(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長手方向の一部で、所定の長さにわたって被覆が非存在であることで導体が露出している電線の、前記露出している導体の長手方向の少なくとも一部に、前記導体の素線同士が接合されている接合部位を形成する接合部位形成工程と、
ワイヤバレル部を備えた端子を、前記ワイヤバレル部が前記接合部位形成工程で形成された接合部位の少なくとも一部を覆うように前記電線に設置する端子設置工程と、
を有し、前記接合部位形成工程で形成され前記端子設置工程で前記端子が設置される前の前記接合部位の断面形状が、前記接合部位を前記ワイヤバレル部内で前記ワイヤバレル部に係合させつつ前記接合部位を任意の角度回転したときに、前記接合部位の断面の幾何中心と前記ワイヤバレル部との間の距離の値の変域が、「0.71〜1.29」の範囲内に収まる形状に形成されており、
前記端子設置工程は、前記ワイヤバレル部の、前記被覆側に位置している端が、前記接合部位の、前記被覆側に位置している端よりも、前記被覆側に位置するように前記端子を前記電線に設置する工程であり、
また、前記端子設置工程では、前記ワイヤバレル部の、前記被覆側に位置している端が、前記電線の被覆から離れており、
前記電線の長手方向と前記ワイヤバレル部の前後方向とがお互いに一致しており、
前後方向で、前記接合部位が前記ワイヤバレル部の内側に位置していることを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る端子付き電線の製造方法で製造された端子付き電線1は、
図3で示すように、電線3と端子(端子金具)5とを備えて構成されている。
【0023】
ここで、説明の便宜のために、端子付き電線1における所定の一方向を前後方向とし、この前後方向に対して直交する所定の一方向を高さ方向とし、前後方向と高さ方向に対して直交する方向を幅方向とする。
【0024】
電線3は、導体(芯線)7と導体7を覆っている(被覆している)被覆(絶縁体)9とを備えて構成されており、電線3の長手方向(前後方向)の一端部(前端部)では、導体7が露出している。この露出している導体7(露出導体7A)の一部に所定の長さにわたって接合部位11が形成されている。
【0025】
端子5は、ワイヤバレル部13を備えて構成されており、ワイヤバレル部13がたとえばカシメられた状態になっていることで、接合部位11にワイヤバレル部13が一体的に設置されている。
【0026】
次に、端子付き電線1の製造方法について説明する。
【0027】
端子付き電線1は、接合部位形成工程と端子設置工程とを経て製造される
接合部位形成工程では、まず、長手方向(長さ方向)の一部(たとえば前端部)で、所定の長さにわたって被覆9が非存在であることで(たとえば、被覆9の一部が除去されて)導体7が露出している電線3を用意する。
【0028】
続いて、露出している導体7(露出導体7A)の長手方向の少なくとも一部(たとえば前端部)に、接合部位11を形成する(
図2参照)。接合部位11は、導体7を構成している複数本の素線15同士を超音波接合(超音波処理)することで形成される。
【0029】
また、超音波接合は、
図1で示すように、アンビル16とホーン18とで導体7を所定の力で挟み込んでおいて(
図1の矢印参照)、ホーン18を
図1の紙面に直交する方向に超音波振動することでなされる。なお、
図1では個々の素線15の表示は省略している。
【0030】
端子設置工程では、接合部位形成工程で形成された接合部位11の少なくとも一部をワイヤバレル部13が包み込んで覆うように、ワイヤバレル部13を備えた端子5を電線3に設置する。
【0031】
なお、接合部位形成工程で形成され端子設置工程で端子5が設置される前(ワイヤバレル部13のカシメがされる前)においては、接合部位11の断面形状(電線3の長手方向に対して直交する平面による断面の形状)が、円形状もしくは非円形状に形成されている。
【0032】
さらに説明すると、
図4、
図5等で示すように、ワイヤバレル部13のカシメがされる前における接合部位11の断面形状は、接合部位11を端子5に接触させて接合部位11を端子5に対して任意の角度回転したときに、接合部位11の断面の幾何中心19とワイヤバレル部13(たとえば、底板部17の最も底の部位)との間の距離の値の変域(比率の変域)が、所定の範囲内に収まるような形状になっている。
【0033】
ワイヤバレル部13のカシメがされる前の接合部位11の端子5に対する上記回転は、接合部位11をワイヤバレル部13内でワイヤバレル部13の底板部17の最も底の部位もしくはこの近傍の部位に、1箇所もしくは2箇所で係合(接触;線接触)させつつなされる。
【0034】
接合部位11の端子5に対する上記回転をさせるときには、接合部位11の長手方向と端子5の前後方向とはお互いが一致している。
【0035】
また、接合部位11の断面の幾何中心19とワイヤバレル部13との間の距離の値の変域は、0.71〜1.29の範囲内、好ましくは0.73〜1.27の範囲内、より好ましくは0.75〜1.25の範囲内、より好ましくは0.77〜1.23の範囲内、より好ましくは0.80〜1.20の範囲内、さらに好ましくは0.82〜1.18範囲内になっている。
【0036】
なお、上記変域は、接合部位11の断面の幾何中心19とワイヤバレル部13との間の距離の値の平均値((最大値+最小値)/2)を1.0としたときの値(割合値)である。したがって、たとえば平均値が2.0mmであって変域が0.8〜1.2である場合には、上記距離は、1.6mm(2.0mm×0.8)〜2.4mm(2.0mm×1.2)になる。
【0037】
別の表現をすれば、接合部位形成工程で形成され端子設置工程で端子5が設置される前(ワイヤバレル部13のカシメがされる前)においては、接合部位11の断面形状(電線3の長手方向に対して直交する平面による断面の形状)は、所定形状に形成されている。
【0038】
上記所定形状は、接合部位11をワイヤバレル部13内でワイヤバレル部13に係合させつつ(たとえば、ワイヤバレル部13の高さ方向の最底部もしくはこの最底部の近傍に、接合部位11を接触させつつ)、接合部位11を前後方向の延伸している軸を中心にして任意の角度回転したときに、接合部位11の断面の幾何中心19と、ワイヤバレル部13との間の距離(たとえば、幾何中心19と、ワイヤバレル部13と接合部位11との接触箇所とにおける高さ方向の距離)が一定であるかもしくは変化する形状になっている。
【0039】
上記変化をする場合には、上記変化の範囲は、高さ方向の距離の最小値を「1」とすると、高さ方向の距離の最大値が「1.81」よりも小さくなる範囲になっている。すなわち、断面の幾何中心19とワイヤバレル部13との間の距離は、1〜1.81の範囲内で変化するようになっている。
【0040】
ここで、接合部位11の断面形状が長方形状である場合を例に掲げてさらに詳しく説明する。接合部位11の断面の長方形の短辺の寸法を5mmとし、長方形の長辺の寸法を7.5mmとする。接合部位11の断面の長方形の対角線の寸法は、約9.0mmになる。
【0041】
この寸法の断面形状になっている接合部位11を端子5(ワイヤバレル部13)に接触させて接合部位11を端子5(ワイヤバレル部13)に対して任意の角度回転すると、接合部位11の幾何中心19と、ワイヤバレル部13と接合部位11との接触箇所との間における高さ方向の距離は、2.5mm(5mm/2)〜4.5mm(9mm/2)の範囲で変化する。
【0042】
これにより、接合部位11の断面の幾何中心19と、接合部位11とワイヤバレル部13との接触箇所との間の距離は、1(2.5mm/2.5mm)〜1.80(4.5mm/2.5mm;≒1.81)の範囲内で変化するようになっている。
【0043】
上記変化の範囲を、好ましくは1〜1.73にしてもよいし、より好ましくは1〜1.65にしてもよいし、より好ましくは1〜1.57にしてもよいし、より好ましくは1〜1.49にしてもよいし、さらに好ましくは、1〜1.42にしてもよい。
【0044】
接合部位11の断面形状が長方形状である場合であって上記変化の範囲が1〜1.81である場合には、長方形の短辺と長辺との比は、1:1.5になり、上記変化の範囲が1〜1.73である場合には、長方形の短辺と長辺との比は、1:1.4になり、上記変化の範囲が1〜1.65である場合には、長方形の短辺と長辺との比は、1:1.3になり、上記変化の範囲が1〜1.57である場合には、長方形の短辺と長辺との比は、1:1.2になり、上記変化の範囲が1〜1.49である場合には、長方形の短辺と長辺との比は、1:1.1になり、上記変化の範囲が1〜1.42である場合には、短辺と長辺との比は、1:1になり正方形になる。
【0045】
次に、接合部位11の断面の形状が円形である場合を例に掲げ、
図4(a)と
図5とを参照してさらに説明する。
【0046】
図4(a)と
図5に参照符号21で示すものは、接合部位11の回転角度を示すための仮想線である。
図4(a)で示す状態では、仮想線21は高さ方向に延びている。
図5(a)で示す状態では、
図4(a)で示す状態から時計回りに約45°接合部位11が回転している。
図5(b)で示す状態では、
図4(a)で示す状態から時計回りに約90°接合部位11が回転している。
【0047】
図4(a)で示す状態における接合部位11の幾何中心19と、接合部位11が接しているワイヤバレル部13の部位との間の距離L1は、
図5(a)で示す距離L2と等しく、
図5(b)で示す距離L3とも等しくなっている。
【0048】
これにより、接合部位11の断面の幾何中心19とワイヤバレル部13との間の距離の値の変化はなく、上記変域は、当然、0.8〜1.2の範囲内に収まっている。
【0049】
なお、接合部位11の断面の形状を非円形状に形成した場合、上記変域の範囲から、0.98〜1.02の範囲を除いてもよいし、もしくは、0.96〜1.04の範囲を除いてもよい。上述したように最小値を「1」とした場合には、最大値を「1.04」とした「1」〜「1.04」の範囲を除いてもよいし、もしくは、「1」〜「1.08」の範囲を除いてもよい。
【0050】
また、ワイヤバレル部13をカシメて接合部位11に設置するときに、接合部位11の回転角度にかかわらず、ワイヤバレル部13の一対の側板部23が不均衡な状態で接合部位11に食い込むことを防止するために(左右ほぼ均等に接合部位11に食い込むようにするために)、ワイヤバレル部13のカシメがされる前の接合部位11の断面形状が上述した円形状や非円形状になっている。
【0051】
端子付き電線1では、電線3や導体7の長手方向と端子5の前後方向とがお互いに一致おり、また、電線3の長手方向の一端が前側に位置しており、電線3の長手方向の他端が後側に位置している。
【0052】
カシメがされる前の端子5のワイヤバレル部13の断面(前後方向に対して直交する平面による断面)は、上述した底板部17と一対の側板部23とを備えて「U」字状に形成されている。
【0053】
底板部17の断面は、
図4(a)等で示すように、たとえば、厚さ方向がほぼ高さ方向になっており、内側の面(接合部位11に接する面)の曲率半径が接合部位11の円もしくは外接円(接合部位11が非円形状である場合における非円形の外接円)の半径と等しいか僅かに大きい円弧状になっている。
【0054】
一対の側板部23のそれぞれは、底板部17の幅方向の両端から、斜め上方に起立している。一対の側板部23間の寸法の値は、下側から上側に向かうにしたがって次第に大きくなっている。
【0055】
端子設置工程でのワイヤバレル部13の設置は、ワイヤバレル部13の内(「U」字内)で、底板部17内面の最も底の部位(底板部17内面最底部)もしくはこの近傍に接合部位11を接触させておいて、ワイヤバレル部13をカシメることでなされる。カシメによりワイヤバレル部13の筒の内側の面のほぼすべてが接合部位11に付勢力をもって接している。
【0056】
ところで、電線3の導体7の素線15は、銅、アルミニウム、もしくは、アルミニウム合金等の金属で細長い円柱状に形成されている。導体7は、複数本の素線15を撚った形態、もしくは、複数本の素線15がまとまって直線状に延びている形態で構成されている。
【0057】
また、電線3は可撓性を備えている。また、被覆9が存在している電線3の部位の断面(長手方向に対して直交する平面による断面)は、円形状等の所定形状に形成されている。
【0058】
被覆9が存在している電線3の部位における導体7の断面は、複数本の素線15がほとんど隙間の無い状態で束ねられていることで概ね円形状に形成されている。被覆9が存在している電線3の部位における被覆9の断面は、所定の幅(厚さ)を備えた円環状に形成されている。導体7の外周の全周に被覆9の内周の全周が接触している。
【0059】
なお、上記説明では、超音波接合によって素線同士が接合されたことで、接合部位11が形成されているが、超音波接合以外の接合手段によって、素線15同士を接合することで接合部位11が形成されていてもよい。たとえば、素線15の再結晶温度以下の温度で素線同士が冶金接合されていることで、超音波接合した場合と同様にして接合部位11が形成されていてもよい。
【0060】
さらに、接合部位11が、超音波処理以外の、冷間圧接、摩擦撹拌接合、摩擦圧接、電磁圧接、拡散接合、ろう付け、はんだ付け、抵抗溶接、電子ビーム溶接、レーザ溶接、光ビーム溶接等の処理で形成されていてもよい。
【0061】
ところで、
図2等で示すように、接合部位11と被覆9とは、電線3の長手方向でたとえば所定の長さだけ離れている。これにより、接合部位11と被覆9との間では、お互いが接してはいるが非接合状態になっている複数本の素線15(非接合状態の導体7B)が露出している。
【0062】
すなわち、電線3の長手方向の一端から他端に向かって、所定長さの接合部位11、非接合状態の導体7B、被覆9で覆われている導体7(被覆9が存在している電線3の部位)がこの順でならんでいる。
【0063】
次に、ワイヤバレル部13のカシメがされる前における接合部位11の断面形状(電線3の長手方向に対して直交する平面による断面の形状)が、非円形状である場合について例を掲げて説明する。この場合、接合部位11の断面形状として、上述した長方形状や正方形以外に、5つ以上の数の角部を有する正多角形状もしくは正多角形に近似した形状もしくは円に近似した形状を掲げることができる。
【0064】
まず、接合部位11の断面形状が、正方形以上(5つ以上)の数の角部を有する正多角形状に形成されている場合として、接合部位11の断面形状が正六角形や正八角形に形成されている場合について説明する。
【0065】
図6では、アンビル16とホーン18とで形成された接合部位11の断面形状が正六角形になっている。
図6で示す場合であっても、接合部位11の断面の幾何中心19とワイヤバレル部13との間の距離L4の値の変域は、0.8〜1.2の範囲内に収まっている。
【0066】
図7では、アンビル16とホーン18とで形成された接合部位11の断面形状が正八角形になっている。
図7で示す場合であっても、接合部位11の断面の幾何中心19とワイヤバレル部13との間の距離L5の値の変域は、0.8〜1.2の範囲内に収まっている。
【0067】
なお、接合部位11の断面形状が、正多角形だけでなく、正多角形に近似した形状であってもよい。正多角形に近似した形状では、各辺の長さの比が0.7〜1.3の範囲内(より好ましくは0.8〜1.2、さらに好ましくは0.9〜1.1)になっているものとする。
【0068】
また、正多角形や正多角形に近似した形状において、少なくとも1つの辺が円弧等の曲線になっていてもよい。この場合の例として厚肉両凸レンズ状の形状を掲げることができる。さらに、各角部が円弧状に丸められてもよい。
【0069】
次に、接合部位11の断面形状が、円に近似した形状に形成されている場合について説明する。
【0070】
円に近似した形状として、たとえば楕円形状や両凸レンズ形状(レモン形状)を掲げることができる。
【0071】
図8では、アンビル16とホーン18とで形成された接合部位11の断面形状が楕円形状になっている。この楕円形状では、たとえば、短辺/長辺の値が0.7以上1.0未満(より好ましくは0.8以上1.0未満、さらに好ましくは0.9以上1.0未満)になっている。
【0072】
図8で示す場合であっても、接合部位11の断面の幾何中心19とワイヤバレル部13との間の距離L6の値の変域は、0.8〜1.2の範囲内に収まっている。
【0073】
図9では、アンビル16とホーン18とで形成された接合部位11の断面形状が両凸レンズ形状になっている。この両凸レンズ形状でも、たとえば、短辺/長辺の値が0.7以上1.0未満(より好ましくは0.8以上1.0未満、さらに好ましくは0.9以上1.0未満)になっている。
【0074】
両凸レンズ状とは、光軸を含む平面による両凸レンズの断面形状であり、この場合の短辺の値は、両凸レンズの厚さの値の1/2であり、長辺の値は、両凸レンズの外径の値の1/2である。なお、実際の両凸レンズ(たとえば厚肉両凸レンズ)では、レンズの外周(光軸の延伸方向で見たときに外周)が背の低い円柱側面状になっているが、必ずしもこのようになっていなくてもよい。すなわち、
図9(b)で示すように、両凸レンズが2つの球がお互いに交わっている部位の形状であってもよい。
【0075】
図9で示す場合であっても、接合部位11の断面の幾何中心19とワイヤバレル部13との間の距離L7の値の変域は、0.8〜1.2の範囲内に収まっている。
【0076】
ここで、端子5についてさらに詳しく説明する。
【0077】
端子5は、たとえば、厚さが一定である平板状の金属の素材を所定形状に形成した状態にしてから、この所定形状に形成したものを適宜折り曲げることで形成されている。したがって、端子5のほぼ総ての部位における肉部の厚さは一定になっている。
【0078】
端子5は、
図3等で示すように、前側から後側にむかって、たとえば、相手側端子に接続される相手側端子接続部25、ワイヤバレル部13、インシュレーションバレル部27がこの順にならんでいる。
【0079】
カシメがされる前のインシュレーションバレル部27の断面(前後方向に対して直交する平面による断面)も、ワイヤバレル部13の断面と同様な「U」字状に形成されている。
【0080】
端子付き電線1では、ワイヤバレル部13がカシメられたことで、接合部位11とワイヤバレル部13とが一体化しており、インシュレーションバレル部27とがカシメられたことで、被覆9とインシュレーションバレル部27と一体化している。
【0081】
ワイヤバレル部13やインシュレーションバレル部27のカシメは、主として、一対の側板部23が塑性変形し、ワイヤバレル部13やインシュレーションバレル部が筒状になることでなされている。ワイヤバレル部13をカシメるときに、接合部位11が若干変形する。また、ワイヤバレル部13をカシメたときには、
図4(b)で示すように、ワイヤバレル部13一対の側板部23の先端部が接合部位11内に食い込んでいる。
【0082】
端子付き電線1によれば、接合部位11の断面形状が円形状や上述した非円形状(たとえば正多角形状)に形成されているので、接合部位11の中心軸(幾何中心19を含み前後方向に延びている中心軸)を中心にして、端子5に対して接合部位11が回転してしまっても、接合部位11の外周の形態がほとんど変化しない。これにより、ワイヤバレル部13をカシメたときに、ワイヤバレル部13の左右の側板部23が接合部位11に均一に食い込む。
【0083】
そして、電線3の導体7の接合部位11の圧縮の形態も均一になり、圧着部の性能(ワイヤバレル部13の圧着性能)の低下が抑制され、電線3(導体7)と端子5(ワイヤバレル部13)との機械的接合度および電気的接合度が安定する。
【0084】
また、端子付き電線1によれば、ワイヤバレル部13の底板部17の内側の面の曲率半径が、接合部位11の円もしくは外接円の半径と等しいか僅かに大きい円弧状に形成されており、端子設置工程でのワイヤバレル部13の設置が、底板部17の内面の最底部もしくはこの近傍に接合部位11を接触させておいて、ワイヤバレル部13をカシメることでなされるので、ワイヤバレル部13の一対の側板部23を接合部位11に均一に食い込ませることが一層確実になされる。
【0085】
ところで、接合部位形成工程で、露出導体7Aの長手方向の中間部で露出導体7Aを適宜の所定長に切断するようにしてもよい。
【0086】
すなわち、
図10、
図11で示すように、アンビル16に刃部(突起)29を設け、
図12、
図13で示すように、接合部位形成工程でアンビル16をホーン18側に移動して導体7を挟み込むとき等に、導体7を切断してもよい。
【0087】
なお、上記切断により、接合部位11が一定の長さL8になる。長さL8の値は、ワイヤバレル部13をカシメて設置するために必要な値である。
【0088】
図10に示すようなアンビル16とホーン18とによる導体7の挟み込みがされる前の状態では、アンビル16とホーン18との間に露出導体7Aが位置しており、アンビル16(刃部29)が露出導体7Aから離れている。ホーン18は超音波振動していないが、超音波振動していてもよい。
【0089】
図10に示す状態からアンビル16を矢印で示す方向に移動してホーン18に近づけると、
図12で示すように、アンビル16の刃部29が、露出導体7Aに食い込み、アンビル16とホーン18とによる露出導体7Aの挟み込みが終了する。このとき、高さ方向に走り刃部29の先端からホーン18まで至る亀裂30が露出導体7Aに形成される。
【0090】
この状態で、
図12に矢印で示す方向にホーン18を超音波振動させると、
図12に長さL8で示す箇所の導体7の部位に接合部位11が形成される。
【0091】
図12に示す状態で接合部位11が形成された後、アンビル16を接合部位11から離す方向に移動すると、
図13で示すように、亀裂30よりも左側の導体(接合された導体)が、端子付き電線1として用いられる電線3から分離される。
【0092】
また、
図10〜
図13で示す刃部29は、両刃になっており、幅方向から見ると、頂角が小さい(5°〜15°程度)の二等辺三角形状になっていて、頂角が突出端(先端)になるようにして、アンビル16の平面からホーン18側に突出している。また、刃部29は、幅方向の全幅にわたってアンビル16に設けられている。
【0093】
ところで、刃部29の形状を、
図14で示すように適宜変更してもよい。
【0094】
たとえば、
図14(a)で示すように、刃部29を片刃で形成してもよい。
図14(a)で示す刃部29を幅方向から見ると、1つの角が小さい(5°〜15°程度)直角三角形状になっていて、小さい1つの角が突出端(先端)になりアンビル16の平面と直交している1つの辺が後側に位置するようにして、アンビル16の平面からホーン18側に突出している。また、この場合も、刃部29は、幅方向の全幅にわたってアンビル16に設けられている。
【0095】
また、
図14(b)で示すように、
図14(a)で示す場合と同様に刃部29を片刃で形成し、刃部29の基端部で肉厚を持たせてもよい(刃部29の基端部では前後方向の寸法を一定にしてもよい)。
【0096】
図14(b)で示す刃部29を幅方向から見ると、1つの斜辺が上底や下底と直交しており他の1つの斜辺が下底と小さい交差角度(5°〜15°程度の交差角度)で交差している台形状になっている。そして、小さい交差角度の角が突出端(先端)になり、上底や下底と直交している1つの斜辺が後側に位置するようにして、アンビル16の平面からホーン18側に突出している。また、この場合も、刃部29は、幅方向の全幅にわたってアンビル16に設けられている。
【0097】
なお、
図14(a)で示す場合において、
図14(b)で示すように、刃部29の基端部に肉厚を持たせてもよい。
【0098】
図14(c)で示す態様では、刃部29が複数(たとえば、2つ)の四角錐状の凸部31で形成されており、各四角錐状の凸部31は、アンビル16の幅方向にならんで配置されている。四角錐の底面は、横方向(アンビル16では幅方向)の寸法が大きく、縦方向(アンビル16では前後方向)の寸法が小さい長方形状に形成されている。
【0099】
なお、
図14(c)で示す態様は、
図11で示す態様の刃部29に、切り欠き33を複数設けたものとして把握してもよい。切り欠き33は、高さ方向では、刃部29の先端から基端(アンビル16の平面)まで達している。
【0100】
図14(d)で示す態様のものは、
図14(c)で示す態様のものと同様にして、
図11で示す態様の刃部29に、切り欠き33を複数設けたものである。ただし、
図14(d)で示す態様のものでは、切り欠き33が、高さ方向では、刃部29の先端から刃部29の中間部位までしか設けられておらず、基端(アンビル16の平面)まで達していない。
【0101】
図14(c)や
図14(d)で示す態様では、刃部29の突出高さがアンビル16の幅方向で周期的に変化しており(刃部29の先端がギザギザになっており)、導体7の切断が一層的確になされる。
【0102】
なお、
図14(a)や
図14(b)で示す態様の刃部29に、切り欠き33と同様の切り欠きを設けてもよい。
【0103】
また、アンビル16に刃部29を設けることに加えて、
図15で示すように、ホーン18に凹部35を設けてもよい。凹部35を設けたことで、刃部29の突出高さを大きくしても、刃部29がホーン18に干渉することを無くすことができる。
【0104】
すなわち、刃部29の突出高さの値を導体7の外径の値よりも大きくして、接合部位11を形成するときに刃部29で導体7の径の全体を切断するようにしても、刃部29の先端部が凹部35内に入り込みホーン18に干渉することが無い。
【0105】
さらに説明すると、アンビル16のホーン18と対向している面16Aが、ホーン18のアンビル16と対向している面18Aとをお互いに接触させても、凹部35の壁面35Aと刃部29との間に間隙が形成されるようになっている。また、上記間隙によって、ホーン18が超音波振動しても、刃部29と凹部35の壁面とはお互いに干渉しないようになっている。
【0106】
アンビル16に刃部29を設けたことで、アンビル16とホーン18とで超音波接合される導体7の長さL8が一定になり、接合部位11の形状が安定化する。
【0107】
すなわち、
図30で示すように、アンビル321とホーン323とを用いて導体305を超音波接合するきに、電線307の露出導体の長さがアンビル321やホーン323の長さよりも長く、アンビル321やホーン323の両端から露出導体が延出しているとする。このようにすれば、アンビル321やホーン323に対する電線307の位置(
図30(b)の左右方向での位置)が若干変化しても、導体305が受ける圧力(単位面積あたりの力)は変化せず、接合部位の形状は安定化する。
【0108】
一方、
図31や
図32で示すように、アンビル321とホーン323とを用いて導体305を超音波接合するきに、アンビル321やホーン323の一方端からのみ露出導体が延出している態様では、アンビル321やホーン323に対する電線307の位置(
図31(b)、
図32(b)の左右方向での位置)が変化すると、超音波接合時にアンビル321とホーン323とで挟み込まれる導体305の長さが変化してしまい、接合部位309の形状に変化が発生する。
【0109】
すなわち、
図31に示すように、超音波接合時にアンビル321とホーン323とで挟み込まれる導体305の長さ寸法が「L11」であり、一方、
図32に示すように、超音波接合時にアンビル321とホーン323とで挟み込まれる導体305の長さ寸法が「L12(L12<L11)」であるとすると、
図32に示す態様のほうが、超音波接合時に導体305が受ける圧力が大きくなり、接合部位309の外径d12が、
図31に示す接合部位309の外径d11よりも小さくなってしまう。
【0110】
しかし、アンビル16に刃部29を設けたことで、露出導体を一定の長さに切断するので、アンビル16やホーン18に対する電線3の位置が若干変化しても、アンビル16とホーン18とによって超音波接合される導体7の長さがほぼ一定になり、導体7が受ける圧力(単位面積あたりの力)は変化せず、接合部位11の形状が安定化する。
【0111】
また、接合部位11の形状が安定化することで、芯間抵抗(接合部位11における素線15間の電気抵抗)がほぼ一定になり、カシメ後のワイヤバレル部13と接合部位11の形状が安定し、接合部位11へのワイヤバレル部13の圧着性能が安定化する。
【0112】
ところで、
図3で示す端子付き電線1では、前後方向で、ワイヤバレル部13から接合部位11がはみ出しているが、接合部位11の端をワイヤバレル部13内に収めてもよい。
【0113】
たとえば、
図16〜
図18で示すように、端子付き電線101(端子付き電線1)において、ワイヤバレル部107(ワイヤバレル部13)の、被覆111(被覆9)側に位置している端(後端)107Aが、接合部位103(接合部位11)の、被覆111側に位置している端(後端)103Aよりも、被覆111側(後側)に位置していてもよい。
【0114】
さらに、
図20、
図21で示すように、前後方向で、接合部位103がワイヤバレル部107の内側に位置していてもよい。
【0115】
ここで、
図16〜
図18で示す端子付き電線101について詳しく説明する。なお、
図16〜
図18で示すものには、ベルマウス部は設けられていない。
【0116】
端子付き電線101は、接合部位103が形成されている電線105(電線3)と、ワイヤバレル部107を備えた端子(端子金具)109(端子5)とを備えて構成されている。
【0117】
上述したように、電線105では、長手方向(長さ方向)の一部(たとえば一端部)で、所定の長さにわたって被覆111が非存在であることで(たとえば、被覆111の一部が除去されて)、導体113(導体7)が露出している。
【0118】
また、電線105では、露出している導体(露出導体)113Aの一部に、導体113が接合されている接合部位103が、所定の長さにわたって形成されている。接合部位103は、導体113を構成している複数本の素線115(素線15)同士が、たとえば、超音波接合されたことで形成されている。
【0119】
さらに説明すると、電線105は、複数本の素線115が集まって形成されている導体(芯線)113とこの導体113を覆っている(被覆している)被覆(絶縁体)111とを備えて構成されている。
【0120】
導体113の素線115は、銅、アルミニウム、もしくは、アルミニウム合金等の金属で細長い円柱状に形成されている。導体113は、複数本の素線115を撚った形態、もしくは、複数本の素線115がまとまって直線状に延びている形態で構成されている。
【0121】
また、電線105は可撓性を備えている。被覆111が存在している電線105の部位の断面(長手方向に対して直交する平面による断面)は、円形状等の所定形状に形成されている。
【0122】
被覆111が存在している電線105の部位における導体113の断面は、複数本の素線115がほとんど隙間の無い状態で束ねられていることで、たとえば、概ね円形状に形成されている。被覆111が存在している電線105の部位における被覆111の断面は、たとえば、所定の幅(厚さ)を備えた円環状に形成されている。導体113の外周の全周に被覆111の内周の全周が接触している。
【0123】
接合部位103では、導体113を構成している複数本の素線115同士が、上述したように、超音波接合されたことで導体113が接合されている。そして、たとえば、接合部位103では、導体113が単線化している。
【0124】
なお、上記説明では、超音波接合によって接合部位103が形成されているが、超音波接合以外の接合手段によって素線115同士を接合することで、接合部位103が形成されていてもよい。たとえば、素線115の再結晶温度以下の温度で素線115同士が冶金接合されていることで、超音波接合した場合と同様にして接合部位103が形成されていてもよい。
【0125】
なお、接合部位103と被覆111とは、電線105の長手方向でたとえば所定の長さだけ離れている。これにより、接合部位103と被覆111との間では、お互いが接してはいるが非接合状態になっている複数本の素線(非接合状態の導体)113Bが露出している。
【0126】
すなわち、電線105の長手方向の一端から他端に向かって、所定長さの接合部位103、非接合状態の導体113B、被覆111で覆われている導体113(被覆111が存在している電線105の部位)がこの順でならんでいる。
【0127】
端子109が設置される前の接合部位103の断面形状(長手方向に対して直交する平面による断面形状)は、
図4(a)、
図6(b)、
図7(b)、
図8(b)、
図9(b)で例を掲げて説明したような、円形に近似した形状等の所定形状に形成されている。
【0128】
また、端子109が設置される前の非接合状態の導体113Bの断面形状(長手方向に対して直交する平面による断面形状)は、接合部位103の断面形状から被覆111で覆われている導体113の断面形状に徐々に移行している。
【0129】
端子付き電線101では、電線105や導体113の長手方向とワイヤバレル部107(端子109)の前後方向とがお互いに一致している。また、電線105の長手方向の一端が前側に位置しており、電線105の長手方向の他端が後側に位置している。
【0130】
また、端子付き電線101では、端子109のワイヤバレル部107の端(後端;前後方向における被覆111側に位置している端)107Aが、接合部位103の端(後端;長手方向における被覆111側に位置している端)103Aよりも、被覆111側(後側)に位置している。そして、端子付き電線101では、ワイヤバレル部107をたとえばカシメることで、ワイヤバレル部107が接合部位103の少なくとも一部を包み込んで覆っている。
【0131】
端子109は、たとえば、平板状の金属の素材を所定形状に形成した状態にしてから、この所定形状に形成したものを折り曲げたことで形成されている。
【0132】
端子109は、前側から後側にむかって、たとえば、相手側端子に接続される端子接続部116(相手側端子接続部25)、ワイヤバレル部107、インシュレーションバレル部117(インシュレーションバレル部27)がこの順にならんでいる。
【0133】
カシメがされる前のワイヤバレル部107の断面形状(前後方向に対して直交する平面による断面形状)は、たとえば、厚さ方向がほぼ高さ方向になっている底板部(円弧状の底板部)119と、一対の側板部121とを備えて「U」字状に形成されている。一対の側板部121のそれぞれは、底板部119の幅方向の両端から、斜め上方に起立している。一対の側板部121間の寸法の値(幅方向の寸法値)は、下側から上側に向かうにしたがって次第に大きくなっている。
【0134】
カシメがされる前のインシュレーションバレル部117の断面形状(前後方向に対して直交する平面による断面形状)も、ワイヤバレル部107の断面と同様な「U」字状に形成されている。
【0135】
端子付き電線101では、ワイヤバレル部107がカシメられたことで、接合部位103とワイヤバレル部107とが一体化しており、インシュレーションバレル部117がカシメられたことで、被覆111とインシュレーションバレル部117と一体化している。
【0136】
ワイヤバレル部107やインシュレーションバレル部117のカシメは、主として、一対の側板部が塑性変形して、ワイヤバレル部107やインシュレーションバレル部117が筒状になることでなされている。ワイヤバレル部107をカシメることで、接合部位103が変形する。
【0137】
また、前後方向では、たとえば、ワイヤバレル部107とインシュレーションバレル部117とは、僅かに離れているが(間に接続部123が設けられているが)、ワイヤバレル部107にインシュレーションバレル部117が接していてもよい。
【0138】
ここで、前後方向における電線105と端子109との関係についてさらに詳しく説明する。
【0139】
電線105の長手方向では、上述したように、前側から後側に向かって、所定の長さの接合部位103と、非接合状態の導体113Bと、被覆111で覆われている導体113がこの順でならんでいる。被覆111で覆われている導体113の長さは、接合部位103や非接合状態の導体113Bよりもはるかに長くなっている。
【0140】
端子109の前後方向では、上述したように、前側から後側に向かって、端子接続部116と、ワイヤバレル部107と、ワイヤバレル部107とインシュレーションバレル部117との間の接続部123と、インシュレーションバレル部117とがこの順にならんでいる。なお、ワイヤバレル部107の前後方向の寸法の値は、接続部123やインシュレーションバレル部117の前後方向の寸法の値より大きくなっている。
【0141】
端子付き電線101では、
図18で示すように、前後方向で、接合部位103の一端(前端)103Bが、ワイヤバレル部107の前端107Bよりも僅かに前側に位置している。これにより、接合部位103の一端部がワイヤバレル部107の前端107Bから前側に僅かに突出している。接合部位103のワイヤバレル部107からの突出寸法の値(前側への突出量)は、接合部位103の高さ寸法の値よりも小さくなっている。
【0142】
なお、接合部位103の一端(前端)103Bが、ワイヤバレル部107の前端107Bよりも僅かに後側に位置していてもよい。
【0143】
接合部位103の他端(後端)103Aは、ワイヤバレル部107の後端107Aよりも僅かに前側に位置していている。これにより、接合部位103と被覆111との間の非接合状態の導体113Bの前端部は、ワイヤバレル部107によって包み込まれている。
【0144】
なお、接合部位103の後端103Aとワイヤバレル部107の後端107Aとの間の寸法の値(前後方向での寸法の値)も、接合部位103の高さ寸法の値よりも小さくなっている。
【0145】
また、端子付き電線101では、非接合状態の導体113Bの高さ寸法の値は、前側から後側に向かうにしたがって、次第に大きくなっている。電線105の被覆111の前端(非接合状態の導体113Bの後端)は、インシュレーションバレル部117の前端よりも僅かに前側に位置している。
【0146】
端子付き電線101によれば、ワイヤバレル部107の後端107Aが接合部位103の後端103Aよりも後側に位置するようにして、ワイヤバレル部107が接合部位103を覆っているので、接合部位103の境界部分(接合部位103と非接合状態の導体113Bとの境界)103Aでの素線115切れの発生を抑制することができる。
【0147】
すなわち、接合部位103を形成した電線105にワイヤバレル部107をカシメて端子109を圧着するときに、接合部位103の後端(接合部位と非接合状態の導体との境界部分)103Aが、ワイヤバレル部107の内に位置しているので、端子109の圧着によって境界部分103Aが引っ張られることがほぼなくなり、境界部分103Aでの芯線切れ(非接合状態の導体113Bでも素線115の切れ;
図26に参照符号311Aで示す素線切れ)の発生を抑制することができる。
【0148】
そして、素線切れが抑制されることで、圧着部性能が安定し(電線105と端子109との機械的接合度および電気的接合度が安定し)、また、コンタミネーションの発生が抑制される。
【0149】
なお、上記説明では、
図18等で示すように、ワイヤバレル部107の前端107Bから接合部位103が前側に僅かに突出しているが、
図19、
図20で示すように、ワイヤバレル部107の前端107Bが接合部位103の前端103Bよりも前側に位置していてもよい。すなわち、前後方向におけるワイヤバレル部107の寸法の値が、前後方向における接合部位103の寸法の値よりも大きくなっており、前後方向で、接合部位103がワイヤバレル部107の内側に位置していてもよい。これにより、
図27に参照符号311A、311Bで示す素線切れの発生を抑制することができる。
【0150】
ところで、
図20に示すものでは、ベルマウス部125(ベルマウス部43)が設けられている。この場合、ベルマウス部125は、
図16〜
図18で示す端子付き電線101のワイヤバレル部107の後端107Aから後側に突出している態様、
図16〜
図18で示す端子付き電線101のワイヤバレル部107の前端107Bから前側に突出している態様で設けられている。
【0151】
図19や
図20で示す端子付き電線101では、ワイヤバレル部107が、本体部127と一対のベルマウス部125(後側ベルマウス部125Aおよび前側ベルマウス部125B)とを備えて構成されている。前後方向では、前側から後側に向かって、前側ベルマウス部125B、本体部127、後側ベルマウス部125Aがこの順にならんでいる。
【0152】
さらに説明すると、ワイヤバレル部107の、被覆111側に位置している端部(後端部)には、ベルマウス部125(後側ベルマウス部125A)が形成されている。
【0153】
そして、
図19や
図20で示す端子付き電線101では、後側ベルマウス部125Aの前端(前後方向における被覆111側に位置している後端とは反対側の端;後側ベルマウス部125Aとの本体部127との境界)が、接合部位103の後端(長手方向における被覆111側に位置している端)103Aよりも、被覆111側(後側)に位置している。
【0154】
図19や
図21で示す端子付き電線101では、ワイヤバレル部107の本体部127は前後方向で径がほぼ一定である筒状に形成されており、後側ベルマウス部125Aは本体部127から離れるにしたがって(前側から後側に向かうにしたがって)、径が次第に大きくなる筒状に形成されている。なお、後側ベルマウス部125Aの前端の径(本体部127との境界での径)は、本体部127の径と一致している。
【0155】
図19や
図20で示す端子付き電線101では、前側ベルマウス部125Bは、後側ベルマウス部125Aと同様にして、本体部127から離れるにしたがって(後側から前側に向かうにしたがって)、径が次第に大きくなる筒状に形成されている。
【0156】
図19や
図20で示す端子付き電線101では、前側ベルマウス部125Bの前後方向の寸法や、後側ベルマウス部125Aの前後方向の寸法は、接合部位103の高さ寸法の値よりも小さくなっており、ワイヤバレル部107の本体部127の前後方向の寸法は、接合部位103の高さ寸法の値よりも大きくなっている。
【0157】
また、
図19や
図20で示す端子付き電線101では、前後方向で、ワイヤバレル部107の本体部127と被覆111との間の存在している導体113(後側ベルマウス部125Aの前端と被覆111との間に位置している後側の非接合状態の導体113B)の高さ寸法や径の値は、次第に大きくなっている。
【0158】
また、
図19や
図20で示す端子付き電線101では、電線105の接合部位103の前端からは、非接合状態の導体(前側の非接合状態の導体)113Bが、前側に所定の長さだけ突出している。
【0159】
これにより、
図19や
図20で示す端子付き電線101では、前後方向で、前側の非接合状態の導体113Bの後端(前側の非接合状態の導体113Bと接合部位103と境界)が、前側ベルマウス部125Bの後端よりも後側に位置しており、前側の非接合状態の導体113Bの前端が、前側ベルマウス部125Bの前端よりも前側に位置している。
【0160】
さらに、前側ベルマウス部125Bの前端(前端の開口)では、
図21で示すように、導体113(前側の非接合状態の導体113B)と前側ベルマウス部125Bとの間に僅かな間隙129が形成されており、後側ベルマウス部125Aの後端(後端の開口)でも、導体113と後側ベルマウス部125Aとの間に僅かな間隙129が形成されている。
【0161】
なお、前側ベルマウス部125Bの前端(前端の開口)で、前側ベルマウス部125Bと導体113とが接しており、前側ベルマウス部125Bが導体113を抑え込んでおり、後側ベルマウス部125Aの後端(後端の開口)で、後側ベルマウス部125Aと導体113とが接しており、後側ベルマウス部125Aが導体113を抑え込んでいる構成であってもよい。
【0162】
また、
図20や
図21で示す端子付き電線101において、前側ベルマウス部125A、125Bのいずれかが削除されていてもよい。たとえば、前側ベルマウス部125Bを削除した構成であってもよい。
【0163】
図20や
図21で示す端子付き電線101によれば、ワイヤバレル部107の本体部(ベルマウス部125を除いた本体部)127の内側に接合部位103が位置しているので、端子109を電線105に設置するときの導体切れの発生を抑制することができる。
【0164】
また、
図20や
図21で示す端子付き電線101によれば、非接合状態の導体113Bの一部(接合部位103側の部位)がベルマウス部125内に収まっているので、接合部位103と非接合状態の導体113Bとの境界部分での導体切れの発生を一層抑制することができる。
【0165】
なお、ベルマウス部125が設けられている
図20や
図21で示す端子付き電線101では、接合部位103がワイヤバレル部107の本体部127の内側に位置しているのであるが、前後方向で、接合部位103の前端103Bが前側ベルマウス部125Bの中間部に位置しており、接合部位103の後端103Aが後側ベルマウス部125Aの中間部に位置していてもよい。
【0166】
さらに、
図22で示すように、前側の非接合状態の導体113Bを削除した構成であってもよい。
図22で示す端子付き電線101では、接合部位103の前端が、前側ベルマウス部125Bの前端よりも前側に位置しているが、接合部位103の前端が、前側ベルマウス部125Bの後端よりも後側に位置していてもよいし、接合部位103の前端が、前側ベルマウス部125Bのところに位置していてもよい。
【0167】
また、
図21では、接合部位103の前端103Bから非接合状態の導体113Bが僅かに前側に突出しているが、接合部位103の前端103Bから前側に突出している非接合状態の導体113Bが削除されていてもよい。
【0168】
図21に示す端子付き電線101によれば、前後方向で、接合部位103がワイヤバレル部107の内側に位置しているので、接合部位103の両端(後端103Aと前端103B)での素線切れの発生を抑制することができる。
【0169】
ところで、上記説明では、電線105の長手方向の一端部に接合部位103を形成し、そこに端子109を設置しているが、
図23で示すように、電線105の長手方向の中間部に接合部位103を形成し、そこに端子109を設置してもよい。
【0170】
さらに説明すると、電線105の長手方向の一方の側から他方の側に向かって、被覆111で覆われている導体113(被覆が存在している電線の一端側部位)、非接合状態の導体113B(一端側の非接合状態の導体)、接合部位103、非接合状態の導体113B(他端側の非接合状態の導体)、被覆111で覆われている導体113(被覆が存在している電線の他端側部位)がこの順にならんでいる電線の、接合部位103のところに端子109を設置してもよい。
【0171】
このような端子付き電線では、電線105の長手方向(端子109の前後方向)での、端子109のワイヤバレル部107(もしくはワイヤバレル部の本体部127)の長さ寸法の値が、接合部位103の長さ寸法の値よりも大きくなっており、電線105の長手方向(端子109の前後方向)で、端子109のワイヤバレル部107(もしくはワイヤバレル部の本体部127)の内側に接合部位103が位置している。
【0172】
さらに、上記説明では、1本の電線105に1つの端子109を設置しているが、
図24で示すように、複数本(たとえば2本)の電線105に1つの端子109を設置してもよい。すなわち、上述した場合と同様にして、各電線の接合部位103にワイヤバレル部107を設置してもよい。
【0173】
また、複数本の電線105に1つの端子109を設置する場合、各電線105の導体113のそれぞれに個別に接合部位103を形成しておいて、各電線105を1つの端子109(1つのワイヤバレル部107)に設置してもよいし、各電線105のうちの少なくとも2本の電線105の導体113をまとめて、このまとめたものに接合部位(上記距離の最小値が「1」であり上記距離の最大値が「1.81」よりも小さい断面形状の接合部位)103を形成しておいて、各電線105を1つの端子109を設置してもよい。
【0174】
また、複数本の電線105に1つの端子109を設置する場合に、各電線105のうちの少なくとも1本の電線105で、電線105の長手方向の中間部に接合部位103が形成されている態様であってもよい。