特許第6706592号(P6706592)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706592
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】マスカラ塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20200601BHJP
【FI】
   A45D34/04 510A
   A45D34/04 515A
   A45D34/04 515C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-81665(P2017-81665)
(22)【出願日】2017年4月17日
(62)【分割の表示】特願2015-142964(P2015-142964)の分割
【原出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-140454(P2017-140454A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100067644
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100125313
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵一郎
(72)【発明者】
【氏名】矢島 勲
【審査官】 高田 基史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−046243(JP,A)
【文献】 特開2015−058056(JP,A)
【文献】 特開昭63−111808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸の先端に備えられた塗布部が、支持軸の軸方向に沿って湾曲する軸部(長手方向に沿った貫通孔に湾曲した中軸を挿通し該中軸の回転により湾曲変形可能とした軸部を除く)と、前記軸部の両側面から湾曲した軸部を含む仮想平面に対して垂直方向に、平板面が互いに対向して立設する複数の櫛歯と、からなり、櫛歯は、略三角形状の均一肉厚の平板状であり、軸部と両側面の櫛歯を含む軸部に垂直な塗布部の断面形状が、2本の対角線の長さ比を5:12〜5:16とする略菱形であり、前記軸部の断面外形が前記略菱形の一組の対角の頂点において内接する形状であることを特徴とするマスカラ塗布具。
【請求項2】
軸部は所定の曲率で円弧状に湾曲し、略三角平板状の櫛歯の平板面は、軸部の円弧の接線に対し垂直に配列することを特徴とする請求項1記載のマスカラ塗布具。
【請求項3】
軸部は湾曲した、円柱、楕円柱及び略多角柱のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1又は2記載のマスカラ塗布具。
【請求項4】
塗布部は、軸部と櫛歯とを一体成型することにより形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマスカラ塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睫毛にマスカラ液を塗布するためのマスカラ塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、睫毛を整えたり、マスカラ液を塗布する化粧行為は目元をメーキャップする上で重要であり、マスカラ塗布具は目元におけるメーキャップの仕上がりを左右する重要な化粧用具の一つである。
【0003】
マスカラ液を塗布し、睫毛を美麗に化粧するためには、マスカラ液を睫毛の根元から先端にかけて均一に塗布する必要がある。このため、マスカラ塗布具は睫毛の根元に入り込み、櫛歯間に保持するマスカラ液を睫毛の根元に塗布できるような形状にする必要がある。
【0004】
また、睫毛の根元から先端にかけてダマ(マスカラ塊)にならず均一にマスカラ液を塗布するためには、睫毛を梳かすことができるよう櫛歯の間隔を狭めながら、櫛歯の間には十分な量のマスカラ液を保持できるような櫛歯の形状にする必要もある。
【0005】
さらに、マスカラ塗布具は、通常、マスカラ液を収容した容器本体の口部に螺合するキャップの内側に支持軸を取り付け、かかる支持軸の先端に塗布部を備えた構造であるが(図6)、マスカラ液は睫毛に付着しやすくするため比較的高い粘度を有しており、使用の際にはマスカラ塗布具を容器本体の口部に備えたシゴキ部材により余分なマスカラ液を掻き落として使用することから、マスカラ塗布具は、シゴキ部材との摩擦力に耐え得るような形状にする必要もある。
【0006】
このように睫毛に美麗な化粧を施すためには、適量のマスカラ液を睫毛の根元から先端にかけてダマになることなく均一に塗布することができ、しかも繰り返しの使用においても十分な耐久性を有する形状のマスカラ塗布具を開発することが重要となる。
【0007】
【特許文献1】特開2010−227297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、適量のマスカラ液を睫毛の根元から先端にかけてダマになることなく均一に塗布することができ、しかも繰り返しの使用においても十分な耐久性を有する形状のマスカラ塗布具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明者が検討を行った結果、支持軸の先端に備えられた塗布部を、支持軸の軸方向に沿って湾曲する軸部と、該軸部の両側面から湾曲した軸部を含む仮想平面に対して垂直方向に、平板面が互いに対向して立設する略三角平板状の複数の櫛歯と、により構成し、軸部と両側面の櫛歯を含む軸部に垂直な塗布部の断面形状において、軸部の断面外形が両側面の櫛歯により形成される略菱形の断面外形に対し、該略菱形の一組の対角の頂点において内接する形状とすることが睫毛の化粧において効果的であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、支持軸の先端に備えられた塗布部が、支持軸の軸方向に沿って湾曲する軸部(長手方向に沿った貫通孔に湾曲した中軸を挿通し該中軸の回転により湾曲変形可能とした軸部を除く)と、前記軸部の両側面から湾曲した軸部を含む仮想平面に対して垂直方向に、平板面が互いに対向して立設する複数の櫛歯と、からなり、櫛歯は、略三角形状の均一肉厚の平板状であり、軸部と両側面の櫛歯を含む軸部に垂直な塗布部の断面形状が、2本の対角線の長さ比を5:12〜5:16とする略菱形であり、前記軸部の断面外形が前記略菱形の一組の対角の頂点において内接する形状であることを特徴とするマスカラ塗布具である。
【0011】
さらに本発明は、軸部が所定の曲率で円弧状に湾曲し、略三角平板状の櫛歯の平板面は、軸部の円弧の接線に対し垂直に配列することを特徴とするマスカラ塗布具である。
【0012】
さらに本発明は、軸部が湾曲した、円柱、楕円柱及び略多角柱のいずれかの形状であることを特徴とするマスカラ塗布具である。
【0013】
さらに本発明は、塗布部が、軸部と櫛歯とを一体成型することにより形成されることを特徴とするマスカラ塗布具である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマスカラ塗布具は睫毛の根元に入り込み、櫛歯の根元を睫毛の根元に近づけることが出来るため、櫛歯間に保持するマスカラ液を睫毛の根元にも十分塗布することができ、マスカラ液を睫毛の根元から先端にかけて均一に塗布して、睫毛を美麗に化粧することができる。
【0015】
所定の間隔で配列する略三角平板状の櫛歯は、その櫛歯間にマスカラ液を十分保持することができるとともに、睫毛の一本一本をさばくことができるため、睫毛の根元から先端にかけてマスカラ液をダマになることなく均一に塗布することができる。
【0016】
塗布部が、軸部と両側面の櫛歯を含む軸部に垂直な断面形状において、軸部の断面外形が両側面の櫛歯により形成される略菱形の断面外形に対し、当該略菱形の一組の対角の頂点において内接する形状であることにより、使用の際に容器本体から引き抜かれたとき、容器本体の口部に備えたシゴキ部材との摩擦抵抗を少なくし、塗布部の摩耗を減らして塗布部およびシゴキ部材の変形あるいは損耗を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】マスカラ塗布具の外観図((a)正面図、(b)側面図、(c)平面図、(d)A−A断面図(第1の実施形態))
図2】マスカラ塗布具の正面拡大図
図3】マスカラ塗布具のA−A断面図((a)第2の実施形態、(b)第3の実施形態、(c)第4の実施形態、(d)第5の実施形態)
図4】マスカラ塗布具のA−A断面図((a)第6の実施形態、(b)第7の実施形態、(c)第8の実施形態、(d)第9の実施形態、(e)第10の実施形態、(f)第11の実施形態)
図5】マスカラ塗布具の使用状態を示すモデル図
図6】マスカラ塗布具とマスカラ液を収容した容器本体を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の化粧用ブラシを以下に詳細に説明する。
【0019】
マスカラ塗布具は、図1に示すように、支持軸(2)と支持軸の先端に備えられた塗布部(3)により構成される。塗布部(3)とは反対の支持軸(2)の先端は、マスカラ液を収容した容器本体(10)の口部に螺合するキャップ(11)の内側に固定し、使用の際には、キャップの開栓とともに、容器本体内のマスカラ液を塗布部ですくい取りながら睫毛に塗布することができる(図6)。
【0020】
塗布部(3)は軸部(4)と櫛歯(5)により構成されており、軸部(4)は支持軸(2)の軸方向に沿って湾曲している(図1)。このように軸部(4)を湾曲することで、湾曲した睫毛の生え際に沿って塗布部をあてがうことができ、睫毛の根元にマスカラ液を効率的に塗布することが可能となる。
【0021】
また軸部(4)の両側面からは、湾曲した軸部を含む仮想平面に対して垂直方向に、平板面が互いに対向するように略三角平板状の複数の櫛歯(5)が立設している(図1)。睫毛にマスカラ液を塗布する際、通常、視界を遮ることがないよう右目の睫毛にマスカラ液を塗布するときはマスカラ塗布具は右手に持ち、左目の睫毛に塗布するときはマスカラ塗布具は左手で持って化粧行為を行うため、軸部(4)の両側面には、左右いずれの手に持っても同じように化粧行為を行うことができるように軸部を挟んで対称の形状の櫛歯が湾曲した軸部を含む仮想平面に対して垂直に複数立設している。
【0022】
櫛歯(5)は略三角平板状であり、隣り合う櫛歯どうしは互いに平板面が対向するように配列している。略三角平板状の櫛歯は、三角形の底辺部分が軸部(4)と接合するため強度を高めることができるとともに、櫛歯の厚さを薄くして、多数配列することが可能となる。また、櫛歯の先端は鋭角に尖っているため、細かい化粧操作が可能であり、すぐれた化粧仕上がりを得ることができる。櫛歯(5)の略三角平板の形状は、必ずしも二等辺三角形である必要はなく、左右の辺の長さが異なる三角形状であってもよい。また左右の辺は必ずしも直線に限られず曲線であってもよい。三角形の頂点は、化粧する際にまぶたや目を傷つけることがないよう、適宜、丸みをつけた形状とすることができ、例えば、櫛歯を半楕円形状のようにして大きな曲率を設けることもできる。
【0023】
櫛歯(5)の対向する平板面の間には、十分な量のマスカラ液を保持することができるため、睫毛にムラなく均一にマスカラ液を塗布することができる。また、軸部(4)を睫毛の生え際に沿わせた際、睫毛が延びる方向に沿って平板面が配列することとなるため、睫毛を梳かす効果が高まり、塗布するマスカラ液がダマになりにくく、睫毛に均一に塗布することが可能となる。
【0024】
塗布部(3)の形状は、軸部(4)と両側面の櫛歯(5)を含む軸部に垂直な断面形状(図1のA−A線における断面形状)において、図1(d)に示すように、軸部の断面外形(6)が両側面の櫛歯により形成される略菱形の断面外形(7)に対し、かかる略菱形の断面外形(7)における一組の対角の頂点(8a、8b)において内接する形状とすることを特徴とする。軸部(4)と櫛歯(5)をこのような断面形状にすることで、軸部(4)を睫毛の生え際に近づけたとき、図5に示すように、櫛歯(5)の根元を睫毛の根元に近づけることが出来るため、櫛歯間に保持するマスカラ液を睫毛の根元に十分塗布することができ、マスカラ液を睫毛の根元部分から先端にかけて均一に塗布して、睫毛を美麗に化粧することができる。また、このような軸部の形状は櫛歯の略三角平板状の櫛歯の平板面の面積を大きく確保することができるため、十分な量のマスカラ液を保持することができ、マスカラ液をムラなく睫毛に塗布することができる。さらに、マスカラ塗布具は、通常、図6に示すように、マスカラ液を収容した容器本体(10)の口部に螺合するキャップ(11)の内側に支持軸(2)を取り付け、かかる支持軸の先端に塗布部(3)を備えた構造であるが、マスカラ液は睫毛に付着しやすくするため比較的高い粘度を有しており、使用の際にはマスカラ塗布具を容器本体の口部に備えたシゴキ部材(図示せず)により余分なマスカラ液を掻き落として使用する。このため、マスカラ塗布具の塗布部はシゴキ部材との摩擦力により変形や損耗が生じる危険性があるが、本発明のマスカラ塗布具では、軸部の断面外形(6)が両側面の櫛歯により形成される略菱形の断面外形(7)に対し、略菱形の断面外形(7)における一組の対角の頂点(8)において内接する形状であることから、シゴキ部材との摩擦を低減させることができ、塗布部の変形や損耗を効果的に抑えることが可能となる。
【0025】
軸部の断面外形(6)は、両側面の櫛歯で形成される略菱形の断面外形(7)の2本の対角線のうち短い方の対角線の両端位置に相当する対角の頂点(8a、8b)で内接することが好ましく、略菱形の2本の対角線の寸法比(短い方の対角線の長さ:長い方の対角線の長さ)は、5:12〜5:16とすることが好ましい。短い方の対角線の長さが小さすぎると、櫛歯の間に保持できるマスカラ液の量が少なくなり、また櫛歯と軸部の接合強度が低下する一方、逆に大きすぎると櫛歯を睫毛の根元に入り込ませることが困難となる。また、長い方の対角線の長さが小さすぎると櫛歯の間に保持できるマスカラ液の量が少なくなり、逆に大きすぎるとマスカラ塗布具を容器の口部から引き抜くことが困難となる。このため両側面の櫛歯で形成される略菱形の断面外形(7)における2本の対角線の寸法比(短い方の対角線の長さ:長い方の対角線の長さ)は、5:12〜5:16とすることが好適である。
【0026】
軸部(4)は、マスカラ塗布具で睫毛にマスカラ液を塗布する際、睫毛の生え際に沿って睫毛の根元にあてがい易くするため、所定の曲率で円弧状に形成することができる。軸部の湾曲は、まぶたの湾曲度を考慮し曲率半径を約45mmとすることが好ましい。
【0027】
軸部は図1(b)に示すように、所定の曲率で湾曲し円弧形状をなし、これに対し略三角平板状の櫛歯は、それぞれの平板面が軸部の円弧の接線に対し垂直をなすように配列しており、湾曲する軸部の各部位の傾斜角度に応じて、櫛歯の平板面の傾斜角度も連続的に変化している(図2)。このように櫛歯の平板面の角度を連続的に変化させることにより、まぶたから放射状に伸び出す睫毛に対し、櫛歯の平板面を睫毛の1本1本に沿うようにして配置することができるため、より円滑にマスカラ液を睫毛に塗布することが可能となる。
【0028】
軸部は湾曲した、円柱、楕円柱及び略多角柱のいずれかの形状に成型することができる。軸部をこのような形状とすることで、軸部の曲げ強度が向上し塗布部の剛性が高くなるため化粧操作が行い易くなる。また、軸部が湾曲した円柱等の形状であれば、塗布部を成型する際においても、軸部の断面外形(6)を両側面の櫛歯により形成される略菱形の断面外形(7)に対し、かかる略菱形の断面外形(7)における一組の対角の頂点(8)において内接する形状に成型し易く量産において有利である。さらに軸部をこのような形状にすれば、略三角平板状の櫛歯の平板面の面積を大きくすることができ、櫛歯の間に十分な量のマスカラ液を保持することが可能となる。
【0029】
図3に、軸部を四角柱、六角柱及び八角柱とした実施形態を示すが、軸部は、このような多角柱だけでなく、180度を超える角をもつ凹多角形を底面とする多角柱とすることもできる。また、多角柱の角部分に丸みをもたせたり、平面部分を湾曲させたような、略多角柱とすることもできる。図4に、その他の実施形態を例示する。
【0030】
塗布部(3)は、軸部(4)と櫛歯(5)とを一体成型することにより形成することができる。軸部と櫛歯を樹脂製とし金型を用いて一体成型すれば、塗布部の強度が向上し、マスカラ塗布具の耐久性が向上するとともに、塗布部を量産する上で、時間と労力を飛躍的に軽減することができる。
【0031】
塗布部を形成するための樹脂材料としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、例えばポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、エラストマー、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン等を用いることができる。
【0032】
塗布部は、マスカラ液を担持し易く、また、肌あたりをソフトにするため、フロッキー植毛してもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 マスカラ塗布具
2 支持軸
3 塗布部
4 軸部
5 櫛歯
6 軸部の断面外径
7 略菱形の断面外径
8 略菱形の断面外形における一組の対角の頂点
8a 対角の頂点
8b 対角の頂点
9 軸部の円弧の接線
10 容器本体
11 キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6