(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1A〜1Bは、ミオスタチンのドメイン構造およびプロミオスタチンアセンブリを示す。
図1Aは、阻害性のプロドメインの後にジスルフィド結合二量体として存在するC末端増殖因子ドメインが続く、プロタンパク質として分泌されるミオスタチンを示す。
図1Bは、プロドメイン(紫色)が増殖因子(藍色)を、「ストレートジャケット」アセンブリにより封入する不活性なコンフォメーションでアセンブルされた前駆体タンパク質を示す。この図は、潜在型TGFβ1の構造の改作である。
【0038】
【
図2】
図2は、ミオスタチンの活性化が2つの異なるプロテアーゼ事象を伴い、少なくとも3つのミオスタチン種を生成することを示す。生合成前駆体タンパク質であるプロミオスタチンは、2つの別個のプロテアーゼによってプロセシングされる。この概略図で示す第1のステップは、フューリンなどのプロタンパク質転換酵素ファミリーメンバーによって行われる。この切断によって、プロドメインは成熟増殖因子から分離される。プロテアーゼのトロイドファミリーによる第2の切断事象はプロドメインを切断する。これらの切断事象によって、成熟型のミオスタチンが生成され、これは活性ミオスタチンまたは成熟ミオスタチンと称され得る。
【0039】
【
図3-1】
図3A〜3Cは、Ab1が、プロテアーゼのトロイドファミリーのメンバーによるプロミオスタチンの切断を遮断することを示す。Ab1の漸増量と共にプレインキュベートしたプロミオスタチン試料を、ミオスタチン活性化アッセイにおいて分析した。レポーターアッセイ(
図3A)によるミオスタチン放出の分析後、次いで、試料を還元条件下で泳動させて、ミオスタチンのプロドメインに対して惹起された抗体によるウエスタンブロットによってプロービングした(
図3B)。トロイド切断後に生成されたプロドメインのN末端部分に対応する約18kDaのバンド(四角で囲った部分)は、Ab1の用量の増加に比例して減少した。潜在型およびプロミオスタチンの標準物質(45ngをロードした)により、プロミオスタチンが約50kDaに、およびプロドメインが約37kDaに移動したことが示される。
図3Cは、ミオスタチンの活性化が2つの異なるプロテアーゼ事象を伴い、3つの主要なミオスタチン種を生成することを示す。生合成前駆体タンパク質であるプロミオスタチンは、2つの別個のプロテアーゼによってプロセシングされる。プロミオスタチン(およびプロGDF11)の切断は、プロドメインと成熟増殖因子の間の保存されたRXXR部位で切断する、フューリン/PACE3(Paired Basic Amino acid Cleaving Enzyme 3)またはPCSK5(Proprotein Convertase Subtilisin/Kexin type 5)などのプロタンパク質転換酵素によって行われる。この切断によって、潜在的複合体が産生され、この中で成熟増殖因子は、プロドメインによりその受容体に対する結合から遮蔽されている。トロイドプロテアーゼの起こり得る阻害を説明し、プロミオスタチンのさらなる切断の遮断を説明する、
図3Bを参照されたい。活性増殖因子の活性化および放出は、TLL−2(トロイド様タンパク質2)またはBMP1(骨形成タンパク質1)などのBMP/トロイドファミリーのさらなるプロテアーゼによる切断後に達成される。
【
図3-2】
図3A〜3Cは、Ab1が、プロテアーゼのトロイドファミリーのメンバーによるプロミオスタチンの切断を遮断することを示す。Ab1の漸増量と共にプレインキュベートしたプロミオスタチン試料を、ミオスタチン活性化アッセイにおいて分析した。レポーターアッセイ(
図3A)によるミオスタチン放出の分析後、次いで、試料を還元条件下で泳動させて、ミオスタチンのプロドメインに対して惹起された抗体によるウエスタンブロットによってプロービングした(
図3B)。トロイド切断後に生成されたプロドメインのN末端部分に対応する約18kDaのバンド(四角で囲った部分)は、Ab1の用量の増加に比例して減少した。潜在型およびプロミオスタチンの標準物質(45ngをロードした)により、プロミオスタチンが約50kDaに、およびプロドメインが約37kDaに移動したことが示される。
図3Cは、ミオスタチンの活性化が2つの異なるプロテアーゼ事象を伴い、3つの主要なミオスタチン種を生成することを示す。生合成前駆体タンパク質であるプロミオスタチンは、2つの別個のプロテアーゼによってプロセシングされる。プロミオスタチン(およびプロGDF11)の切断は、プロドメインと成熟増殖因子の間の保存されたRXXR部位で切断する、フューリン/PACE3(Paired Basic Amino acid Cleaving Enzyme 3)またはPCSK5(Proprotein Convertase Subtilisin/Kexin type 5)などのプロタンパク質転換酵素によって行われる。この切断によって、潜在的複合体が産生され、この中で成熟増殖因子は、プロドメインによりその受容体に対する結合から遮蔽されている。トロイドプロテアーゼの起こり得る阻害を説明し、プロミオスタチンのさらなる切断の遮断を説明する、
図3Bを参照されたい。活性増殖因子の活性化および放出は、TLL−2(トロイド様タンパク質2)またはBMP1(骨形成タンパク質1)などのBMP/トロイドファミリーのさらなるプロテアーゼによる切断後に達成される。
【0040】
【
図4】
図4は、細胞ベースのレポーターアッセイにおける親Ab1抗体および他の候補の性能を示す。3回の複製の平均値の標準偏差を示すが、値が小さいために、ほとんどのデータ点についてグラフ上で見えない。
【0041】
【
図5】
図5は、ある特定の抗体がプロGDF11活性化を阻害しないことをグラフで示す。
【0042】
【
図6】
図6は、平均体重変化率を評価するアッセイの結果を示す。動物の体重を毎日測定して、0日目からの体重変化率を算出した。データは、群の平均値±SEMを表す。試験42日目の各群の平均変化率データを、一元配置ANOVAの後に、PBS対照群との比較においてHolm−Sidak事後検定を使用して分析した。
**p<0.01。
【0043】
【
図7】
図7A〜7Dは、組織重量を評価するアッセイの結果を示す。
図7Aは、平均腓腹筋重量を示す。
図7Bは、平均胸筋重量を示す。
図7Cは、平均ヒラメ筋重量を示す。
図7Dは、平均三頭筋重量を示す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、ビヒクル対照群(群1)との比較においてHolm−Sidak事後検定を使用して行った。データは、群の平均値±SEMを表す。
**p<0.01。棒グラフは、左から右に群1〜5を示す。
【0044】
【
図8】
図8A〜8Cは、組織重量を評価するアッセイの結果を示す。
図8Aは、平均前脛骨筋重量を示す。
図8Bは、平均横隔膜重量を示す。
図8Cは、平均四頭筋重量を示す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、ビヒクル対照群(群1)との比較においてHolm−Sidak事後検定を使用して行った。データは、群の平均値±SEMを表す。
*p<0.05。棒グラフは、左から右に群1〜5を示す。
【0045】
【
図9】
図9A〜9Bは、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率を評価するアッセイの結果を示す。
図9Aは、試験を通して週に2回体重測定した動物において算出された0日目からの体重変化率を示すグラフである。
図9Bにおいて、−4、7、14、21、および28日目に身体組成を測定するために、動物にEchoMRI(QNMR)を実施して、0日目からの除脂肪量変化率を算出した。データは、群の平均値±SEMを表す。体重および除脂肪量の両方に関して、試験28日目での各群の平均変化率データを、一元配置ANOVAの後に、IgG対照群(群2)との比較においてHolm−Sidak事後検定を使用して分析した。
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05、ns(有意ではない)。
【0046】
【
図10-1】
図10A〜10Dは、筋重量を評価するアッセイの結果を示すグラフである。
図10Aは平均四頭筋重量を示し、
図10Bは平均腓腹筋重量を示し、
図10Cは平均前脛骨筋重量を示し、
図10Dは平均横隔膜重量を示す。IgG対照群と比較してAb1処置群の平均筋重量の差の百分率を、それぞれの棒グラフの上に記す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、IgG対照群(群2)との比較においてHolm−Sidak事後検定を使用して行った。データは群の平均値±SEMを表す。
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05、ns(有意ではない)。
【
図10-2】
図10A〜10Dは、筋重量を評価するアッセイの結果を示すグラフである。
図10Aは平均四頭筋重量を示し、
図10Bは平均腓腹筋重量を示し、
図10Cは平均前脛骨筋重量を示し、
図10Dは平均横隔膜重量を示す。IgG対照群と比較してAb1処置群の平均筋重量の差の百分率を、それぞれの棒グラフの上に記す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、IgG対照群(群2)との比較においてHolm−Sidak事後検定を使用して行った。データは群の平均値±SEMを表す。
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05、ns(有意ではない)。
【0047】
【
図11】
図11A〜11Bは、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率を評価するアッセイの結果を示す。
図11Aは、試験を通して週に2回体重測定した動物から算出された0日目からの体重変化率を示す。(
図11B)−1、6、および13日目に身体組成を測定するために、動物にEchoMRI(QNMR)を実施して、−1日目からの除脂肪量変化率を算出した。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、Dex=デキサメタゾン、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。データは、群の平均値±SEMを表す。14日目(体重に関して)および13日目(除脂肪量に関して)での各群の平均変化率データを、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して分析した。ns(有意ではない)。
【0048】
【
図12-1】
図12A〜12Dは、異なる筋重量を評価するアッセイの結果を示すグラフである。
図12Aは平均腓腹筋重量(グラム)を示し、
図12Bは平均四頭筋重量(グラム)を示し、
図12Cは、PBS(IP)および通常の飲料水(群1)で処置した対照動物と比較した平均腓腹筋重量変化率を示し、
図12Dは、PBS(IP)および通常の飲料水(群1)で処置した対照動物と比較した平均四頭筋重量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、Dex=デキサメタゾン、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。
図12A〜12Bに関して、エラーバーは標準偏差(SD)を表す。
図12C〜12Dに関して、エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。ns(有意ではない)。棒グラフは左から右に、PBS、水;PBS、dex;IgG対照;Ab1(20);およびAb1(2)を示す。
【
図12-2】
図12A〜12Dは、異なる筋重量を評価するアッセイの結果を示すグラフである。
図12Aは平均腓腹筋重量(グラム)を示し、
図12Bは平均四頭筋重量(グラム)を示し、
図12Cは、PBS(IP)および通常の飲料水(群1)で処置した対照動物と比較した平均腓腹筋重量変化率を示し、
図12Dは、PBS(IP)および通常の飲料水(群1)で処置した対照動物と比較した平均四頭筋重量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、Dex=デキサメタゾン、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。
図12A〜12Bに関して、エラーバーは標準偏差(SD)を表す。
図12C〜12Dに関して、エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。ns(有意ではない)。棒グラフは左から右に、PBS、水;PBS、dex;IgG対照;Ab1(20);およびAb1(2)を示す。
【0049】
【
図13】
図13A〜13Bは、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率を評価するアッセイの結果を示す。
図13Aは、試験を通して週に2回体重測定した動物に関して算出した0日目からの体重変化率を示す。
図13Bは、−1、7、および14日目に身体組成を測定するためにEchoMRI(QNMR)を実施した動物から算出した−1日目からの除脂肪量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。データは、群の平均値±SEMを表す。
【0050】
【
図14-1】
図14A〜14Dは、筋重量を評価するアッセイの結果を示す。
図14Aは、ギプス固定した脚からの平均腓腹筋重量(グラム)を示し、
図14Bは、ギプス固定した脚からの平均四頭筋重量(グラム)を示し、
図14Cは、PBS(IP)で処置して、ギプス固定していない対照動物(群1)と比較した平均腓腹筋重量変化率を示し、
図14Dは、PBS(IP)で処置して、ギプス固定していない対照動物(群1)と比較した平均四頭筋重量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。
図14A〜14Bに関して、エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。
図14C〜14Dに関して、エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。ns(有意ではない)。棒グラフは左から右に、PBS、非ギプス固定;PBS、ギプス固定;IgG対照;Ab1(20);およびAb1(2)を示す。
【
図14-2】
図14A〜14Dは、筋重量を評価するアッセイの結果を示す。
図14Aは、ギプス固定した脚からの平均腓腹筋重量(グラム)を示し、
図14Bは、ギプス固定した脚からの平均四頭筋重量(グラム)を示し、
図14Cは、PBS(IP)で処置して、ギプス固定していない対照動物(群1)と比較した平均腓腹筋重量変化率を示し、
図14Dは、PBS(IP)で処置して、ギプス固定していない対照動物(群1)と比較した平均四頭筋重量変化率を示す。PBS=リン酸緩衝生理食塩水、IgG(20)=20mg/kg/週で投与したIgG対照抗体、Ab1(20)=20mg/kg/週で投与したAb1抗体およびAb1(2)=2mg/kg/週で投与したAb1抗体。
図14A〜14Bに関して、エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。
図14C〜14Dに関して、エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.0005、
**p<0.005、
*p<0.05)および群5(
++++p<0.0001、
+++p<0.0005、
++p<0.005、
+p<0.05)に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。ns(有意ではない)。棒グラフは左から右に、PBS、非ギプス固定;PBS、ギプス固定;IgG対照;Ab1(20);およびAb1(2)を示す。
【0051】
【
図15】
図15は、21日目(右上)および28日目(左上)での除脂肪量変化を評価するアッセイの結果を示す。試験した抗体の3つの異なる用量、20mg/kg/週(左下)、2mg/kg/週(中央下)、および0.5mg/kg/週(右下)、PBS対照、ならびにIgG対照の除脂肪量変化率も示す。統計学的評価は、一元配置ANOVAの後に、群1(
****p<0.0001、
***p<0.005、
**p<0.01、
*p<0.05)およびIgG対照に対するDunnettの多重比較検定を使用して行った。上のパネルに関して、棒グラフは左から右に、PBS;IgG対照、20mg/mk/週;Ab1、20mg/mk/週;Ab1、2mg/mk/週;Ab1、0.5mg/mk/週;Ab2、20mg/mk/週;Ab2、2mg/mk/週;Ab2、0.5mg/mk/週;Ab4、20mg/mk/週;Ab4、2mg/mk/週;Ab4、0.5mg/mk/週;Ab6、20mg/mk/週;Ab6、2mg/mk/週;およびAb6、0.5mg/mk/週である。
【0052】
【
図16】
図16A〜16Bは、ミオスタチン前駆体型のドメイン構造および評価を示す。
図16Aは、プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンのドメイン構造を示し、プロテアーゼ切断部位を示す。
図16Bは、SDS PAGEゲルにおいて泳動させた、部分的プロタンパク質転換酵素切断プロミオスタチンを示す。還元条件下では、タンパク質バンドは、プロミオスタチンモノマー(約50kD)、プロドメイン(約37kD)および増殖因子(12.5kD)からなった。
【0053】
【
図17】
図17A〜17Bは、Ab1がミオスタチンに対して特異的であることを示す。
図17Aは、Ab1がプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに特異的に結合することを示し、TGFBスーパーファミリーの他のメンバー、特にGDF11の対応する型に対する結合は観察されなかった。Ab1を、表記の抗原でコーティングされたForte−Bio BLIチップに高濃度(50ug/mL)で投与して、オンレートおよびオフレートを測定して、およそのKd値を得た。結合事象を示すバイオセンサー応答の大きさを、黒色の棒グラフによってグラフ表示し、算出されたKdをオレンジ色で示す。
図17Bは、Ab1がプロミオスタチンの活性化を遮断するが、プロGDF11は遮断しないことを示している。プロタンパク質転換酵素およびトロイドプロテアーゼファミリーの両方からの酵素によって一晩タンパク質分解反応を行った後、293T細胞においてCAGAベースのレポーターアッセイを使用して成熟増殖因子の放出を測定した。結果を対照反応と比較して、アッセイにおいて放出されたプロミオスタチンまたはプロGDF11の割合を算出した。
【0054】
【0055】
【
図19】
図19は、Ab1を既存のミオスタチン抗体(AbMyo)と比較する、作用試験の持続時間の結果を示す。PBSを陰性対照として使用した。IgGを陽性対照として使用した。除脂肪量の変化を異なる投与プロトコールに従って21日後に調べた。
【0056】
【
図20】
図20は、in vitroでミオスタチン活性化を再構成するアッセイを説明する概略図である。
【0057】
【
図21】
図21A〜21Bは、セリンがプロリンに置換されたIgG4サブタイプのヒト化モノクローナル抗体(Ab2)の重鎖(
図21A;配列番号50)および軽鎖(
図21B;配列番号51)を示す。これは、IgG1様ヒンジ配列を生成し、IgG4の特徴である鎖間ジスルフィド架橋の不完全な形成を最小限にする。相補性決定領域(CDR)を下線で示す。紫色:N−結合グリコシル化コンセンサス配列部位;水色:起こり得る切断部位;赤色:起こり得る脱アミド化部位;黄緑色:起こり得る異性化部位;濃い青色:起こり得るメチオニン酸化部位;太字:予想されるN末端ピログルタミン酸。
【0058】
【
図22】
図22は、生殖系列化(germlining)による免疫原性リスクの低減を示す概略図である。24H4(WT)は、概略図に示すように、フレームワーク領域内に5つの非生殖系列アミノ酸を含有する。
【0059】
【
図23-1】
図23A〜23Cは、Ab1の最適化を示す。プロミオスタチンに特異的に結合する最適化された候補を選択して、それによって親和性が増加した何ダースものクローンを得た。Ab1(
図23A)と比較して酵母クローン(
図23B)の結合の増加を示すために、FACSを実施した。
図23Cは、親和性成熟改変体が、同様にoctetによってより遅いオフレートを有することを示している。
【
図23-2】
図23A〜23Cは、Ab1の最適化を示す。プロミオスタチンに特異的に結合する最適化された候補を選択して、それによって親和性が増加した何ダースものクローンを得た。Ab1(
図23A)と比較して酵母クローン(
図23B)の結合の増加を示すために、FACSを実施した。
図23Cは、親和性成熟改変体が、同様にoctetによってより遅いオフレートを有することを示している。
【0060】
【
図24】
図24A〜24Bは、親Ab1の可変重鎖領域(
図24A)および可変軽鎖領域(
図24B)と、親和性最適化改変体Ab3およびAb5との配列アラインメントを示す。配列識別子は、上から下に配列番号24、26、28に対応する(
図24A)。配列識別子は、上から下に配列番号30、32、34に対応する(
図24B)。相補性決定領域(CDR)は、Kabat(下線)およびIMGT命名法(太字)を使用して定義する。親Ab1からの置換を赤色で示す。
【発明を実施するための形態】
【0061】
詳細な記載
ミオスタチンは、TGFβスーパーファミリーのメンバーであり、2個のメンバー:ミオスタチン(GDF8としても公知)およびGDF11を含むサブファミリーに属している。TGFβスーパーファミリーの他のメンバーと同様に、ミオスタチンおよびGDF11は、両方とも不活性前駆体ポリペプチド(それぞれプロミオスタチンおよびプロGDF11と呼ばれる)として最初発現される。ドメイン構造および命名法は
図1Aに示されている。
図1Bは、成熟増殖因子が「潜在型ラッソ(latency lasso)」と呼ばれるループによって繋がれた2個のアルファヘリックスから構成されるケージに閉じ込められているプロミオスタチンの全体構造のカートゥーンモデルを例示する。
【0062】
成熟増殖因子の活性化および放出は、
図2に概説する数個の別々のプロテアーゼ切断事象によって達成される。プロミオスタチンおよびプロGDF11の第1の切断ステップは、プロドメインと成熟増殖因子との間の保存されたRXXR部位で切断するプロタンパク質転換酵素によって実行される。この切断は、成熟増殖因子がプロドメインによってその受容体への結合から遮蔽されている潜在型複合体を生じる。成熟、活性ミオスタチン増殖因子の活性化および放出は、mTLL−2などのBMP/トロイドファミリー由来の追加的プロテアーゼによる切断後に達成される(
図2)。
【0063】
ヒト、ラット、マウスおよびカニクイザルにおける例示的プロGDF8配列は下に提供される。これらのプロGDF8配列において、プロタンパク質転換酵素切断部位は、太字で示され、トロイドプロテアーゼ部位は下線で示される。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、配列番号52〜55のアミノ酸残基240から243を含む。いくつかの実施形態ではトロイドプロテアーゼ部位は、配列番号52〜55のアミノ酸残基74〜75を含む。本明細書で提供される例示的プロGDF8配列が限定的であることを意図せず、他の種由来の追加的プロGDF8配列が、その任意のアイソフォームを含め、本開示の範囲内であることは理解されるべきである。
【化1】
【0064】
ミオスタチンおよびGDF11は、90パーセントの同一性を有してそれらの成熟増殖因子ドメイン間で比較的高い程度の保存を共有するが、それらのプロドメイン領域では2個の間で50パーセント未満のアミノ酸同一性であり、十分に保存されていない。ミオスタチンおよびGDF11は、II型受容体(ACTRIIA/B)と会合しているI型受容体(ALK4/5)からなる同じ受容体に結合し、それを通じてシグナル伝達する。I型およびII型受容体とのミオスタチンの会合(engagement)は、SMADリン酸化および筋萎縮症遺伝子の転写活性化をもたらすシグナル伝達カスケードを開始させる。成熟増殖因子における比較的高い程度の保存は、成熟ミオスタチンとGDF11とを区別できるモノクローナル抗体などの試薬を同定することを困難なものにしている。
【0065】
ミオパチーにおけるミオスタチンの役割
骨格筋は、体重のおよそ40%を占め、動的器官であり、1日あたり1〜2%の割合で代謝回転する。筋萎縮症は、非活動性期間中に(例えば非活動性萎縮症)および/または増大した全身性炎症(悪液質)に応答して生じる高度に制御された異化工程である。床上安静中などの長期の固定期間中に生じる場合がある非活動性萎縮症では、筋肉喪失が急速に生じる。例えば1週間の入院中に平均的患者は約1.3kgの筋肉量を失う。
【0066】
筋萎縮症は、幅広い臨床状態において顕著な病的状態を生じる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)または脊髄性筋萎縮症(SMA)のような脱神経の疾患および筋ジストロフィーを含む遺伝疾患では、筋力および機能の喪失は適切な処置がない高度に身体障害性の臨床症状発現である。腎不全、AIDS、心臓の状態またはがんによる悪液質症候群では、筋消耗は原発性状態の処置の成功をしばしば台無しにする。筋肉喪失は、加齢の自然な経過としても生じ、その最も重症の形態は、筋肉減少症、治療介入を必要とする病的状態としてますます認識されるようになっている高齢者における広汎性の状態として分類されている。最後に、筋萎縮症を進行させる大きな要因は非活動性である。固定は、股関節骨折、待機的人工関節置換術、脊髄損傷、救命医療ミオパチーおよび発作などの状態の大きな群において急速で顕著な筋肉喪失を生じる。それらの原因は様々だが、これらの徴候は顕著な身体障害、長い身体のリハビリテーションおよび回復時間ならびに生活の質の低下をもたらす筋脱力の特徴を共有する。
【0067】
筋萎縮症状態に関する医学的必要性は満たされていない。したがって、筋萎縮症を処置するために、いくつかの実施形態において方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される方法は、原発性ミオパチーの処置に関する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される方法は、例えば脱神経、遺伝性筋脱力および悪液質の疾患、筋肉喪失が疾患病態に続発する状態などの二次性ミオパチーの処置に関する。いくつかの実施形態では、非活動性萎縮症(例えば股関節骨折または脊髄損傷(SCI)に関連する)などの原発性ミオパチーの処置のために本明細書で提供される方法は、被験体において筋肉量、強度および機能の増加を生じる。
【0068】
ミオスタチン経路阻害
筋肉関連状態の処置に向けて臨床開発の種々の段階にあるいくつかのミオスタチン経路アンタゴニストがある。そのような経路アンタゴニストは、成熟増殖因子またはそのII型受容体のいずれかを標的化し、大部分は複数のTGFβファミリーメンバーのシグナル伝達に拮抗する。例えばいくつかの現在の臨床候補は、それぞれ生殖生物学、創傷治癒、赤血球生成および血管形成の制御因子である、アクチビンA、GDF11ならびにBMP9および10などの追加的増殖因子を遮断する。本開示の態様は、ミオスタチンに加えてこれらの因子を遮断することが、容認できない副作用のために安全に治療を受けられる患者の集団を限定している可能性があるという認識に関する。
【0069】
したがって、プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンに結合でき、それによりミオスタチン活性を阻害する抗体ならびにミオパチーを伴う疾患および障害を処置するためのその使用が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、循環中の潜在的複合体が優勢であることを考慮して、成熟増殖因子よりむしろ、より豊富でより長く存在するミオスタチン前駆体、例えばプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンを特異的に標的化する処置が本明細書で提供される。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、本明細書で提供される抗体は、例えばI型(ALK4/5)およびII型(ACTRIIA/B)受容体に結合することによって、ミオスタチン経路を活性化できるミオスタチンの「活性」形態と考えられる成熟ミオスタチンへのタンパク質分解を介したプロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンの活性化を妨げることができる。本明細書において使用される場合、用語「プロ/潜在型ミオスタチン」は、プロミオスタチン、潜在型ミオスタチンまたは両方を指す。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、プロミオスタチンに特異的に結合する。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンに特異的に結合する。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、潜在型ミオスタチンおよびプロミオスタチンの両方に特異的に結合する。
【0070】
プロ/潜在型ミオスタチンに結合する抗体
本開示は、ある特定のプロ/潜在型ミオスタチン特異的抗体(例えば本明細書でAb1と称される抗体)が、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの成熟ミオスタチンへの活性化を妨げたという驚くべき発見に少なくとも部分的に基づいている。さらにそのような抗体を使用するミオスタチン活性化の阻害は、デキサメタゾンおよびギプス固定誘導筋萎縮症マウスモデルの両方において筋肉量の増加に有効であった。本開示の態様は、プロ/潜在型ミオスタチンに結合し、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの成熟ミオスタチンへの活性化を阻害する抗体(例えば抗体および抗原結合性断片)を提供する。
【0071】
抗体(複数形と互換的に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を通じて、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合できる免疫グロブリン分子である。本明細書において使用される場合、用語「抗体」は、インタクト(例えば全長)ポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合性断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、一本鎖(scFv)、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体、多特異性抗体(例えば二重特異性抗体)ならびに抗体のグリコシル化改変体、抗体のアミノ酸配列改変体および共有結合的に改変された抗体を含む求められる特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の改変構成も包含する。抗体は、IgD、IgE、IgG、IgAまたはIgMなどの任意のクラス(またはそのサブクラス)の抗体を含み、抗体はいずれかの特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは様々なクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンの5個の主なクラスがあり:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。免疫グロブリンの様々なクラスのサブユニット構造および三次元構成は周知である。
【0072】
本明細書に記載の抗体は、プロ/潜在型ミオスタチンに結合でき、それによりタンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの成熟ミオスタチンへの活性化を阻害する。いくつかの場合では本明細書に記載の抗体は、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの活性化を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。いくつかの場合では本明細書に記載の抗体は、プロタンパク質転換酵素(例えばフューリン)によるタンパク質分解を介したプロミオスタチンの切断を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。いくつかの場合では本明細書に記載の抗体は、トロイドプロテアーゼ(例えばmTLL2)によるタンパク質分解を介したプロミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンの切断を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の阻害活性は、日常的方法によって、例えば実施例1および
図3に記載のウエスタンブロット分析によって測定され得る。しかし、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの切断への抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の阻害活性を測定するために追加的方法が使用され得ることは理解されるべきである。いくつかの実施形態ではプロ/潜在型ミオスタチン切断(例えばプロタンパク質転換酵素および/またはトロイドプロテアーゼによる)の阻害は、阻害剤効力の尺度を提供し、プロテアーゼ(例えばプロタンパク質転換酵素またはトロイドプロテアーゼの)活性を半分に低減するために必要な阻害剤(例えば抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体)の濃度であり、酵素または基質濃度に依存しない阻害定数(Ki)として反映され得る。
【0073】
いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素は(i)プロタンパク質転換酵素切断部位を含有するタンパク質のペプチド結合を加水分解する触媒ドメイン、および(ii)プロタンパク質転換酵素切断部位を有するrTGFに結合する結合ポケットを含む。本開示による使用のためのプロタンパク質転換酵素の例は、非限定的にPCSK5/6、PACE4、PACE7およびPACE3(例えばフューリン)を含む。プロタンパク質転換酵素は、いくつかの実施形態では、非限定的にヒト、サルまたはげっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)を含む任意の哺乳動物から得られる。
【0074】
いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素は、PCSK5/6、PACE4、PACE7およびPACE3(例えばフューリン)からなる群より選択されるプロタンパク質転換酵素に相同性である。例えばプロタンパク質転換酵素は、PCSK5/6、PACE4、PACE7またはPACE3(例えばフューリン)と少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一または少なくとも約99.9%同一であってよい。
【0075】
プロタンパク質転換酵素切断部位は、いくつかの実施形態では、プロタンパク質転換酵素(例えばPCSK5/6、PACE4、PACE7およびPACE3)によって切断され得るアミノ配列である。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、アミノ酸配列R−X−X−Rを含み、式中Rはアルギニンであり、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、アミノ酸配列R−X−(K/R)−Rを含み、式中Rはアルギニンであり、Kはリシンであり、Xは任意のアミノ酸である。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、R−V−R−R(配列番号57)であるアミノ酸配列を含み、式中Rはアルギニンであり、Vはバリンである。ヒト、ラット、マウスおよびカニクイザルミオスタチンについての例示的プロタンパク質転換酵素切断部位は、配列番号52〜55において太字で示される。いくつかの実施形態ではプロタンパク質転換酵素切断部位は、アミノ酸配列RSRR(配列番号56)を含む。
【0076】
いくつかの実施形態では本開示による使用のためのトロイドプロテアーゼは、非限定的に、BMP−1、mTLL−1およびmTLL−2を含む。トロイドプロテアーゼは、非限定的にヒト、サルまたはげっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)を含む任意の哺乳動物から得ることができる。いくつかの実施形態ではトロイドプロテアーゼは、BMP−1、mTLL−1およびmTLL−2からなる群より選択されるトロイドプロテアーゼに相同性である。例えばトロイドプロテアーゼは、BMP−1、mTLL−1およびmTLL−2と少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、少なくとも96%同一、少なくとも97%同一、少なくとも98%同一、少なくとも99%同一、少なくとも99.5%同一または少なくとも約99.9%同一であってよい。
【0077】
トロイドプロテアーゼ切断部位は、いくつかの実施形態では、トロイド(例えばBMP−1、mTLL−1およびmTLL−2)によって切断され得るアミノ配列である。ヒト、ラット、マウスおよびカニクイザルミオスタチンについての例示的トロイドプロテアーゼ切断部位は、配列番号52〜55において下線で示される。いくつかの実施形態ではトロイド切断部位は、アミノ酸配列QRを含み、式中Qはグルタミンであり、Rはアルギニンである。
【0078】
いくつかの実施形態では本明細書に記載の抗体は、プロ/潜在型ミオスタチンに結合でき、それによりミオスタチン活性を阻害する。いくつかの場合では本明細書に記載の抗体は、ミオスタチンシグナル伝達を少なくとも20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれより高く阻害できる。いくつかの実施形態ではミオスタチンシグナル伝達の阻害は、日常的方法によって、例えば実施例1に記載のミオスタチン活性化アッセイを使用して測定され得る。しかし、追加的方法がミオスタチンシグナル伝達活性を測定するために使用され得ることは理解されるべきである。
【0079】
例えばプロタンパク質転換酵素および/またはトロイドプロテアーゼによる、タンパク質分解を介したミオスタチンの切断の程度は、任意の好適な方法を使用して測定および/または定量され得ることは理解されるべきである。いくつかの実施形態ではタンパク質分解を介したミオスタチンの切断の程度は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して測定および/または定量される。例えばELISAは、放出された増殖因子(例えば成熟ミオスタチン)のレベルを測定するために使用され得る。別の例としてプロミオスタチン、潜在型ミオスタチンおよび/または成熟ミオスタチンに特異的に結合する抗体は、ミオスタチン(例えばプロ/潜在型/成熟ミオスタチン)の特定の形態のレベルを測定するため、タンパク質分解を介したミオスタチンの切断の程度を定量するためのELISAにおいて使用され得る。いくつかの実施形態ではタンパク質分解を介したミオスタチンの切断の程度は、免疫沈降に続いてトリプシンペプチドのSDS−PAGEもしくは質量分析、蛍光異方性に基づく技術、FRETアッセイ、水素−重水素交換質量分析、および/またはNMR分光法を使用して測定および/または定量される。
【0080】
いくつかの実施形態では、免疫グロブリンとしても公知の抗体は、それぞれおよそ25kDaの2本の軽鎖(L)およびそれぞれおよそ50kDaの2本の重鎖(H)から構成される四量体グリコシル化タンパク質である。ラムダおよびカッパと呼ばれる2つの型の軽鎖が抗体において見出され得る。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて免疫グロブリンは、5個の主なクラス:A、D、E、GおよびMに割り当てられてよく、これらのいくつかはサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4、IgA
1およびIgA
2にさらに分割され得る。各軽鎖は、N末端可変(V)ドメイン(V
L)および定常(C)ドメイン(C
L)を典型的には含む。各重鎖は、N末端Vドメイン(V
H)、3個または4個のCドメイン(C
H1−3)およびヒンジ領域を典型的には含む。V
Hに最も近位のC
HドメインはC
H1と名付けられる。V
HおよびV
Lドメインは、超可変配列(相補性決定領域、CDR)の3個の領域のための足場を形成するフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)と呼ばれる比較的保存された配列の4個の領域からなる。CDRは、抗体と抗原との特異的相互作用に関与する残基の大部分を含有する。CDRは、CDR1、CDR2およびCDR3と称される。したがって、重鎖上のCDR構成成分はCDRH1、CDRH2およびCDRH3と称され、一方軽鎖上のCDR構成成分はCDRL1、CDRL2およびCDRL3と称される。CDRは、Sequences of Proteins of Immunological Interest、US Department of Health and Human Services(1991年)、Kabatら編に記載のKabat CDRを典型的には指す。抗原結合部位を特徴付けるための別の基準は、Chothiaによって記載の超可変ループを指す。例えばChothia, D.ら、(1992年)J. Mol. Biol. 227巻:799〜817頁およびTomlinsonら、(1995年)EMBO J. 14巻:4628〜4638頁を参照されたい。さらに別の基準は、Oxford Molecular’s AbM antibody modelingソフトウェアによって使用されるAbM定義である。一般に例えばAntibody Engineering Lab Manual (Duebel, SおよびKontermann, R.編, Springer−Verlag、Heidelberg)のProtein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domainsを参照されたい。Kabat CDRに関して記載された実施形態は、Chothia超可変ループにもしくはAbM定義ループに関して、またはこれらの方法のいずれかの組合せに関して同様に記載された関係を使用して代替的に実行され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体および抗体をコードする本開示の核酸分子は、表1に示すCDRアミノ酸配列を含む。
【表1】
【0082】
いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン結合剤(例えば抗体)は、表1に示される抗体のいずれか1つに提供されるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2もしくはCDRL3またはそれらの組合せを含む任意の抗体(抗原結合性断片を含む)を含む。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン結合剤は、表1に示される抗体のいずれか1つのCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含む。本開示は、表1に示される抗体のいずれか1つに提供されるCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2またはCDRL3を含む分子をコードする任意の核酸配列も含む。抗体重鎖および軽鎖CDR3ドメインは、抗原に対する抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を演じる場合がある。したがって、本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン結合剤またはその核酸分子は、表1に示す抗体の少なくとも重鎖および/または軽鎖CDR3を含み得る。
【0083】
本開示の態様は、プロ/潜在型ミオスタチンタンパク質に結合し、6個の相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含むモノクローナル抗体または抗原結合性断片に関する。
【0084】
いくつかの実施形態ではCDRH1は配列番号1〜3のいずれか1つに記載の配列を含む。いくつかの実施形態ではCDRH2は配列番号4〜9のいずれか1つに記載の配列を含む。いくつかの実施形態ではCDRH3は配列番号10〜11のいずれか1つに記載の配列を含む。CDRL1は配列番号12〜17のいずれか1つに記載の配列を含む。いくつかの実施形態ではCDRL2は配列番号18〜21のいずれか1つに記載の配列を含む。いくつかの実施形態ではCDRL3は配列番号22〜23のいずれか1つに記載の配列を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では(例えば表1に示される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab1について)CDRH1は配列番号1または2に記載の配列を含み、CDRH2は配列番号4または5に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号10に記載の配列を含み、CDRL1は配列番号12または13に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号18または19に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号22に記載の配列を含み、抗体はプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。
【0086】
いくつかの実施形態では(例えば表1に示される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab3について)CDRH1は配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2は配列番号6または7に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号11に記載の配列を含み、CDRL1は配列番号14または15に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号20または21に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号23に記載の配列を含み、抗体はプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。
【0087】
いくつかの実施形態では(例えば表1に示される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体Ab5について)CDRH1は配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2は配列番号8または9に記載の配列を含み、CDRH3は配列番号11に記載の配列を含み、CDRL1は配列番号16または17に記載の配列を含み、CDRL2は配列番号20または21に記載の配列を含み、CDRL3は配列番号23に記載の配列を含み、抗体はプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。いくつかの例では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン結合剤(例えば抗体)のいずれかは、CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2および/またはCDRL3に実質的に類似する1つまたは複数のCDR(例えばCDRHまたはCDRL)配列を有する任意の抗体(抗原結合性断片を含む)を含む。例えば抗体は、配列番号1〜23のいずれか1つの対応するCDR領域と比較して5個、4個、3個、2個または1個までのアミノ酸残基バリエーションを含有する、表1(配列番号1〜23)に示される1つまたは複数のCDR配列を含んでよい。表1に列挙される抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域についての完全なアミノ酸および核酸配列は下に提供される。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【0088】
いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、配列番号24〜29のいずれか1つの重鎖可変ドメインまたは配列番号30〜35のいずれか1つの軽鎖可変ドメインを含む任意の抗体を含む。いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、配列番号24および30;25および31;26および32;27および33;28および34;または29および35)の重鎖可変および軽鎖可変の対を含む任意の抗体を含む。
【0089】
本開示の態様は、本明細書に記載のもののいずれかに相同性の重鎖可変および/または軽鎖可変アミノ酸配列を有する抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体を提供する。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、配列番号24〜29のいずれかの重鎖可変配列または配列番号30〜35のいずれか1つの軽鎖可変配列と少なくとも75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である重鎖可変配列または軽鎖可変配列を含む。いくつかの実施形態では相同性重鎖可変および/または軽鎖可変アミノ酸配列は、本明細書で提供されるCDR配列のいずれの内でも変化していない。例えばいくつかの実施形態では配列バリエーションの程度(例えば75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%)は本明細書で提供されるCDR配列のいずれかを除外して重鎖可変および/または軽鎖可変配列内で生じてよい。
【0090】
2個のアミノ酸配列の「パーセント同一性」はKarlinおよびAltschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:5873〜77頁、1993年のとおり改変されたKarlinおよびAltschul Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87巻:2264〜68頁、1990年のアルゴリズムを使用して決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschulら、J. Mol. Biol. 215巻:403〜10頁、1990年のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。BLASTタンパク質検索は、目的のタンパク質分子に相同性のアミノ酸配列を得るためにXBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3で実行され得る。2個の配列間にギャップが存在する場合、ギャップBLASTがAltschulら、Nucleic Acids Res. 25巻(17号):3389〜3402頁、1997年に記載のとおり利用され得る。BLASTおよびギャップBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメータが使用され得る。
【0091】
いくつかの実施形態では保存的変異は、結晶構造に基づいて決定されるプロ/潜在型ミオスタチンとの相互作用に残基が関与しそうにない位置でCDRまたはフレームワーク配列に導入されてよい。本明細書において使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対電荷またはサイズの特徴を変更しないアミノ酸置換を指す。改変体は、そのような方法をまとめている参考文献、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual、J. Sambrookら編、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1989年またはCurrent Protocols in Molecular Biology、F.M. Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.、New Yorkにおいて見出されるような当業者に公知のポリペプチド配列を変更するための方法に従って調製されてよい。アミノ酸の保存的置換は、次の群:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、D内のアミノ酸の間で行われる置換を含む。
【0092】
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、抗体に望ましい特性を付与する変異を含む。例えば、天然IgG4 mAbで生じることが公知であるFabアーム交換による起こり得る困難な状況を回避するために、本明細書で提供される抗体は、セリン228(EU番号付け、Kabat番号付け残基241)がプロリンに変換されてIgG1様(CPPCP(配列番号58))ヒンジ配列が生じる安定化「Adair」変異を含む場合がある(Angal S.ら、「A single amino acid substitution abolishes the heterogeneity of chimeric mouse/human (IgG4) antibody」Mol Immunol 30巻、105〜108頁;1993年)。したがって、抗体のいずれかは、安定化「Adair」変異またはアミノ酸配列CPPCP(配列番号58)を含んでよい。
【0093】
本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン結合剤は、任意選択で抗体定常領域またはその一部を含んでよい。例えばV
Lドメインは、そのC末端でCκまたはCλなどの軽鎖定常ドメインに付着され得る。同様にV
Hドメインまたはその一部は、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMならびに任意のアイソタイプサブクラスのような重鎖の全体または一部に付着され得る。抗体は、好適な定常領域を含み得る(例えばKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第91〜3242号、National Institutes of Health Publications、Bethesda、Md.(1991年)を参照されたい)。したがって、この範囲内の抗体は、任意の好適な定常領域と組み合わされたV
HおよびV
Lドメイン、またはその抗原結合性部分を含み得る。
【0094】
ある特定の実施形態ではV
Hおよび/またはV
Lドメインは、生殖系列配列に復帰されてよく、例えばこれらのドメインのFRは、生殖系列細胞によって産生されるものに適合するように従来の分子生物学技術を使用して変異される。例えばV
Hおよび/またはV
Lドメインは、それぞれIgHV3−30(配列番号36)および/またはIgLV1−44(配列番号37)の生殖系列配列に復帰されてよい。V
Hおよび/またはV
Lドメインのいずれかが任意の好適な生殖系列配列に復帰され得ることは理解されるべきである。他の実施形態ではFR配列は、コンセンサス生殖系列配列から逸脱したままである。
【化8】
【0095】
いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体または抗原結合性断片は、配列番号24〜35に示す抗体のフレームワーク領域を含んでも含まなくてもよい。いくつかの実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、ネズミ抗体であり、ネズミフレームワーク領域配列を含む。
【0096】
いくつかの実施形態では本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、比較的高い親和性で、例えば10
−6M、10
−7M、10
−8M、10
−9M、10
−10M、10
−11M未満またはそれより低いKdでプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。例えば抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、5pMから500nMの間、例えば50pMから100nMの間、例えば500pMから50nMの間の親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。本開示は、プロ/潜在型ミオスタチンへの結合について本明細書に記載の抗体のいずれかと競合し、50nMまたはそれより低い(例えば20nMもしくはそれより低い、10nMもしくはそれより低い、500pMもしくはそれより低い、50pMもしくはそれより低い、または5pMもしくはそれより低い)親和性を有する抗体または抗原結合性断片も含む。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の親和性および結合動態は、これに限定されないがバイオセンサー技術(例えばOCTETまたはBIACORE)を含む任意の好適な方法を使用して試験されてよい。
【0097】
標的抗原に「特異的に結合する」抗体は非標的抗原に結合するよりも大きな親和性、アビディティ、より容易におよび/またはより長い持続時間で標的抗原に結合する。いくつかの実施形態では、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、プロ/潜在型ミオスタチンのトロイド切断部位にもしくはその近くにまたはトロイドドッキング部位にもしくはその近くに結合する。いくつかの実施形態では抗体は、トロイド切断部位またはトロイドドッキング部位の15またはそれより少ないアミノ酸残基内に結合する場合に、トロイド切断部位近く、またはトロイドドッキング部位近くに結合する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、トロイド切断部位またはトロイドドッキング部位の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基内に結合する。いくつかの実施形態では抗体は、GDF8のトロイド切断部位にまたはその近くに結合する。例えば抗体は、配列番号62 PKAPPLRELIDQYDVQRDDSSDGSLEDDDYHAT(配列番号62)に記載のアミノ配列に結合できる。他の実施形態では、本明細書で提供される抗体のいずれかは、プロ/潜在型ミオスタチンのプロタンパク質転換酵素切断部位にもしくはその近くに、またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位にもしくはその近くに結合する。いくつかの実施形態では抗体は、プロタンパク質転換酵素切断部位またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位の15またはそれより少ないアミノ酸残基内に結合する場合、プロタンパク質転換酵素切断部位近くに、またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位近くに結合する。いくつかの実施形態では本明細書で提供する抗体のいずれかは、プロタンパク質転換酵素切断部位またはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基内に結合する。いくつかの実施形態では抗体は、GDF8のプロタンパク質転換酵素切断部位にまたはその近くに結合する。例えば抗体は、配列番号63に記載のアミノ酸配列に結合できる。
GLNPFLEVKVTDTPKRSRRDFGLDCDEHSTESRC(配列番号63)。
【0098】
一例では本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、ミオスタチンの他の形態および/または増殖因子のTGFβファミリーの他のメンバーと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する。増殖因子のTGFβファミリーのメンバーは、非限定的にAMH、ARTN、BMP10、BMP15、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8A、BMP8B、GDF1、GDF10、GDF11、GDF15、GDF2、GDF3、GDF3A、GDF5、GDF6、GDF7、GDF8、GDF9、GDNF、INHA、INHBA、INHBB、INHBC、INHBE、LEFTY1、LEFTY2、NODAL、NRTN、PSPN、TGFβ1、TGFβ2およびTGFβ3タンパク質を含む。そのような抗体は、増殖因子のTGFβファミリーの他のメンバーと比較してはるかに高い親和性(例えば少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍または1,000倍高い)でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。いくつかの実施形態ではそのような抗体は、増殖因子のTGFβファミリーの他のメンバーと比較して少なくとも1,000倍高い親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、GDF11または成熟ミオスタチンの1つまたは複数の形態と比較してはるかに高い(例えば少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍または1,000倍高い)親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、GDF11(例えばプロGDF11、潜在型GDF11もしくは成熟GDF11)または成熟ミオスタチンの1つまたは複数の形態と比較して少なくとも1,000倍高い親和性でプロ/潜在型ミオスタチンに結合できる。代替的にまたはさらに抗体は、プロ/潜在型GDF11などのTGFβファミリーの他のメンバーと比較して、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの切断(例えばプロタンパク質転換酵素またはトロイドプロテアーゼによる)に対してはるかに高い阻害活性(例えば少なくとも2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、200倍、500倍、1,000倍高い)を示し得る。
【0099】
いくつかの実施形態では抗体は抗原に結合するが、抗原を血漿から有効に除去できない。したがって、いくつかの実施形態では血漿中の抗原の濃度は、抗原のクリアランスを低減することによって増加され得る。しかし、いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体(例えばスイーピング抗体)は、抗原への親和性がpHに感受性である。そのようなpH感受性抗体は、中性pHで血漿中の抗原に結合でき、酸性エンドソーム中で抗原から解離し、それにより抗体媒介抗原蓄積を低減し、および/または血漿からの抗原クリアランスを促進する。
【0100】
本開示の態様は、スイーピング抗体に関する。本明細書において使用される場合、「スイーピング抗体」は、pH感受性抗原結合および、中性または生理学的pHで細胞表面新生児Fc受容体(FcRn)への少なくとも閾値レベルの結合の両方を有する抗体を指す。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、新生児Fc受容体FcRnに中性pHで結合する。例えばスイーピング抗体は、7.0から7.6の範囲のpHでFcRnに結合できる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、抗原に抗原結合部位で結合でき、細胞性FcRnに抗体のFc部分を介して結合できる。いくつかの実施形態では次いでスイーピング抗体は、内部移行され、分解される場合がある抗原を酸性エンドソーム中に放出できる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、もはや抗原に結合せず、次いで(例えばエキソサイトーシスによって)細胞によって血清に戻して放出され得る。
【0101】
いくつかの実施形態では血管内皮(例えば被験体の)中のFcRnは、スイーピング抗体の半減期を延ばす。いくつかの実施形態ではミオスタチン(例えばプロミオスタチン、潜在型ミオスタチンまたはプライムドミオスタチン(primed Myostatin))などの抗原に結合するスイーピング抗体を、いくつかの実施形態では血管内皮細胞は内部移行させる。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、血流に戻って再循環される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、その従来の対応物と比較して半減期(例えば被験体の血清中)が増加している。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体の従来の対応物は、スイーピング抗体の由来元である抗体を指す(例えばpH7でより大きな親和性でFcRnに結合するように従来の抗体のFc部分を操作する前)。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、被験体の血清中でその従来の対応物と比較して少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、35%、50%、75%、100%、150%、200%または250%長い半減期を有する。
【0102】
いくつかの実施形態ではスイーピング抗体のFc部分は、FcRnに結合する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体のFc部分は、FcRnに7.4のpHで10
−3Mから10
−8Mの範囲のKdで結合する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、FcRnに7.4のpHで10
−3Mから10
−7M、10
−3Mから10
−6M、10
−3Mから10
−5M、10
−3Mから10
−4M、10
−4Mから10
−8M、10
−4Mから10
−7M、10
−4Mから10
−6M、10
−4Mから10
−5M、10
−5Mから10
−8M、10
−5Mから10
−7M、10
−5Mから10
−6M、10
−6Mから10
−8M、10
−6Mから10
−7Mまたは10
−7Mから10
−8Mの範囲のKdで結合する。いくつかの実施形態ではFcRnは、スイーピング抗体のCH2−CH3ヒンジ領域に結合する。いくつかの実施形態ではFcRnは、プロテインAまたはプロテインGと同じ領域に結合する。いくつかの実施形態ではFcRnは、FcγRとは異なる結合部位に結合する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体Fc領域のアミノ酸残基AAは、FcRnへの結合のために必要である。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体Fc領域のアミノ酸残基AAは、FcRnへの結合に影響を与える。
【0103】
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、より高い親和性でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、pH7.4でより高い親和性でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体のFcRnへの親和性は、それらの従来の対応物と比較してそれらの薬物動態(PK)特性を伸ばすように増加される。例えばいくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、より低い用量での効能に起因してより少ない有害反応を誘発する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、より少ない頻度で投与される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体のある特定の組織型への経細胞輸送は増加される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、経胎盤性送達の効率を増強する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、産生するためにあまり費用がかからない。
【0104】
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、低親和性でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、pH7.4で、低親和性でFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体のFcRnへの親和性は、それらの従来の対応物と比較してそれらの薬物動態的(PK)特性を短くするように減少される。例えばいくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、画像化および/または放射免疫療法に関してさらに急速に排除される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、自己免疫疾患に対する処置として内在性病原性抗体のクリアランスを促進する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、材料胎児特異的抗体の経胎盤輸送によって生じる可能性がある有害な妊娠転帰のリスクを低減する。
【0105】
いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、中性または生理学的pH(例えばpH7.4)と比較して低いpHで抗原への親和性が減少する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、生理学的pH(例えばpH7.4)と比較して酸性pH(例えば5.5から6.5の範囲のpH)で抗原への親和性が減少する。本明細書で提供される抗体のいずれかはpH変化に応じて抗原から解離するように操作されてよい(例えばpH感受性抗体)ことは理解されるべきである。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピング抗体は、pHに応じて抗原に結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピング抗体は、pHに応じてFcRnに結合するように操作される。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピング抗体は、エンドサイトーシスによって内部移行される。いくつかの実施形態では本明細書で提供されるスイーピング抗体は、FcRn結合によって内部移行される。いくつかの実施形態ではエンドサイトーシスされたスイーピング抗体は、抗原をエンドソーム中に放出する。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、細胞表面に戻って再循環される。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、細胞に結合したままである。いくつかの実施形態ではエンドサイトーシスされたスイーピング抗体は、血漿に戻って再循環される。本明細書で提供される抗体のいずれかのFc部分が、異なるFcRn結合活性を有するように操作されてよいことは理解されるべきである。いくつかの実施形態ではFcRn結合活性は、スイーピング抗体による抗原のクリアランス時間に影響を与える。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、長時間作用型または速効型スイーピング抗体であってよい。
【0106】
いくつかの実施形態では従来の治療用抗体をスイーピング抗体に変換することは、有効用量を低減する。いくつかの実施形態では従来の治療用抗体をスイーピング抗体に変換することは、有効用量を少なくとも1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%低減する。いくつかの実施形態では従来の治療用抗体をスイーピング抗体に変換することは、有効用量を少なくとも1/1.5、1/2、1/3、1/4、1/5、1/6、1/8、1/10、1/15、1/20、1/50または1/100に低減する。
【0107】
いくつかの実施形態では治療のためのスイーピング抗体の適切な用量を選択することは、経験的に実行され得る。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体の高用量は、FcRnを飽和する場合があり、血清中の抗原を内部移行することなく安定化する抗体を生じる。いくつかの実施形態では低用量のスイーピング抗体は、治療的に有効でない場合がある。いくつかの実施形態ではスイーピング抗体は、1日1回、1週間に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、6週間ごとに1回、8週間ごとに1回、10週間ごとに1回、12週間ごとに1回、16週間ごとに1回、20週間ごとに1回または24週間ごとに1回投与される。
【0108】
いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれもスイーピング抗体になるように改変または操作されてよい。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれも任意の好適な方法を使用してスイーピング抗体に変換されてよい。例えばスイーピング抗体を作製するための好適な方法はIgawaら、(2013年)「Engineered Monoclonal Antibody with Novel Antigen−Sweeping Activity In Vivo」、PLoS ONE 8巻(5号):e63236頁;およびIgawaら、「pH−dependent antigen−binding antibodies as a novel therapeutic modality」、Biochimica et Biophysica Acta 1844巻(2014年)1943〜1950頁に以前に記載されており、これらのそれぞれの内容は参照により本明細書に組み込まれる。しかし、本明細書で提供されるスイーピング抗体を作製するための方法が限定されることを意味しないことは理解されるべきである。したがって、スイーピング抗体と作製するための追加的方法は本開示の範囲内である。
【0109】
本開示のいくつかの態様は、本明細書で提供される抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体のいずれかの親和性(例えばKdとして表される)がpHの変化に感受性であるという認識に基づいている。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、比較的高いpH(例えば7.0〜7.4の範囲のpH)と比較して比較的低いpH(例えば4.0〜6.5の範囲のpH)でプロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdが増加している。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、pHが4.0から6.5の間である場合に、10
−3M、10
−4M、10
−5M、10
−6M、10
−7M、10
−8Mの範囲のプロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdを有する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、pHが7.0から7.4の間である場合に、10
−6M、10
−7M、10
−8M、10
−9M、10
−10M、10
−11Mの範囲のプロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdを有する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体は、pH7.0から7.4の間と比較してpH4.0から6.5の間で少なくとも2倍、少なくとも10倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも500倍、少なくとも1000倍、少なくとも5000倍または少なくとも10000倍大きいプロ/潜在型ミオスタチンへの結合のKdを有する。
【0110】
ポリペプチド
本開示のいくつかの態様は、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29からなる群より選択される配列を有するポリペプチドに関する。いくつかの実施形態ではポリペプチドは可変重鎖ドメインである。いくつかの実施形態ではポリペプチドは、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28または配列番号29に記載のアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である。
【0111】
本開示のいくつかの態様は、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34および配列番号35からなる群より選択される配列を有するポリペプチドに関する。いくつかの実施形態ではポリペプチドは可変軽鎖ドメインである。いくつかの実施形態ではポリペプチドは、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34または配列番号35に記載のアミノ酸配列のいずれか1つと少なくとも75%(例えば80%、85%、90%、95%、98%または99%)同一である。
【0112】
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体と競合する抗体
本開示の態様は、本明細書で提供される抗体のいずれかと競合または交差競合する抗体に関する。抗体に関して本明細書において使用される用語「競合する」は、第1の抗体が、第2の抗体の結合と十分に類似した様式でタンパク質(例えば潜在型ミオスタチン)のエピトープに結合し、そのエピトープとの第1の抗体の結合の結果が、第2の抗体の非存在下での第1の抗体の結合と比較して第2の抗体の存在下で検出可能に減少されることを意味する。第2の抗体のそのエピトープへの結合も第1の抗体の存在下で検出可能に減少される別の場合が可能であるが、そうである必要はない。すなわち第1の抗体は第2の抗体のそのエピトープへの結合を、第2の抗体がそのそれぞれのエピトープへの第1の抗体の結合を阻害することなく阻害できる。しかし、各抗体がそのエピトープまたはリガンドとの他の抗体の結合を検出可能に阻害する場合、同じ程度、より大きい程度またはより小さい程度であるかに関わらず、抗体はそれらのそれぞれのエピトープ(複数可)の結合について互いに「交差競合する」といえる。競合するおよび交差競合する両方の抗体は、本開示の範囲内である。そのような競合または交差競合が生じる機構(例えば立体障害、コンフォメーション変化もしくは共通エピトープまたはそれらの部分への結合)に関わらず、当業者は、そのような競合および/または交差競合抗体が包含され、本明細書で提供される方法および/または組成物に有用であり得ることを理解する。
【0113】
本開示の態様は、本明細書で提供される抗体のいずれかと競合または交差競合する抗体に関する。いくつかの実施形態では抗体は、本明細書で提供される抗体のいずれかと同じエピトープにおいてまたはその近くに結合する。いくつかの実施形態では抗体は、それがエピトープの15またはそれより少ないアミノ酸残基内に結合する場合にエピトープ近くに結合する。いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、本明細書で提供される抗体のいずれかが結合するエピトープの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15アミノ酸残基内に結合する。
【0114】
別の実施形態では抗体は、10
−6M未満の抗体とタンパク質との間の平衡解離定数Kdで本明細書で提供される抗原のいずれか(例えばプロ/潜在型ミオスタチン)への結合について競合または交差競合する。他の実施形態では抗体は、10
−11Mから10
−6Mの範囲のKdで、本明細書で提供される抗原のいずれかへの結合について競合または交差競合する。
【0115】
本開示の態様は本明細書で提供される抗体のいずれかとプロ/潜在型ミオスタチンへの結合について競合する抗体に関する。いくつかの実施形態では抗体は、本明細書で提供される抗体のいずれかと同じエピトープにおいてプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。例えば、いくつかの実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、プロ/潜在型ミオスタチンのトロイド切断部位にもしくはその近くにまたはトロイドドッキング部位にもしくはその近くに結合する。他の実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかは、プロ/潜在型ミオスタチンのプロタンパク質転換酵素切断部位にもしくはその近くにまたはプロタンパク質転換酵素ドッキング部位にもしくはその近くに結合する。別の実施形態では抗体は、10
−6M未満の抗体とプロ/潜在型ミオスタチンとの間の平衡解離定数Kdでプロ/潜在型ミオスタチンへの結合について競合する。他の実施形態では本明細書で提供される抗体のいずれかと競合する抗体は、10
−11Mから10
−6Mの範囲のKdでプロ/潜在型ミオスタチンに結合する。
【0116】
本明細書で提供される抗体のいずれかは、任意の好適な方法を使用して特徴付けられてよい。例えば1つの方法は、抗原が結合するエピトープを同定すること、すなわち「エピトープマッピング」である。例えばHarlowおよびLane、Using Antibodies、a Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1999年の11章に記載のとおり、抗体抗原複合体の結晶構造を解析すること、競合アッセイ、遺伝子断片発現アッセイおよび合成ペプチドに基づくアッセイを含む、タンパク質上のエピトープの位置をマッピングおよび特徴付けするための多数の好適な方法がある。追加的例ではエピトープマッピングは、抗体が結合する配列を決定するために使用され得る。エピトープは、直鎖状エピトープであり得、すなわちアミノ酸の単一のストレッチに含有され得る、または必ずしも単一のストレッチ(一次構造直鎖状配列)に含有されていなくてもよいアミノ酸の三次元相互作用によって形成されるコンフォメーショナルエピトープ(conformational epitope)であってよい。多様な長さ(例えば少なくとも4〜6アミノ酸長)のペプチドは、単離または合成(例えば組換え的に)され、抗体との結合アッセイのために使用されてよい。別の例では抗体が結合するエピトープは、標的抗原配列由来の重複ペプチドを使用し、抗体による結合を決定することによる系統的スクリーニングにおいて決定され得る。遺伝子断片発現アッセイにより、標的抗原をコードするオープンリーディングフレームは、無作為にまたは特異的な遺伝的構築によってのいずれかで断片化され、発現された抗原断片と試験される抗体との反応性が決定される。遺伝子断片は、例えばPCRによって産生され、次いで放射性アミノ酸の存在下でタンパク質へin vitroで転写および翻訳され得る。抗体の放射性標識抗原断片への結合は、次いで免疫沈降およびゲル電気泳動によって決定される。ある特定のエピトープは、ファージ粒子の表面に提示された無作為ペプチド配列の大きなライブラリー(ファージライブラリー)を使用しても同定され得る。代替的に、重複ペプチド断片の規定のライブラリーは、簡単な結合アッセイにおいて試験抗体への結合について試験され得る。追加的例では、抗原結合ドメインの変異誘発、ドメイン交換実験およびアラニンスキャンニング変異誘発は、エピトープ結合のために要求される、十分なおよび/または必要な残基を同定するために実施され得る。例えばドメイン交換実験は、プロ/潜在型ミオスタチンポリペプチドの種々の断片が、TGFβタンパク質ファミリーの別のメンバー(例えばGDF11)などの密接に関連しているが抗原性が異なるタンパク質由来の配列で置き換えられて(交換されて)いる標的抗原の変異体を使用して実施され得る。抗体の変異体プロ/潜在型ミオスタチンへの結合を評価することによって、抗体結合への特定の抗原断片の重要性が評価され得る。
【0117】
代替的に、競合アッセイは、抗体が他の抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために同じ抗原に結合することが公知である他の抗体を使用して実施されてよい。競合アッセイは当業者に周知である。好適な方法のいずれか、例えば本明細書に記載のエピトープマッピング法は、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体が本明細書に記載のプロ/潜在型ミオスタチン中の特異的残基/セグメントの1つまたは複数に結合するかどうかを決定するために適用され得る。さらに抗体と、プロ/潜在型ミオスタチン中のこれらの定義された残基の1つまたは複数との相互作用は、日常的技術によって決定され得る。例えば結晶構造を決定することができ、プロ/潜在型ミオスタチン中の残基と抗体中の1つまたは複数の残基との間の距離はそれに従って決定され得る。そのような距離に基づいて、プロ/潜在型ミオスタチン中の特定の残基が抗体中の1つまたは複数の残基と相互作用するかどうかが決定され得る。さらに、競合アッセイおよび標的変異誘発アッセイなどの好適な方法は、変異体プロ/潜在型ミオスタチンなどの別の標的と比較した、候補抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体のプロ/潜在型ミオスタチンへの優先的な結合を決定するために適用され得る。
【0118】
プロ/潜在型ミオスタチンに結合する抗体の産生
多数の方法は、本開示の抗体またはその抗原結合性断片を得るために使用され得る。例えば抗体は、組換えDNA方法を使用して産生され得る。モノクローナル抗体は、公知の方法によりハイブリドーマの生成によっても産生され得る(例えばKohlerおよびMilstein(1975年)Nature、256号:495〜499頁を参照されたい)。この様式で形成されたハイブリドーマは、次いで、特定の抗原に特異的に結合する抗体を産生する1つまたは複数のハイブリドーマを同定するために酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(例えばOCTETまたはBIACORE)解析などの標準的方法を使用してスクリーニングされる。特定の抗原の任意の形態、例えば組換え抗原、天然に存在する形態、その任意の改変体または断片、およびその抗原性ペプチド(例えば直鎖状エピトープとしてまたはコンフォメーショナルエピトープとして足場内の本明細書に記載のエピトープのいずれか)は免疫原として使用され得る。抗体を作製する1つの例示的方法は、抗体またはその断片(例えばscFv)を発現するタンパク質発現ライブラリー、例えばファージまたはリボソームディスプレイライブラリーをスクリーニングすることを含む。ファージディスプレイは、例えばLadnerら、米国特許第5,223,409号、Smith(1985年)Science 228巻:1315〜1317頁、Clacksonら、(1991年)Nature、352巻:624〜628頁、Marksら、(1991年)J. Mol. Biol.、222巻:581〜597頁、WO92/18619、WO91/17271、WO92/20791、WO92/15679、WO93/01288、WO92/01047、WO92/09690およびWO90/02809に記載されている。
【0119】
ディスプレイライブラリーの使用に加えて、特定の抗原(例えばプロミオスタチン)は、非ヒト動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、ハムスター、またはラットを免疫化するために使用されてよい。一実施形態では非ヒト動物はマウスである。
【0120】
別の実施形態ではモノクローナル抗体は、非ヒト動物から得られ、次いで好適な組換えDNA技術を使用して改変される(例えばキメラ)。キメラ抗体を作製するための種々のアプローチは記載されている。例えばMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.81巻:6851頁、1985年、Takedaら、Nature 314巻:452頁、1985年、Cabillyら、米国特許第4,816,567号、Bossら、米国特許第4,816,397号、Tanaguchiら、欧州特許公開第EP171496号、欧州特許公開第0173494号、英国特許第GB2177096B号を参照されたい。
【0121】
追加的な抗体産生技術についてAntibodies: A Laboratory Manual、Harlowら編、Cold Spring Harbor Laboratory、1988年を参照されたい。本開示は、抗体のいずれかの特定の供給源、産生の方法または他の特別な特徴に必ずしも限定されない。
【0122】
本開示のいくつかの態様は、ポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換された宿主細胞に関する。宿主細胞は、原核または真核細胞であってよい。宿主細胞に存在するポリヌクレオチドまたはベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込まれていてもよく、または染色体外に維持されていてもよい。宿主細胞は、細菌性、昆虫、真菌、植物、動物またはヒト細胞などの任意の原核または真核細胞であってよい。いくつかの実施形態では真菌細胞は、例えばSaccharomyces属のもの、具体的にはS.cerevisiae種のものである。用語「原核生物」は、抗体または対応する免疫グロブリン鎖の発現のためにDNAまたはRNA分子で形質転換またはトランスフェクトされ得る全ての細菌を含む。原核生物の宿主は、例えばE.coli、S.typhimurium、Serratia marcescensおよびBacillus subtilisなどのグラム陰性およびグラム陽性細菌を含んでよい。用語「真核生物」は、酵母、高等植物、昆虫ならびに脊椎動物細胞、例えばNSOおよびCHO細胞などの哺乳動物細胞を含む。組換え産生手順において用いられる宿主に応じて、ポリヌクレオチドによってコードされる抗体または免疫グロブリン鎖は、グリコシル化されてよい、またはグリコシル化されなくてよい。抗体または対応する免疫グロブリン鎖は、開始メチオニンアミノ酸残基も含んでよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、ベクターが適切な宿主に組み込まれると、宿主はヌクレオチド配列の高レベル発現に好適な条件下に維持されてよく、所望により、免疫グロブリン軽鎖、重鎖、軽鎖/重鎖二量体もしくはインタクト抗体、抗原結合性断片または他の免疫グロブリン形態の回収および精製が続いてよい;Beychok、Cells of Immunoglobulin Synthesis、Academic Press、N.Y.、(1979年)を参照されたい。したがって、ポリヌクレオチドまたはベクターは、次に抗体または抗原結合性断片を産生する細胞に導入される。さらに、前述の宿主細胞を含むトランスジェニック動物、好ましくは哺乳動物は、抗体または抗体断片の大規模産生のために使用されてよい。
【0124】
形質転換された宿主細胞は、発酵槽で増殖され、最適な細胞増殖を達成するための任意の好適な技術を使用して培養されてよい。発現されると、全抗体、それらの二量体、個々の軽鎖および重鎖、他の免疫グロブリン形態または抗原結合性断片は、硫酸アンモニウム沈殿法、親和性カラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む当技術分野の標準的手順により精製されてよい;Scopes、「Protein Purification」、Springer Verlag、N.Y.(1982年)を参照されたい。次いで抗体または抗原結合性断片は、増殖培地、細胞溶解物または細胞膜画分から単離されてよい。例えば微生物で発現された抗体または抗原結合性断片の単離および精製は、例えば調製用クロマトグラフィー分離および、例えば抗体の定常領域に対して指向されたモノクローナルまたはポリクローナル抗体の使用を含むものなどの免疫学的分離などの任意の従来の手段によってであってよい。
【0125】
本開示の態様は、モノクローナル抗体の無期限に延長される供給源を提供するハイブリドーマに関する。ハイブリドーマの培養物から直接免疫グロブリンを得るための代替法として、不死化ハイブリドーマ細胞は、続く発現および/または遺伝子操作のための再編成重鎖および軽鎖遺伝子座の供給源として使用されてよい。再編成抗体遺伝子は、cDNAを産生するために適切なmRNAから逆転写されてよい。いくつかの実施形態では重鎖定常領域は、異なるアイソタイプのものと交換されるかまたは全体が除去されてよい。可変領域は、一本鎖Fv領域をコードするように連結されてよい。複数のFv領域は、1つより多い標的への結合能力を付与するために連結されてよく、またはキメラ重鎖および軽鎖組合せが用いられてよい。任意の適切な方法は、抗体可変領域のクローニングおよび組換え抗体の生成のために使用されてよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、重鎖および/または軽鎖の可変領域をコードする適切な核酸が得られ、標準的組換え宿主細胞にトランスフェクトされ得る発現ベクターに挿入される。種々のそのような宿主細胞が使用されてよい。いくつかの実施形態では哺乳動物宿主細胞は、効率的なプロセシングおよび産生のために有利である場合がある。この目的のために有用な典型的な哺乳動物細胞株は、CHO細胞、293細胞またはNSO細胞を含む。抗体または抗原結合性断片の産生は、改変組換え宿主を宿主細胞の増殖およびコード配列の発現に適切な培養条件下で培養することによって実行されてよい。抗体または抗原結合性断片は、培養物からそれらを単離することによって回収され得る。発現系は、生じた抗体が培地に分泌されるように、シグナルペプチドを含める形で設計されてよいが;細胞内産生物も可能である。
【0127】
本開示は、本明細書に記載の抗体の免疫グロブリン鎖の少なくとも可変領域をコードするポリヌクレオチドも含む。いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドによってコードされる可変領域は、上に記載のハイブリドーマのいずれか1つによって産生された抗体の可変領域のVHおよび/またはVLの少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0128】
抗体または抗原結合性断片をコードするポリヌクレオチドは、例えばDNA、cDNA、RNAまたは合成的に産生されたDNAもしくはRNAまたはこれらのポリヌクレオチドのいずれかを単独もしくは組合せで含む組換え的に産生されたキメラ核酸分子であってよい。いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドは、ベクターの一部である。そのようなベクターは、好適な宿主細胞においておよび好適な条件下でベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子などのさらなる遺伝子を含んでよい。
【0129】
いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドは、原核または真核細胞での発現を可能にする発現調節配列に作動可能に連結される。ポリヌクレオチドの発現は、ポリヌクレオチドの翻訳可能なmRNAへの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞での発現を確実にする制御エレメントは、当業者に周知である。それらは、転写の開始を促進する制御配列ならびに任意選択で転写の終了および転写物の安定化を促進するポリAシグナルを含んでよい。追加的制御エレメントは、転写および翻訳エンハンサー、ならびに/または天然で関連するもしくは異種性のプロモーター領域を含んでよい。原核生物の宿主細胞での発現を可能にする可能性のある制御エレメントは例えばE.coliにおけるPL、Lac、TrpまたはTacプロモーターを含み、真核宿主細胞での発現を可能にする制御エレメントの例は、酵母におけるAOX1もしくはGAL1プロモーターまたは哺乳動物および他の動物細胞におけるCMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサーもしくはグロビンイントロンである。
【0130】
転写の開始に関与するエレメント以外のそのような制御エレメントはSV40ポリA部位またはtkポリA部位などのポリヌクレオチドの下流の転写終結シグナルも含み得る。さらに、用いられる発現系に応じて、ポリペプチドを細胞コンパートメントに向かわせるまたはそれを培地に分泌することができるリーダー配列を、ポリヌクレオチドのコード配列に加えてよく、以前に記載されている。リーダー配列(複数可)は、翻訳、開始および終止配列と適切なフェーズ(phase)でアセンブルされ、好ましくは、リーダー配列は翻訳されたタンパク質またはその部分の例えば細胞外培地への分泌を導くことができる。望ましい特徴、例えば発現される組換え産物の安定化または精製の簡略化を与えるCまたはN末端識別ペプチドを含む融合タンパク質をコードする異種性ポリヌクレオチド配列を、任意選択で使用してもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では軽鎖および/または重鎖の少なくとも可変ドメインをコードするポリヌクレオチドは、両方の免疫グロブリン鎖または1つだけの可変ドメインをコードしてよい。同様にポリヌクレオチドは、同じプロモーターの調節下にあってよく、または発現のために別々に調節されてよい。さらにいくつかの態様は、抗体または抗原結合性断片の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドを、任意選択で抗体の他の免疫グロブリン鎖の可変ドメインをコードするポリヌクレオチドとの組合せで含む、遺伝子工学において従来使用されるベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルスおよびバクテリオファージに関する。
【0132】
いくつかの実施形態では発現調節配列は、真核宿主細胞を形質転換またはトランスフェクトできるベクター中の真核プロモーター系として提供されるが、原核生物の宿主のための調節配列も使用されてよい。レトロウイルス、ワクチニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスまたはウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターは、ポリヌクレオチドまたはベクターを標的化された細胞集団(例えば抗体または抗原結合性断片を発現するように細胞を操作するため)に送達するために使用されてよい。種々の適切な方法は、組換えウイルス性ベクターを構築するために使用されてよい。いくつかの実施形態ではポリヌクレオチドおよびベクターは、標的細胞への送達のためにリポソームに再構成されてよい。ポリヌクレオチド(例えば配列および発現調節配列をコードする免疫グロブリン鎖の重鎖および/または軽鎖可変ドメイン(複数可))を含有するベクターは、細胞宿主の種類に応じて変化する好適な方法によって宿主細胞に移行されてよい。
【0133】
修飾
本開示の抗体または抗原結合性断片は、プロ/潜在型ミオスタチンの検出および単離のために、これらに限定されないが、酵素、補欠分子族、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、放射性材料、ポジトロン放出金属、非放射性常磁性金属イオン、および親和性標識を含む検出可能な標識で修飾されてよい。検出可能な物質は、本開示のポリペプチドに直接または、好適な技術を使用して中間体(例えばリンカーなど)を通じて間接のいずれかでカップリングまたはコンジュゲートされてよい。好適な酵素の非限定的例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを含み;好適な補欠分子族複合体の非限定的例はストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを含み;好適な蛍光材料の非限定的例はビオチン、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンを含み;発光材料の例はルミノールを含み;生物発光材料の非限定的例はルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを含み;好適な放射性材料の例は、例えばヨウ素(
131I、
125I、
123I、
121I)、炭素(
14C)、イオウ(
35S)、トリチウム(
3H)、インジウム(
115mIn、
113mIn、
112In、
111In)およびテクネチウム(
99Tc、
99mTc)、タリウム(
201Ti)、ガリウム(
68Ga、
67Ga)、パラジウム(
103Pd)、モリブデン(
99Mo)、キセノン(
133Xe)、フッ素(
18F)、
153Sm、Lu、
159Gd、
149Pm、
140La、
175Yb、
166Ho、
90Y、
47Sc、
86R、
188Re、
142Pr、
105Rh、
97Ru、
68Ge、
57Co、
65Zn、
85Sr、
32P、
153Gd、
169Yb、
51Cr、
54Mn、
75Seおよびスズ(
113Sn、
117Sn)などの放射性金属イオン、例えばアルファ放射体または他の放射性同位元素を含む。検出可能な物質は、本開示の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体に直接または、好適な技術を使用して中間体(例えばリンカーなど)を通じて間接のいずれかでカップリングまたはコンジュゲートされてよい。検出可能な物質にコンジュゲートされた抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、本明細書に記載の診断アッセイのために使用され得る。
【0134】
医薬組成物
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の1つまたは複数は、ミオパチーに関連する疾患または障害の緩和に使用するための医薬組成物を形成するために緩衝剤を含む薬学的に許容される担体(賦形剤)と混合されてよい。「許容される」は、担体が組成物の活性成分と適合性でなければならず(好ましくは活性成分を安定化できる)、処置される被験体に有害であってはならないことを意味する。緩衝剤を含む薬学的に許容される賦形剤(担体)の例は、当業者に明らかであり、以前に記載されている。例えばRemington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000年)Lippincott Williams and Wilkins編、K. E. Hooverを参照されたい。一例では本明細書に記載の医薬組成物は、標的抗原の異なるエピトープ/残基を認識する1個より多い抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体を含有する。
【0135】
本方法において使用される医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定化剤を凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で含んでよい。(Remington: The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed.(2000年)Lippincott Williams and Wilkins編、K. E. Hoover)。許容される担体、賦形剤または安定化剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに無毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、または他の有機酸などの緩衝剤;アルコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;保存剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリドなど;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルもしくはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリシンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類およびグルコース、マンノースもしくはデキストランを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZnタンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含んでよい。薬学的に許容される賦形剤はさらに本明細書に記載される。
【0136】
いくつかの例では本明細書に記載の医薬組成物は、Epsteinら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82巻:3688頁(1985年)、Hwangら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77巻:4030頁(1980年)ならびに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号に記載のものなどの任意の好適な方法によって調製され得る抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体を含有するリポソームを含む。循環時間が増強されたリポソームは米国特許第5,013,556号に開示されている。特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物での逆相蒸発法によって生成され得る。リポソームは、望ましい直径を有するリポソームを得るために規定のポアサイズのフィルターを通して押し出される。
【0137】
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、コロイド薬物送達系(例えばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中の、例えばコアセルベーション技術によってまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート(methacylate))マイクロカプセルにも捕捉され得る。例示的技術は、以前に記載されており、例えばRemington、The Science and Practice of Pharmacy 20th Ed. Mack Publishing(2000年)を参照されたい。
【0138】
他の例では本明細書に記載の医薬組成物は、徐放性形式で製剤化されてよい。徐放性調製物の好適な例は、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、マトリクスは成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリクスの例は、ポリエステル、ハイドロゲル(例えばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)または、ポリ(ビニルアルコール(v nylalcohol))、ポリラクチド乳酸(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸と7エチル−L−グルタメートとの共重合体、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸グリコール酸共重合体、スクロースアセテートイソブチレートおよびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸を含む。
【0139】
in vivo投与のために使用される医薬組成物は、無菌でなければならない。これは、例えば無菌濾過膜を通じた濾過によって容易に達成される。治療用抗体組成物は、一般に無菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針によって貫通できるストッパーを有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルに入れられる。
【0140】
本明細書に記載の医薬組成物は、経口、非経口もしくは直腸投与または吸入もしくは吹送法による投与のための錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、溶液もしくは懸濁物または座薬などの単位投与形態であってよい。
【0141】
錠剤などの固体組成物を調製するために主要活性成分は、医薬用担体、例えばコーンデンプン、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムもしくはガムなどの従来の錠剤化成分、および本開示の化合物の均一な混合物を含有する固体予備製剤組成物を形成するための他の医薬用希釈剤、例えば水、または無毒性の薬学的に許容されるそれらの塩と混合されてよい。これらの予備製剤組成物を均一と称する場合、活性成分が組成物全体に均質に分散されており、それにより組成物が錠剤、丸剤およびカプセルなどの同等に有効な単位投与形態に容易に分割され得ることを意味する。この固体予備製剤組成物は、次いで本開示の活性成分0.1mgから約500mgを含有する上に記載の種類の単位投与形態に分割される。新規組成物の錠剤または丸剤は、長期作用の利点をもたらす投与形態を提供するためにコーティングまたは他の方法で配合されてよい。例えば錠剤または丸剤は、内剤(inner dosage)および外剤(outer dosage)構成成分を含んでよく、後者は前者を覆うエンベロープの形態にある。2個の構成成分は、胃での崩壊に抵抗するために役立ち、内部の構成成分が十二指腸へインタクトなまま通過することまたは放出を遅らせることを可能にする腸溶性層(enteric layer)によって分離されてよい。種々の材料がそのような腸溶性層またはコーティングのために使用されてよく、そのような材料はいくつかのポリマー酸ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースなどの材料との混合物を含む。好適な表面活性剤は、具体的にはポリオキシエチレンソルビタン(例えばTween(商標)20、40、60、80または85)および他のソルビタン(例えばSpan(商標)20、40、60、80または85)などの非イオン性剤を含む。表面活性剤を含む組成物は、好都合には0.05から5%の表面活性剤を含み、0.1から2.5%であってよい。必要に応じて他の成分、例えばマンニトールまたは他の薬学的に許容されるビヒクルが添加されてよいことは理解される。
【0142】
好適なエマルジョンは、Intralipid(商標)、Liposyn(商標)、Infonutrol(商標)、Lipofundin(商標)およびLipiphysan(商標)などの商業的に入手できる脂肪エマルジョンを使用して調製されてよい。活性成分は、予め混合されたエマルジョン組成物に溶解されてよく、または代替的に油(例えばダイズ油、ベニバナ油、綿実油、ゴマ油、コーン油もしくはアーモンド油)およびリン脂質(例えば卵リン脂質、ダイズリン脂質もしくはダイズレシチン)と水とを混合して形成されたエマルジョンに溶解されてもよい。他の成分、例えばグリセロールまたはグルコースが、エマルジョンの張度を調整するために加えられてよいことは理解される。好適なエマルジョンは、典型的には20%まで、例えば5から20%の油を含有する。
【0143】
エマルジョン組成物は、抗プロミオスタチン抗体をIntralipid(商標)とまたはその構成成分(ダイズ油、卵リン脂質、グリセロールおよび水)と混合することによって調製されるものであってよい。
【0144】
吸入または吹送法のための医薬組成物は、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒またはそれらの混合物中の溶液および懸濁物ならびに粉末を含む。液体または固体組成物は、上に記載の好適な薬学的に許容される賦形剤を含有してよい。いくつかの実施形態では組成物は、局所または全身性効果のために経口または経鼻呼吸経路によって投与される。好ましくは無菌の薬学的に許容される溶媒中の組成物は、ガスの使用によって噴霧されてよい。噴霧される溶液は、噴霧デバイスから直接吸われてよい、または噴霧デバイスはフェイスマスク、テントもしくは間欠的陽圧呼吸器に取り付けられてよい。溶液、懸濁物または粉末組成物は、好ましくは経口または経鼻で適切な様式で製剤を送達するデバイスから投与されてよい。
【0145】
疾患/障害を処置するための抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の使用
本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、ミオパチーを伴う疾患または障害を処置するのに有効である。本明細書において使用される場合、用語「ミオパチー」は、筋肉線維が正しく機能せず、典型的には筋脱力を生じる筋肉疾患を指す。ミオパチーは、実際は神経筋性または筋骨格性である筋肉疾患を含む。いくつかの実施形態ではミオパチーは遺伝性ミオパチー(inherited myopathy)である。遺伝性ミオパチーは、非限定的に、ジストロフィー、筋緊張症、先天性ミオパチー(例えばネマリンミオパチー、マルチ/ミニコアミオパチーおよび中心核ミオパチー)、ミトコンドリアミオパチー、家族性周期性ミオパチー、炎症性ミオパチーならびに代謝性ミオパチー(例えばグリコーゲン貯蔵疾患および脂質貯蔵障害)を含む。いくつかの実施形態ではミオパチーは後天性ミオパチーである。後天性ミオパチーは、非限定的に、外来物質誘導性ミオパチー(例えば薬物誘導性ミオパチーおよびグルココルチコイドミオパチー、アルコール性ミオパチーおよび他の毒性作用物質によるミオパチー)、筋炎(例えば皮膚筋炎、多発性筋炎(polymositis)および封入体筋炎)、骨化性筋炎、横紋筋融解症ならびにミオグロビン尿症ならびに非活動性萎縮症を含む。いくつかの実施形態ではミオパチーは非活動性萎縮症であり、骨折(例えば股関節骨折)によってまたは神経損傷(例えば脊髄損傷(SCI))によって生じる場合がある。いくつかの実施形態ではミオパチーは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋萎縮症(SMA)、腎不全による悪液質症候群、AIDS、心臓の状態および/またはがんなどの疾患または障害に関連する。いくつかの実施形態ではミオパチーは加齢に関連する。
【0146】
本開示の態様は、ミオパチーを有する被験体を処置する方法であって、上に記載の抗体の有効量を被験体に投与することを含む方法を含む。いくつかの実施形態ではミオパチーは原発性ミオパチーである。別の実施形態では原発性ミオパチーは非活動性萎縮症を含む。他の実施形態では非活動性萎縮症は、股関節骨折、待機的人工関節置換術、救命医療ミオパチー、脊髄損傷または発作に関連する。いくつかの実施形態ではミオパチーは、筋肉喪失が疾患病態に続発する二次性ミオパチーである。他の実施形態では二次性ミオパチーは、脱神経、遺伝性筋脱力または悪液質を含む。別の実施形態では二次性ミオパチーは、筋萎縮性側索硬化症または脊髄性筋萎縮症に関連する脱神経である。いくつかの実施形態では二次性ミオパチーは、筋ジストロフィーに関連する遺伝性筋脱力である。他の実施形態では二次性ミオパチーは、腎不全、AIDS、心臓の状態、がんまたは加齢に関連する悪液質である。
【0147】
本開示の別の態様は、加齢に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。加齢に関連する例示的疾患および状態は、非限定的に筋肉減少症(加齢性筋肉喪失)、虚弱およびアンドロゲン欠乏症を含む。
【0148】
本開示の別の態様は、非活動性萎縮症/外傷に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。非活動性萎縮症/外傷に関連する例示的疾患および状態は、非限定的に、集中治療室(ICU)で過ごした時間に関連する筋脱力、股関節置換術、股関節骨折、発作、床上安静、SCI、回旋筋腱板損傷、膝置換術、骨折および熱傷を含む。
【0149】
本開示の別の態様は、神経変性疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。例示的神経変性疾患または状態は、非限定的に脊髄性筋萎縮症および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む。
【0150】
本開示の別の態様は、悪液質に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。悪液質に関連する例示的疾患および状態は、非限定的にがん、慢性心不全、後天性免疫不全症候群(AIDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および慢性腎臓疾患(CKD)を含む。
【0151】
本開示の別の態様は、まれな疾患に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。例示的なまれな疾患および状態は、非限定的に骨形成不全症、孤発性封入体筋炎および急性リンパ芽球性白血病を含む。
【0152】
本開示の別の態様は、代謝障害および/または身体組成に関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。いくつかの実施形態では疾患または状態は肥満(例えば重度の肥満)、プラダー・ウィリー症候群、II型糖尿病または食欲不振である。しかし代謝障害および/または身体組成に関連する追加的疾患または状態は、当業者に明らかであり、本開示の範囲内である。
【0153】
本開示の別の態様は、先天性ミオパチーに関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。例示的先天性ミオパチーは、非限定的にX連鎖筋細管ミオパチー、常染色体優性中心核ミオパチー、常染色体劣性中心核ミオパチー、ネマリンミオパチーおよび先天性筋線維型不均衡ミオパチーを含む。
【0154】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィーに関連する疾患または状態を有する被験体を処置する方法を含む。例示的筋ジストロフィーは、非限定的にデュシェンヌ型、ベッカー型、顔面肩甲上腕型(FSH)および肢帯型筋ジストロフィーを含む。
【0155】
本開示の別の態様は、泌尿婦人科関連疾患または状態、声門障害(狭窄)、外眼性ミオパチー、手根管、ギランバレーまたは骨肉腫を有する被験体を処置する方法を含む。
【0156】
本明細書に記載の方法を実施するために、上に記載の医薬組成物の有効量は、処置を必要とする被験体(例えばヒト)に静脈内投与、例えばボーラスとしてまたは一定期間にわたる持続注入によって、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液包内、髄腔内、経口、吸入または局所経路によって、などの好適な経路を介して投与され得る。ジェット噴霧器および超音波噴霧器を含む液体製剤のための商業的に入手できる噴霧器は、投与に有用である。液体製剤は、直接噴霧されてよく、凍結乾燥粉末は復元後に噴霧され得る。代替的に抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、フルオロカーボン製剤および定量吸入器を使用してエアロゾル化されてよく、または凍結乾燥され粉砕された粉末として吸入されてよい。
【0157】
本明細書に記載の方法によって処置される被験体は、哺乳動物、より好ましくはヒトであってよい。哺乳動物は、これらに限定されないが家畜、スポーツ動物、愛玩動物、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットを含む。処置を必要とするヒト被験体は、上に記すものなどのミオパチーを伴う疾患/障害を有する、そのリスクがあるまたはそれを有すると疑われるヒト患者であってよい。プロ/潜在型ミオスタチン関連疾患または障害を有する被験体は、日常的医学的検査、例えば臨床検査、臓器機能検査、CTスキャンまたは超音波によって同定され得る。そのような疾患/障害のいずれかを有すると疑われる被験体は、疾患/障害の1つまたは複数の症状を示す場合がある。疾患/障害のリスクがある被験体は、その疾患/障害についてのリスク因子の1つまたは複数を有する被験体であってよい。
【0158】
本明細書において使用される「有効量」は、単独または1つもしくは複数の他の活性剤との組合せのいずれかで、被験体に治療効果を付与するために必要な各活性剤の量を指す。当業者によって認識されるとおり、有効量は、処置される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ、性別および体重を含む個々の患者パラメータ、処置の期間、同時に行われている治療(ある場合)の性質、投与の特定の経路ならびに医療関係者の知識および専門的意見内の同様の要因などに応じて変化する。これらの要因は当業者に周知であり、日常的な実験程度で対処され得る。個々の構成成分またはその組合せの最大用量、すなわち正当な医学的判断による最高安全用量が使用されることは一般に好ましい。しかし患者が医学的根拠、心理的理由のためにまたは事実上任意の他の理由のためにより低い用量または許容できる用量を主張できることは、当業者によって理解される。
【0159】
半減期などの経験的検討事項は、一般に投薬量の決定に寄与する。例えばヒト化抗体または完全ヒト抗体などのヒト免疫系に適合性である抗体は、抗体の半減期を延長し、かつ宿主の免疫系によって抗体が攻撃されることを防ぐために使用されてよい。投与の頻度は、治療の経過にわたって決定および調整されてよく、一般に、必ずではないが、ミオパチーを伴う疾患/障害の処置および/または抑制および/または回復および/または遅延に基づく。代替的に抗プロ/潜在型ミオスタチンの徐放性持続的放出(sustained continuous release)製剤も適切である場合がある。徐放を達成するための種々の製剤およびデバイスは、当業者に明らかであり、本開示の範囲内である。
【0160】
一例では本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体についての投薬量は、抗体の1回または複数回の投与を与えられた個体において経験的に決定され得る。個体は、漸増する投薬量のアンタゴニストを与えられる。アンタゴニストの効能を評価するために、疾患/障害の指標が追跡されてよい。
【0161】
一般に本明細書に記載の抗体のいずれかの投与について、初期候補投薬量は約2mg/kgであってよい。本開示の目的のために典型的な一日投薬量は、上に述べる要因に応じて約0.1μg/kgから、3μg/kgまで、30μg/kgまで、300μg/kgまで、3mg/kgまで、30mg/kgまで、100mg/kgまたはそれ超のいずれかの範囲であってよい。数日間またはそれより長くにわたる反復投与では、状態に応じて処置は症状の望ましい抑制が生じるまでまたは、プロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾患もしくは障害またはその症状を緩和する十分な治療レベルが達成されるまで持続される。例示的投与レジメンは、約2mg/kgの初期用量に続く、抗体の約1mg/kgの毎週の維持用量または続く隔週の約1mg/kgの維持用量を投与することを含む。しかし他の投与レジメンが、医師が達成を望む薬物動態学的減衰のパターンに応じて有用である場合がある。例えば1週間に1回から4回の投与が企図される。いくつかの実施形態では約3μg/mgから約2mg/kg(約3μg/mg、約10μg/mg、約30μg/mg、約100μg/mg、約300μg/mg、約1mg/kgおよび約2mg/kgなど)の範囲の投与は使用されてよい。いくつかの実施形態では投与頻度は、1週間ごと、2週間ごと、4週間ごと、5週間ごと、6週間ごと、7週間ごと、8週間ごと、9週間ごともしくは10週間ごとに1回;または1ヵ月ごと、2ヵ月ごともしくは3ヵ月ごともしくはそれ超に1回である。この治療の進行は、従来の技術およびアッセイによって容易にモニタリングされる。投与レジメン(使用される抗体を含む)は、時間をわたって変化する場合がある。
【0162】
いくつかの実施形態では正常体重の成人患者について、約0.3から5.00mg/kgの範囲の用量が投与され得る。特定の投与レジメン、例えば用量、タイミングおよび反復は、特定の個体およびその個体の医療歴および個々の薬剤の特性(薬剤の半減期および他の関連する検討事項など)に依存する。
【0163】
本開示の目的のために抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の適切な投薬量は、用いられる特異的抗体(またはその組成物)、疾患/障害の種類および重症度、抗体が予防または治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の病歴およびアンタゴニストへの応答ならびに主治医の判断に依存する。いくつかの実施形態では、望ましい結果を達成する投薬量に到達するまで、臨床医は、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体を投与する。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の投与は、投与の目的が治療的または予防的であるかに関わらず、例えばレシピエントの生理学的状態、および熟練した医師に公知である他の要因に応じて連続的または間欠的であってよい。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の投与は、予め選択した期間にわたって本質的に連続的であっても、または間隔をあけた一連の用量、例えばプロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾患または障害が発症する前、その間またはその後のいずれかであってもよい。
【0164】
本明細書において使用される場合、用語「処置する」は、ミオパチーを伴う疾患/障害、疾患/障害の症状または疾患/障害に対する素因を有する被験体への、障害、疾患の症状または疾患/障害に対する素因を治癒する(cure)、治す(heal)、緩和する、軽減する、変える、改善する(remedy)、回復させる、改善するまたは影響を与えるための1つまたは複数の活性剤を含む組成物の適用または投与を指す。
【0165】
プロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾患/障害を緩和することは、疾患の発症(development)もしくは進行を遅らせること、または疾患の重症度を低減することを含む。疾患を緩和することは、必ずしも治癒的結果を要求しない。本明細書で使用する場合、プロ/潜在型ミオスタチンに関連する疾患/障害の発症を「遅らせること」は、疾患の進行を遅らせる(defer)、妨げる(hinder)、遅くする(slow)、遅らせる(retard)、安定化するおよび/または先に延ばす(postpone)ことを意味する。この遅らせることは、病歴および/または処置される個体に応じて様々な時間の長さであってよい。疾患の発症を「遅らせる」もしくは緩和する、または疾患の発病(onset)を遅らせる方法は、方法を使用しない場合と比較して所与の時間枠において疾患の1つもしくは複数の症状の発症の可能性を低減するおよび/または所与の時間枠において症状の程度を低減する方法である。そのような比較は、統計的に有意な結果をもたらすのに十分な数人の被験体を使用する臨床研究に典型的には基づく。
【0166】
疾患の「発症」または「進行」は、疾患の初期症状発現および/または後に続く疾患の進行を意味する。疾患の発症は、検出可能であり得、標準的臨床技術を使用して評価され得る。しかし発症は、検出不能である場合がある進行も指す。本開示の目的に関して発症または進行は、症状の生物学的経過を指す。「発症」は出現(occurrence)、再発および発病を含む。本明細書において使用される場合、ミオパチーを伴う疾患/障害の「発病」または「出現」は、初回発病および/または再発を含む。
【0167】
いくつかの実施形態では本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、処置を必要とする被験体にタンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの活性ミオスタチンへの活性化をin vivoで少なくとも20%(例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれを超えて)阻害するのに十分な量で投与される。他の実施形態では抗体は、プロ/潜在型ミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンレベルを少なくとも20%(例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれを超えて)低減するのに有効な量で投与される。
【0168】
医学の当業者に公知である従来の方法は、処置される疾患の種類または疾患の部位に応じて被験体に医薬組成物を投与するために使用されてよい。本組成物は、他の従来の経路を介して投与されてもよく、例えば経口、非経口、吸入スプレーによって、局所的、直腸、鼻、頬側、膣または埋め込みリザーバーを介して投与され得る。本明細書において使用される用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。さらに1、3または6ヵ月デポー注射可能なまたは生分解性材料および方法を使用するなどの投与の注射可能なデポー経路を介して被験体に投与されてもよい。
【0169】
注射可能な組成物は、植物油、ジメチルアセトアミド(dimethylactamide)、ジメチルホルムアミド(dimethyformamide)、乳酸エチル、炭酸エチル、イソプロピルミリステート、エタノールおよびポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)などの種々の担体を含有してよい。静脈内注射用に水溶性抗体は、抗体および生理学的に許容される賦形剤を含有する医薬用製剤が注入される点滴方法によって投与されてよい。生理学的に許容される賦形剤は、例えば5%デキストロース、0.9%生理食塩水、リンゲル液または他の好適な賦形剤を含んでよい。筋肉内調製物、例えば抗体の好適な可溶性塩形態の無菌製剤は、注射用水、0.9%生理食塩水または5%グルコース溶液などの医薬用賦形剤に溶解され、投与されてよい。
【0170】
一実施形態では抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、部位特異的または標的化局所送達技術を介して投与される。部位特異的または標的化局所送達技術の例は、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の種々の埋め込み可能なデポー供給源または、注入カテーテル、留置カテーテルもしくは針カテーテルなどの局所送達カテーテル、合成移植片、外膜ラップ、シャントおよびステントまたは他の埋め込み可能なデバイス、部位特異的担体、直接注射または直接適用を含む。例えばPCT公開第WO00/53211号および米国特許第5,981,568号を参照されたい。
【0171】
ポリヌクレオチドまたは発現ベクターを含有する治療用組成物の標的化送達も使用され得る。受容体媒介DNA送達技術は、例えばFindeisら、Trends Biotechnol.(1993年) 11巻:202頁、Chiouら、Gene Therapeutics: Methods And Applications Of Direct Gene Transfer(J. A. Wolff編)(1994年)、Wuら、J. Biol. Chem. (1988年)263巻:621頁、Wuら、J. Biol. Chem.(1994年)269巻:542頁、Zenkeら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(1990年)87巻:3655頁、Wuら、J. Biol. Chem.(1991年)266巻:338頁に記載されている。
【0172】
ポリヌクレオチド(例えば本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体をコードするもの)を含有する治療用組成物は、遺伝子治療プロトコールでの局所投与のためにDNA約100ngから約200mgの範囲で投与される。いくつかの実施形態では、DNAの約500ngから約50mg、約1μgから約2mg、約5μgから約500μgおよび約20μgから約100μgまたはそれを超える濃度範囲も遺伝子治療プロトコール中に使用されてよい。
【0173】
本明細書に記載の治療用ポリヌクレオチドおよびポリペプチドは、遺伝子送達ビヒクルを使用して送達され得る。遺伝子送達ビヒクルは、ウイルスまたは非ウイルス起源のものであってよい(一般にJolly、Cancer Gene Therapy(1994年)1巻:51頁、Kimura、Human Gene Therapy(1994年)5巻:845頁、Connelly、Human Gene Therapy(1995年)1巻:185頁およびKaplitt、Nature Genetics(1994年)6巻:148頁を参照されたい)。そのようなコード配列の発現は、内在性哺乳動物または異種性プロモーターおよび/またはエンハンサーを使用して誘導され得る。コード配列の発現は、構成的または制御的のいずれであってもよい。
【0174】
望ましい細胞における望ましいポリヌクレオチド(例えば本明細書に開示の抗体をコードする)の送達および発現に好適なウイルスに基づくベクターは、本開示の範囲内である。例示的なウイルスに基づくビヒクルは、これらに限定されないが、組換えレトロウイルス(例えばPCT公開第WO90/07936号、第WO94/03622号、第WO93/25698号、第WO93/25234号、第WO93/11230号、第WO93/10218号、第WO91/02805号、米国特許5,219,740号、および第4,777,127号;英国特許第2,200,651号ならびに欧州特許第0345242号を参照されたい)、アルファウイルスに基づくベクター(例えばシンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR−67;ATCC VR−1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR−373;ATCC VR−1246)およびベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR−923;ATCC VR−1250;ATCC VR 1249;ATCC VR−532))およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えばPCT公開第WO94/12649号、第WO93/03769号、第WO93/19191号、第WO94/28938号、第WO95/11984号および第WO95/00655号を参照されたい)を含む。Curiel、Hum. Gene Ther.(1992年)3巻:147頁に記載の不活化アデノウイルスに連結されたDNAの投与も用いられ得る。
【0175】
これらに限定されないが、不活化アデノウイルス単独に連結されたまたは連結されていないポリカチオン縮合(polycationic condensed)DNA(例えばCuriel、Hum. Gene Ther.(1992年)3巻:147頁を参照されたい);リガンド連結DNA(例えばWu, J. Biol. Chem.(1989年)264巻:16985頁を参照されたい);真核細胞送達ビヒクル細胞(例えば米国特許第5,814,482号、PCT公開第WO95/07994号、第WO96/17072号、第WO95/30763号および第WO97/42338号を参照されたい)ならびに核電荷中和または細胞膜との融合を含む非ウイルス性送達ビヒクルおよび方法も用いられてよい。ネイキッドDNAも用いられてよい。例示的ネイキッドDNA導入方法は、PCT公開第WO90/11092号および米国特許第5,580,859号に記載されている。遺伝子送達ビヒクルとして作用できるリポソームは、米国特許第5,422,120号、PCT公開第WO95/13796号、第WO94/23697号、第WO91/14445号および欧州特許第0524968号に記載されている。追加的アプローチはPhilip、Mol. Cell. Biol.(1994年)14巻:2411頁、およびWoffendin、Proc. Natl. Acad. Sci.(1994年)91巻:1581頁に記載されている。
【0176】
本明細書に記載の方法において使用される特定の投与レジメン、例えば用量、タイミングおよび反復は、特定の被験体およびその被験体の医療歴に依存する。
【0177】
いくつかの実施形態では、1つより多い抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体または、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体と別の好適な治療剤との組合せは、処置を必要とする被験体に投与され得る。アンタゴニストは、同じ型または互いに異なっていてよい。抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、薬剤の有効性を増強するおよび/または補完するのに役立つ他の薬剤と併せて使用されてもよい。
【0178】
ミオパチーを伴う疾患/障害に対する処置の効能は、任意の好適な方法を使用して評価され得る。例えばミオパチーを伴う疾患/障害に対する処置の効能は、筋脱力を評価すること(例えば脱力のパターンおよび重症度を評価すること)、筋電図検査、血液化学を評価すること(例えば電解質を評価する、内分泌的原因を評価すること、クレアチニンキナーゼレベルを測定すること、赤血球沈降速度を決定することおよび抗核抗体アッセイを実施すること)、ならびに生検を評価すること(例えば組織学的、組織化学的、電子顕微鏡、生化学および遺伝子解析によって)によって評価され得る。
【0179】
ミオパチーを伴う疾患/障害を緩和することにおける使用のためのキット
本開示は、ミオパチーを伴う疾患/障害を緩和することにおける使用のためのキットも提供する。そのようなキットは、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体、例えば本明細書に記載のもののいずれかを含む1つまたは複数の容器を含んでよい。
【0180】
いくつかの実施形態ではキットは、本明細書に記載の方法のいずれかによる使用のための指示を含んでよい。含まれる指示は、本明細書に記載の標的疾患を処置する、発病を遅らせるまたは緩和するための抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の投与の記載を含み得る。キットは、個体が標的疾患を有するかどうかを同定することに基づいて処置に好適な個体を選択する記載をさらに含み得る。さらに他の実施形態では、指示は、標的疾患のリスクがある個体に抗体を投与する記載を含む。
【0181】
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の使用に関する指示は、一般に目的の処置のための投薬量、投与スケジュールおよび投与の経路についての情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば複数用量パッケージ)または部分単位用量であってよい。本開示のキット中に供給される指示は、典型的にはラベルまたはパッケージ挿入物(例えばキットに含まれる紙のシート)上の指示書であるが、機械で読み取り可能な指示(例えば磁気または光学保存ディスク上に書き込まれた指示)も許容される。
【0182】
ラベルまたはパッケージ挿入物は組成物がミオパチーを伴う疾患または障害を処置する、発病を遅らせるおよび/または緩和するために使用されることを示す。指示は、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するために提供されてよい。
【0183】
本開示のキットは、好適なパッケージ中にある。好適なパッケージは、これらに限定されないが、バイアル、ビン、ジャー、可撓性パッケージ(例えばシールされたマイラーまたはプラスチックバッグ)などを含む。吸入器、鼻投与デバイス(例えばアトマイザー)またはミニポンプなどの注入デバイスなどの特定のデバイスとの組合せでの使用のためのパッケージも検討される。キットは、無菌アクセスポートを有してよい(例えば容器は皮下注射針によって貫通できるストッパーを有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。容器も無菌アクセスポートを有してよい(例えば容器は皮下注射針によって貫通できるストッパーを有する静脈内用溶液バッグまたはバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載の抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体である。
【0184】
任意選択でキットは、緩衝剤および解釈の情報などの追加的構成成分を提供できる。通常キットは、容器および、容器上にまたは容器に付随してラベルまたはパッケージ挿入物(複数可)を含む。いくつかの実施形態では本開示は、上に記載のキットの内容物を含む製造品を提供する。
【0185】
プロ/潜在型ミオスタチンを検出するためのアッセイ
いくつかの実施形態では本明細書で提供される方法および組成物は、被験体から得られた試料中のプロ/潜在型ミオスタチンを検出するための方法に関する。本明細書において使用される場合、「被験体」は、個々の生物、例えば個々の哺乳動物を指す。いくつかの実施形態では被験体はヒトである。いくつかの実施形態では被験体は非ヒト哺乳動物である。いくつかの実施形態では被験体は非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では被験体はげっ歯類である。いくつかの実施形態では被験体はヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコまたはイヌである。いくつかの実施形態では被験体は、脊椎動物、両生類、は虫類、魚類、昆虫、ハエまたは線虫である。いくつかの実施形態では被験体は実験動物である。いくつかの実施形態では被験体は、遺伝子操作されており、例えば遺伝子操作された非ヒト被験体である。被験体は、いずれの性で任意の発達段階であってよい。いくつかの実施形態では被験体は、患者または健常なボランティアである。
【0186】
いくつかの実施形態では、被験体から得られた試料中のプロ/潜在型ミオスタチンを検出するための方法は(a)抗原が試料中に存在する場合、抗体の抗原への結合に好適な条件下で試料を抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体と接触させ、それにより結合複合体を形成すること、および(b)抗原に結合した抗体または抗原結合性断片のレベルを決定すること(例えば結合複合体のレベルを決定すること)を含む。
【0187】
本明細書において使用される場合、結合複合体は、抗原(例えばプロ/潜在型ミオスタチンタンパク質)に結合した抗体(抗原結合性断片を含む)の生体分子複合体を指す。結合複合体は、単一の特異性を有する抗体または異なる特異性を有する2つもしくはそれ超の抗体もしくは抗原結合性断片を含んでよい。一実施形態では結合複合体は、同じ抗原上の異なる抗原性部位を認識する2つまたはそれ超の抗体を含む。いくつかの場合では抗体は、RNA、DNA、多糖またはタンパク質などの他の生体分子に結合している抗原に結合できる。一実施形態では結合複合体は異なる抗原を認識する2つまたはそれ超の抗体を含む。いくつかの実施形態では結合複合体中の抗体(例えば抗原に結合した固定化抗体)は、それ自体が抗原として抗体(例えば検出可能に標識された抗体)に結合できる。したがって、結合複合体は、いくつかの場合では、複数の抗原および複数の抗体または抗原結合性断片を含む場合がある。
【0188】
結合複合体中に存在する抗原は、in situでのそれらの天然のコンフォメーションであってもなくてもよい。いくつかの実施形態では結合複合体は、抗体と精製されたタンパク質抗原または抗原を含む単離されたタンパク質との間で形成され、その中で抗原はin situでのその天然のコンフォメーションではない。いくつかの実施形態では、結合複合体は、抗体と精製されたタンパク質抗原との間で形成され、その中で抗原はin situでのその天然のコンフォメーションではなく、固体支持体(例えばPVDF膜)に固定されている。いくつかの実施形態では結合複合体は、抗体と、例えばin situに天然のコンフォメーション(例えば細胞表面上)に存在する細胞表面タンパク質とで形成される。
【0189】
結合複合体中の抗体は、検出可能に標識されてもされなくてもよい。いくつかの実施形態では結合複合体は、検出可能に標識された抗体および標識されていない抗体を含む。いくつかの実施形態では結合複合体は、検出可能に標識された抗原を含む。いくつかの実施形態では結合複合体中の抗体は、1つまたは複数の固体支持体に固定されている。いくつかの実施形態では結合複合体中の抗原は、1つまたは複数の固体支持体に固定されている。例示的な固体支持体は、本明細書に開示されており、当業者に明らかである。結合複合体の前述の例は限定を意図しない。結合複合体の他の例は当業者に明らかである。
【0190】
検出、診断およびモニタリング方法のいずれにおいても抗体(抗原結合性断片を含む)または抗原は、固体支持体表面に直接または間接のいずれかでコンジュゲートされてよい。固体支持体へのコンジュゲーションのための方法は、標準的であり、共有結合的および非共有結合的相互作用を介して達成されてよい。コンジュゲーション方法の非限定的例は、吸着、架橋結合、プロテインA/G抗体相互作用およびストレプトアビジン−ビオチン相互作用を含む。コンジュゲーションの他の方法は、当業者に容易に明らかである。
【0191】
いくつかの態様では、検出、診断およびモニタリング方法は、抗原(例えばプロ/潜在型ミオスタチン)に結合した抗体(抗原結合性断片を含む)のレベルを1つまたは複数の参照基準と比較することを含む。参照基準は、例えばプロ/潜在型ミオスタチンを有するまたは有さない被験体における対応するプロ/潜在型ミオスタチンのレベルであってよい。一実施形態では参照基準は、プロ/潜在型ミオスタチン(例えばバックグラウンドレベル)を含有しない試料において検出されるプロ/潜在型ミオスタチンのレベルである。代替的にバックグラウンドレベルは、特定のプロ/潜在型ミオスタチンを含有する試料から試料を非特異的抗体(例えば非免疫血清から得られた抗体)と接触させることによって決定され得る。再度参照基準は、プロ/潜在型ミオスタチンを含有する試料(例えば陽性対照)において検出されたプロ/潜在型ミオスタチンのレベルであってよい。いくつかの場合、参照基準は試料中のプロ/潜在型ミオスタチンの濃度の変動と関連する一連のレベルであってよく、試験試料中のプロ/潜在型ミオスタチンの濃度を定量するのに有用であり得る。参照基準の前述の例は、限定ではなく、他の好適な参照基準は、当業者に容易に明らかである。いくつかの実施形態ではプロ/潜在型ミオスタチンに結合する抗体のレベルは、成熟ミオスタチンのレベルと比較される。いくつかの場合ではプロ/潜在型ミオスタチンのレベルは、試料中の不活性ミオスタチン対活性ミオスタチンの比率を決定するために成熟ミオスタチンと比較される。
【0192】
プロ/潜在型ミオスタチンのレベルは、生物学的試料から本明細書で提供されるとおり測定され得る。生物学的試料は、被験体または細胞から得られてよい任意の生物学的材料を指す。例えば生物学的試料は、全血、血漿、血清、唾液、脳脊髄液、尿、細胞(もしくは細胞溶解物)または組織(例えば正常組織もしくは腫瘍組織)であってよい。いくつかの実施形態では生物学的試料は、流体試料である。いくつかの実施形態では生物学的試料は、固形組織試料である。例えば組織試料は、非限定的に骨格筋、心臓の筋肉、脂肪組織および他の器官由来の組織を含んでよい。いくつかの実施形態では生物学的試料は、生検試料である。いくつかの実施形態では固形組織試料は、当技術分野における日常的方法を使用して流体試料にされてよい。
【0193】
生物学的試料は、細胞株の1つまたは複数の細胞も含んでよい。いくつかの実施形態では細胞株は、ヒト細胞、霊長類細胞(例えばベロ細胞)、ラット細胞(例えばGH3細胞、OC23細胞)またはマウス細胞(例えばMC3T3細胞)を含む。非限定的にヒト胚性腎臓(HEK)細胞、HeLa細胞、National Cancer Instituteの60種のがん細胞株(NCI60)由来のがん細胞、DU145(前立腺がん)細胞、Lncap(前立腺がん)細胞、MCF−7(乳がん)細胞、MDA−MB−438(乳がん)細胞、PC3(前立腺がん)細胞、T47D(乳がん)細胞、THP−1(急性骨髄性白血病)細胞、U87(神経膠芽腫)細胞、SHSY5Yヒト神経芽細胞腫細胞(骨髄腫からのクローニング)およびSaos−2(骨がん)細胞を含む種々のヒト細胞株がある。
【0194】
さらなる実施形態は、疾患または状態を有するまたは有するリスクがある被験体において疾患、状態または任意のその処置(例えばミオパチーまたはミオパチー処置)をモニタリングするための方法であって、(a)生物学的試料を被験体から得ること、(b)プロ/潜在型ミオスタチンを検出する抗体を使用して生物学的試料中のプロ/潜在型ミオスタチンのレベルを決定すること、ならびに(c)1回または複数回の機会にステップ(a)および(b)を反復することを含む方法に関する。ミオスタチンは、筋萎縮症についてのバイオマーカーとして使用されているが、現在利用可能な商業的方法および試薬(例えばELISAおよびウエスタンブロットにおいて使用される抗体)は、ミオスタチンに対して特異的ではないか、成熟ミオスタチンだけを検出するか、またはミオスタチンを全く検出しないかのいずれかである。したがって、疾患および/または状態(例えば筋萎縮症)の文脈において診断目的でプロ/潜在型ミオスタチンを検出するための方法および試薬(例えば抗体)が本明細書で提供される。一例としてプロ/潜在型ミオスタチンのレベルは、被験体またはそれ由来の生物学的試料において疾患または状態の進行を検出またはモニタリングするために測定されてよい。別の例としてプロ/潜在型ミオスタチンのレベルは、被験体またはそれ由来の生物学的試料において疾患または状態に対する処置への応答をモニタリングするために測定されてよい。プロ/潜在型ミオスタチンのレベルが、被験体が有する疾患もしくは状態または被験体が供され得る任意の処置レジメンに応じて異なる場合がある任意の好適な期間にわたってモニタリングされてよいことは理解されるべきである。
【0195】
別の実施形態は、上に記載の抗体、抗原結合性断片、ポリヌクレオチド、ベクターまたは細胞のいずれか1つおよび任意選択で検出のための好適な手段を含む診断用組成物に関する。抗体は、例えば、それらを液相でまたは固相担体に結合させて利用し得るイムノアッセイにおける使用に適する。抗体を利用する場合があるイムノアッセイの例は、直接または間接形式での競合的および非競合的イムノアッセイである。そのようなイムノアッセイの例は、酵素結合イムノアッセイ(ELISA)、放射イムノアッセイ(RIA)、サンドイッチ(免疫アッセイ(immunometric assay))、フローサイトメトリー、ウエスタンブロットアッセイ、免疫沈降アッセイ、免疫組織化学、免疫顕微鏡検査(immuno−microscopy)、側方流動免疫クロマトグラフィーアッセイ(lateral flow immuno−chromatographic assay)およびプロテオミクスアレイである。抗原および抗体は、多数の異なる固体支持体(例えば担体、膜、カラム、プロテオミクスアレイなど)に結合させてよい。固体支持体材料の例は、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、ニトロセルロースなどの天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、アガロースおよびマグネタイトを含む。支持体の性質は、固定されているかまたは溶液中に懸濁されているか(例えばビーズ)のいずれであってもよい。
【0196】
さらなる実施形態によって、本明細書で提供される抗体(抗原結合性断片を含む)は、組織試料、血液試料または任意の他の適切な体液試料であってよい被験体由来の生物学的試料を得ることによって、被験体におけるプロ/潜在型ミオスタチン発現を評価するための方法においても使用され得る。手順は、血液試料(全血、血清、血漿)、組織試料またはそれから単離されたタンパク質試料を、抗体と抗原との間の結合複合体の形成を可能にする条件下で抗体と接触させることを含み得る。次いでそのような結合複合体のレベルは、任意の好適な方法によって決定され得る。いくつかの実施形態では生物学的試料は、抗原が試料中に存在する場合に抗体のプロ/潜在型ミオスタチンタンパク質への結合、および抗原に結合した抗体からなる結合複合体の形成に好適な条件下で抗体と接触させる。この接触させるステップは、チューブ、プレートウェル、メンブレンバス、細胞培養皿、顕微鏡スライドなどの反応チャンバーにおいて典型的には実施される。いくつかの実施形態では抗体は固体支持体に固定される。いくつかの実施形態では抗原は固体支持体に固定される。いくつかの実施形態では固体支持体は、反応チャンバーの表面である。いくつかの実施形態では固体支持体は、ポリマー性膜(例えばニトロセルロースストリップ、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜など)である。他の適切な固体支持体は使用されてよい。
【0197】
いくつかの実施形態では抗体は、抗原と接触させる前に固体支持体に固定される。他の実施形態では抗体の固定は、結合複合体の形成後に実施される。さらに他の実施形態では抗原は、結合複合体の形成の前に固体支持体に固定される。検出試薬は、固定化された結合複合体を検出するために反応チャンバーに加えられる。いくつかの実施形態では検出試薬は、抗原に対して指向される、検出可能に標識された二次抗体を含む。いくつかの実施形態では一次抗体は、それ自体が検出可能に標識され、そのため検出試薬である。
【0198】
一態様では検出方法は、固体支持体に抗体を固定するステップ;試料(例えば生物学的試料または単離されたタンパク質試料)を、抗原が試料中に存在する場合に抗原の抗体への結合を可能にする条件下で固体支持体に適用するステップ;固体支持体から過剰な試料を除去するステップ;検出可能に標識された抗体を、検出可能に標識された抗体の抗原結合固定化抗体への結合を可能にする条件下で適用するステップ;固体支持体を洗浄するステップおよび固体支持体上の標識の存在をアッセイするステップを含む。
【0199】
いくつかの実施形態では抗原は、反応チャンバー(例えばメンブレンバス)中の抗体と接触させる前に、PVDF膜などの固体支持体に固定される。検出試薬は、固定化された結合複合体を検出するために反応チャンバーに加えられる。いくつかの実施形態では検出試薬は、抗原に対して指向される、検出可能に標識された二次抗体を含む。いくつかの実施形態では検出試薬は、一次抗体に対して指向される、検出可能に標識された二次抗体を含む。本明細書で開示のとおり検出可能な標識は、例えば放射性同位元素、フルオロフォア、発光分子、酵素、ビオチン成分、エピトープタグまたは色素分子であってよい。いくつかの実施形態では一次抗体は、それ自体が検出可能に標識され、そのため検出試薬である。好適な検出可能な標識は、本明細書に記載され、当業者に容易に明らかである。
【0200】
したがって、(a)抗原結合試薬(例えばプロ/潜在型ミオスタチン結合試薬)として、検出可能に標識された抗体および/または非標識抗体、(b)検出試薬、ならびに任意選択で(c)試料中の抗原を検出するための試薬を使用するための完全な指示を含む家庭内または臨床使用に好適な診断用キット(ポイントオブケアサービス)が提供される。いくつかの実施形態では診断キットは、固体支持体に固定された抗体および/またはプロ/潜在型ミオスタチンを含む。本明細書に記載の固体支持体のいずれかは、診断キットへの組み込みに好適である。好ましい実施形態では固体支持体は、プレートウェルの反応チャンバーの表面である。典型的にはプレートウェルは、6個、12個、24個、96個、384個および1536個から選択されるいくつかのウェルを有するマルチウェルプレート中にあるが、そのように限定されない。他の実施形態では診断キットは、検出可能に標識された抗体を提供する。診断キットは、これらの実施形態に限定されず、キット組成物における他のバリエーションは当業者に容易に明らかである。
【0201】
したがって、次の具体的な実施形態は、単なる例示として解釈され、決して本開示の残部の限定ではないと解釈される。本明細書で引用する全ての刊行物は、本明細書で参照する目的または主題について参照により組み込まれる。
【実施例】
【0202】
(実施例1:抗体の生成および選択)
抗体の概要
Ab2は、ヒトのプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに高い親和性(ForteBio BLIによりKd=3420pM)で結合するIgG4/ラムダアイソタイプの完全ヒト抗プロ/潜在型ミオスタチンモノクローナル抗体である。抗体は、0.5マイクロモル濃度の範囲のIC50値(アッセイの限界またはほぼ限界である)で、タンパク質分解を介したプロ/潜在型ミオスタチンの活性化を阻害することができる。ポリペプチドの理論的分子量は、144,736Daであり、その理論的pIは6.7である。抗体ディスプレイを使用する親和性の最適化を行って、より高い親和性の改変体Ab4およびAb6を同定した。親和性最適化改変体を、ヒトIgG4/ラムダアイソタイプフレームワークにおいて同様に構築する。
【表2】
【0203】
親抗体のプラットフォームおよび同定
親Ab1抗体は、選択のための一次抗原としてプロおよび潜在型ミオスタチンを使用したナイーブファージディスプレイライブラリーの選択を介して同定した。ファージ選択および初回スクリーニングは、McCaffertyら(McCaffertyら、1990年)によって記載される形式と類似の形式で従来のscFvをディスプレイするライブラリーを使用して実施した。各選択ラウンドは、事前除去(pre−clearing)(非特異的ファージ抗体を除去するため)、抗原とのインキュベーション、洗浄、溶出、および増幅からなった。選択は、固相(イムノチューブにコーティングされたビオチン化抗原)および溶液相(ストレプトアビジンコーティングビーズを使用して捕捉されたビオチン化抗原)パニング(panning)戦略の両方を使用して複数ラウンドを介して行われた。
【0204】
全体で10,000個の個々のscFvクローンを、2つの別個の作戦を通してプロまたは潜在型ミオスタチンに対する結合に関してスクリーニングした。第1のプログラムは、抗原としてプロ/潜在型ミオスタチンを利用したが、第2の作戦は、抗原として潜在型ミオスタチンを使用した。目的のscFvクローンのDNAをシークエンシングして、独自のクローン216個を同定した。結合陽性のscFvクローンを、プロGDF11ならびに無関係なタンパク質のパネルに対する結合に関してカウンタースクリーニングして、プロ/潜在型ミオスタチンに関する特異性を確認した。独自のscFvクローンのパネルから101個(GDF8特異的クローン134個中)を、さらに特徴付けるために完全長のIgG(IgG1アイソタイプ)に変換した。
【0205】
完全長のIgG抗体を、ヒトおよびネズミのプロおよび潜在型形態のミオスタチンならびにGDF11に対する結合に関してELISAによってさらに特徴付けた。ミオスタチンプロドメイン、プロTGFβ(ヒトおよびネズミ)、ミオスタチンの成熟増殖因子、GDF11成熟増殖因子、アクチビンA増殖因子、およびプロアクチビンAに対する結合に関しても、抗体をスクリーニングした。リード抗体を、ヒトおよびネズミのプロおよび潜在型ミオスタチンと交差反応するが、GDF11ともアクチビンともTGFβタンパク質とも相互作用しないことに基づいて選択した。
【0206】
2つの形態のエピトープビニング(epitope binning)を使用した。第1に、ミオスタチンのプロドメインの一部とGDF11の一部とを交換したキメラ構築物を設計して生成した。これらのキメラタンパク質を、ELISAによって、スクリーニング抗体との相互作用に関してアッセイした。ビオチン化プロ/潜在型ミオスタチン抗体がストレプトアビジンコーティングバイオセンサーチップに固定されたForteBio BLI機器を使用してエピトープビニングを行い、センサー応答によって抗体の交差遮断を評価した。ELISA結合実験のデータと共に、これらのエピトープビニング実験により、本発明者らの機能的に活性なリード抗体(以下を参照されたい)を、3つの異なるエピトープ群(表3を参照されたい)に分離することができた。
【表3】
【0207】
抗体がプロ/潜在型ミオスタチンに結合してその活性化を阻害する能力を評価するために、いくつかの生化学および細胞アッセイが確立された。プロおよび潜在型ミオスタチンに対する結合動態を、ビオチン化基質タンパク質がストレプトアビジンコーティングセンサーチップに固定されたForteBio Octetによって測定した。スクリーニングからの候補の平衡解離定数を表3に示す。
【0208】
IgGがミオスタチンのシグナル伝達を阻害する能力を測定するために、ミオスタチン活性化アッセイを開発した。mTll2(トロイドプロテアーゼはミオスタチンの活性化を必要とする)またはフューリン(プロドメインから成熟増殖因子を切断するプロタンパク質転換酵素)のいずれかを過剰発現する細胞から馴化培地を生成した。試験抗体とのプレインキュベーション後、プロ/潜在型ミオスタチンまたは潜在型ミオスタチンを、mTll2およびフューリン馴化培地(プロミオスタチン)の混合物またはmTll2馴化培地(潜在型ミオスタチン)のいずれかと共にインキュベートした。一晩のタンパク質分解反応の後、成熟増殖因子の放出を、293T細胞におけるCAGAベースのレポーターアッセイを使用して測定した。抗体を、同じアッセイにおいて用量反応によってさらに確認し、その結果を表3に示す。
【0209】
5つの親抗体(表3)は、上記のアッセイの全てにおいて一貫して強力な選択性および活性を示し、これらをin vivoでさらに特徴付けるためにさらに選択した(実施例2において考察される)。Ab8は、潜在型ミオスタチンを認識しないが、一貫性のために、プロ/潜在型ミオスタチンに対するこれらの抗体の結合および活性を要約する。
【0210】
抗体候補の作用機序を決定するために、
図3に示すようにミオスタチンのプロドメインに対して惹起されたポリクローナル抗体を使用してウエスタンブロットによって試料を分析した。これによって、mTll2切断後に生成されるミオスタチンプロドメインの断片(四角で囲った部分)の追跡が可能となった。Ab1の濃度が増加するにつれて、この断片の生成の用量依存的な減少が認められた。この実験は、エピトープビン1の抗体が、プロテアーゼのトロイドファミリーによるプロおよび潜在型ミオスタチンの切断を遮断することによって作用することを示している。
【0211】
活性抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体のin vitroおよびin vivo活性に基づいて、Ab1を、親和性成熟、生殖系列化、および製造可能性分析を含むさらなる最適化のためのリードとして選択した。
【0212】
Ab1の最適化
Ab1抗体をさらなる最適化のために選択した。プロ/潜在型ミオスタチンの親和性を、酵母ディスプレイを使用して最適化した。さらに、ヒト可変領域フレームワーク内の非生殖系列アミノ酸位置の起こり得る免疫原性傾向を低減させるために、Ab1の配列を生殖系列化した。
【0213】
酵母ディスプレイによるAb1の親和性最適化
Ab1親抗体を、酵母に基づくscFvディスプレイアプローチを使用してプロ/潜在型ミオスタチンに対する結合に関して最適化した。簡単に説明すると、Ab1が利用するヒトフレームワークに対応する抗体ディープシークエンシングを使用して天然のヒト抗体レパートリーにおいて観察されるアミノ酸頻度に基づいて、選択されたCDR位置に点変異を導入する3つの異なるscFvライブラリーを作製した。それぞれのライブラリーは、得られた重鎖または軽鎖のそれぞれの改変体が、それぞれのCDRに1つの置換を有し、全体で3つの置換を有するように、それぞれのCDRに1つの点変異が導入されたAb1配列に基づくscFvを含有した。3つのライブラリーを、FACSベースのソーティングおよび選択のために使用して、プロ/潜在型ミオスタチンに対してより高い結合親和性を有するクローンのプールを同定した(
図23)。酵母発現scFvクローンの直接結合を使用して、哺乳動物細胞培養物において発現される完全長のIgGに転換するための抗体を選択した。
【0214】
酵母の作戦で同定された高親和性のscFvクローンの多くは、重鎖の28位で置換を含有した。いくつかのクローンでは、トレオニンのアスパラギンへの置換によって、CDRH1内で非標準のN−グリコシル化モチーフが組み込まれていた。抗体の可変領域内でのN−グリコシル化は望ましくないことがあるので、グリコシル化モチーフを含有するいかなるクローンも、この位置でアラニンを含有するようにさらに置換した。
【0215】
次に、プロおよび潜在型ミオスタチンに対する結合動態を、親和性最適化構築物のそれぞれに関してoctetによって評価して、親Ab1の動態と比較した(実施例2において考察する)。クローンは全て、ミオスタチンに関して有意に増加した結合親和性を示し、GDF11と比較した選択的結合プロファイルに基づいて、Ab3およびAb5の2つを選択した。
【0216】
抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体の一次配列および骨格
親Ab1の可変領域とその親和性最適化改変体との配列アラインメントを以下に示す。相補性決定領域(CDR)は、Kabat(下線)およびIMGT命名法(太字)を使用して定義される。親Ab1からの置換を、赤色の小文字で示す(下記および
図24A〜24B)。
【化9】
【0217】
抗体操作およびアイソタイプ選択の根拠
いくつかの実施形態では、ミオスタチンの遮断にとって有用な抗体は、エフェクター機能を欠如する。このため、ヒト化構築物に関して、IgG4−Fc領域を選択した。IgG4アイソタイプの抗体は、補体C1qに対する結合が不良で、したがって補体を有意に活性化しない。これらの抗体はまた、Fcγ受容体に対する結合も弱く、そのため抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は非効率的であるか、または存在しない。
【0218】
ネイティブIgG4 mAbに関して起こることが知られているFabアーム交換による起こり得る困難な状況を回避するために、Ab1およびその改変体を、セリン228(EU番号付け:Kabat番号付け残基241)がプロリンに変換されてIgG1様(CPPCP(配列番号58))ヒンジ配列が生じる安定化「Adair」変異(Angal、1993年)により操作した。この操作したFc配列を、承認された抗体Keytruda、Mylotarg、およびTysabriの生成、ならびに現行のいくつかの後期臨床候補mAbに使用する。
【0219】
生殖系列化および免疫原性のリスク評価
Ab1親抗体およびその改変体は、ファージディスプレイに由来する完全ヒトIgG4(S228P)、ラムダ抗体である。抗体のFc部分は、Fabアーム交換を防止するために1つの安定化変異を(上記)含有する。IgG4 Fcは、Fcガンマ受容体に対して測定可能な結合を有すると予想されない(実施例2を参照されたい)。
【0220】
完全ヒトナイーブファージライブラリーから単離されたAb1の可変フレームワーク領域は、5つの非生殖系列アミノ酸を含有する(以下および
図22を参照されたい)。相補性決定領域(CDR)は、Kabatの命名法を使用して定義され、下線で示される。非生殖系列の残基を小文字で示す。
【化10】
【0221】
免疫原性の可能性を緩和するために、非生殖系列フレームワーク残基をその対応する生殖系列アミノ酸に置換するAb1分子のさらなる改変体を作製した。いくつかの実施形態では、Ab1に関する置換を、Ab3およびAb4、またはその生殖系列化が適切である本明細書に開示される任意の抗体に同様に適用することができる。
【0222】
Ab1の可変領域と、その親和性最適化改変体との配列アラインメントを、以下に示す。A.)重鎖、B.)軽鎖。相補性決定領域(CDR)は、Kabat(下線)およびIMGT命名法(太字)を使用して定義する。親Ab1に存在するフレームワーク領域の置換を小文字で示す。
【化11】
【0223】
5つの置換のうち3つは、CDR領域から離れていることが見出され、したがって、結合に影響を及ぼさない。軽鎖の2位のプロリンはCDRL3に対してパッキングされていることから、このプロリンを生殖系列のセリンに置換すると、CDRのコンフォメーションを安定化させることによって、プロ/潜在型ミオスタチンに対する結合を実際に改善する。
【0224】
抗体全体は、99%超がヒトである(100%から、CDRH3を除く非生殖系列AAの%を差し引くことによって算出した)。化学コンジュゲーションは存在しない。重鎖CDRH2配列は、生殖系列IgHV3−30配列にも存在する、起こり得る異性化傾向(Asp−Gly)を含有する。
【0225】
(実施例2:薬理学的特徴付け)
in vitro薬理学アッセイ
全体で24個の最適化Ab1改変体を発現させて、IgG4として精製し、結合および機能的活性の改善に関してアッセイした。これらの分子に対する変化は、親和性成熟スクリーニングにおいてプロ/潜在型ミオスタチンに対する結合の増加を付与するCDRの変異と共に、親可変領域に対する生殖系列化変異を含んだ(実施例1を参照されたい)。
【0226】
Ab1改変体を、プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンタンパク質(ヒト、ネズミ、およびカニクイザル)に対する結合を、陰性対照タンパク質の大規模スクリーニングと共に再評価するいくつかの異なるELISAベースのアッセイにおいてスクリーニングして、親和性成熟の結果として非特異的結合が導入されないことを確認した。陰性対照は、GDF11タンパク質(プロGDF11、潜在型GDF11、および成熟GDF11)、TGFβタンパク質、ならびにアクチビンタンパク質(プロアクチビン)を含んだ。さらに、抗体を、既に公表されたスクリーニング(Hotzelら、2012年)と類似のスクリーニングにおいて多重特異性(急速なクリアランスが起こり得る)に関して評価した。多重特異性スクリーニングにおいて陰性対照タンパク質またはバキュロウイルス粒子と有意に相互作用するいかなる抗体も、開発プログラムの候補としてさらに考慮しなかった。
【0227】
Ab1の24個の最適化改変体も、プロミオスタチン活性化アッセイにおいて評価して、その機能的効能を決定して、用量反応曲線からのEC50値を親Ab1抗体と比較した。ほとんどの抗体は同等であるか、または改善されたEC50値を有し、このアッセイにおいて効能の低減を示したのは少数であった。活性アッセイにおいて効能が低減した抗体をさらなる分析から除外した。
【0228】
プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに対する結合が改善したが、プロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンに対して特異性を保持するAb1の3つの改変体を同定した。これらの3つの改変体および親Ab1分子の結合および活性データを、表4〜7に要約し、配列を実施例1に示す。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0229】
細胞ベースのex vivoおよびin vivoの生物活性アッセイ
Ab1最適化改変体を、GDF8活性化アッセイにおいて用量反応試験で評価した。これらの実験において、0.5μMプロミオスタチンを、漸増量の試験物質と共にプレインキュベートした。このプレインキュベーションステップの後、mTll2およびフューリンプロテアーゼを過剰発現するHEK293細胞由来の馴化培地を添加して、プロミオスタチンから成熟増殖因子を放出させた。30℃で一晩インキュベートした後、材料を、SMADベースのルシフェラーゼレポータープラスミドを有する293T細胞に添加して、放出された材料の活性を記録した。データを
図4に示す。
【0230】
他のTGFβファミリーメンバーよりも優先したミオスタチンに対する選択性
候補抗体の選択性も、結合および機能的アッセイの両方によって評価して、TGFβファミリーの他のメンバーに対して交差反応性がないことを確認した。ヒトミオスタチンとGDF11とは、成熟増殖因子ドメインにおいて90%の同一性を共有し、プロドメイン領域において47%の同一性を共有する。ELISAアッセイにより、ミオスタチンのプロドメインからなる構築物にこの抗体が結合することが示されていることから、エピトープマッピング試験から、親Ab1分子がプロミオスタチンおよび潜在型ミオスタチンのプロドメイン上のエピトープを認識することが決定された。ミオスタチンのプロドメインとGDF11は50%未満の同一性を共有し、有意な交差反応性は予想されないものの、リード抗体の特異性を注意深く評価した。
【0231】
目的の抗体と陰性対照試薬との間の相互作用を検出する感度の良いアッセイを開発した。このアッセイにおいて、ビオチン化プロGDF11またはビオチン化プロミオスタチンを、抗体30μg/mLを含有するウェルに適用したForteBio BLIストレプトアビジンコーティングセンサーチップ上に固定した。検体と、チップ上に固定したタンパク質との相互作用を、バイオセンサーチップの応答の大きさによって測定する。会合5分後のバイオセンサー応答(プロGDF8の飽和シグナル)を2つの抗原の間で比較して、GDF8結合に関する応答率として表した。抗体は全て、プロミオスタチンに関して測定される確固とした結合事象と比較して、プロGDF11と最小限の相互作用を有した。
【表8】
【0232】
抗体候補もGDF11活性化アッセイにおいて評価した。このアッセイにおいて、50nMプロGDF11を、増加濃度の抗体と共にプレインキュベートする。プレインキュベーションの後、BMP−1(トロイドファミリープロテアーゼ)およびPCSK5(GDF11に対して特異的なフューリンファミリーメンバー)を過剰発現するHEK293細胞由来の馴化培地を添加して、タンパク質分解を介してプロGDF11を活性化した。30℃で一晩インキュベートした後、反応混合物をSMADベースのレポーター細胞株においてGDF11活性に関して評価する。表8に示すように、抗ミオスタチン抗体は、プロGDF11活性化を阻害しないが、陽性対照抗体は、GDF11活性化の用量依存的阻害を付与する。
【0233】
抗体候補の結合親和性を、ForteBio Octet Qkeディップを使用して決定し、生体層干渉法(bio−layer interferometry)を利用して標識フリーのアッセイシステムを読み取った。それぞれの実験において抗原をバイオセンサー(プロGDF8、プロGDF11、およびプロアクチビンに関してストレプトアビジンコーティングバイオセンサー;他の全てに関して直接アミンカップリング)に固定して、抗体/構築物を、溶液中で高濃度(50μg/mL)で提示して、結合相互作用を測定した。
【表9】
【0234】
抗原結合試験からの結果を表9に要約する。不良な結合応答を有するデータにフィットさせたいくつかの算出されたKd値が存在し、これらは表において弱い非特異的結合として示す。
【0235】
Fc領域の機能性の評価
抗プロ/潜在型ミオスタチン療法の予想される機序は、可溶性の標的(プロ/潜在型ミオスタチン)に結合すること、およびタンパク質分解を介した活性化を防止することを伴う。そのため、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害および補体結合は、この作用機序にとって必要ではない。Ab1およびその関連する改変体を、IgG4−Fc領域を含有するように操作した。IgG4抗体は一般的に、補体成分C1qおよびFcγ受容体に対するその結合が弱いためにエフェクター機能を欠如すると理解される。
【0236】
エフェクター機能の能力が低減されていることを証明するために、Ab1および関連する抗体を、ELISAによってCD64(FcgRI)およびC1qに対する結合に関して試験した。比較のために、Ab1のIgG1改変体も調製した。このアッセイにおいて、IgG4抗体は全て、IgG1と比較してCD64およびC1qに対して有意に弱い結合(1/10〜1/20)を示した。EC50での相対的結合値を表10に記載する。
【表10】
【0237】
Ab1およびその関連改変体のCD64およびC1qに対する見かけの結合親和性は、他のIgG4臨床候補抗体と類似であり、IgG1アイソタイプの抗体と比較してかなり低減されている。したがって、IgG4抗体の公知の生物学に基づいて、抗プロ/潜在型ミオスタチン抗体は、in vivoで認識可能なエフェクター機能を誘導しないと結論される。
【0238】
動物モデルにおける効能
in vitro特徴付けに基づいて、4つの抗体(Ab7、Ab1、Ab8、およびAb9)を選択して、in vivo試験において試験した。試験の目的は、これらの4つの候補抗体がマウスの筋肉量を調節する能力を評価することであった。10匹の雌性SCIDマウスの5つの群に、試験物質を1週間に1回、0、7、14、21、28、および35日目に腹腔内(IP)注射によって投与した。試験物質の投与前(0日目)、全ての動物に握力評価を行った。握力評価はまた、試験の最終日(42日目)にも実施した。0日目に、全血球算定(CBC)評価のために血液を後眼窩出血を介して採取した。投与後、動物を体重および全身健康状態の観察について毎日評価した。42日目に、握力評価の後、動物をCO
2過量投与によって屠殺して、CBC評価のために心穿刺によって血液を採取した。血漿を調製するために、さらなる血液を採取した。様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、胸筋、ヒラメ筋、三頭筋、前脛骨筋、四頭筋(大腿直筋)、および横隔膜であった。採取した臓器は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および鼠径部白色脂肪組織であった。組織は全て重量を測定して、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリン(脚1)およびOCT(脚2)で固定した。
【0239】
要約
試験SCH−02における動物の平均一日体重変化率データを
図6に示す。5群全ての動物の体重は、毎週増加した。抗体Ab1で処置した動物は、
図6に描写するように、最大の体重増加(14.6%)を示した。Ab1で処置した動物のみが、ビヒクル(PBS)対照群の動物と比較して平均体重変化率の統計学的に有意な増加を示した(
図6)。
【0240】
切除した筋肉の重量を
図7および8にプロットする。Ab1で処置した動物は、ビヒクル(PBS)対照処置動物と比較して腓腹筋(
図7A)および横隔膜(
図8B)重量の統計学的に有意な増加、それぞれ27.6%および49.8%を示した。Ab1処置動物からのさらなる筋肉は、PBS対照と比較して重量の増加を示したが、これらの差は統計学的に有意ではなかった。心臓、脾臓、腎臓、肝臓および脂肪組織の平均組織重量に関して処置群の間に統計学的有意差はなかった。
【0241】
SCID用量反応試験
in vivo試験(上記)において、Ab1を25mg/kgで1週間に1回6週間投与した動物は、ビヒクル(PBS)を投与した動物と比較して、体重および筋重量(腓腹筋および横隔膜)の統計学的に有意な増加を示した。次に、Ab1のこの筋肉増強活性を、SCIDマウスの用量反応試験においてより詳細に調べた。この試験において、筋肉量に及ぼす効果の大きさを、Ab1の用量を60mg/kg/週もの高用量まで増加させることによって増加させることができるか否か、および筋肉量に及ぼす効果の大きさを、Ab1の用量を2mg/kg/週もの低用量に減少させることによって減少させることができるか否かを調べた。この試験において、Ab1の活性を、さらに2つの抗体(上記の試験で当初試験したAb8、およびAb10)と比較した。
【0242】
10匹の雌性SCIDマウスの10個の群に試験物質を腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって週に2回、0、3、7、10、14、17、21、および24日目に投与した。試験物質の用量は以下のとおりであった:Ab1(30mg/kg、10mg/kg、3mg/kg、および1mg/kg)、Ab10(10mg/kgおよび3mg/kg)、ならびにAb8(10mg/kgおよび3mg/kg)。対照群にはPBSおよびIgG対照(30mg/kg)を投与した。処置群を表11に記載する。動物は、試験開始時10週齢であった。体重を−4日目に測定して、投与日に対応して試験を通し週に2回、測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMRI(QNMR)によって−4、7、14、21、および28日目に測定した。抗体の初回用量から30日後に動物をCO
2の過量投与によって屠殺して、CBC評価および血漿調製のために心穿刺によって血液を採取した。さらに、試験終了時に、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、四頭筋(大腿直筋)、および横隔膜であった。筋肉を、試験マウスの左右両方の脚から切除した。分析のために、両方の脚からの個々の筋肉の重量を合計してグラムでの平均筋重量を算出した。採取した他の組織は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および脂肪組織であった。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリン(左脚)およびOCT(右脚)で固定した。
【表11】
【0243】
ビヒクル(PBS)、IgG対照、およびAb1の異なる用量で処置した動物に関する平均体重変化率および平均除脂肪量変化率データを
図9に示す。20および60mg/kg/週の用量のAb1で処置した動物は、IgG対照処置動物と比較して試験28日目に体重の有意な増加、それぞれ15.3%および14.4%を示した(
図9A)。Ab1(60、20、6、および2mg/kg/週の用量)で処置した動物の4つ全ての群が、IgG対照処置動物と比較して試験28日目に除脂肪量の統計学的に有意な増加、それぞれ、14.1%、12.4%、17.1%、および15.5%を示した(
図9B)。
【0244】
4つの筋肉(四頭筋、腓腹筋、前脛骨筋、および横隔膜)の重量を
図10にプロットする。ヒラメ筋も切除したが、筋肉のサイズが小さいために、データセットは極めて変動した。Ab1の全ての用量で処置した動物は、IgG対照動物と比較して筋重量の統計学的に有意な増加を示した(
図10)。IgG対照と比較した筋肉量の平均変化率を、それぞれの筋肉グラフ上で対応する棒グラフの上に示す。四頭筋重量の平均変化率は、最高用量の20.5%から最低用量の10.7%までの範囲であった(
図10A)。腓腹筋重量の平均重量変化率は、最高用量の17.7%から最低用量の15.9%までの範囲であった(
図10B)。前脛骨筋重量の平均重量変化率は、最高用量の24.0%から最低用量の18.0%までの範囲であった(
図10C)。横隔膜筋重量の平均重量変化率は、全ての用量群に関して30%超であった(
図10D)。心臓、脾臓、腎臓、肝臓、および脂肪組織の平均組織重量に関して処置群間で統計学的有意差はなかった。
【0245】
デキサメタゾン誘導筋萎縮症モデルにおけるAb1処置
健康なSCIDマウスにおいて抗ミオスタチン抗体Ab1が筋肉量を構築する能力を考慮して、Ab1処置が、筋萎縮症を誘導する処置から動物を保護することもできるか否かを決定した。動物を、その飲料水中のデキサメタゾンで2週間処置することによって、コルチコステロイド誘導筋萎縮症モデルを確立した。選択した用量(2.5mg/kg/日)は、除脂肪体重および個々の後肢筋肉量の有意な減少を誘導することができた。以下の実験において、動物を、Ab1の異なる用量で処置して、このデキサメタゾン誘導筋萎縮症から動物を保護できるか否かを決定した。
【0246】
この試験において、10匹の雄性マウス(C57BL/6)の8つの群を、13.5週齢で試験に登録した。試験0日目に開始して、マウスに、通常の飲料水(群1〜4)、またはデキサメタゾンを含有する水(群5〜8)のいずれかを与えた。試験物質を、週に2回、0、3、7、および10日目に腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって投与した。試験物質および用量は以下のとおりであった:PBS(群1および5)、10mg/kg IgG対照(群2および6)、10mg/kg Ab1(群3および7)、ならびに1mg/kg Ab1(群4および8)。処置群を表12に記載する。試験を通して少なくとも週に2回、体重を測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMRI(QNMR)によって、−1、6、および13日目に測定した。抗体の初回用量から14日後、動物をCO
2の過量投与によって屠殺して、血漿を調製するために心穿刺によって血液を採取した。さらに、試験終了時、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、四頭筋(大腿直筋)、および横隔膜であった。筋肉を、試験マウスの左右両方の脚から切除した。分析のために、両方の脚の個々の筋肉の重量を合計して、平均筋重量をグラムで算出した。採取した他の組織は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および脂肪組織であった。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリン(左脚)およびOCT(右脚)で固定した。
【表12】
【0247】
この実験において、抗ミオスタチン抗体Ab1によるマウスの処置が、コルチコステロイド誘導筋萎縮症から動物を保護できるか否かを決定した。試験中、体重を週に2回測定して、除脂肪量を−1、6および13日目にQNMRによって測定した。非疾患対照群(群1)およびデキサメタゾン処置群(群5〜8)の動物に関して、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率データを
図12に示す。14日目では、これらの処置群のいずれの間でも平均体重変化率に有意差は認められなかった(
図11A)。デキサメタゾンで2週間マウスを処置すると、通常の飲料水を与えた対照群(群1)と比較して除脂肪体重は有意に減少した(群5および6)(
図11B)。しかし、デキサメタゾンおよび20mg/kg/週の抗体Ab1の両方で処置したマウス(群7)は、対照群(群1)と比較して試験14日目に除脂肪体重変化率の有意差を示さなかった。20mg/kg/週のAb1で処置した動物は、デキサメタゾン処置対照群(群5および6)のいずれかと比較して、14日目に除脂肪体重変化率の有意差を示したが、2mg/kg/週は有意差を示さなかった。
【0248】
デキサメタゾンおよび試験物質による2週間の処置の終了時、個々の筋肉を切除して、重量を測定した。2つの筋肉(腓腹筋と四頭筋)の重量データを
図12A〜12Bにプロットする。飲料水を通してデキサメタゾンを投与され、PBSまたはIgG対照抗体のいずれかを同様に投与された動物は、非疾患対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋の有意な萎縮症を示した(群5および6)。デキサメタゾンと20mg/kg/週のAb1の両方で処置された動物(群7)は、デキサメタゾン処置対照群(群5および6)のいずれかと比較して筋重量の有意差を示したが、2mg/kg/週は、有意差を示さなかった。さらに、デキサメタゾンと20mg/kg/週の抗体Ab1の両方で処置したマウス(群7)は、非疾患対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋重量の有意差を示さなかった。対照群(群1、PBSおよび水)の平均筋重量と比較した各群の平均筋重量の差の百分率を、
図12C〜12Dに示す。PBSおよびIgG対照群におけるデキサメタゾン処置によって誘導された腓腹筋肉量の減少率は、それぞれ、16.5%および18.9%であった。これに対し、デキサメタゾンと20mg/kg/週のAb1の両方で処置した動物では、腓腹筋肉量の減少は4.0%に過ぎず、これは非疾患対照群(群1)と統計学的に異ならなかった。デキサメタゾンと2mg/kg/週のAb1の両方で処置した動物(群8)では、腓腹筋肉量の減少は10%に過ぎず、この群の筋肉量の減少は、PBSおよびIgG対照群(群5および6)の減少と統計学的に異ならなかった。類似の結果が四頭筋について見られた(
図12D)。
【0249】
ギプス固定誘導筋萎縮症モデルにおけるAb1処置
健康なSCIDマウスにおいて抗ミオスタチン抗体Ab1が筋肉量を構築する能力を考慮して、Ab1処置が、筋萎縮症を誘導する処置から動物を保護することもできるか否かを調べた。マウスの右脚をギプスで2週間固定することによって、非活動性萎縮症モデルを確立した。足を足底屈位置にして右脚をこの期間ギプスで固定することにより、個々の後肢筋肉量の有意な減少を誘導することができた。以下の実験において、動物を異なる用量のAb1で処置して、このギプス固定誘導筋萎縮症から動物を保護する程度を決定した。
【表13】
【0250】
この試験において、10匹の雄性マウス(C57BL/6)の8つの群を、14.5週齢で試験に登録した。試験0日目に開始して、マウスを麻酔下に置き、足を足底屈位置にして右後肢にギプスを固定した(群5〜8)。対照群(群1〜4)も麻酔下に置いたが、後肢のギプス固定を行わなかった。試験物質を、週に2回、0、3、7、および10日目に腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって投与した。試験物質および用量は以下のとおりであった:PBS(群1および5)、10mg/kg IgG対照(群2および6)、10mg/kg Ab1(群3および7)、ならびに1mg/kg Ab1(群4および8)。処置群を表13に記載する。試験を通して少なくとも週に2回、体重を測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMRI(QNMR)によって、−1、7、および14日目に測定した。抗体の初回用量から14日後、動物をCO
2の過量投与によって屠殺して、血漿を調製するために心穿刺によって血液を採取した。
【0251】
さらに、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、足底筋、前脛骨筋、および四頭筋(大腿直筋)であった。分析のために、動物の右後肢から個々の筋肉の重量を収集した。採取した他の組織は、心臓、脂肪組織、および脾臓であった。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリンで固定した。
【0252】
要約
この実験において、抗ミオスタチン抗体Ab1でのマウスの処置が、右後肢のギプス固定によって誘導された非活動性筋萎縮症からマウスを保護できるか否かを試験した。試験中、体重を週に2回測定して、除脂肪量を−1、7および14日目にQNMRによって測定した。非疾患対照群(群1)および2週間ギプス固定した群(群5〜8)の動物に関して、平均体重変化率および平均除脂肪量変化率データを
図13に示す。右後肢のギプス固定は、体重増加に対していかなる負の効果も及ぼさず(
図13A)、群の除脂肪量のいかなる差も有意ではなかった(
図13B)。
【0253】
2週間の試験の終了時、個々の筋肉を切除して、重量を測定した。2つの筋肉(腓腹筋と四頭筋)の重量データを
図14A〜14Bにプロットする)。脚をギプス固定して、同様にPBSまたはIgG対照抗体のいずれかを投与した動物は、非ギプス固定対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋の有意な萎縮症を示した(群5および6)。ギプス固定して20mg/kg/週のAb1を投与した動物(群7)は、ギプス固定対照群(群5および6)のいずれかと比較して筋重量の有意差を示したが、2mg/kg/週は、有意差を示さなかった。さらに、20mg/kg/週の抗体Ab1で処置したギプス固定マウス(群7)は、非ギプス固定対照群(群1)と比較して、腓腹筋および四頭筋重量の有意差を示さなかった。非ギプス固定対照群(群1)の平均筋重量と比較して各群の平均筋重量の差の百分率を、
図14C〜14Dに示す。PBSおよびIgG対照群におけるギプス固定によって誘導された腓腹筋肉量の減少率は、それぞれ、22.8%および23.5%であった。これに対し、20mg/kg/週のAb1で処置したギプス固定マウスでは、腓腹筋肉量の減少は10.0%に過ぎなかった。この差は、PBSおよびIgG対照抗体を投与したギプス固定対照群(群5および6)と統計学的に異なることが見出された。2mg/kg/週のAb1で処置したギプス固定マウスの筋肉量の減少は、PBSおよびIgG対照群(群5および6)の減少と統計学的に異ならなかった。類似の結果が四頭筋について見られた(
図14D)。さらなるデータを
図15〜20に提供する。
【0254】
Ab1、Ab2、Ab4、およびAb6によるSCID用量反応試験
Ab1による以前のin vivo試験は、Ab1が、健康な動物において筋肉量を増加させることができ、ならびにマウス筋萎縮症モデル(デキサメタゾンおよびギプス固定誘導萎縮症)において筋肉喪失を予防することができることを証明した。抗体操作の努力により、Ab1より良好であるin vitro特徴を有する3つの抗体が同定された。この試験において、SCIDマウスにおいて、これらの抗体のin vivo活性を、3つの異なる用量で、既に確立されたAb1の活性と比較した。
【0255】
8匹の雌性SCIDマウスの14個の群に、週に2回、0、3、7、10、14、17、21、および24日目に腹腔内(IP)注射(10ml/kg)によって試験物質を投与した。試験物質の用量は以下のとおりであった:Ab1、Ab2、Ab4、およびAb6は、3つの異なる用量(10mg/kg、1mg/kg、および0.25mg/kg)で投与し、IgG対照抗体は10mg/kgで投与した。処置群を表14に記載する。動物は、試験開始時10週齢であった。投与日に対応して試験を通し、週に2回、体重を測定した。身体組成パラメータ(脂肪量、除脂肪量、および水分含有量)を、EchoMRI(QNMR)によって、0、7、14、21および28日目に測定した。抗体の初回用量から28日後、動物をCO
2の過量投与によって屠殺して、血漿を調製するために心穿刺によって血液を採取した。
【0256】
さらに、様々な組織を単離して重量を測定した。採取した筋肉は、腓腹筋、ヒラメ筋、前脛骨筋、四頭筋(大腿直筋)、足の長指伸筋、および横隔膜であった。筋肉を、試験マウスの左右両方の脚から切除した。分析のために、両方の脚の個々の筋肉の重量を合計して、平均筋重量をグラムで算出した。採取した他の組織は、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、および脂肪組織であった。組織は全て、重量を測定して、次いで、瞬間凍結したが、左の腓腹筋は、組織学分析のためにホルマリンで固定した。
【表14】
【0257】
(実施例3:化学/製薬科学)
Ab2は、228位でセリンをプロリンに置換したIgG4サブタイプのヒト化モノクローナル抗体である。これによって、IgG1様ヒンジ配列が生成され、IgG4の特徴である鎖間ジスルフィド架橋の不完全な形成を最小限にする。Ab2の重鎖および軽鎖の完全なアミノ酸配列を以下に示す。相補性決定領域(CDR)を下線で示す。紫色:N−結合グリコシル化コンセンサス配列部位;水色:起こり得る切断部位;赤色:起こり得る脱アミド化部位;黄緑色:起こり得る異性化部位;濃い青色:起こり得るメチオニン酸化部位;太字:予想されるN末端ピログルタミン酸(
図21A〜21B)。
【0258】
Ab1の分子モデリングにより、起こり得るいくつかの翻訳後改変部位が同定された。軽鎖における2つのアスパラギン、および重鎖における7つのアスパラギンは、脱アミド化を受けやすい。これらの残基の2つは、重鎖のCDR領域内に位置する。
【0259】
ネイティブIgG4 mAbは、2つの半分子(それぞれが、1つの重鎖と1つの軽鎖とを含有する)が非共有結合的相互作用によってインタクト抗体構造において維持される重鎖間ジスルフィド架橋の不完全な形成を有し得る。IgG4分子は、in vitroおよびin vivoで半分子を交換する傾向があり得、半分子のレベルは、製造バッチ間で一貫していなければならない。IgG4構造の骨格におけるSerからProへの置換によって、IgG1様ヒンジ配列がもたらされ、それによって鎖間ジスルフィド結合の形成が可能となり、抗体構造を顕著に安定化させる。ヒンジ領域の完全性および安定性を、非還元性キャピラリー電気泳動および遊離のスルフヒドリルの定量などのアッセイを使用して、展開中に広範な特徴付けを行いながらモニタリングする。鎖交換の可能性をin vivoでモニタリングする。
【0260】
要約
プロミオスタチンおよび/または潜在型ミオスタチンの活性化を遮断するプロ/潜在型ミオスタチン特異的抗体を、本明細書に提供する。この活性化遮断抗体を健康なマウスに投与すると、除脂肪体重および筋肉のサイズを増加させ、筋肉増強効果を1ヵ月間維持するために単一の用量しか必要としない。さらに、抗体の投与は、2つの別個の筋消耗モデルにおいて健康なマウスを筋萎縮症から保護する。データは、ミオスタチン活性化の遮断が、確固とした筋成長を促進してin vivoで筋萎縮症を防止し、筋消耗の治療介入のための代替機構を表すことを証明する。
【0261】
本開示のいくつかの実施形態を本明細書において記載し、説明してきたが、機能を行うための、ならびに/あるいは本明細書において記載される結果および/または1つもしくは複数の利点を得るための、多様な他の手段および/または構造は、当業者によって容易に想起され、そのような変更および/または改変のそれぞれは、本開示の範囲内であると考えられる。より一般的には、本明細書において記載される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成は、例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、特定の応用または本開示の教示が使用される応用に依存することを、当業者は容易に理解するであろう。当業者は、単なる日常的実験を使用して、本明細書に記載される開示の特異的実施形態に対する多くの同等物を認識するまたは確認することができる。したがって、前述の実施形態は、単なる例として紹介され、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲内で、本開示は具体的に記載および特許請求される以外に実践してもよいと理解すべきである。本開示は、本明細書において記載されるそれぞれの個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法を対象とする。さらに、2つまたはそれ超のそのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法の任意の組合せは、そのような特徴、システム、物品、材料、および/または方法が相互に矛盾しない限り、本開示の範囲に含まれる。
【0262】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、それらが明らかに反対を示していない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解すべきである。
【0263】
本明細書および特許請求の範囲で使用される語句「および/または」は、そのように結合された要素、すなわち、ある場合では結合して存在し、別の場合では離れて存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解すべきである。明らかに反対であることと示していない限り、具体的に同定されたそのような要素に関連するか関連しないかによらず、「および/または」の語句によって具体的に同定された要素以外に他の要素が、任意選択で存在してもよい。このように、非制限的な例として、「含む」などの制限のない用語と共に使用する場合の「Aおよび/またはB」という言及は、一実施形態ではBを含まないA(任意選択でB以外の要素を含む)、別の実施形態ではAを含まないB(任意選択でA以外の要素を含む)、さらに別の実施形態ではAとBの両方(任意選択で他の要素を含む)等を指し得る。
【0264】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義される「および/または」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リストにある項目を分離する場合、「または」または「および/または」は、包含的に解釈され、すなわち、いくつかの要素または要素のリストのうちの少なくとも1つを含むが、1超も含み、任意選択で追加の記載されていない項目を含むと解釈される。その反対であることを明らかに示している、「唯一の」もしくは「まさに1つの」、または特許請求の範囲において使用される場合の「からなる」などの用語のみが、いくつかの要素または要素のリストのうちの厳密に1つの要素の包含を指す。一般的に、本明細書において使用される用語「または」は、「いずれか」、「〜の1つ」、「〜の1つのみ」または「〜のまさに1つ」などの排他的な用語がその前にある場合、排他的代替物(すなわち、「1つまたは他方であるが、両方ではない」)を示すとのみ解釈される。特許請求の範囲において使用される場合の「本質的にからなる」は、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有する。
【0265】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、1つまたは複数の要素のリストを参照する場合の語句「少なくとも1つ」は、要素のリストにおける要素の任意の1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に具体的に記載されるあらゆる要素の少なくとも1つを含まず、要素のリストにおける要素の任意の組合せを除外しないと理解すべきである。この定義はまた、具体的に同定されたそれらの要素に関係するか無関係であるかによらず、語句「少なくとも1つ」が指す要素のリスト内で具体的に同定された要素以外の要素が任意選択で存在してもよいことを許容する。このため、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等の「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等の「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、任意選択で1超のAを含む少なくとも1つのAでBは存在しない(任意選択でB以外の要素を含む)ことを指し;別の実施形態では、任意選択で1超のBを含む少なくとも1つのBでAは存在しない(任意選択でA以外の要素を含む)ことを指し;なお別の実施形態では、任意選択で1超のAを含む少なくとも1つのAと、任意選択で1超のBを含む少なくとも1つのB(任意選択で他の要素を含む)を指し得る等々である。
【0266】
特許請求の範囲、ならびに上記の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」その他などの全ての移行句は、制限がないと理解すべきであり、すなわち、含むがこれらに限定されないことを意味する。「からなる」および「本質的にからなる」という移行句のみが、米国特許庁の米国特許審査便覧第2111.03節に記載されているようにそれぞれ、制限的または半制限的な移行句である。
【0267】
請求項の要素を修飾するための、特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」等などの序数の使用は、それ自体、いかなる優先性、選択性、または1つの請求項の要素の順位が別の請求項の要素より上であること、または方法の行為が実行される時間的順序を暗示するものではなく、請求項の要素を区別するために、ある特定の名称を有する1つの請求項の要素を、同じ名称(序数の使用以外の点で)を有する別の要素と区別するための単なる表示として使用される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む抗体であって、前記重鎖可変ドメインが、配列番号10〜11のいずれか1つに記載の配列を含む相補性決定領域3(CDRH3)を含む、抗体。
(項目2)
プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記軽鎖可変ドメインが、配列番号22〜23のいずれか1つに記載の配列を含む相補性決定領域3(CDRL3)を含む、項目1または2に記載の抗体。
(項目4)
6個の相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含み、CDRH1が配列番号1〜3のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRH2が配列番号4〜9のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRH3が配列番号10〜11のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRL1が配列番号12〜17のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRL2が配列番号18〜21のいずれか1つに記載の配列を含み、CDRL3が配列番号22〜23のいずれか1つに記載の配列を含む、項目1から3のいずれか一項に記載の抗体。
(項目5)
CDRH1が配列番号1または2に記載の配列を含み、CDRH2が配列番号4または5に記載の配列を含み、CDRH3が配列番号10に記載の配列を含み、CDRL1が配列番号12または13に記載の配列を含み、CDRL2が配列番号18または19に記載の配列を含み、CDRL3が配列番号22に記載の配列を含む、項目4に記載の抗体。
(項目6)
CDRH1が配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2が配列番号6または7に記載の配列を含み、CDRH3が配列番号11に記載の配列を含み、CDRL1が配列番号14または15に記載の配列を含み、CDRL2が配列番号20または21に記載の配列を含み、CDRL3が配列番号23に記載の配列を含む、項目4に記載の抗体。
(項目7)
CDRH1が配列番号1または3に記載の配列を含み、CDRH2が配列番号8または9に記載の配列を含み、CDRH3が配列番号11に記載の配列を含み、CDRL1が配列番号16または17に記載の配列を含み、CDRL2が配列番号20または21に記載の配列を含み、CDRL3が配列番号23に記載の配列を含む、項目4に記載の抗体。
(項目8)
配列番号24〜29のいずれか1つに記載の重鎖可変ドメイン配列を含む、項目1から7のいずれか一項に記載の抗体。
(項目9)
配列番号30〜35のいずれか1つに記載の軽鎖可変ドメイン配列を含む、項目1から8のいずれか一項に記載の抗体。
(項目10)
プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインを含む抗体であって、前記軽鎖可変ドメインが、配列番号22〜23のいずれか1つに記載の配列を含む相補性決定領域3(CDRL3)を含む、抗体。
(項目11)
配列番号30の軽鎖可変ドメイン配列を含む、項目10に記載の抗体。
(項目12)
プロ/潜在型ミオスタチンへの結合について、項目1から11のいずれか一項に記載の抗体と競合する抗体。
(項目13)
項目1から11のいずれか一項に記載の抗体と同じエピトープにおいてプロ/潜在型ミオスタチンに結合する、項目12に記載の抗体。
(項目14)
10−6M未満である前記抗体とプロ/潜在型ミオスタチンとの間の平衡解離定数、Kdでプロ/潜在型ミオスタチンへの結合について競合する、項目12または13に記載の抗体。
(項目15)
前記Kdが10−11Mから10−6Mの範囲にある、項目14に記載の抗体。
(項目16)
ヒト化抗体、ダイアボディ、キメラ抗体、Fab断片、F(ab’)2断片またはFv断片である、項目1から15のいずれか一項に記載の抗体。
(項目17)
ヒト化抗体である、項目16に記載の抗体。
(項目18)
ヒト抗体である、項目16に記載の抗体。
(項目19)
ヒト生殖系列配列を有するフレームワークを含む、項目1から17のいずれか一項に記載の抗体。
(項目20)
IgG、IgG1、IgG2、IgG2A、IgG2B、IgG2C、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgD、IgMおよびIgE定常ドメインからなる群より選択される重鎖定常ドメインを含む、項目1から19のいずれか一項に記載の抗体。
(項目21)
IgG4の定常ドメインを含む、項目20に記載の抗体。
(項目22)
IgG1様ヒンジを生じ、鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にするSerからProへの骨格置換を有するIgG4の定常ドメインを含む、項目20に記載の抗体。
(項目23)
蛍光性作用物質、発光性作用物質、酵素性作用物質および放射性作用物質からなる群より選択される作用物質にコンジュゲートされている、項目1から22のいずれか一項に記載の抗体。
(項目24)
成熟ミオスタチンと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する、項目1から23のいずれか一項に記載の抗体。
(項目25)
トランスホーミング増殖因子ベータファミリーの別のメンバーと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する、項目1から23のいずれか一項に記載の抗体。
(項目26)
前記メンバーがGDF8またはアクチビンである、項目25に記載の抗体。
(項目27)
配列番号50に記載のアミノ酸配列を有する重鎖および配列番号51に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、抗体。
(項目28)
プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合し、トロイドプロテアーゼによるタンパク質分解を介した成熟ミオスタチンの形成を阻害する抗体。
(項目29)
トロイドプロテアーゼによるタンパク質分解を介した成熟ミオスタチンの形成を1μM未満のIC50で阻害する、項目28に記載の抗体。
(項目30)
ヒトおよびネズミプロ/潜在型ミオスタチンと交差反応性である、項目28または29に記載の抗体。
(項目31)
GDF11またはアクチビンと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する、項目28から30のいずれか一項に記載の抗体。
(項目32)
成熟ミオスタチンと比較してプロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する、項目28から31のいずれか一項に記載の抗体。
(項目33)
プロ/潜在型ミオスタチンを含む培地中に存在する細胞におけるミオスタチン受容体活性化を低減する方法であって、項目1から32のいずれか一項に記載の抗体を、タンパク質分解を介した前記プロ/潜在型ミオスタチンの活性化を阻害するのに有効な量で前記培地に送達するステップを含む、方法。
(項目34)
前記培地がプロタンパク質転換酵素をさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記培地がトロイドプロテアーゼをさらに含む、項目33に記載の方法。
(項目36)
前記抗体が、前記トロイドプロテアーゼによるタンパク質分解を介した前記プロ/潜在型ミオスタチンの活性化を阻害するのに有効な量で前記培地に送達される、項目33から35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記細胞がin vitroにある、項目33から36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記細胞がin vivoにある、項目33から36のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
ミオパチーを有する被験体を処置する方法であって、項目1から32のいずれか一項に記載の抗体の有効量を前記被験体に投与するステップを含む、方法。
(項目40)
前記ミオパチーが原発性ミオパチーである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記原発性ミオパチーが非活動性萎縮症を含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記非活動性萎縮症が股関節骨折、待機的人工関節置換術、救命医療ミオパチー、脊髄損傷または発作に関連する、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記ミオパチーが、筋肉喪失が疾患病態に続発する二次性ミオパチーである、項目39に記載の方法。
(項目44)
前記二次性ミオパチーが脱神経、遺伝性筋脱力または悪液質を含む、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記二次性ミオパチーが、筋萎縮性側索硬化症または脊髄性筋萎縮症に関連する脱神経である、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記二次性ミオパチーが、筋ジストロフィーに関連する遺伝性筋脱力である、項目44に記載の方法。
(項目47)
前記二次性ミオパチーが、腎不全、AIDS、心臓の状態、がんまたは加齢に関連する悪液質である、項目44に記載の方法。
(項目48) 前記処置が前記被験体における筋力の改善を生じる、項目39から47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記処置が前記被験体において代謝状態の改善を生じる、項目39から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記抗体が0.1mg/kgから100mg/kgの範囲の用量で投与される、項目39から49のいずれか一項に記載の方法。
(項目51)
前記抗体が0.3mg/kgから30mg/kgの範囲の用量で投与される、項目39から50のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記抗体が前記被験体に静脈内投与される、項目39から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記抗体が前記被験体に皮下投与される、項目39から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記抗体が前記被験体に複数の機会に投与される、項目39から51のいずれか一項に記載の方法。
(項目55)
前記複数回投与が少なくとも毎月実施される、項目54に記載の方法。
(項目56)
前記複数回投与が少なくとも毎週実施される、項目55に記載の方法。
(項目57)
項目1から32のいずれか一項に記載のいずれかの抗体、および担体を含む組成物。
(項目58)
前記担体が薬学的に許容される担体である、項目57に記載の組成物。
(項目59)
前記抗体および前記担体が凍結乾燥形態にある、項目57または58に記載の組成物。
(項目60)
前記抗体および前記担体が溶液中にある、項目57または58に記載の組成物。
(項目61)
前記抗体および前記担体が凍結されている、項目57または58に記載の組成物。
(項目62)
前記抗体および前記担体が−65℃未満またはそれに等しい温度で凍結される、項目57または58に記載の組成物。
(項目63)
3個の相補性決定領域(CDR):CDRH1、CDRH2およびCDRH3を含むタンパク質をコードする単離された核酸であって、CDRH3が配列番号10または11に記載の配列を含む、核酸。
(項目64)
CDRH1が配列番号1、2または3に記載の配列を含む、項目63に記載の単離された核酸。
(項目65)
CDRH2が配列番号4〜9のいずれか1つに記載の配列を含む、項目63または64に記載の単離された核酸。
(項目66)
3個の相補性決定領域(CDR):CDRL1、CDRL2およびCDRL3を含むタンパク質をコードする単離された核酸であって、CDRL3が配列番号22に記載の配列を含む、核酸。
(項目67)
CDRL1が配列番号12〜17のいずれか1つに記載の配列を含む、項目66に記載の単離された核酸。
(項目68)
CDRL2が配列番号18〜21のいずれか1つに記載の配列を含む、項目66または67に記載の単離された核酸。
(項目69)
配列番号38〜49のいずれか1つに記載の配列を含む単離された核酸。
(項目70)
項目63から69のいずれか一項に記載の単離された核酸を含む単離された細胞。
(項目71)
ミオパチーを有する被験体から得られた生物学的試料を評価する方法であって、
(a)前記被験体から得られた生物学的試料のタンパク質と、プロ/潜在型ミオスタチンに特異的に結合する抗体とを含む免疫学的反応混合物を調製するステップ;
(b)前記抗体とプロ/潜在型ミオスタチンとの間の結合複合体の形成を可能にする条件下に前記免疫学的反応混合物を維持するステップ;および
(c)結合複合体形成の程度を決定するステップ
を含む、方法。
(項目72)
配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28および配列番号29からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。
(項目72)
配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34および配列番号35からなる群より選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチド。