特許第6706626号(P6706626)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6706626フッ化アニールした膜でコーティングした物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706626
(24)【登録日】2020年5月20日
(45)【発行日】2020年6月10日
(54)【発明の名称】フッ化アニールした膜でコーティングした物品
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20200601BHJP
   C23C 14/08 20060101ALI20200601BHJP
【FI】
   H01L21/302 101G
   C23C14/08 J
【請求項の数】14
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-549318(P2017-549318)
(86)(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公表番号】特表2018-511943(P2018-511943A)
(43)【公表日】2018年4月26日
(86)【国際出願番号】US2015053260
(87)【国際公開番号】WO2016148739
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2017年11月24日
(31)【優先権主張番号】62/134,804
(32)【優先日】2015年3月18日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/208,532
(32)【優先日】2015年8月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】リン, イー−コアン
(72)【発明者】
【氏名】ガンダ, ニレシュ
(72)【発明者】
【氏名】ラドゴウスキ, デニス
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカトラマン, チャンドラ
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5359871(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0099491(US,A1)
【文献】 特表2012−508684(JP,A)
【文献】 特開2014−009361(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0035036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
C23C 14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空に適合する基板と、
前記基板の少なくとも一部分を覆う保護膜であって、イットリウムを含有するフッ素化された金属酸化物を含み、少なくとも0.1ミクロンの深さにフッ素を含み、外側部分から内側部分に向かって保護膜の深さにわたって減少するフッ素濃度を有する漸変膜である保護膜と
を備える、半導体製作システムの構成部品。
【請求項2】
真空に適合する基板と、
イットリウム、酸素およびフッ素を含有する保護膜であって、
EDSにより決定される、20原子パーセントと38原子パーセントとの間のイットリウム含有量と、
4原子パーセントと33原子パーセントとの間のフッ素含有量と、
46原子パーセントと69.5原子パーセントとの間の酸素含有量と
を有する保護膜と
を備え、
前記保護膜が、室温において5%塩酸水溶液中で5分後に安定であり、
前記保護膜が、X線回折により決定されるように菱面体晶または正方晶オキシフッ化イットリウム結晶系を有する、
半導体製作システムの構成部品。
【請求項3】
前記保護膜が、オキシフッ化イットリウムまたはオキシフッ化イットリウムアルミニウムである、請求項1または2に記載の半導体製作システムの構成部品。
【請求項4】
前記保護膜が漸変膜であり、前記保護膜のフッ素含有量が、オキシフッ化イットリウムである外側部分からイットリアである内側部分まで前記保護膜の厚さにわたって減少する、請求項1または2に記載の半導体製作システムの構成部品。
【請求項5】
前記保護膜が、菱面体晶または正方晶Y(c/(a+b)=0.04〜0.67)、およびY(ただしx/y=0.33〜0.67)を含む、請求項1、2または4に記載の半導体製作システムの構成部品。
【請求項6】
約1ミクロンから約2ミクロン厚までの前記保護膜の外側部分がオキシフッ化イットリウムであり、前記保護膜の残りの部分がイットリアである、請求項5に記載の半導体製作システムの構成部品。
【請求項7】
前記保護膜が漸変膜であり、前記保護膜のフッ素含有量が、オキシフッ化イットリウムアルミニウムである外側部分から酸化イットリウムアルミニウムである内側部分まで前記保護膜の厚さにわたって減少する、請求項1または2に記載の半導体製作システムの構成部品。
【請求項8】
前記保護膜が、酸化イットリウムアルミニウム(YAl(o/(p+q)=0.03〜0.18))を含み、オキシフッ化イットリウムアルミニウム(YAl(h/(e+f+g)=0.05〜0.54))へと変換できる、請求項1、2または7に記載の半導体製作システムの構成部品。
【請求項9】
約1ミクロンから約2ミクロン厚までの前記保護膜の外側部分がオキシフッ化イットリウムアルミニウムであり、前記保護膜の残りの部分が酸化イットリウムアルミニウムである、請求項8に記載の半導体製作システムの構成部品。
【請求項10】
前記保護膜が約1ミクロンから約15ミクロン厚である、請求項1から9のいずれか一項に記載の半導体製作システムの構成部品。
【請求項11】
前記真空に適合する基板が、石英、アルミナ、アルミニウム、鋼鉄、金属、金属合金、セラミック、ポリエーテルエーテルケトン、またはポリアミドである、請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体製作システムの構成部品。
【請求項12】
真空に適合する基板を用意することと、
前記基板上へとイットリウムを含有する金属酸化物を堆積することであって、前記金属酸化物が前記基板を覆う膜を形成する、堆積することと、
前記膜をフッ素及び300℃から650℃までの温度に曝すことにより、フッ化アニールすることであって、少なくとも0.1ミクロンの深さにフッ素を含み、外側部分から内側部分に向かって膜の深さにわたって減少するフッ素濃度を有する漸変膜である膜を製造する、フッ化アニールすることと、
を含む、半導体製作システムの構成部品を保護するための方法。
【請求項13】
前記フッ化アニールすることが、フッ素含有雰囲気中において300℃から650℃までの温度で実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フッ化アニールすることが、フッ素イオン注入に続くアニーリング、フッ素プラズマ処理、フルオロポリマ燃焼、昇温状態でのフッ素ガス反応、フッ素ガスを用いたUV処理、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2015年3月18日に出願の米国特許仮出願番号第62/134,804号および2015年8月21日に出願の米国特許仮出願番号第62/208,532号の優先権を主張する。上の出願の全教示は、引用により本明細書中に組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
反応性イオンエッチング(RIE)は、半導体製作プロセスにおいて使用されるエッチング技術である。RIEは、反応性ガス(例えば、フッ素、塩素、ホウ素、酸素、または上記の組み合わせを含有するガス)をイオン化することにより生成される化学的反応性プラズマを使用して、ウェハ上に堆積した材料を除去する。しかしながら、プラズマは、ウェハ上に堆積した材料だけでなく、RIEチャンバの内側に据え付けられた構成部品もやはり攻撃する。その上、RIEチャンバへと反応性ガスを配送するために使用する構成部品もやはり、反応ガスにより腐食されることがある。プラズマおよび/または反応ガスによって構成部品に生じた損傷は、低い製造歩留まり、プロセスの不安定性、および汚染という結果をもたらすことがある。
【0003】
半導体製作用のエッチチャンバは、化学的に耐性のある材料でコーティングされた構成部品を使用することにより、下にある構成部品の劣化を減少させ、エッチプロセスの一貫性を向上させ、エッチチャンバ内の粒子発生を減少させる。コーティングは、化学的に耐性があるとはいえ、クリーニングおよび定期メンテナンス中に劣化を受けることがあり、その際は、水または他の溶剤と結合したエッチャントガスが、コーティングを劣化させる腐食性状態、例えば、塩酸を作り出す。腐食性状態は、コーティングした構成部品の使用寿命を短くすることがあり、上記構成部品をチャンバ内に再び据え付けると、やはりエッチチャンバ汚染をもたらすことがある。エッチチャンバ部品用のコーティングの改善に対する継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【0004】
優れたプラズマエッチ耐性を有し、RIE部品の寿命を長くすることができるコーティングに関する物品および方法を提供する。
【0005】
1つのバージョンでは、物品は、真空に適合する基板と、基板の少なくとも一部分を覆う保護膜とを備える。膜は、イットリウムを含有するフッ素化された金属酸化物を含む。
【0006】
もう1つのバージョンでは、物品は、真空に適合する基板と、イットリウム、酸素、およびフッ素を含有する保護膜とを備える。膜は、エネルギー分散型X線分光法(EDS)により決定される23原子パーセントと38原子パーセントとの間のイットリウム含有量と、4原子パーセントと40原子パーセントとの間のフッ素含有量と、59原子パーセントと69.5原子パーセントとの間の酸素含有量とを有する。膜は、フッ化イットリウム含有物のない純粋なオキシフッ化イットリウムであり、X線粉末回折(XRD)により決定されるように菱面体晶または正方晶構造を有する。膜は、室温において5%塩酸水溶液中で5分後に安定である。
【0007】
保護膜を、完全にフッ素化するまたは部分的にフッ素化することができる。保護膜を、オキシフッ化イットリウムまたはフッ素化された酸化イットリウムアルミニウムとすることができる。膜は漸変膜とすることもでき、膜のフッ素含有量が膜の厚さにわたって減少することをともなう。例えば、膜は、オキシフッ化イットリウムである外側部分およびイットリアである内側部分を有することができ、フッ素含有量が外側部分から内側部分へと徐々に減少する。あるいは、膜は、フッ素化された酸化イットリウムアルミニウム(すなわち、オキシフッ化イットリウムアルミニウム)である外側部分および(フッ素化されていない)酸化イットリウムアルミニウムである内側部分を有することができる。
【0008】
膜は、菱面体晶または正方晶Y、ただしc/(a+b)=0.04〜0.67、およびY、ただしx/y=0.33〜0.67、を含むことができる。あるいは、膜は、YAl、ただしh/(e+f+g)=0.05〜0.54、およびYAl、ただしo/(p+q)=0.03〜0.18、を含むことができる。
【0009】
さらなるバージョンでは、約1ミクロンから約2ミクロン厚までの膜の外側部分は、オキシフッ化イットリウムであり、膜の残りの部分は、イットリアである。もう1つのバージョンでは、約1ミクロンから約2ミクロン厚までの膜の外側部分は、オキシフッ化イットリウムアルミニウムであり、膜の残りの部分は、酸化イットリウムアルミニウムである。
【0010】
膜を、約1ミクロンから約15ミクロン厚とすることができる。膜は、室温で5%塩酸水溶液に浸漬したときに5分以上後で基板に密着することができる。
【0011】
真空に適合する基板を、石英、アルミナ、アルミニウム、鋼鉄、金属、金属合金、セラミック、または半導体製作用に適したプラスチックとすることができる。基板を、半導体製作システム内の構成部品、例えば、チャンバ、チャンバ部品、ウェハサセプタ、チャック、シャワーヘッド、ライナ、リング、ノズル、バッフル、留め具、またはウェハ搬送部品とすることができる。
【0012】
さらなるバージョンでは、方法は、真空に適合する基板を用意することと、基板上へとイットリウムを含有する金属酸化物を堆積することと、膜をフッ化アニールすることとを含む。
【0013】
フッ化アニールすることを、約300℃から約650℃の温度で実行することができる。フッ素化プロセスを、フッ素イオン注入に続くアニーリング、300℃以上でのフッ素プラズマ処理、フルオロポリマ燃焼、昇温状態でのフッ素ガス反応、フッ素ガスを用いたUV処理、または上記の任意の組み合わせとすることができる。
【0014】
前述のものは、添付の図面に示すように、発明の例示的実施形態の次に続くより詳細な説明から明確になるであろう。図面では、類似の参照符号は、異なる図の全体を通して同じ部品を参照している。図面は必ずしも正確な縮尺である必要はなく、代わりに、強調によって本発明の実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のあるバージョンのX線回折(XRD)グラフである。
図2】本発明のもう1つのバージョンのXRDグラフである。
図3】堆積したままのイットリア、空気アニールしたイットリア、およびフッ化アニールしたイットリアのX線光電子分光(XPS)グラフである。
図4】A〜Fは、堆積したコーティングの走査型電子顕微鏡写真である。
図5】A〜Fは、(A、B、C)堆積したままのイットリア膜および(D、E、F)フッ化アニールしたイットリア膜の走査型電子顕微鏡写真である。
図6】Aは堆積したままのイットリア膜の、Bはフッ化アニールしたイットリア膜の、EDS解析の図である。
図7A】マークした4つの場所を有するフッ化アニールした膜の走査電子写真である。
図7B-E】図7Aの4つの場所で実行したEDS解析の図である。
図8】AおよびBは、真空中でベーキングする前の2つのフッ化アニールしたサンプルであり、CおよびDは、真空中でベーキングした後の2つのフッ化アニールしたサンプルのEDS解析の図である。
図9】様々なエッチ耐性コーティングのフッ素プラズマエッチ速度のグラフである。
図10A-B】熱サイクル試験後の石英上のイットリアコーティングの走査電子写真である。
図10C-D】熱サイクル試験後の石英上のイットリアコーティングの走査電子写真である。
図11A-B】石英上のフッ化アニールしたイットリアコーティングの走査電子写真である。
図11C】石英上のフッ化アニールしたイットリアコーティングの走査電子写真である。
図12A-B】熱サイクル試験後の石英上のフッ化アニールしたイットリアコーティングの走査電子写真である。
図12C】熱サイクル試験後の石英上のフッ化アニールしたイットリアコーティングの走査電子写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明を、本発明の実施例示的実施形態を参照して特に示し、説明するが、形態および詳細における様々な変更を、別記の特許請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱せずに行うことができることを、当業者なら理解するであろう。
【0017】
様々な組成および方法が説明されるが、この発明は、説明される特定の分子、組成、設計、技法またはプロトコルが変わり得るので、これらに限定されないことを理解すべきである。説明において使用する用語は、特定のバージョンまたはバージョンだけを説明するためのものであり、別記の特許請求の範囲によってのみ限定されるであろう本発明の範囲を限定するものではないことも理解すべきである。
【0018】
本明細書においてそして別記の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、別途文脈で明らかに述べない限り、複数の言及を含むことにも留意しなければならない。したがって、例えば、「膜」への言及は、1つまたは複数の膜および当業者に知られている膜の等価物、等々への言及である。別途規定しない限り、本明細書において使用するすべての技術用語および科学用語は、当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書において説明するものに類似または等価な方法および材料を、本発明のバージョンの実施または試験の際に使用することができる。本明細書において述べるすべての出版物は、その全体が参照により組み込まれている。発明が先行発明によるこのような開示に先行する日付を与えないことの承認として、本明細書における何かが解釈されるべきではない。「任意選択の(optional)」または「任意選択で(optionally)」は、後に続いて記述される事象または状況が生じても生じなくてもよく、記述は、事象が生じる事例および事象が生じない事例を含むことを意味する。本明細書中でのすべての数値を、明示的に示しているか否かにかかわらず、用語「約(about)」により修飾することができる。用語「約」は、当業者が列挙した値に等価である(すなわち、同じ機能または結果を有する)と考えるであろう数の範囲を一般に呼ぶ。いくつかのバージョンでは、用語「約」は、述べた値の±10%を呼び、別のバージョンでは、用語「約」は、述べた値の±2%を呼ぶ。組成および方法が様々な構成要素またはステップを「備えている(comprising)」(「含んでいる(including)が、限定されない」という意味として解釈される)という用語で記述しているが、組成および方法を、様々な構成要素およびステップからも「本質的に構成する(consist essentially of)」または「構成する(consist of)」ことができ、このような用語法を、本質的に限られた要素のグループを規定するように解釈すべきである。
【0019】
発明の例示的実施形態の説明が次に続く。
【0020】
イットリア(酸化イットリウム)を含むコーティングが、RIE部品上に使用されて、プラズマエッチング耐性を与える。このようなコーティングを、溶射、エアロゾル、物理気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、およびEビーム蒸着を含む様々な方法よりRIE部品に適用することができる。しかしながら、イットリアコーティングは、RIEチャンバおよび構成部品のメンテナンス中に塩化水素(HCl)により腐食されることがある。塩素プラズマRIEプロセスの後では、残留塩素がRIE部品上に残存している。構成部品がメンテナンス中に脱イオン(DI)水により洗浄されると、残留塩素およびDI水は、イットリアコーティングを腐食できるHClになり、イットリアコーティングが次のRIEプロセス中に下にある基板を保護することを妨げる。その上、RIEチャンバ内のイットリアコーティングは、プラズマエッチングプロセス中には粒子状物質であり得る。粒子は、シリコンウェハ上に落下することがあり、製作した半導体デバイスに欠陥を生じさせ、ウェハ製造歩留まりの低下を引き起こす。
【0021】
本発明のバージョンは、イットリアおよび酸化イットリウムアルミニウムなどの金属酸化物イットリウムコーティング膜をフッ化アニールすることによりRIE部品を保護するための物品および方法の改善を提供する。
【0022】
フッ化アニーリングプロセスは、フッ素含有雰囲気中において300℃〜650℃で膜をアニールすることにより金属酸化物イットリウム含有膜中へとフッ素を導入することを含む。フッ化アニーリングプロセスの加熱速度を、毎時50℃から毎時200℃までの間とすることができる。
【0023】
フッ化アニールしたイットリア膜は、いくつかの利点を供し、高いフッ素プラズマエッチ耐性(例えば、約0.1から約0.2ミクロン/hr)、高いウェット化学エッチ耐性(例えば、5%HCl中で約5から約120分)、チャンバ部品への良い密着力(例えば、約5Nから約15Nの第二限界負荷(LC2)密着力)、およびコンフォーマルコーティング能力を含むいくつかの望ましい特質を有する。その上、フッ化アニールしたイットリア膜は、材料、機械的特性、およびミクロ構造の点で調整可能である。イットリア、フッ化アニールしたイットリア、およびイットリアとフッ化アニールしたイットリアの両者の混合物を包含する膜を、特定の用途またはエッチング環境の必要性を満たすように作り出すことができる。例えば、膜のフッ素含有量を、約4原子パーセントから約40原子パーセントまでであるように巧みに操作することができ、フッ素深さを、約0.5ミクロンから約20ミクロンであるように巧みに操作することができる。フッ素化されたイットリアのエッチ耐性は、膜中のフッ素含有量とともに大きくなる。フッ化アニールしたイットリア膜は、フッ素化していないイットリア膜に対して優れたクラック耐性および昇温状態での完全性の改善の付加的な利点も供する。
【0024】
発明の1つのバージョンでは、イットリア(Y)を、真空に適合する基板上に堆積し、フッ化アニーリングプロセスが次に続いて、イットリアをオキシフッ化イットリウム(Y)へまたはイットリアとオキシフッ化イットリウムとの混合物へと変換する。イットリアおよび/またはオキシフッ化イットリウムは、基板を覆い保護する膜を形成する。膜は、真空チャンバ内でエッチング環境に接触する最も外側の層を与える。材料Yは、x/y比が約0.33から約0.67である組成を有することができる。材料Yは、c/(a+b)=0.04〜0.67である組成を有することができる。
【0025】
イットリアおよび酸化イットリウムアルミニウムなどのイットリウムを含有する金属酸化物の膜を、真空に適合する基板上へと先ず堆積する。金属酸化物膜の堆積は、溶射、スパッタリング、エアロゾル、物理気相堆積(PVD)、化学気相堆積(CVD)、Eビーム蒸着を含む様々な方法により行うことができる。堆積に続いて、膜を、フッ素を含有する環境中で約300℃から約650℃でフッ化アニールする。フッ素化プロセスを、例えば、フッ素イオン注入に続くアニーリング、300℃以上でのフッ素プラズマ処理、フルオロポリマ燃焼法、昇温状態でのフッ素ガス反応、およびフッ素ガスを用いたUV処理、または上記の任意の組み合わせを含むいくつかの方法により実行することができる。
【0026】
フッ素の様々なソースを、利用するフッ化アニーリング法に応じて使用することができる。フルオロポリマ燃焼法に関して、フッ素ポリマ材料を必要とし、例えば、PVF(ポリフッ化ビニル)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、PFA、MFA(ペルフルオロアルコキシポリマ)、FEP(フッ素化されたエチレンポリマ)、ETFE(ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、ECTFE(ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン)、FFPM/FFKM(ペルフルオロ化エラストマ[ペルフルオロエラストマ])、FPM/FKM(フルオロカーボン[クロロトリフルオロエチレンビニリデンフッ化物])、PFPE(ペルフルオロポリエーテル)、PFSA(ペルフルオロスルホン酸)、およびペルフルオロポリオキシセタンとすることができる。
【0027】
フッ素イオン注入に続くアニーリング、300℃以上でのフッ素プラズマ処理、昇温状態でのフッ素ガス反応、およびフッ素ガスを用いたUV処理を含む他のフッ化アニーリング法に関して、反応のためにフッ素化されたガスおよび酸素ガスが必要とされる。フッ素化されたガスを、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ペルフルオロカーボン(PFC)、六フッ化硫黄(SF)、HF蒸気、NF、およびフルオロポリマ燃焼からのガスとすることができる。
【0028】
イットリア膜または酸化イットリウムアルミニウム膜は、好ましくは構造が柱状であり、その結果、構造は、フッ素がフッ化アニーリングプロセス中に粒界を通って膜に侵入することを許容する。非晶質イットリア構造(すなわち、非柱状、またはあまり柱状でない)は、フッ素がフッ化アニーリングプロセス中に容易に侵入することを許容しない。
【0029】
本発明のフッ化アニールした膜を、半導体製作システム内の構成部品などの真空に適合する基板に適用することができる。エッチチャンバ部品は、シャワーヘッド、シールド、ノズル、および窓を含むことができる。エッチチャンバ部品は、基板用のステージ、ウェハ取り扱い取り付け具、およびチャンバライナも含むことができる。チャンバ部品を、セラミック材料から作ることができる。セラミック材料の例は、アルミナ、炭化ケイ素、および窒化アルミニウムを含む。明細書がエッチチャンバ部品に言及しているとはいえ、発明のバージョンは、エッチチャンバ部品に限定されずに、腐食耐性の向上から利益を得るであろう他のセラミック物品および基板を、本明細書において説明するようにやはりコーティングすることができる。例は、セラミックウェハキャリアおよびウェハホルダ、サセプタ、スピンドル、チャック、リング、バッフル、並びに留め具を含む。真空に適合する基板も石英、鋼鉄、金属、または金属合金とすることができる。真空に適合する基板をも、例えばドライエッチングにおいて、例えば半導体産業で使用される、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリイミドなどの、プラスチックとすることができる、または含むことができる。
【0030】
フッ化アニーリング膜は、調整可能であり、フッ化アニーリングプロセスが膜のフッ素化の深さおよび密度の変形形態を可能にすることをともなう。発明の1つのバージョンでは、フッ化アニールした膜を、完璧にフッ素化し(完全に飽和し)、フッ素は膜の深さ全体にわたって位置する。発明のもう1つのバージョンでは、フッ化アニールした膜を、部分的にフッ素化し、フッ素は膜の外側部分に沿って位置するが、膜の全深さの全体にわたっては位置しない。加えて、膜を、漸変膜とすることができ、フッ素含有量が膜の深さにわたって変化することをともなう。例えば、膜の最上部(最も外側の)部分は、最大のフッ素含有量を含むことができ、フッ素含有量が、基板に最も近くかつ境界を接する膜の底部(最も内側の)部分に向かい膜の深さにわたって徐々に減少することをともなう。膜の最も外側の部分は、エッチング環境に面する部分である。さらなるバージョンでは、膜は、約42原子パーセント以下の表面フッ素量を含むことができ、いくつかのケースでは34原子パーセント以下であり、別のケースでは17原子パーセント以下であり、そして約6ミクロンの深さのところでは、フッ素含有量は、約15原子パーセント以下、いくつかのケースでは6原子パーセント以下であってもよい。
【0031】
膜のフッ素化の深さを、プロセスパラメータを変化させることによりフッ化アニーリング中に制御することができる。例えば、10ミクロンのイットリアコーティングおよびフッ素含有雰囲気中における400℃での2時間のフッ化アニーリングに関しては、ほぼ1.5ミクロンのフッ素化された深さという結果になるであろう。約300℃よりも高い温度でのフッ化アニーリングイットリアコーティングは、表面深さよりも大きい(すなわち、約0.1ミクロンよりも大きい)深さのところの膜中までフッ素を導入できる。
【0032】
膜は、基板を覆う保護層を提供し、保護層は、真空チャンバの内部で環境に接触しているコーティングされた物品の最も外側の層である。
【0033】
1つのバージョンでは、膜は、約1ミクロンから約15ミクロン厚である。好ましいバージョンでは、膜は、少なくとも3ミクロン厚である。さらに好ましいバージョンでは、膜は、少なくとも4ミクロンまたは5ミクロン厚である。特定のバージョンでは、膜の最上部1〜2ミクロンがオキシフッ化イットリウムであり、膜の残りの深さがイットリアである。もう1つのバージョンでは、膜の最上部1〜2ミクロンがオキシフッ化イットリウムアルミニウムであり、膜の残りの深さが酸化イットリウムアルミニウムである。
【0034】
実施例12で説明するように、いくつかの金属酸化物は、フッ化アニーリングによってはフッ素化できない。このような材料に関して、フッ素化されることが可能である金属酸化物を、組成に追加することができる。例えば、酸化アルミニウム(Al)、ただしr/s=0.33〜0.67、は、後続のフッ化アニーリングでオキシフッ化アルミニウム(Al)へは変換しなかった。しかしながら、酸化アルミニウムイットリウム(YAl)、ただしo/(p+q)=0.03〜0.18、は、後続のフッ化アニーリングでオキシフッ化アルミニウムイットリウム(YAl)、ただしh/(e+f+g)=0.05〜0.54、へと変換できる。「フッ素化可能な」金属酸化物(このケースでは、イットリウム)の追加が、フッ化アニーリングによりフッ素化されるコーティングを可能にした。
【0035】
したがって、他の金属酸化物(例えば、酸化エルビウムおよび酸化セリウム)を包含する膜に関して、イットリウムおよび/またはイットリアを、材料中へと導入することができて、フッ化アニーリングによる膜の良好なフッ素化を確実にする。
【0036】
発明の1つのバージョンは、酸素含有雰囲気中で物理気相堆積したイットリウムでコーティングされているエッチチャンバ部品である。コーティングは、イットリウムおよび酸素を含むセラミック材料であり、反応性スパッタリングまたは物理気相堆積(PVD)技術を使用して作ることができる。PVD堆積中の酸素含有雰囲気は、アルゴンなどの不活性ガスも含むことができる。
【0037】
発明の1つのバージョンは、反応性スパッタリングにより堆積したイットリア膜でコーティングされているセラミック基板であり、ここではコーティングおよび基板を、300℃〜650℃でフッ素雰囲気を含有する焼成炉内でアニールする。フッ化アニールしたコーティングは、イットリウム、酸素、およびフッ素を含むセラミック材料である。基板およびフッ化アニールした膜を、コーティングからフッ素を失うことなく高真空(5E−6torr)下で摂氏150度でベークすることができる。
【0038】
昇温状態でイットリア膜をアニールするための持続時間を、約0.5時間から約3時間以上までとすることができる。発明のいくつかのバージョンでは、昇温状態でイットリア膜をアニールするための持続時間を、1時間から2時間までとすることができる。様々なアニーリング温度を、酸素含有雰囲気中でイットリウムの反応性スパッタリングによりアルミナセラミック基板上に作ったイットリア膜に適用する。
【0039】
イットリアおよびフッ化アニールしたイットリアの結晶構造を、XRDにより測定した。発明のバージョンは、X線回折により決定したように立方晶イットリア構造を有するイットリウムコーティング膜である。発明のバージョンでのフッ化アニールしたイットリア膜は、純粋なオキシフッ化イットリウムのX線回折パターンに一致するX線回折パターンを有する。本発明のフッ化アニールした膜を、フッ化イットリウムが膜に含まれないように作ることができる。
【0040】
発明の1つのバージョンは、10ミクロン以下の全厚さを有する膜であり、膜の最上部2ミクロン以下がフッ化アニールした材料である。
【0041】
本発明の膜は、典型的には黄褐色であり(すなわち、膜は無色透明ではなく)、光学的に純粋ではないまたは光学的に透明ではない。さらにその上、膜の厚さが増すにつれて、膜は光学的に透明度が低くなる。
【0042】
フッ化アニールしたイットリア膜のいくつかのバージョンでは、フッ素は、EDS(エネルギー分散型分光法)により決定されるように膜中に存在する。フッ化アニールしたイットリア膜中のフッ素の量は、4原子パーセントから31原子パーセントまでの範囲に及ぶことができる(実施例7参照)。いくつかのバージョンでは、フッ素の原子パーセントは、膜の厚さ全体にわたって変わり、膜の最上部表面(すなわち、下にあるセラミック基板から遠い表面)でより高い原子パーセントが見出されることをともなう。
【0043】
イットリア膜またはフッ化アニールしたイットリア膜の厚さを、3ミクロンから10ミクロンまでとすることができる。イットリアおよびフッ化アニールしたイットリアのコーティングを、限定することなく3ミクロンと10ミクロンとの間のどこか(例えば、2.1ミクロン、4.5ミクロン、7.3ミクロン、等)の厚さで作ることができる。
【0044】
発明のバージョンでのイットリア膜を、反応性ガス雰囲気中で基板上へのイットリウムの反応性スパッタリングにより作ることができる。反応性ガスを、酸素のソースであるものとすることができ、例えば、空気または酸素を含むことができる。
【0045】
アルミナなどのセラミック基板上のイットリアのフッ化アニーリングは、イットリア膜のウェット化学(5%HCl)エッチ耐性を顕著に向上させる。
【0046】
発明のバージョンでのフッ化アニールしたイットリア膜を、下にあるセラミック基板に密着するものとして特徴付けることができ、膜は、室温で5%塩酸水溶液と5分以上接触した後でセラミック基板に密着している。いくつかのバージョンでは、フッ化アニールしたイットリア膜は、15分間と30分間との間、いくつかのケースでは30分間から45分間下にあるセラミック基板に密着し、そしてさらに別のケースでは、膜は、室温で5%HCl水溶液に接触したまたは浸漬したときに、100〜120分後に下にある基板に密着している。発明のバージョンでのイットリア膜を、ハロゲンガスを含有するプラズマエッチャ内で使用する構成部品に対する保護コーティングとして使用することができる。例えば、ハロゲン含有ガスは、NF、F、Cl、等を含むことができる。
【0047】
フッ化アニールしたイットリア膜は、膜中のフッ素の存在がチャンバをより速く安定化させるまたはシーズニングすることを可能にするという理由で、フッ素に基づくエッチング系では特に有利である。これは、シーズニング中および使用中のプロセスドリフトを取り除くことに役立ち、フッ素含有ガスまたは塩素含有ガスでシーズニングするためのエッチャ休止時間を削減する。
【実施例】
【0048】
実施例1
完全にフッ素化された膜のXRDによる材料認識
図1は、本発明のあるバージョンによるフッ化アニールした膜、具体的には、完璧にフッ素化された膜のX線回折(XRD)グラフである。X線回折測定を、ScintagPAD VハードウェアおよびJCPDS規格を使用するDMSNTソフトウェアを用いて取得した。XRDグラフにおけるピーク位置は、X線ビームが結晶格子により回折されているところに対応する。XRDグラフにおける角度−間隔の固有のセットを、結晶材料を同定しかつキャラクタライズするために使用することができる。
【0049】
イットリアを、アルミナ基板上にコーティングし、フッ素含有雰囲気中における550℃での4時間のフッ化アニーリングが次に続いた。フッ素化プロセスの後で、イットリアが純粋なオキシフッ化イットリウムに変換されていることを確認した。フッ化アニールしたイットリアのXRDパターンは、オキシフッ化イットリウムのパターンと一致する。XRDパターンは、それぞれ、28.3961(+/−0.5)および47.2761(+/−0.5)度の2シータのところに第1の強いピークおよび第2の強いピークを有する。XRD主ピークは、オキシフッ化イットリウムが正方晶結晶系および菱面体晶結晶系からなることを示している。27.8839(+/−0.5)および30.9600(+/−0.5)度の2シータであるフッ化イットリウムの第1の強いピークおよび第2の強いピークは、XRDパターンには検出されず、フッ化アニーリングプロセスがイットリアをオキシフッ化イットリウムだけに変換したことを示している。
【0050】
実施例2
部分的にフッ素化された膜のXRDによる材料認識
図2は、本発明のもう1つのバージョンによるフッ化アニールした膜、具体的には、部分的にフッ素化されたイットリア膜のX線回折(XRD)グラフである。フッ化アニーリングプロセスを、フッ素ソース量、アニーリング温度、およびアニーリング時間を制御することによって、部分的フッ素化イットリアに制御した。膜を、フッ素含有雰囲気中において400℃で約2時間アニールした。図2では、堆積したままのイットリアは、XRDパターンにおいて、それぞれ、28.7245(+/−0.5)および47.7501(+/−0.5)度の2シータのところに第1の強いピークおよび第2の強いピークを有し、その結晶系は、立方晶である。部分的にフッ素化されたイットリア膜のXRDパターンは、イットリアのXRDパターンとオキシフッ化イットリウムのXRDパターンとの組み合わせであり、イットリアおよびオキシフッ化イットリウムが膜中に共存することを示している。
【0051】
実施例3
XPSによる材料認識
図3は、堆積したままのイットリア(線1)、空気アニールしたイットリア(線2)、およびフッ化アニールしたイットリア(線3)のスペクトルを示しているX線光電子分光(XPS)グラフである。XPSスペクトルを、Vacuum Generators Escalab MK IIおよびAvantageソフトウェアを用いて取得した。
【0052】
イットリアを、アルミナ基板上へと堆積し、そのXPSスペクトルをアニーリングに先立って測定した。堆積したままのイットリアのXPSスペクトルを、線1により表している。イットリアを、次いで550℃でほぼ2時間空気アニールし、そのXPSスペクトルを測定した。空気アニールしたイットリアのXPSスペクトルを、線2により表している。基板上へと堆積したイットリアの第2のサンプルを、550℃でほぼ2時間フッ化アニールし、その測定したXPSスペクトルを、線3により表している。
【0053】
堆積したままのイットリア膜および空気アニールしたイットリア膜のXPSスペクトルは、強い酸素(O)ピークおよびイットリウム(Y)ピークを示している。フッ化アニールしたイットリアのXPSスペクトルは、OピークおよびYピークに加えて強いフッ素(F)ピークを示している。
【0054】
XPSスペクトルは、フッ化アニールしたサンプルでは、フッ素がイットリアと結合し、オキシフッ化イットリウム(Y)を形成することを確認している。
【0055】
実施例4
イットリア堆積
イットリアコーティングを、アルミナのセラミック基板上へと酸素含有雰囲気中での物理気相堆積(すなわち、反応性スパッタリング)により堆積した。
【0056】
パワー、電圧、圧力、およびガス流量を含む堆積プロセスパラメータを変えることによって、コーティングのミクロ構造、ヤング率、硬度、残留応力、密着力および組成を含むイットリウム膜の様々な特徴を巧みに操作した。図4A図4Fは、より多孔質(図4Aおよび図4B)からより緻密(図4Eおよび図4F)までの、堆積したコーティングの走査型電子顕微鏡(AMRAY、Bedford、MA)から得られた画像を示している。
【0057】
試験したサンプルから、下記の特徴を、示した範囲内で制御した:
ヤング率:100GPa〜200GPa
ナノ硬度:3GPa〜15GPa
(アルミナ基板上の)残留応力:−5MPa〜−200MPa
スクラッチ試験による密着力(LC2):5N〜20N
組成:x/y=0.33〜0.67
ミクロ構造:図4A図4Fに示したように、多孔質から緻密
【0058】
実施例5
空気アニーリングと比較したフッ化アニーリング
2つの異なるアニーリングプロセスを、イットリア膜サンプルに適用した。第1のアニーリングプロセスは空気アニーリングをともない、アニーリング中にサンプルを、空気中において550℃の焼成炉で2時間加熱した。第2のアニーリングプロセスは、フッ化アニーリングをともない、アニーリング中にサンプルを、フッ素含有雰囲気中において550℃の焼成炉で2時間加熱した。
【0059】
両方のアニーリングプロセスの後で、イットリアコーティングの色は、濃い黄褐色から明るい黄褐色へと変化した。イットリアコーティングは、透明でも光学的に純粋でもなかった。
【0060】
フッ化アニールした膜を、Y組成、ただしc/(a+b)=0.04〜0.67、を与えるように制御することができた。
【0061】
実施例6
コーティングモフォロジ
(実施例4にしたがって準備した)堆積したままのイットリアおよび(実施例5にしたがって準備した)フッ化アニールしたイットリア膜を、走査型電子顕微鏡(AMRAY、Bedford、MA)を用いて撮像した。(実施例3で説明した方法にしたがって作った)堆積したままのイットリアを、図5A図5Cに示している。(実施例4で説明した方法にしたがって作った)フッ化アニールしたイットリアを、図5D図5Fに示している。フッ化アニーリングプロセスは、イットリア膜のモフォロジを変化させなかった。
【0062】
実施例7
組成
図6A図6Bは、堆積したままのイットリア(図6A)膜サンプルおよびフッ化アニールしたイットリア(図6B)膜サンプルのESD解析を示している。図6Aに示したように、堆積したままのイットリア中にはフッ素が認められなかった。図6Bに示したように、フッ化アニールしたイットリア膜中にはかなりの量のフッ素が認められた。
【0063】
2つのサンプル中のイットリウム(Y)、酸素(O)、およびフッ素(F)の測定した量を、表1に示している。
【0064】
【0065】
膜の表面のフッ素の原子パーセントを、異なるプロセスパラメータを用いてフッ化アニーリング後のイットリアコーティング中で約4%から約40%とすることができる。イットリウム含有量は、フッ化アニーリング後では約23%と38%との間で変わり、酸素含有量は約59%と69.5%との間で変わった。
【0066】
図7A図7Eに示したように、フッ素の原子パーセントは、フッ化アニールした膜の深さにわたって減少した。図7Aは、膜の最上部の場所1(膜の最上部は環境に曝される側である)から膜の底部の場所4(膜の底部は下にあるセラミック基板と境界を接する側である)まで印をつけた4つの場所を有するフッ化アニールしたイットリア膜の側面図を示している。各場所のサンプルの対応するEDS解析を、図7B(場所1)、図7C(場所2)、図7D(場所3)、および図7E(場所4)に示している。場所1の深さが、膜の最上部からほぼ1ミクロンのところであり、場所2が最上部からほぼ3ミクロンのところであり、場所3が最上部からほぼ7ミクロンのところであり、場所4が最上部からほぼ9ミクロンのところであることに留意されたい。
【0067】
4つの場所のイットリウム、酸素、フッ素、およびアルミニウムの測定した量を表2に示している。
【0068】
【0069】
フッ素の異なる量を有する2つのサンプルを、濃度を変えたフッ素ソースを用いて各サンプルをアニールすることにより作成した。2つのサンプルの組成を、表3に示している。
【0070】
【0071】
フッ素ソース量、アニーリング時間およびアニーリング温度などのプロセスパラメータを巧みに操作することにより、フッ素量および深さが制御可能であることを見出した。
【0072】
実施例8
フッ素安定性
フッ化アニールしたイットリアを、高真空(E−6torr)焼成炉で5時間、150℃でベークした。ベーキングの後で、フッ素は依然としてコーティング中にあり、フッ素の原子パーセントは、EDSが判断したように減少しなかった。図8Aおよび図8Bは、ベーキングに先立つ2つのフッ化アニールしたイットリアサンプルのEDS解析を示している。図8Cおよび図8Dは、ベーキング後の同じ2つのサンプルのEDS解析を示している。図8A図8Cおよび図8B図8Dとの比較から分かるように、フッ素の相対的な量は、両方のサンプルで一定のままであった。
【0073】
実施例9
ウェットエッチ耐性
イットリアサンプルを、5%HCl水溶液中に5分間浸漬した。堆積したままのイットリアは、5%HCl水溶液中で約2分間残存した。フッ化アニールしたイットリアは、5%HCl水溶液中で約5から約120分間残存した。
【0074】
より高いフッ素含有量を有するフッ化アニールしたイットリア膜は、より低いフッ素含有量を有する膜よりもより良いウェットエッチ耐性であった。表4に示したように、深さの大きいところでより高い量のフッ素を有するフッ素系膜は、より大きなHCl耐性を示した。
【0075】
場所1の深さが膜の最上部からほぼ1ミクロンのところであり、場所2が最上部からほぼ3ミクロンのところであり、場所3が最上部からほぼ7ミクロンのところであり、そして場所4が最上部からほぼ9ミクロンのところであることに留意されたい。
【0076】
【0077】
膜の表面上のフッ素含有量の増加によりHCl耐性も増加した。表面に30%フッ素を有するフッ化アニールしたイットリアは、5%HCl中で約30分間残存した。表面に8%フッ素を有するフッ化アニールしたイットリアは、5%HCl中で約15分間残存した。フッ素含有量のないイットリアは、約2分未満しか残存しなかった。
【0078】
実施例10
ドライエッチ耐性
シリコン、アルミニウム、酸窒化アルミニウム(AlON)、酸化イットリウムアルミニウム、堆積したままのイットリアおよびフッ化アニールしたイットリアサンプルを、フッ素プラズマを用いてRIEツールによりエッチした。堆積したままのイットリアおよびフッ化アニールしたイットリアの両者は、図9に示したように、毎時ほぼ0.1ミクロンのエッチ速度を有する良いフッ素プラズマ耐性を与えた。
【0079】
実施例11
剥離改善
フッ化アニールしたイットリア膜は、(約400℃までの)昇温状態で優れたクラック耐性および完全性を示した。一般に、イットリアは、イットリア(熱膨張係数(CTE)=8x10−6−1)と石英(CTE=0.3x10K−1)との間の大きな熱膨張係数(CTE)ミスマッチのためにクラッキングや剥離をすることなく石英基板上に堆積することが困難である。
【0080】
図10A図10Dは、400℃でアニーリングした後の石英基板上のイットリアコーティングを示している。(矢印で示した)クラックが見える。図11A図11Cは、400℃でアニーリングした後の、クラッキングのない石英基板上のフッ化アニールしたイットリアコーティングを示している。図12A図12Cは、300℃アニーリングを3サイクルした後の、クラッキングのない石英基板上のフッ化アニールしたイットリアコーティングを示している。
【0081】
実施例12
様々な材料のフッ素化
400℃で1時間のフッ化アニーリングを、様々なコーティングに対して実行して、様々なコーティングがフッ素化されているかどうかを判断した。
【0082】
(PVDスパッタリングにより付けた)コーティングは、アルミナ(Al)、セリア(Ce)、酸化イットリウムアルミニウム(YAl)、酸窒化アルミニウム(Al)、およびイットリア(Y)を含んでいた。溶射により付けたイットリアコーティングも試験した。
【0083】
溶射イットリアおよびPVDイットリアの両者は、上手くフッ素化された。PVD酸化イットリウムアルミニウムもやはり上手くフッ素化された。PVDアルミナ、セリアおよび酸窒化アルミニウムサンプルは、フッ化アニーリングプロセスではフッ素化されなかった。
【0084】
特定の理論に従うことなく、YAlがイットリアとアルミナの混合物であるという理由から、フッ素はYAl中のイットリアと反応することができ、膜の良好なフッ素化を可能にするということを示唆している。
【0085】
様々な金属酸化物のフッ素化の結果の要約を表5に示している。場所1の深さが膜の最上部からほぼ1ミクロンのところであり、場所2が最上部からほぼ3ミクロンのところであり、場所3が最上部からほぼ7ミクロンのところであり、場所4が最上部からほぼ9ミクロンのところであることに留意されたい。
【0086】
【0087】
すべての特許、公開された出願および本明細書において引用した参考文献の教示は、その全体が引用により組み込まれている。
【0088】
発明を1つまたは複数の実装形態に関して示し、説明してきているが、等価な代替形態および修正形態を、この明細書および添付した図面を読むことおよび理解することに基づいて当業者なら思い付くであろう。発明は、すべてのそのような修正形態および代替形態を含み、別記の特許請求の範囲の範囲によってのみ限定される。加えて、発明の特定の特徴または態様がいくつかの実装形態のうちの1つだけに関して開示されてきていることがあるとはいえ、任意の所与の用途または特定の用途にとって望ましくかつ有利であることがあるので、このような特徴または態様を、他の実装形態の1つまたは複数の他の特徴または態様と組み合わせることができる。さらにその上、用語「含む(include)」、「持っている(having)」、「有する(has)」、「で(with)」、または上記の変形を、詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかで使用する限りでは、このような用語は、用語「備えている(comprising)」にある意味で類似して包括的であるものとする。また、用語「例示的な(exemplary)」は、最善というよりはむしろ例を意味することを単に意図している。本明細書において描いた特徴および/または要素を、単純化および理解を容易にする目的で特定の寸法および/または互いに相対的な向きで図示しており、実際の寸法および/または向きが本明細書において図示したものとは実質的に異なることがあることも認識すべきである。
【0089】
この発明を、発明の例示的実施形態を参照して特に示し、説明してきている一方で、形態および詳細の様々な変更を、別記の特許請求の範囲によって包含される発明の範囲から逸脱せずに行うことができることを、当業者なら理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B-E】
図8
図9
図10A-B】
図10C-D】
図11A-B】
図11C
図12A-B】
図12C