(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706589
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】監視装置、監視方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/70 20130101AFI20200601BHJP
【FI】
H04L12/70 100Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-56134(P2017-56134)
(22)【出願日】2017年3月22日
(65)【公開番号】特開2018-160755(P2018-160755A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 朝信
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 雅典
(72)【発明者】
【氏名】林 通秋
【審査官】
宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−198414(JP,A)
【文献】
特開2017−028644(JP,A)
【文献】
特開平10−327148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00−12/26,12/50−12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、前記設定した監視間隔に基づいて、前記被監視装置の監視を行なう監視装置であって、
前記被監視装置から監視項目に関する監視データを収集する収集部と、
前記収集部が監視データを収集する際に自装置が消費するリソースを、前記収集部の負荷として測定する測定部と、
複数の監視データの重複度および前記負荷に基づいて、前記被監視装置に対する監視間隔を選定する判定部と、を備え、
前記収集部は、前記選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集することを特徴とする監視装置。
【請求項2】
被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、前記設定した監視間隔に基づいて、前記被監視装置の監視を行なう監視装置であって、
前記被監視装置から監視項目に関する監視データを収集する収集部と、
前記収集部が監視データを収集する際に消費するリソースを、前記収集部の負荷として測定する測定部と、
複数の監視データの重複度および前記負荷に基づいて、前記被監視装置に対する監視間隔を選定する判定部と、を備え、
前記収集部は、前記選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集し、
前記判定部は、時系列的に連続する2つの監視データの変動率を算出し、前記変動率と第1の閾値とを比較し、前記変動率が第1の閾値以下である場合に、2つの監視データは重複していると判定し、監視間隔に対する監視データの平均重複度と第2の閾値を比較すると共に、監視間隔に対する負荷と第3の閾値とを比較することによって、前記被監視装置に対する監視間隔を選定することを特徴とする監視装置。
【請求項3】
被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、前記設定した監視間隔に基づいて、前記被監視装置の監視を行なう監視装置であって、
前記被監視装置から監視項目に関する監視データを収集する収集部と、
前記収集部が監視データを収集する際に消費するリソースを、前記収集部の負荷として測定する測定部と、
複数の監視データの重複度および前記負荷に基づいて、前記被監視装置に対する監視間隔を選定する判定部と、を備え、
前記収集部は、前記選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集し、
前記判定部は、時系列的に連続する2つの監視データの変動率を算出し、前記変動率と第1の閾値とを比較し、前記変動率が第1の閾値以下である場合に、2つの監視データは重複していると判定し、監視間隔に対する監視データの重複度の最悪値と第2の閾値を比較すると共に、監視間隔に対する負荷と第3の閾値とを比較することによって、前記被監視装置に対する監視間隔を選定することを特徴とする監視装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第2の閾値以下となる重複度または前記第3の閾値以下となる負荷の少なくとも一方が存在しない場合、前記第2の閾値または前記第3の閾値の再設定、重複度の負荷のいずれか一方への優先度の設定、または、前記第2の閾値および前記第3の閾値の再設定のいずれかを行なって、再度監視間隔の選定を行なうことを特徴とする請求項2または請求項3記載の監視装置。
【請求項5】
被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、前記設定した監視間隔に基づいて、前記被監視装置の監視を行なう監視方法であって、
収集部において、前記被監視装置から監視項目に関する監視データを収集するステップと、
測定部において、前記収集部が監視データを収集する際に自装置が消費するリソースを、前記収集部の負荷として測定するステップと、
判定部において、複数の監視データの重複度および前記負荷に基づいて、前記被監視装置に対する監視間隔を選定するステップと、
前記収集部において、前記選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする監視方法。
【請求項6】
被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、前記設定した監視間隔に基づいて、前記被監視装置の監視を行なう監視装置のプログラムであって、
収集部において、前記被監視装置から監視項目に関する監視データを収集する処理と、
測定部において、前記収集部が監視データを収集する際に自装置が消費するリソースを、前記収集部の負荷として測定する処理と、
判定部において、複数の監視データの重複度および前記負荷に基づいて、前記被監視装置に対する監視間隔を選定する処理と、
前記収集部において、前記選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、設定した監視間隔に基づいて、被監視装置の監視を行なう技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ネットワーク機器やサーバ等のシステム状態を把握するために、監視装置が用いられている。
図7は、従来の監視システムの概要を示す図である。監視装置71は、監視プロトコル73を用いて、被監視装置75のシステムのリソースやパフォーマンスなどの監視項目77を監視する。このような監視を実行するためには、監視装置71に少なくとも以下の4項目を設定する必要がある。
【0003】
(1)監視プロトコルは、SNMP(Simple Network Management Protocol)やIPMI(Intelligent Platform Management Interface)、コマンド入力、ファイル参照等の監視データを監視する手段のことである。
(2)被監視装置は、監視対象とするネットワーク機器やサーバのホスト名やIPアドレスのことである。
(3)監視項目は、上記監視プロトコルを用いて監視する項目であり、例えば、CPU使用率やメモリ使用率、トラフィック量等の項目のことである。
(4)監視間隔は、監視装置71が監視項目を収集する時間間隔のことである。
【0004】
ネットワーク機器やサーバの管理者は、上記の4項目を設定することによって、ネットワーク機器やサーバの状態を監視する。上記4項目のうち、(1)〜(3)は、監視要件やシステム要件によって定まることが一般的である。一方、(4)の監視間隔については、管理者の経験に依るところが大きい。
【0005】
ここで、パフォーマンス監視に関する監視項目には、大別すると2種類の型が存在する。1つ目は「離散型」であり、メモリ使用量等の監視時点でのシステム状態を表す監視データや、平均CPU使用率等の規格化された監視データをもつ監視項目を意味する。もう1つは「積算型」であり、起動後のシステム使用時間など単調的に増加する監視データをもつ監視項目を意味する。監視装置71では、最新の監視データと前回取得した監視データとの時間差分を計算することで変動を監視する場合が多い。
【0006】
一般に、監視間隔を短くすることによって、被監視装置75の状態を正確に把握できる。例えば、
図8は、監視間隔を10秒と5分とした場合において、単位時間当たりの受信パケット数の監視結果を示す。
図8では、積算型の監視項目である受信パケット数の時間差分を示しているが、監視間隔が10秒間隔の場合は、バースト的な変動を捕らえているものの、5分間隔ではバースト的変動は丸められ、管理者はバースト的な変動を把握することができない。
【0007】
一方、監視間隔を短くし過ぎると、監視装置の監視負荷が増大し、他の動作に影響を及ぼす。さらに、監視項目によっては更新間隔が決まっている場合があり、更新前に複数回監視をしても、重複して同じ監視データを取得する無駄が生じる。例えば、SNMPを用いた監視方法では、被監視装置のMIB(Management Information Base)と呼ばれる管理データベース内に保持されている監視データを参照することによって監視をするが、MIBの更新間隔は監視項目によって各々予め決まっており、MIB更新がなされるまでは同じ値しか取得できない。
【0008】
また、特許文献1には、被監視装置のリソース状態を取得する監視システムが提案されている。この監視システムは、監視対象装置にリモートログインすることにより、所定の時間間隔で監視対象装置のリソース状態を取得する。そして、このリソース状態を表示することによって、監視対象装置の監視を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2015−082131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来から、ネットワーク装置やサーバ等のシステム状態を監視する上で、監視間隔を適切に設定する方法は提案されておらず、管理者の経験によって設定されている場合が多い。監視間隔を短くすれば、より詳細な監視ができるものの、監視装置に高負荷が掛かる場合がある。また、監視項目によっては重複して同じ監視データを何度も取得する無駄が生じる。監視間隔を長くすれば、監視負荷は比較的小さいものの、監視データが丸められ、監視として有効ではない場合がある。
【0011】
また、特許文献1記載の技術では、監視間隔は所定の値としており、状況に応じて監視間隔を調整することは想定されていない。このため、監視間隔は管理者の経験に依存することとなる。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、監視データの重複度と監視負荷を計測することで、自動的に適切な監視間隔を設定することができる監視装置、監視方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の監視装置は、被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、前記設定した監視間隔に基づいて、前記被監視装置の監視を行なう監視装置であって、前記被監視装置から監視項目に関する監視データを収集する収集部と、前記収集部が監視データを収集する際に消費するリソースを、前記収集部の負荷として測定する測定部と、複数の監視データの重複度および前記負荷に基づいて、前記被監視装置に対する監視間隔を選定する判定部と、を備え、前記収集部は、前記選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集することを特徴とする。
【0014】
このように、複数の監視データの重複度および負荷に基づいて、被監視装置に対する監視間隔を選定し、選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集するので、管理者が各監視方法で取得できる監視データの更新時間、有効性および監視負荷を考慮することなく、自動的に適切な監視間隔を設定し、監視データの収集を実行することが可能となる。
【0015】
(2)また、本発明の監視装置において、前記判定部は、時系列的に連続する2つの監視データの変動率を算出し、前記変動率と第1の閾値とを比較し、前記変動率が第1の閾値以下である場合に、2つの監視データは重複していると判定し、監視間隔に対する監視データの平均重複度と第2の閾値を比較すると共に、監視間隔に対する負荷と第3の閾値とを比較することによって、前記被監視装置に対する監視間隔を選定することを特徴とする。
【0016】
このように、監視間隔に対する監視データの平均重複度と第2の閾値を比較すると共に、監視間隔に対する負荷と第3の閾値とを比較することによって、被監視装置に対する監視間隔を選定するので、平均重複度および負荷に応じた監視間隔を自動的に設定することが可能となる。
【0017】
(3)また、本発明の監視装置において、前記判定部は、時系列的に連続する2つの監視データの変動率を算出し、前記変動率と第1の閾値とを比較し、前記変動率が第1の閾値以下である場合に、2つの監視データは重複していると判定し、監視間隔に対する監視データの重複度の最悪値と第2の閾値を比較すると共に、監視間隔に対する負荷と第3の閾値とを比較することによって、前記被監視装置に対する監視間隔を選定することを特徴とする。
【0018】
このように、監視間隔に対する監視データの重複度の最悪値と第2の閾値を比較すると共に、監視間隔に対する負荷と第3の閾値とを比較することによって、被監視装置に対する監視間隔を選定するので、重複度の最悪値および負荷に応じた監視間隔を自動的に設定することが可能となる。
【0019】
(4)また、本発明の監視装置において、前記判定部は、前記第2の閾値以下となる重複度または前記第3の閾値以下となる負荷の少なくとも一方が存在しない場合、前記第2の閾値または前記第3の閾値の再設定、重複度の負荷のいずれか一方への優先度の設定、または、前記第2の閾値および前記第3の閾値の再設定のいずれかを行なって、再度監視間隔の選定を行なうことを特徴とする。
【0020】
このように、第2の閾値以下となる重複度または第3の閾値以下となる負荷の少なくとも一方が存在しない場合、第2の閾値または第3の閾値の再設定、重複度の負荷のいずれか一方への優先度の設定、または、第2の閾値および第3の閾値の再設定のいずれかを行なって、再度監視間隔の選定を行なうので、重複度および負荷に応じた監視間隔を自動的に設定することが可能となる。
【0021】
(5)また、本発明の監視方法は、被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、前記設定した監視間隔に基づいて、前記被監視装置の監視を行なう監視方法であって、収集部において、前記被監視装置から監視項目に関する監視データを収集するステップと、測定部において、前記収集部が監視データを収集する際に消費するリソースを、前記収集部の負荷として測定するステップと、判定部において、複数の監視データの重複度および前記負荷に基づいて、前記被監視装置に対する監視間隔を選定するステップと、前記収集部において、前記選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集するステップと、を少なくとも含むことを特徴とする。
【0022】
このように、複数の監視データの重複度および負荷に基づいて、被監視装置に対する監視間隔を選定し、選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集するので、管理者が各監視方法で取得できる監視データの更新時間、有効性および監視負荷を考慮することなく、自動的に適切な監視間隔を設定し、監視データの収集を実行することが可能となる。
【0023】
(6)また、本発明のプログラムは、被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、前記設定した監視間隔に基づいて、前記被監視装置の監視を行なう監視装置のプログラムであって、収集部において、前記被監視装置から監視項目に関する監視データを収集する処理と、測定部において、前記収集部が監視データを収集する際に消費するリソースを、前記収集部の負荷として測定する処理と、判定部において、複数の監視データの重複度および前記負荷に基づいて、前記被監視装置に対する監視間隔を選定する処理と、前記収集部において、前記選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0024】
このように、複数の監視データの重複度および負荷に基づいて、被監視装置に対する監視間隔を選定し、選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集するので、管理者が各監視方法で取得できる監視データの更新時間、有効性および監視負荷を考慮することなく、自動的に適切な監視間隔を設定し、監視データの収集を実行することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、管理者が各監視方法で取得できる監視データの更新時間、有効性および監視負荷を考慮することなく、自動的に適切な監視間隔を設定し、監視データの収集を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態に係る監視装置の概略構成を示す図である。
【
図2】監視装置1における各機能ブロックの動作を示す図である。
【
図3】判定部9が重複度を算出する動作を示すフローチャートである。
【
図4】判定部9が重複度を算出する動作を示すフローチャートである。
【
図5A】監視間隔候補に対する判定過程を表す図である。
【
図5B】監視間隔候補に対する判定過程を表す図である。
【
図6A】監視間隔候補に対する判定過程を表す図である。
【
図6B】監視間隔候補に対する判定過程を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは、ネットワーク機器やサーバ等のシステム状態を把握する監視装置において、監視間隔を適切に自動設定する技術が提案されていなかった点に着目し、監視データの収集時の負荷を計測すると共に、監視データの重複度を計算し、重複度と負荷とから監視間隔を評価できることを見出し、本発明に至った。
【0028】
すなわち、本発明の監視装置は、被監視装置に対する監視間隔を自動的に設定し、前記設定した監視間隔に基づいて、前記被監視装置の監視を行なう監視装置であって、前記被監視装置から監視項目に関する監視データを収集する収集部と、前記収集部が監視データを収集する際に消費するリソースを、前記収集部の負荷として測定する測定部と、複数の監視データの重複度および前記負荷に基づいて、前記被監視装置に対する監視間隔を選定する判定部と、を備え、前記収集部は、前記選定された監視間隔に基づいて、監視データを収集することを特徴とする。
【0029】
これにより、本発明者らは、管理者が各監視方法で取得できる監視データの更新時間、有効性および監視負荷を考慮することなく、自動的に適切な監視間隔を設定し、監視データの収集を実行することを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0030】
図1は、本実施形態に係る監視装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、監視装置1は、設定部3において監視間隔を設定する。また、収集部5は、被監視装置21における複数の監視項目23に対し、監視により監視データを収集する。すなわち、収集部5は、被監視装置21から監視項目23に関する監視データを所定の時間間隔で収集し、収集した監視データを保存に適した形式に加工(例えば、積算型の監視項目であれば時間差分の計算)をし、保存部11に保存する。保存部11は、監視データを保存し、測定部7は、収集部5の負荷(例えば、CPU使用率など)を測定する。判定部9は、収集部5が収集した監視データと、測定部7が計測した収集部5の負荷から、監視間隔を評価する。すなわち、判定部9は、監視データの重複度を計算すると共に、収集部5の負荷と重複度から監視間隔を自動的に選定(判定)する。
【0031】
以上のような各機能は、監視装置1上で動作するが、監視装置1と被監視装置21は同一のハードウェア上、あるいは同一オペレーションシステム上に存在していてもよいし、別々のハードウェア上、あるいは別のオペレーティングシステム上に存在してもよい。
【0032】
図2は、監視装置1における各機能ブロックの動作を示す図である。
図2において、まず、収集部5の初期設定を行なう(ステップS1)。収集部5は、監視間隔を共通化する一つの被監視装置と一つの監視プロトコルと一つの監視項目からなる監視データ収集手段の組み合わせについて、単一あるいは複数の組み合わせを管理する。すなわち、収集部5は、被監視装置や監視プロトコルや監視項目の種類によって制限されることはなく、監視間隔を共通化する収集手段の集合として機能し得る。例えば、以下の表では、4つの収集手段が1つの収集部5で動作する。以下、(被監視装置、監視プロトコル、監視項目)の組み合わせを「収集手段」と呼称する。
【0034】
次に、収集部5を起動する(ステップS2)。収集部5は、測定部7によって負荷計測できるような単位(例えば、プロセスやシステムコンテナ、仮想マシン等)で起動する。次に、初期設定を行なう(ステップS3)。ここでは、収集部5に、収集手段を設定する。初期設定が完了すると、次に、監視間隔の調整を開始する(ステップS4)。この調整は、以下(a)または(b)のように行なわれる。
【0035】
(a)予め監視間隔の候補(例えば、5秒、10秒、30秒、60秒、180秒、300秒など)が定められている場合は、これらの候補を対象として調整がなされる。
【0036】
(b)予め上記のような候補が定められていない場合は、この調整において、所定の監視間隔区間内を所定の時間間隔(例えば、1分から3分の監視間隔区間において30秒間隔で調整をするのであれば、60秒、90秒、120秒、150秒)から得られる監視間隔の候補を対象として調整がなされる。
【0037】
次に、監視間隔の設定が行なわれる(ステップS5)。監視間隔の候補のうち、未設定の候補の一つを、監視間隔の大きい順に収集部5に設定する。次に、収集負荷の測定を開始する(ステップS6)。測定部7が収集部5の負荷の測定を開始する。負荷とは、収集部5が消費するリソース(CPU使用率等)である。次に、監視データを収集する(ステップS7)。ここでは、所定回数、監視データを収集する。所定回数の監視データの収集が終了すると、監視データの収集と、収集部5の負荷の測定を終了する(ステップS8)。
【0038】
次に、収集部5の負荷の測定結果を判定部9に送信し(ステップS9)、さらに、監視データを判定部9に送信する(ステップS10)。次に、判定部9において、受信した監視データに基づいて、後述するような方法で、重複度の計算をする(ステップS11)。
【0039】
図3は、判定部9が重複度を算出する動作を示すフローチャートである。判定部9は、時系列的に連続する2つの監視データが重複しているかどうかを判断するため、2つの監視データの変動率を計算する。この変動率がα(0≦α<1)以下であれば重複であるとみなす。この「重複度」とは、監視データ数に対する重複数の割合である。
図3において、M個の収集手段のN回分の監視データを取得する(ステップT1)。次に、データを正規化し(ステップT2)、変数「i」に数値を与える(ステップT3)。iは重複数を示すカウンタ値であり、初期値は0である。次に、ステップT4〜T9のループ1とその中で処理されるステップT5〜T8のループ2を実行する。具体的には、連続する2つの監視データを比較し、監視データの変動率がα(0≦α<1)以下であれば、カウンタ値をインクリメントする(ステップT6、T7)。M個の収集手段のN回分の監視データを処理したら、ループ1と2を終了し(ステップT8、T9)、全監視データ数でカウンタ値を除することで平均重複度を求めて終了する(ステップT10)。
【0040】
図4は、判定部9が重複度を算出する動作を示すフローチャートである。
図4では、ステップT1〜T8までは
図3と同様であるが、収集手段毎に重複度を計算し、最悪値となる重複度を採用する点で異なっている(ステップT11、T12)。
【0041】
図2に戻り、loop#1の処理は、ステップS4にて与えられる監視間隔の候補について、監視間隔の降順に処理がなされ、各処理内で重複度を計算する(ステップS11)。計算後、上記重複度と前回の重複度とを比較し、上記重複度が前回の重複度以上かつ重複度閾値以上であればループ処理を中断し、監視間隔の判定処理(ステップS12)に移行する。
【0042】
図5Aおよび
図5B、
図6Aおよび
図6Bは、監視間隔候補[600秒、300秒、180秒、60秒、30秒、10秒、5秒、1秒]に対する判定過程を表す図である。監視間隔の大きい順に重複度の評価を実施し、重複度が前回重複度以上かつ重複度閾値以上となる監視間隔となったらステップS12の判定処理に移行する。
図5Aおよび
図5Bの場合は[600秒、300秒、180秒、60秒、30秒、10秒]を、
図6Aおよび
図6Bの場合は[600秒、300秒、180秒、60秒、30秒]の重複度を評価した。
【0043】
判定部9における監視間隔の判定処理(ステップS12)は、以下のとおりである。すなわち、判定処理では、重複度が重複度閾値以下となる監視間隔と、負荷が負荷閾値以下となる監視間隔を抽出し、両条件を満たす監視間隔の中で最小となる監視間隔を採用する。ここで、監視間隔が短いほど、監視項目の更新時間の影響を受け、重複した監視データが多くなるため、重複度は大きくなる。他方で、監視間隔が長いほど積算型の監視項目は丸められ、監視データの変動を把握しづらくなるため、重複度は大きくなる。
【0044】
図5Aおよび
図5Bでは、重複度が[300秒、180秒、60秒、30秒]、負荷が[600秒、300秒、180秒]が各閾値以下となり、両条件を満たす最小の監視間隔である180秒が最終的な監視間隔として採用される。
【0045】
一方、
図6Aおよび
図6Bでは、重複度では[60秒]、負荷では[600秒、300秒]が各閾値以下となり、両条件を満たす監視間隔は存在しない。この場合は以下の方法により、監視間隔を決定する。
【0046】
(A)各閾値の再設定することで、再度監視間隔を評価する。
(B)重複度と負荷のどちらを優先させるかを決め、両条件を満たす監視間隔が存在するようになるまで、優先させない方の閾値を上昇させる。
(C)両条件を満たす監視間隔が存在するまで、各閾値を最小単位ずつ(例えば1%ずつ)上昇させる。
【0047】
次に、
図2において、判定部9は、重複度と収集部5の負荷に基づいて、監視間隔の選定(判定)を行なう(ステップS12)。そして、判定部9は、判定結果を設定部3に送信する(ステップS13)。設定部3は、受信した判定結果に基づいて、収集部5に監視間隔を設定する。また、収集部5は、監視を開始し、収集した監視データを保存部11へ格納する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態によれば、管理者は各監視方法で取得できる監視データの更新時間や有効性、監視負荷を考慮せず、自動で適切な監視間隔を設定することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 監視装置
3 設定部
5 収集部
7 測定部
9 判定部
11 保存部
21 被監視装置
23 監視項目