特許第6706622号(P6706622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706622
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】飛行時間型質量分析計
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/06 20060101AFI20200601BHJP
   H01J 49/40 20060101ALI20200601BHJP
   H01J 49/10 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H01J49/06
   H01J49/40
   H01J49/10
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-533947(P2017-533947)
(86)(22)【出願日】2015年11月26日
(65)【公表番号】特表2018-502429(P2018-502429A)
(43)【公表日】2018年1月25日
(86)【国際出願番号】EP2015077828
(87)【国際公開番号】WO2016102140
(87)【国際公開日】20160630
【審査請求日】2018年11月7日
(31)【優先権主張番号】1423068.4
(32)【優先日】2014年12月23日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501350833
【氏名又は名称】クラトス・アナリテイカル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カリニーナ,ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】アリソン,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブリーン,キャロライン
【審査官】 小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−141016(JP,A)
【文献】 特開2011−237415(JP,A)
【文献】 国際公開第99/053521(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0272286(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0255289(US,A1)
【文献】 特表2008−530557(JP,A)
【文献】 特開平01−186745(JP,A)
【文献】 特開2011−175897(JP,A)
【文献】 特開2007−309860(JP,A)
【文献】 特開平06−076789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J27/00−27/26
37/04
37/06−37/08
37/248
40/00−49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源を含む飛行時間型質量分析計であって、
イオン源は、
第1の電極であって、サンプルを担持するためのサンプルプレートを含む第1の電極と、
内部に形成されたアパーチャを有し、かつ第1の電極から離隔された第2の電極と、
サンプルプレートが取付けられるサンプルプレートキャリアと、
イオン光学軸に対してサンプルプレートキャリアを、つまりサンプルプレートを横方向にずらすために、イオン光学軸に対してサンプルプレートキャリアを横方向に移動させるように構成される機構であって、イオン光学軸が、第1の電極および第2の電極の間で、かつ第2の電極のアパーチャを通って延びる、機構と、
を含み、
質量分析計を使用しているときに、第2の電極のアパーチャを通って引き出し領域からイオンを引き出すよう、第1および第2の電極間の引き出し領域に引き出し電場を生成するために、第1および第2の電極に電圧を印加するようにイオン源が構成され、
第1の電極および/または第2の電極上にシールドが形成され、
シールドは、第1の電極および第2の電極のうちの一方の表面上に形成された隆起要素であり、第1および第2の電極のうちの一方が、シールドが第1および第2の電極のうちの他方に向かって延びるように、第1および第2の電極のうちの他方に面し、
シールドは、質量分析計を使用しているときに、第1および第2の電極の縁部間に形成された電場が、第1および第2の電極間の引き出し領域に侵入するのを抑制し、サンプルプレートがイオン光学軸に対して横方向にずらされたときに、引き出し領域の引き出し電場の変化を抑制するように構成される、飛行時間型質量分析計。
【請求項2】
シールドが、第1および第2の電極の間に延びる軸を囲繞する、請求項1に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項3】
第1の電極が、そこに形成されたアパーチャを含む、請求項1または2に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項4】
内側に面するシールドの表面は、第2の電極に形成されたアパーチャの少なくとも幅の距離だけ、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に離隔される、請求項1から3のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項5】
外側に面するシールドの表面は、第2の電極に形成されたアパーチャの幅の少なくとも1.5倍の距離だけ、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に離隔される、請求項1から4のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項6】
シールドが、第2の電極に形成され、二次シールドが、第2の電極に形成され、二次シールドが、第2の電極に形成されたアパーチャを介して電場が第1および第2の電極の間の領域に侵入するのを抑制するように構成され、二次シールドがアパーチャを囲繞する、請求項1から5のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項7】
シールドの高さが二次シールドの高さより大きい、請求項6に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項8】
シールドが第2の電極に形成され、サンプルプレートキャリアの中心がイオン光学軸に対して横方向に許容される最大にずれているときに、イオン光学軸に沿って見ると、シールドの面が第1の電極の外面よりも内側に留まるように適切な小さい距離だけシールドの面が、第2の電極と第2の電極に形成されたアパーチャとの間の境界よりも外側に離隔する、請求項1に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項9】
イオン源が、サンプルプレートに担持されたサンプルに光を発することによってサンプルをイオン化するためのレーザーを含む、請求項8に記載の飛行時間型質量分析計。
【請求項10】
イオン源がMALDIイオン源である、請求項1から9のいずれか一項に記載の飛行時間型質量分析計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行時間型(TOF)質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
以下で詳細に説明されるように、TOF質量分析のための一般的なMALDIのイオン源において、イオンはサンプルプレート上の小さい領域から生成され、その領域は一般に照射レーザー光のビームウエストのサイズ以下で、一般に5μmから500μmの直径である。最も実用的な適用において、数cmにわたり得る同じサンプルプレート上の数か所からイオンを分析すること、または、数cmの領域にわたり配置された数個のより小さいサンプルからイオンを分析することが求められる。一般にサンプルは、20mmから150mmの範囲の幅を有し得る矩形のサンプルプレート上に配置される(他の幅および形状も可能)。固定されたサンプルプレート上でレーザービーム(UV光でもよい)を走査するか、または固定されたレーザー位置に対してサンプルプレートを移動させることが可能である。ほとんどの適用において、イオン光学軸に垂直の平面上でサンプルプレートを移動させることが、より実用的である。通常これは、サンプルプレートキャリア上にサンプルプレートを取付け、サンプルプレートキャリアを横方向(たとえば、イオン光学軸に垂直な平面内の2つの直交する方向)に移動させるように構成された機構を使用することによって実現される。
【0003】
図8を参照して以下で詳細に説明されるように、イオン源のいくつかの構成において、サンプルプレートの隅部または側部/縁部に位置するサンプルから得られた質量スペクトルの大きさが、サンプルプレートの中央部に位置するサンプルから得られた質量スペクトルに比べて、著しい強度低下を被る場合があることを、本発明者らは見出した。以下で詳細に説明されるように、この強度低下は、イオン源の第1の電極と第2の電極との間で形成される引き出し領域に、サイドフィールドが侵入することによって起こされ得ると、本発明者らは信じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6888129号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の考察の観点から案出された。
【0006】
以下で詳細に説明されるように、米国特許第6888129号はTOF質量分析計のイオン源のためのレンズを提供しており、前記レンズはアパーチャを有する要素を含み、前記アパーチャは貫通チャネルを形成するようにその要素を介して延び、その結果使用の際に、イオンは要素の一方の側から要素の他方の側に、前記貫通チャネルを通過して進む。
【0007】
最も一般的には、本発明の第1の態様は:
第1の電極と、
第1の電極から離隔される第2の電極と、
を含む飛行時間型質量分析計を提供し:
質量分析計を使用しているときに、イオン源が、電圧を第1および第2の電極に印加して、第1および第2の電極間の領域に存在するイオンに影響を与えるよう、第1および第2の電極間の領域に電場を生成するように構成され、
シールドが第1の電極および/または第2の電極に形成され、そのシールドは、質量分析計を使用しているときに、第1および第2の電極の縁部間に形成された電場が第1および第2の電極間の領域に侵入するのを、抑制するように構成される。
【0008】
第1および第2の電極の縁部間に形成された抑制される電場は、電場縁部の影響を形成する場合がある。その影響が、第1および第2の電極間の領域へ、第1および第2の電極間に延びる軸に対して径方向に侵入するのを、シールドによって抑制される。第1および第2の電極間の領域(そこからの第1および第2の電極の縁部間に形成される電場の侵入が抑制される)は、外側境界(第1および第2の電極間に延びる軸に対する)を有し得る。質量分析計を使用しているとき、外側境界は、質量分析計によって形成されたイオンが達することができる限界によって定められる。
【0009】
したがってシールドは、有限長の2つの重複する電極によって自然に形成される任意の周辺の電場が第1および第2の電極間に形成される領域に侵入するのを、抑制する(好ましくは実質的に防止する)のに役立つと考えられ得る。
【0010】
第1および第2の電極の縁部間に形成された電場は、本明細書では「サイドフィールド」と称する場合がある。図8および図9を参照して以下で説明されるように、特に、第1および第2の電極が互いに横方向にずれる場合、たとえば、第1および第2の電極がMALDI/SALDIイオン源に属するような場合に、サイドフィールドが第1および第2の電極間の領域の中に侵入することによって、望ましい軌跡からイオンが逸れることで、強度損失、および/またはTOF質量分析計によって生成された質量スペクトル中の質量シフトが起こり得る。したがって、そのような場(フィールド)を抑制する(好ましくは実質的に防止する)ことによって、シールドは、TOF質量分析計によって生成された質量スペクトル中の強度損失を防ぐのに役立ち得る。
【0011】
本発明の第1の態様で提案されるシールドは、米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14とは区別される。なぜなら、質量分析計を使用しているとき、米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14は、第1および第2の電極の縁部間に形成される電場が、第1および第2の電極間の領域に侵入するのを抑制するように構成されていないからである。むしろ、米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14は、電場が「平面要素」13のアパーチャを介してサンプルプレートの前面の領域に侵入するのを抑制するように構成され(たとえば、米国特許第6888129号の1段67行から2段15行までを参照)、そのため、米国特許第6888129号の電極はサイドフィールドの侵入を受けやすい。
【0012】
以下の説明において、シールドならびに第1および第2の電極の様々な好ましい形式、形状、パラメータ、が説明される。これらの好ましい形式、形状、パラメータは、以下の任意の1つまたは複数を参照して定められ得る:
− 第1および第2の電極間に延びる軸。この軸は好ましくはイオン光学軸であり、質量分析計を使用しているとき、イオンがそれに沿って移動する軸として定められ得る。第1および/または第2の電極が、そこに形成されたアパーチャを含む場合(以下を参照)、好ましくはイオン光学軸がそのアパーチャを通って(好ましくはそのアパーチャの中心を通って)延びる。
− 内側に面するシールドの表面:これは、第1および第2の電極間に延びる軸に向かって内側に面するシールドの表面として、捉えることができる。
− 外側に面するシールドの表面:これは、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に面するシールドの表面として捉えることができる。
− シールドの高さ:これは、シールドが形成される電極上の表面から、他の電極に向かってシールドが延びる距離として捉えることができる。
− アパーチャの幅:第1および/または第2の電極が、そこに形成されたアパーチャを含む場合(以下を参照)、アパーチャの幅は、アパーチャの最も広い範囲にわたる距離として捉えることができる。アパーチャが円形である場合、幅はアパーチャの直径として捉えることができる。
− 第1および/または第2の電極の幅:これは、第1および/または第2の電極の最も広い範囲にわたる距離として、捉えることができる。
【0013】
たとえばこれらの要素が円形である場合、イオン光学軸は、第1および/または第2の電極の回転対称軸に、第1および/または第2の電極に形成されるアパーチャ(アパーチャが存在する場合)に、および/またはシールドに役立つことができる。
【0014】
シールドが円形で、イオン光学軸がシールドの回転対称軸としての役割を担う場合、イオン光学軸から内側に面するシールドの表面までの距離は、シールドの「内半径」と称され得る。同様に、イオン光学軸から外側に面するシールドの表面までの距離は、シールドの「外半径」と称され得る。
【0015】
好ましくは、シールドは、第1および第2の電極のうちの一方の表面上で形成された隆起要素であり、第1および第2の電極のうちの一方が、シールドが第1および第2の電極のうちの他方に向かって延びるように、第1および第2の電極のうちの他方に面する。
【0016】
好ましくは、シールドは第1および第2の電極間に延びる軸を囲繞する(たとえば、巻きつける)。したがって、シールドは円形(たとえば、環状またはリング状)であってよいが、他の外形(たとえば、正方形、楕円形、または実際に軸を囲繞できる任意の形状)も可能である。
【0017】
第1および/または第2の電極は、プレート状の要素であってよい。したがって第1および/または第2の電極は、2つの概ね平坦な対向する表面を有し得るが、完全性を期すために言及すると、このことは、第1および/または第2の電極の概ね平坦な対向する表面上に形成される隆起特徴部の可能性を排除しない(たとえば、以下で説明されるシールドまたは二次シールド)。非平坦な表面もまた可能である。
【0018】
第1および/または第2の電極は、そこに形成されるアパーチャを含むことができる。
【0019】
第1および/または第2の電極に形成されるアパーチャの幅は、好ましくは2mmから20mmの範囲である。疑義を避けるために言及すると、両電極がそこにアパーチャを含む場合、それらアパーチャは同じ幅/直径を有する必要はない。
【0020】
好ましくは、シールドが形成される電極は、そこにアパーチャを含む。そのようなアパーチャの幅は、好ましくは2mmから20mmの範囲である。
【0021】
しかし、疑義を避けるために言及すると、第1および第2の電極のうちの一方のみにアパーチャが形成される場合、シールドはアパーチャが形成されない電極上に形成され得る。
【0022】
第1および第2の電極は、TOF質量分析計内の任意の電極対であってよい。TOF質量分析計では、使用しているときに、第1および第2の電極間の領域に存在するイオンに影響を与えるように(たとえば、加速する、減速する、軌跡に影響を与える、焦点を集める、焦点をぼかす)電圧が印加されて、第1および第2の電極間の領域に電場を生成する。
【0023】
したがって、高さ、外側に面する表面の位置、および内側に面する表面の位置などのシールドのパラメータは、たとえばイオンがイオン光学軸に沿って移動するように、所望の電場勾配を実現するために最適化され得る。
【0024】
リフレクトロン分析器に見られるような、TOF質量分析計の電極のいくつかの対、またはいくつかの連は、電極間のサイドフィールドの侵入を最小にする目的のため、大きい外直径を有する。電極が、このような各々の対において本明細書で提案されるシールドを実装することによって、このような電極の外直径を大幅に縮小することができ、シールドはサイドフィールドの侵入を防ぐのに役立つ。このことは、以前ではリフレクトロン電極の大きい外直径が要求されていた。イオンレンズの構成を制御するシールドの適切な設計は、電極の機能を低い印加電圧で実現することも可能にし得る。
【0025】
シールドの外形は、質量分析計の他の構成要素の外形、特に、目的によって変化する第1および第2の電極の外形によって、大きく変わり得る。したがって、シールドは様々な断面(たとえば、正方形、隆起状など)を有し、質量分析計の他の構成要素の外形によって、電極の表面上で形成される様々な形状(たとえば、円形、楕円形、正方形など)を形成し得る。
【0026】
実際にシールドの外形は、所望の効果を得るためにシールドの外形を変化させる(および任意選択で、質量分析計の他の構成要素の外形を変化させる)一方で、たとえばシミュレーションを実行することによって実験的に最適化され得る。
【0027】
好ましくは、内側に面するシールドの表面は、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に、シールドが形成される電極の中間部分(すなわち、内側に面するシールドの表面内の電極の一部)がイオン光学要件(たとえば、シールドが形成される電極が引き出し電極である場合、抽出レンジングを制御するよう)にしたがった形状にされるよう、十分大きく離隔される。
【0028】
この目的で、内側に面するシールドの表面は、少なくとも第1および/または第2の電極に形成されるアパーチャの幅分だけ、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に離隔され得る。アパーチャおよびシールドが円形である場合、これはシールドの内半径がアパーチャの半径の少なくとも2倍であることと同等であろう。
【0029】
同様に、シールドが形成される電極にアパーチャが形成される場合、内側に面するシールドの表面は、好ましくは、電極と電極に形成されるアパーチャとの間の境界から、アパーチャの幅の少なくとも半分の距離だけ、外側に離隔される。アパーチャおよびシールドが円形である場合、これもまたシールドの内半径がアパーチャの半径の少なくとも2倍であることと同等であろう。
【0030】
シールドが形成される電極と、その電極に形成されるアパーチャとの間の境界は、シールドが形成される電極がアパーチャと交わる境界として、捉えることができる。シールドがこの境界から外側に離隔する場合、内側に面するシールドの表面内の電極の中間部分が必要であり、電極の中間部分はイオン光学要件にしたがった形状にされ得る。
【0031】
にもかかわらず、質量分析計を使用しているとき、第1および第2の電極の縁部間に形成される電場が、第1および第2の電極間の領域に侵入するのを効果的に抑制するために、外側に面するシールドの表面が適切に境界から離隔されるのであれば、内側に面したシールドの表面が、シールドが形成される電極とその電極に形成されるアパーチャとの間の境界から外側に離隔することが必須ではないことを、当業者は理解するであろう。
【0032】
したがって、質量分析計を使用しているとき、第1および第2の電極の縁部間に形成される電場が、第1および第2の電極間の領域に侵入するのを効果的に抑制するために、外側に面するシールドの表面が電極とアパーチャとの間の境界から適切に離隔されるのであれば、内側に面するシールドの表面が、シールドが形成される電極とその電極に形成されるアパーチャとの間の境界に位置し得る。これに関連して、米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14の外側に面するシールドの表面が、「平坦要素」13と「平坦要素」13のアパーチャとの間の境界まで近すぎて、サイドフィールドの侵入を抑制するには効果的ではないことに留意されたい。
【0033】
質量分析計を使用しているとき、第1および第2の電極の縁部間に形成される電場が第1および第2の電極間の領域に侵入するのを、効果的に抑制するために、外側に面するシールドの表面が、第1および第2の電極間に延びる軸(たとえば、イオン光学軸)から、少なくとも軸に対して最も遠い距離の2倍だけ、外側に離隔され得る。離隔は、質量分析計が使用されるときに質量分析計によって形成されるイオンが、第1および第2の電極間の領域に達することができる距離である。これは通常、所与の質量分析計用に直接計算する。たとえば、第1および第2の電極が、パルス抽出(以下を参照)を実行する質量分析計のイオン源に含まれる場合、イオンが形成される時間と引き出し電場が生成される時間との間の知られている所定の時間期間にしたがって、かつイオン源によって形成されたイオンの知られている最大速度(通常1500m毎秒を超えない)にしたがって、質量分析計によって形成される最も遠い距離のイオンが決定される。
【0034】
シールドが円形である場合(上記を参照)、シールドの外半径の最小値Rominは、下記の数式によって定められ得る。
【0035】
Romin=G−hs+hc+Ri−wmin
ここで、Gは第1および第2の電極間の距離、hsはシールドが形成される電極上に形成される二次シールドの高さを(以下を参照)、hcは第1および第2の電極間の絶縁破壊を防ぐための、シールドとシールドに面する電極との最小間隔(たとえば、第1および第2の電極間に印加される所与の最大電位差のための)を、Riはシールドの内半径を、およびwminは実際に製造するために推奨されるシールドの最小幅を表わす。たとえば、20mmの高さを有するシールドのwminは2mmで、10mmの高さを有するシールドのwminは1.1mmとなり得る。
【0036】
多くの場合、wminは少なくとも1mmとなる。
【0037】
パラメータが非対称である場合、上記の数式を使用する計算は、各パラメータに平均値を使用して行うことができる。たとえば楕円形のシールドでは、数式はシールドの最も長い範囲と最も短い範囲との両方について繰り返され得る。
【0038】
上記の考察を考慮すると、ほとんどの外形について、内側に面するシールドの表面は、第1および/または第2の電極に形成されるアパーチャの幅の少なくとも1.5倍分だけ、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に離隔され得る。アパーチャおよびシールドが円形である場合、シールドの外半径がアパーチャの半径の少なくとも3倍であることと同等であろう。
【0039】
同様に、シールドが形成される電極にアパーチャが形成される場合、外側に面するシールドの表面は、好ましくは、シールドが形成される電極とその電極に形成されるアパーチャとの間の境界から、アパーチャの少なくとも幅の距離だけ、外側に離隔される。アパーチャおよびシールドが円形である場合、シールドの外半径がアパーチャの半径の3倍であることと同等であろう。
【0040】
いくつかの実施形態において、外側に面するシールドの表面は、シールドが形成される電極の外側の境界と一致して位置され得る。
【0041】
シールドは、所望のシールド効果を得るために必要と思われる任意の高さとしてよく、一般に、広くて低いシールドは、ある状況において高くて狭いシールドと同様の効果を有し得ることに留意されたい。しかし、これは厳格な決まり事ではなく、たとえば、パルス抽出(以下を参照)を実行するイオン源に含まれる第1および第2の電極のために、引き出し電場が生成されるのに先立ち、広くて低いシールドが高くて狭いシールドと同様な効果を有し得る。しかし、一旦引き出し電場が生成されると、異なる条件が作り出され(たとえば、レンジング効果による)、その条件はシールドの高さを決定するときに、考慮に入れるべきである。
【0042】
好ましくは、第1および第2の電極間の電気的な絶縁破壊を避けるように、シールドとシールドに面する電極との間の最小間隔は、少なくとも2mmである(一般に第1および第2の電極間の電圧は2kVから5kVに達し得る)。
【0043】
好ましくは、シールドは第1の電極または第2の電極のうちの1つに形成される。しかしいくつかの実施形態において、シールドは、第1の電極上に形成された第1のシールド要素と、第2の電極上に形成された第2のシールド要素とを備えることができる。第1のシールド要素および/または第2のシールド要素は、単一の電極を参照した上述したようなシールドの方法で構成されてよく、単一の電極を参照した上述したような高さと等しく組み合わされた高さを有してよい。
【0044】
好ましくは、二次シールドはシールドが形成される電極上に形成される。好ましくは、二次シールドは、シールドが形成される電極に形成されるアパーチャを介して、電場が第1および第2の電極間の領域に侵入するのを抑制するように構成される。上記で提案されたシールドに二次シールドが加えられ、両方のシールドが存在する場合、上記で提案されたシールドは一次シールドと称され得ることに留意されたい。
【0045】
好ましくは、二次シールドは、他方の電極に向かって延びるように、(一次)シールドが形成される電極の表面上に形成される隆起要素である。好ましくは、二次シールドはシールドが形成される電極に形成されるアパーチャを囲繞する(たとえば、巻きつける)。好ましくは、二次シールドは、シールドが形成される電極と、その電極に形成されるアパーチャとの間の境界に位置される。そのため二次シールドは、たとえば米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14と同様、チューブの形状を有し得る。したがって、二次シールドは中空で細長い部材の形状を有してよく、二次シールドの高さはアパーチャの幅の少なくとも8/10(より好ましくはアパーチャの幅の9/10、または少なくともアパーチャの幅)と等しくてよい。
【0046】
二次シールドに関して、以下のパラメータを定めることが望ましい:
− 二次シールドの高さ:これは、二次シールドが形成される電極上の表面から二次シールドが他の電極に向かって延びる距離として、捉えることができる。
【0047】
二次シールドが存在する場合、(一次)シールドの高さは、好ましくは二次シールドの高さより大きい。しかし、第1および第2の電極がパルス抽出(以下を参照)を実行する質量分析計のイオン源に含まれる場合、定めるべきより重要な基準は、引き出し電場が生成された後に引き出し領域で望ましいレンジング効果を得るために必要な(一次)シールドの高さである。
【0048】
第1および/または第2の電極は円形であり得るが、やはり他の外形も可能である。シールドが形成される電極が円形である場合、第2の電極は20mmから100mmの範囲の半径を有し得る。
【0049】
好ましくは、第1および第2の電極が、質量分析計のイオン源に含まれる。
【0050】
第1および第2の電極が質量分析計のイオン源に含まれる場合、質量分析計を使用しているときに、第2の電極のアパーチャを介して引き出し領域からイオンを抽出するよう、第1および第2の電極間の引き出し領域で引き出し電場を生成するために、第1および第2の電極に電圧を印加するようにイオン源が好ましくは構成される。
【0051】
これに関連して、引き出し領域からイオンを抽出する役割という点で、第2の電極は引き出し電極と称され得る。したがって本明細書では、第2の電極および引き出し電極という用語は、交換可能で使用され得る。
【0052】
したがって本発明の第1の態様は:
第1の電極と、
そこにアパーチャが形成され、第1の電極から離隔される第2の電極と、
を含むイオン源を含む飛行時間型質量分析計を提供し:
質量分析計を使用しているときに、第2の電極のアパーチャを介して引き出し領域からイオンを抽出するよう、第1および第2の電極間の領域に引き出し電場を生成するために、第1および第2の電極に電圧を印加するようにイオン源が構成され、
第1の電極および/または第2の電極上にシールドが形成され、そのシールドは、質量分析計を使用しているときに、第1および第2の電極の縁部間に形成された電場が、第1および第2の電極間の領域に侵入するのを抑制するように構成される。
【0053】
第1および第2の電極が、質量分析計のイオン源に含まれる場合、第1の電極はサンプルを担持するためのサンプルプレートであり得る。サンプルプレートは、サンプルプレートの領域上に配置される複数のサンプルを担持するためのものであってよい。この領域は、たとえば2cm以上の長さの領域に広がり得る。
【0054】
サンプルプレートは、サンプルプレートキャリアに取付けられてよい。サンプルプレートキャリアが導電性である場合、そのために第1の電極はサンプルプレートキャリアを追加的に含むことができる。
【0055】
質量分析計は、サンプルプレートキャリア(したがってサンプルプレート)をイオン光学軸に対して横方向にずらすために、サンプルプレートキャリア(したがってサンプルプレート)をイオン光学軸に対して横方向に移動させるように構成される機構を含み得る。
【0056】
第1および第2の電極が質量分析計のイオン源に含まれ、第2の電極が、そこに形成されたアパーチャを有する場合、シールドは第2の電極上に好都合に形成されるが、シールドは第1の電極に形成されることも可能となる。
【0057】
シールドが第2の電極に形成される場合、イオン光学軸に沿って見るとき、またサンプルプレートキャリアの中心部がイオン光学軸に対して、横方向に許容最大にずれているとき、好ましくは内側に面するシールドの表面は、第2の電極と第2の電極に形成されるアパーチャとの間の境界から、内側に面するシールドの表面が第1の電極(サンプルプレートおよびサンプルプレートキャリアも含み得る。上記参照)の外側の境界内に留まるよう適切な小さい距離だけ、外側に離隔する。この、内側に面するシールドの表面の離隔は好ましい。なぜなら、イオン光学軸に沿って見るとき、内側に面する表面が第1の電極の外の境界の外側に落ちることができる場合に、サイドフィールドは容易に引き出し領域に侵入できるからである。(イオン光学軸に対するサンプルプレートキャリアの)許容された横方向最大のずれは、サンプルプレート上の末端の分析点のサンプルがイオン光学軸上にある、横方向の最大のずれによって決定され得る。
【0058】
好ましくは、イオン源は、サンプルに光を発することによってサンプルプレート上に担持されたサンプルをイオン化するための、レーザーを含む。好ましくは、レーザーは、サンプル材料に光のパルスを発することによってサンプルをイオン化するためのものである。レーザーによって生成される光は、好ましくはUV光であるが、IR光もまた可能である。
【0059】
しかし、サンプル材料は他の技法によってイオン化されてよい。
【0060】
イオン源はパルス抽出を実行するように構成され得る。その場合、イオン源は、イオンが生成された後(たとえば、レーザーによって)、所定の時間期間(10nsから1μsであり得る)に引き出し電場を生成するように構成され得る。引き出し電場が生成される前に、第1および第2の電極は同じ電位(たとえばこの電位は10kVより高く、たとえば〜20kV)を保持し得る。所定の時間期間は、生成されたイオンの運動エネルギーの広がりに最適に焦点を合わせるよう選択されてよい。
【0061】
しかし、パルス抽出は不可欠ではない。なぜなら、他の実施形態において、イオン源は、イオンの形成中とイオンの抽出中の両方に存在する引き出し静電場を生成するように構成され得るからである。
【0062】
イオン源は、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法)イオン源であり得る。MALDIイオン源に対して、サンプル材料は、生体分子(たとえばプロテイン)、有機分子、および/またはポリマーを含むことができる。サンプル材料は、サンプル材料と光吸収マトリックスとの(好ましくは結晶化された)混合体に含まれ得る。
【0063】
しかし、イオン源は、上述のように構成された第1および第2の電極を有する任意のイオン源とすることができる。たとえばイオン源は、SALDI(表面支援レーザー脱離/イオン化)イオン源、マトリックスを利用しないレーザー脱離イオン源、または二次イオン質量分析(SIMS)イオン源(レーザーの代わりにイオンビームを使用する)としてもよい。
【0064】
質量分析計は、イオン源から生成されたイオンを検出するイオン検出器を含むことができる。イオン検出器は、質量分析器の一部を形成する。
【0065】
本発明の第1の態様は、上述のイオン源もまた提供し得る。
【0066】
本発明の第1の態様は、飛行時間型質量分析計の操作方法もまた提供し得る。方法は、上述の飛行時間型質量分析計を実行する、または飛行時間型質量分析計に対応する、任意の方法ステップを含みことができる。
【0067】
本発明はまた、明白に容認できない、または明確に避けられる組み合わせ以外の、上述の特徴の任意の組み合わせを含む。
【0068】
本提案の例は、添付の図面を参照して、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明の実施形態ではないが本発明の理解の助けとなる、例示的なTOF質量分析計を示す図である。
図2】本発明の実施形態ではないが本発明の理解の助けとなる、別の例示的なTOF質量分析計を示す図である。
図3a図2のTOF質量分析計のイオン源の、引き出し電極のイオン光学軸およびサンプルプレートに沿った図である。イオン光学軸はサンプルプレートの中央部と整合されている。
図3b図2のTOF質量分析計のイオン源の、引き出し電極のイオン光学軸およびサンプルプレートに沿った図である。イオン光学軸はサンプルプレートの末端の分析点と整合されている。
図4a図2のTOF質量分析計のイオン源の、サンプルプレートおよび引き出し電極の周辺領域の静電モデルから得られた電場の、輪郭の断面を示す図である。イオン光学軸はサンプルプレートの中央部と整合されている。
図4b図2のTOF質量分析計のイオン源の、サンプルプレートおよび引き出し電極の周辺領域の、静電モデルから得られた電場の、輪郭の断面を示す図である。イオン光学軸はサンプルプレートの末端の分析点と整合されている。
図5a】イオン源が、形成された環状シールドを有する引き出し電極を含む、例示的なTOF質量分析計を示す図である。引き出し電極は平面のアパーチャを含む(二次シールドなし)。
図5b】イオン源が、形成された環状シールドを有する引き出し電極を含む、例示的なTOF質量分析計を示す図である。引き出し電極は、引き出し電極を介して延びるアパーチャを有し、貫通チャネルを形成する(二次シールド有り)。
図6図5のシールドを定める、好ましい制限およびパラメータ値を示す図である。
図7a図5bのイオン源の、サンプルプレートおよび引き出し電極の周辺領域の静電モデルから得られた電場の、輪郭の断面を示す図である。イオン光学軸はサンプルプレートの中央部と整合されている。
図7b図5bのイオン源の、サンプルプレートおよび引き出し電極の周辺領域の静電モデルから得られた電場の、輪郭の断面を示す図である。イオン光学軸はサンプルプレートの末端の分析点と整合されている。
図8a図2のイオン源を有する質量分析計を使用して得られたCHCAマトリックスの、ペプチドの質量スペクトル(最大信号で正規化された)を示す図である。イオン光学軸はサンプルプレートの中央部に整合されている。
図8b図2のイオン源を有する質量分析計を使用して得られたCHCAマトリックスの、ペプチドの質量スペクトル(最大信号で正規化された)を示す図である。イオン光学軸はサンプルプレートの末端の分析点に整合されている。
図9a図5bのイオン源を有する質量分析計を使用して得られたCHCAマトリックスの、ペプチドの質量スペクトル(最大信号で正規化された)を示す図である。イオン光学軸はサンプルプレートの中央部に整合されている。
図9b図5bのイオン源を有する質量分析計を使用して得られたCHCAマトリックスの、ペプチドの質量スペクトル(最大信号で正規化された)を示す図である。イオン光学軸はサンプルプレートの末端の分析点に整合されている。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下の記載は総じて、サンプルプレートの上に位置される引き出し電極を有するイオン源を含む飛行時間型(TOF)質量分析計に関する本提案の例を説明する。示された例において、引き出し電極はアパーチャを有するプレート状の要素であり、アパーチャを介してイオンが抽出される。また引き出し電極は、そこに形成されるシールドを有し、シールドはサンプルプレートに向かって延びる。シールドの形状は、好ましくは引き出し電極の特定の外形に対して最適化され、サイドフィールドの侵入を制御し、好ましくは引き出し電場前および引き出し電場後は軸対称で、サンプルプレートキャリアの位置に対して(引き出し電極に対して)不変であることを確保する。
【0071】
本発明は、飛行時間型(TOF)質量分析計のためのイオン光学システムに関係するものと考えられてよい。
【0072】
図1に示されるように、一般にTOF質量分析計は、引き出し領域1、加速領域2、フィールドフリー領域6、および関連するTOF質量分析器(図示せず)を備える。質量分析器は、たとえばリニアまたはリフレクトロンであってよい。
【0073】
引き出し領域は、一般に第1の電極3と第2の電極4との間で形成される。加速領域は、一般に第2の電極4と第3の電極5との間で形成される。
【0074】
簡便な形状として、第2の電極4および第3の電極5は、イオンが通過できるよう適切なサイズの中央アパーチャを有する平坦で平行のプレートである。
【0075】
MALDIイオン源において、第1の電極3はサンプルプレートであり得る。MALDI処理は、生体分子および大きい有機分子の気化およびイオン化を容易にするために、しばしば使用される。
【0076】
一般のMALDIイオン源において、分子はUV光を吸収するマトリックスに組込まれる。UVレーザーが、MALDI処理を開始するためにサンプルプレート3上に位置されたサンプルに発せられるとき、イオン化した中性の分析対象物のプルーム、およびマトリックス分子は、サンプルプレート3から放出される。
【0077】
引き出し領域1に引き出し電場を生成するために、適切な電圧を第1および第2の電極3、4に印加することによって、イオン化した分子は引き続き、引き出し電極とも称されることが多い第2の電極4のアパーチャを介して、引き出し領域1から抽出される。引き出し電極4と第3の電極5との間の加速領域2に形成された場(フィールド)によって、イオンはさらに加速される。第3の電極は接地電位であってよく、イオンは第3の電極を通過して、質量分析計たとえば関連するリニアまたはリフレクトロン質量分析器のフィールドフリー領域6に入る。このため、第3の電極5は接地電極と称されることが多い。
【0078】
簡易なMALDIイオン源において、サンプルプレート3と引き出し電極4との間で形成される、一般に2kVから5kVの引き出し静電場によって、イオンは迅速に抽出され得る(疑義を避けるために言及すると、この場(フィールド)は、引き出しプレートに印加された目下の電圧を下げることによって実現され得る)。抽出されたイオン経路は、次に引き出し電極4のアパーチャを通過し、接地電極5のアパーチャを通過してフィールドフリー領域6および関連する質量分析器に入る前に、引き出し電極4と接地電極5との間の加速領域に形成される場(フィールド)によって、さらに加速され得る。
【0079】
しかし、TOF質量分析計の多くのMALDIイオン源では、イオン源は、イオンが持つ運動エネルギーの広がりを集束することによって計器質量分解能を改善するため、パルス抽出として知られている技法を実行する。そのような技法では、サンプルプレート3と同じ電位の引き出し電極4の電位を維持することによって、分解能は改善され得、イオンを形成する一方でフィールドフリー領域を作り出す。次に、所定の短い遅延の後で、たとえば2kVから5kVの間で引き出し電極4にパルスを与え、引き出し電場を生成する。短い遅延は、対象のイオンが持つ運動エネルギーの広がりを集束するために最適な時間期間となるよう選択され得る。実質的には、一般に10nsから数μsの適切な遅延により、低速のイオンは十分な追加の位置エネルギーを受け取ることができ、通常は検出器であるイオン源からある距離を飛んだ後の高速イオンに追いつく。
【0080】
簡易な形式において、引き出し領域および加速領域で使用される電極4、5は、中央のアパーチャ(中央のアパーチャはグリッド入り、またはグリッドなしでよい)を有する平坦で平行のプレートであってよい。引き出し電極4のアパーチャは、たとえば2mmから20mmと、一般にかなり小さい。なぜなら、サイズが数mmを超えて大きくなると、引き出し電極4と接地プレート5との間の電位差によって作られる電場は、引き出し電極のアパーチャを介して延び、サンプルプレート3の直前の引き出し領域1の一部に入る。アキシャルフィールドの侵入と称され得るこの効果は、サンプルプレート3の前のフィールドフリー領域を損ねて(引き出し電場を生成する前の、パルス抽出に対して)、したがって、イオンが望ましくない時間に抽出され、および/または、イオンが望ましくない軌跡を有することになる場合があり、それは質量分析器の分解能および質量分析器の感度の両方を著しく低下させ得る。したがって、通常は小さいアパーチャを維持することが望ましい。
【0081】
しかし、引き出し電極4がより大きいアパーチャを有する利点がある。たとえば、レーザー光ビームをイオン光学軸に近いイオン源に導くことと、サンプルプレート3をイオン光学軸に近い角度でも見ることとの両方が可能であるのが望ましい場合があり、その両方がより大きいアパーチャ直径を必要とする。さらに、イオンレンズを介して抽出された、帯電した分析対象物にともなって、サンプルから放出される多量の中性分析対象物およびマトリックスが存在し、それらが引き出し電極4の要素を急速に汚染する場合があり、イオン源の性能に悪影響を与え得る。この汚染が増進する率は、より大きいアパーチャによって低減させることができる。
【0082】
米国特許第6888129号では、引き出し電極のアパーチャが貫通チャネルの形状で延ばされる場合、アキシャルフィールドの侵入は、より大きいアパーチャを用いて許容できるレベルに制御され得る、と報告された。図2は、図1のTOF質量分析計を第2の電極7を有するように修正した図である。第2の電極7のアパーチャは、サンプルプレート3の方向に延びるチューブ11の形状に延ばされ、その結果イオンは、前記チャネルを通過することによって、第2の電極7の一方の側から対向する側まで通過する。米国特許第6888129号の教示のように、チャネル長さは、アパーチャの直径よりわずかに小さい、等しい、またはより大きくてよい。米国特許第6888129号での説明のように、チューブ11は、第2の電極7のアパーチャを介して加速領域2から引き出し領域1に入る場(フィールド)の侵入を、パルス抽出の効果を損ねずに許容できるレベルまで低減するのに役立つ。実際、引き出し電極7を介していくらかの残された場(フィールド)の侵入が常に存在し、引き出し電極7のより大きいアパーチャの利益と、イオン源の性能に対する有害な影響との間で妥協を実現する必要がある。米国特許第6888129号によって提案された、延ばされたアパーチャを提供されたチューブ11は、本明細書では二次シールドと称され得る。
【0083】
一般的なMALDIイオン源において、イオンはサンプルプレート3上の小さい領域から生成され、その領域は一般に照射レーザー光のビームウエストのサイズ以下で、一般に5μmから500μmの直径である。最も実用的な適用において、数cmにわたり得る同じサンプルプレート上の数か所からイオンを分析すること、または、数cmの領域にわたり配置された数個のより小さいサンプルからイオンを分析することが求められる。一般にサンプルは、20mmから150mmの範囲の幅を有し得る矩形のサンプルプレート上に配置される(他の幅および形状も可能である)。固定されたサンプルプレート上でレーザービーム(UV光でもよい)を走査するか、または固定されたレーザー位置に対してサンプルプレートを移動させることが可能である。ほとんどの適用において、イオン光学軸に垂直の平面上でサンプルプレートを移動させることが、より実用的である。通常このことは、サンプルプレートキャリアを横方向(たとえば、イオン光学軸に垂直な平面内の2つの直交する方向)に移動させるように構成された機構を使用し、サンプルプレートキャリア上にサンプルプレートを取付けることによって実現される。
【0084】
図3aは、イオン光学軸に沿って見た図2の引き出し電極7を示し、引き出し電極7のアパーチャはサンプルプレート3の中央部に整合され、すなわち横方向のずれがゼロである。
【0085】
図3bは、サンプルプレートキャリア(したがってサンプルプレート3)が第2の電極7に対して許容最大に横方向にずれたときの、イオン光学軸に沿って見た、図2の引き出し電極7を示す。したがって、引き出し電極7のアパーチャを介して延びるイオン光学軸は、サンプルプレート3の1つの隅部の末端計測位置に整合される。
【0086】
図3を参照すると、サンプルプレートキャリアが、ずれがゼロ(中央整合)位置から横方向最大のずれまで移動しているので、サンプルプレート3と引き出し電極7との間に形成される場(フィールド)は、サンプルプレート3と引き出し電極4との間のサイドフィールドの侵入のために乱される場合がある。引き出し電極7とサンプルプレート3との間が完全には重複しないとき、この影響はさらに顕著である。
【0087】
この影響は図4に図示される。図は、サンプルプレート3および引き出し電極7の周辺領域における図2のイオン源の静電モデルの、場(フィールド)の輪郭を示す。図4で示されるように、サンプルプレート3が引き出し電極7の軸の中央部にある(横方向のずれがゼロである)とき、場(フィールド)は対称であるが、サンプルプレート3が引き出し電極7に対して横方向にずれているときは非対称である。
【0088】
上述のように、サンプルプレート3と引き出し電極7との間のサイドフィールドの侵入は、サンプルプレートキャリアの位置に対して非対称で変化することから、アキシャルフィールドの侵入よりも問題である可能性がある。
【0089】
サイドフィールドの侵入の影響は、サンプルプレート3と引き出し電極7との間のパルス抽出場(フィールド)の生成の前および間で、顕著となり得る。理想的には、引き出し領域1で初めにイオンが形成される領域は、引き出し電極7の縁部とサンプルプレート3(およびサンプルプレートキャリア)との間で形成される、いかなるサイドフィールドの侵入の影響をも完全に受けない。理想的には、フィールドフリー領域は、抽出場(フィールド)が形成される前の時間期間(すなわち抽出前の期間)の間に、最も速く動く対象イオン(たとえば最も質量が小さい)が移動する距離まで広がる。さもなければ、非線対称の電気侵入の影響が、イオンの軸方向の広がりを起こし、分解能の損失につながり、イオンの逸脱と偏向は感度の損失につながる。
【0090】
パルス抽出の間、サイドフィールドの侵入は、サンプルプレート3と引き出し電極7との間の電場によって形成されるレンズを歪ませ得る。これは集束効果に悪影響を与える場合があり、次には望ましくない収差を起こし、やはり分解能および感度の損失につながる。同様の問題が、イオンの形成および抽出の両方の間に存在する引き出し静電場を生成するように構成されるイオン源にも起こり得る。
【0091】
したがって、抽出前およびパルス抽出の期間の間の、サンプルプレート3が移動するときの、制御されず変化するサイドフィールドの侵入は、サンプルプレート3と引き出し電極7との間の電位を歪ませる場合がある。イオンビーム経路の、このような制御されず歪んだ電位は、サンプルプレートキャリアの位置が変わるとき、質量分析器の分解能と質量分析器の感度の両方に、著しい差異を引き起こし得る。
【0092】
以下の例は、サンプルプレートが第2の電極7(/イオン光学軸)に対して横方向にずれるときに計器の性能の変化を低減するよう(好ましくは著しい変化のないよう)イオンが横断する領域へのサイドフィールドの侵入を低減することと、得られた質量スペクトルの質を改善すること(好ましくは、得られた質量スペクトルの質がサンプルプレート3上のサンプルの位置に対して不変であること)とを目的とする。
【0093】
それに応じて、図5aを参照すると、イオン源が引き出し電極9を有するTOF質量分析計が提供される。引き出し電極9は、そこに形成されたアパーチャを有するプレート状の要素である。隆起要素であるシールド10は、引き出し電極9の表面に形成され、引き出し電極9の表面は、シールド10がサンプルプレート3に向かって延びるようにサンプルプレート3に面する。シールド10は、アパーチャを介して延びるイオン光学軸を囲繞する。シールド10は、引き出し電極9とアパーチャとの間の境界10aから、外側に向かって離隔する。このように、シールド10は、サンプルプレート3の縁部と引き出し電極4との間に形成される電場が、引き出し領域1に侵入するのを抑制するのに役立つ。同様にこのことは、サンプルプレートキャリア(したがってサンプルプレート3)が第2の電極9(およびイオン光学軸)に対して移動するときに、引き出し領域1(具体的には、質量分析計が使用されるときにイオンが存在する引き出し領域1の部分)を、サイドの侵入場(フィールド)の変化から保護するのに役立つ。
【0094】
そのため、引き出し電極9のシールド10は、抽出前場(フィールド)およびパルス抽出場(フィールド)における著しい変化を防ぐのに役立ち、したがって、サンプルプレートキャリア(したがってサンプルプレート3)の位置が変わるときに、質量分析器の分解能および質量分析器の感度を維持するのに役立つ。
【0095】
シールド10は、図5aで示されるように、電極の平坦面を越えて延びないアパーチャを組込む引き出し電極9(二次シールドなし)の一部として、または、図5bに示されるようにチューブ11’の形状の貫通要素を提供するための、電極の平坦面を越えて延びるアパーチャを組込む引き出し電極9’の一部として、両方に組込まれ得る。
【0096】
図5bのチューブ11’は、本明細書では二次シールドと称され得る。ここで、二次シールドは、電場が、引き出し電極9’で形成されるアパーチャを介して引き出し領域1に侵入するのを抑制するように構成される。
【0097】
シールド10の好ましい形状は円形で、ここでは引き出し電極9のアパーチャと同軸の環状リングとして提供される。しかし、実際にはシールドは円形である必要はなく、正方形、矩形、または別の形状を有してよい。
【0098】
シールドを定めるパラメータは、その高さ(サンプルプレート3に面する引き出し電極9の表面の上)を含むことができ、シールドが円形であるときは、その内半径および外半径を含むことができる。これらのパラメータは互いに完全には独立しておらず、好ましくはシールドが効力をもつ特定の範囲内にある。質量分析計をサンプルプレートキャリア(したがってサンプルプレート3)の横方向に最大のずれまで使用しているときに、パルス抽出の間にイオンを集束するために使用される引き出し電場の形を著しく歪ませることなく、イオンが存在する引き出し領域1の一部に入るサイドフィールドの侵入を防ぐために、このような形状であるシールド10は非常に好ましい。
【0099】
一般に、シールド10の内半径は、サンプルプレート3/サンプルプレートキャリアのサイズおよび形状と、シールド10の高さとによって決定され得る。シールド10の外半径は、他の計器の制約内で、サイドフィールドの侵入を制御するために最適化され得る。
【0100】
シールドの内半径は、サンプルプレートが横方向の最大許容のずれにあるとき、内側に面するシールド10の表面がサンプルプレートキャリアの境界内にある(イオン光学軸に沿って見たとき)ことが好ましい。なぜなら、内側に面するシールド10の表面がこの境界の外側にある場合(イオン光学軸に沿って見たとき)、サイドフィールドは容易に引き出し領域に侵入するからである。小さい値の内半径が使用されると、サンプルプレート3と引き出し電極9との間で生成される引き出し電場によって形成される、レンズの形状を定めるのに望ましい場合がある。そのための要件は、たとえば、引き出し電極9が図5aのような平面アパーチャを有するか、または図5bのようなチューブ11’を有するかによる、特定のイオン源の外形に大きく依存する。
【0101】
上記の段落において、サンプレートキャリアが導電性で、したがって第1の電極がサンプルプレート3と一緒に形成され、サンプルプレートキャリアが第1の電極の外側の境界を提供するものと仮定した。しかし、これは他の例においては必要とされない。
【0102】
シールドの内半径および高さは、サイドフィールドの侵入を制御するために最適化され得る。一般に、制限内において、より広くて低いシールドは、より高くて狭いシールドと同様の効果を有する。したがって、シールド10、10’の外径および高さの制限は、特定のイオン源の外形によって決定され得る。
【0103】
シールド10、10’の高さは、サンプルプレート3と引き出し電極4との間の電気的な絶縁破壊を避けるよう、シールド10、10’とサンプルプレート3との間の間隔が少なくとも2mmであることが好ましく、それは一般に、それらの間の電位差が2kVと5kVとの間までであり得る。サンプルプレートキャリア(したがってサンプルプレート3)を移動させるために使用される機構に関して、シールド10、10’とサンプルプレート3との間の最小間隔を課す、他の実施上の問題もまた存在し得る。さらに、MALDI質量分析計は、サンプルを画像化することができる視覚システムを組入れることが多く、好ましくはそこへの照射はサンプルプレート3に対してローアングルの入射で向けられる。このことは、シールド10、10’とサンプルプレート3との間に数mmの間隔を要求する場合があり、採用する特定の照射システムに依存する。
【0104】
上述したパラメータの、いくつかの好ましい制限および値が図6に示される。図の中で引き出し電極9はチューブ11’のアパーチャを有するものと仮定する。この例において:シールドの高さはチューブ11’の高さに拘束され、サンプルプレート3と2mmの間隔を有する。サンプルプレートキャリアが第2の電極に対して横方向に許容最大のずれであるとき、シールドの最大内半径は内側に面するシールドの表面に対する好ましい要件(上述)によって定められてサンプルプレートキャリアの外側の境界内に留まる。シールドの最小内半径は、引き出し領域のイオン光学レンジングを制御するために最適化され得る。シールドの最大外半径は引き出し電極の外半径によって定められる。シールドの最小外半径は所与のシールド高さに対してサイドフィールドの侵入を制御するために最適化され得る。したがって、図6のハッチの範囲内のシールドを定めるパラメータの任意の組み合わせは、サイドフィールドの侵入を制御するために好ましい場合があるが、最も好ましい値は図6のハッチの範囲内の実線によって定められる。このラインはシールドを定めるパラメータの組み合わせを定めて、静電モデリングによって確立され、引き出し領域内のイオン形成および引き出し領域へのサイドフィールドの侵入を最小にする。もちろんこの線は、ここで例として示されるイオン源の設計に固有のものであり、同様の分析が、他のイオン源の外形に対して最適な場(フィールド)の侵入制御を実現するためのパラメータを定めることを必要とする。
【0105】
図6のプロットは、高さに対する最小外半径を曲線で示す。プロットは、高さを調整してその高さに対する(他のパラメータに対して最適化された)最適な最小外半径を計算することによってもたらされた。
【0106】
図7は、サンプルプレート3および引き出し電極9’の周辺領域における、図5bの引き出し電極9’を組入れたイオン源の静電モデルでの、場(フィールド)の輪郭を示す。この図で示されるように、サンプルプレート3が引き出し電極軸の中央部にあるとき、およびサンプルプレート3が引き出し電極9’に対して横方向にずれるとき、場(フィールド)はいずれも対称である。サンプルプレートの位置へのこの無感応は、まさに引き出し電極に入るサイドフィールドの侵入を防ぐシールドによるものである。
【0107】
図8は、図2の引き出し電極7を含む(チューブ11を有するがシールド10を欠く)イオン源を有する質量分析計を実験的に使用して得られた、1−5kDaの範囲にあるペプチドの質量スペクトルを示す。質量分析計は、サンプルプレートの中央部に位置されたサンプルを伴って最適化/調整された。
【0108】
図8aおよび図8bは、サンプルプレートの中央部および隅部からそれぞれ得たスペクトルを示す。図8に示されるように、サンプルプレートの隅部で得られた信号の大きさは、サンプルプレートの中央部での大きさに対して概ね90%の強度損失を被る。
【0109】
図9は、引き出し電極9’を含む(チューブ11’、シールド10’を有する)イオン源を有する質量分析計を実験的に使用して得られた、同じペプチドの質量スペクトルを示す。質量分析計は、やはりサンプルプレートの中央部に位置されたサンプルを伴って最適化/調整された。図9aおよび図9bは、プレートの中央部および隅部からそれぞれ得たスペクトルを示す。図9に示されるように、今回サンプルプレートの隅部で得られた信号の大きさは、サンプルプレートの中央部での大きさに対して、著しい強度損失または強度分布の歪みが見られなかった。
【0110】
本明細書および特許請求の範囲に使用されるとき、用語「備える(comprise)」ならびに「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」およびその変形は、特定の特徴、ステップまたは整数が含まれることを意味する。それらの用語は、他の特徴、ステップまたは整数が存在する可能性を排除するように解釈されるべきではない。
【0111】
特定の形状または開示された機能を実行する手段という観点から表わされた、前述の説明もしくは以下の特許請求の範囲または添付の図面に開示された特徴、あるいは開示された結果を得るための方法またはプロセスは、必要に応じて、単独でまたはそのような特徴の任意の組み合わせで、本発明の多様な形式を実現するために利用され得る。
【0112】
本発明は、上述の例示的な実施形態に関連して説明されたが、本開示が与えられたとき、多くの同等の修正および変形が当業者には明らかになるであろう。したがって、上述の本発明の例示的な実施形態は、例示として考察され、限定とは見なされない。説明した実施形態に対する様々な変更は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、行われ得る。
【0113】
たとえば、本明細書で示された例では、イオン源の引き出し電極に形成されたシールドを示しているが、シールドはイオン源のサンプルプレートに同様に適用され得る。
【0114】
さらに、本明細書で示された例では、提案されたシールドがイオン源のサンプルプレートおよび引き出し電極に適用されたように示しているが、TOF質量分析計を使用しているときに、第1および第2の電極間の領域に存在するイオンに影響を与えるように(たとえば、加速する、減速する、軌跡に影響を与える、焦点を集める、焦点をぼかす)、電圧が印加されて、第1および第2の電極間の領域に電場を生成するTOF質量分析計内の任意の電極対に、同じ原則を適用され得ることを理解されたい。
【0115】
疑義を避けるために言及すると、本明細書で提供された任意の理論的な説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらのいかなる理論的な説明にも縛られることを欲しない。
【0116】
上記で言及された全ての参照は、参照によってここに組込まれる。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b