【実施例】
【0048】
実施例1
完全にフッ素化された膜のXRDによる材料認識
図1は、本発明のあるバージョンによるフッ化アニールした膜、具体的には、完璧にフッ素化された膜のX線回折(XRD)グラフである。X線回折測定を、ScintagPAD VハードウェアおよびJCPDS規格を使用するDMSNTソフトウェアを用いて取得した。XRDグラフにおけるピーク位置は、X線ビームが結晶格子により回折されているところに対応する。XRDグラフにおける角度−間隔の固有のセットを、結晶材料を同定しかつキャラクタライズするために使用することができる。
【0049】
イットリアを、アルミナ基板上にコーティングし、フッ素含有雰囲気中における550℃での4時間のフッ化アニーリングが次に続いた。フッ素化プロセスの後で、イットリアが純粋なオキシフッ化イットリウムに変換されていることを確認した。フッ化アニールしたイットリアのXRDパターンは、オキシフッ化イットリウムのパターンと一致する。XRDパターンは、それぞれ、28.3961(+/−0.5)および47.2761(+/−0.5)度の2シータのところに第1の強いピークおよび第2の強いピークを有する。XRD主ピークは、オキシフッ化イットリウムが正方晶結晶系および菱面体晶結晶系からなることを示している。27.8839(+/−0.5)および30.9600(+/−0.5)度の2シータであるフッ化イットリウムの第1の強いピークおよび第2の強いピークは、XRDパターンには検出されず、フッ化アニーリングプロセスがイットリアをオキシフッ化イットリウムだけに変換したことを示している。
【0050】
実施例2
部分的にフッ素化された膜のXRDによる材料認識
図2は、本発明のもう1つのバージョンによるフッ化アニールした膜、具体的には、部分的にフッ素化されたイットリア膜のX線回折(XRD)グラフである。フッ化アニーリングプロセスを、フッ素ソース量、アニーリング温度、およびアニーリング時間を制御することによって、部分的フッ素化イットリアに制御した。膜を、フッ素含有雰囲気中において400℃で約2時間アニールした。
図2では、堆積したままのイットリアは、XRDパターンにおいて、それぞれ、28.7245(+/−0.5)および47.7501(+/−0.5)度の2シータのところに第1の強いピークおよび第2の強いピークを有し、その結晶系は、立方晶である。部分的にフッ素化されたイットリア膜のXRDパターンは、イットリアのXRDパターンとオキシフッ化イットリウムのXRDパターンとの組み合わせであり、イットリアおよびオキシフッ化イットリウムが膜中に共存することを示している。
【0051】
実施例3
XPSによる材料認識
図3は、堆積したままのイットリア(線1)、空気アニールしたイットリア(線2)、およびフッ化アニールしたイットリア(線3)のスペクトルを示しているX線光電子分光(XPS)グラフである。XPSスペクトルを、Vacuum Generators Escalab MK IIおよびAvantageソフトウェアを用いて取得した。
【0052】
イットリアを、アルミナ基板上へと堆積し、そのXPSスペクトルをアニーリングに先立って測定した。堆積したままのイットリアのXPSスペクトルを、線1により表している。イットリアを、次いで550℃でほぼ2時間空気アニールし、そのXPSスペクトルを測定した。空気アニールしたイットリアのXPSスペクトルを、線2により表している。基板上へと堆積したイットリアの第2のサンプルを、550℃でほぼ2時間フッ化アニールし、その測定したXPSスペクトルを、線3により表している。
【0053】
堆積したままのイットリア膜および空気アニールしたイットリア膜のXPSスペクトルは、強い酸素(O)ピークおよびイットリウム(Y)ピークを示している。フッ化アニールしたイットリアのXPSスペクトルは、OピークおよびYピークに加えて強いフッ素(F)ピークを示している。
【0054】
XPSスペクトルは、フッ化アニールしたサンプルでは、フッ素がイットリアと結合し、オキシフッ化イットリウム(Y
aO
bF
c)を形成することを確認している。
【0055】
実施例4
イットリア堆積
イットリアコーティングを、アルミナのセラミック基板上へと酸素含有雰囲気中での物理気相堆積(すなわち、反応性スパッタリング)により堆積した。
【0056】
パワー、電圧、圧力、およびガス流量を含む堆積プロセスパラメータを変えることによって、コーティングのミクロ構造、ヤング率、硬度、残留応力、密着力および組成を含むイットリウム膜の様々な特徴を巧みに操作した。
図4A〜
図4Fは、より多孔質(
図4Aおよび
図4B)からより緻密(
図4Eおよび
図4F)までの、堆積したコーティングの走査型電子顕微鏡(AMRAY、Bedford、MA)から得られた画像を示している。
【0057】
試験したサンプルから、下記の特徴を、示した範囲内で制御した:
ヤング率:100GPa〜200GPa
ナノ硬度:3GPa〜15GPa
(アルミナ基板上の)残留応力:−5MPa〜−200MPa
スクラッチ試験による密着力(LC2):5N〜20N
Y
xO
y組成:x/y=0.33〜0.67
ミクロ構造:
図4A〜
図4Fに示したように、多孔質から緻密
【0058】
実施例5
空気アニーリングと比較したフッ化アニーリング
2つの異なるアニーリングプロセスを、イットリア膜サンプルに適用した。第1のアニーリングプロセスは空気アニーリングをともない、アニーリング中にサンプルを、空気中において550℃の焼成炉で2時間加熱した。第2のアニーリングプロセスは、フッ化アニーリングをともない、アニーリング中にサンプルを、フッ素含有雰囲気中において550℃の焼成炉で2時間加熱した。
【0059】
両方のアニーリングプロセスの後で、イットリアコーティングの色は、濃い黄褐色から明るい黄褐色へと変化した。イットリアコーティングは、透明でも光学的に純粋でもなかった。
【0060】
フッ化アニールした膜を、Y
aO
bF
c組成、ただしc/(a+b)=0.04〜0.67、を与えるように制御することができた。
【0061】
実施例6
コーティングモフォロジ
(実施例4にしたがって準備した)堆積したままのイットリアおよび(実施例5にしたがって準備した)フッ化アニールしたイットリア膜を、走査型電子顕微鏡(AMRAY、Bedford、MA)を用いて撮像した。(実施例3で説明した方法にしたがって作った)堆積したままのイットリアを、
図5A〜
図5Cに示している。(実施例4で説明した方法にしたがって作った)フッ化アニールしたイットリアを、
図5D〜
図5Fに示している。フッ化アニーリングプロセスは、イットリア膜のモフォロジを変化させなかった。
【0062】
実施例7
組成
図6A〜
図6Bは、堆積したままのイットリア(
図6A)膜サンプルおよびフッ化アニールしたイットリア(
図6B)膜サンプルのESD解析を示している。
図6Aに示したように、堆積したままのイットリア中にはフッ素が認められなかった。
図6Bに示したように、フッ化アニールしたイットリア膜中にはかなりの量のフッ素が認められた。
【0063】
2つのサンプル中のイットリウム(Y)、酸素(O)、およびフッ素(F)の測定した量を、表1に示している。
【0064】
【0065】
膜の表面のフッ素の原子パーセントを、異なるプロセスパラメータを用いてフッ化アニーリング後のイットリアコーティング中で約4%から約40%とすることができる。イットリウム含有量は、フッ化アニーリング後では約23%と38%との間で変わり、酸素含有量は約59%と69.5%との間で変わった。
【0066】
図7A〜
図7Eに示したように、フッ素の原子パーセントは、フッ化アニールした膜の深さにわたって減少した。
図7Aは、膜の最上部の場所1(膜の最上部は環境に曝される側である)から膜の底部の場所4(膜の底部は下にあるセラミック基板と境界を接する側である)まで印をつけた4つの場所を有するフッ化アニールしたイットリア膜の側面図を示している。各場所のサンプルの対応するEDS解析を、
図7B(場所1)、
図7C(場所2)、
図7D(場所3)、および
図7E(場所4)に示している。場所1の深さが、膜の最上部からほぼ1ミクロンのところであり、場所2が最上部からほぼ3ミクロンのところであり、場所3が最上部からほぼ7ミクロンのところであり、場所4が最上部からほぼ9ミクロンのところであることに留意されたい。
【0067】
4つの場所のイットリウム、酸素、フッ素、およびアルミニウムの測定した量を表2に示している。
【0068】
【0069】
フッ素の異なる量を有する2つのサンプルを、濃度を変えたフッ素ソースを用いて各サンプルをアニールすることにより作成した。2つのサンプルの組成を、表3に示している。
【0070】
【0071】
フッ素ソース量、アニーリング時間およびアニーリング温度などのプロセスパラメータを巧みに操作することにより、フッ素量および深さが制御可能であることを見出した。
【0072】
実施例8
フッ素安定性
フッ化アニールしたイットリアを、高真空(E−6torr)焼成炉で5時間、150℃でベークした。ベーキングの後で、フッ素は依然としてコーティング中にあり、フッ素の原子パーセントは、EDSが判断したように減少しなかった。
図8Aおよび
図8Bは、ベーキングに先立つ2つのフッ化アニールしたイットリアサンプルのEDS解析を示している。
図8Cおよび
図8Dは、ベーキング後の同じ2つのサンプルのEDS解析を示している。
図8Aと
図8Cおよび
図8Bと
図8Dとの比較から分かるように、フッ素の相対的な量は、両方のサンプルで一定のままであった。
【0073】
実施例9
ウェットエッチ耐性
イットリアサンプルを、5%HCl水溶液中に5分間浸漬した。堆積したままのイットリアは、5%HCl水溶液中で約2分間残存した。フッ化アニールしたイットリアは、5%HCl水溶液中で約5から約120分間残存した。
【0074】
より高いフッ素含有量を有するフッ化アニールしたイットリア膜は、より低いフッ素含有量を有する膜よりもより良いウェットエッチ耐性であった。表4に示したように、深さの大きいところでより高い量のフッ素を有するフッ素系膜は、より大きなHCl耐性を示した。
【0075】
場所1の深さが膜の最上部からほぼ1ミクロンのところであり、場所2が最上部からほぼ3ミクロンのところであり、場所3が最上部からほぼ7ミクロンのところであり、そして場所4が最上部からほぼ9ミクロンのところであることに留意されたい。
【0076】
【0077】
膜の表面上のフッ素含有量の増加によりHCl耐性も増加した。表面に30%フッ素を有するフッ化アニールしたイットリアは、5%HCl中で約30分間残存した。表面に8%フッ素を有するフッ化アニールしたイットリアは、5%HCl中で約15分間残存した。フッ素含有量のないイットリアは、約2分未満しか残存しなかった。
【0078】
実施例10
ドライエッチ耐性
シリコン、アルミニウム、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸化イットリウムアルミニウム、堆積したままのイットリアおよびフッ化アニールしたイットリアサンプルを、フッ素プラズマを用いてRIEツールによりエッチした。堆積したままのイットリアおよびフッ化アニールしたイットリアの両者は、
図9に示したように、毎時ほぼ0.1ミクロンのエッチ速度を有する良いフッ素プラズマ耐性を与えた。
【0079】
実施例11
剥離改善
フッ化アニールしたイットリア膜は、(約400℃までの)昇温状態で優れたクラック耐性および完全性を示した。一般に、イットリアは、イットリア(熱膨張係数(CTE)=8x10
−6K
−1)と石英(CTE=0.3x10K
−1)との間の大きな熱膨張係数(CTE)ミスマッチのためにクラッキングや剥離をすることなく石英基板上に堆積することが困難である。
【0080】
図10A〜
図10Dは、400℃でアニーリングした後の石英基板上のイットリアコーティングを示している。(矢印で示した)クラックが見える。
図11A〜
図11Cは、400℃でアニーリングした後の、クラッキングのない石英基板上のフッ化アニールしたイットリアコーティングを示している。
図12A〜
図12Cは、300℃アニーリングを3サイクルした後の、クラッキングのない石英基板上のフッ化アニールしたイットリアコーティングを示している。
【0081】
実施例12
様々な材料のフッ素化
400℃で1時間のフッ化アニーリングを、様々なコーティングに対して実行して、様々なコーティングがフッ素化されているかどうかを判断した。
【0082】
(PVDスパッタリングにより付けた)コーティングは、アルミナ(Al
rO
s)、セリア(Ce
mO
n)、酸化イットリウムアルミニウム(Y
eAl
fO
g)、酸窒化アルミニウム(Al
iO
jN
k)、およびイットリア(Y
xO
y)を含んでいた。溶射により付けたイットリアコーティングも試験した。
【0083】
溶射イットリアおよびPVDイットリアの両者は、上手くフッ素化された。PVD酸化イットリウムアルミニウムもやはり上手くフッ素化された。PVDアルミナ、セリアおよび酸窒化アルミニウムサンプルは、フッ化アニーリングプロセスではフッ素化されなかった。
【0084】
特定の理論に従うことなく、Y
oAl
pO
qがイットリアとアルミナの混合物であるという理由から、フッ素はY
oAl
pO
q中のイットリアと反応することができ、膜の良好なフッ素化を可能にするということを示唆している。
【0085】
様々な金属酸化物のフッ素化の結果の要約を表5に示している。場所1の深さが膜の最上部からほぼ1ミクロンのところであり、場所2が最上部からほぼ3ミクロンのところであり、場所3が最上部からほぼ7ミクロンのところであり、場所4が最上部からほぼ9ミクロンのところであることに留意されたい。
【0086】
【0087】
すべての特許、公開された出願および本明細書において引用した参考文献の教示は、その全体が引用により組み込まれている。
【0088】
発明を1つまたは複数の実装形態に関して示し、説明してきているが、等価な代替形態および修正形態を、この明細書および添付した図面を読むことおよび理解することに基づいて当業者なら思い付くであろう。発明は、すべてのそのような修正形態および代替形態を含み、別記の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。加えて、発明の特定の特徴または態様がいくつかの実装形態のうちの1つだけに関して開示されてきていることがあるとはいえ、任意の所与の用途または特定の用途にとって望ましくかつ有利であることがあるので、このような特徴または態様を、他の実装形態の1つまたは複数の他の特徴または態様と組み合わせることができる。さらにその上、用語「含む(include)」、「持っている(having)」、「有する(has)」、「で(with)」、または上記の変形を、詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかで使用する限りでは、このような用語は、用語「備えている(comprising)」にある意味で類似して包括的であるものとする。また、用語「例示的な(exemplary)」は、最善というよりはむしろ例を意味することを単に意図している。本明細書において描いた特徴および/または要素を、単純化および理解を容易にする目的で特定の寸法および/または互いに相対的な向きで図示しており、実際の寸法および/または向きが本明細書において図示したものとは実質的に異なることがあることも認識すべきである。
【0089】
この発明を、発明の例示的実施形態を参照して特に示し、説明してきている一方で、形態および詳細の様々な変更を、別記の特許請求の範囲によって包含される発明の範囲から逸脱せずに行うことができることを、当業者なら理解するであろう。