液体を窒素置換して65℃浴条件下で乾燥させ、固形灰白色自由流動性粉末を得た。固形灰白色自由流動性粉末は、本発明による触媒成分だった。その平均粒径は、3.48μmだった。元素分析:Ti:9.82%(重量による)、Mg:15.42%(重量による)。
【0081】
触媒の評価:
ヘキサン 1L、トリエチルアルミニウム 1mmol、及びある量の触媒を、2Lのステンレス撹拌反応器に入れ、次いで80℃に加熱してから、水素ガス 0.18MPaを添加した。系の全圧を、エチレンで0.73MPaに維持して、重合反応を実施した。2時間の重合反応後、エチレンの添加を停止し、次いで冷却し、脱圧し、ポリエチレン粉末を計量し、触媒活性を算出し、ポリエチレン粉末の容積密度(BD)及び2.16Kgの負荷下でのポリエチレン粉末のメルトインデックス(MI2.16)を測定した。結果は、表1に示した。
【0082】
実施例2
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例1の「溶液を−20℃に冷却した」ステップを「溶液を0℃に冷却した」に変更し、「溶液を−20℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」に変更し、「次いで四塩化チタン 30mLをビュレットでゆっくりと滴加した」ステップを、「次いで四塩化チタン 15mLをビュレットでゆっくりと滴加した」に変更したこと以外は、実施例1で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、8.65μmだった。元素分析(ICP):Ti:6.75%(重量による)、Mg:19.71%(重量による)。
【0083】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例1の条件と同じだった。結果は、表1に示した。
【0084】
実施例3
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例1の「無水エタノール 2.2mL」を「イソオクタノール 11.8mL」に変更した以外は、実施例1で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、3.92μmだった。元素分析(ICP):Ti:27.61%(重量による)、Mg:10.10%(重量による)。
【0085】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例1の条件と同じだった。結果は、表1に示した。
【0086】
実施例4
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例1の「無水エタノール 2.2mL」を「n−ブチルアルコール 6.9mL」に変更した以外は、実施例1で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、2.82μmだった。元素分析(ICP):Ti:6.69%(重量による)、Mg:19.8%(重量による)。
【0087】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例1の条件と同じだった。結果は、表1に示した。
【0088】
実施例5
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例1の「チタン酸テトラブチル 8.8mL」を「チタン酸テトラエチル 5.5mL」に変更し、「エポキシクロロプロパン 2.0mL」を「テトラヒドロフラン 2.1mL」に変更した以外は、実施例1で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、7.64μmだった。元素分析(ICP):Ti:12.22%(重量による)、Mg:16.06%(重量による)。
【0089】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例1の条件と同じだった。結果は、表1に示した。
【0090】
【表1】
【0091】
以下の実施例6〜9では、まずハロゲン化マグネシウムの溶液を調製した。その後、ハロゲン化マグネシウムの溶液を、ハロゲン化有機炭化水素化合物と混合して、固形物を析出させ、それにより触媒成分を得た。
【0092】
実施例6
触媒成分の調製:
無水塩化マグネシウム 2.4gを計量し、次いでチタン酸テトラブチル 8.8mL、エポキシクロロプロパン 2.0mL、無水エタノール 2.2mL、及びメチルベンゼン 50mLを添加した。得られた混合物を60℃に維持し、透明溶液が得られるまで撹拌した。メチルベンゼン 100mLを再び添加した。溶液を0℃に冷却し、次いでクロロ−t−ブタン 25mLをビュレットでゆっくりと滴加した。その後、溶液を0℃に維持して0.5時間反応させ、次に50℃に加熱して3時間反応させ、最後に90℃に加熱して2時間反応させて、触媒の懸濁液を得た。触媒の懸濁液を、静置して沈殿させ、各回メチルベンゼン 50mLで4回洗浄し、各回ヘキサン 50mLで2回洗浄した。洗浄した後、液体を窒素置換して65℃浴条件下で乾燥させ、固形灰白色自由流動性粉末を得た。固形灰白色自由流動性粉末は、本発明による触媒成分だった。その平均粒径は、33.72μmだった。元素分析:Ti:15.24%(重量による)、Mg:16.74%(重量による)。
【0093】
触媒の評価:
ヘキサン 1L、トリエチルアルミニウム 1mmol、及びある量の触媒を、2Lのステンレス撹拌反応器に入れ、次いで85℃に加熱してから、水素ガス 0.18MPaを添加した。系の全圧を、エチレンで1.03MPaに維持して、重合反応を実施した。2時間の重合反応後、エチレンの添加を停止し、次いで冷却し、脱圧し、ポリエチレン粉末を計量し、触媒活性を算出し、ポリエチレン粉末の容積密度(BD)及び2.16Kgの負荷下でのポリエチレン粉末のメルトインデックス(MI2.16)を測定した。結果は、表2に示した。
【0094】
実施例7
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例6の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を45℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を45℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例6で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、24.52μmだった。元素分析(ICP):Ti:8.33%(重量による)、Mg:14.17%(重量による)。
【0095】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例6の条件と同じだった。結果は、表2に示した。
【0096】
実施例8
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例6の「チタン酸テトラブチル 8.8mL」を「チタン酸テトラエチル 5.5mL」に変更した以外は、実施例6で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、41.29μmだった。元素分析(ICP):Ti:6.53%(重量による)、Mg:12.20%(重量による)。
【0097】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例6の条件と同じだった。結果は、表2に示した。
【0098】
実施例9
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例6の「無水エタノール 2.2mL」を「n−ブチルアルコール 6.9mL」に変更した以外は、実施例6で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、28.07μmだった。元素分析(ICP):Ti:4.88%(重量による)、Mg:13.59%(重量による)。
【0099】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例6の条件と同じだった。結果は、表2に示した。
【0100】
【表2】
【0101】
以下の実施例10〜13では、まずハロゲン化マグネシウムの溶液を調製した。その後、ハロゲン化マグネシウムの溶液を、塩化アシル化合物と混合して、固形物を析出させ、それにより触媒成分を得た。
【0102】
実施例10
触媒成分の調製:
無水塩化マグネシウム 2.4gを計量し、次いでチタン酸テトラブチル 8.8mL、エポキシクロロプロパン 2.0mL、無水エタノール 2.2mL、及びメチルベンゼン 50mLを添加した。得られた混合物を60℃に維持し、透明溶液が得られるまで撹拌した。メチルベンゼン 100mLを再び添加した。溶液を0℃に冷却し、次いで塩化ベンゾイル 27mLをビュレットでゆっくりと滴加した。その後、溶液を0℃に維持して0.5時間反応させ、次に50℃に加熱して3時間反応させ、最後に90℃に加熱して2時間反応させて、触媒の懸濁液を得た。触媒の懸濁液を、静置して沈殿させ、各回メチルベンゼン 50mLで4回洗浄し、各回ヘキサン 50mLで2回洗浄した。洗浄した後、液体を窒素置換して65℃浴条件下で乾燥させ、固形灰白色自由流動性粉末を得た。固形灰白色自由流動性粉末は、本発明による触媒成分だった。その平均粒径は、35.63μmだった。元素分析:Ti:16.37%(重量による)、Mg:13.16%(重量による)。
【0103】
触媒の評価:
ヘキサン 1L、トリエチルアルミニウム 1mmol、及びある量の触媒を、2Lのステンレス撹拌反応器に入れ、次いで85℃に加熱してから、水素ガス 0.18MPaを添加した。系の全圧を、エチレンで1.03MPaに維持して、重合反応を実施した。2時間の重合反応後、エチレンの添加を停止し、次いで冷却し、脱圧し、ポリエチレン粉末を計量し、触媒活性を算出し、ポリエチレン粉末の容積密度(BD)及び2.16Kgの負荷下でのポリエチレン粉末のメルトインデックス(MI2.16)を測定した。結果は、表3に示した。
【0104】
実施例11
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例10の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を45℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を45℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例10で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、23.54μmだった。元素分析(ICP):Ti:9.86%(重量による)、Mg:18.25%(重量による)。
【0105】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例10の条件と同じだった。結果は、表3に示した。
【0106】
実施例12
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例10の「塩化ベンゾイル 27mL」を「塩化ベンゾイル 14mL」に変更した以外は、実施例10で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、38.18μmだった。元素分析(ICP):Ti:15.27%(重量による)、Mg:12.47%(重量による)。
【0107】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例10の条件と同じだった。結果は、表3に示した。
【0108】
実施例13
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例10の「無水エタノール 2.2mL」を「n−ブチルアルコール 6.9mL」に変更した以外は、実施例10で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、42.45μmだった。元素分析(ICP):Ti:11.15%(重量による)、Mg:13.62%(重量による)。
【0109】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例10の条件と同じだった。結果は、表3に示した。
【0110】
【表3】
【0111】
以下の実施例14〜17では、まずハロゲン化マグネシウムの溶液を調製した。その後、ハロゲン化マグネシウムの溶液を、ハロゲン及びリン含有化合物と混合して、固形物を析出させ、それにより触媒成分を得た。
【0112】
実施例14
触媒成分の調製:
無水塩化マグネシウム 2.4gを計量し、次いでチタン酸テトラブチル 8.8mL、エポキシクロロプロパン 2.0mL、無水エタノール 2.2mL、及びメチルベンゼン 50mLを添加した。得られた混合物を60℃に維持し、透明溶液が得られるまで撹拌した。メチルベンゼン 100mLを再び添加した。溶液を0℃に冷却し、次いで三塩化リン 35mLをビュレットでゆっくりと滴加した。その後、溶液を0℃に維持して0.5時間反応させ、次に50℃に加熱して3時間反応させ、最後に90℃に加熱して2時間反応させて、触媒の懸濁液を得た。触媒の懸濁液を、静置して沈殿させ、各回メチルベンゼン 50mLで4回洗浄し、各回ヘキサン 50mLで2回洗浄した。洗浄した後、液体を窒素置換して65℃浴条件下で乾燥させ、固形灰白色自由流動性粉末を得た。固形灰白色自由流動性粉末は、本発明による触媒成分だった。その平均粒径は、16.7μmだった。元素分析:Ti:0.54%(重量による)、Mg:26.39%(重量による)。
【0113】
触媒の評価:
ヘキサン 1L、トリエチルアルミニウム 1mmol、及びある量の触媒を、2Lのステンレス撹拌反応器に入れ、次いで80℃に加熱してから、水素 0.18MPaを添加した。系の全圧を、エチレンで0.73MPaに維持して、重合反応を実施した。2時間の重合反応後、エチレンの添加を停止し、次いで冷却し、脱圧し、ポリエチレン粉末を計量し、触媒活性の算出し、ポリエチレン粉末の容積密度(BD)及び2.16Kgの負荷下でのポリエチレン粉末のメルトインデックス(MI2.16)を測定した。結果は、表4に示した。
【0114】
実施例15
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例14の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を45℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を45℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例14で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、33.56μmだった。元素分析(ICP):Ti:0.67%(重量による)、Mg:25.34%(重量による)。
【0115】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例14の条件と同じだった。結果は、表4に示した。
【0116】
実施例16
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例14の「チタン酸テトラブチル 8.8mL」を「チタン酸テトラエチル 5.5mL」に変更した以外は、実施例14で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、21.46μmだった。元素分析(ICP):Ti:0.86%(重量による)、Mg:20.5%(重量による)。
【0117】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例14の条件と同じだった。結果は、表4に示した。
【0118】
実施例17
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例14の「無水エタノール 2.2mL」を「n−ブチルアルコール 4.6mL」に変更し、実施例14の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を45℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を45℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例14で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、26.35μmだった。元素分析(ICP):Ti:0.97%(重量による)、Mg:28.82%(重量による)。
【0119】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例14の条件と同じだった。結果は、表4に示した。
【0120】
【表4】
【0121】
以下の実施例18〜21では、まずハロゲン化マグネシウムの溶液を調製した。その後、ハロゲン化マグネシウムの溶液を、ハロゲン及びホウ素含有化合物と混合して、固形物を析出させ、それにより触媒成分を得た。
【0122】
実施例18
触媒成分の調製:
無水塩化マグネシウム 2.4gを計量し、次いでチタン酸テトラブチル 8.8mL、エポキシクロロプロパン 2.0mL、無水エタノール 2.2mL、及びメチルベンゼン 50mLを添加した。得られた混合物を60℃に維持し、透明溶液が得られるまで撹拌した。メチルベンゼン 100mLを再び添加した。溶液を0℃に冷却し、次いで三塩化ホウ素のヘキサン溶液(1M) 50mLをビュレットでゆっくりと滴加した。その後、溶液を0℃に維持して0.5時間反応させ、次に50℃に加熱して3時間反応させ、最後に65℃に加熱して2時間反応させて、触媒の懸濁液を得た。触媒の懸濁液を、静置して沈殿させ、各回メチルベンゼン 50mLで4回洗浄し、各回ヘキサン 50mLで2回洗浄した。洗浄した後、液体を窒素置換して65℃浴条件下で乾燥させ、固形灰白色自由流動性粉末を得た。固形灰白色自由流動性粉末は、本発明による触媒成分だった。その平均粒径は、25.57μmだった。元素分析:Ti:1.36%(重量による)、Mg:27.86%(重量による)。
【0123】
触媒の評価:
ヘキサン 1L、トリエチルアルミニウム 1mmol、及びある量の触媒を、2Lのステンレス撹拌反応器に入れ、次いで80℃に加熱してから、水素ガス 0.18MPaを添加した。系の全圧を、エチレンで0.73MPaに維持して、重合反応を実施した。2時間の重合反応後、エチレンの添加を停止し、次いで冷却し、脱圧し、ポリエチレン粉末を計量し、触媒活性を算出し、ポリエチレン粉末の容積密度(BD)及び2.16Kgの負荷下でのポリエチレン粉末のメルトインデックス(MI2.16)を測定した。結果は、表5に示した。
【0124】
実施例19
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例18の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を30℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を30℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例18で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、18.47μmだった。元素分析(ICP):Ti:1.54%(重量による)、Mg:27.95%(重量による)。
【0125】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例18の条件と同じだった。結果は、表5に示した。
【0126】
実施例20
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例18の「エポキシクロロプロパン 2.0mL」を「テトラヒドロフラン 2.1mL」に変更した以外は、実施例18で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、31.29μmだった。元素分析(ICP):Ti:0.92%(重量による)、Mg:22.16%(重量による)。
【0127】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例18の条件と同じだった。結果は、表5に示した。
【0128】
実施例21
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例18の「無水エタノール 2.2mL」を「n−ブチルアルコール 4.6mL」に変更した以外は、実施例18で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、20.85μmだった。元素分析(ICP):Ti:0.76%(重量による)、Mg:21.65%(重量による)。
【0129】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例18の条件と同じだった。結果は、表5に示した。
【0130】
【表5】
【0131】
以下の実施例22〜25では、まずハロゲン化マグネシウムの溶液を調製した。その後、ハロゲン化マグネシウムの溶液を、ハロゲン化有機アルミニウム化合物と混合して、固形物を析出させ、それにより触媒成分を得た。
【0132】
実施例22
触媒成分の調製:
無水塩化マグネシウム 1.2gを計量し、次いでチタン酸テトラブチル 4.4mL、エポキシクロロプロパン 1.0mL、無水エタノール 1.1mL、及びヘキサン 50mLを添加した。得られた混合物を60℃に維持し、透明溶液が得られるまで撹拌した。ヘキサン 100mLを再び添加した。溶液を0℃に冷却し、次いで二塩化エチルアルミニウムのヘキサン溶液(3M) 18mLをビュレットでゆっくりと滴加した。その後、溶液を0℃に維持して0.5時間反応させ、次に65℃に加熱して3時間反応させて、触媒の懸濁液を得た。触媒の懸濁液を、静置して沈殿させ、各回ヘキサン 50mLで4回洗浄した。洗浄した後、液体を窒素置換して65℃浴条件下で乾燥させ、固形自由流動性粉末を得た。固形自由流動性粉末は、本発明による触媒成分だった。その平均粒径は、15.68μmだった。元素分析:Ti:11.48%(重量による)、Mg:13.78%(重量による)。
【0133】
触媒の評価:
ヘキサン 1L、トリエチルアルミニウム 1mmol、及びある量の触媒を、2Lのステンレス撹拌反応器に入れ、次いで90℃に加熱してから、水素 0.4MPaを添加した。系の全圧を、エチレンで1.0MPaに維持して、重合反応を実施した。2時間の重合反応後、エチレンの添加を停止し、次いで冷却し、脱圧し、ポリエチレン粉末を計量し、触媒活性を算出し、ポリエチレン粉末の容積密度(BD)及び2.16Kgの負荷下でのポリエチレン粉末のメルトインデックス(MI2.16)を測定した。結果は、表6に示した。
【0134】
実施例23
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例22の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を45℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を45℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例22で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、14.77μmだった。元素分析(ICP):Ti:7.64%(重量による)、Mg:16.06%(重量による)。
【0135】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例22の条件と同じだった。結果は、表6に示した。
【0136】
実施例24
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例22の「チタン酸テトラブチル 4.4mL」を「チタン酸テトラエチル 2.8mL」に変更した以外は、実施例22で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、21.64μmだった。元素分析(ICP):Ti:10.92%(重量による)、Mg:16.33%(重量による)。
【0137】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例22の条件と同じだった。結果は、表6に示した。
【0138】
実施例25
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例22の「無水エタノール 1.1mL」を「n−ブチルアルコール 2.3mL」に変更し、実施例22の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を45℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を45℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例22で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、16.84μmだった。元素分析(ICP):Ti:8.19%(重量による)、Mg:12.57%(重量による)。
【0139】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例22の条件と同じだった。結果は、表6に示した。
【0140】
【表6】
【0141】
以下の実施例26〜29では、まずハロゲン化マグネシウムの溶液を調製した。その後、ハロゲン化マグネシウムの溶液を、ハロゲン及びケイ素含有化合物と混合して、固形物を析出させ、それにより触媒成分を得た。
【0142】
実施例26
触媒成分の調製:
無水塩化マグネシウム 2.4gを計量し、次いでチタン酸テトラブチル 8.8mL、エポキシクロロプロパン 2.0mL、無水エタノール 2.2mL、及びメチルベンゼン 50mLを添加した。得られた混合物を60℃に維持し、透明溶液が得られるまで撹拌した。メチルベンゼン 100mLを再び添加した。溶液を0℃に冷却し、次いで四塩化ケイ素 30mLをビュレットでゆっくりと滴加した。その後、溶液を0℃に維持して0.5時間反応させ、次に50℃に加熱して3時間反応させ、最後に90℃に加熱して2時間反応させて、触媒の懸濁液を得た。触媒の懸濁液を、静置して沈殿させ、各回メチルベンゼン 50mLで4回洗浄し、各回ヘキサン 50mLで2回洗浄した。洗浄した後、液体を窒素置換して65℃浴条件下で乾燥させ、固形灰白色自由流動性粉末を得た。固形灰白色自由流動性粉末は、本発明による触媒成分だった。その平均粒径は、23.66μmだった。元素分析:Ti:0.70%(重量による)、Mg:19.71%(重量による)。
【0143】
触媒の評価:
ヘキサン 1L、トリエチルアルミニウム 1mmol、及びある量の触媒を、2Lのステンレス撹拌反応器に入れ、次いで85℃に加熱してから、水素 0.18MPaを添加した。系の全圧を、エチレンで1.03MPaに維持して、重合反応を実施した。2時間の重合反応後、エチレンの添加を停止し、次いで冷却し、脱圧し、ポリエチレン粉末を計量し、触媒活性を算出し、ポリエチレン粉末の容積密度(BD)及び2.16Kgの負荷下でのポリエチレン粉末のメルトインデックス(MI2.16)を測定した。結果は、表7に示した。
【0144】
実施例27
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例26の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を25℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を25℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例26で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、13.78μmだった。元素分析(ICP):Ti:0.86%(重量による)、Mg:20.50%(重量による)。
【0145】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例26の条件と同じだった。結果は、表7に示した。
【0146】
実施例28
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例26の「エポキシクロロプロパン 2.0mL」を「テトラヒドロフラン 2.1mL」に変更し、実施例26の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を25℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を25℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例26で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、21.61μmだった。元素分析(ICP):Ti:0.60%(重量による)、Mg:22.91%(重量による)。
【0147】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例26の条件と同じだった。結果は、表7に示した。
【0148】
実施例29
触媒成分の調製:
この実施例で使用した条件は、実施例26の「チタン酸テトラブチル 8.8mL」を「チタン酸テトラエチル 5.5mL」に変更し、実施例26の「溶液を0℃に冷却した」ステップを「溶液を25℃に冷却した」に変更し、「溶液を0℃に維持して0.5時間反応させた」ステップを、「溶液を25℃に維持して0.5時間反応させた」に変更したこと以外は、実施例26で使用した条件と同じだった。得られた触媒の平均粒径は、16.29μmだった。元素分析(ICP):Ti:0.36%(重量による)、Mg:19.03%(重量による)。
【0149】
触媒の評価:
触媒のスラリー重合条件は、実施例26の条件と同じだった。結果は、表7に示した。
【0150】
【表7】
【0151】
上記の実施形態は、本発明の好ましい実施形態に過ぎず、本発明を限定するために提供されているものではない。本発明の原理に基づき、本発明の趣旨の範囲内で、任意の変更、等価な置換、又は改良を本発明になすことができる。