【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の考察の観点から案出された。
【0006】
以下で詳細に説明されるように、米国特許第6888129号はTOF質量分析計のイオン源のためのレンズを提供しており、前記レンズはアパーチャを有する要素を含み、前記アパーチャは貫通チャネルを形成するようにその要素を介して延び、その結果使用の際に、イオンは要素の一方の側から要素の他方の側に、前記貫通チャネルを通過して進む。
【0007】
最も一般的には、本発明の第1の態様は:
第1の電極と、
第1の電極から離隔される第2の電極と、
を含む飛行時間型質量分析計を提供し:
質量分析計を使用しているときに、イオン源が、電圧を第1および第2の電極に印加して、第1および第2の電極間の領域に存在するイオンに影響を与えるよう、第1および第2の電極間の領域に電場を生成するように構成され、
シールドが第1の電極および/または第2の電極に形成され、そのシールドは、質量分析計を使用しているときに、第1および第2の電極の縁部間に形成された電場が第1および第2の電極間の領域に侵入するのを、抑制するように構成される。
【0008】
第1および第2の電極の縁部間に形成された抑制される電場は、電場縁部の影響を形成する場合がある。その影響が、第1および第2の電極間の領域へ、第1および第2の電極間に延びる軸に対して径方向に侵入するのを、シールドによって抑制される。第1および第2の電極間の領域(そこからの第1および第2の電極の縁部間に形成される電場の侵入が抑制される)は、外側境界(第1および第2の電極間に延びる軸に対する)を有し得る。質量分析計を使用しているとき、外側境界は、質量分析計によって形成されたイオンが達することができる限界によって定められる。
【0009】
したがってシールドは、有限長の2つの重複する電極によって自然に形成される任意の周辺の電場が第1および第2の電極間に形成される領域に侵入するのを、抑制する(好ましくは実質的に防止する)のに役立つと考えられ得る。
【0010】
第1および第2の電極の縁部間に形成された電場は、本明細書では「サイドフィールド」と称する場合がある。
図8および
図9を参照して以下で説明されるように、特に、第1および第2の電極が互いに横方向にずれる場合、たとえば、第1および第2の電極がMALDI/SALDIイオン源に属するような場合に、サイドフィールドが第1および第2の電極間の領域の中に侵入することによって、望ましい軌跡からイオンが逸れることで、強度損失、および/またはTOF質量分析計によって生成された質量スペクトル中の質量シフトが起こり得る。したがって、そのような場(フィールド)を抑制する(好ましくは実質的に防止する)ことによって、シールドは、TOF質量分析計によって生成された質量スペクトル中の強度損失を防ぐのに役立ち得る。
【0011】
本発明の第1の態様で提案されるシールドは、米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14とは区別される。なぜなら、質量分析計を使用しているとき、米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14は、第1および第2の電極の縁部間に形成される電場が、第1および第2の電極間の領域に侵入するのを抑制するように構成されていないからである。むしろ、米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14は、電場が「平面要素」13のアパーチャを介してサンプルプレートの前面の領域に侵入するのを抑制するように構成され(たとえば、米国特許第6888129号の1段67行から2段15行までを参照)、そのため、米国特許第6888129号の電極はサイドフィールドの侵入を受けやすい。
【0012】
以下の説明において、シールドならびに第1および第2の電極の様々な好ましい形式、形状、パラメータ、が説明される。これらの好ましい形式、形状、パラメータは、以下の任意の1つまたは複数を参照して定められ得る:
− 第1および第2の電極間に延びる軸。この軸は好ましくはイオン光学軸であり、質量分析計を使用しているとき、イオンがそれに沿って移動する軸として定められ得る。第1および/または第2の電極が、そこに形成されたアパーチャを含む場合(以下を参照)、好ましくはイオン光学軸がそのアパーチャを通って(好ましくはそのアパーチャの中心を通って)延びる。
− 内側に面するシールドの表面:これは、第1および第2の電極間に延びる軸に向かって内側に面するシールドの表面として、捉えることができる。
− 外側に面するシールドの表面:これは、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に面するシールドの表面として捉えることができる。
− シールドの高さ:これは、シールドが形成される電極上の表面から、他の電極に向かってシールドが延びる距離として捉えることができる。
− アパーチャの幅:第1および/または第2の電極が、そこに形成されたアパーチャを含む場合(以下を参照)、アパーチャの幅は、アパーチャの最も広い範囲にわたる距離として捉えることができる。アパーチャが円形である場合、幅はアパーチャの直径として捉えることができる。
− 第1および/または第2の電極の幅:これは、第1および/または第2の電極の最も広い範囲にわたる距離として、捉えることができる。
【0013】
たとえばこれらの要素が円形である場合、イオン光学軸は、第1および/または第2の電極の回転対称軸に、第1および/または第2の電極に形成されるアパーチャ(アパーチャが存在する場合)に、および/またはシールドに役立つことができる。
【0014】
シールドが円形で、イオン光学軸がシールドの回転対称軸としての役割を担う場合、イオン光学軸から内側に面するシールドの表面までの距離は、シールドの「内半径」と称され得る。同様に、イオン光学軸から外側に面するシールドの表面までの距離は、シールドの「外半径」と称され得る。
【0015】
好ましくは、シールドは、第1および第2の電極のうちの一方の表面上で形成された隆起要素であり、第1および第2の電極のうちの一方が、シールドが第1および第2の電極のうちの他方に向かって延びるように、第1および第2の電極のうちの他方に面する。
【0016】
好ましくは、シールドは第1および第2の電極間に延びる軸を囲繞する(たとえば、巻きつける)。したがって、シールドは円形(たとえば、環状またはリング状)であってよいが、他の外形(たとえば、正方形、楕円形、または実際に軸を囲繞できる任意の形状)も可能である。
【0017】
第1および/または第2の電極は、プレート状の要素であってよい。したがって第1および/または第2の電極は、2つの概ね平坦な対向する表面を有し得るが、完全性を期すために言及すると、このことは、第1および/または第2の電極の概ね平坦な対向する表面上に形成される隆起特徴部の可能性を排除しない(たとえば、以下で説明されるシールドまたは二次シールド)。非平坦な表面もまた可能である。
【0018】
第1および/または第2の電極は、そこに形成されるアパーチャを含むことができる。
【0019】
第1および/または第2の電極に形成されるアパーチャの幅は、好ましくは2mmから20mmの範囲である。疑義を避けるために言及すると、両電極がそこにアパーチャを含む場合、それらアパーチャは同じ幅/直径を有する必要はない。
【0020】
好ましくは、シールドが形成される電極は、そこにアパーチャを含む。そのようなアパーチャの幅は、好ましくは2mmから20mmの範囲である。
【0021】
しかし、疑義を避けるために言及すると、第1および第2の電極のうちの一方のみにアパーチャが形成される場合、シールドはアパーチャが形成されない電極上に形成され得る。
【0022】
第1および第2の電極は、TOF質量分析計内の任意の電極対であってよい。TOF質量分析計では、使用しているときに、第1および第2の電極間の領域に存在するイオンに影響を与えるように(たとえば、加速する、減速する、軌跡に影響を与える、焦点を集める、焦点をぼかす)電圧が印加されて、第1および第2の電極間の領域に電場を生成する。
【0023】
したがって、高さ、外側に面する表面の位置、および内側に面する表面の位置などのシールドのパラメータは、たとえばイオンがイオン光学軸に沿って移動するように、所望の電場勾配を実現するために最適化され得る。
【0024】
リフレクトロン分析器に見られるような、TOF質量分析計の電極のいくつかの対、またはいくつかの連は、電極間のサイドフィールドの侵入を最小にする目的のため、大きい外直径を有する。電極が、このような各々の対において本明細書で提案されるシールドを実装することによって、このような電極の外直径を大幅に縮小することができ、シールドはサイドフィールドの侵入を防ぐのに役立つ。このことは、以前ではリフレクトロン電極の大きい外直径が要求されていた。イオンレンズの構成を制御するシールドの適切な設計は、電極の機能を低い印加電圧で実現することも可能にし得る。
【0025】
シールドの外形は、質量分析計の他の構成要素の外形、特に、目的によって変化する第1および第2の電極の外形によって、大きく変わり得る。したがって、シールドは様々な断面(たとえば、正方形、隆起状など)を有し、質量分析計の他の構成要素の外形によって、電極の表面上で形成される様々な形状(たとえば、円形、楕円形、正方形など)を形成し得る。
【0026】
実際にシールドの外形は、所望の効果を得るためにシールドの外形を変化させる(および任意選択で、質量分析計の他の構成要素の外形を変化させる)一方で、たとえばシミュレーションを実行することによって実験的に最適化され得る。
【0027】
好ましくは、内側に面するシールドの表面は、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に、シールドが形成される電極の中間部分(すなわち、内側に面するシールドの表面内の電極の一部)がイオン光学要件(たとえば、シールドが形成される電極が引き出し電極である場合、抽出レンジングを制御するよう)にしたがった形状にされるよう、十分大きく離隔される。
【0028】
この目的で、内側に面するシールドの表面は、少なくとも第1および/または第2の電極に形成されるアパーチャの幅分だけ、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に離隔され得る。アパーチャおよびシールドが円形である場合、これはシールドの内半径がアパーチャの半径の少なくとも2倍であることと同等であろう。
【0029】
同様に、シールドが形成される電極にアパーチャが形成される場合、内側に面するシールドの表面は、好ましくは、電極と電極に形成されるアパーチャとの間の境界から、アパーチャの幅の少なくとも半分の距離だけ、外側に離隔される。アパーチャおよびシールドが円形である場合、これもまたシールドの内半径がアパーチャの半径の少なくとも2倍であることと同等であろう。
【0030】
シールドが形成される電極と、その電極に形成されるアパーチャとの間の境界は、シールドが形成される電極がアパーチャと交わる境界として、捉えることができる。シールドがこの境界から外側に離隔する場合、内側に面するシールドの表面内の電極の中間部分が必要であり、電極の中間部分はイオン光学要件にしたがった形状にされ得る。
【0031】
にもかかわらず、質量分析計を使用しているとき、第1および第2の電極の縁部間に形成される電場が、第1および第2の電極間の領域に侵入するのを効果的に抑制するために、外側に面するシールドの表面が適切に境界から離隔されるのであれば、内側に面したシールドの表面が、シールドが形成される電極とその電極に形成されるアパーチャとの間の境界から外側に離隔することが必須ではないことを、当業者は理解するであろう。
【0032】
したがって、質量分析計を使用しているとき、第1および第2の電極の縁部間に形成される電場が、第1および第2の電極間の領域に侵入するのを効果的に抑制するために、外側に面するシールドの表面が電極とアパーチャとの間の境界から適切に離隔されるのであれば、内側に面するシールドの表面が、シールドが形成される電極とその電極に形成されるアパーチャとの間の境界に位置し得る。これに関連して、米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14の外側に面するシールドの表面が、「平坦要素」13と「平坦要素」13のアパーチャとの間の境界まで近すぎて、サイドフィールドの侵入を抑制するには効果的ではないことに留意されたい。
【0033】
質量分析計を使用しているとき、第1および第2の電極の縁部間に形成される電場が第1および第2の電極間の領域に侵入するのを、効果的に抑制するために、外側に面するシールドの表面が、第1および第2の電極間に延びる軸(たとえば、イオン光学軸)から、少なくとも軸に対して最も遠い距離の2倍だけ、外側に離隔され得る。離隔は、質量分析計が使用されるときに質量分析計によって形成されるイオンが、第1および第2の電極間の領域に達することができる距離である。これは通常、所与の質量分析計用に直接計算する。たとえば、第1および第2の電極が、パルス抽出(以下を参照)を実行する質量分析計のイオン源に含まれる場合、イオンが形成される時間と引き出し電場が生成される時間との間の知られている所定の時間期間にしたがって、かつイオン源によって形成されたイオンの知られている最大速度(通常1500m毎秒を超えない)にしたがって、質量分析計によって形成される最も遠い距離のイオンが決定される。
【0034】
シールドが円形である場合(上記を参照)、シールドの外半径の最小値Ro
minは、下記の数式によって定められ得る。
【0035】
Ro
min=G−hs+hc+Ri−w
min
ここで、Gは第1および第2の電極間の距離、hsはシールドが形成される電極上に形成される二次シールドの高さを(以下を参照)、hcは第1および第2の電極間の絶縁破壊を防ぐための、シールドとシールドに面する電極との最小間隔(たとえば、第1および第2の電極間に印加される所与の最大電位差のための)を、Riはシールドの内半径を、およびw
minは実際に製造するために推奨されるシールドの最小幅を表わす。たとえば、20mmの高さを有するシールドのw
minは2mmで、10mmの高さを有するシールドのw
minは1.1mmとなり得る。
【0036】
多くの場合、w
minは少なくとも1mmとなる。
【0037】
パラメータが非対称である場合、上記の数式を使用する計算は、各パラメータに平均値を使用して行うことができる。たとえば楕円形のシールドでは、数式はシールドの最も長い範囲と最も短い範囲との両方について繰り返され得る。
【0038】
上記の考察を考慮すると、ほとんどの外形について、内側に面するシールドの表面は、第1および/または第2の電極に形成されるアパーチャの幅の少なくとも1.5倍分だけ、第1および第2の電極間に延びる軸から外側に離隔され得る。アパーチャおよびシールドが円形である場合、シールドの外半径がアパーチャの半径の少なくとも3倍であることと同等であろう。
【0039】
同様に、シールドが形成される電極にアパーチャが形成される場合、外側に面するシールドの表面は、好ましくは、シールドが形成される電極とその電極に形成されるアパーチャとの間の境界から、アパーチャの少なくとも幅の距離だけ、外側に離隔される。アパーチャおよびシールドが円形である場合、シールドの外半径がアパーチャの半径の3倍であることと同等であろう。
【0040】
いくつかの実施形態において、外側に面するシールドの表面は、シールドが形成される電極の外側の境界と一致して位置され得る。
【0041】
シールドは、所望のシールド効果を得るために必要と思われる任意の高さとしてよく、一般に、広くて低いシールドは、ある状況において高くて狭いシールドと同様の効果を有し得ることに留意されたい。しかし、これは厳格な決まり事ではなく、たとえば、パルス抽出(以下を参照)を実行するイオン源に含まれる第1および第2の電極のために、引き出し電場が生成されるのに先立ち、広くて低いシールドが高くて狭いシールドと同様な効果を有し得る。しかし、一旦引き出し電場が生成されると、異なる条件が作り出され(たとえば、レンジング効果による)、その条件はシールドの高さを決定するときに、考慮に入れるべきである。
【0042】
好ましくは、第1および第2の電極間の電気的な絶縁破壊を避けるように、シールドとシールドに面する電極との間の最小間隔は、少なくとも2mmである(一般に第1および第2の電極間の電圧は2kVから5kVに達し得る)。
【0043】
好ましくは、シールドは第1の電極または第2の電極のうちの1つに形成される。しかしいくつかの実施形態において、シールドは、第1の電極上に形成された第1のシールド要素と、第2の電極上に形成された第2のシールド要素とを備えることができる。第1のシールド要素および/または第2のシールド要素は、単一の電極を参照した上述したようなシールドの方法で構成されてよく、単一の電極を参照した上述したような高さと等しく組み合わされた高さを有してよい。
【0044】
好ましくは、二次シールドはシールドが形成される電極上に形成される。好ましくは、二次シールドは、シールドが形成される電極に形成されるアパーチャを介して、電場が第1および第2の電極間の領域に侵入するのを抑制するように構成される。上記で提案されたシールドに二次シールドが加えられ、両方のシールドが存在する場合、上記で提案されたシールドは一次シールドと称され得ることに留意されたい。
【0045】
好ましくは、二次シールドは、他方の電極に向かって延びるように、(一次)シールドが形成される電極の表面上に形成される隆起要素である。好ましくは、二次シールドはシールドが形成される電極に形成されるアパーチャを囲繞する(たとえば、巻きつける)。好ましくは、二次シールドは、シールドが形成される電極と、その電極に形成されるアパーチャとの間の境界に位置される。そのため二次シールドは、たとえば米国特許第6888129号で提案された「チューブ」14と同様、チューブの形状を有し得る。したがって、二次シールドは中空で細長い部材の形状を有してよく、二次シールドの高さはアパーチャの幅の少なくとも8/10(より好ましくはアパーチャの幅の9/10、または少なくともアパーチャの幅)と等しくてよい。
【0046】
二次シールドに関して、以下のパラメータを定めることが望ましい:
− 二次シールドの高さ:これは、二次シールドが形成される電極上の表面から二次シールドが他の電極に向かって延びる距離として、捉えることができる。
【0047】
二次シールドが存在する場合、(一次)シールドの高さは、好ましくは二次シールドの高さより大きい。しかし、第1および第2の電極がパルス抽出(以下を参照)を実行する質量分析計のイオン源に含まれる場合、定めるべきより重要な基準は、引き出し電場が生成された後に引き出し領域で望ましいレンジング効果を得るために必要な(一次)シールドの高さである。
【0048】
第1および/または第2の電極は円形であり得るが、やはり他の外形も可能である。シールドが形成される電極が円形である場合、第2の電極は20mmから100mmの範囲の半径を有し得る。
【0049】
好ましくは、第1および第2の電極が、質量分析計のイオン源に含まれる。
【0050】
第1および第2の電極が質量分析計のイオン源に含まれる場合、質量分析計を使用しているときに、第2の電極のアパーチャを介して引き出し領域からイオンを抽出するよう、第1および第2の電極間の引き出し領域で引き出し電場を生成するために、第1および第2の電極に電圧を印加するようにイオン源が好ましくは構成される。
【0051】
これに関連して、引き出し領域からイオンを抽出する役割という点で、第2の電極は引き出し電極と称され得る。したがって本明細書では、第2の電極および引き出し電極という用語は、交換可能で使用され得る。
【0052】
したがって本発明の第1の態様は:
第1の電極と、
そこにアパーチャが形成され、第1の電極から離隔される第2の電極と、
を含むイオン源を含む飛行時間型質量分析計を提供し:
質量分析計を使用しているときに、第2の電極のアパーチャを介して引き出し領域からイオンを抽出するよう、第1および第2の電極間の領域に引き出し電場を生成するために、第1および第2の電極に電圧を印加するようにイオン源が構成され、
第1の電極および/または第2の電極上にシールドが形成され、そのシールドは、質量分析計を使用しているときに、第1および第2の電極の縁部間に形成された電場が、第1および第2の電極間の領域に侵入するのを抑制するように構成される。
【0053】
第1および第2の電極が、質量分析計のイオン源に含まれる場合、第1の電極はサンプルを担持するためのサンプルプレートであり得る。サンプルプレートは、サンプルプレートの領域上に配置される複数のサンプルを担持するためのものであってよい。この領域は、たとえば2cm以上の長さの領域に広がり得る。
【0054】
サンプルプレートは、サンプルプレートキャリアに取付けられてよい。サンプルプレートキャリアが導電性である場合、そのために第1の電極はサンプルプレートキャリアを追加的に含むことができる。
【0055】
質量分析計は、サンプルプレートキャリア(したがってサンプルプレート)をイオン光学軸に対して横方向にずらすために、サンプルプレートキャリア(したがってサンプルプレート)をイオン光学軸に対して横方向に移動させるように構成される機構を含み得る。
【0056】
第1および第2の電極が質量分析計のイオン源に含まれ、第2の電極が、そこに形成されたアパーチャを有する場合、シールドは第2の電極上に好都合に形成されるが、シールドは第1の電極に形成されることも可能となる。
【0057】
シールドが第2の電極に形成される場合、イオン光学軸に沿って見るとき、またサンプルプレートキャリアの中心部がイオン光学軸に対して、横方向に許容最大にずれているとき、好ましくは内側に面するシールドの表面は、第2の電極と第2の電極に形成されるアパーチャとの間の境界から、内側に面するシールドの表面が第1の電極(サンプルプレートおよびサンプルプレートキャリアも含み得る。上記参照)の外側の境界内に留まるよう適切な小さい距離だけ、外側に離隔する。この、内側に面するシールドの表面の離隔は好ましい。なぜなら、イオン光学軸に沿って見るとき、内側に面する表面が第1の電極の外の境界の外側に落ちることができる場合に、サイドフィールドは容易に引き出し領域に侵入できるからである。(イオン光学軸に対するサンプルプレートキャリアの)許容された横方向最大のずれは、サンプルプレート上の末端の分析点のサンプルがイオン光学軸上にある、横方向の最大のずれによって決定され得る。
【0058】
好ましくは、イオン源は、サンプルに光を発することによってサンプルプレート上に担持されたサンプルをイオン化するための、レーザーを含む。好ましくは、レーザーは、サンプル材料に光のパルスを発することによってサンプルをイオン化するためのものである。レーザーによって生成される光は、好ましくはUV光であるが、IR光もまた可能である。
【0059】
しかし、サンプル材料は他の技法によってイオン化されてよい。
【0060】
イオン源はパルス抽出を実行するように構成され得る。その場合、イオン源は、イオンが生成された後(たとえば、レーザーによって)、所定の時間期間(10nsから1μsであり得る)に引き出し電場を生成するように構成され得る。引き出し電場が生成される前に、第1および第2の電極は同じ電位(たとえばこの電位は10kVより高く、たとえば〜20kV)を保持し得る。所定の時間期間は、生成されたイオンの運動エネルギーの広がりに最適に焦点を合わせるよう選択されてよい。
【0061】
しかし、パルス抽出は不可欠ではない。なぜなら、他の実施形態において、イオン源は、イオンの形成中とイオンの抽出中の両方に存在する引き出し静電場を生成するように構成され得るからである。
【0062】
イオン源は、MALDI(マトリックス支援レーザー脱離/イオン化法)イオン源であり得る。MALDIイオン源に対して、サンプル材料は、生体分子(たとえばプロテイン)、有機分子、および/またはポリマーを含むことができる。サンプル材料は、サンプル材料と光吸収マトリックスとの(好ましくは結晶化された)混合体に含まれ得る。
【0063】
しかし、イオン源は、上述のように構成された第1および第2の電極を有する任意のイオン源とすることができる。たとえばイオン源は、SALDI(表面支援レーザー脱離/イオン化)イオン源、マトリックスを利用しないレーザー脱離イオン源、または二次イオン質量分析(SIMS)イオン源(レーザーの代わりにイオンビームを使用する)としてもよい。
【0064】
質量分析計は、イオン源から生成されたイオンを検出するイオン検出器を含むことができる。イオン検出器は、質量分析器の一部を形成する。
【0065】
本発明の第1の態様は、上述のイオン源もまた提供し得る。
【0066】
本発明の第1の態様は、飛行時間型質量分析計の操作方法もまた提供し得る。方法は、上述の飛行時間型質量分析計を実行する、または飛行時間型質量分析計に対応する、任意の方法ステップを含みことができる。
【0067】
本発明はまた、明白に容認できない、または明確に避けられる組み合わせ以外の、上述の特徴の任意の組み合わせを含む。
【0068】
本提案の例は、添付の図面を参照して、以下に説明される。